JP2011174031A - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、(B)ポリオールにより表面処理された酸化チタン粒子1〜22質量部、及び(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサン0.01〜0.75質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成型品である。
【選択図】なし
Description
また、外観に意匠性が求められるとともに、環境配慮の観点から無塗装化も求められている。
そのほか、液晶プロジェクターに限らず、パソコン、通信機器端末装置等の各種製品でも意匠性、特に白色性が求められている。
上記電子・電気機器筐体を白色に着色するには、酸化チタンが多く使用されている。
しかしながら、酸化チタンは、ポリカーボネート(PC)樹脂を分解し易いため、単純に着色材として使用するには、表面コーティング処理などの分解防止措置をとる必要がある。
また、白色、無塗装化を図る上で、材料面で良外観を得るための技術開発が求められている。
良外観を得るためには、滞留熱安定性の向上、更には製品の小型化に伴い衝撃強度の向上も求められている。
また、PC樹脂の分解物等の影響により、成形時にヤケ・黒点の発生も誘発すると考えられる。
PC樹脂の分解等を防止するために、酸化チタンの改質が検討されている。
特許文献1では、一般的にPC樹脂に適しているとされるポリシロキサン被覆の酸化チタンが検討されている。
特許文献2においても、ポリシロキサン被覆の酸化チタンが検討されている。
また、特許文献3及び4は、酸化チタンを含むPC樹脂組成物に関するものであるが、酸化チタンはシロキサン被覆のもののみが検討されている。
しかしながら、本発明者らの検討によると、ポリシロキサン被覆の酸化チタンを用いると成形時に外観上問題となるシルバーの発生がみられ、シルバーを抑制することはできない。
また、本願のポリオールにより表面処理された酸化チタンに関する検討は今日までなされていない。
特許文献5及び6等の多くの先行技術で難燃化のために用いられる有機スルホン酸の金属塩化合物は、パーフルオロブタンスルホン酸の金属塩がほとんどであり、本願発明においては、高い衝撃強度が得られず、酸化チタンについてはシロキサン被覆酸化チタンしか評価されていない。
(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、(B)ポリオールにより表面処理された酸化チタン粒子1〜22質量部、及び(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサン0.01〜0.75質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物、
(2)(C)成分の量が(B)成分の2〜10質量%である上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(3)更に、(D)無機充填材として、タルク及び/又はマイカを1〜8質量部含む上記1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(4)更に、(E)難燃剤として、パラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、並びに、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体型難燃剤から選ばれる少なくとも1種以上を0.01〜1質量部含む上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(5)更に、(F)含フッ素滴下防止剤を0.1〜0.7質量部含む上記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(6)更に、(G)リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤を0.01〜1質量部含む上記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(7)更に、(H)カーボンブラックを0.00001〜0.1質量部含む上記1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(8)上記1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品、
(9)電気・電子機器用部品である上記8に記載の成形品、
(10)電気・電子機器用筐体である上記9に記載の成形品
を提供するものである。
また、難燃化のために、金属塩系難燃剤やシリコーン系難燃剤としてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体型難燃剤を配合してもシルバー低減効果を得ることができる。
更に、難燃剤として、特定のパラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、好ましくは特定のパラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩を使用することにより、高温成形での滞留熱安定性が向上する。更にまた、酸化防止剤として、特定のリン系酸化防止剤、好ましくは特定のホスファイト系酸化防止剤を使用することにより、高温成形での滞留熱安定性が飛躍的に向上する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリオールにより表面処理された酸化チタン及び(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサンを必須成分とするポリカーボネート樹脂組成物である。
例えば、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法、具体的には、2価フェノールとホスゲンの反応、2価フェノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換反応により製造されたものを使用することができる。
これらの中でも、特に好ましい2価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。
この他、2価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、前記2価フェノールと共に適当な分岐剤を用いてもよく、この分岐剤としては、三価以上の多価フェノール、具体的には1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、フロログルシン、イサチンビス(o−クレゾール)などを挙げることができる。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、又はハロホルメートなどであり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。
具体的には、例えば、フェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ブロモフェノール,トリブロモフェノール,ノニルフェノールなどが挙げられる。
この粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式にて算出するものである。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
上記(B)成分のポリオールの被覆量は、酸化チタン粒子に対し0.5〜5質量%であるのが好ましく、被覆量がこの範囲にあれば、酸化チタン粒子の疎水化が十分となって、PC樹脂との親和性が良好となり、所望の効果が得られる。
好ましい被覆量は、0.5〜4質量%である。
ポリオールは、水分の吸着量をある程度まで低下させる効果も有する。
平均粒子径が上記範囲にあれば、遮光性及び光反射率が良好であると共に成形品表面にシルバー等が発生したり、衝撃強度の低下を生じ難い。
(B)成分の平均粒子径は、より好ましくは0.1〜0.5μmであり、更に好ましくは0.15〜0.35μmである。
塩素法で製造された酸化チタン粒子は、硫酸法で製造された酸化チタン粒子に比べて、白度等の点で優れている。
酸化チタン粒子の結晶形態としては、ルチル型の酸化チタン粒子が好ましく、アナターゼ型の酸化チタン粒子に比べ、白度、光線反射率及び耐候性の点で優れている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、かかる無機処理により酸化チタン粒子の分散性は向上するものの、成形品にシルバーが発生して外観不良を生じる。
同様に、ポリシロキサンで表面処理された酸化チタン粒子も成形品にシルバーが発生して外観不良を生じる。
配合量が1質量部未満では、十分な遮光性(隠蔽性)が得られ難く、22質量部を超えると衝撃強度、難燃性が低下し易いという問題がある。
(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサンとしては、メトキシ基を有するものであれば特に限定されず、例えば、東レ・ダウコーニング製BY16−161、信越化学工業製KR−511等が挙げられる。
オルガノポリシロキサンがメトキシ基を有することで、ポリカーボネート樹脂の分子量低下を抑制するなどの効果を奏する。
配合量が0.01質量部未満では、衝撃強度が低下し、高温成形滞留時に変色が起こり易く、0.75質量部を超えると金型への付着、難燃性の低下が起こり易いという問題がある。
また、(C)成分の量は、成形品表面にシルバーを発生させないためには、好ましくは(B)成分の2〜10質量%である。
タルクは、層状粘土鉱物の1つで、主成分は4SiO2・3MgO・H2Oで表され、「含水珪酸マグネシウム」と呼ばれる。
タルクは産地により、不純物等の組成が異なるが、Fe2O3或いはAl2O3等の不純物が多いと、得られる樹脂組成物の熱安定性等に悪影響を与えるので、これらの不純物が少ないタルクが好ましい。
マイカの結晶はSiO正四面体が六角網目の板状に連なり、この板が二枚で一組となっている。
また、その板間に八面体位をとるイオン(例えば、Al3+、Mg2+)結合をしている。
これをタブレットと言い、これが層をなして積み重なっており、タブレット間にアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオン(例えば、K+)が、イオン結合で繋がっている。
このイオンは層間イオンと呼ばれ12個の酸素で囲まれている。
そして、この結合が非常に弱い為、マイカは板状に剥がれやすい。
タルク及びマイカの粒子径については、平均粒径が3〜12μmのものを使用すると、組成物の物性を犠牲にせず、外観が良好な樹脂組成物が得られるので好ましい。
なお、マイカの粒子径は、遠心沈降式粒度分布測定法で測定されたものである。
(D)成分の配合量が上記範囲にあれば、得られる成型品は外観不良を生じることなく、機械的強度、寸歩安定性、難燃性などが向上する。
なお、(D)成分としては、タルクが好ましい。
上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属(以下、両者を合わせて「アルカリ(土類)金属」と記載することがある)の有機スルホン酸塩としては、パーフルオロアルキルスルホン酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との金属塩のようなフッ素置換アルキルスルホン酸の金属塩、並びに芳香族スルホン酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩との金属塩等が挙げられる。
より好ましくはアルカリ金属である。
これらのアルカリ金属の中でも、難燃性と熱安定性の観点からカリウム及びナトリウムが好ましく、特にカリウムが好ましい。
カリウム塩と他のアルカリ金属からなるスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
ここでパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜18が好ましく、1〜10がより好ましく、更に好ましくは1〜8である。
これらの中で、特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
これら芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩では、特にナトリウム塩及びカリウム塩が好適である。
更に、好ましいポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(a)ポリオルガノシロキサン粒子60〜80質量部の存在下に、(b)ビニル系単量体1〜5質量部を、更に(c)ビニル系単量体15〜39質量部を合計量が100質量部になるように重合して得られるものである。
これらの中では、経済性及び効果の点で、メタクリル酸アリルの使用が好ましい。
これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
このため、(c)ビニル系単量体としては、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが9.15〜10.15[(cal/cm3)1/2]であり、更には9.17〜10.10[(cal/cm3)1/2]、特には9.20〜10.05[(cal/m3)1/2]であるように選ばれることが好ましい。
溶解度パラメーターが上記範囲にあると難燃性が向上する。
かかる溶解度パラメーターの詳細については、特開2003−238639号公報に記載されている。
上記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
特に、衝撃強度を高めるためには、パーフルオロアルキルスルホン酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との金属塩のようなフッ素置換アルキルスルホン酸の金属塩を用いる場合は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体との併用が好ましい。
(E)成分の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01〜1質量部であり、好ましくは0.05〜0.8質量部、より好ましくは0.1〜0.5、更に好ましくは0.1〜0.3質量部である。
(E)成分の配合量が上記範囲にあれば、(E)成分の分散性が低下することなく、難燃性や耐衝撃性が良好となる。
また、(E)成分を配合することにより、成形時に発生するシルバーなどの外観不良を更に低減することができる。
なお、高温成形での熱安定性向上のためには、(E)成分としては、特定のパラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、好ましくは特定のパラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩、特にパラトルエンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
(F)成分は、本発明の樹脂組成物に溶融滴下防止効果を付与し、優れた薄肉難燃性を発現させる。
(F)成分は、フィブリル形成能を有するものが好ましい。
ここで、「フィブリル形成能」とは、せん断力等の外的作用により、樹脂同士が結合して繊維状になる傾向を示すことをいう。
(F)成分としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)等を挙げることができる。
これらの中では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
フィブリル形成能を有するPTFEは、極めて高い分子量を有し、標準比重から求められる数平均分子量で、通常50万以上、好ましくは50万〜1500万、より好ましく100万〜1000万である。
具体的には、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム或いはアンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、7〜700kPa程度の圧力下、温度0〜200℃程度、好ましくは20〜100℃で重合することによって得ることができる。
このタイプ3に分類される市販品としては、例えば、「テフロン6−J」[商品名、三井デュポンフロロケミカル(株)製]、「ポリフロンD−1」及び「ポリフロンF−103」[商品名、ダイキン工業(株)製]等が挙げられる。
また、タイプ3以外では、「アルゴフロンF5」[商品名、ソルベイ ソレクシス社製]、及び「ポリフロンMPAFA−100」[商品名、ダイキン工業(株)製]等が挙げられる。
上記PTFEは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
(F)成分の配合量が上記範囲にあると、燃焼時にドリップすることがなく、薄肉難燃性を確保できると共に、溶融樹脂組成物の流動特性が低下せず、成形性が良好となる。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤等が好適に用いられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルノニルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジブチルハイドロジェンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールドデシルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールトリデシルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールテトラデシルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールペンタデシルホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、3,4,5,6−ジベンゾ−1,2−オキサホスファン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、ジフェニルオクタデシルホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィン、トリス−(p−ノニルフェニル)ホスフィン、トリス−(ナフチル)ホスフィン、ジフェニル−(ヒドロキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(アセトキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(β−エチルカルボキシエチル)−ホスフィン、トリス−(p−クロロフェニル)ホスフィン、トリス−(p−フルオロフェニル)ホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン、ジフェニル−β−シアノエチルホスフィン、ジフェニル−(p−ヒドロキシフェニル)−ホスフィン、ジフェニル−1,4−ジヒドロキシフェニル−2−ホスフィン、フェニルナフチルベンジルホスフィン等が挙げられる。
これら酸化防止剤の中では、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のペンタエリスリトールジホスファイト構造を持つものやトリフェニルホスフィンが好ましい。
(G)成分の配合量が上記範囲にあると、造粒工程・成形工程での熱安定性を維持でき、分子量低下を引き起こし難い。
なお、高温成形での熱安定性向上のためには、(G)成分としては、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
カーボンブラックとしては、MA100(三菱化学株式会社製、商標)等の市販品を挙げることができる。
(H)成分の配合量が上記範囲にあると、衝撃強度が向上する。
離型剤としては、ポリカーボネート樹脂に配合して成形時の離型性を改善できるものであれば、特に限定されるものではない。
とりわけ、蜜蝋、グリセリンモノステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、モンタン酸エステルワックス、カルボン酸エステル等有機化合物が優れた離型性を示し、好適に使用される。
これらは例えば、三木化学工業社の蜜ロウ・ゴールデンブランド、理研ビタミン社のリケマールS− 100A、SL−900、リケスターEW−440A、コグニスジャパン社のロキシオールVPG861 、クラリアントジャパン社のリコワックスE 、コグニスジャパン社のロキシオールEP−32等が挙げられる。
(I)成分の配合量が上記範囲にあれば、離型性が良好であると共に、溶融樹脂組成物の流動特性が低下せずに成形性が良好となる。
これらの添加剤としては帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、可塑剤、抗菌剤、相溶化剤及び着色剤(染料、顔料)等が挙げることができる。
上記の任意成分の配合量は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A)〜(H)、必要に応じて(I)成分を上記割合で、更に必要に応じて用いられる各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。
配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。
混練の際の加熱温度は、通常、240〜320℃の範囲で適宜選択される。
この溶融混練成形としては、押出成形機、特に、ベント式の押出成形機の使用が好ましい。
尚、ポリカーボネート樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、ポリカーボネート樹脂又は他の熱可塑性樹脂と溶融混練、即ち、マスターバッチとして添加することもできる。
特に、得られたペレットを用いて、射出成形及び射出圧縮成形による射出成形品の製造に好適に用いることができる。
本発明のPC樹脂組成物からなる成型品は、例えば、
(1)テレビ、ラジオカセット、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、オーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、エアコンディショナ、携帯電話、ディスプレイ、コンピュータ、レジスター、電卓、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電気・電子機器用部品、
(2)上記1の電気・電子機器用の筐体等として好適に用いることができる。
性能評価方法及び用いた成形材料を次に示す。
〔性能評価方法〕
(1)シルバー評価
射出成形機(東芝機械EC40N)を用いてシリンダ温度340℃において、シリンダ内で樹脂組成物を20分間滞留させた後、長さ40mm、幅80mm、厚さ4mmの試験片を成形した。
試験片の外観を目視してシルバーの発生の有無を評価し、試験片表面に、シルバーが生じた場合を×、シルバーが発生しなかった場合を○とした。
(2)曲げ強度(MPa)
射出成形機(東芝機械IS−100EN)を用い、シリンダ温度280℃、金型温度80℃で試験片を作製し、ASTM D790に準拠して測定した。
(3)引張降伏強度(MPa)
射出成形機(東芝機械IS−100EN)を用い、シリンダ温度280℃、金型温度80℃で試験片を作製し、ASTM D638に準拠して測定した。
(4)熱安定性評価(色差 ΔE)
射出成形機(東芝機械株式会社製 EC40N)にて、120℃で5時間の乾燥を行った樹脂組成物を使用し、シリンダ温度340℃、360℃において、シリンダ内で樹脂組成物を20分間滞留させた後、長さ40mm、幅80mm、厚さ4mmの試験片を成形した。20分間滞留前後の成形品の色差をSZ−Σ90(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
(5)IZOD(アイゾット衝撃強度)
120℃で5時間乾燥した原料ペレットを使用して、試験片を射出成形機(東芝機械株式会社製 IS−100EN、成形温度280℃、金型温度80℃)を用いて作製し、ASTM D256に準拠し23℃で測定した。
肉厚1/8インチの5本試験を行い、その平均値を示した。単位:kJ/m2
(6)燃焼性
UL94燃焼試験に準拠して測定した。
試験片厚みは1.5mm、1.2mmで、アンダーライターズラボラトリー・サブジェクト94に従って垂直燃焼試験を行った。
(A)成分
A−1:芳香族ポリカーボネート樹脂[出光興産(株)製、「FN1500」、Mv=14,500]
A−2:芳香族ポリカーボネート樹脂[出光興産(株)製、「FN1700A」、Mv=17,000]
A−3:芳香族ポリカーボネート樹脂[出光興産(株)製、「FN1900A」、Mv=19,500]
B−1:CR−60−2;ポリオールにより被覆された酸化チタン粒子(石原産業(株)製、平均粒子径 0.21μm)
B−2:CR−50−2;ポリオールにより被覆された酸化チタン粒子(石原産業(株)製、平均粒子径 0.25μm)
B−3:CR−90−2;ポリオールにより被覆された酸化チタン粒子(石原産業(株)製、平均粒子 0.25μm)
B−4:PF726;表面がシリカ・アルミナ(合計5〜6質量%)で被覆された酸化チタン粒子(石原産業(株)製、平均粒子径 0.21μm)
B−5:PC−3;PF−726をポリシロキサンで被覆したもの(石原産業(株)製、平均粒子径 0.21μm)
C−1:メトキシ変性シリコーンBY16−161(東レ・ダウコーニング社製)
(D)成分(タルク)
D−1:TP−A25(富士タルク工業社製;平均粒径;4.9μm)
(E)成分(難燃剤)
E−1:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(商品名:エフトップKFBS、株式会社ジェムコ製)
E−2:パラトルエンスルホン酸ナトリウム(DAH DIING CHEMICAL INDUSTRY製、純度93%以上、不純物として硫酸ナトリウム3質量%以下、水分5質量%以下〕
E−3:ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体型難燃剤(商品名:MR−01、株式会社カネカ製)
F−1:CD076(旭硝子株式会社製)
(G)成分(酸化防止剤)
G−1:JC263(城北化学工業株式会社製;トリフェニルホスフィン)
G−2:Irgafos168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)
G−3:Irganox1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
G−4:ADK Stab C(株式会社ADEKA製、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト)
(H)成分(カーボンブラック)
H−1:MA100(三菱化学株式会社製)
(I)成分(離型剤)
I−1:S−100A(理研ビタミン株式会社製;グリセリンモノステアレート)
I−2:EW−440A(理研ビタミン株式会社製;ペンタエリストールテトラステアレート)
表1〜3に示す割合で各成分を混合し、ベント式二軸押出成形機〔東芝機械社製:TEM35〕に供給し、バレル温度280℃、スクリュ回転数300〜600回転、吐出量30kg/hrにて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを得た。
この評価用ペレットサンプルを用いて、射出成形機にて、シリンダー温度280〜340℃で各試験を行うための試験片を作製し、各試験を行った。
その結果を表1〜3に示す。
実施例1乃至実施例15では全てシルバーの発生がなく、曲げ強度及び引張降伏強度のバランスに優れる成型品を与えるポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
比較例1〜12では、全てシルバーが発生した。
高温成形での熱安定性向上のためには、(E)成分としては、パラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩、特にパラトルエンスルホン酸ナトリウムが好ましく、(G)成分としては、ホスファイト系酸化防止剤が好ましい。
また、(I)成分を添加すると、衝撃強度が向上する。
更に、1.5mmV−0/1.5mm5VBの薄肉難燃性が達成された。
Claims (10)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、(B)ポリオールにより表面処理された酸化チタン粒子1〜22質量部、及び(C)メトキシ基を有するオルガノポリシロキサン0.01〜0.75質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物。
- (C)成分の量が(B)成分の2〜10質量%である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 更に、(D)無機充填材として、タルク及び/又はマイカを1〜8質量部含む請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 更に、(E)難燃剤として、パラトルエンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、並びに、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体型難燃剤から選ばれる少なくとも1種以上を0.01〜1質量部含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 更に、(F)含フッ素滴下防止剤を0.1〜0.7質量部含む請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 更に、(G)リン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤を0.01〜1質量部含む請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 更に、(H)カーボンブラックを0.00001〜0.1質量部含む請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
- 電気・電子機器用部品である請求項8に記載の成形品。
- 電気・電子機器用筐体である請求項9に記載の成形品。
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