JP2011160089A - 信号処理回路とこの回路を有する通信装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、変調波信号を増幅する電力増幅回路5に含まれるパワーアンプ16の電力効率を向上させるための信号処理回路9に関する。この回路9は、パワーアンプ16の出力電力を増加方向にシフトさせるための、変調波信号のIQベースバンド信号に対する調整信号ΔI,ΔQを生成する信号生成部(補正信号算出部20)と、生成された調整信号ΔI,ΔQをIQベースバンド信号に重畳する信号入力部(加減算器25,26)とを備える。
【選択図】 図4
Description
その一方で、電力増幅器(パワーアンプ)には優れた線形性が要求されるが、最大出力を超えるレベルの信号が入力されると、出力が飽和して非線形歪みが増大する。
ピーク電力に対して非線形歪みを増大させないためには、ダイナミックレンジの広い電力増幅器が必要となるが、頻繁には出現しないピーク電力のために増幅器のダイナミックレンジを広げると、時間軸上の波形の平均電力と短時間のピーク電力との比(PAPR:Peak to Average Power Ratio)が大きくなり、電力効率が悪くなる。
かかるクリッピング処理は、時間軸上でインパルス状の信号を逆向きに印加する処理であるから、周波数軸上では、広い周波数帯域のノイズが印加されるのと同じこととなる。そのため、クリッピング処理のみを単純に行った場合には、帯域外にノイズを生じさせるという問題がある。
このうち、NS−CFRは、瞬時電力が閾値を超えるIQベースバンド信号のピーク成分に対して、ローパスフィルタやFIR(Finite Impulse Response )フィルタ等でフィルタリングを行って帯域制限し、この帯域制限後のピーク成分を元のIQベースバンド信号から減算するものである(特許文献1参照)。
このET方式の電力増幅回路は、パワーアンプに入力する変調波信号から振幅情報(エンベロープ)を抽出し、これをパワーアンプの電源電圧として印加して、パワーアンプをほぼ飽和に近い状態で動作させるものである(特許文献4参照)。
従って、ET方式の場合には、パワーアンプの出力電力をなるべく下げないで動作させる方が、電力効率を向上させることができる。
しかし、従来のピーク電力抑制回路では、IQベースバンド信号に対して逆向きの振幅を与えるクリッピング処理を行うことから、その後段にある電力増幅回路のパワーアンプの出力電力を、その処理前よりも上げることができない。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、電力増幅回路のパワーアンプの電力効率をより確実に向上することができる信号処理回路等を提供することを目的とする。
この場合、前記信号入力部において、前記補正信号よりなる前記調整信号を前記IQベースバンド信号に重畳すればよい。
このように瞬時電力を底上げする「くり抜き処理」の場合でも、電力増幅回路に入力する変調波信号のPAPRが低下するので、従来のクリッピング処理の場合と同様に、電力効率の向上を図ることができる。
この場合、前記信号入力部において、前記正弦波信号よりなる前記調整信号を前記IQベースバンド信号に重畳すればよい。
また、上記オフセット回路よりなる信号生成部によれば、データ伝送に用いないDCサブキャリアに対応する周波数の正弦波信号を用いるので、この正弦波信号(調整信号)をIQベースバンド信号に重畳しても、受信側において通信不良が生じることがない。
この場合、前記信号入力部において、前記合成波信号よりなる前記調整信号を前記IQベースバンド信号に重畳すればよい。
また、上記オフセット回路よりなる信号生成部によれば、複数の前記サブキャリアの中心周波数に対応する周波数の正弦波信号を合成した合成波信号を用いるので、この合成波信号(調整信号)をIQベースバンド信号に重畳してもその位相が変化せず、受信側で通信不良が生じることがない。
この場合、前記信号入力部において、前記第2の補正信号を前記IQベースバンド信号に重畳すればよい。
〔第1実施形態〕
〔無線通信システム〕
図1は、本発明を好適に適用可能な無線通信システムの全体構成図である。
図1に示すように、本実施形態の無線通信システムは、基地局装置(BS:Base Station)1と、この装置1のセル内で当該装置1と無線通信を行う複数の移動端末(MS:Mobile Station)2とから構成されている。
もっとも、上記無線通信システムの変調方式としては、OFDM方式の他に、W−CDMA方式であってもよい。
図2は、基地局装置1のOFDM送信機3の要部を示す機能ブロック図である。
この送信機3は、送信用プロセッサ4と電力増幅回路5とを備えており、送信用プロセッサ4は、例えば、1又は複数のメモリやCPUを内部に有するFPGA(Field Programmable Gate Array )により構成されている。
すなわち、本実施形態の送信用プロセッサ4は、左から順に、S/P変換部6、マッピング部7、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部8、信号処理部9及び直交変調部10を含んでいる。
この各サブキャリア信号f1,f2,……fnは、IFFT部8によって時間軸上で互いに直交するベースバンド信号としてのI信号及びQ信号に変換される。
なお、本実施形態の信号処理回路9は、IQ信号の瞬時電力Pが所定の閾値Pth未満にならないように信号処理するものであるが、その詳細については後述する。
図3は、電力増幅回路5の一例を示す機能ブロック図である。
本実施形態の電力増幅回路5は、前記ET方式を採用しており、パワーアンプ16に入力する変調波信号から振幅情報(エンベロープ)を抽出し、これをパワーアンプ16の電源電圧として印加することにより、パワーアンプ16をほぼ飽和に近い状態で動作させるものである。
このうち、歪み補償部12は、例えば、パワーアンプ16の入力信号(変復調信号)に対してその歪み特性と逆の特性を予め付加することで、パワーアンプ16の出力信号を歪みの少ない状態で得るプリディストータよりなる。
この包絡線検波部13は、エンベロープ信号をゲート電圧調整部14とドレイン電圧変調部15に出力する。
パワーアンプ16は、例えば、FET(Field Effect Transistor)型のトランジスタよりなり、ドレイン電圧とゲート電圧に基づいて変調波信号を増幅する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る信号処理回路9の機能ブロック図である。
図4に示すように、本実施形態の信号処理回路9は、電力算出部18、比較部19、補正信号算出部20、フィルタ21,22、スケーリング部23,24、加減算器25,26及び遅延部27,28を含む。
また、加減算器25,26は、生成された調整信号(補正信号ΔI,ΔQ)をこれと対応するIQベースバンド信号に重畳する信号入力部を構成している。
補正信号算出部20は、比較部19から算出指令を受けると、次の式に基づいて、Iin信号とQin信号に印加すべき補正信号ΔI,ΔQをそれぞれ算出し、これを出力する。なお、補正信号算出部20は、算出指令を受けない場合にはゼロを出力する。
ΔI={1−SQRT(Pth/P)}×Iin
ΔQ={1−SQRT(Pth/P)}×Qin
また、加減算器25,26の前段にある遅延部27,28は、電力算出部18や補正信号算出部20等における演算処理の時間だけ、Iin信号とQin信号の時間を遅延させる。
この減算により、瞬時電力Pが閾値Pth未満のIQベースバンド信号については、閾値Pth相当の瞬時電力の信号に補正される。また、瞬時電力Pが閾値Pth以上のIQベースバンド信号については、補正されずにそのまま出力される。
この図5に示すように、本実施形態の信号処理回路9による処理は、IQベースバンド信号の瞬時電力Pの外周側をカットする従来のクリッピング処理とは逆に、その瞬時電力Pの内側をカットするいわば「くり抜き処理」を行うものである。なお、かかる「くり抜き処理」の場合も、電力が底上げされて電力増幅回路5に入力する変調波信号のPAPRが低下するので、この点においてもパワーアンプ16の電力効率が向上する。このくり抜き処理は、瞬時電力Pを所定の閾値Pth以上に底上げするという意味で、「ブースティング処理」と表現することもできる。
図6は、前記電力増幅回路5のパワーアンプ16の電力効率特性を示すグラフである。
図6に示すように、ET方式の電力増幅回路5の場合には、パワーアンプ16の電力効率特性は、出力電力PRFが増大するほど電力効率ηがほぼ単調に増加する単調増加区間Z1と、電力効率ηの増大が出力電力PRFにほぼ影響しない定常区間Z2とが現れるようになっている。なお、図6では、区間Z1の電力効率ηの特性を模式的に直線で示しているが、その特性は、厳密には直線ではなく、上方にやや膨らんだ曲線状になる。
そして、IQベースバンド信号の瞬時電力PがP<Pthである場合の、信号処理回路9による処理前の電力効率をη1、処理後の電力効率をη2とすると、これらの効率η1,η2は、それぞれ次のように算出される。
η2=α×{(PRF+Pa)/PDC}
一方、上記増加電力Paは、変調波信号に基づかない余分な出力であるから、信号処理後の真の電力効率η3は、η2からPaによる影響を差し引く必要がある。従って、信号処理後の真の電力効率η3は次のようになる。
η3=η2−Pa/PDC
=η1×〔1+{(α−1)/α}×(Pa/PRF)〕
そこで、本実施形態の送信機3では、α>1のパワーアンプ16を電力増幅回路5に搭載している。
そして、上記の通り、パワーアンプ16の単調増加区間Z1における傾きαが、1より大きくなっているので、パワーアンプ16の電力効率を信号処理前に比べて向上することができる。
図7は、本発明の第2実施形態に係る信号処理回路9の機能ブロック図である。
本実施形態の信号処理回路9は、所定の正弦波信号S1又は合成波信号S2を生成する信号生成部としてのオフセット回路30と、その正弦波信号S1又は合成波信号S2をIQベースバンド信号に重畳する信号入力部としての加算器31,32とから構成されている。
図8(a)に示すように、正弦波信号S1は、マルチキャリア信号よりなる変調波信号(本実施形態ではOFDM信号)におけるDCサブキャリアに対応する周波数の正弦波よりなる。なお、DCサブキャリアはデータ伝送に用いないので、これに対応する周波数の正弦波信号S1をIQベースバンド信号に重畳しても、受信側において通信不良が生じることはない。
なお、合成波信号S2は、各サブキャリアの中心周波数に対応する周波数の正弦波信号を合成したものであるから、これをIQベースバンド信号に重畳してもその位相が変化せず、受信側で通信不良が生じることはない。
本実施形態では、上記正弦波信号S1や合成波信号S2がIQベースバンド信号に重畳されるので、その信号S1,S2の印加によってパワーアンプ16の出力電力が増加方向にシフトし、その出力電力がゼロに落ち込むことがない。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
図9は、本発明の第3実施形態に係る信号処理回路9の機能ブロック図である。
図9に示すように、本実施形態の信号処理回路9では、第1補正信号算出部20に加えて、IQベースバンド信号に対してクリッピング処理を行うための第2補正信号算出部34を設けている点が、第1実施形態(図4)の信号処理回路9と異なる。
以下、第1実施形態(図4)と同じ機能部については、図9に同一符号を付して説明を省略し、相違点に係る構成ついて重点的に説明する。
また、比較部19は、算出された瞬時電力Pと各閾値Pth1,Pth2を比較し、瞬時電力Pが第1閾値Pth1よりも小さい場合には、第1補正信号算出部20に算出指令を発するとともに、瞬時電力Pが第2閾値Pth2よりも大きい場合には、第2補正信号算出部34に算出指令を発する。
ΔI1={1−SQRT(Pth1/P)}×Iin
ΔQ1={1−SQRT(Pth1/P)}×Qin
ΔI2={1−SQRT(Pth2/P)}×Iin
ΔQ2={1−SQRT(Pth2/P)}×Qin
この減算により、瞬時電力Pが第2閾値Pth2を超えるIQベースバンド信号については、第2閾値Pth2相当の瞬時電力の信号に補正される。また、瞬時電力Pが第2閾値Pth2以下のIQベースバンド信号については、補正されずにそのまま出力される。
この図10に示すように、本実施形態の信号処理回路9による処理は、IQベースバンド信号の瞬時電力Pの内側をカットする前記くり抜き処理と、そのIQベースバンド信号の瞬時電力Pの外周側をカットするクリッピング処理との双方を行うものである。
今回開示した実施形態は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、本発明の信号処理回路9とその後段の電力増幅回路5は、基地局装置1だけでなく、この基地局装置1とCPRI(Common Public Radio Interface)で繋がるRRH(Remote Radio Head)に搭載することもできる。
もっとも、EER方式では、RF信号には振幅変動がなく、包絡線信号に振幅変動があるので、EER方式の電力増幅回路に本発明を適用する場合には、その包絡線信号に本発明の信号処理を施して当該電力増幅回路の効率改善を図ることになる。
2 移動端末
3 送信機
4 送信用プロセッサ
5 電力増幅回路
9 信号処理部(信号処理回路)
16 パワーアンプ
18 電力算出部(信号生成部)
19 比較部(信号生成部)
20 補正信号算出部(信号生成部)
21,22 フィルタ
23,24 スケーリング部
25,26 加減算器(信号入力部)
27,28 遅延部
30 オフセット回路(信号生成部)
31,32 加算器(信号入力部)
34 第2補正信号算出部
35,36 フィルタ
37,38 スケーリング部
Claims (7)
- 変調波信号を増幅する電力増幅回路に含まれるパワーアンプの電力効率を向上させるための信号処理回路であって、
前記パワーアンプの出力電力を増加方向にシフトさせるための、前記変調波信号のIQベースバンド信号に対する調整信号を生成する信号生成部と、
生成された前記調整信号を前記IQベースバンド信号に重畳する信号入力部と、
を備えていることを特徴とする信号処理回路。 - 前記パワーアンプは、出力電力が増大するほど電力効率がほぼ単調に増加する区間を有し、かつ、その単調増加区間における傾きが1より大きい電力効率特性を有する請求項1に記載の信号処理回路。
- 前記信号生成部は、前記IQベースバンド信号の瞬時電力を算出する電力算出部と、前記瞬時電力が所定の閾値より小さい前記IQベースバンド信号を、当該閾値相当の瞬時電力となるように補正するための補正信号を算出する信号算出部と、を有しており、
前記信号入力部は、前記補正信号よりなる前記調整信号を前記IQベースバンド信号に重畳する請求項1又は2に記載の信号処理回路。 - 前記信号生成部は、マルチキャリア信号よりなる前記変調波信号のDCサブキャリアに対応する周波数の正弦波信号を生成するオフセット回路よりなり、
前記信号入力部は、前記正弦波信号よりなる前記調整信号を前記IQベースバンド信号に重畳する請求項1又は2に記載の信号処理回路。 - 前記信号生成部は、マルチキャリア信号よりなる前記変調波信号の複数のサブキャリアの中心周波数に対応する周波数の正弦波信号を合成した合成波信号を生成するオフセット回路よりなり、
前記信号入力部は、前記合成波信号を前記調整信号として前記IQベースバンド信号に重畳する請求項1又は2に記載の信号処理回路。 - 前記信号生成部は、前記瞬時電力が所定の第2の閾値より大きい前記IQベースバンド信号を、当該第2の閾値相当の瞬時電力となるように補正するための第2の補正信号を算出する第2の信号算出部を更に備えており、
前記信号入力部は、前記第2の補正信号を前記IQベースバンド信号に重畳する請求項3に記載の信号処理回路。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の前記信号処理回路と、その後段に配置された前記電力増幅回路とが搭載された送信機を有することを特徴とする通信装置。
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