JP2011169435A - ボールねじ - Google Patents

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Abstract

【課題】 高速で使用される際のボールすくい上げ部とねじ軸との接触の問題を解決し、回転性能低下の防止と滑らかなボール循環とを両立することができるボールねじを提供する。
【解決手段】 ボールすくい上げ部20のねじ軸1に対向する面に、摩擦係数を低減するコーティング層21が設けられている。ボールすくい上げ部20のねじ軸1に対向する面とねじ軸1とのクリアランスが0.1mm以下に設定されている。
【選択図】 図3

Description

この発明は、ボールねじに関し、特に、高速での使用に適したボールねじに関する。
ボールねじとして、ねじみぞが外周面に形成されたねじ軸の外側に、ねじみぞが内周面に形成されたナットがはめられ、両ねじみぞにより形成されたボール通路に複数のボールが配設されるとともに、ねじ軸のねじみぞ内に突出してボールをすくい上げるボールすくい上げ部が設けられたエンドキャップ(ボール循環部材)がナットに着脱可能に取り付けられたものが知られている(特許文献1)。
特開2004−84743号公報
このようなボールねじは、種々の用途で使用されており、例えば、サスペンション用として使用されているものでは、ねじ軸の速度が非常に速く、ボールねじ内のボールが高速で循環するため、ねじみぞから循環部へボールを旋回させるためのエンドキャップのボールすくい上げ部がボールとの衝突で変形して、スムーズな循環ができなくなる可能性がある。
エンドキャップのボールすくい上げ部は、ナット内から飛び出したボールを滑らかにすくい上げるため、できるだけねじ軸のねじみぞの底に近いところに先端が位置する方がよいが、寸法精度上、ねじ軸との干渉を避けるためのクリアランスが必要であり、先端がみぞ底から浮いていることで、ボールがボールすくい上げ部先端に衝突することになる。この衝突時の力によって、ボールすくい上げ部がねじ軸に接触すると、摩擦による回転性能低下が生じる。
この発明の目的は、高速で使用される際のボールすくい上げ部とねじ軸との接触の問題を解消し、回転性能低下の防止と滑らかなボール循環とを両立することができるボールねじを提供することにある。
この発明によるボールねじは、ねじみぞが外周面に形成されたねじ軸と、ねじ軸が通されてねじ軸のねじみぞに対応するねじみぞが内周面に形成されたナットと、ねじ軸のねじみぞとナットのねじみぞにより形成されるボール通路に配設された複数のボールとを備えているボールねじにおいて、ねじ軸のねじみぞ内に突出してボールをすくい上げるボールすくい上げ部が設けられたボール循環部材がナットに着脱可能に取り付けられており、ボールすくい上げ部のねじ軸に対向する面に、コーティング層が設けられていることを特徴とするものである。
コーティング層は、特に限定されないが、例えば、鋼製のボール循環部材にナイロンコーティング、フッ素樹脂コーティングなどを施したものとされる。
このコーティング層により、ボールすくい上げ部とねじ軸との間の摩擦係数が小さいものとなっているので、高速で循環するボールからの力を受けてボールすくい上げ部先端が変形してねじ軸と接触しても、摩擦による回転性能低下が抑えられる。また、ボールすくい上げ部先端がねじ軸と接触することで、それ以上の変形が抑えられるので、ボールすくい上げ部先端の塑性変形が防止される。したがって、ボールすくい上げ部のねじ軸に対向する面とねじ軸とのクリアランスを小さく設定することができ、これにより、ボールがボールすくい上げ部によって滑らかにすくい上げられて、滑らかなボール循環が確保される。
ボールねじナットは、例えば、ボール循環部材がエンドキャップとされたエンドキャップ式(ナットのねじ軸方向両端面に1対のエンドキャップが設けられ、ねじみぞの径方向外側において周壁を貫通する戻し通路がナットに形成され、エンドキャップのナット側の端面に、主通路と戻し通路とを連通させるみぞ状の方向転換路が形成されているもの)とされる。エンドキャップ式ボールねじナットでは、エンドキャップに、ねじ軸のねじみぞ内に突出してボールをすくい上げるボールすくい上げ部が設けられる。
ナットは、エンドキャップ式の他、ナットに取り付けられたチューブによりボールを循環させるチューブ式とされてもよく、チューブ式のものでは、チューブの先端部が、ねじ軸のねじみぞ内に突出してボールをすくい上げるようになっており、これがボールすくい上げ部とされる。
ボールすくい上げ部のねじ軸に対向する面とねじ軸とのクリアランスが0.1mm以下に設定されていることが好ましい。従来のものでは、クリアランスを大きくとることで、ボールすくい上げ部先端が変形しても、ねじ軸と接触しないようになされていたが、コーティング層によって、ねじ軸との接触が許容されることから、クリアランスを小さくすることができ、これにより、ナットから高速で飛び出したボールを滑らかにすくい上げることができる。
ボールすくい上げ部の接線方向とねじ軸の接線方向とのなす角(逃げ角)θは、3〜10°とされることが好ましい。このようにすると、ボールすくい上げ部の先端が接触した場合の接触面積を小さくすることができ、摩擦による回転性能低下がより確実に抑えられる。
この発明によるボールねじは、ねじ軸の外周面に直線状スプラインみぞが形成されており、ねじ軸が通されてねじ軸のスプラインみぞに対応するスプラインみぞが形成された外筒と、ねじ軸と外筒との間に配設された複数のボールとをさらに備えていることがある。このようなスプライン付きボールねじでは、ねじ軸にスプラインみぞが形成されることで、ボールすくい上げ部とねじ軸との干渉が起こりやすくなっており、また、サスペンション用などとして高速で使用されることから、上記構成を有しているものとすることで、この用途に適したものとできる。
ねじ軸およびナットは、例えば、S45C,S55Cなどの炭素鋼製あるいはSAE4150鋼製とされ、また、ボールは、例えば、軸受鋼(SUJ2)製とされる。ナットは、軸受鋼(SUJ2)製としてもよい。
この発明のボールねじによると、ねじ軸のねじみぞ内に突出してボールをすくい上げるボールすくい上げ部のねじ軸に対向する面に、摩擦係数を低減するコーティング層が設けられているので、ボールすくい上げ部先端が変形してねじ軸と接触しても、摩擦による回転性能低下が抑えられる。これにより、高速で使用される際のボールすくい上げ部とねじ軸との接触の問題がなくなって、ボールすくい上げ部のねじ軸に対向する面とねじ軸とのクリアランスを小さく設定することができ、回転性能低下の防止と滑らかなボール循環とを両立させることができる。
図1は、この発明の実施形態を示すボールねじ(ボールスプライン付きボールねじ)の主要部の縦断面図である。 図2は、図1のII−II線の断面図である。 図3は、図2の要部拡大断面図である。
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
図1はボールねじの主要部の縦断面図、図2はその横断面図、図3は図2の要部拡大断面図である。
ボールねじは、左右方向にのびる鋼製ねじ軸(1)、ねじ用ナット(2)、ボールスプライン(3)、多数のねじ用ボール(4)および多数のスプライン用ボール(5)を備えている。
ねじ軸(1)は横断面円形の中実ねじ軸であり、ねじ軸(1)の外周面に、1条のねじみぞ(おねじみぞ)(6)と、ねじ軸方向(左右方向)にのびる複数の直線状スプラインみぞ(7)が形成されている。
ねじ用ナット(2)は、円筒状の金属製ナット本体(8)と、ナット本体(8)のねじ軸方向両端面に取り付けられた1対の環状の合成樹脂製エンドキャップ(9)とを備えている。エンドキャップ(9)は、互いに同一形状の短円筒状の環体よりなり、ナット本体(8)のねじ軸方向両端面にボルト(17)などの連結具を用いて固定されている。ねじ用ナット(2)は、ねじ軸(1)の外周に径方向に若干の隙間をあけてはめられている。
ナット本体(8)の内周面に、おねじみぞ(6)に対応する1条のねじみぞ(めねじみぞ)(10)が形成されている。ナット本体(8)のめねじみぞ(10)とこれに対向するねじ軸(1)のおねじみぞ(6)との対向空間が、ねじ用ボール(4)が転動する主通路(11)となっている。ナット本体(8)の周壁の1箇所に、戻し通路(12)が形成されている。戻し通路(12)は、ナット本体(8)をねじ軸方向全長にわたって貫通する断面円形の貫通穴よりなる。
各エンドキャップ(9)のナット本体(8)側の端面に、主通路(11)と戻し通路(12)を連通させるみぞ状の方向転換路(13)が形成されている。
方向転換路(13)は、ナット(2)回転方向とは逆方向にのびかつ徐々に径が大きくなる曲線状に形成されている。方向転換路(13)の内周側には、ねじ用ボール(4)をおねじみぞ(6)からすくい上げて方向転換路(13)内に導くためのボールすくい上げ部(20)が形成されている。ボールすくい上げ部(20)は、おねじみぞ(6)の底に接触しないように、おねじみぞ(6)内に突出している。
ボールすくい上げ部(20)のねじ軸(1)に対向する面に、摩擦係数を低減するコーティング層(21)が設けられている。コーティング層(21)は、例えばフッ素樹脂コーティングが施されたものとされ、このコーティング層(21)により、ボールすくい上げ部(20)とねじ軸(1)との間の摩擦係数が小さいものとなっている。
ねじ用ボール(4)は、主通路(11)、戻し通路(12)および方向転換路(13)内に配設され、主通路(11)を転動するねじ用ボール(4)がねじ軸(1)とねじ用ナット(2)の相対回転を案内するようになっている。主通路(11)、戻し通路(12)および方向転換路(13)により、ねじ用ボール循環路が構成されている。
ボールスプライン(3)は、略円筒状の外筒(14)と、外筒(14)の内周に固定された略円筒状の保持器(15)とを備えている。ボールスプライン(3)は、ねじ軸(1)の外周に径方向に若干の隙間をあけてはめられている。
外筒(14)の内周面に、ねじ軸(1)のスプラインみぞ(7)に対応する複数の直線状スプラインみぞ(16)が形成されており、両スプラインみぞ(7)(16)間の空間が、スプライン用ボール(5)が転動する主通路(18)となっている。保持器(15)には、外筒(14)との間に、主通路の左右両端部と連通する戻し通路(19)が形成されている。
スプライン用ボール(5)は、主通路(18)および戻し通路(19)内に配設され、主通路(18)を転動するスプライン用ボール(5)がねじ軸(1)とボールスプライン(3)の相対直線運動を案内するようになっている。主通路(18)および戻し通路(19)により、スプライン用ボール循環路が構成されている。
上記のボールねじは、たとえば、ボールスプライン(3)をねじ軸方向の一定位置に回転も移動もしないように固定し、ねじ用ナット(2)をねじ軸方向の一定位置において回転はするが移動はしないように支持した状態で使用される。
上記の状態で、ねじ用ナット(2)を回転させることにより、ねじ軸(1)がボールスプライン(3)を案内にして、回転はせずに、ねじ軸方向に直線移動する。このとき、ねじナット(2)の部分では、主通路(11)を転動していたねじ用ボール(4)が、一方のエンドキャップ(9)の方向転換路(13)で方向転換されてナット本体(8)の戻し通路(12)に導入され、戻し通路(12)内を他方のエンドキャップ(9)側に移動し、戻し通路(12)を移動してきたねじ用ボール(4)が、他方のエンドキャップ(9)の方向転換路(13)で方向転換されて、主通路(11)に導入される。これにより、ねじ用ボール(4)は、ねじ用ボール循環路を循環させられる。ボールスプライン(3)の部分では、主通路(18)を転動していたスプライン用ボール(5)が、主通路(18)の一端部から戻し通路(19)に導入されて、戻し通路(19)内を主通路(18)の他端部側に移動し、主通路(18)の他端部に導入される。これにより、スプライン用ボール(5)が、スプライン用ボール循環路を循環させられる。
エンドキャップ(9)の方向転換路(13)におけるねじ用ボール(4)は、ボールすくい上げ部(20)によってすくい上げられることで、滑らかなボール循環が維持されるようになっている。ここで、図3に拡大して示すように、ボールすくい上げ部(20)のねじ軸(1)に対向する面とねじ軸(1)との間には、干渉を避けるためのクリアランスCが設けられている。言い換えると、ボールすくい上げ部(20)の先端は、ねじ軸(1)のおねじみぞ(6)の底から浮いており、ねじ用ボール(4)がボールすくい上げ部(20)先端に衝突するようになっている。この衝突時の力によって、ボールすくい上げ部(20)がねじ軸(1)に接触すると、摩擦による回転性能低下が生じる。接触を避けるためには、クリアランスCを大きくすればよいが、この場合には、ボールすくい上げ部(20)によるすくい上げがスムーズに行えなくなり、滑らかなボール循環が阻害されるという問題が生じる。
そこで、この発明によるボールねじでは、クリアランスCについては、0.1mm以下とされて、ねじ軸(1)との接触を許容するように設定されるとともに、上述のように、ボールすくい上げ部(20)のねじ軸(1)に対向する面にコーティング層(21)が設けられている。
コーティング層(21)によると、高速で循環するねじ用ボール(4)からの力を受けてボールすくい上げ部(20)先端が変形してねじ軸(1)と接触しても、ボールすくい上げ部(20)とねじ軸(1)との間の摩擦係数が小さいものとなっているので、摩擦による回転性能低下が抑えられる。また、ボールすくい上げ部(20)先端がねじ軸(1)と接触することで、それ以上の変形が抑えられるので、ボールすくい上げ部(20)先端の塑性変形が防止される。
こうして、コーティング層(21)によって、ボールすくい上げ部(20)のねじ軸(1)に対向する面とねじ軸(1)とのクリアランスCを小さくすることのデメリットが解消され、クリアランスCを小さく設定することにより、ねじ用ボール(4)がボールすくい上げ部(20)によって滑らかにすくい上げられて、滑らかなボール循環が確保される。すなわち、高速で使用される際のボールすくい上げ部(20)とねじ軸(1)との接触の問題が解消し、回転性能低下の防止と滑らかなボール循環とを両立させたボールねじが得られる。
図3において、θは、ボールすくい上げ部の接線方向とねじ軸の接線方向とのなす角(逃げ角)であり、この逃げ角θは、0よりも大きい値、例えば3〜10°とされる。このようにすると、ボールすくい上げ部(20)の先端が接触した場合、接触範囲が先端部分に限定され、ボールすくい上げ部(20)とねじ軸(1)との接触面積を小さくすることができ、摩擦による回転性能低下がより確実に抑えられる。
なお、上記において、ねじみぞ(6)(10)を1条としているが、ねじみぞが多条であってもよいことはもちろんである。
また、上記実施形態には、エンドキャップ式のねじ用ナット(2)を示したが、この発明は、チューブがボール循環部材とされて、その先端部がねじ軸のねじみぞ内に突出してボールをすくい上げるようになっており、これがボールすくい上げ部とされるチューブ式ボールねじにも適用できる。
(1) ねじ軸
(2) ナット
(4) ボール
(9) エンドキャップ(ボール循環部材)
(6) おねじみぞ
(8) 主通路(ボール通路)
(10) めねじみぞ
(20) ボールすくい上げ部
(21) コーティング層

Claims (2)

  1. ねじみぞが外周面に形成されたねじ軸と、ねじ軸が通されてねじ軸のねじみぞに対応するねじみぞが内周面に形成されたナットと、ねじ軸のねじみぞとナットのねじみぞにより形成されるボール通路に配設された複数のボールとを備えており、ねじ軸のねじみぞ内に突出してボールをすくい上げるボールすくい上げ部が設けられたボール循環部材がナットに着脱可能に取り付けられているボールねじにおいて、
    ボールすくい上げ部のねじ軸に対向する面に、摩擦係数を低減するコーティング層が設けられていることを特徴とするボールねじ。
  2. ボールすくい上げ部のねじ軸に対向する面とねじ軸とのクリアランスが0.1mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1のボールねじ。
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