JP2011162822A - 耐摩耗性に優れたパーライトレール及びその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性に優れたパーライトレール及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】重荷重鉄道で使用されるレールにおいて、頭部の耐摩耗性と延性を同時に向上させることを目的としたパーライトレールを提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.65〜1.20%、Cu:0.3〜2.0%を含有し残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、パーライト組織のフェライト相中の固溶Cu量が0.25%以下であり、頭頂部の硬度が340Hv以上であることを特徴とする耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
【選択図】図2

Description

本発明は、重荷重鉄道で使用されるレールにおいて、頭部の耐摩耗性と延性を同時に向上させることを目的としたパーライトレールに関するものである。
海外の重荷重鉄道では、鉄道輸送の高効率化を図るため、貨物の高集積化を進めており、特に急曲線のレールでは、G.C.部や頭側部の耐摩耗性が十分確保できず、磨耗によるレール使用寿命の低下が問題となってきた。このような背景から、現用の共析炭素鋼含有の高強度レール以上の耐摩耗性を有するレールの開発が求められている。
一方、鉄鋼材料はその再利用が進展し、鉄スクラップを材料とし、また材料の一部として溶解し、必要に応じて不純物を取り除き、スラブを製造し、より低いコストでの鋼材製品の製造が行われている。Cuはこの過程で取り除くことが難しい元素の一つであり、トランプエレメントとして知られている。
Cuを含有したレールは特許文献1に記載されているように疲労損傷を抑制する効果があり、パーライト組織中のセメンタイト相とフェライト相中Cuの存在比率を規定することによって耐表面損傷性に優れたレールが特許文献1に開示されている。また、特許文献2や特許文献3に記載されているように、Cuを添加することによって、固溶強化によりレールの高強度化が図れる。さらに、特許文献4に記載されているように、Cuはフェライトの靭性を向上させるのに有効な元素とされている。しかし反面、特に海外の重荷重鉄道では、耐磨耗性が重要視されており、この点でCuを含有したレールは好ましいものではなかった。
しかし、Cuがパーライト中に存在することによる耐摩耗性低下の機構は、従来明らかではなく、Cu含有鋼レールにおいて、Cuの存在状態の一つである析出を認識した上での規定は今までなされておらず、Cu含有鋼レールにおける実用上の課題となっていた。
特開2003−129182号公報 特開2008−138241号公報 特開2009−108397号公報 特開2005−146346号公報
このような背景から、Cuを含有したパーライトレールにおいて、パーライト組織の耐磨耗性を向上させ、同時に延性を向上させた耐磨耗性に優れたレールが望まれるようになった。一方、鋼材の低コスト化、スクラップ利用の観点から、将来に渡って、耐磨耗性に悪影響を及ぼすトランプエレメントのCuを含有する鋼材が利用され始めている。また、レール硬度(強度)を上昇させるために、意図的にCuを添加した鋼材も利用されている。そこで本発明は、上述した問題点に鑑み案出されたものであり、その目的とするところは、重荷重鉄道のレールで要求される、頭部の耐磨耗性と延性をCu含有鋼においても、同時に向上させることにある。
本発明者は、レール中のCuの耐磨耗性に及ぼす影響を詳細に解析した結果、Cuの鋼中の存在状態として析出と固溶があり、パーライト組織中に析出したCuは、ほとんど耐磨耗性に影響を与えず、固溶したCuのみが耐磨耗性を劣化させる効果があることが判った。しかも、この効果は、パーライト組織中のセメンタイト相(セメンタイトラメラ)中ではなく、フェライト相(フェライトラメラ)中に固溶したCuによってのみ影響を受けることがわかった。すなわち、摩耗性はパーライト組織のフェライト相中のCuの固溶量によって支配される。この新知見を使えば、従来から行われている、耐磨耗性に及ぼすCuの影響をCuの含有量で表記することは正しくなく、パーライト組織中のフェライト相中の固溶量で記述する必要がある。同じ含有量であっても、Cuの存在状態によっては、耐磨耗性に大きな違いが現れることになる。この新知見に基づけば、パーライト組織中のCuを無害化する方法も提案できる。
本発明は、前記課題を解決するために、以上の新知見に基づきなされたものであり、その要旨とするところは、以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.65〜1.20%、Cu:0.3〜2.0%を含有し残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、パーライト組織のフェライト相中の固溶Cu濃度が0.25%以下であり、頭頂部の硬度が少なくとも340Hvであることを特徴とする耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(2)質量%で、C:0.65〜1.20%、Cu:0.3〜2.0%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.05〜2.0%を含有し残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、パーライト組織のフェライト相中の固溶Cu濃度が0.25%以下であり、頭頂部の硬度が少なくとも340Hvであることを特徴とする耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(3)質量%でさらに、Cr:0.05〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(4)質量%でさらに、V:0.005〜0.50%、Nb:0.002〜0.050%の1種または2種を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(5)質量%でさらに、B:0.0001〜0.0050%を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(6)質量%でさらに、Co:0.01〜2.00%を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(7)質量%でさらに、Ni:0.01〜3.00%を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(8)質量%でさらに、Ti:0.0050〜0.0500%を含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(9)質量%でさらに、Mg:0.0005〜0.0300%を含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(10)質量%でさらに、Ca:0.0005〜0.00150%を含有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(11)質量%でさらに、Al:0.025〜3.00%を含有することを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載の鋼レールを製造するに際し、450℃〜550℃の加熱温度で0.5h〜24hの後熱処理を施すことを特徴とする耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレールの製造方法。
本発明によれば、Cuを含有したパーライト組織の鋼レールにおいて、延性及び耐磨耗性に優れたレールを提供できるものである。鋼中にCuを多量に含有していても、特定の熱処理を施すことによって、耐磨耗性を改善する方法、すなわち、耐磨耗性に悪影響を及ぼすCuを無害化し、耐磨耗性に優れたCuを含有したレールを製造する方法を提供できるものである。
レールパーライト組織中のCuの分布を示す模式図である。 パーライト中のCuの各存在状態におけるCu量とレールの磨耗量の関係を示す図である。(a)フェライト相中に固溶、(b)セメンタイト相中に固溶、(c)フェライト相/セメンタイト相界面に析出、(d)フェライト相中に析出した状態での図である。
まず本発明者は、Cu含有による耐磨耗性の劣化現象の原因を明らかにするために、レール中のCuがどのような状態でどこに存在し、どのような挙動で耐磨耗性を低下させているかについて、使用前レール、使用済みレールを詳細に調べた。レール中のCuの存在位置及び存在状態を定量的に調べるためには、通常の解析手法では難しいため、3次元アトムプローブ(3DAP)法を用いた。この方法では、鋼レールの構成原子を1個1個カウントし、元素種を割り出し、同時に鋼材中の存在位置を原子間隔レベルの空間分解能をもって調べることができる。反面、鋼材中の調べたい部分から試料を作製せねばならず、また針の破壊は頻繁に起こる問題もあり観察は難しい。
図1にはCuを含有したパーライトレールの3DAPによる元素マップの模式図を示す。Cuはパーライト組織のフェライト相とセメンタイト相に分配して存在しており、存在状態としては、(1)フェライト相中に固溶、(2)セメンタイト相中に固溶、(3)フェライト相/セメンタイト相界面に析出、(4)フェライト相中に析出の4形態に分類できる。今までの知見では、これらのCuの存在状態のいずれが、耐磨耗性に悪影響を及ぼすかについては明らかにされていなかった。
そこで、熱処理等を工夫することで、前述したCuの存在状態を変化させたパーライトレールを作製し、磨耗試験と組織観察から、各状態のどれが耐磨耗性に強く影響を与えるかを調べた。
耐磨耗性の評価には、西原式磨耗試験機を用い、接触面圧640MPa、すべり率20%にて、70万回の繰り返し回数での磨耗量を比較した。一方、レール中のCuの存在状態は、Cuの添加量を変化させるだけではなく、オーステナイト相からの冷却速度を変化させる等して、パーライト変態温度や変態時間を変えたり、また変態の後に、Cuの析出熱処理をパーライト組織が球状化しない温度領域で実施するなどしてCuの存在状態の異なる試料を製作した。但し、耐摩耗性の観点から、レール頭頂部硬度を340Hv以上とした。このCuの存在状態(析出、固溶)は3DAPによって詳細に調べ、耐磨耗性との関係を調べた。
図2にこれらの結果を示す。Cu含有鋼レールの耐磨耗性は、レール中のCuの含有量に依存するのではなく、パーライト中のCuの存在状態に強く影響を受けることが示される。記載したパーライトレール中のCu存在状態のうち、フェライト相中の固溶量のみが、磨耗量と直接、比例相関があることがわかった。すなわち、Cu含有による耐磨耗性の低下は、フェライト相中のCuの固溶量が高いほど顕著になることが判った。
この原因として、フェライト相中のCu固溶量が大きいほど、フェライト粒界のCuの偏析量が大きくなり、この粒界が摩耗による破壊起点として作用する可能性や、摩耗によって導入されたパーライト中の欠陥位置にCuが不均一な偏析を示し、これが、破壊起点として作用する可能性等が考えられるが、まだ明らかではない。
この新しい知見を基に、鋼中のCu含有による耐磨耗性の劣化を抑制するための規定量を設定することがでる。またCuを含有した鋼材においても、Cuの含有量を減らさずに、Cuの存在状態を変化させる処理を行うことで、耐磨耗性を向上することが可能となる。これは、Cuを意図的に析出させることにより、フェライト相中の固溶Cu量を低下させることにより耐磨耗性を向上させる方法である。
以下に本発明の限定範囲の理由を述べる。
(1)フェライト領域中のCu固溶濃度の限定理由
図2に示した結果より、フェライト相中の固溶Cu濃度が0.25%以下であれば耐磨耗性にそれほど悪影響を与えないことが判る。0.25%より高くなると、耐磨耗性の低下が顕著になり、濃度が高いほど、その程度は大きくなる。これより、フェライト相中のCu固溶量の上限を質量%で0.25%、より好ましくは0.20%とした。固溶Cuはセメンタイト相中にも存在し、また析出Cuとしてフェライト相中及びフェライト相/セメンタイト相界面にも存在するが、それらは耐磨耗性に直接影響を与えないため、それらの値は限定しない。同様に、従来報告の多くが、Cu含有量を規定しているが、パーライト組織中のCuはこれら4種類の状態を持つため、Cu含有量のみで耐磨耗性との関係を規定することは好ましくはない。
(2)鋼化学成分の限定理由
本発明の鋼線の成分組成に以下の理由で限定を加えても良い。なお、以下に示す「%」は特に説明がない限り「質量%」を意味するものとする。
Cは、パーライト変態促進させて、かつ、耐磨耗性を確保する有効な元素である。C量が0.65%未満では、レールに要求される最低限の強度や耐磨耗性が維持できない。また、C量が1.20%を超えると、粗大な初析セメンタイト組織が多量に生成し、耐磨耗性や延性が低下する。このため、C添加量を0.65%〜1.20%に限定した。なお、C量を0.90%以上にすると、耐磨耗性がより一層向上し、レールの使用寿命がより一段と改善する。
Cuは、フェライト組織やパーライト組織に固溶または析出し、固溶強化や析出強化により、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、反面、耐磨耗性を低下させる作用がある。前に述べたように、パーライト組織中のフェライト相への固溶量が高いほど、耐磨耗性を低下させる。フェライト相中の固溶量が0.25%以下より好ましくは0.2%以下であれば、実質的にこの影響は除去できることは前に述べた。一方で、鋼材のスクラップの再利用の観点からCuを含有する可能性は高く、さらにまた、固溶強化元素としての利用や耐表面損傷性の観点等から、意図的にCuを添加する場合もある。この意味でCu含有量を0.3%以上とした。またCuが2.0%を超えると、製造プロセスや後熱処理の工夫によっても、フェライト相中の固溶量を0.25%以下に制御することが難しくなる。また、焼き入れ性が極端に増加し、パーライト組織中にマルテンサイト組織が生成し易くなり、レールの靭性を低下させることになる。従って、Cu含有量を0.3〜2.0%に限定した。
また上記の成分組成で製造させるレールは、パーライトの組織や初析フェライト組織の硬度(強度)の向上、延性の向上、溶接熱影響部の軟化の防止、レール頭部内部の断面硬度分布の制御を図る目的で、Si、Mn、Cr、Mo、V,Nb、B、Co、Ni、Ti、Mg、Ca、Alの元素を必要に応じて添加する。
Siは、脱酸材として必要な成分である。また、パーライト組織中のフェライト相への固溶強化によりレール頭部の硬度(強度)を向上させる元素である。さらに、過共析鋼において、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、延性の低下を抑制し、延性の低下を抑制する元素である。しかし、Si量が0.05%未満では、これらの効果が十分に期待できない。またSi量が2.0%を超えると、熱間圧延時に表面瑕が多く生成することや、酸化物の生成により溶接性が低下する。さらに、焼入れ性が著しく増加し、レールの耐磨耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成する。このためSi量を0.05〜2.0%に限定した。
Mnは、焼入れ性を高め、パーライトラメラ間隔を微細化することにより、パーライト組織の硬度を確保し、耐磨耗性を向上させる元素である。しかし、Mn量が0.05%未満では、その効果が小さく、また、Mn量が2.0%を超えると焼入性が著しく増加し、耐磨耗性や延性に有害なマルテンサイト組織が生成しやすくなる。このため、Mn添加量を0.05〜2.0%に限定した。
Crは、平衡変態温度を上昇させ、結果としてフェライト組織やパーライト組織を微細化して高硬度化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、Cr量が0.05%未満ではその効果は小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が見られなくなる。またCr量が2.00%を超える過剰な添加を行うと、焼入れ性が増加し、マルテンサイト組織が生成し、頭部コーナー部や頭頂部にマルテンサイト組織を起点としたスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Cr添加量を0.05〜2.00%に限定した。
Moは、Crと同様に、平衡変態温度を上昇させ、結果としてフェライト組織やパーライト組織を微細化にして高硬度化に寄与すると同時に、セメンタイト相を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、Mo量が0.01%未満ではその効果は小さく、レール鋼の硬度を向上させる効果が見られなくなる。またMo量が0.50%を超える過剰な添加を行うと、焼入れ性が増加し、マルテンサイト組織が生成し、頭部コーナー部や頭頂部にマルテンサイト組織を起点としたスポーリグ損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Mo添加量を0.01〜0.50%に限定した。
Vは高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、V炭化物やV窒化物のピンニング効果により、オーステナイト粒を微細化し、さらに、熱間圧延後の冷却過程で生成したV炭化物、V窒化物による析出強化により、フェライト組織やパーライト祖組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。またAc1点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、比較的高温域でV炭化物やV窒素化物を生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、V量が0.005%未満ではその効果が十分に期待できず、パーライト組織の硬度の向上や延性の改善は認められない。また、V量が0.50%を超えると、Vの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰になり、フェライト組織やパーライト組織の延性が低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリング損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、V添加量を0.005〜0.50%に限定した。
Nbは、Vと同様に、高温度に加熱する熱処理が行われる場合に、Nb炭化物やNb窒化物のピンニング効果により、オーステナイト粒を微細化し、さらに、熱間圧延後の冷却過程で生成したNb炭化物、Nb窒化物による析出強化により、フェライト組織やパーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素である。またAc1点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、比較的高温域でNb炭化物やNb窒素化物を生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、Nb量が0.002%未満ではその効果が十分に期待できず、フェライト組織やパーライト組織の硬度の向上や延性の改善は認められない。また、Nb量が0.050%を超えると、Nbの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰になり、パーライト組織の延性が低下し、頭部コーナー部や頭頂部にスポーリング損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため、Nb添加量を0.002〜0.050%に限定した。
Bはオーステナイト粒界に鉄炭ホウ化物(Fe23(CB)6)を形成し、パーライト変態の促進効果により、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、頭表面から内部までより均一な硬度分布をレールに付与し、レールを高寿命化する元素であるが、B量が0.0001%未満では、その効果が十分ではなく、レール頭部の硬度分布には改善が見られない。また、B量が0.0050%を超えると、粗大な鉄炭ほう化物が生成し、延性や靭性の低下を招く。このため、B添加量を0.0001〜0.0050%に限定した。
Coは、レール頭頂部の磨耗面において、車輪との接触により形成させる微細なフェライト組織をより一層微細化し、耐磨耗性を向上させる元素である。Co量が0.01%未満ではラメラ構造やフェライト粒径の微細化が図れず、耐磨耗性の向上効果が期待できない。またCo量が2.00%を超えると、パーライト組織の延性が著しく低下する。また、合金コストの増大により、経済性が低下する。このため、Co量を0.01〜2.00%に限定した。
Niは、パーライト組織中の延性を向上させ、Co添加による延性低下を抑制すると同時に、固溶強化により高硬度(強度)化を図る元素である。Ni量が0.01%未満ではその効果が著しく小さく、またNi量が3.00%を超えると、パーライト組織中のフェライト相の延性が著しく低下することや、パーライト組織中の耐磨耗性を大きく低下させる。このため、Ni添加量を0.01〜3.00%とした。
Tiは、溶接時の再加熱において析出したTiの炭化物とTiの窒化物が溶解しないことを利用して、オーステナイト域まで加熱させて熱影響部の組織の微細化が図れ、溶接継ぎ手の脆化を防止するのに有効な成分である。しかし、Ti量が0.0050%未満ではその効果が少なく。Ti量が0.0500%を超えると、粗大なTiの炭化物、Tiの窒化物が生成して、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。そのため、Ti添加量を0.0050〜0.0500%に限定した。
Mgは、OまたはSやAlと結合して微細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において、結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図り、フェライト組織やパーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。さらに、MgO、MgSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄層を形成し、フェライトやパーライト変態の生成に寄与する。その結果、主にパーライトブロックサイズが微細化するので、Mgは、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Mg量が0.0005%未満ではその効果は弱く、Mg量が0.0300%を超えると、Mgの粗大酸化物が生成し、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Mg添加量を0.0005〜0.0300%に限定した。
Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成し、さらに、CaSがMnSを微細に分散させ、MnSの周囲にMnの希釈帯を形成し、フェライトやパーライトの変態の生成に寄与し、その結果、主に、パーライトブロックサイズを微細化することにより、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Ca量が0.0005%未満ではその効果が弱く、Ca量が0.00150%を超えると、Caの粗大酸化物が生成し、レールの靭性を低下させるため、Ca添加量を0.0005〜0.00150%に限定した。
Alは、脱酸材として必要な成分である。また、共析変態温度を高温側へ移動させる元素であり、パーライト組織の高硬度化(強度)に寄与する元素であるが、Al量が0.025%未満では、その効果が弱い。また、Al量が3.00%を超えると、鋼中に固溶させることが困難になり、粗大なアルミナ系介在物の数が少なく、レールの靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。さらに、溶接部に酸化物が生成し、溶接性が著しく低下するため、Al添加量を0.025〜3.00%に限定した。
なお、本発明の効果を損なわずに添加効果の得られる元素としては、Zr、Nがある。
ZrはZrO2介在物がγ―Feとの格子整合性が良い為、γ―Feが凝固初晶である高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組成の等軸晶比率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、偏析部の特性を向上させる元素である。しかし、Zr量が0.0001%以下では、ZrO2系介在物の数が少なく。凝固核として十分な作用を示さない。また、Zr量が0.2000%を超えると、粗大Zr系買い財物が多量に生成し、靭性が低下すると同時に、粗大な析出物から疲労損傷が発生する。このため、Zr添加量としては0.0001〜0.2000%が例示できる。
Nは、オーステナイト粒界に偏析することによって、オーステナイト粒界からのフェライトやパーライト変態を促進させ、主に、パーライトブロックサイズを微細化することにより、延性を向上させるために有効な元素である。しかし、N量が0.0060%未満ではその効果が弱い。N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となるので、N添加量としては0.0060〜0.0200%が例示できる。
(3)レール頭頂部硬度の限定理由
レール頭頂部の硬度を少なくとも340Hvと限定した理由について説明する。本成分範囲において、硬度が340Hv未満になると、レール頭頂部の転がり面に塑性変形起因のフレーキング損傷が発生することや、重荷重鉄道での使用においては、耐摩耗性の確保が困難となり、レールの使用寿命が低減する。特に、パーライト組織中の含有Cuの析出量を増やすためパーライト変態時の冷却速度を遅くし過ぎると、パーライト変態温度が高くなり、初析フェライトが生成したり、パーライトラメラ間隔が大きくなる等して頭頂部の硬度は低下する。また一方、Cu析出を促進するために、後述する後熱処理温度を高くし過ぎたり、時効時間が長過ぎる場合には、パーライト組織中のセメンタイト相はラメラ状から球状化する現象が起こり、硬度が低下する。この場合、レール頭頂部硬度の低下そのものによる耐摩耗性の低下に加え、加工硬化率が小さくなるために耐摩耗性はさらに低下してしまう。このため、レール頭頂部の硬度を少なくとも340Hvと限定した。一般には硬度が高いほど、耐摩耗性には良好であるため、硬度の上限は特に規定しない。
(4)後熱処理の温度・時間の限定理由
上記の知見より、Cuの析出量を増やすことによりフェライト相中の固溶Cu濃度を低くし、耐磨耗性を向上させることができる。
Cuの析出量を増やしフェライト相中の固溶量を低くする方法の一つとして、鋼レールの後熱処理を検討した。これは、CuはFeと相分離する性質を有する金属であるため、高温にすることで、Cuの拡散を促進し、Cu析出物を作る方法である。そこで、Cu含有パーライトレールのCu析出熱処理を行い、耐磨耗性との関係を検討した。
熱処理温度が550℃を超えた場合の場合は、改善は全く見られず、むしろ悪化した。これは、550℃の熱処理によってCuの析出比率は増加するものの、同時にパーライトの球状化も起こり、パーライト組織の有する耐磨耗性が低下したものと考えられる。
一方450℃未満の熱処理では、耐磨耗性の変化はほとんど見られなかった。これは、低温の熱処理によってはパーライトの球状化は抑制されるが、Cuの析出が起きなかったためと考えられる。
以上の結果より、耐磨耗性の改善に好ましい熱処理条件は450℃以上550℃以下であり、その時効時間は0.5h以上24h以内に限定した。0.5hよりも短時間では、その効果が発揮されない。24hを超える熱処理では、Cuの析出が飽和し、パーライトの球状化がより進んでしまうため、かえって、耐摩耗性に悪影響をもたらす。低い温度の場合はこれ以上の熱処理時間が有効な場合もあるが、これは生産性の観点からも好ましいものではない。
一方、Cu含有量が0.3%に満たない鋼レールにおいては、上記熱処理によっても、実質的に析出させることはできず、固溶量を低減させることは難しい。むしろ、パーライト組織の球状化が進展することになるため、結果として、パーライトの耐磨耗性を低下させることになる。従って、後熱処理が有効な点からも鋼レールのCu含有量を0.3%以上とした。
後熱処理は、熱処理しなければフェライト相中のCu固溶量が0.25%を超えて耐摩耗性に劣るCu含有鋼レールの特性を改善するばかりでなく、熱処理しなくてもフェライト相中のCu固溶量が0.25%以下の耐摩耗性に優れた鋼レールに対しても、その特性を更に向上させることができる。従って、Cu含有鋼に含まれるCuを無害化することができるものである。
上記のような成分組成で構成させるレール鋼は、転炉、電気炉などの通常使用させる溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは、連続鋳造法、さらに熱間圧延を経てレールとして製造させる。
本発明における好ましいレール熱処理製造方法について述べる。すなわち、パーライト組織中のフェライト相中の固溶Cu量が0.25%以下であり、頭頂部の硬度が340Hv以上とする方法の一例を述べる。
完全なオーステナイトからパーライト変態させるため、圧延直後のレール頭部においてはAr1点以上の温度域とし、また、圧延して冷却後に再加熱されたレール頭部においてはAc1点+30℃以上の温度とする。なお、温度の上限は特に規定しないが、あまり高温度にすると液相が現れてオーステナイト相が不安定になるため、温度は実質1350℃が上限となる。
続いて、レール頭部をオーステナイト温度域から680〜450℃までの間を、12℃/s以下、好ましくは1〜5℃/sの冷却速度で制御冷却し、完全なパーライト組織を得る。
この好ましい冷却速度は、鋼レール成分、特にCuの含有量、再加熱によって固溶したCu量等によって、影響を受ける。この冷却速度が高過ぎると、パーライト変態と同時にCuが析出する率が小さくなるため、フェライト相中の固溶Cuが増えてしまう。また冷却速度が低過ぎると、パーライト変態が高温度側で起こるため、Cuの固溶量は低減できるが、荒いパーライトとなってしまい、強度延性バランスが低下してしまう。
Cu量が、1.3%以下の場合は、オーステナイト温度域から680〜450℃までの間を5℃/s以下の冷却速度でレール頭部を制御冷却することにより、フェライト相中の固溶Cu量を0.25%以下にすることができる。
なお、加速冷却の方法については、例えば、空気や空気を主としミスト等を加えた冷媒媒体及びこれらの組み合わせにより、所定の冷却速度を得ることが可能である。
さらに、鋼レールのパーライト組織中のフェライト相中のCu固溶量を低下させるために、製造後のレールに行う後熱処理工程が有効である。
例えば、製造した鋼レールを雰囲気加熱炉に導入し、450〜550℃の温度域で0.5〜24hの熱処理を行う。雰囲気としては特に限定するものではないが、高温で行う場合は、Ar等が好ましい。鋼レールのCu含有量が高い場合は、加熱温度を高めにまた加熱時間も長めにする必要がある。加熱方式としては抵抗加熱でも通電加熱でもよい。また、レールの一部のみを局所的に加熱する炉を用い、レールを移動または炉を移動させ、上記温度及び時間加熱を行ってもよい。
後熱処理の方法としては、製造後のレールにではなく、製造の最終段階で行ってもよい。オーステナイト温度域から制御冷却し完全なパーライト組織を得た後に、上記の温度、時間に再加熱してもよい。
後熱処理を行うことにより、Cu量が、1.3%を超える場合や、前記冷却速度が5℃/sを超える場合でもフェライト相中の固溶Cu量を0.25%以下にすることができる。
本発明レールの頭部金属組織は、パーライト組織であることが望ましい。しかし。レールの成分系や熱処理製造方法によっては、パーライト組織中に面積率で、5%以下の微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入することがある。しかし、これらの組織が混入しても、レール頭部の耐磨耗性及び延性には大きな影響を及ぼさないため、耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレールの組織としては、5%以下の微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組織の混在も含んでいる。言い換えれば、本発明レールの頭部金属組織は、95%以上がパーライト組織であれば良く、耐磨耗性や延性を十分に確保するためには、頭部金属組織の98%以上をパーライト組織とすることが望ましい。
次に本発明の実施例について説明する。
表1にCuを含有する供試レール鋼の鋼種A〜Oについて、化学成分の含有率を示す。表2に、鋼種A〜Oのいずれかからなる供試レール鋼(試験No.1〜29)の材料、製造条件、Cuの存在状態、レールの特性、および耐磨耗性試験の結果を示す。
表2では、材料として、鋼種とCu含有量(質量%)を明記した。製造条件として、冷却速度と後熱処理の条件を示す。後熱処理は試験No.21〜29についてのみ行い、後熱処理条件は熱処理温度と時間で表した。Cuの存在状態として、Cuの全析出量(質量%)とフェライト相中のCuの固溶量(質量%)ならびに全析出量の占める割合である析出比率(%)を示す。レール特性として、頭頂部硬度(Hv)(試験荷重98N)と全伸び率(%)を示す。耐磨耗試験として、70万回の摩耗試験における摩耗量(g)を示す。
ここで、完全なパーライト組織を得るために、レール頭部をオーステナイト温度域から680〜450℃までの間の制御冷却した速度を、冷却速度として示した。また、後熱処理は、一旦製造した鋼レールに施し、Ar雰囲気加熱炉において行った。
レール中のCuの存在状態を定量するために、3次元アトムプローブによる測定を行った。通常は針試料作製には電解研磨法を用いるが、セメンタイトラメラとフェライトラメラを有するパーライト組織では、電解研磨による溶解速度に大きな違いがあるため、加工が難しい。そこで、FIB(集束イオンビーム)法によって針試料を加工し、測定に用いた。また一方、固溶量を正しく調べるためには、より低温、高いパルス比での測定が必要になる。この理由は、Feに対し、Cuは電界蒸発しやすい元素であるからである。試料温度を40K以下、パルス周波数を20%以上として3DAP測定を行った。固溶量を見積もる場合には、フェライト相、セメンタイト相毎に、測定されたCu原子数を、その他全原子で割ることから、原子%としてのCu固溶量を決定できる。さらに、その値に63.55/55.85を掛けることによって、質量%として求まる。一方、析出状態は、3次元化マップにしたときに、Cuの球形の集合体として観察できる。固溶量は、全体よりこの析出Cu量を除くことによって求めることができる。または、析出Cuの存在しない領域にボックスを切り取り、このボックス内のCu固溶量を5つ以上平均して求めることができる。全析出量は、3DAPで観察した結果と、フェライト相及びセメンタイト相のCu固溶量から求めた。ここで、全析出量とフェライト相中の固溶量を足し合わせると、Cu含有量よりもわずかに高い値になるのは、セメンタイト相中のCu固溶量が少ないことによる。また、析出比率は、析出量を含有量で割ったものを%で表した。
一方、レール頭部磨耗評価には、西原式磨耗試験を行った。試験条件は次の通りである。
試験機:西原式磨耗試験機
試験片形状:円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
試験片採取位置:レール頭部表面下2mm
試験荷重:684N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
相手材:パーライト鋼(380Hv)
雰囲気:大気中
冷却:圧搾空気による強制冷却(流量:100NI/min)
繰返し回数:70万回
磨耗量は、試験後の試験片の質量の減少分として求めた。磨耗量が1gを下回る試料を耐摩耗性が良好とした。さらに摩耗量が0.8gを下回る試料をより良好とした。
さらに、レール頭部から試験片を切り出し、引っ張り試験から全伸びを見積もった。条件を示す。
試験機:万能小型引張試験機
試験片形状:JIS4号相似
平行部長さ:30mm、平行部直径:6mm、伸び測定評点間距離:25mm
試験片採取位置:レール頭頂部表面下5mm
引張速度:10mm/min、試験温度:常温
全伸び値が10%以上の場合を良好とした。
頭頂部の硬度は、1kgの荷重を用いて、ビッカース硬度測定から求めた。場所は頭頂部表面下5mm位置とした。ばらつきがあるため、5点の平均とした。340Hv以上の値を良好とした。
Figure 2011162822
Figure 2011162822
表2に示されるように、本発明の所定成分内にあり、0.3%以上のCuを含有する鋼レールにおいて、頭頂部硬度が340Hv以上あり、かつ、パーライト組織のフェライト相中のCu固溶量が0.25%以下である鋼レールにおいて、摩耗量が1gを下回り、耐摩耗性は良好となっている(試験No.3,4,5,6,7,13,14,15,19,20,22,24,27,28)。さらに、0.3%以上のCuを含有する鋼レールにおいて、頭頂部硬度が340Hv以上あり、かつ、パーライト組織のフェライト相中のCu固溶量が0.20%以下である鋼レールにおいて、摩耗量が0.8gを下回り、耐摩耗性は非常に良好となっている(試験No.22,24,28)。また、本発明の所定の後熱処理を加えることによって、フェライト相中のCu固溶量が低下し、耐摩耗性が著しく向上していることが示される(試験No.22,24,27,28)。
試験No.1においては、鋼レールの成分のうち、C量が0.55%と規定値0.65%に満たなかったため、フェライト相中のCuの固溶量(0.21%)が0.25%以下と良好であるが、耐摩耗性が低下した。
試験No.2においては、Cu含有量は0.30%と少ないながらも本発明の範囲(0.3〜2.0%)内にあるが、冷却速度が11℃/sと大きい製造条件では析出Cu量はわずかであり、フェライト相中のCu固溶量(0.29%)が0.25%より高いため、耐摩耗性が低下した。適切な冷却速度である3℃/sで冷却した試験No.3(試験No.2と同じ鋼種B)では、フェライト相中のCu固溶量は大きく減少し、耐摩耗性が大きく向上した。
試験No.8では、Cu含有量は1.8%と本発明の範囲(0.3〜2.0%)内にあるが上限に近く、冷却速度を2℃/sと小さくしても、フェライト相中のCuの固溶量(0.45%)が0.25%より高いため、耐摩耗性が低下した。Cu含有量が本発明の範囲内でも上限値に近い場合には、冷却速度だけで、頭頂部硬度の低下なく、フェライト相中のCu固溶量を0.25%以下に低下させることは難しかった。さらに、本発明の最適な後熱処理を施すことによって、Cu固溶量を0.25%以下に低下できた(試験No.23)。
試験No.9においては、鋼レールの成分のうち、Cu含有量が0.21%であり規定値2.00%を超えたため、フェライト相中のCu固溶量を十分に低下させることができず、耐摩耗性は低下した。
試験No.10においては、パーライト変態時の冷却速度(0.5℃/s)が小さく、フェライト相中のCuの固溶量を0.25%以下にできたが、頭頂部硬度(330Hv)が340Hv未満であり、耐摩耗性は低下した。ラメラ間隔の粗大なパーライト組織となったため、頭頂部硬度が低くなり過ぎたことが原因である。
試験No.11においては、鋼レールの成分のうち、C量(1.32%)が規定値1.2%を超えたため、頭頂部硬度が450Hvと高く、フェライト相中のCuの固溶量(0.21%)が0.25%以下であり、耐摩耗性は良好であったが、全伸び値が著しく低下した。
試験No.12においては、フェライト相中のCuの固溶量が0.33%であり0.25%を超えたため、耐摩耗性が低下した。これは、Cuを多く含有しているにかかわらず、冷却速度(7℃/s)が大きく、Cuの析出が抑えられたためである。
試験No.16においては、フェライト相中のCuの固溶量が0.20%であり0.25%以下であったが、頭頂部硬度(330Hv)が340Hv未満であり、耐摩耗性が低下した。これは、冷却速度(0.6℃/s)が小さく、ラメラ間隔の粗大なパーライト組織となったことによる。試験No.12,16と同じ鋼種Kを用いて適切な冷却速度1〜5℃/sで冷却した試験No.13(冷却速度4℃/s),No.14(2℃/s),No.15(1℃/s)ではフェライト相中のCu固溶量が0.25%以下となり耐摩耗性は向上する。
試験No.17においては、鋼レール成分のうち、Cu含有量(0.26%)が規定値0.3%に満たなかったため、冷却速度が10℃/sと高くとも、フェライト相中のCu固溶量は0.19%と低く、耐摩耗性については良好となった。
試験No.18においては、Cuを実質的に含有しておらず(0.01%)、製造条件によらず、耐摩耗性については良好な値を示した。
試験No.17,18のように、元々Cu含有量が極めて少ない鋼種を用いれば比較的容易に良好な耐摩耗性が得られる。
試験No.21〜26については、Cu含有量1.20%の鋼種Fを用い後熱処理も行った。
試験No.21においては、後熱処理を熱処理温度530℃で行ったが、熱処理時間が0.4hと短いため、Cu析出が十分に進まず(析出量0.80%)、フェライト相中のCuの固溶量が0.42%と規定の0.25%を超えたため、耐摩耗性は低下した。
試験No.22においては、本発明の所定の後熱処理を行ったため、フェライト相中のCuの固溶量が0.20%と著しく低下し、摩耗量は0.8gを下回り、耐摩耗性は非常に良好となった。
試験No.23においては、後熱処理の温度が490℃と適当ではあるが、24hを超える過剰な時間(25h)の熱処理を行ったため、フェライト相中のCu固溶量は析出によって低下したが、パーライト組織が球状化したため、頭頂部硬度(330Hv)が340Hv未満となり、耐摩耗性が低下した。
試験No.24においては、試験No.7の耐摩耗性が既に良好(摩耗量0.96g)である試料に、本発明の所定の後熱処理を行ったため、フェライト相中のCuの固溶量が0.17%と著しく低下し、摩耗量は0.8gを下回って0.72gとなり、耐摩耗性は非常に良好となった。
試験No.25においては、後熱処理の温度が570℃と高く、フェライト相中のCu固溶量(0.14%)は析出(全析出量1.09%)によって低下したが、パーライト組織が球状化したため、頭頂部硬度(320Hv)が340Hv未満となり、耐摩耗性が低下した。
試験No.26においては、後熱処理の温度が440℃と低く、所定時間(23h)の後熱処理を行ったが、析出が十分に進まず、フェライト相中の固溶Cuが0.28%と規定の0.25%以下に低減できず、耐摩耗性が低下した。
試験No.27(鋼種G:Cu含有量1.80%)においては、同じ鋼種Gを用いた試験No.8のCu含有量が高く耐摩耗性に劣る試料に、本発明の所定の後熱処理を行ったものであり、フェライト相中のCuの固溶量が0.25%に低下し、耐摩耗性は良好となった。
試験No.28(鋼種B:Cu含有量0.30%)においては、同じ鋼種Bを用いた試験No.2の耐摩耗性に劣る試料に、本発明の所定の後熱処理を行ったものであり、フェライト相中のCuの固溶量が0.16%に低下し、耐摩耗性は非常に良好となった。同じ鋼種Bにおいて、本発明の所定の後熱処理を行わずに、適切な冷却速度を施すことによって耐摩耗性を向上させた試験No.3よりも、さらに耐摩耗性に優れるものであった。
試験No.29(鋼種G:Cu含有量2.10%)においては、同じ鋼種Gを用いた試験No.9で述べた、Cu含有量が規定値を超えた試料に、本発明の所定の後熱処理を行ったが、フェライト相中のCuの固溶量が0.32%と規定の0.25%以下に低下させることができなかったが、耐摩耗性は試験No.9(摩耗量1.83g)に比べ大きく改善(摩耗量1.29g)した。
以上、鋼中にCuが含まれていないか、ごく僅かであれば、フェライト相中のCu固溶量も少なくなり耐摩耗性がよいことは当然であるが、鋼中にCuを多量に含有していても、特定の熱処理を施すことによって、耐磨耗性が改善されることが示された。

Claims (12)

  1. 質量%で、C:0.65〜1.20%、Cu:0.3〜2.0%を含有し残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、パーライト組織のフェライト相中の固溶Cu濃度が0.25%以下であり、頭頂部の硬度が少なくとも340Hvであることを特徴とする耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  2. 質量%で、C:0.65〜1.20%、Cu:0.3〜2.0%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.05〜2.0%を含有し残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、パーライト組織のフェライト相中の固溶Cu濃度が0.25%以下であり、頭頂部の硬度が少なくとも340Hvであることを特徴とする耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  3. 質量%でさらに、
    Cr:0.05〜2.00%、
    Mo:0.01〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  4. 質量%でさらに、
    V:0.005〜0.50%、
    Nb:0.002〜0.050%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  5. 質量%でさらに、
    B:0.0001〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  6. 質量%でさらに、
    Co:0.01〜2.00%を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  7. 質量%でさらに、
    Ni:0.01〜3.00%を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  8. 質量%でさらに、
    Ti:0.0050〜0.0500%を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  9. 質量%でさらに、
    Mg:0.0005〜0.0300%を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  10. 質量%でさらに、
    Ca:0.0005〜0.00150%を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  11. 質量%でさらに、
    Al:0.025〜3.00%を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレール。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の鋼レールを製造するに際し、450℃〜550℃の加熱温度で0.5h〜24hの後熱処理を施すことを特徴とする耐磨耗性及び延性に優れたパーライトレールの製造方法。
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