JP2011162666A - 硬化性シリル化ウレタン系樹脂及び接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物 - Google Patents

硬化性シリル化ウレタン系樹脂及び接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物 Download PDF

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Yukihiro Nomura
幸弘 野村
Hiroyuki Fujimoto
啓之 藤本
Jun Inui
純 乾
Shinji Urabe
慎二 占部
Akihiro Sato
明寛 佐藤
Shinichi Sato
慎一 佐藤
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Abstract

【課題】環境負荷が低減され安全性を確保しつつ、低粘度に調整された硬化性シリル化ウレタン系樹脂を提供すること。
【解決手段】分子内に水酸基を有する有機重合体(A)と、分子内にイソシアネート基を有する化合物(B)とを、ジルコニウム系化合物(C)を触媒として用いて反応させることによって合成された、分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂に対して、分子内にイソシアネート基と反応し得る活性水素基を有する架橋性シラン化合物(D)を反応させることによって合成されることを特徴とする硬化性シリル化ウレタン系樹脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、架橋性シリル基が水により縮合することによって硬化する硬化性シリル化ウレタン系樹脂に関し、具体的には、環境負荷が低減され安全性を確保しつつ、低粘度に調整された硬化性シリル化ウレタン系樹脂に関する。
主鎖が有機重合体であり、その分子内にウレタン基及び架橋性シリル基を有する樹脂は、一般的にシリル化ウレタン系樹脂と総称され、例えば、特許文献1〜6に見られるように、シーリング材、接着剤、粘着剤、塗料等のベースポリマーあるいはその原料として幅広く利用されている。該シリル化ウレタン系樹脂は、原料となるポリオール成分、ポリイソシアネート成分、アミノシラン成分を種々組み替えることが可能であり、それによって様々な性能を付与できることから、非常に有用な機能性樹脂である。
特公昭46−030711号公報 特開平11−100427号公報 再表98/058007号公報 特開2000−169544号公報 特開2000−119368号公報 特表2003−503564号公報
上記のようなシリル化ウレタン系樹脂を製造する際、その中間体として、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を反応させることで得られるウレタンプレポリマーを経由するのが一般的である。このような、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応は、工業的な観点では非常に反応速度が遅いため、反応触媒として有機スズ化合物が一般的に用いられる。しかしながら、このような有機スズ触媒については、近年その毒性が問題となっているものがある。特に、ジブチルスズ化合物には副生成物として生体毒性の懸念のあるトリブチルスズ化合物が含有される可能性があり、その使用は制限される。そのため、近年、有機スズ触媒としては、トリブチルスズ化合物を含有しないジオクチルスズが使用されるようになってきた。しかしながら、このようなジオクチルスズ化合物を反応触媒として用いた場合、得られるシリル化ウレタン系樹脂の粘度が高くなってしまうという問題があった。そのため、有機スズ化合物を反応触媒として使用せず、なおかつ、粘度が低いシリル化ウレタン系樹脂の開発が望まれていた。
このような問題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、ジルコニウム系化合物を硬化触媒として用いた場合、低粘度のシリル化ウレタン系樹脂が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は次の第1〜7の発明から構成される。
第1の発明は、分子内に水酸基を有する有機重合体(A)と、分子内にイソシアネート基を有する化合物(B)とを、ジルコニウム系化合物(C)を触媒として用いて反応させることによって合成された、分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂に対して、分子内にイソシアネート基と反応し得る活性水素基を有する架橋性シラン化合物(D)を反応させることによって合成されることを特徴とする硬化性シリル化ウレタン系樹脂に関するものである。ジルコニウム系化合物(C)を用いることによってシリル化ウレタン系樹脂の合成が短縮され、なおかつ、低粘度の硬化性シリル化ウレタン系樹脂を得ることができる。
また、第2の発明は、上記架橋性シラン化合物(D)が、第2級アミノ基又はメルカプト基を有する架橋性シラン化合物であることを特徴とする、第1の発明にかかる硬化性シリル化ウレタン系樹脂に関するものである。第2級アミノ基又はメルカプト基を有する架橋性シラン化合物を使用することにより、容易な反応で、低粘度の硬化性シリル化ウレタン系樹脂を得ることができる。
また、第3の発明は、上記有機重合体(A)が、分子内に水酸基を平均1.3個以上有する有機重合体であって、上記化合物(B)が、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物であることを特徴とする、第1又は第2の発明にかかる硬化性シリル化ウレタン系樹脂に関するものである。ジルコニウム系化合物(C)を用いることによってシリル化ウレタン系樹脂の合成が短縮され、なおかつ、一般的に粘度が高くなってしまう分子内に水酸基を平均1.3個以上有する有機重合体と、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物との反応であっても、低粘度の硬化性シリル化ウレタン系樹脂を得ることができる。
また、第4の発明は、上記ジルコニウム系化合物(C)が、ジルコニウムアルコキサイド化合物、カルボン酸ジルコニウム化合物、ジルコニウムキレート化合物から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、第1〜3のいずれかの発明にかかる硬化性シリル化ウレタン系樹脂に関するものである。ジルコニウム系化合物(C)がジルコニウムアルコキサイド化合物、カルボン酸ジルコニウム化合物、ジルコニウムキレート化合物から選ばれる1種以上の化合物であるため、低粘度の硬化性シリル化ウレタン系樹脂を得ることができる。
また、第5の発明は、上記ジルコニウム系化合物(C)が、ジルコニウムテトラブトキシド、オクチル酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル、ジルコニウムアセチルアセトン錯体から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする第1〜4のいずれかの発明にかかる硬化性シリル化ウレタン系樹脂。ジルコニウム系化合物(C)がジルコニウムテトラブトキシド、オクチル酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル、ジルコニウムアセチルアセトン錯体から選ばれる1種以上の化合物であるため、低粘度の硬化性シリル化ウレタン系樹脂を得ることができる。
また、第6の発明は、上記架橋性シラン化合物(D)が、下記一般式(1)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、第1〜5のいずれかの発明にかかる硬化性シリル化ウレタン系樹脂に関するものである。架橋性シラン化合物(D)が、下記一般式(1)で表される化合物であるため、速硬化かつ低粘度の硬化性シリル化ウレタン系樹脂を得ることができる。
HN−CH−SiR 3−a(OR ・・・式(1)
(但し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の有機基を、Rは水素原子もしくは分子量500以下の有機基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)
また、第7の発明は、第1〜6のいずれかの発明にかかる硬化性シリル化ウレタン系樹脂を100質量部、分子内に第1級アミノ基及び架橋性シリル基を有するアミノシラン化合物(E)を0.1〜30質量部、含有することを特徴とする接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物に関するものである。本発明にかかる硬化性シリル化ウレタン系樹脂に対して、密着性付与剤となるアミノシラン化合物を併用することで、低粘度かつ密着性の高い接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物を得ることができることから、接着剤、シーリング材、粘着剤、コーティング剤等の用途へ容易に応用させることができる。
本発明は、架橋性シリル基が水により縮合することによって硬化する硬化性シリル化ウレタン系樹脂に関し、環境負荷が低減され安全性を確保しつつ、低粘度に調整された硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られるという効果を奏するものである。
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
本発明における硬化性シリル化ウレタン系樹脂は、分子内にウレタン基及び架橋性シリル基を有する樹脂であり、分子内に水酸基を有する有機重合体(A)と、分子内にイソシアネート基を有する化合物(B)とを、ジルコニウム系化合物(C)を触媒として用いて反応させることによって合成された、分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂に対して、分子内にイソシアネート基と反応し得る活性水素基を有する架橋性シラン化合物(D)を反応させることによって合成される。
上記反応においては、従来公知の反応条件を用いればよく、特に限定されない。一般的な反応条件としては、0〜120℃の雰囲気下、30分〜数日間反応させればよい。温度が高ければ反応時間は短くてよく、温度が低ければ反応時間を長くとるなど、反応温度及び反応時間は、必要に応じて便宜調整すればよい。さらに、必要に応じて、反応溶媒を使用してもよい。なお、上記ウレタン基は、水酸基とイソシアネート基との反応により生成する結合基であり、上記架橋性シリル基は、上記架橋性シラン化合物(D)から誘導される官能基である。
[分子内に水酸基を有する有機重合体(A)について]
本発明における有機重合体(A)は、分子内に水酸基を有する化合物であり、本発明における硬化性シリル化ウレタン系樹脂中のウレタン基を形成する原料となる。該有機重合体(A)には、一般的にウレタン系樹脂の原料として用いられるポリオール化合物が利用できる。
上記有機重合体(A)の具体例としては、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格、ポリビニル骨格、ポリアクリル骨格、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格等の従来公知の主鎖構造を1種又は2種以上有するポリオール化合物が例示される。この他、ポリシロキサン骨格を有するポリオールや、フッ素原子、珪素原子、硫黄原子又はロジン骨格を有する有機基を含有するポリオール化合物が挙げられ、使用目的や求める性能に応じて、適宜ポリオール化合物を単独あるいは複数混合して用いればよい。
有機重合体(A)の分子量としては、数平均分子量500〜500,000のものが好ましく、1,000〜100,000のものがより好ましく、2,000〜20,000のものが特に好ましい。分子量が500を下回ると主鎖骨格による効果十分発現されない場合があり、分子量が500,000を上回ると粘度が高くなり過ぎることがあり溶剤等で希釈するなどの処置が必要となる場合がある。分子1個あたりの平均水酸基数は、1.1以上であるものが好ましく、1.3以上であるものがより好ましく、1.5以上のものが特に好ましい。これらの中では、その汎用性から、ポリエーテルポリオールを好適に用いることができる。
上記ポリエーテル骨格を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシヘキシレン、ポリオキシテトラメチレン等の単独重合体、並びにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ヘキシレンオキシド及びテトラヒドロフランよりなる群から選ばれた2種以上のモノエポキシドを開環共重合させてなる共重合体が例示される。
上記ポリエーテル骨格を有するポリオールの市販品としては、株式会社ADEKA製P−2000、P−3000、PR−3007、PR−5007等、旭硝子株式会社製エクセノール2020、エクセノール510、PML−S−4012、PML−S−4015、PML−S−3011等、三井化学ポリウレタン株式会社製D−1000、D−2000、D−4000、T−5000等、住化バイエルウレタン株式会社製スミフェン3600、スミフェン3700、保土谷化学工業株式会社製PTG−2000、PTG−L2000等(以上、いずれも商品名)が例示される。
上記ポリエステル骨格を有するポリオールとしては、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸類の1種又は2種以上と、ジオール類の1種又は2種以上とを重縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、バレロラクトン等を開環重合させてなる開環重合物、活性水素を2個以上有するひまし油等のひまし油誘導体化合物が例示される。市販品としては、株式会社ADEKA製NS−2400、川崎化成工業株式会社製FSK−2000、マキシモールRDK−133、豊国製油株式会社製HS 2N−220S、伊藤製油株式会社製URIC PH−5001等(以上、いずれも商品名)が例示される。
上記ポリカーボネート骨格を有するポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどから誘導されるポリカーボネート骨格を有するポリオール等が例示される。市販品としては、日本ポリウレタン工業株式会社製ニッポラン982R、ニッポラン971、旭化成ケミカルズ株式会社製PCDL−T5652、PCDL−T4672等(以上、いずれも商品名)が例示される。
上記ポリオレフィン骨格を有するポリオールとしては、水添ポリブタジエン骨格を有するポリオール、エチレン・α−オレフィン骨格を有するポリオール、ポリイソブチレン骨格を有するポリオール等が例示される。市販品としては、三菱化学株式会社製ポリテールH、ポリテールHA、日本曹達製GI−1000、GI−2000(以上、いずれも商品名)等が例示される。
上記ポリビニル骨格を有するポリオール又はポリアクリル骨格を有するポリオールとしては、ビニルエーテル化合物やアクリル化合物等に代表されるビニル重合性モノマーと、水酸基を有するビニル重合性モノマーを共重合させたポリオール化合物等が例示される。市販品としては、東亞合成株式会社製アルフォンUH−2000、UH−2032等、綜研化学株式会社製アクトフローUT−1001、UMB−2005、UME−2005等(以上、いずれも商品名)が例示される。
上記ポリブタジエン骨格又はポリイソプレン骨格を有するポリオールとしては、ブタジエンやイソプレン等に代表されるジエン系モノマーを重合して得られる化合物等が例示される。市販品としては、出光興産株式会社製Poly bd R−15HT、Poly bd R−45HT、Poly ip、クレイソールLBH2000、LBH−P3000等(以上、いずれも商品名)が例示される。
また、複数の骨格を有するポリオール化合物としては、1分子中にポリエーテル骨格とポリエステル骨格を有するポリオール、1分子中にポリカーボネート骨格とポリエステル骨格を有するポリオール、1分子中にポリエーテル骨格とポリアクリル骨格を有するポリオール等が例示される。市販品としては、旭硝子株式会社製商品名アドバノールシリーズ等が例示される。
上記有機重合体(A)に含まれる水酸基としては、第1級水酸基(水酸基に隣接する炭素原子が第1級炭素)、第2級水酸基(水酸基に隣接する炭素原子が第2級炭素)、3級水酸基(水酸基に隣接する炭素原子が3級炭素)が全て含まれる。これらのなかでは、第2級水酸基又は3級水酸基が、低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られやすいため好ましい。
[分子内にイソシアネート基を有する化合物(B)について]
本発明における化合物(B)は、分子内にイソシアネート基を有する化合物であり、本発明における硬化性シリル化ウレタン系樹脂中のウレタン基を形成する原料となる。該化合物(B)には、一般的にウレタン系樹脂の原料として用いられるポリイソシアネート化合物(Ba)が利用できる。
上記ポリイソシアネート化合物(Ba)は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、ジイソシアネート化合物及びそれ以外のポリイソシアネート化合物等である。上記ジイソシアネート化合物としては、例えば脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族のジイソシアネート化合物等が挙げられる。以下に、それらの具体例を挙げる。
脂肪族ジイソシアネート化合物:トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等。
脂環式ジイソシアネート化合物:1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等。
芳香脂肪族ジイソシアネート化合物:1,3−若しくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はそれらの混合物、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−若しくは1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン又はそれらの混合物等。
芳香族ジイソシアネート化合物:m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−トルイジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等。
ジイソシアネート化合物以外のポリイソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族のポリイソシアネート化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。以下に、その具体例を挙げる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物:リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン等。
脂環式ポリイソシアネート化合物:1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、3−イソシアネート−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等。
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物:1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン等。
芳香族ポリイソシアネート化合物:トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、4,4′−ジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネート等。
その他のポリイソシアネート化合物:フェニルジイソチオシアネート等硫黄原子を含むジイソシアネート類等。
上記ポリイソシアネート化合物(Ba)使用目的や求める性能に応じて、適宜単独あるいは複数混合して用いればよい。また、モノイソシアネート化合物を併用してもよい。その際には、好ましくは分子内にイソシアネート基を平均1.1個以上、より好ましくは平均1.3個以上、特に好ましくは平均1.5個以上となるように併用すればよい。
上記化合物(B)に含まれるイソシアネート基としては、第1級イソシアネート基(イソシアネート基に隣接する炭素原子が第1級炭素)、第2級イソシアネート基(イソシアネート基に隣接する炭素原子が第2級炭素)、3級イソシアネート基(イソシアネート基に隣接する炭素原子が3級炭素)が全て含まれる。これらのなかでは、第2級イソシアネート基又は3級イソシアネート基が、低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られやすいため好ましい。
[ジルコニウム系化合物(C)について]
本発明におけるジルコニウム系化合物(C)は、上記有機重合体(A)中の水酸基と上記化合物(B)中のイソシアネート基とを付加反応させてウレタン基を生成させる反応(以下、ウレタン化反応と表す場合がある)を促進する化合物であり、分子内にジルコニウム原子を含む化合物である。これらのなかでは、工業的に入手しやすいことから、ジルコニウムアルコキサイド化合物、カルボン酸ジルコニウム化合物、ジルコニウム錯体化合物が好適に用いられる。
上記ジルコニウムアルコキサイド化合物としては、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。市販品としては、マツモトファインケミカル株式会社製オルガチックスZA−40、オルガチックスZA−65等(以上、いずれも商品名)が例示される。
上記カルボン酸ジルコニウム化合物は、ジルコニウムのカルボン酸塩であり、テトラキスオクタン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。市販品としては、日本化学産業株式会社製ニッカオクチックスジルコニウム12%(T)、ナフテックスジルコニウム4%(T)、ホープ製薬株式会社製17%オクトープZr、17%オクトープZr等(以上、いずれも商品名)が例示される。
上記ジルコニウム錯体化合物は、ジルコニウムを中心として、周囲に配位子が結合した構造をもつ化合物である。上記配位子としては、シクロペンタジエニルアニオン、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。
なお、化合物によっては、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等のように、アルコキシ基、カルボン酸、シクロペンタジエニルアニオン、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が一つのジルコニウム原子に結合あるいは配位した化合物も利用できる。そのような化合物は、たとえば、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネートを例に取ると、上記ジルコニウムアルコキサイド化合物としても、上記ジルコニウム錯体化合物としても分類できる。また、ジルコニウムトリブトキシモノステアレートであれば、上記ジルコニウムアルコキサイド化合物としても、上記カルボン酸ジルコニウム化合物としても分類できる。さらに、それぞれの化合物において、ジルコニウム原子はジルコニル(ZrO)構造をとっていてもよい。
上記以外の市販品としては、マツモトファインケミカル株式会社製オルガチックスZC−150、オルガチックスZC−540、オルガチックスZC−570、オルガチックスZC−580、オルガチックスZC−700、オルガチックスZB−320等(以上、いずれも商品名)も例示される。
ジルコニウム系化合物(C)の添加量としては、特に限定されないが、有機重合体(A)と化合物(B)との総計に対して、ジルコニウム金属原子として0.10〜2,000ppmが好ましく、1.0〜1,000ppmがより好ましく、5.0〜100ppmが特に好ましい。0.10ppmを下回ると、触媒効果が十分でない場合があり、2,000ppmを上回ると化合物によっては着色が大きい場合がある。
[架橋性シラン化合物(D)について]
本発明における架橋性シラン化合物(D)は、分子内にイソシアネート基と反応し得る活性水素基を有する架橋性シラン化合物である。従来、イソシアネート基に付加反応しうる基を有する架橋性シラン化合物としては、分子内に第1級アミノ基、第2級アミノ基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、又はエポキシ基を有する架橋性シラン化合物等が挙げられる。本発明においては、その反応性の容易さや、入手の容易さ、及び、得られる硬化性シリル化ウレタン系樹脂が低粘度に設計できることなどから、第2級アミノ基又はメルカプト基が好適に用いられる。該架橋性シラン化合物(D)中の第2級アミノ基又はメルカプト基が、上記有機重合体(A)と上記化合物(B)とをジルコニウム系化合物(C)を触媒として用いて反応させることによって合成されたウレタン系樹脂中のイソシアネート基に反応することで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂が生成する。該架橋性シラン化合物(D)を使用する際には、単一構造の化合物を用いてもよいし、構造の異なる複数の化合物を混合して用いてもよい。
上記架橋性シラン化合物(D)中には、架橋性シリル基が存在する。本発明における硬化性シリル化ウレタン系樹脂中の架橋性シリル基は、架橋性シラン化合物(D)から誘導されるものである。該架橋性シリル基は湿気により縮合することができ、この縮合反応によって、硬化性シリル化ウレタン系樹脂は硬化する。該架橋性シリル基は、珪素原子に、主鎖へとつながる結合手以外に、加水分解性基が1〜3個結合する官能基である。珪素原子に結合している加水分解性基としては、ヒドロキシル基や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基が一般的に用いられる。その他、ハロゲン基、メルカプト基、アセトキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ、イミノキシ基、アミノ基、アミド基等の従来公知の加水分解性基も用いることができる。これらのなかでは、合成の容易さや、硬化性と安定性のバランスの良さから、アルコキシ基が最も好適に用いられる。珪素原子の残りの結合手に結合している官能基としては、メチル基、エチル基、フェニル基等の炭化水素基が一般的に用いられる。これらのなかでは、合成の容易さや、硬化性と安定性のバランスの良さから、メチル基が最も好適に用いられる。
ここで、上記架橋性シラン化合物(D)中の架橋性シリル基ついて、加水分解性基がアルコキシ基であるアルコキシシリル基を代表例として、詳細に説明する。本発明において、好適に用いられるアルコキシシリル基は、下記一般式(2)で表される。
−SiR 3−b(OR ・・・式(2)
(但し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の有機基を、bは0、1又は2を、それぞれ示す)
ここで、Rは、例えば、フェニル基等のアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、2−(ブトキシ)エチル基等のアルコキシアルキル基が含まれ、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。アルコキシ基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、2−(ブトキシ)エトキシ基、フェノキシ基であるのが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好ましい。炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
また、上記架橋性シリル基中の加水分解性基の数は、求められる性能によって、適宜比率を調整すればよく、例えば、速硬化性や高モジュラス性を付与したい場合には、トリアルコキシ(b=3)やジアルコキシ(b=2)が好適に用いられ、長い可使時間や低モジュラス性を付与したい場合には、ジアルコキシ(b=2)やモノアルコキシ(b=1)が好適に用いられる。これらのなかでは、ジアルコキシ(b=2)が、入手が容易であること、及び、硬化性と硬化物モジュラスのバランスが優れているため好ましく、トリアルコキシ(b=3)及びジアルコキシ(b=2)を併用することが、硬化性と硬化物モジュラスのバランスをさらに取りやすいため、特に好ましい。
[分子内に第2級アミノ基を有する架橋性シラン化合物について]
上記架橋性シラン化合物(D)に含まれる架橋性シラン化合物には、分子内に1個以上の第2級アミノ基と1個以上の架橋性シリル基を有する化合物(以下、アミノシラン化合物(DN)と表す場合がある)が含まれる。該アミノシラン化合物(DN)を使用する際には、単一構造の化合物を用いてもよいし、構造の異なる複数の化合物を混合して用いてもよい。該アミノシラン化合物(DN)としては、下記一般式(3)で示される化合物が例示され、より具体的には、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルメチルジメトキシシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンの他、特開2000−169544号公報、特開2005−054174号公報等で提案されているような、第1級アミノシラン化合物(DN−1)とα,β−不飽和カルボニル化合物(DN−2)とを共役付加反応させて得られる化合物(DNa)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。なかでも、反応性の容易さ、及び、硬化性シリル化ウレタン系樹脂をより低粘度に調整できることから、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシランが好適に用いられ、また、種々の機能性を付与しやすいこと、及び、硬化性シリル化ウレタン系樹脂をより低粘度に調整できることから、化合物(DNa)が好適に用いられる。
HN−R−SiR 3−c(OR ・・・式(3)
(但し、Rは炭素数1〜20個の炭化水素基を、Rは分子量300以下の有機基を、Rは分子量500以下の有機基を、Rは分子量500以下の有機基を、cは0、1又は2を、それぞれ示す)
さらに、分子内に第2級アミノ基を有する架橋性シラン化合物が、上記一般式(1)で表される架橋性シリル基を有する架橋性シラン化合物であると、誘導される硬化性シリル化ウレタン系樹脂の硬化性が非常に高いため好ましい。その理由としては、珪素原子に隣接する炭素原子に結合する窒素原子が、その高い求核性のため近接する珪素原子に相互作用することにより、該珪素原子の反応性が高まることが要因であると推察される。このような硬化性シリル化ウレタン系樹脂は、硬化性が非常に高いのが特徴であるが、逆に接着剤やシーリング材等に利用した場合、その硬化性の高さから貯蔵安定性が悪くなる場合がある。そのため、本発明にかかる硬化性シリル化ウレタン系樹脂は、その粘度を低く抑えることができるため、貯蔵中に多少の増粘が起こっても十分作業性が維持できることから、非常に有用である。
上記化合物(DNa)の合成においては、第1級アミノシラン化合物(DN−1)中の第1級アミノ基が、α,β−不飽和カルボニル化合物(DN−2)中のα,β−不飽和基に共役付加することにより、第2級アミノ基が生成する。該第1級アミノシラン化合物(DN−1)としては、下記一般式(4)で示される化合物等が例示され、より具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノメチルトリエトキシシラン、3−アミノメチルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノメチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、[2−アミノエチル−(2′−アミノエチル)]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。なかでも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシラン、又は、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジメトキシシランを用いることが、入手が容易であるという観点から好ましい。
N−R12−SiR10 3−d(OR11 ・・・式(4)
(但し、R10は炭素数1〜20個の炭化水素基を、R11は分子量300以下の有機基を、R12は分子量500以下の有機基を、dは0、1又は2を、それぞれ示す)
上記α,β−不飽和カルボニル化合物(DN−2)としては、分子内にα,β−不飽和カルボニル基を有する化合物であれば特に限定されないが、アクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、マレイン酸エステル化合物等が好適に用いられる。該α,β−不飽和カルボニル化合物(DN−2)の具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート(以下、アクリレート及びメタクリレートをメタ(アクリレート)と総称することがある)、エチルメタ(アクリレート)、ブチルメタ(アクリレート)、2−エチルヘキシルメタ(アクリレート)、n−オクチルメタ(アクリレート)、イソオクチルメタ(アクリレート)、ドデシルメタ(アクリレート)、ステアリルメタ(アクリレート)、イソステアリルメタ(アクリレート)、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ2−エチルヘキシル、アクリルアミド、メタクリルアミド(以下、アクリルアミド及びメタクリルアミドを総称してN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、モルホリノアクリレート、アクリルニトリル化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
上記アミノシラン化合物(DN)を合成するために、上記第1級アミノシラン化合物(DN−1)及び上記α,β−不飽和カルボニル化合物(DN−2)を用いる際には、それぞれ単一構造の化合物を用いてもよいし、構造の異なる複数の化合物を混合して用いてもよい。これらのなかでは、入手が容易であるうえに、硬化性シリル化ウレタン系樹脂をより低粘度に調整できることから、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン又は3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン1モルと、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート及びイソステアリルアクリレートから選ばれる一種以上の化合物1モルとの反応物、又は、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン又はN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン1モルと、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートから選ばれる一種以上の化合物2モルとの反応物が好ましく、反応が容易であることから、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン又は3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン1モルと、メチルアクリレート1モルとの反応物、又は、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン又はN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン1モルと、メチルアクリレート2モルとの反応物が特に好ましい。
また、α,β−不飽和カルボニル化合物には属さないアクリロニトリル化合物も、上記第1級アミノシラン化合物(DN−1)と反応して第2級アミノシラン化合物を生成することが知られていることから、本発明においては、該アクリロニトリル化合物も、上記α,β−不飽和カルボニル化合物の代わりに使用することができる。
[分子内にメルカプト基を有する架橋性シラン化合物について]
上記架橋性シラン化合物(D)には、分子内に1個以上のメルカプト基と1個以上の架橋性シリル基を有する化合物(以下、メルカプトシラン化合物(DS)と表す場合がある)が含まれる。該メルカプトシラン化合物(DS)を使用する際には、単一構造の化合物を用いてもよいし、構造の異なる複数の化合物を混合して用いてもよい。該メルカプトシラン化合物(DS)としては、下記一般式(5)で示される化合物が例示され、より具体例的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトメチルトリエトキシシラン、3−メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシラン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
HS−R15−SiR13 3−e(OR14 ・・・式(5)
(但し、R13は炭素数1〜20個の炭化水素基を、R14は分子量300以下の有機基を、R15は分子量500以下の有機基を、eは0、1又は2を、それぞれ示す)
[分子内に水酸基を有する架橋性シラン化合物について]
上記架橋性シラン化合物(D)には、分子内に1個以上の水酸基と1個以上の架橋性シリル基を有する化合物(以下、ヒドロキシシラン化合物(DH)と表す場合がある)が含まれる。該ヒドロキシシラン化合物(DH)を使用する際には、単一構造の化合物を用いてもよいし、構造の異なる複数の化合物を混合して用いてもよい。該ヒドロキシシラン化合物(DH)は、上記アミノシラン化合物(DN−1)、上記アミノシラン化合物(DN)及び上記メルカプトシラン化合物(DS)から選ばれる一種以上の化合物と、エポキシ基含有化合物を反応させることにより得ることもできる。該エポキシ基含有化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル等の従来公知のエポキシ樹脂、あるいは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシシラン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、該ヒドロキシシラン化合物(DH)は、分子内にエポキシ基を有する架橋性シラン化合物と、分子内に第1級アミノ基、第2級アミノ基又はメルカプト基を有する化合物とを反応させることにより得ることもできる。
上記架橋性シラン化合物(D)としては、より低粘度効果が高いことから、上記アミノシラン化合物(DN)、上記メルカプトシラン化合物(DS)、上記ヒドロキシシラン化合物(DH)が好ましく、入手のしやすさ、合成のしやすさ及び反応のさせやすさから、上記アミノシラン化合物(DN)、上記メルカプトシラン化合物(DS)が特に好ましい。上記アミノシラン化合物(DN)のなかでは、反応工程の観点では、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシランが好ましく、種々の機能性を付与したい場合には、原料の選択により機能化が容易な上記化合物(Dba)が好ましい。
上記分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂に対して、上記架橋性シラン化合物(D)を反応させる際の添加量としては、該ウレタン系樹脂中のイソシアネート基1モルに対して、上記架橋性シラン化合物(D)中のイソシアネート基と反応し得る活性水素基が、0.5モル〜5.0モルとなるように添加するのが好ましく、0.75〜2.5モルがより好ましく、0.95〜1.25モルが特に好ましい。添加量が0.5モルを下回ると、得られる硬化性シリル化ウレタン系樹脂の安定性が悪くなる場合があり、添加量が5.0モルを上回ると、硬化物の物理特性をコントロールしにくくなる場合がある。
従来、硬化性シリル化ウレタン系樹脂の合成触媒としては、有機スズ触媒が一般的に使用されているが、これらの化合物では粘度が高くなってしまう問題があったうえ、毒性に関する懸念もあった。一方、本発明においては、ジルコニウム系化合物(C)を利用することによって、シリル化ウレタン系樹脂を低粘度とすることができる。その理由は定かではないが、ジルコニウム系化合物(C)を用いることによって、有機スズ触媒で合成した場合に対して、シリル化ウレタン系樹脂の分子構造が若干異なることで、低粘度化が起こっているものと推察される。このような効果は全く知られておらず、従来公知の技術からは予期できない極めて特異な効果であるといえる。
また、分子内に水酸基を有する有機重合体(A)と、分子内にイソシアネート基を有する化合物(B)とを、ジルコニウム系化合物(C)を触媒として用いて反応させる際に、NCO/OH比を1以下にして、分子内に水酸基を有するウレタン系樹脂を得たうえに、分子内にイソシアネート基を有する架橋性シラン化合物を反応させることによっても、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成できる。このような合成経路を選択しても、有機スズ触媒を用いた場合と比較して低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂を調製することができるが、末端構造を決定する架橋性シラン化合物の選択範囲が狭いため、本発明にかかる合成経路の有用性のほうが高いといえる。
[アミノシラン化合物(E)について]
本発明におけるアミノシラン化合物(E)は、分子内に第1級アミノ基及び架橋性シリル基を有する化合物であり、密着性付与剤としての効果を発現する化合物である。該アミノシラン化合物(E)には、上記アミノシラン化合物(DN−1)を利用することができる。なかでも、密着性付与効果が大きい、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノメチルトリエトキシシランが好適に用いられる。特に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジメトキシシランが、入手が容易であるので好ましい。
[その他の成分]
本発明における硬化性シリル化ウレタン系樹脂は、たとえば、接着剤、粘着剤、シーリング材、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等に用いることができる。その際、その他の成分として従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。たとえば、本発明で用いる硬化性シリル化ウレタン系樹脂以外の各種硬化性樹脂(例えば、硬化性シリル化ウレタン系樹脂以外の変成シリコーン等に代表される湿気硬化性シリコーン系樹脂,エポキシ系樹脂,ウレタン系樹脂,オキセタン系樹脂,環状カーボネート系樹脂)及び非硬化性の樹脂(アクリル樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリエステル樹脂,ポリスチレン樹脂等)、各種硬化促進剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、炭酸カルシウム粉体,クレイ粉体,親水性又は疎水性シリカ粉体、酸化チタン粉体、カーボンブラック粉体等の無機系フィラー、ポリアクリル粉体,ポリスチレン粉体,ポリウレタン粉体等の有機系フィラー、フェノール樹脂,テルペン樹脂,テルペンフェノール樹脂,石油系樹脂,ロジン系樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、各種液状機能性オリゴマー、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、乾性油等を配合することができる。
本発明における硬化性シリル化ウレタン系樹脂は、従来の硬化性シリコーン系樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、接着剤、シーリング材、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。
本発明における硬化性シリル化ウレタン系樹脂は、水分の存在下で、架橋性シリル基同士が架橋することによって硬化するものである。したがって、1液性の組成物として使用する場合、保管乃至搬送中は、空気中の水分と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して硬化性シリル化ウレタン系樹脂が硬化するのである。
また、粘着剤前駆体組成物として使用する場合には、上記の硬化性シリル化ウレタン系樹脂に対して、必要に応じて粘着付与樹脂を配合し均一に混合して粘着剤前駆体組成物を得る。なお、硬化性シリル化ウレタン系樹脂と粘着付与樹脂とを均一に混合する場合、たとえば両者の相溶性が不十分な場合などにおいては、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。また、硬化性シリル化ウレタン系樹脂と粘着付与樹脂の相溶性が良好な場合や、有機溶媒が好まれない用途などには、有機溶剤を使用しなくてもよい。このようにして得られた粘着剤前駆体組成物を、従来公知のテープ基材又はシート基材の表面(片面又は両面)に塗布し、これを硬化させることで粘着剤層を形成することができ、粘着テープ又は粘着シートが得られる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例に用いた商品名の成分については、下記の通りである。また、各表中の反応時間の表記について、hは時間、dは日間、wは週間を示す。
[分子内に水酸基を有する有機重合体(A)]
・「PMLS4015」:旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレン、分子量15,000、ジオール化合物。
・「PMLS4012」:旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレン、分子量10,000、ジオール化合物。
・「PMLS3011」:旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレン、分子量10,000、トリオール化合物。
・「PMLS4104」:旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレン、分子量4,000、ジオール化合物。
・「PMLS1005」:旭硝子株式会社製商品名、ポリオキシプロピレン、分子量5,000、モノオール化合物。
[分子内にイソシアネート基を有する化合物(B)]
・「デスモジュールI」:住化バイエルウレタン株式会社製商品名、イソホロンジイソシアネート、以下IPDIと表する場合がある。
・「デスモジュールH−s」:住化バイエルウレタン株式会社製商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート、以下HDIと表する場合がある。
・「LDI」:協和発酵ケミカル株式会社製商品名、リジンジイソシアネート。
・「タケネート500」:三井化学株式会社製商品名、メタ−キシリレンジイソシアネート、以下XDIと表する場合がある。
・「TMXDI」:日本サイテックインダストリーズ株式会社製商品名、メタ−テトラキシリレンジイソシアネート。
・「スミジュール44S」:住化バイエルウレタン株式会社製商品名、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、以下MDIと表する場合がある。
・「コスモネートT−100」:三井化学ポリウレタン株式会社製商品名、2,4−トリレンジイソシアネート、以下TDIと表する場合がある。
・「コスモネートNBDI」:三井化学ポリウレタン株式会社製商品名、ノルボルナンジイソシアネート、以下NBDIと表する場合がある。
・「タケネート600」:三井化学株式会社製商品名、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、以下HXDIと表する場合がある。
・「デスモジュールW」:住化バイエルウレタン株式会社製商品名、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、以下H12MDIと表する場合がある。
[ジルコニウム系化合物(C)(以下、Zr系化合物(C)と記すことがある)]
・「17%オクトープZr」:ホープ製薬株式会社製商品名、オクチル酸ジルコニル溶液、Zr金属含有量17質量%。
・「ニッカオクチックスジルコニウム12%」:日本化学産業株式会社製商品名、オクチル酸ジルコニル溶液、Zr金属含有量質量12%、以下12%オクチックスZrと表する場合がある。
・「ナフテックスジルコニウム4%」:日本化学産業株式会社製商品名、ナフテン酸ジルコニル溶液、Zr金属含有量質量4%、以下4%ナフテックスZrと表する場合がある。
・「オルガチックスZA−65」:マツモトファインケミカル株式会社製商品名、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、成分濃度87質量%、以下ZA−65と表する場合がある。
・「ジルコニウム(IV)アセチルアセトン錯体」:和光純薬工業株式会社製、以下Zracac錯体と表する場合がある。
[本発明では用いない従来公知の合成触媒]
・「ネオスタンU−830」:日東化成株式会社製商品名、ジオクチルスズジバーサテート。
・「DBU」:サンアプロ株式会社製商品名、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7。
・「18%オクトープ亜鉛」:ホープ製薬株式会社製商品名、オクチル酸亜鉛溶液、Zn金属含有量18質量%。
・「プキャット25」:日本化学産業株式会社製商品名、有機ビスマス化合物溶液、Bi金属含有量25質量%。
・「ニッカオクチックスカリウム10%」:日本化学産業株式会社製商品名、オクチル酸カリウム溶液、K金属含有量10質量%、以下10%オクチックスKと表する場合がある。
[充填材]
・「NS#400」:日東粉化工業株式会社製商品名、重質炭酸カルシウム粉体。
・「オプチホワイト」:バーゲス・ピグメント社製商品名、特殊焼成クレイ粉体。
[硬化触媒]
・「ネオスタンS−1」:日東化成株式会社製商品名、ジオクチルスズ系触媒
・「三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体」:和光純薬工業株式会社製。
[架橋性シラン化合物(D)の準備]
(架橋性シラン化合物D−1の準備)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(222.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで分子内にトリメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有する架橋性シラン化合物D−1を得た。
(架橋性シラン化合物D−2の準備)
反応容器内で、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(179.3質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(86.1質量部、3−アミノプロピルトリメトキシシランに対して1モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに40℃で3日間反応させることで分子内にトリメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有する架橋性シラン化合物D−2を得た。
(架橋性シラン化合物D−3の準備)
反応容器内で、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(179.3質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸ラウリル(240.4質量部、3−アミノプロピルトリメトキシシランに対して1モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで分子内にトリメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有する架橋性シラン化合物D−3を得た。
(架橋性シラン化合物D−4の準備)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(206.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで分子内にメチルジメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有する架橋性シラン化合物D−4を得た。
(架橋性シラン化合物D−5の準備)
架橋性シラン化合物D−5として、分子内に第二級アミノ基及びメチルジメトキシシリル基を有する(N−フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシランを準備した。
(架橋性シラン化合物D−6の準備)
架橋性シラン化合物D−6として、分子内に第二級アミノ基及びトリエトキシシリル基を有する(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシランを準備した。
(架橋性シラン化合物D−7の準備)
架橋性シラン化合物D−7として、分子内にメルカプト基及びトリメトキシシリル基を有する3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを準備した。
[硬化性シリル化ウレタン系樹脂の合成]
表1〜表14に示す処方で、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。ウレタンプレポリマーの合成条件は各表に示す通りであるが、特に記述のない場合は、NCO/OH比は2.0、反応温度は85℃である。
表1に示す配合割合(質量部)で、上記有機重合体(A)としてPMLS4015と、上記化合物(B)としてIPDIから、各化合物を触媒として用いてウレタンプレポリマー合成を行った。なお、表中のppm表記は、有機重合体(A)に対する各反応触媒の中心金属元素濃度である。表中に示す各条件で反応させた後、電位差滴定により、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらに、上記架橋性シラン化合物(D)として、表1に示す配合割合(質量部)で架橋性シラン化合物D−1を85℃で1時間反応させることで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。得られた硬化性シリル化ウレタン系樹脂の粘度(B型粘度計、10回転、23℃)を表1に示す。
Figure 2011162666
表1に示されるように、一般的に合成触媒として利用されている有機スズ触媒(ネオスタンU−830)で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例1)と、ジルコニウム系化合物である17%オクトープZrあるいは4%ナフテックスZrを触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例1〜3)の結果から、ジルコニウム系化合物を用いることで、有機スズ触媒を用いた場合と比較して極めて低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られることがわかる。
表2〜4に示す配合割合(質量部)で、上記有機重合体(A)としてPMLS4012と、上記化合物(B)としてIPDIから、各化合物を触媒として用いてウレタンプレポリマー合成を行った。なお、表中のppm表記は、有機重合体(A)に対する各反応触媒の中心金属元素濃度である。表中に示す各条件で反応させた後、電位差滴定により、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらに、上記架橋性シラン化合物(D)として、表2〜4に示す配合割合(質量部)で架橋性シラン化合物D−2を85℃で1時間反応させることで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。得られた硬化性シリル化ウレタン系樹脂の粘度(B型粘度計、10回転、23℃)を表2〜4に示す。
Figure 2011162666
Figure 2011162666
Figure 2011162666
表2〜4に示されるように、一般的に合成触媒として利用されている有機スズ触媒(ネオスタンU−830)で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例2〜5)と、ジルコニウム系化合物である12%ニッカオクチックスZrあるいは4%ナフテックスZrを触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例4〜14)の結果から、ジルコニウム系化合物を用いることで、種々の温度条件、上記有機重合体(A)の添加方法、混合条件によらず、有機スズ触媒を用いた場合と比較して極めて低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られることがわかる。
表5に示す配合割合(質量部)で、上記有機重合体(A)としてPMLS4012と、上記化合物(B)としてIPDIから、各化合物を触媒として用いてウレタンプレポリマー合成を行った。表中に示す各条件で反応させた後、電位差滴定により、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらに、上記架橋性シラン化合物(D)として、表5に示す配合割合(質量部)で架橋性シラン化合物D−2を85℃で1時間反応させることで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。得られた硬化性シリル化ウレタン系樹脂の粘度(B型粘度計、10回転、23℃)を表5に示す。
Figure 2011162666
表5に示されるように、一般的に合成触媒として利用されている有機スズ触媒(ネオスタンU−830)で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例2〜5)と、種々のジルコニウム系化合物を触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例15〜19)の結果から、種々のジルコニウム系化合物を用いることで、ジルコニウム系化合物の構造にかかわらず、有機スズ触媒を用いた場合と比較して極めて低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られることがわかる。
表6に示す配合割合(質量部)で、上記有機重合体(A)としてPMLS4012と、上記化合物(B)としてIPDIから、各化合物を触媒として用いてウレタンプレポリマー合成を行った。なお、表中のppm表記は、有機重合体(A)に対する各反応触媒の中心金属元素濃度である。表中に示す各条件で反応させた後、電位差滴定により、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらに、上記架橋性シラン化合物(D)として、表6に示す配合割合(質量部)で架橋性シラン化合物D−3を85℃で1時間反応させることで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。得られた硬化性シリル化ウレタン系樹脂の粘度(B型粘度計、10回転、23℃)を表6に示す。
Figure 2011162666
表6に示されるように、一般的に合成触媒として利用されている有機スズ触媒(ネオスタンU−830)で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例6又は7)と、ジルコニウム系化合物である17%オクトープZrあるいは4%ナフテックスZrを触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例20又は21)の結果から、ジルコニウム系化合物を用いることで、種々のNCO/OH比においても、有機スズ触媒を用いた場合と比較して極めて低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られることがわかる。
表7に示す配合割合(質量部)で、上記有機重合体(A)としてPMLS3011又はPMLS4104と、上記化合物(B)としてIPDIから、各化合物を触媒として用いてウレタンプレポリマー合成を行った。なお、表中のppm表記は、有機重合体(A)に対する各反応触媒の中心金属元素濃度である。表中に示す各条件で反応させた後、電位差滴定により、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらに、上記架橋性シラン化合物(D)として、表7に示す配合割合(質量部)で架橋性シラン化合物D−2を85℃で1時間反応させることで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。得られた硬化性シリル化ウレタン系樹脂の粘度(B型粘度計、10回転、23℃)を表7に示す。
Figure 2011162666
表7に示されるように、一般的に合成触媒として利用されている有機スズ触媒(ネオスタンU−830)で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例8又は9)と、ジルコニウム系化合物である12%ニッカオクチックスZrを触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例22又は23)の結果から、ジルコニウム系化合物を用いることで、多官能型のポリオール化合物(PMLS3011)や分子量の短いポリオール化合物(PMLS4104)においても、有機スズ触媒を用いた場合と比較して極めて低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られることがわかる。
表8に示す配合割合(質量部)で、上記有機重合体(A)としてPMLS4015及びPMLS1005と、上記化合物(B)としてIPDIから、各化合物を触媒として用いてウレタンプレポリマー合成を行った。なお、表中のppm表記は、有機重合体(A)に対する各反応触媒の中心金属元素濃度である。表中に示す各条件で反応させた後、電位差滴定により、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらに、上記架橋性シラン化合物(D)として、表8に示す配合割合(質量部)で架橋性シラン化合物D−4を85℃で1時間反応させることで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。得られた硬化性シリル化ウレタン系樹脂の粘度(B型粘度計、10回転、23℃)を表8に示す。
Figure 2011162666
表8に示されるように、一般的に合成触媒として利用されている有機スズ触媒(ネオスタンU−830)で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例10)と、ジルコニウム系化合物である17%オクトープZrを触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例24又は25)の結果から、ジルコニウム系化合物を用いることで、官能基数や分子量の異なるポリオール化合物を併用する際にも、有機スズ触媒を用いた場合と比較して極めて低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られることがわかる。
表9〜12に示す配合割合(質量部)で、上記有機重合体(A)としてPMLS4012と、上記化合物(B)としてHDI、LDI、XDI、TMXDI、MDI、TDI、NBDI、HXDI又はH12MDIから、各化合物を触媒として用いてウレタンプレポリマー合成を行った。なお、表中のppm表記は、有機重合体(A)に対する各反応触媒の中心金属元素濃度である。表中に示す各条件で反応させた後、電位差滴定により、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらに、上記架橋性シラン化合物(D)として、表9〜12に示す配合割合(質量部)で架橋性シラン化合物D−2を85℃で1時間反応させることで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。得られた硬化性シリル化ウレタン系樹脂の粘度(B型粘度計、10回転、23℃)を表9〜12に示す。
Figure 2011162666
Figure 2011162666
Figure 2011162666
Figure 2011162666
表9〜12に示されるように、一般的に合成触媒として利用されている有機スズ触媒(ネオスタンU−830)で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例11〜19)と、ジルコニウム系化合物である12%ニッカオクチックスZrあるいは4%ナフテックスZrを触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例25〜35)の結果から、ジルコニウム系化合物を用いることで、種々のポリイソシアネート化合物を用いる際にも、有機スズ触媒を用いた場合と比較して極めて低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られることがわかる。
表13に示す配合割合(質量部)で、上記有機重合体(A)としてPMLS4012と、上記化合物(B)としてIPDIから、各化合物を触媒として用いてウレタンプレポリマー合成を行った。表中に示す各条件で反応させた後、電位差滴定により、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらに、上記架橋性シラン化合物(D)として、表13に示す配合割合(質量部)で架橋性シラン化合物D−2を85℃で1時間(比較例21〜24)、及び架橋性シラン化合物D−3(実施例36及び比較例20)を85℃で7時間反応させることで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。得られた硬化性シリル化ウレタン系樹脂の粘度(B型粘度計、10回転、23℃)を表13に示す。
Figure 2011162666
表13に示されるように、アミン化合物で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例20)は、ジルコニウム系化合物を触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例36)に対して、粘度が高いことがわかる。また、ジルコニウム系化合物ではない金属化合物で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例21〜24)は、ジルコニウム系化合物を触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例4〜19)に対して、粘度が高いことがわかる。
表14に示す配合割合(質量部)で、上記有機重合体(A)としてPMLS4012と、上記化合物(B)としてIPDIから、各化合物を触媒として用いてウレタンプレポリマー合成を行った。表中に示す各条件で反応させた後、電位差滴定により、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらに、上記架橋性シラン化合物(D)として、表14に示す配合割合(質量部)で架橋性シラン化合物D−5又はD−6を85℃で1時間反応させることで、硬化性シリル化ウレタン系樹脂を合成した。得られた硬化性シリル化ウレタン系樹脂の粘度(B型粘度計、10回転、23℃)を表14に示す。
Figure 2011162666
表14に示されるように、一般的に合成触媒として利用されている有機スズ触媒(ネオスタンU−830)で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(比較例25又は26)と、ジルコニウム系化合物である12%ニッカオクチックスZrを用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂(実施例37又は38)の結果から、ジルコニウム系化合物を用いることで、有機スズ触媒を用いた場合と比較して極めて低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂が得られることがわかる。
以上、表1〜14の結果から示されるように、本発明にかかる低粘度な硬化性シリル化ウレタン系樹脂は、ジルコニウム系化合物を用いた場合にのみ得られる効果であり、従来公知の知見からは予期できない極めて特異な効果であるといえる。特に、得られる効果が硬化性シリル化ウレタン系樹脂の低粘度化であるため、本発明にかかる硬化性シリル化ウレタン系樹脂を、接着剤、シーリング材、粘着剤、コーティング剤等に応用する際に、その他の各種添加剤の混合・分散が容易であり、なおかつ、配合の幅が広がることから、産業上極めて有用な効果であるといえる。
[接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物の調製]
表15に示す配合割合(質量部)で、硬化性シリル化ウレタン系樹脂、及び、フィラーを混合容器に投入し、100〜120℃で1時間減圧混合を行った。その後、室温まで冷却し、表15に示す配合割合(質量部)で、接着性付与剤及び硬化触媒の混合液を混合容器に投入し、減圧下で10分混練することで、接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物を得た。得られた接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物を密閉容器に充填し、50℃で1週間静置した。50℃1週間静置後でも容器内でのゲル化は起こっていないことから、貯蔵安定性が高いことが分かった。その後、23℃で1日以上静置し、23±2℃相対湿度50±5%の条件下で、各接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物の硬化速度を比較した。硬化速度の確認は皮張り時間を用いて行った。皮張り時間は、各硬化性シリコーン系樹脂組成物を23±2℃相対湿度50±5%の雰囲気に暴露した直後を開始時間とし、表面に硬化皮膜が形成されるまでの時間とした。硬化皮膜が形成された時間は、金属製のスパーチュラで暴露された各接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物の表面を触ってスパーチュラに各接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物がつかなくなる時間とした。また、各接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物を用いて、接着強さを比較した。被着材には、木材(5mm×25mm×100mm)、硬質塩化ビニル樹脂(3mm×25mm×100mm)を準備した。各接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物を175±25g/mの塗布量で木材に塗布し、12.5mm×25mmの面積で、各被着材をはり合わせた。各はり合わせ試験体を23±2℃相対湿度50±5%の条件下で7日間暴露した後、引張速度5mm/分で引張せん断接着強さを測定した。それぞれの皮張り時間及び接着強さを表15に示す。
Figure 2011162666
表15に示されるように、ジルコニウム系化合物を触媒として用いて合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂を配合した接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物は、一般的に合成触媒として利用されている有機スズ触媒(ネオスタンU−830)で合成した硬化性シリル化ウレタン系樹脂を配合した接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物と、同等の硬化速度及び同等の引張せん断接着強さが得られることがわかる。以上のことから、本発明にかかる接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物は、従来の硬化性シリル化ウレタン系樹脂と同様に、種々な用途、例えば、接着剤、粘着剤、シーリング材、塗料、コーティング材などに利用することが可能である。
本発明にかかる硬化性樹脂組成物は、特に従来一液型又は二液型の硬化性樹脂組成物が用いられてきた全ての用途に使用できる。たとえば、接着剤、粘着剤、シーリング材、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。

Claims (7)

  1. 分子内に水酸基を有する有機重合体(A)と、分子内にイソシアネート基を有する化合物(B)とを、ジルコニウム系化合物(C)を触媒として用いて反応させることによって合成された、分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂に対して、分子内にイソシアネート基と反応し得る活性水素基を有する架橋性シラン化合物(D)を反応させることによって合成されることを特徴とする、硬化性シリル化ウレタン系樹脂。
  2. 上記架橋性シラン化合物(D)が、第2級アミノ基又はメルカプト基を有する架橋性シラン化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性シリル化ウレタン系樹脂。
  3. 上記有機重合体(A)が、分子内に水酸基を平均1.3個以上有する有機重合体であって、上記化合物(B)が、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性シリル化ウレタン系樹脂。
  4. 上記ジルコニウム系化合物(C)が、ジルコニウムアルコキサイド化合物、カルボン酸ジルコニウム化合物、ジルコニウムキレート化合物から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性シリル化ウレタン系樹脂。
  5. 上記ジルコニウム系化合物(C)が、ジルコニウムテトラブトキシド、オクチル酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル、ジルコニウムアセチルアセトン錯体から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性シリル化ウレタン系樹脂。
  6. 上記架橋性シラン化合物(D)が、下記一般式(1)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性シリル化ウレタン系樹脂。
    HN−CH−SiR 3−a(OR ・・・式(1)
    (但し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Rは分子量300以下の有機基を、Rは水素原子もしくは分子量500以下の有機基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性シリル化ウレタン系樹脂を100質量部、分子内に第1級アミノ基及び架橋性シリル基を有するアミノシラン化合物(E)を0.1〜30質量部、含有することを特徴とする接着性シリル化ウレタン系樹脂組成物。
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