JP2011176951A - モータのトルク制御装置 - Google Patents

モータのトルク制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2011176951A
JP2011176951A JP2010039523A JP2010039523A JP2011176951A JP 2011176951 A JP2011176951 A JP 2011176951A JP 2010039523 A JP2010039523 A JP 2010039523A JP 2010039523 A JP2010039523 A JP 2010039523A JP 2011176951 A JP2011176951 A JP 2011176951A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
torque
component
command value
periodic disturbance
motor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2010039523A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5488043B2 (ja
Inventor
Yugo Tadano
裕吾 只野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Meidensha Corp
Meidensha Electric Manufacturing Co Ltd
Original Assignee
Meidensha Corp
Meidensha Electric Manufacturing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Meidensha Corp, Meidensha Electric Manufacturing Co Ltd filed Critical Meidensha Corp
Priority to JP2010039523A priority Critical patent/JP5488043B2/ja
Publication of JP2011176951A publication Critical patent/JP2011176951A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5488043B2 publication Critical patent/JP5488043B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Control Of Electric Motors In General (AREA)
  • Control Of Ac Motors In General (AREA)
  • Control Of Motors That Do Not Use Commutators (AREA)

Abstract

【課題】モータに任意波形のトルク出力を発生させるモータ制御装置におけるモータのトルク出力の周期性外乱および電気・機械共振をオンラインで抑制できる。
【解決手段】モータのトルク出力からトルク周期性外乱をオブザーバ21で直接に推定してトルク指令値補正してトルク周期性外乱を抑制し、トルク出力の周波数成分による電気・機械系の共振現象を、トルク指令値T*からトルク検出値Tdetまでの周波数成分別のシステム伝達関数として同定し、この周波数成分別の同定結果の逆数を用いた共振抑制テーブル23でトルク指令値を生成する。また、任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク成分はd軸q軸電流指令値に変換し、直流以外のトルク成分はオブザーバが周期性外乱を複素ベクトルで表現して周期性外乱を求める場合の実部成分と虚部成分に分解して該オブザーバに周期性外乱電流指令値とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、モータのトルク制御装置に係り、特にモータに任意波形のトルク出力を発生させるモータの制御装置におけるトルク出力の周期性外乱抑制および電気・機械共振抑制に関する。
モータは原理的にトルクリプル(トルク脈動)を発生し、振動・騒音・乗り心地への悪影響、電気・機械共振等の種々の問題を引き起こす。特に、近年普及が進んでいる埋込磁石PMモータ(IPMSM)は、コギングトルクリプルとリラクタンストルクリプルが複合的に発生する。その対策として、トルクリプルを打ち消す補償電流をトルク指令に重畳する種々の方式が検討されている。
しかしながら、例えば数式解析モデルを用いてフィードフォワード補償を行なう方式では、解析誤差の影響が懸念される。また、定常動作点でのフィードバック学習制御結果を記憶してフィードフォワード補償する方式では動作点毎に制御パラメータを適切に調整するための時間を要し、オンライン補償が難しくなる。また、電流リプルを低減する方式は、トルクリプルの観点からは最適に抑制されているとは限らない。そのほか、トルクリプルオブザーバ補償方式も検討されているが、可変速運転時の特性やオンラインフィードバック抑制の検証が不充分なものであった。
上記の課題に対し、電気・機械共振の元凶であるトルクリプルを高精度に抑制する目的で、軸トルクメータによるフィードバック抑制制御法を本願発明者等は既に提案している(例えば、非特許文献1参照)。この制御法は、トルクリプルの周期性に着目して脈動周波数成分毎に補償する制御系を構築すると共に、システム同定結果を用いて動作状態変化に即応するようパラメータを自動調整する機能を設けたものであり、この制御法の詳細を以下に説明する。
(1)トルクリプル抑制制御装置の基本構成
図8は、従来のトルクリプル抑制制御装置の制御ブロック図である。同図は、モータによって負荷をトルク加振するシステムに適用したものである。
トルクリプルの発生源となるモータ1と、何らかの負荷装置2をシャフト3で結合し、その軸トルクをトルクメータ4で計測してトルクリプル抑制装置5に入力する。また、ロータリエンコーダ等の回転位置センサ6を用いてモータの回転子位置(位相)情報を入力する。トルクリプル抑制装置5は、トルク脈動抑圧手段を搭載し、トルク指令値(あるいは速度指令値)に基づいて生成された電流指令値に、トルク脈動補償電流を上乗せした指令値をインバータ7に与える。図8の例では、インバータ7で電流ベクトル制御することを考慮して、モータの回転に同期した回転座標(直交dq軸)上のd軸、q軸電流指令値id*、iq*を与えている。
トルクリプル(トルク脈動)はモータの構造上、回転子位置に応じて周期的に発生することが知られている。そこで、モータ回転に同期してトルクリプル周波数成分を抽出する手段を用い、任意次数nのトルクリプルを余弦、正弦係数TAn,TBn[Nm]に変換する。トルクリプル周波数成分の厳密な計測手段にはフーリエ変換などあがるが、演算容易性を重視すれば回転位相θ[rad]を基準とした単相の高調波回転座標系に低域通過フィルタを通すことでトルクリプル周波数成分を抽出することができる。
トルクリプル抑制装置5では、上記の余弦、正弦係数TAn,TBnを用いてトルクリプル抑制制御を行い、任意周波数成分の補償電流iqc*[アンペア]の余弦/正弦係数IAn,IBn[アンペア]を生成する。補償電流iqc*への変換は、変換時と同じ回転位相θを用いて以下の(2)式で求め、この補償電流はq軸電流指令値に重畳して通常のベクトル制御を行う。
Figure 2011176951
図9は、前記の軸トルクTdetと回転位相θからトルクリプルの余弦、正弦係数TAn,TBnを求め、これらと回転速度ωから補償電流余弦係数IAnおよび正弦係数IBnを求めてトルク周期性外来抑制の補償電流を求めるトルクリプル抑制装置の制御ブロック図である。図中の記号は、以下の意味である。
*:トルク指令値、Tdet:トルク検出値、TAn:n次トルク脈動抽出成分(余弦係数)、TBn:n次トルク脈動抽出成分(正弦係数)、ω:回転数検出値、θ:回転位相検出値、iqc*:トルクリプル補償電流、id:d軸電流検出値、id*:d軸電流指令値、iq:q軸電流検出値、iq*:q軸電流指令値、iu.iv.iw:u、v、w相電流、iqo*:q軸電流指令値(補償電流重畳前)、IAn:n次補償電流余弦係数、lBn:n次補償電流正弦係数、abz:回転センサ信号。なお、添え字のnはn次成分トルクリプルである。
図9において、指令値変換部11は、トルク指令値T*から、ベクトル制御における回転dq座標系のd軸およびq軸電流指令値Id*、Iqo*に変換する。一般には、最大トルク/電流制御を実現するような変換数式やテーブルなどが用いられる。電流ベクトル制御部12は、q軸電流指令値iqo*にトルク脈動補償電流iqc*を重畳したものをq軸電流指令値iq*としてトルク脈動を抑制する。図9の例ではq軸電流指令値に補償電流iqcを重畳しているが、d軸電流、あるいはd軸とq軸の両方に与えても良い。あるいは、dq軸電流の干渉が問題にならないシステムであれば、トルク指令値に対して直接的にトルク脈動補償信号を重畳しても良い。
電流ベクトル制御部12は、一般的な直交回転座標系d軸q軸において、電流ベクトル制御の動作を行い、モータ(IPMSM)13をベクトル制御で駆動することで、負荷装置14を駆動する。座標変換部15は、電流センサ16で検出する3相交流電流iu、iv、iwとモータ回転位相θから、モータ回転座標に同期したdq軸直交回転座標系の電流id,iqに変換する。回転位相/速度検出部17は、エンコーダ等の回転位置センサ18の回転センサ信号abzから回転速度ωおよび回転位相θの情報に変換する。
トルク脈動周波数成分抽出部19では、軸トルクメータ20で検出する軸トルク検出値Tdetと回転位相θからトルク周期性外乱を脈動周波数成分ごとに抽出する。代表的な手段としてフーリエ変換がある。脈動成分の抽出方法は任意であるが、演算簡素化の例として(3)〜(5)式のような手段を用いることにする。
Figure 2011176951
£:ラプラス変換、ωf:脈動抽出ローパスフィルタ遮断周波数[rad/s]、s:ラプラス演算子
トルクリプル抑制制御部21では、トルクリプル周波数成分に同期した座標系で、その余弦係数成分IAnと正弦係数成分IBnのそれぞれを求める。このトルクリプル抑制制御部21の代表形態として周期性外乱オブザーバ補償法または補償電流フーリエ係数学習制御法を用いることができる。
補償電流生成部22では、前記の(2)式で補償電流指令値iqc*を生成し、q軸電流指令値に重畳する。なお、同図ではq軸電流指令値に補償電流指令値を重畳するが、d軸電流指令値、d軸とq軸の双方の電流指令値、トルク指令値などに置き換えることも可能である。
(2)システムの同定
図8に示すようなシステム構成は、PMモータ1,負荷装置2,卜ルクメータ4,カップリング3等の慣性モーメントにより多慣性軸ねじれ共振系となる。軸トルク検出値をフィードバックする場合は複数の共振・反共振周波数があるため、動作状態に応じて適切に抑制制御パラメータを決定しなければならない。制御パラメータの学習時間か長いと電気・機械共振現象を増大させる危険があるため、速やかな自動調整機能が必要である。
そこで、非特許文献1では、回転速度変化に適応する可変ノミナル制御パラメータを導出するために、図8のトルクリプル抑制装置5の出力値から入力値までのシステム伝達特性、すなわち図9における補償電流指令値iqc*から軸トルク検出器4の検出値Tdetまでの周波数伝達特性を同定する。システム同定手法は任意であるが、開ループでiqc*にガウス性ノイズ信号を与えた時の軸トルク検出値Tdetを演算周期100μsで20秒間計測し、入出力のパワースペクトル密度の比から周波数伝達関数をノンパラメトリックに推定した結果を図10に示す(機械系,インバータ電流応答,トルクメータ応答,無駄時間などを含んだ実機の特性)。また、周波数伝達特性の傾向から4慣性系に近似した場合のパラメトリック同定結果も併せて示す。近似のための最適化手法にも種々の方式があるが、周波数領域でlkHzまでの振幅特性の誤差を評価し、制約付き非線形最小化(逐次2次計画法)を行った。
図9ではトルクリプル周波数に同期した座標で制御系を構築するため、図10のシステム同定結果から任意の周波数伝達特性のみを抽出する。定常状態において、トルクリプル周波数に同期したシステムの振幅・位相伝達特性は1次元複素ベクトルで表現できるので、図9の制御系でのシステム特性Psysを下記の(6)式のように定義する。
Figure 2011176951
Am:システム特性の実部、PBm:システム特性の虚部、m:システム同定テーブルの周波数要素番号
例えば、1〜1000[Hz]までのシステム特性をIHz毎に(3)式で表現した場合、1000個の複素ベクトルの要素からシステム同定テーブルを構築することができる。制御系で使用されるのは常に1つの複素ベクトルに限られ、回転速度変化(トルクリプル周波数変化)に応じて同定テーブルから瞬時にPAmとPBmを読み出し、線形補間を施して複素ベクトル化された同定結果を抑制制御に適用する。なお、回転位相を基準とした実部と虚部の軸を定義するため、(5)式における余弦係数は実部成分、正弦係数は虚部成分に対応する。
(3)補償電流フーリエ係数学習制御法
前記の非特許文献1に方式1として記載されるトルクリプル抑制制御法であり、トルクリプル周波数成分のフーリエ係数として求め、これから前記(2)式の演算で補償電流iqc*を求める。この制御法では、トルクリプル周波数に同期した周波数成分のシステム伝達関数を1次元複素ベクトルで表現し、任意周波数成分のトルクリプルの実部・虚部をフーリエ変換等で抽出している。その余弦・正弦フーリエ係数を複素ベクトルの実部・虚部に当てはめて、フィードバック抑制制御系を構築する。
補償電流係数はI−P(比例・積分)学習制御方式で求める。I−P抑制制御系の閉ループ特性が、モデルマッチング法によって任意の標準系規範モデルの極配置と一致するように比例・積分ゲインを決定する。また、それらは前記のシステム同定結果と回転速度情報を用いて自動的にパラメータを適応させるので、多慣性共振系システムヘの実装を容易にする。
任意の定常動作点(定常トルク・定常回転数)において、抑制完了したときの補償電流信号の振幅・位相を保存し、それを複数の動作点で実施して、トルク・回転数の2次元テーブルとして実装する。この際、トルク・回転数情報をテーブルに入力し、読み出した補償電流振幅・位相データから補償電流を生成してフィードフォワード抑制することが可能となる。
(4)周期性外乱オブザーバ補償法
前記の非特許文献1に方式2として記載されるトルクリプル抑制制御法である。前記補償電流フーリエ係数学習制御法での制御パラメータ自動調整手法は、I−P制御ゲインの調整を介して外乱を抑制するため、可変速運転に対する即応性が低下する。そのため、学習した結果を予めテーブル化しておき、フィードフォワード抑制する使い方を推奨している。
本方式の周期性外乱オブザーバ補償法は、周期性外乱オブザーバという考え方を用いて直接的にトルクリプル外乱を推定するため、上記の即応性の問題を改善できる。したがって、可変速・負荷変動を有するシステムに対しても常時オンラインフィードバックでトルクリプルを抑制できる。また、補償電流フーリエ係数学習制御法と同様に1次元複素ベクトルで表現したシステム同定結果を用いて、周期性外乱オブザーバの逆モデルを自動調整する機能を持たせることで、多慣性共振系システムヘの実装も容易になる特徴を持つ。
図11は周期性外乱オブザーバ補償法の演算ブロック図である。同図中、dIAn *:n次周期性外乱電流実部(余弦係数)指令値、dIBn *:n次周期性外乱電流虚部(正弦係数)指令値、iqcn:n次補償電流、dIAn:n次周期性外乱の実部(余弦)成分推定値、dIBn:n次周期性外乱の虚部(正弦)成分推定値、IAn:n次補償電流実部(余弦係数)、IBn:n次補償電流虚部(正弦係数)。
同図は、トルクリプル周波数に同期した制御系のみを示しているので、システムの特性は1次元複素ベクトルで示される。すなわち、以下の(7)式で実システムを表現し、そのシステム同定結果を(8)式とする。なお、(8)式中の推定値には「^」記号をPの頂部に付して示すが、明細書中では「P^」のように記す。
Figure 2011176951
An:n次トルクリプル周波数成分のシステム実部、PBn:n次トルクリプル周波数成分のシステム虚部、P^An:n次トルクリプル周波数成分のシステム実部推定値、P^Bn:n次トルクリプル周波数成分のシステム虚部推定値
図中のトルクリプル抽出部のローパスフィルタ伝達関数は前記(5)式より、以下の(9)式となる。
Figure 2011176951
図11は、一般的な従来の外乱オブザーバと同じ構成であるが、周期性外乱のみに着目しているため、システム特性は(7)式のように1次元複素ベクトルで表され、オブザーハ部の逆システムP^sys-1はシステム同定結果を用いて(8)式の逆数で簡単に示すことができる。
Figure 2011176951
周期性外乱オブザーバは、上記の複素ベクトル演算した後に、周期性外乱(トルクリプル)の実部成分と虚部成分をそれぞれ推定する。周期性外乱推定値実部dIAnおよび虚部dIBnは、図11のごとく、その外乱成分を打ち消すように補償電流として与えればよい。通常は、周期性外乱電流指令値IAn *、IBn *をゼロとすることで、その周波数成分の外乱電流を抑制できる。
只野 他、「PMモータの周期性外乱に着目したトルクリプル抑制制御法の検討」、平成21年電気学会産業応用部門大会、I−615〜618、会期:平成21年8月31日〜9月2日、会場:三重大学
複数の周波数成分の正弦波トルク指令で加振・重畳して任意トルク波形を生成するモータの制御装置において、トルク加振周波数が電気機械系システムの共振点に一致すると、トルク波形が共振して振動・騒音・機器破損・計測障害などの種々の問題を引き起こす。また、モータのトルク周期性外乱も機械共振によって同様の問題を引き起こす。
非特許文献1に記載される補償電流フーリエ係数学習制御法および周期性外乱オブザーバ補償法では、基本的にトルクリプル外乱を抑制できるが、上記のトルク加振などでシステムにトルク共振が発生してしまう。すなわち、周期性外乱の抑制には対応しているが、トルク加振などで加えられるトルク指令値による電気・機械系の共振現象の抑制には対応していない。
さらに、補償電流フーリエ係数学習制御法では、オンラインでトルクリプルを抑制可能とするには補償電流をテーブル化する必要があるが、この補償電流テーブル方式ではシステムの制御パラメータの変動には対応できない。
本発明の目的は、トルク加振など、モータに任意波形のトルク出力を発生させるモータ制御装置におけるモータのトルク出力の周期性外乱および電気・機械共振をオンラインで抑制できるモータのトルク制御装置を提供することにある。
本発明は、前記の課題を解決するため、任意波形のトルク指令値でモータの出力を制御するモータのトルク制御装置において、モータのトルク出力からトルク周期性外乱をオブザーバで直接に推定してトルク指令値補正してトルク周期性外乱を抑制し、トルク出力の周波数成分による電気・機械系の共振現象を、トルク指令値からトルク検出値までの周波数成分別のシステム伝達関数として同定し、この周波数成分別の同定結果の逆数を用いた共振抑制テーブルまたは共振抑制演算でトルク指令値を生成する。
また、任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク成分はd軸q軸電流指令値に変換し、直流以外のトルク成分はオブザーバが周期性外乱を複素ベクトルで表現して周期性外乱を求める場合の実部成分と虚部成分に分解して該オブザーバに周期性外乱電流指令値として入力する。
以上のことから、本発明は、以下の構成を特徴とする。
(1)負荷装置を駆動するモータを、任意波形のトルク指令値に出力制御するトルク制御回路を設けたモータのトルク制御装置において、
モータのトルク出力からトルク周期性外乱をオブザーバで直接に推定し、この推定値でトルク指令値を補正してトルク周期性外乱を抑制する周期性外乱抑制制御手段と、
前記トルク出力の周波数成分による電気・機械系の共振現象を、前記トルク指令値からトルク検出値までの周波数成分別のシステム伝達関数として同定し、この周波数成分別の同定結果の逆数を用いた共振抑制テーブルまたは共振抑制演算でトルク指令値を生成する機械共振抑制制御手段を備えたことを特徴とする。
(2)前記機械共振抑制制御手段は、前記システム同定結果を、システム特性を近似的な数式で表現することを特徴とする。
(3)前記トルク制御回路は、前記トルク指令値をベクトル制御における回転座標系のd軸q軸電流指令値に変換してモータ電流を制御する構成とし、
前記周期性外乱抑制制御手段は、前記q軸電流指令値から卜ルク検出値までのシステム同定結果に基づいて、その逆数を用いて周波数成分ごとに前記q軸電流指令値のみのトルク指令値を生成することを特徴とする。
(4)前記機械共振抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク指令値はd軸q軸電流指令値の直流分として生成し、直流以外のトルク指令値は前記共振抑制テーブルまたは共振抑制演算で共振抑制を考慮したq軸電流指令値に変換することを特徴とする。
(5)前記機械共振抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク成分はd軸q軸電流指令値に変換し、直流以外のトルク成分は前記共振抑制テーブルまたは共振抑制演算により機械共振特性を考慮したトルク指令値に変換することを特徴とする。
(6)前記機械共振抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク成分はd軸q軸電流指令値に変換し、直流以外のトルク成分は前記オブザーバが周期性外乱を複素ベクトルで表現して周期性外乱を求める場合の実部成分dIAn *(余弦係数成分)と虚部成分dIBn *(正弦係数成分)に分解して該オブザーバに周期性外乱電流指令値として入力することを特徴とする。
(7)前記機械共振抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク成分はd軸q軸電流指令値に変換し、直流以外のトルク成分から前記トルクリプル周期性外乱と同期する周波数成分のみを抽出して前記オブザーバが周期性外乱を複素ベクトルで表現して周期性外乱を求める場合の実部成分dIAn *(余弦係数成分)と虚部成分dIBn *(正弦係数成分)に分解して該オブザーバに周期性外乱電流指令値として入力することを特徴とする。
(8)前記機械共振抑制制御手段および前記周期性外乱抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を重ね合わせて任意波形のトルク出力を発生させる場合、並列かつ独立に任意周波数成分別のトルク指令値、複素ベクトル表現の電流指令値を生成することを特徴とする。
以上のとおり、本発明によれば、モータのトルク出力からトルク周期性外乱をオブザーバで直接に推定してトルク指令値補正してトルク周期性外乱を抑制し、トルク出力の周波数成分による電気・機械系の共振現象を、トルク指令値からトルク検出値までの周波数成分別のシステム伝達関数として同定し、この周波数成分別の同定結果の逆数を用いた共振抑制テーブルまたは共振抑制演算でトルク指令値を生成するようにしたため、トルク加振装置など、モータに任意波形のトルク出力を発生させるモータ制御装置におけるモータのトルク出力の周期性外乱抑制および機械共振抑制をオンラインでできる。
また、任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク成分はd軸q軸電流指令値に変換し、直流以外のトルク成分はオブザーバが周期性外乱を複素ベクトルで表現して周期性外乱を求める場合の実部成分と虚部成分に分解して該オブザーバに周期性外乱電流指令値として入力するようにしたため、トルクリプル周波数とトルク指令周波数が一致した場合の干渉による不安定動作を解消できる。
トルク制御装置の制御ブロック図(実施形態1)。 周期性外乱オブザーバのブロック図。 トルク制御装置の制御ブロック図(実施形態2)。 トルク制御装置の制御ブロック図(実施形態3)。 周期性外乱オブザーバのブロック図。 トルク制御装置の制御ブロック図(実施形態4)。 トルク制御装置の制御ブロック図(実施形態5)。 従来のトルク制御装置の構成図。 従来のトルク制御装置の制御ブロック図。 トルク制御装置の周波数伝達関数の例。 周期性外乱オブザーバによるシステム同定のブロック図。
(実施形態1)
本実施形態の基本構成図を図1に示す。図2は、図1におけるトルクリプル抑制制御部の代表形態である周期性外乱オブザーバの演算ブロック構成を示す。
本実施形態は、図1が図9と異なる部分は、図2に示す周期性外乱オブザーバによるトルクの周期性外乱抑制を行うと同時に、電気・機械系の共振を抑制する機械共振抑制制御手段として軸トルク指令Tsh*から機械共振特性を考慮したトルク指令値T*に変換する共振抑制テーブル23を設けた点にある。
ここで、共振抑制テーブル23の実現方法を説明する。共振抑制テーブル23は、システム同定結果に基づいて構成する(同定結果でなく、システム特性を近似式等で表現してもよいが、本実施形態では精密に得られた同定結果を用いる例を考える)、同定入力「トルク指令値T*」から同定出力「トルク検出値Tdet」までの周波数成分別のシステム伝達関数として同定し、この周波数成分別の同定結果の逆数を用いて構成する。システム同定は一般的な技術であるため、手法の詳細は特に限定しない。例えば、トルク指令値T*にホワイトノイズを同定入力信号して与え、そのときの出力信号(Tdet)を観測して記録する。入力・出力の記録データから周波数伝達関数を求めれば、周波数成分ごとのシステム伝達特性(同定結果)が入手できる。
同定結果は下記の(12)式のとおり、周波数成分ごとに1次元複素ベクトルで表現してテーブル化する。mは周波数成分を表すテーブル要素番号、Nはテーブルの要素数を示している。実際に使用するときは所望の加振周波数成分に対応する1次元複素ベクトルのみをテーブルから抽出して使用する。
Figure 2011176951
(12)式中、Nはテーブルの周波数分解能を決定づける任意自然数で、例えばN=1000個でIHzごとにテーブルを構成した場合は、1〜1000Hzまでを1Hz刻みで表現できる。PAm:システム同定結果の実部m番目要素、PBm:システム同定結果の虚部m番目要素。
上記の(12)式で表現したPTmはm番目要素に対応する周波数成分におけるトルク指令T*からトルク検出値Tdetまでの伝達特性を示しているので、その逆算値、すなわち逆特性PTm -1を介して所望の加振トルク指令値Tsh*を入力すれば、システム共振特性を予め考慮したトルク指令値T*を生成することができる。(12)式の逆数であるPTm -1は、1次元複素ベクトルの逆数の集合データとなるので容易に計算できる。
したがって、図1の共振抑制テーブル23には、予め計算したシステム逆特性PTm -1のテーブルを与える。共振抑制テーブル23から抽出する周波数成分は、加振トルク指令値の周波数成分に一致させる。なお、上記の共振抑制テーブル23は回転速度ωをパラメータとした関数式で表現し、この関数式に従った演算でトルク指令T*をオンラインで求めることも可能である。
トルクリプル抑制制御部21については、前記の周期性外乱オブザーバ補償法と同等の構成であり、外乱電流指令値dIAn=0、dIBn=0としておけば、周期性外乱をオンラインで学習して抑制できる。
本実施形態によれば、加振トルク指令が電気−機械系の共振点に一致しても、危険なトルク共振現象を発生することなく、安全かつ良好に軸トルク波形を所望値に制御することができる。さらに、トルクの周期性外乱についてもオブザーバによってオンラインで抑制制御を同時に行う構成とすることで、周期性のある外乱抑制・目標値応答の双方を同時に実現できる。
一般に多慣性共振系システムは高次の複雑なシステムとなり、制御器も複雑な演算を要求される場合が多い。本実施形態を用いれば、逆モデル特性も1次元複素ベクトルで表されるため、比較的容易に抑制制御系を設計できる利点がある。
(実施形態2)
モータが埋込磁石同期電動機(IPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)の場合は、d軸電流を用いてリラクタンストルクを有効活用するのが通例である。例えば最大トルクが得られるようにd軸電流とq軸電流の割合を制御する。一般には理論的な変換数式や、調整可能な変換テーブルを用いてトルク指令からid、iq電流指令値に変換している。
上記の実施形態では、加振周波数成分を含むトルク指令をid、iq電流指令値に変換してベクトル制御を行っている。つまり、id、iq電流指令の双方が加振周波数成分を有することになる。IPMSMは構造上、負荷や回転数に依存して複雑なトルク発生メカニズムを持っており、トルク誤差を発生しやすい。そのようなモータに対してd軸、q軸電流を加振した場合、上述の誤差やトルクリプル特性などの影響を受けて、より複雑な周波数成分のトルクを発生してしまう可能性がある。
IPMSMの最も単純なトルク式は(13)式で示されるが、右辺ではidとiqの乗算が行われるため、双方に加振周波数成分があると2倍の周波数を発生する。また、実際にはトルクリプルがあるので.(13)式のような単純な近似式ではトルクに含まれる周波数成分を正確に表現できない。
Figure 2011176951
T:トルク、Φ:永久磁石による鎖交磁束数、Ld:d軸インダクタンス、Lq:q軸インダクタンス、p:極対数
このように、上述する種々の原因から、モータが発生するトルクには複雑な周波数成分を含まれている。そこで、本実施形態では、d軸とq軸電流の加振周波数の誤差と干渉による悪影響を低減するため、q軸電流のみを用いて加振する。図3は、本実施形態の基本構成図であり、図1と異なる部分は、軸トルク指令分離部24を追加した点にある。
軸トルク指令分離部24は、任意波形(すなわち複数の周波数成分を含む)の軸トルク指令値Tsh*から、直流成分T0 *と加振成分Tvib*(直流以外の複数の周波数成分)を分離する。分離方法は任意である。例えば、任意波形の指令値を生成する際、予め直流分とそれ以外の周波数成分の指令値を分けて指令してもよいし、混合された指令値であっても高域通過フィルタ(ハイパスフィルタ)を用いて直流以外の成分を分離することができる。
上記で分離したトルク指令の直流成分T0 *は、通常のトルク−id、iq電流変換部11を介してd軸電流指令値id*、q軸電流指令値(直流分)iqo*に変換する。一方、加振トルク指令値Tvib*は、共振抑制テーブル23Aを用いて、加振トルク指令値による共振現象を抑制する。ただし、ここで用いる共振抑制テーブル23Aは前述の実施形態とは異なる。
本実施形態では、加振トルク指令からq軸電流指令値に変換するため、下記の(14)式に示す加振電流指令値iqvib*からトルク検出値Tdetまでのシステム同定結果Piqを用いて、その逆数Piq -1(逆モデル)を共振抑制テーブルとして与える。(基本原理説明は実施形態1に示した通り。)
Figure 2011176951
Aiqm:システム同定結果の実部m番目要素、PBiqm:システム同定結果の虚部m番目要素
なお、トルクリプル周期性外乱抑制については、実施形態1と同様に、外乱電流指令値dlAn、dIBnをゼロとしておけば周期性外乱をオンラインで学習して抑制できる。そして、図3に示すとおり、共振抑制を考慮した加振電流指令値iqvib*とトルクリプル補償電流iqc*は、共にq軸電流指令値に重畳してiq*を生成する。
本実施形態によれば、直流トルク成分と分離しつつ、q軸電流指令によるトルク加振を用いることで、トルクリプルやd軸・q軸電流加振の干渉によるトルク波形ひずみやトルク誤差の悪影響を低減することができる。
(実施形態3)
上記の実施形態1,2ではオンラインでトルクリプル周期性外乱を抑制すると同時に、加振トルク指令値に対しても電気・機械共振を起こさないシステムを実現できる。しかしながら、トルクリプル周波数と加振トルク指令周波数が一致した場合、加振したい周波数成分まで周期性外乱と見なしてトルクリプル抑制制御系が機能してしまう。そのため、上記の条件では所望の卜ルクが得られず、不安定な動作となる可能性がある。
本実施形態以降の実施形態では、上記のトルクリプル抑制制御系と加振トルク共振抑制系の干渉問題を解決できるトルク制御装置を提案するものである。
本実施形態の基本構成図を図4に示し、図5には図4におけるトルクリプル抑制制御部21の代表形態である周期性外乱オブザーバの演算ブロックを示す。図4において、加振周波数成分抽出部25は、任意波形(すなわち複数の周波数成分を含む)の軸トルク指令値Tsh*から、直流成分T0 *と加振成分Tvib*(直流以外の複数の周波数成分)を分離する。分離方法は任意である。例えば、任意波形の指令値を生成する際、予め直流分とそれ以外の周波数成分の指令値を分けて指令してもよいし、混合された指令値であっても高域通過フィルタ(ハイパスフィルタ)を用いる、あるいはフーリエ変換や(3)〜(5)式で示したような周波数成分抽出方法を用いて直流以外の成分を分離することができる。
上記で分離した軸トルク指令値の直流成分T0 *は、トルク−id、iq電流変換部11を介してd軸電流指令値id*、q軸電流指令値(直流分)iqo*に変換する。一方、加振トルク指令値Tvib*は、共振抑制テーブル23Bを用いて、加振トルク指令値による共振現象を抑制する。ただし、ここで用いる共振抑制テーブル23Bは前述の実施形態とは異なり、軸トルク指令値Tsh*から機械共振特性を考慮したトルク指令値に変換する。
共振抑制テーブル23Bは、システム同定結果に基づいて構成し(同定結果でなく、システム特性を示す近似式等でもよいが、本実施形態では精密に得られた同定結果を用いる例を考える)、同定入力「補償電流指令値iqc*」から同定出力「トルク検出値Tdet」までの周波数成分別のシステム伝達関数として同定し、この周波数成分別の同定結果の逆数を用いて構成する。システム同定は一般的な技術であるため、手法の詳細は特に限定しない。例えば、補償電流指令値iqc*には同定入力信号してホワイトノイズを与え、そのときの出力信号(Tdet)を観測して記録する。入力・出力の記録データから周波数伝達関数を求めれば、周波数成分ごとのシステム伝達特性(同定結果)が入手できる。
同定結果は下記の(15)式のとおり、周波数成分ごとに1次元複素ベクトルで表現してテーブル化する。mは周波数成分を表すテーブル要素番号、Nはテーブルの要素数を示している。実際に使用するときは所望の加振周波数成分に対応する1次元複素ベクトルのみをテーブルから抽出して使用する。
Figure 2011176951
(15)式中、Nはテーブルの周波数分解能を決定づける任意自然数で、例えばN=1000個で1Hzごとにテーブルを構成した場合は、1〜1000Hzまでを1Hz刻みで表現できる。PAiqm:システム同定結果の実部m番目要素、PBiqm:システム同定結果の虚部m番目要素
上記の(15)式で表現したPiqは、m番目要素に対応する周波数成分における補償電流指令iqc*からトルク検出値Tdetまでの伝達特性を示しているので、その逆算値、すなわち逆特性Piq -1を介して所望の加振トルク指令値Tsh*を入力すれば、システム共振特性を予め考慮したトルク指令値を生成することができる。(15)式の逆数であるPiq -1は、1次元複素ベクトルの逆数の集合データとなるので容易に計算できる。
したがって、図4の共振抑制テーブル23Bには、予め計算したシステム逆特性Piq -1のテーブルを与える。共振抑制テーブル23Bから抽出する周波数成分は、加振トルク指令値の周波数成分に一致させる。なお、上記共振抑制テーブルは回転速度ωをパラメータとした関数式で表現することも可能である。
上記で分離・抽出したトルク指令の直流成分T0 *は、通常のトルク−id、iq電流変換部11を介してd軸電流指令値id*、q軸電流指令値(直流分)iq0 *に変換する。一方、加振成分Tvib*は、上述の共振抑制テーブル23Bを用いて機械共振を考慮した加振電流指令値iqvib*に変換する。図3に示す実施形態2の手法では、加振電流指令値iqvib*をそのままq軸電流指令値に重畳していたが、本実施形態では実部・虚部分離部26により、任意周波数成分の加振電流指令値を複素ベクトルして表現した場合の実部成分dIAn *(余弦係数成分)と虚部成分dIBn *(正弦係数成分)に分解し、トルクリプル抑制制御部21に周期性外乱電流指令値として入力する。つまり、任意n次周波数成分の加振電流指令値が下記の(16)式で示されるとき、iqAn=dIAn *、iqBn=dlBn *として周期性外乱電流指令値を与える。トルクリプル抑制制御部21については、実施形態1,2で提案した周期性外乱オブザーバと同等である。
Figure 2011176951
上記で説明したように、加振電流指令値iqvib*を周期性外乱電流指令値iqAn=dIAn *、iqBn=dlBn *とすることで、周期性外乱オブザーバによるトルクリプル補償は所望の加振電流を生成しつつ、加振成分以外の外乱を抑制するように機能する。外乱抑制された加振電流指令値の実部成分IAnおよび虚部成分IBnは補償電流生成部22で下記の(16)式に従った演算で補償電流指令値iqc*に変換し、q軸電流指令値iq0*に重畳する。
本実施形態によれば、加振トルク周波数成分とトルクリプル周波数成分が一致する条件であっても、加振トルク共振抑制制御系とトルクリプル抑制制御系の干渉を回避して共振現象を抑制し、軸トルクを所望の値に制御することができる。
(実施形態4)
実施形態3は、軸トルク加振周波数成分が予め分かっている状態で、その加振電流指令値の実部と虚部を分離してトルクリプル抑制制御系の周期性外乱電流指令値としていた。本実施形態では、軸トルク指令値の周波数成分が分からない場合にもトルクリプル抑制制御系との干渉問題を回避するシステムを提案する。
図6は、本実施形態の基本構成図である。基本的には実施形態3と同様であるが、共振抑制テーブル23Bの出力である加振電流指令値iqvib*をそのままq軸電流指令値に重畳するとともに、トルク脈動同期周波数成分抽出部27では加振電流指令値iqvib*からトルクリプル周期性外乱と同期する周波数成分のみを抽出してトルクリプル抑制制御の周期性外乱電流指令値dIAn *、dlBn *とする。
トルク脈動同期周波数成分抽出部27は、基本的にトルク脈動抽出部と同じ処理を行えばよい。すなわち、回転位相θを用いて以下のように抽出する。
Figure 2011176951
£:ラプラス変換、ωf:脈動抽出カットオフ周波数、iqAn:加振電流指令値の実部成分(余弦係数)、iqBn:加振電流指令値の虚部成分(正弦係数)
上記の(17)〜(19)式で求めた加振電流指令値の実部・虚部成分は、そのままトルクリプル抑制制御系の周期性外乱電流指令値の実部・虚部成分として与えればよい。すなわち、dIAn *=iqAn、dlBn *=iqBnとすればよい。
本実施形態によれば、周波数成分が分からない、あるいは非周期的な周波数成分を含む加振トルク指令値が与えられても、基本的に加振トルク指令値による共振抑制を考慮した電流指令値を生成できる。また、トルクリプル周波数と同期する瞬間があっても、そのときの加振電流の周波数成分を抽出して周期性外乱電流指令値を与えるため、抑制制御系が干渉する問題も同時に回避することができる。
(実施形態5)
本実施形態では、実施形態3あるいは実施形態4の周波数成分を並列かつ同時に実現する方法を提案する。基本構成図を図7に示し、加振周波数成分抽出部25A、共振抑制テーブル23C、トルク脈動同期周波数成分抽出部27A、トルクリプル抑制制御部21A、トルク脈動周波数成分抽出部19A、補償電流生成部22Aでは周波数成分別の指令値やトルク脈動等を求める。また、加算器28では周波数成分の加振電流指令値iqvibl*〜iqvibn*の加算によって加振電流指令値iqvib*を求める。
図7中の各記号は、Tvibl*〜Tvibn*は異なる任意周波数成分のトルク加振指令値、iqvibl*〜iqvibn*は異なる任意周波数成分の加振電流指令値、diA1 *〜diAn *は異なる任意周波数成分の周期性外乱電流指令値の実部成分(余弦係数)、diB1 *〜diBn *は異なる任意周波数成分の周期性外乱電流指令値の虚部成分(正弦係数)、TA1 *〜TAn *は異なる任意周波数成分の周期性外乱トルクリプルの実部成分(余弦係数)、TB1 *〜TBn *は異なる任意周波数成分の周期性外乱トルクリプルの虚部成分(正弦係数)、IA1 *〜IAn *は周期性外乱抑制された加振電流指令値の実部成分(余弦係数)、IB1 *〜IBn *は周期性外乱抑制された加振電流指令値の虚部成分(正弦係数)、iqc*は周期性外乱補償された加振電流指令値である。
任意波形は、複数の周波数成分の重ね合わせで実現できる。そこで、本実施形態では、実施形態3または実施形態4の構成を複数の周波数成分のトルク加振指令値に対応させる。ここでは代表形態として実施形態4の構成を並列化する。トルクリプル周期性外乱抑制と加振信号による共振現象の抑制を両立する方法は、実施形態4に記載の手法と同様である。
本実施形態では、図7に示すとおり、軸トルク指令値が複数の周波数成分を持つ場合を想定しているので、その周波数成分Tvibl*〜Tvibn*を抽出して共振抑制テーブル23Cに入力し、このテーブルには共振特性を考慮した加振電流指令値iqvibl*〜iqvibn*が得られるので、それらを加算器28で加算した加振電流指令値iqvib*をq軸電流指令値に重畳する。次に、トルクリプル抑制制御系との干渉を防止するために、トルク脈動同期周波数成分抽出部19Aでiqvib*に含まれるトルク脈動同期成分を抽出する。抽出方法は実施形態4と同様で、例えば前記の(17)〜(19)式を用いればよい。抽出された実部・虚部電流信号はそのまま周期性外乱電流指令値diA1 *〜diAn *、diA1 *〜diAn *としてトルクリプル抑制制御系に入力する。周期性外乱補償電流IA1 *〜IAn *、IB1 *〜IBn *は、前記の(2)式を用いてそれぞれの次数で生成・加算したものを補償電流iqc*とし、q軸電流指令値に重畳する。そのほかの構成部については、基本的に実施形態4と同様である。
以上、本実施形態を用いれば、複数の周波数成分の加振トルクを重ね合わせて、共振現象を発生することなく任意トルク波形を生成することが可能となる。併せて、トルクリプル周期性外乱を同時に抑制することができる。
なお、各実施形態においては、モータ出力にトルク加振を得る制御装置の場合を示すが、モータに任意波形のトルク出力を発生させるモータの制御装置に適用して同等の作用効果を得ることができる。
11 指令値変換部
12 電流ベクトル制御部
13 モータ
14 負荷装置
15 座標変換部
16 電流センサ
17 回転位相/速度検出部
18 回転位置センサ
19,19A トルク脈動周波数成分抽出部
20 軸トルク検出器
21,21A トルクリプル抑制制御部
22,22A 補償電流生成部
23,23A,23B、23C 共振抑制テーブル
24 軸トルク指令分離部
25,25A 加振周波数成分抽出部
26 実部・虚部分離部
27,27A トルク脈動同期周波数成分抽出部
28 加算器

Claims (8)

  1. 負荷装置を駆動するモータを、任意波形のトルク指令値に出力制御するトルク制御回路を設けたモータのトルク制御装置において、
    モータのトルク出力からトルク周期性外乱をオブザーバで直接に推定し、この推定値でトルク指令値を補正してトルク周期性外乱を抑制する周期性外乱抑制制御手段と、
    前記トルク出力の周波数成分による電気・機械系の共振現象を、前記トルク指令値からトルク検出値までの周波数成分別のシステム伝達関数として同定し、この周波数成分別の同定結果の逆数を用いた共振抑制テーブルまたは共振抑制演算でトルク指令値を生成する機械共振抑制制御手段を備えたことを特徴とするモータのトルク制御装置。
  2. 前記機械共振抑制制御手段は、前記システム同定結果を、システム特性を近似的な数式で表現することを特徴とする請求項1に記載のモータのトルク制御装置。
  3. 前記トルク制御回路は、前記トルク指令値をベクトル制御における回転座標系のd軸q軸電流指令値に変換してモータ電流を制御する構成とし、
    前記周期性外乱抑制制御手段は、前記q軸電流指令値から卜ルク検出値までのシステム同定結果に基づいて、その逆数を用いて周波数成分ごとに前記q軸電流指令値のみのトルク指令値を生成することを特徴とする請求項1または2に記載のモータのトルク制御装置。
  4. 前記機械共振抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク指令値はd軸q軸電流指令値の直流分として生成し、直流以外のトルク指令値は前記共振抑制テーブルまたは共振抑制演算で共振抑制を考慮したq軸電流指令値に変換することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータのトルク制御装置。
  5. 前記機械共振抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク成分はd軸q軸電流指令値に変換し、直流以外のトルク成分は前記共振抑制テーブルまたは共振抑制演算により機械共振特性を考慮したトルク指令値に変換することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータのトルク制御装置。
  6. 前記機械共振抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク成分はd軸q軸電流指令値に変換し、直流以外のトルク成分は前記オブザーバが周期性外乱を複素ベクトルで表現して周期性外乱を求める場合の実部成分dIAn *(余弦係数成分)と虚部成分dIBn *(正弦係数成分)に分解して該オブザーバに周期性外乱電流指令値として入力することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータのトルク制御装置。
  7. 前記機械共振抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を直流分のトルク成分と直流以外のトルク成分に分離し、直流分のトルク成分はd軸q軸電流指令値に変換し、直流以外のトルク成分から前記トルクリプル周期性外乱と同期する周波数成分のみを抽出して前記オブザーバが周期性外乱を複素ベクトルで表現して周期性外乱を求める場合の実部成分dIAn *(余弦係数成分)と虚部成分dIBn *(正弦係数成分)に分解して該オブザーバに周期性外乱電流指令値として入力することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータのトルク制御装置。
  8. 前記機械共振抑制制御手段および前記周期性外乱抑制制御手段は、直流成分を含む複数の周波数成分を有する任意波形のトルク指令値を重ね合わせて任意波形のトルク出力を発生させる場合、並列かつ独立に任意周波数成分別のトルク指令値、複素ベクトル表現の電流指令値を生成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータのトルク制御装置。
JP2010039523A 2010-02-25 2010-02-25 モータのトルク制御装置 Expired - Fee Related JP5488043B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010039523A JP5488043B2 (ja) 2010-02-25 2010-02-25 モータのトルク制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010039523A JP5488043B2 (ja) 2010-02-25 2010-02-25 モータのトルク制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011176951A true JP2011176951A (ja) 2011-09-08
JP5488043B2 JP5488043B2 (ja) 2014-05-14

Family

ID=44689262

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010039523A Expired - Fee Related JP5488043B2 (ja) 2010-02-25 2010-02-25 モータのトルク制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5488043B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014045760A1 (ja) * 2012-09-18 2014-03-27 日産自動車株式会社 モーター制御装置及びモーター制御方法
JP2014161193A (ja) * 2013-02-21 2014-09-04 Meidensha Corp 周期性外乱抑制制御装置
CN108988725A (zh) * 2018-07-31 2018-12-11 哈尔滨工业大学 一种采用改进复矢量pi控制器的永磁同步电机电流谐波抑制系统及方法
KR20190012270A (ko) 2016-06-27 2019-02-08 메이덴샤 코포레이션 모터 드라이브 시스템
WO2020174884A1 (ja) * 2019-02-25 2020-09-03 三菱電機株式会社 電動機の制御装置
CN113572394A (zh) * 2021-07-20 2021-10-29 华南理工大学 一种在线标定和补偿同步电机伺服系统转矩波动的方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113037162B (zh) * 2021-02-22 2022-04-26 江苏大学 无轴承永磁同步电机神经网络带通滤波器振动补偿控制器

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014045760A1 (ja) * 2012-09-18 2014-03-27 日産自動車株式会社 モーター制御装置及びモーター制御方法
US9252689B2 (en) 2012-09-18 2016-02-02 Nissan Motor Co., Ltd. Motor control device and motor control method
JP2014161193A (ja) * 2013-02-21 2014-09-04 Meidensha Corp 周期性外乱抑制制御装置
KR20190012270A (ko) 2016-06-27 2019-02-08 메이덴샤 코포레이션 모터 드라이브 시스템
US10892695B2 (en) 2016-06-27 2021-01-12 Meidensha Corporation Motor drive system
CN108988725A (zh) * 2018-07-31 2018-12-11 哈尔滨工业大学 一种采用改进复矢量pi控制器的永磁同步电机电流谐波抑制系统及方法
CN108988725B (zh) * 2018-07-31 2020-06-23 哈尔滨工业大学 一种采用改进复矢量pi控制器的永磁同步电机电流谐波抑制系统及方法
WO2020174884A1 (ja) * 2019-02-25 2020-09-03 三菱電機株式会社 電動機の制御装置
JPWO2020174884A1 (ja) * 2019-02-25 2021-09-13 三菱電機株式会社 電動機の制御装置
JP7023409B2 (ja) 2019-02-25 2022-02-21 三菱電機株式会社 電動機の制御装置
CN113572394A (zh) * 2021-07-20 2021-10-29 华南理工大学 一种在线标定和补偿同步电机伺服系统转矩波动的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5488043B2 (ja) 2014-05-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5446988B2 (ja) 回転電気機械のトルクリプル抑制制御装置および制御方法
JP5621274B2 (ja) モータのトルク制御装置
JP5088414B2 (ja) 電動機の外乱抑圧装置および外乱抑圧方法
JP5434368B2 (ja) 電動機のトルク脈動抑制システム
JP5488043B2 (ja) モータのトルク制御装置
KR101699463B1 (ko) 제어 장치
JP4910445B2 (ja) Ipmモータのベクトル制御装置
JP5637042B2 (ja) 電動機の脈動抑制装置および電動機の脈動抑制方法
JP2010057217A (ja) 電動機のトルク脈動抑制装置および抑制方法
JP6740890B2 (ja) インバータの制御方法およびインバータの制御装置
KR101485989B1 (ko) 모터 제어 장치
KR101758004B1 (ko) 회전 기기 제어 장치
JP5488044B2 (ja) 回転電気機械のトルクリプル抑制制御装置および制御方法
WO2010024194A1 (ja) 電動機の脈動抑制装置
JP5644203B2 (ja) 回転電気機械のトルクリプル抑制制御装置および制御方法
KR20140106741A (ko) 교류 회전기의 제어 장치
JP6183554B2 (ja) 周期外乱自動抑制装置
JP2010035352A (ja) 同期電動機のロータ位置推定装置
DK2747273T3 (en) Method and apparatus for assessing the torque of a synchronous machine
JP4924115B2 (ja) 永久磁石同期電動機の駆動制御装置
Orlik et al. Saturation induced harmonics in permanent magnet synchronous motors
JP7218700B2 (ja) モータ制御装置
JP2022131542A (ja) インバータ制御装置およびインバータ制御装置の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130213

TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140122

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140128

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140210

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5488043

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees