JP2011174141A - 装飾部材の表面被膜方法および装飾部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】青色光を反射するSUSの被膜を基材表面に形成する装飾部材の表面被膜形成方法を提供する。
【解決手段】反応室内に合成樹脂製基材12とSUS板を対向配置し、反応室にArガスを導入しつつ、スパッタリング法により、基材の表面にSUSの被膜を形成する方法で、ArガスとともにO2ガスを反応室に導入しつつ、スパッタリング法で、基材表面に酸素原子濃度60〜70%(AES分析)のSUSの被膜14を形成する。被膜中に青色光を反射する反射成分15が分散して、被膜の分光反射スペクトルが長波長域より短波長域で強い特性を示し、基材が黒の場合は、被膜が青味を帯びた明るい色調の銀白色に輝いて見える。
【選択図】図3
【解決手段】反応室内に合成樹脂製基材12とSUS板を対向配置し、反応室にArガスを導入しつつ、スパッタリング法により、基材の表面にSUSの被膜を形成する方法で、ArガスとともにO2ガスを反応室に導入しつつ、スパッタリング法で、基材表面に酸素原子濃度60〜70%(AES分析)のSUSの被膜14を形成する。被膜中に青色光を反射する反射成分15が分散して、被膜の分光反射スペクトルが長波長域より短波長域で強い特性を示し、基材が黒の場合は、被膜が青味を帯びた明るい色調の銀白色に輝いて見える。
【選択図】図3
Description
本発明は、エクステンションリフレクター等の車両灯具用装飾部材やその他の合成樹脂製の装飾部材の表面にスパッタリング法によりステンレスの被膜を形成する方法に関する。
例えば、配光形成用の光源ユニットが収容されている自動車用ヘッドランプの灯室には、該光源ユニットの周りに装飾部材であるエクステンションリフレクターを配置して、透けて見える灯室内全体を銀白色に見せることで、非点灯時のヘッドランプの見栄えの向上が図られている。
下記特許文献1には、光源光を反射する配光形成用のリフレクターと装飾部材であるエクステンションリフレクターとが一体化されており、リフレクターの表面にはアルミ蒸着膜が形成され、一方、エクステンションリフレクターの表面には、スパッタリング法によりステンレスの被膜が形成されている。なお、エクステンションリフレクターの表面被膜(ステンレスの被膜)は、スパッタリングにより形成されて後、熱処理されることで、深青色に調色されている。
即ち、反応室内に合成樹脂製エクステンションリフレクター基材とターゲット(ステンレス板)を対向させて配置し、反応室にArガスを導入しつつ、スパッタリング法により、基材表面にステンレスの被膜を形成した後、反応室から基材を取り出して、基材の表面被膜(ステンレスの被膜)を熱処理(アニール処理)することで、深青色に調色する。
リフレクターの表面(アルミ蒸着処理膜)およびエクステンションリフレクターの表面(ステンレスの被膜)は、いずれも銀白色に輝いて見えるという点では同じだが、エクステンションリフレクターの表面(ステンレスの被膜)は深青色を帯びた銀白色に見えるため、ヘッドランプに高級感が醸し出される。
しかし、前記した従来技術では、第1には、エクステンションリフレクターの表面被膜を形成するためには、反応室におけるスパッタリング工程と、反応室外における熱処理(アニール)工程の2工程が必要で、それだけエクステンションリフレクターの表面被膜の形成に時間がかかるという問題があった。
第2には、エクステンションリフレクターの表面被膜の色調(深青色)は、高級感を出すという点では有効であるものの、色調が暗いため注意を喚起する機能(人目を引く機能)においては十分とは言えず、注意喚起機能に優れた色調(明るい青色)の表面被膜が希求されていた。
そこで、発明者は、合成樹脂製基材の表面にステンレスの被膜を形成する従来の方法を行うに際し、黒色系合成樹脂製基材を配置した反応室内に、ArガスとともにO2ガスを導入しつつ、スパッタリング法により、基材表面にステンレスの被膜を形成する方法を試したところ、基材表面に形成されたステンレスの被膜が青味を帯びた明るい銀白色に輝いて見える(注意喚起機能に優れる)ことが確認された。
さらには、基材の表面の下地色を変えて前記方法を試したところ、ステンレスの被膜での青色反射と下地色が混ざった所定の色に見えることが確認されたことで、このたびの特許出願に至ったものである。
本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、スパッタリング工程だけで、青色光を反射する機能をもつステンレスの被膜を基材の表面に形成できる装飾部材の表面被膜形成方法を提供することである。
第2の目的は、青色光を反射する機能をもつステンレスの被膜を基材の表面に形成した装飾部材を安価に提供することである。
前記した第1の目的を達成するために、請求項1に係る装飾部材の表面被膜形成方法においては、反応室に合成樹脂製基材とステンレス製ターゲットを対向させて配置し、該反応室にArガスを導入しつつ、スパッタリング法により、前記基材の表面にステンレスの被膜を形成する装飾部材の表面被膜形成方法において、
前記反応室に、Arガスとともに、またはArガスに代えて、O2ガスを導入しつつ、スパッタリング法により、前記基材の表面にステンレスの被膜を形成するように構成した。
(作用)ArガスおよびO2ガス雰囲気またはO2ガス雰囲気でターゲット・基材間に電場を印加すると、励起したArイオン(酸素イオン)がステンレス製ターゲットに衝突し、これによってステンレス製ターゲットから金属原子が叩き出される(放出される)。そして、叩き出された(放出された)金属原子は基材の表面に付着するが、一部の金属原子は酸素と結合した形態で基材の表面に付着する。このように、スパッタリングによって、基材の表面には、図4(a),(b)に示すように、酸素原子濃度の高いステンレスの被膜が形成される。
前記反応室に、Arガスとともに、またはArガスに代えて、O2ガスを導入しつつ、スパッタリング法により、前記基材の表面にステンレスの被膜を形成するように構成した。
(作用)ArガスおよびO2ガス雰囲気またはO2ガス雰囲気でターゲット・基材間に電場を印加すると、励起したArイオン(酸素イオン)がステンレス製ターゲットに衝突し、これによってステンレス製ターゲットから金属原子が叩き出される(放出される)。そして、叩き出された(放出された)金属原子は基材の表面に付着するが、一部の金属原子は酸素と結合した形態で基材の表面に付着する。このように、スパッタリングによって、基材の表面には、図4(a),(b)に示すように、酸素原子濃度の高いステンレスの被膜が形成される。
酸素原子濃度の高いステンレスの被膜中には、図3(b),(c)に示すように、長波長域よりも短波長域の光を多く反射する反射成分が多く分散しており、被膜の分光反射スペクトルは、長波長域で強い特性を示し、例えば、基材として黒色系樹脂を用いた場合は、被膜を透過した可視光は基材にほとんど吸収されるため、装飾部材(の表面被膜)は青味を帯びた色調に輝いて見える。
即ち、スパッタリング工程だけで、装飾部材を構成する合成樹脂基材の表面に、青色光を反射する機能をもつステンレスの被膜を形成できる。
請求項2においては、請求項1に記載の装飾部材の表面被膜形成方法において、前記基材を有色系合成樹脂で構成するとともに、前記反応室にArガスとO2ガスをほぼ同じ流量で導入させるように構成した。
(作用)ArガスとO2ガスをほぼ同じ流量で導入させつつ、スパッタリングを行った場合は、図3(b)に示すように、基材の表面に形成されるステンレスの被膜の膜厚が厚くなって、被膜中に分散する反射成分の数が多くなる分、被膜での青色光の反射率が上がるとともに、被膜を透過した可視光の一部が有色系基材の表面で反射(吸収)されるので、装飾部材(の表面被膜)は、有色系基材の色(下地色)と明るい青色反射光が混ざった所定の色に見える。
請求項2においては、請求項1に記載の装飾部材の表面被膜形成方法において、前記基材を有色系合成樹脂で構成するとともに、前記反応室にArガスとO2ガスをほぼ同じ流量で導入させるように構成した。
(作用)ArガスとO2ガスをほぼ同じ流量で導入させつつ、スパッタリングを行った場合は、図3(b)に示すように、基材の表面に形成されるステンレスの被膜の膜厚が厚くなって、被膜中に分散する反射成分の数が多くなる分、被膜での青色光の反射率が上がるとともに、被膜を透過した可視光の一部が有色系基材の表面で反射(吸収)されるので、装飾部材(の表面被膜)は、有色系基材の色(下地色)と明るい青色反射光が混ざった所定の色に見える。
特に、基材として黒色系樹脂を用いた場合は、被膜を透過した可視光はほとんどが基材に吸収されて、表面被膜での青色反射光に基材の色が混ざらないため、装飾部材(の表面被膜)は青味を帯びた明るい色調に輝いて見える。
また、前記した第2の目的を達成するために、請求項3に係る装飾部材においては、請求項1または2に記載の方法により所定時間のスパッタリングを行うことで、合成樹脂製基材の表面にステンレスの被膜が形成された装飾部材であって、
前記ステンレスの被膜の酸素原子濃度が60〜70%(AES分析)の範囲となるように構成した。
(作用)スパッタリングによって基材の表面に形成されたステンレスの被膜の酸素原子濃度が60〜70%(AES分析)と高いので、被膜中には、長波長域よりも短波長域の光を多く反射する反射成分が多く分散しており、被膜の分光反射スペクトルは、長波長域で強い特性を示す。このため、基材が有色である場合は、被膜を透過した可視光の一部が有色系基材の表面で反射(吸収)されるので、装飾部材(の表面被膜)は、有色系基材の色(下地色)と青色反射光が混ざった所定の色に見える。
前記ステンレスの被膜の酸素原子濃度が60〜70%(AES分析)の範囲となるように構成した。
(作用)スパッタリングによって基材の表面に形成されたステンレスの被膜の酸素原子濃度が60〜70%(AES分析)と高いので、被膜中には、長波長域よりも短波長域の光を多く反射する反射成分が多く分散しており、被膜の分光反射スペクトルは、長波長域で強い特性を示す。このため、基材が有色である場合は、被膜を透過した可視光の一部が有色系基材の表面で反射(吸収)されるので、装飾部材(の表面被膜)は、有色系基材の色(下地色)と青色反射光が混ざった所定の色に見える。
例えば、基材として黒色系樹脂を用いた場合は、装飾部材(の表面被膜)は青味を帯びた色調に輝いて見え、特に、反応室にArガスとO2ガスをほぼ同じ流量で導入しつつ、スパッタリングによってステンレスの被膜を形成した場合は、装飾部材(の表面被膜)は青味を帯びた明るい銀白色に輝いて見える。
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る装飾部材の表面被膜形成方法によれば、青色光反射機能のあるステンレスの被膜を表面に形成した装飾部材を安価に提供できる。
特に、基材として黒色系樹脂を用いることで、青味を帯びた色調に輝いて見える装飾部材を安価に提供できる。
また、請求項2によれば、青色光反射機能に優れたステンレスの被膜を表面に形成した装飾部材を安価に提供でき、装飾部材は、有色系基材の色(下地色)とステンレスの被膜での明るい青色反射光が混ざった所定の色に見える。
特に、基材として黒色系樹脂を用いた場合は、被膜を透過した可視光のほとんどが基材に吸収されて、ステンレスの被膜での青色反射光に基材の地色が混ざらないため、装飾部材(の表面被膜)は青味を帯びた注意喚起機能に優れた明るい色調に輝いて見える。
請求項3に係る装飾部材によれば、青色光反射機能のあるステンレスの被膜が表面に形成された装飾部材が提供される。特に基材が有色である場合は、装飾部材(の表面被膜)が有色系基材の色(下地色)と被膜での青色反射光が混ざった所定の色に見える。このため、車両用装飾部材として車両に装着された場合は、例えば注意喚起機能に優れる等、他の車両との差別化を確実に図ることができる。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
図1において、符号10は、車両灯具用装飾部材であるヘッドランプ用エクステンションリフレクターを示し、エクステンションリフレクター10には、光源を装着したほぼ楕円体形状のリフレクターの前方に投影レンズを一体化した構造の走行ビーム形成用とすれ違いビーム形成用の2つの配光形成用光源ユニット(図示せず)にそれぞれ対応する大きさの円形状開口部18a,18bが左右方向に隣接して設けられている。
即ち、ヘッドランプのランプボディと前面カバーで画成された灯室(図示せず)内に配置された2つの配光形成用光源ユニットは、ランプボディの背面壁と光源ユニット間に介装されたエイミング機構(図示せず)によって、光源ユニットの照射軸(ヘッドランプの光軸)が上下左右方向に傾動調整可能に支持される。そして、灯室内に配置された2つの光源ユニットの周りを隠すように、エクステンションリフレクター10がランプボディの内側に沿って配置される。
エクステンションリフレクター10の表側には、後述するスパッタリング工程によって、ステンレスの表面被膜14が形成されており、非点灯時に透けて見えるヘッドランプの灯室内全体が青味を帯びた明るい色調の銀白色に輝いて見えて、それだけ注意喚起機能に優れている。
図2は、エクステンションリフレクター10の表面被膜14を形成するスパッタリング装置を示し、同装置20は、真空ポンプ(図示せず)に延びる真空排気管22が接続された反応室21を備えている。反応室21内の下部には、裏面(下面)側に磁石32を配置したターゲット(ステンレス板)30と、試料である合成樹脂製のリフレクター基材12とが上下に対向して配置されている。リフレクター基材12としては、黒色のポリカーボネイト(以下、PCという)が使用されている。
反応室21の近傍には、直流電源28が設けられ、ターゲット(ステンレス板)30は、直流電源28の+極に接続され、リフレクター基材12は、反応室21を介して直流電源28の−極に接続されている。符号24はArガス導入用の配管、符号26はO2ガス導入用の配管である。配管24,26には、それぞれ調整弁が設けられて、反応室21に導入するArガス,O2ガスの導入量を調整できるようになっている。
次に、この図2に示すスパッタリング装置20を用いて、エクステンションリフレクター基材12の表面に表面被膜14を形成する方法を説明する。
まず、真空排気管22を介して反応室21内を排気し、反応室21内を所定の真空度にした後、流量調整したArガスおよびO2ガスを配管24,26を介して反応室21に導入しながら、対向するリフレクター基材12とターゲット(ステンレス板)30間に高電圧を印加し、リフレクター基材12とターゲット(ステンレス板)30間に電場を形成する。すると、励起したArイオン(O2ガス雰囲気の場合は酸素イオン)がターゲット(ステンレス板)30に衝突し、これによってターゲット(ステンレス板)30からステンレスを構成するFe,Ni,Cr等の金属原子が叩き出される(放出される)。叩き出された(放出された)金属原子の大半は、そのままリフレクター基材12の表面に付着するが、叩き出された金属原子の一部は、酸素と反応(結合)した形態でリフレクター基材12の表面に付着する。このスパッタリング工程を所定時間行うことで、リフレクター基材12の表面に、酸素原子濃度が高められたステンレスの被膜14を形成することができる。
以下、ArガスおよびO2ガスの流量を調整して反応室21に導入しながらスパッタリングを行う本実施例方法と同方法によって基材12の表面に形成されたステンレスの被膜14,14Aの構成を、Arガスだけを反応室21に導入(O2ガスは導入しない)しながらスパッタリングを行う方法と同方法によって基材12の表面に形成されたステンレスの被膜14Bの構成と比較して、詳しく説明する。
それぞれ同量(30ccs)のArガスおよびO2ガスを反応室21に導入しながら60秒間のスパッタリングを行う第1の実施例方法では、黒色PC製基材12の表面に厚さ20nmのステンレスの被膜14が形成された。
また、O2ガスだけを反応室21に導入(60ccs)しながら60秒間のスパッタリングを行う第2の実施例方法では、黒色PC製基材12の表面に厚さ15nmのステンレスの被膜14Aが形成された。
一方、Arガスだけを反応室21に導入(60ccs)しながら60秒間のスパッタリングを行う比較例では、黒色PC製基材12の表面に厚さ20nmのステンレスの被膜14Bが形成された。
そして、基材12に形成したステンレスの被膜14,14A,14Bの断面構造とその表面反射光の分光反射スペクトルを図3(b),(c),(a)に、被膜14,14Bの酸素原子濃度(AES分析)を図4(a),(b)に、表面被膜14,14Aの分光透過スペクトルを図6にそれぞれ示すとともに、これらのデータを考察することで、以下のことがわかった。
比較例の被膜(O2ガスを導入しないArガスのみの雰囲気で形成したステンレスの被膜)14Bでは、図4(a)の符号A3に示すように、酸素原子濃度(AES分析)が約10%と低く、被膜14Bの表面反射光の分光反射スペクトルは、図3(a)に示すように、短波長域より長波長域で強い特性を示し、反射率も高く、被膜14Bは銀白色に見える。
一方、ArガスおよびO2ガス雰囲気またはO2ガスのみの雰囲気で形成したステンレスの被膜14,14Aでは、図4(a),(b)の符号A1,A2に示すように、いずれも酸素原子濃度(AES分析)が約60〜70%と高く、被膜14,14Aの表面反射光の分光反射スペクトルは、図3(b),(c)に示すように、長波長域より短波長域で強い特性を示し、被膜14,14Aは青味を帯びた銀白色に見える。
また、図5に示す装置を用いて、ステンレスの被膜14(20nm),14A(膜厚15nm)の分光透過スペクトルを測定したところ、図6に示すように、いずれの被膜14,14Aについても、短波長域よりも長波長域で強い特性を示す。これは、酸素原子濃度(AES分析)が高い被膜14,14A(図3(b),(c)参照)中には、酸素原子濃度(AES分析)が低い被膜14B(図3(a)参照)中にほとんど存在しない反射成分(長波長域よりも短波長域の光を多く反射する反射成分)15が多く分散しているため、と考えられる。
このため、酸素原子濃度(AES分析)が低い(反射成分15がほとんど存在せず、ステンレスだけで構成されている)被膜14Bでは、図3(a)に示すように、可視光14Bは被膜の表面でほぼ全て反射されるため、被膜14Bの分光反射スペクトルは、可視光全領域で反射率が高くなる。
一方、酸素原子濃度(AES分析)が高い(反射成分15が多く分散している)被膜14,14Aでは、図3(b),(c)に示すように、可視光の一部は被膜14,14Aの表面で反射され、一部は被膜14,14A内に入射する。被膜14,14A内に入射した可視光の一部は黒色の基材12に吸収されるが、一部が反射成分15で反射(長波長域よりも短波長域の光を多く反射)されるため、被膜14,14Aの分光反射スペクトルは、長波長域より短波長域で強い特性を示し、青味を帯びた銀白色を呈する。
また、ステンレスの被膜の分光透過スペクトルを示す図6に示すように、スパッタリングにより形成されるステンレスの被膜は、膜厚が厚いほど短波長側の透過率の減少が著しいことから、膜厚が厚いほど、被膜中における反射成分15の数が多く、被膜での反射率が上がって、色調が明るくなると考えられる。
このため、ArガスとO2ガスの流量比が略1:1の場合には、図3(b)に示すように、被膜14の膜厚は20nmと厚く、被膜14中の反射成分15がそれだけ多いため、反射率が高められて、明るい青味を呈する。そして、Arガスに対するO2ガスの流量比が大きくなる(Arが減る)と、ステンレス製ターゲットに衝突するArイオンが減少する分、叩きだされる金属原子の量が減少し、これに伴って基材の表面に付着して形成されるステンレスの被膜の膜厚が薄くなり、被膜中の反射成分15もそれだけ少ないため、反射率が低下して、明るさが低下する(青の色調が明から暗に徐々に変化する)と考えられる。
また、Arガスを全く導入しないO2ガスだけの雰囲気で形成したステンレスの被膜14Aでは、励起した酸素イオンの衝突でターゲットから叩き出される金属原子の数は、Arイオンの衝突でターゲットから叩き出される金属原子の数に比べて少ないため、図3(c)に示すように、被膜14Aの膜厚は15nmと薄く、被膜14A中の反射成分15がそれだけ少なく、反射率が低下し、深青色を呈する、と考えられる。
図4(a),(b)は、ArガスとO2ガスの流量比が略1:1の場合、O2ガスだけの場合それぞれのステンレス被膜の組成分析を示すが、いずれの場合もステンレスの被膜の酸素原子濃度は最大(60〜70%)である。
このことから、Arガスに対するO2ガスの流量比を1から徐々に大きくした場合は、膜厚が徐々に薄くなって反射成分15の数が徐々に減少するのに対し、ステンレスの被膜の酸素原子濃度は、ArガスとO2ガスの流量比を略1:1の雰囲気で形成した被膜14(図3(b)参照)の場合(60〜70%)とほぼ同じである。このように、Arガスに対するO2ガスの流量比を大きくしてもステンレスの被膜の酸素原子濃度が60〜70%に留まるのは、スパッタリングによる被膜の形成に費やされるプラズマエネルギーが一定であるため、と考えられる。
一方、ArガスおよびO2ガス雰囲気下でスパッタリングによりステンレスの被膜を形成する際、Arガスに対するO2ガスの流量比が小さくなる(酸素の割合が減る)と、形成された被膜中の反射成分15の数が低下し、青の吸収波長よりも他の波長領域における反射率が向上し、最終的にはArガスのみの雰囲気でスパッタリングした場合の銀白色になる(図3(a)参照)、と考えられる。
図7は、本発明の第3の実施例であるヘッドランプ用エクステンションリフレクター10Aの表面被膜の断面構造を示す。
この図において、黒色PCで構成されたリフレクター基材12の表面には、Arガス(反応室21への導入量は60sccm)だけの雰囲気下でスパッタリングにより膜厚20nmの第1の被膜14Bが形成され、さらにその上に、ArガスおよびO2ガス雰囲気下(反応室21への導入量はいずれのガスも30sccm)でスパッタリングにより形成した膜厚20nmの第2の被膜14が積層して形成されている。
第1の被膜14Bは、酸素原子濃度(AES分析)約10%のステンレスの被膜で構成され、図3(a)に示すように、被膜14Bの分光反射スペクトルは、短波長域より長波長域で強く、銀白色を呈する。
そして、第1の被膜14Bの上に、図3(b)に示す分光反射スペクトルを呈する、酸素原子濃度(AES分析)約60〜70%のステンレスの被膜で構成された第2の表面被膜14を積層させたことで、エクステンションリフレクター10A(の第2の被膜14)は、ステンレスの被膜14Bのステンレス色(下地色)と第2の表面被膜14での青色反射光が混ざったゴールドに輝いて見える。
図8は、本発明の第4の実施例であるヘッドランプ用エクステンションリフレクター10Bの表面被膜の断面構造を示す。
前記した第1〜第3の実施例では、リフレクター基材12が黒色PCで構成されていたが、この第4の実施例では、リフレクター基材12Aが灰色PCで構成されており、その他は、第1の実施例と同一の構造である。
即ち、灰色PCで構成されたリフレクター基材12Aの表面に、ArガスおよびO2ガス雰囲気下(反応室21への導入量はいずれのガスも30sccm)でスパッタリングにより、酸素原子濃度(AES分析)約60〜70%の膜厚20nmの被膜14が形成されている。
この結果、エクステンションリフレクター10B(の表面被膜14)は、基材12Aの色(灰色)とステンレスの被膜14での青色反射光が混ざったライトブラウンに輝いて見える。
なお、前記した第1〜第4の実施例では、スパッタリングによりステンレスの被膜を形成する合成樹脂製基材の素材として黒色PCまたは灰色PCを例として説明したが、PC以外にPBT,PBT/PETその他の合成樹脂についても適用でき、さらに合成樹脂製基材の色についても無色以外の有色(黒色、灰色、白を含む)であればよい。
また、前記した第1〜第4の実施例では、本発明をヘッドランプ用エクステンションリフレクターに適用した実施例について説明したが、本発明を適用する対象はエクステンションリフレクターに限るものではなく、インナーレンズやランプボディ等の他の車両灯具用装飾部材については勿論、車両灯具用以外の装飾用パネルといった合成樹脂製の装飾部材にも広く適用できることはいうまでもない。
また、前記した実施例では、直流スパッタ方式の表面被膜形成装置(スパッタリング装置)について説明したが、高周波スパッタ方式,マグネトロンスパッタ方式,イオンビームスパッタ方式といった他の方式の表面被膜形成装置(スパッタリング装置)を用いて、基材表面にステンレスの被膜を形成してもよい。
10,10A,10B エクステンションリフレクター
12,12A 合成樹脂製基材であるエクステンションリフレクター基材
14,14A 表面被膜
20 スパッタリング装置
20 反応室
24 Arガス導入管
25 O2ガス導入管
30 ターゲット(ステンレス板)
12,12A 合成樹脂製基材であるエクステンションリフレクター基材
14,14A 表面被膜
20 スパッタリング装置
20 反応室
24 Arガス導入管
25 O2ガス導入管
30 ターゲット(ステンレス板)
Claims (3)
- 反応室に合成樹脂製基材とステンレス製ターゲットを対向させて配置し、該反応室にArガスを導入しつつ、スパッタリング法により、前記基材の表面にステンレスの被膜を形成する装飾部材の表面被膜形成方法において、
前記反応室に、Arガスとともに、またはArガスに代えて、O2ガスを導入しつつ、スパッタリング法により、前記基材の表面にステンレスの被膜を形成することを特徴とする装飾部材の表面被膜形成方法。 - 前記基材は、有色系合成樹脂で構成されるとともに、前記反応室に、ArガスとO2ガスがほぼ同じ流量で導入されるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の装飾部材の表面被膜形成方法。
- 請求項1または2に記載の方法により所定時間のスパッタリングを行うことで、合成樹脂製基材の表面にステンレスの被膜が形成された装飾部材であって、
前記ステンレスの被膜は、酸素原子濃度が60〜70%(AES分析)の範囲に調整されたことを特徴とする装飾部材。
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JP (1) | JP2011174141A (ja) |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05238779A (ja) * | 1992-02-25 | 1993-09-17 | Central Glass Co Ltd | 電波低反射特性を有する熱線遮蔽ガラス |
JP2008077929A (ja) * | 2006-09-20 | 2008-04-03 | Stanley Electric Co Ltd | エクステンションの着色方法および当該のエクステンションを備える車両用灯具 |
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2010
- 2010-02-25 JP JP2010039863A patent/JP2011174141A/ja active Pending
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPH05238779A (ja) * | 1992-02-25 | 1993-09-17 | Central Glass Co Ltd | 電波低反射特性を有する熱線遮蔽ガラス |
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