JP2011171652A - 化合物半導体光吸収層の製造方法及び化合物半導体薄膜太陽電池の製造方法 - Google Patents

化合物半導体光吸収層の製造方法及び化合物半導体薄膜太陽電池の製造方法 Download PDF

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【課題】 シアン化カリウムによるエッチングを作業性良く行うことができ、且つ、均一にエッチングされた光吸収層を得ることが可能な化合物半導体光吸収層の製造方法を提供すること。
【解決手段】 シアン化カリウム水溶液を高吸水性高分子シートに含浸させてゲルシートを得る工程と、Ib族元素、IIIb族元素及びVIb族元素を含む化合物半導体又はCuZnSnSからなる層上に上記ゲルシートを密着させ、上記層をエッチングする工程と、上記ゲルシートを上記層から剥離する工程と、上記層を洗浄及び乾燥することにより、エッチングされた化合物半導体光吸収層を得る工程と、を有する、化合物半導体光吸収層の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は化合物半導体光吸収層の製造方法及び化合物半導体薄膜太陽電池の製造方法に関する。
普及が進んできているバルク結晶シリコン太陽電池に替わって、薄膜状の半導体層を光吸収層として用いる薄膜太陽電池の開発が進んでいる。中でも、Ib族とIIIb族とVIb族とを含むp型の化合物半導体層を光吸収層とする薄膜太陽電池は、高いエネルギー変換効率を示し、光による劣化の影響を受け難いことから、次世代の太陽電池として期待されている。特に、CIGS層やCIGSS層と呼ばれる、Cu(In,Ga1−x(Se,S1−y層(ここで、0<x<1、0<y≦1、0<i,jである。)を光吸収層として備えた薄膜太陽電池において、高い変換効率が得られている(例えば、下記特許文献1〜2参照)。
また、CIGSやCIGSS、CZTS(CuZnSnS)等の化合物半導体を光吸収層に用いた薄膜太陽電池において、この光吸収層を形成する際、そこに残留するセレン化銅や硫化銅などの低抵抗の副次生成物を除去するために、シアン化カリウム水溶液によるエッチングが広く行われている。
特表2009−515343号公報 特表平10−513606号公報
しかしながら、シアン化カリウム水溶液により光吸収層のエッチングを行う場合、シアン化カリウムが猛毒であることから、水溶液の取り扱い及び廃液処理が大変であるという問題がある。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、シアン化カリウムによるエッチングを作業性良く行うことができ、且つ、均一にエッチングされた光吸収層を得ることが可能な化合物半導体光吸収層の製造方法、及びそれを用いた化合物半導体薄膜太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、シアン化カリウム水溶液を高吸水性高分子シートに含浸させてゲルシートを得る工程と、Ib族元素、IIIb族元素及びVIb族元素を含む化合物半導体又はCuZnSnSからなる層上に上記ゲルシートを密着させ、上記層をエッチングする工程と、上記ゲルシートを上記層から剥離する工程と、上記層を洗浄及び乾燥することにより、エッチングされた化合物半導体光吸収層を得る工程と、を有する、化合物半導体光吸収層の製造方法を提供する。
かかる化合物半導体光吸収層の製造方法によれば、ゲルシートを用いてCIGSやCZTS光吸収層(エッチング前のCIGSやCZTS光吸収層)のエッチングを行うことにより、従来の方法と比較して廃液量を減少させることができ、且つ、作業を簡便化することができる。また、本発明の製造方法によれば、ゲルシートを用いることにより、CIGSやCZTS光吸収層を均一にエッチングすることができる。このように、本発明の製造方法によれば、シアン化カリウムによるCIGSやCZTS光吸収層のエッチングを作業性良く行うことができ、且つ、均一にエッチングされてセレン化銅、硫化銅などの低抵抗の副次生成物が十分に除去された化合物半導体光吸収層を得ることができる。
本発明はまた、上記本発明の化合物半導体光吸収層の製造方法により、上記化合物半導体光吸収層を形成する工程を有する、化合物半導体薄膜太陽電池の製造方法を提供する。
かかる化合物半導体薄膜太陽電池の製造方法によれば、上記本発明の化合物半導体光吸収層の製造方法により均一にエッチングされてセレン化銅や硫化銅などの低抵抗の副次生成物が十分に除去された化合物半導体光吸収層を形成することができるため、高変換効率で安定した特性を有する化合物半導体薄膜太陽電池を得ることができる。
本発明によれば、シアン化カリウムによる光吸収層のエッチングを作業性良く行うことができ、且つ、均一にエッチングされてセレン化銅や硫化銅などの低抵抗の副次生成物が十分に除去された化合物半導体光吸収層を得ることが可能な化合物半導体光吸収層の製造方法、及びそれを用いた化合物半導体薄膜太陽電池の製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法により製造される化合物半導体薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、本発明の製造方法により製造される化合物半導体薄膜太陽電池の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、太陽電池2は、ソーダライムガラス4(青板ガラス)と、ソーダライムガラス4上に形成された裏面電極層6と、裏面電極層6上に形成された化合物半導体光吸収層8と、光吸収層8上に形成された化合物半導体バッファ層10と、バッファ層10上に形成された半絶縁層12と、半絶縁層12上に形成された窓層14(透明導電層)と、窓層14上に形成された上部電極16(取り出し電極)と、を備える薄膜型太陽電池である。
ここで、光吸収層8は、Ib族元素(第11族元素)、IIIb族元素(第13族元素)及びVIb族元素(第16族元素)を含む化合物半導体、又は、CZTSと呼ばれるCuZnSnSで構成されるp型化合物半導体層である。ここで、Ib族元素としては、Cu、Ag及びAuが挙げられる。IIIb族元素としては、B、Al、Ga、In及びTlが挙げられる。VIb族元素としては、O、S、Se及びTeが挙げられる。
Ib族元素、IIIb族元素及びVIb族元素を含む化合物半導体として具体的には、CIGSやCIGSSと呼ばれるCu(In,Ga1−x(Se,S1−y、及び、Cu(In,Ga1−x(Se,S1−y中のGaをAlに変えた化合物半導体等が挙げられる。ここで、0<x<1、0<y≦1、0<i,jである。Cu(In,Ga1−x(Se,S1−yとして典型的には、i=1、j=2である化合物、i=3、j=5である化合物が挙げられる。Cuのモル比は1以下でも良く、例えば、0.60〜0.95であることができる。
また、InとGaとのモル比や、SeとSとのモル比を調整することにより、禁制帯幅Egを適宜制御することができる。
本実施形態において、光吸収層8は、CIGS又はCZTSで構成される層であることが好ましい。
以下、本発明の化合物半導体光吸収層の製造方法、及び、それを用いた本発明の化合物半導体薄膜太陽電池の製造方法の好適な実施形態として、上述した構造を有する太陽電池2を製造する場合を例に説明する。
本実施形態では、まず、ソーダライムガラス4上に裏面電極層6を形成する。裏面電極層6は、通常、Moから構成される金属層である。裏面電極層6の形成方法としては、例えばMoターゲットのスパッタリング等が挙げられる。
ソーダライムガラス4上に裏面電極層6を形成した後、化合物半導体光吸収層8を裏面電極層6上に形成する。光吸収層8は、以下の各工程を経て作製される。
まず、エッチング前の光吸収層として、Ib族元素、IIIb族元素及びVIb族元素を含む化合物半導体又はCuZnSnSからなる層を形成する。エッチング前の光吸収層の形成方法としては特に制限されないが、例えば、一段階同時蒸着法(ワンステップ法)、三段階同時蒸着法(NREL法)、固相セレン化法又は気相セレン化法等が挙げられる。
次に、シアン化カリウム水溶液を高吸水性高分子シートに含浸させてゲルシートを作製する。ここで、シアン化カリウム水溶液の濃度は、光吸収層に残留するセレン化銅や硫化銅などの低抵抗の副次生成物を十分に除去する観点から、0.1〜10Mとすることが好ましく、0.5〜4Mとすることがより好ましい。
高吸水性高分子シートは、水を吸収して膨潤する性質を有する高吸水性高分子をシート状に形成したものである。この高吸水性高分子をホストとし、これに上記シアン化カリウム水溶液を含浸させることでゲル化させることができる。高吸水性高分子としては、例えば、水溶性高分子を不溶化したものとして、セルロースアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、セルロースサルフェート、ヘパリン、ペクチン、アルギン酸、ヒドロキシメチルセルロース、イソプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド等の熱処理物や架橋物、あるいはこれら水溶性高分子のうち2種以上の高分子を架橋して得られた共重合体を用いることができる。例えば、水溶性高分子がポリビニルアルコールの場合、架橋剤としてほう酸を添加することにより、水溶性高分子同士が2次架橋して擬固体化状態となり、強度を高めることができる。
また、水によって殆ど膨潤しない非水溶性高分子であっても、水溶性高分子と適当な分率で共重合し、水中での膨潤度を向上させることにより、高吸水性高分子として用いることができる。こうした非水溶性高分子としては、例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
また、光架橋性のモノマーを水溶性高分子溶液に溶解させておき、製膜後に光照射して架橋構造を作ることで、高吸水性高分子シートを得ることもできる。これらの高分子としては、例えば、光架橋性ポリビニルアルコール、光架橋性ポリエチレンオキシド、光架橋性ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
更に、水溶性高分子に対して、イオン性高分子としてポリビニルスルホン酸やポリスチレンスルホン酸、ナフィオン(登録商標)等をコーティングしたものを高吸水性高分子として用いることもできる。
ゲルシートに使用する高吸水性高分子シートの厚さは、光吸収層に残留するセレン化銅や硫化銅などの低抵抗の副次生成物を十分に除去する観点から、ゲル化後の厚さで、0.05〜5mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましい。
ゲルシートにおいて、高吸水性高分子シートへのシアン化カリウム水溶液の含浸量は、高吸水性高分子シート1質量部に対して0.5〜100質量部とすることが好ましく、5〜20質量部とすることがより好ましい。
次に、エッチング前の光吸収層上にゲルシートを密着させ、光吸収層のエッチングを行う。光吸収層上にゲルシートを密着させる時間は、光吸収層に残留するセレン化銅や硫化銅などの低抵抗の副次生成物を十分に除去する観点から、2秒〜5分間とすることが好ましく、5秒〜2分間とすることがより好ましい。
その後、ゲルシートを光吸収層から剥離し、光吸収層を洗浄及び乾燥することにより、エッチングされた光吸収層8が得られる。洗浄は、蒸留水等を用いて行う。乾燥は、洗浄に使用した蒸留水等を十分に除去できる温度及び時間で行う。
エッチングされた光吸収層8の形成後、該光吸収層8上に、n型化合物半導体層であるバッファ層10を形成する。バッファ層10としては、例えば、CdS層、Zn(S,O,OH)層、ZnMgO層又はZn(O,S1−x)層(xは1未満の正の実数)等が挙げられる。CdS層及びZn(S,O,OH)層は、化学溶液成長法(Chemical Bath Deposition)により形成することができる。ZnMgO層は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等の化学蒸着法又はスパッタリングにより形成することができる。Zn(O,S1−x)層はALD法(Atomic layer deposition)により形成することができる。
バッファ層10の形成後、バッファ層10上に半絶縁層12を形成し、半絶縁層12上に窓層14を形成し、窓層14上に上部電極16を形成する。これにより、太陽電池2が得られる。なお、窓層14上にMgFから構成される反射防止層を形成してもよい。
半絶縁層12としては、例えばi−ZnO層等が挙げられる。窓層14としては、例えばZnO:B又はZnO:Al等が挙げられる。上部電極16は例えばAl又はNi等の金属から構成される。半絶縁層12、窓層14及び上部電極16は、例えばスパッタリング又はMOCVD等によって形成することができる。
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<CIGS光吸収層の作製>
0.1Mシアン化カリウム(KCN)水溶液を、ポリビニルアルコール製の高吸水性高分子シートに含浸させ、厚さ2mmのゲルシートを作製した。このゲルシートを、多元蒸着法により形成したCIGS(Cu0.75In0.7Ga0.3Se)層上に密着させた。その1分後、ゲルシートをCIGS層上から剥離除去し、CIGS層を蒸留水で洗浄した後、乾燥させて、表面が均一にエッチングされたCIGS光吸収層を得た。
得られたCIGS光吸収層についてX線回折(XRD)測定を行ったところ、エッチング前にXRDで認められたセレン化銅のピークが、ゲルシートを用いたエッチングにより消滅したことが確認された。
<太陽電池の作製>
ゲルシートによりエッチングした上記CIGS光吸収層上に、化学溶液成長法によりCdSバッファ層を形成した。さらに、このCdSバッファ層上に、スパッタリングにより半絶縁層であるi−ZnO層と、窓層であるZnO:Al層とを形成し、蒸着法によりAl上部電極を形成して太陽電池を得た。
面積0.5cmに区切った太陽電池セルに対し、ソーラーシミュレーターを用いて、Air Mass 1.5、光強度100mW/cmの光を照射し、I−V測定を行った。その結果、13.2%の変換効率を示した。
(実施例2)
CIGS層に代えて、多元蒸着法により形成したCZTS(Cu0.9Zn1.1Sn0.9)層を用いた以外は実施例1と同様にして、表面が均一にエッチングされたCZTS光吸収層を得た。得られたCZTS光吸収層についてX線回折(XRD)測定を行ったところ、エッチング前にXRDで認められた硫化銅のピークが、ゲルシートを用いたエッチングにより消滅したことが確認された。
このCZTS光吸収層を用いて、実施例1と同様にして太陽電池を作製し、同様のI−V測定を行った。その結果、5.2%の変換効率となった。
(比較例1)
ゲルシートを用いたエッチングを行わなかった以外は実施例1と同様にして、CIGS光吸収層を形成した。このCIGS光吸収層を用いて、実施例1と同様にして太陽電池を作製し、同様のI−V測定を行った。その結果、8.3%の変換効率となった。
(比較例2)
ゲルシートを用いたエッチングを行わなかった以外は実施例2と同様にして、CZTS光吸収層を形成した。このCZTS光吸収層を用いて、実施例2と同様にして太陽電池を作製し、同様のI−V測定を行った。その結果、3.6%の変換効率となった。
2…太陽電池、4…ソーダライムガラス、6…裏面電極層、8…化合物半導体光吸収層、10…化合物半導体バッファ層、12…半絶縁層、14…窓層(透明導電層)、16…上部電極(取り出し電極)。

Claims (2)

  1. シアン化カリウム水溶液を高吸水性高分子シートに含浸させてゲルシートを得る工程と、
    Ib族元素、IIIb族元素及びVIb族元素を含む化合物半導体又はCuZnSnSからなる層上に前記ゲルシートを密着させ、前記層をエッチングする工程と、
    前記ゲルシートを前記層から剥離する工程と、
    前記層を洗浄及び乾燥することにより、エッチングされた化合物半導体光吸収層を得る工程と、
    を有する、化合物半導体光吸収層の製造方法。
  2. 請求項1記載の化合物半導体光吸収層の製造方法により、前記化合物半導体光吸収層を形成する工程を有する、化合物半導体薄膜太陽電池の製造方法。

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