JP2011158074A - 車両用自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両用自動変速機の変速制御において、自動変速機の変速状態を精度良く判定することができる車両用自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】出力回転部材28が整数回転したときの入力軸26の回転により得られるパルスの累積パルス数Nipcと予め設定された基準パルス数Nipcestとに基づいて自動変速機12の変速状態を判定することで、自動変速機12の変速状態を精度よく判定することができる。具体的には、出力回転部材28が整数回転したときに計数される、入力軸26の指標となる累積パルス数は、変速状態に応じて予め基準パルス数として設定できることが知られている。したがって、実際に計数される入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとを比較することで、自動変速機12の変速状態を判定することができる。
【選択図】図3
【解決手段】出力回転部材28が整数回転したときの入力軸26の回転により得られるパルスの累積パルス数Nipcと予め設定された基準パルス数Nipcestとに基づいて自動変速機12の変速状態を判定することで、自動変速機12の変速状態を精度よく判定することができる。具体的には、出力回転部材28が整数回転したときに計数される、入力軸26の指標となる累積パルス数は、変速状態に応じて予め基準パルス数として設定できることが知られている。したがって、実際に計数される入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとを比較することで、自動変速機12の変速状態を判定することができる。
【選択図】図3
Description
本発明は、車両用自動変速機の制御装置に係り、特に、車両用自動変速機の変速状態の変化を判定する技術に関するものである。
車両に備えられる自動変速機では、車両の走行状態に基づいて適宜変速制御が実施される。上記変速制御においては、その制御技術の向上に伴って変速状態に関する精度の高い情報が必要とされるようになっている。例えば自動変速機の変速制御中に自動変速機内のクラッチが滑り始めるイナーシャ相の開始時点、並びに、クラッチの係合が完了する係合完了時点ついても上記変速制御を実施するに際して精度良く判定されることが求められる。
ここで、自動変速機のイナーシャ相開始時点は、従来では以下のように判定されていた。まず、自動変速機の出力軸に設けられている出力軸回転速度センサよって検出される自動変速機の出力軸回転速度Noutと、自動変速機の変速前のギヤ比γとに基づいて変速前の入力軸回転速度Nt1(=Nout×γ)が算出され、さらに、自動変速機の入力軸に設けられている入力軸回転速度センサによって自動変速機の入力軸回転速度Nt2が逐次検出される。そして、変速前の入力軸回転速度Nt1と入力軸回転速度センサによる入力軸回転速度Nt2との差回転(=Nt1−Nt2)が、予め設定されている所定値αを越えるとき、イナーシャ相が開始したものと判定される。なお、自動変速機の係合完了時点の判定においても、上記と略同様の方法で判定される。
上記従来のイナーシャ相開始判定では、回転速度センサのセンシング誤差を考慮して所定値αを大きく設定する必要があり、正確なイナーシャ相の開始時点を判定することができなかった。例えば、所定値αが60rpm程度に設定されている場合、実際にはイナーシャ相が開始しているが、差回転(=Nt1−Nt2)が40rpmの状態で停滞していると、イナーシャ相開始が判定されない。また、自動変速機の係合完了判定では、差回転(=Nt1−Nt2)が所定値α以下となった場合、実際には係合完了していないにも拘わらず自動変速機の係合が完了したものと判定されてしまう。
これに対して、特許文献1の自動変速機の回転速度推定装置では、予め設定されている自動変速機の各変速段に対応した入力軸および出力軸に関するパルス数を読み込み、上記パルス数と入力軸から発信された第1のパルス信号および出力軸から発信された第2のパルス信号とに基づいて、自動変速機の入力軸回転速度および出力軸回転速度を算出する。そして、その算出された入力軸回転速度の変化に基づいてイナーシャ相の開始時期を早期に判定する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、自動変速機の入力軸回転速度および出力軸回転速度をパルス数に基づいて検出することで、その検出精度が向上するために、イナーシャ相の開始時点の検出精度が従来よりも向上するものの、前述したイナーシャ相の開始の閾値となる所定値αは小さくならないため、改善の余地があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両用自動変速機の変速制御において、自動変速機の変速状態を精度良く判定することができる車両用自動変速機の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)第1回転軸の回転を複数の変速比から選択された所定の変速比で変速して第2回転軸へ伝達する車両用自動変速機の制御装置であって、(b)前記第1回転軸および第2回転軸のうちの少なくとも第2回転軸の回転により発生する第2回転パルスを計数する回転パルス計数手段と、(c)前記第1回転軸が整数回転したときの前記第2回転軸の回転により得られる前記第2回転パルスの累積パルス数と予め設定された基準パルス数とに基づいて前記自動変速機の変速状態を判定する変速状態判定手段とを、含むことを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用自動変速機の制御装置において、(a)前記基準パルス数は、前記第1回転軸の整数回転に相当する前記第2回転軸の回転によってその第2回転軸から理論的に得られる予め設定されたパルス数であり、(b)前記変速状態判定手段は、前記第1回転軸の回転により発生する第1回転パルスの累積パルス数がその第1回転軸の整数回転に相当する予め設定された規定パルス数に到達したときの、その第1回転軸の整数回転にともなって回転する前記第2回転軸の回転により実際に得られる第2回転パルスの累積パルス数と、その基準パルス数との比較に基づいて、前記自動変速機の変速状態を判定するものであることを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両用自動変速機の制御装置において、前記第1回転軸は前記車両用自動変速機の出力軸であり、前記第2回転軸はその車両用自動変速機の入力軸であり、前記規定パルス数は、前記出力軸が一回転した際に得られるパルス数とその出力軸の整数回転数との積で得られ、前記基準パルス数は、前記入力軸が一回転した際に得られるパルス数と、前記車両用自動変速機のギヤ比と、前記出力軸の整数回転数との積で得られることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3の車両用自動変速機の制御装置において、前記変速状態判定手段は、前記出力軸が整数回転したときの前記入力軸の回転により得られるその入力軸の累積パルス数と前記基準パルス数とが相違した際に、前記車両用自動変速機のイナーシャ相が開始したものと判定するものであり、その基準パルス数はその車両用自動変速機の変速前のギヤ比に基づいて設定されることを特徴とする。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項3の車両用自動変速機の制御装置において、前記変速状態判定手段は、前記出力軸が整数回転したときの前記入力軸の回転により得られるその入力軸の累積パルス数と前記基準パルス数とが一致した際に、前記車両用自動変速機の係合が完了したものと判定するものであり、その基準パルス数はその車両用自動変速機の変速後のギヤ比に基づいて設定されることを特徴とする。
請求項1にかかる発明の車両用自動変速機の制御装置によれば、第1回転軸が整数回転したときの第2回転軸の回転により得られる第2回転パルスの累積パルス数と予め設定された基準パルス数とに基づいて自動変速機の変速状態を判定することで、自動変速機の変速状態を精度よく判定することができる。具体的には、第1回転軸が整数回転したときに計数される第2回転軸の指標となる累積パルス数は、変速状態に応じて予め基準パルス数として設定できることが知られている。したがって、実際に計数される第2パルスの累積パルス数と基準パルス数とを比較することで、自動変速機の変速状態(イナーシャ相開始時点など)を判定することができる。ここで、変速状態の判定に際して、第1回転軸が整数回転したときの第2回転軸の第2回転パルスを用いるため、第1回転軸が整数回転を外れた回転位置まで回転したときの第2回転軸の第2回転パルスに基づいて変速状態を判定する場合に比べて、変速状態の判定精度が向上する。第1回転軸が整数回転を外れた場合、例えば第1回転軸の回転位置をパルス数に基づいて検出するとき、第1回転軸に形成されているパルス数検出用の歯の製造ばらつきに基づいて、検出パルス数に誤差が発生する可能性がある。これに対して、第1回転軸が整数回転するときを基準とすることで、歯の製造ばらつきによる検出パルスの誤差もなくなるので、変速状態が精度良く判定されることとなる。
また、請求項2にかかる発明の車両用自動変速機の制御装置によれば、第1回転軸の回転に伴って計数される累積パルスが、第1回転軸の整数回転に相当する予め設定された規定パルスに到達することに基づいて、容易に第1回転軸の整数回転を判断することができる。そして、そのときの第2回転軸の回転により実際に得られる第2回転パルスの累積パルス数に基づいて、変速状態を精度よく判定することができる。
また、請求項3にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、規定パルス数は、自動変速機の出力軸が一回転した際に得られるパルス数とその出力軸の整数回転数の積で得られ、基準パルス数は、前記自動変速機の入力軸が一回転した際に得られるパルス数と、前記自動変速機のギヤ比と、前記出力軸の整数回転数との積で得られるため、出力軸の整数回転に応じた規定パルス数、およびその規定パルス数に対応する、すなわち出力軸の整数回転に応じた入力軸の基準パルス数を容易に得ることができる。
また、請求項4にかかる発明の車両用自動変速機の制御装置によれば、入力軸の回転により得られる入力軸の累積パルス数と、前記基準パルス数とが相違した際に、自動変速機のイナーシャ相が開始したものと判定することができる。ここで、基準パルス数は、自動変速機の変速前のギヤ比に基づいて設定されるので、イナーシャ相開始前において得られるべき累積パルス数が基準パルス数として算出される。したがって、イナーシャ相開始前では、入力軸の累積パルス数と基準パルス数とが一致するが、イナーシャ相が開始されると入力軸の累積パルス数と基準パルス数とが相違する。上記より、入力軸の累積パルス数と基準パルス数とを比較し、互いのパルス数が相違した際に、自動変速機のイナーシャ相の開始を判定することができる。
また、請求項5にかかる発明の車両用自動変速機の制御装置によれば、入力軸の回転により得られる入力軸の累積パルス数と前記基準パルス数とが一致した際に、自動変速機の係合が完了したものと判定することができる。ここで、基準パルス数は、自動変速機の変速後のギヤ比に基づいて算出されるので、係合完了後において得られるべき累積パルス数が基準パルス数として算出される。したがって、イナーシャ相中では、入力軸の累積パルス数と基準パルス数とが相違するが、係合が完了すると入力軸の累積パルス数と基準パルス数とが一致する。上記より、入力軸の累積パルス数と基準パルスとを比較し、互いのパルス数が一致した際に、自動変速機の係合完了を判定することができる。
ここで、好適には、前記回転パルス計数手段は、車両用自動変速機の入力軸および出力軸に形成されている歯車の凹凸の数を入力軸回転速度センサおよび出力軸回転速度センサによって検出し、累積的に計数するものである。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用される車両用駆動装置8(以下、「駆動装置8」という)の構成を説明する骨子図である。駆動装置8は、エンジン10と、自動変速機12(本発明の車両用自動変速機に対応)と、エンジン10の出力軸13に連結されてそのエンジン10と自動変速機12との間に介装されたトルクコンバータ14とを備えている。そして、駆動装置8は、車両6(図3参照)の左右方向(横置き)に搭載するFF車両に好適に用いられるものである。
自動変速機12は、トルクコンバータ14と駆動輪38(図3参照)との間の動力伝達経路の一部を構成し、エンジン10の出力トルクTe(以下、「エンジントルクTe」という)が入力される変速機である。そして、自動変速機12は、複数の油圧式摩擦係合装置(クラッチC、ブレーキB)具体的には5つの油圧式摩擦係合装置を備え、その複数の油圧式摩擦係合装置の何れかの掴み替えにより複数の変速段(ギヤ段)が選択的に成立させられる変速機である。端的に言えば、一般的な車両によく用いられる所謂クラッチツゥクラッチ変速を行う有段変速機である。
自動変速機12は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置16を主体として構成されている第1変速部18と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置20およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置22を主体としてラビニヨオ型に構成されている第2変速部24とを同軸線上に有し、入力軸26の回転を変速して出力回転部材28(本発明の出力軸に対応する)から出力する。その入力軸26は入力部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力を供給する内燃機関であるエンジン10によって回転駆動されるトルクコンバータ14のタービン軸である。また、上記出力回転部材28は自動変速機12の出力部材に相当するものであり、差動歯車装置32(図3参照)に動力を伝達するためにそのデフドリブンギヤ(大径歯車)34と噛み合う出力歯車すなわちデフドライブギヤとして機能している。上記エンジン10の出力は、トルクコンバータ14、自動変速機12、差動歯車装置32、および一対の車軸36を介して一対の駆動輪(前輪)38へ伝達されるようになっている(図3参照)。従って、出力回転部材28の回転速度である自動変速機12の出力回転速度Nout(rpm)が高いほど車速V(km/h)も高くなり、出力回転速度Noutは、車速Vと一対一で対応する。なお、この自動変速機12は中心線に対して略対称的に構成されており、図1ではその中心線の下半分が省略されている。
また、図1に示すように、入力軸26の入力軸回転速度Ninを検出するための入力軸回転速度センサ27が設けられていると共に、出力回転部材28(出力軸)の出力軸回転速度Noutを検出するための出力軸回転速度センサ29が設けられている。入力軸回転速度センサ27および出力軸回転速度センサ29は、いずれも入力軸26および出力回転部材28(出力軸)にたとえば同じ歯数となるように形成されている図示しない周期的な凹凸面を有する磁性体製外周歯に近づけられた状態で設置される。そして、公知のように、入力軸26の回転に伴って磁性体と入力軸回転速度センサ27との間の距離が変化すると、それに従って入力軸回転速度センサ27の信号電流がパルス状に変化する。入力軸回転速度センサ27は、上記信号電流の変化を電圧に変換してパルス形成し、規定のパルス数を検出した際に要した時間に基づいて、入力軸26の入力軸回転速度Ninを算出する。また、出力軸回転速度センサ29についても、公知である同様の原理で出力軸回転速度Noutを算出する。したがって、入力軸回転速度センサ27および出力軸回転速度センサ29は、いずれも出力軸26および出力回転部材28に形成されているパルス状の凹凸面に対応するパルス数を逐次検出可能に構成されている。
図2は、自動変速機12において複数の変速段(ギヤ段)を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。自動変速機12は、第1変速部18および第2変速部24の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)のうちのいずれかの連結状態の組み合わせに応じて第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の6つの前進変速段が成立させられるとともに、後進変速段「R」の後進変速段が成立させられる。図2に示すように、たとえば前進ギヤ段では、(1)クラッチC1とブレーキB2の係合により第1速ギヤ段が、(2)クラッチC1とブレーキB1の係合により第2速ギヤ段が、(3)クラッチC1とブレーキB3の係合により第3速ギヤ段が、(4)クラッチC1とクラッチC2の係合により第4速ギヤ段が、(5)クラッチC2とブレーキB3の係合により第5速ギヤ段が、(6)クラッチC2とブレーキB1の係合により第6速ギヤ段が、それぞれ成立させられるようになっている。また、ブレーキB2とブレーキB3の係合により後進ギヤ段が成立させられ、クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3のいずれも解放されることによりニュートラル状態となるように基本的に構成されている。本実施例の自動変速機12では、所定のギヤ段を達成させるために一対の油圧式摩擦係合装置が係合させられるようになっており、その一対の油圧式摩擦係合装置の一方が解放されるとその所定のギヤ段が不成立とされ、自動変速機12内の動力伝達経路が解放されてニュートラル状態となる。
図2の作動表は、上記各変速段とクラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合を表している。第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無いのである。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置16、第2遊星歯車装置20、および第3遊星歯車装置22の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。なお、図1の符号30は、非回転部材であるトランスミッションケースである。
上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路40に設けられたリニアソレノイドバルブの励磁、非励磁や電流制御により、係合、解放状態が切り換えられるとともに、係合、解放時の過渡油圧などが制御される。
上記クラッチC1およびクラッチC2は、図2に示されるように、前進ギヤ段のいずれにおいてもそれらのうちの一方或いは他方が必ず係合させられる。すなわち、上記クラッチC1またはクラッチC2の係合が前進ギヤ段の達成要件とされており、したがって、本実施例においては、クラッチC1またはクラッチC2がフォワードクラッチ(前進クラッチ)に相当する。
トルクコンバータ14は、エンジン10の出力軸(クランク軸)13に連結されたポンプ翼車14aと、自動変速機12の入力軸26に連結されたタービン翼車14bと、一方向クラッチを介して自動変速機12のハウジング(トランスミッションケース)30に連結されたステータ翼車14cとを備えており、エンジン10により発生させられた駆動力を自動変速機12へ流体を介して伝達する流体式動力伝達装置である。また、上記ポンプ翼車14a及びタービン翼車14bの間には、直結クラッチであるロックアップクラッチ46が設けられており、油圧制御等により係合状態、スリップ状態、或いは解放状態とされるようになっている。このロックアップクラッチ46が係合状態とされることにより、厳密に言えば、完全係合状態とされることにより、上記ポンプ翼車14a及びタービン翼車14bが一体回転させられる。
図3は、電子制御装置52に備えられた制御機能の要部であって、特に自動変速機12の変速制御に関する制御機能を説明するための機能ブロック線図である。また、図4は、電子制御装置52によって行われる自動変速機12の変速制御で用いられる変速線図の一例を示した図である。電子制御装置52は、駆動装置8の制御装置としての機能を有しており、たとえばROM、RAM、CPU、入出力インターフェースなどを含む所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って入力信号を処理して、油圧制御回路40のリニアソレノイドバルブを制御する自動変速制御を実行する。なお、図3においては記載されていないが、実際には、電子制御装置52は、エンジン10の出力制御、トルクコンバータ14に備えられたロックアップクラッチ46の係合、解放、或いはスリップを行う制御なども実行する。
変速制御手段70は、自動変速機12による変速動作を制御する。例えば、変速制御手段70は、よく知られたアップシフト線とダウンシフト線とから構成された変速線図(変速マップ)を予め記憶しており、その変速線図から、実際の自動変速機12の出力回転速度Nout(車速V)と運転者のアクセルペダル踏み込み量に対応するアクセル開度Accとに基づいて変速をすべきとの変速判断をして自動変速機12の変速段を決定し、この決定された変速段および係合状態が得られるように油圧制御回路40に設けられた図示しないリニアソレノイドバルブを制御する。上記変速線図の一例が図4に示されている。
上記変速線図における変速線(アップシフト線、ダウンシフト線)は、実際のアクセル開度Accを示す横線上において実際の出力回転速度Noutが線を横切ったか否か、すなわち、変速線上の変速を実行すべき値(変速点出力回転速度)NSoutを越えたか否かを判断するためのものであり、その変速を実行すべきアクセル開度Acc及び出力回転速度Noutなどで示される車両状態を表す変速点の連なりとして予め記憶されていることにもなる。すなわち、上記変速線図に含まれる上記ダウンシフト線は自動変速機12のダウンシフトを実行すべき変速点(ダウンシフト点)の連なりであり、上記変速線図に含まれる上記アップシフト線は自動変速機12のアップシフトを実行すべき変速点(アップシフト点)の連なりである。なお、図4では、前記ダウンシフト線が破線で表されており、前記アップシフト線が実線で表されている。
変速状態判定手段72は、自動変速機12の変速制御中における変速状態を判定する。具体的には、変速状態判定手段72は、自動変速機12のイナーシャ相開始時点およびイナーシャ相が終了する係合完了時点を判定する。そして、変速制御手段70は、変速状態判定手段72によって判定されたイナーシャ相の開始時点および係合完了時点に基づいて、変速制御態様を切替える。
ところで、従来のイナーシャ相開始時点は、出力軸回転速度Noutおよび変速前のギヤ比γに基づいて算出されるイナーシャ相開始前の入力軸回転速度Nin1と、入力軸回転速度センサ27によって直接検出される入力軸回転速度Nin2との差回転(=Nin1−Nin2)を算出し、その差回転が予め設定されている所定値αを越えるか否かに基づいて判定されていた。上記従来のイナーシャ相開始時点判定では、回転速度センサのセンシング誤差を考慮して判定の閾値となる所定値αを設定する必要があるため、所定値α(60rpm程度)を十分に小さな値に設定することが困難であった。したがって、例えば実際にはイナーシャ相が開始した状態であってもイナーシャ相開始時点が検出できない可能性があった。また、イナーシャ相が終了する係合完了時点の判定においても同様に、所定値αを十分に小さな値にすることができないため、係合が完了していない場合であっても、係合完了と判定される可能性があった。
これに対して、本実施例の変速状態判定手段72は、入力軸26(本発明の第2回転軸に対応)および出力回転部材28(本発明の第1回転軸に対応)の回転に伴って増加するパルス数を累積的に計数し、その計数されたパルス数に基づいて自動変速機12変速状態、具体的には、自動変速機12のイナーシャ相開始時点、並びにイナーシャ相が終了する係合完了時点を判定する。以下、変速状態判定手段72による具体的な判定方法について説明する。
入力軸26の累積的なパルス数Nipc(以下、累積パルス数Nipcと記載)および出力回転部材28の累積的なパルス数Nopc(以下、累積パルス数Nopcと記載)は、回転パルス計数手段73によって計数される。回転パルス計数手段73は、所定の時点より入力軸26の回転により発生する入力軸26のパルスの計数を開始し、累積パルス数Nipcとして出力する。また、回転パルス計数手段73は、所定の時点より出力回転部材28の回転により発生する出力回転部材28のパルスの計数を開始し、累積パルス数Nopcとして出力する。なお、入力軸26のパルス(本発明の第2回転パルスに対応)は、入力軸26に形成されているパルス検出用の歯車近傍に設けられている入力軸回転速度センサ27によって得られ、出力回転部材28のパルス(本発明の第1回転パルスに対応)は、出力回転部材28に形成されているパルス検出用の歯車近傍に設けられている出力軸回転速度センサ29によって得られる。これより、回転パルス計数手段73は、入力軸26の入力軸回転速度Ninおよび出力回転部材28の出力軸回転速度Noutを検出することもできる。
ここで、入力軸26が一回転する際に計数される累積パルス数Nipc1および出力回転部材28が一回転する際に計数される累積パルス数Nopc1は、それぞれ出力軸26および出力回転部材28に形成されているパルス検出用の歯車の凹凸面の数に対応しており、予め記憶手段74に記憶されている。また、自動変速機12の各変速段毎に対応するギヤ比γも同様に、予め記憶手段74に記憶されている。
基準値算出手段76は、出力回転部材28が整数回転した際において、入力軸26の回転によって入力軸26から理論的に得られる予め設定された基準パルス数Nipcestを算出する。基準パルスNipcestは、下式(1)に基づいて算出される。ここで、累積パルス数Nipc1は入力軸26が一回転する際に計数される累積パルス数であり、Iは出力回転部材28の整数回転の数に対応している。下式(1)より、基準パルス数Nipcestは、入力軸26が一回転したときに得られる累積パルス数Nipc1と、自動変速機12のギヤ比γと、出力回転部材28の整数回転との積で求められることを示している。例えば、Iが1の場合、出力回転部材28が一回転した場合において設定される基準パルスNipcestが算出され、Iが2の場合、出力回転部材28が二回転した場合において設定される基準パルス数Nipcestが算出される。
Nipcest=Nipc1×γ×I(I=1,2,3・・・)・・・(1)
変速状態判定手段72は、出力回転部材28が整数回転したときの入力軸26の回転により得られる入力軸26の累積パルス数Nipcと、基準値算出手段76によって算出された基準パルス数Nipcestとに基づいて自動変速機12の変速状態を判定する。
ここで、出力回転部材28の整数回転は、出力回転部材28の回転により発生する出力回転部材28のパルス(本発明の第1回転パルスに対応)の累積パルス数Nopcが、出力回転部材28の整数回転に相当する予め設定された規定パルスNopcfに到達したことに基づいて判断される。ここで、上記規定パルス数Nopcfは、下式(2)に基づいて設定され、予め記憶手段74に記憶されている。なお、Nopc1は、出力回転部材28が一回転したときに計数される累積パルス数であり、Iは出力回転部材28の整数回転数に対応している。下式(2)より、規定パルス数Nopcfは、出力回転部材28が一回転した際に得られる累積パルス数Nopcfと出力回転部材28の整数回転数との積で求められることを示している。例えばIが1の場合、出力回転部材28が一回転した場合に設定される規定パルス数Nopcfが算出され、Iが2の場合、出力回転部材28が二回転した場合に設定される規定パルス数Nopcfが算出される。
Nopcf=Nopc1×I(I=1,2,3・・・)・・・・(2)
変速状態判定手段72は、出力回転部材28の回転により発生するパルス(第1回転パルス)の累積パルス数Nopcが、出力回転部材28の整数回転に相当する予め設定された規定パルスNopcfに到達するときの、出力回転部材28の整数回転に伴って回転する入力軸26の回転により実際に得られるパルス(第2回転パルス)の累積パルスNipcと、基準値算出手段76によって予め設定されている基準パルスNipcestとの比較に基づいて、自動変速機12の変速状態を判定する。
例えば、自動変速機12のイナーシャ相開始前においては、自動変速機12の入力軸26の回転変化がはじまらないため、出力回転部材28が整数回転したとき(すなわち出力回転部材28の累積パルス数Nopcが規定パルス数Nopcfに到達したとき)の入力軸26において得られる累積パルス数Nipcは、基準パルス数Nipcestと等しくなる。なお、このときに設定されるパルス数Nipcestは、変速前の変速段に対応するギヤ比γに基づいて算出された値である。そして、イナーシャ相が開始されると、入力軸26の回転変化が生じるため、入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルスNipcestとが相違することとなる。
変速状態判定手段72は、上記に基づいて、出力回転部材28が整数回転したときの入力軸26の回転により得られる入力軸26の累積パルス数Nipcとその整数回転に対応した基準パルス数Nipcestとを比較し、累積パルス数Nipcが基準パルス数Nipcestと相違したとき、自動変速機12のイナーシャ相が開始したものと判定する。なお、自動変速機12がアップシフトされる場合、累積パルス数Nipcが基準パルス数Nipcestよりも小さくなり、ダウンシフトされる場合、累積パルス数Nipcが基準パルス数Nipcestよりも大きくなる。
また、イナーシャ相が終了する係合完了時点においては、入力軸26の回転変化が終了するため、出力回転部材28が整数回転したとき(すなわち出力回転部材28の累積パルス数Nopcが規定パルス数Nopcfに到達したとき)の入力軸26において得られる累積パルス数Nipcは、基準パルス数Nipcestと等しくなる。なお、このときに設定される基準パルス数Nipcestは、変速後の変速段に対応するギヤ比γに基づいて算出された値である。
変速状態判定手段72は、上記に基づいて、出力回転部材28が整数回転したときの入力軸26の回転により得られる入力軸26の累積パルス数Nipcとその整数回転に対応した基準パルス数Nipcestとを比較し、累積パルス数Nipcが基準パルス数Nipcestと一致したとき、自動変速機12のイナーシャ相が終了したものと判定する。
上記のように、出力回転部材28が整数回転したときの入力軸26の回転により得られる入力軸26の累積パルス数Nipcを計数し、その累積パルス数Nipcと整数回転に応じて設定される入力軸26の基準パルス数Nipcestとを比較することで、自動変速機12のイナーシャ相開始時点および係合完了時点を精度よく判定することができる。また、出力回転部材28の整数回転数が大きくなると、入力軸26の累積パルス数Nipcも同様に大きくなることから、例えばイナーシャ相が開始されると、累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとの差が累積的に大きくなる。したがって、出力回転部材28の整数回転数が増加するに従って、累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとの差が明確となり、自動変速機12の変速状態の判定がさらに正確となる。
また、本実施例では、出力回転部材28が整数回転したときを基準として、入力軸26の基準パルス数Nipcestが設定されているが、出力回転部材28が整数回転でない場合を基準として入力軸26の基準パルス数Nipcestを設定して、自動変速機12の変速状態を判定することもできる。しかしながら、出力軸26および出力回転部材28に形成されるパルス検出用の歯の凹凸面の形状は、製造ばらつきがあるため、例えば出力回転部材28において20度毎に凹凸が変化するように設計されている場合であっても、その間隔が19度や21度となる場所も存在しうる。したがって、出力回転部材28が整数回転でない場合を基準とすると、歯の製造ばらつきによって、累積パルス数Nopcに検出誤差が発生する可能性がある。これに対して、出力回転部材28の整数回転を基準とすると、必ず一周して元の凹凸面の検出位置に戻るため、上記製造ばらつきによるパルス検出誤差が生じないため、自動変速機12の変速状態の判定精度が向上する。
以下、電子制御装置52による制御作動を、図5のフローチャートに基づいて具体的に説明する。ここで、図5のフローチャートは、例えば第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフトにおいて、イナーシャ相開始時点を判定する際の電子制御装置52の制御作動を示している。なお、本フローチャートにおいては、入力軸26が一回転した際に得られるパルス数Nipc1を20パルスとし、出力回転部材28が一回転した際に得られるパルス数Nopc1を24パルスとし、第1速ギヤ段のギヤ比γを4.0として、出力回転部材28が600rpmで回転しているものとする。
回転パルス計数手段73に対応するステップSA1(以下、ステップを省略)において、所定の時点より自動変速機12の入力軸26の入力軸回転速度Ninの検出、および、累積パルス数Nipcの計数が開始されると共に、出力回転部材28の出力軸回転速度Noutの検出、および、出力回転部材28の累積パルス数Nopcの計数が開始される。
基準値算出手段76に対応するSA2においては、記憶手段74に記憶されているデータに基づいて、上述した式(1)より、出力回転部材28の規定パルス数Nopcf(規定値)に対する入力軸26の基準パルス数Nipcest(基準値)が算出される。なお、規定パルスNopcfは、出力回転部材28の整数回転に相当するパルス数に設定されていることから、基準パルス数Nipcestは、出力回転部材28が整数回転したときに相当するパルス数となる。また、基準パルス数Nipcestは、必ずしも本フロー毎に算出する必要はなく、予め自動変速機12の変速段毎の基準パルス数Nipcestを算出して、例えば自動変速機12のギヤ比γと基準パルス数Nipcestとから成る2次元マップで予め記憶し、変速される変速段に対応する基準パルス数Nipcestを適宜読み出しても構わない。
例えば、入力軸26が一回転した際に得られるパルス数Nipc1が20パルス、出力回転部材28が一回転した際に得られるパルス数Nopc1が24パルス、第1速ギヤ段のギヤ比γが4.0である場合、出力回転部材28の一回転に相当する規定パルス数Nopcf(=24パルス)に対応する基準パルス数Nipcestは、式(1)より、80パルス(=20×4.0)となる。
また、出力回転部材28が二回転、三回転・・・したときの基準パルス数Nipcestは、式(1)に基づいて、160(20×4×2:二回転)、240(20×4×3:三回転)・・・と80パルスの倍数となる。なお、この基準パルス数Nipcestに対応する出力回転部材28の規定パルス数Nopcfは、式(2)より、48(二回転)、72(三回転)、・・・と24パルスの倍数に設定される。
そして、変速状態判定手段72に対応するSA3では、出力回転部材28の計数された累積パルス数Nopcが規定パルス数Nopcfに到達したときに得られる、入力軸26の累積パルス数Nipcが、SA2において算出された基準パルス数Nipcestよりも小さいか否かが判定される。
ここで、SA3が否定されると、SA1に戻り、入力軸26の累積パルス数Nipcおよび出力回転部材28の累積パルス数Nopcの計数が継続して実施され、SA3が肯定されるまで同様の判定が繰り返し実行される。そして、SA3が肯定されると、変速状態判定手段72に対応するSA4において、自動変速機12のイナーシャ相が開始されたものと判定される。
例えば、イナーシャ相開始前において、出力回転部材28が600rpmで回転している場合を考えると、入力軸26の回転速度Ninは、自動変速機12のギヤ比γ(=4.0)に基づいて、2400rpm(=600×4)で回転することとなる。ここで、自動変速機12のイナーシャ相が開始され、入力軸回転速度Ninが2370rpmとなった場合、出力回転部材28が一回転(24パルス分)するのに要する時間tは、100ms(出力回転部材28の回転速度Noutが600rpmであるため)となることから、その間に入力軸26は、(2370rpm÷60)×0.10=79/20回転することとなる。したがって、入力軸26において計数される累積パルス数Nipcは、79パルスとなる。これより、出力回転部材28の累積パルス数Nopcが24パルス(出力回転部材28の一回転分)計数された間に入力軸26において計数される累積パルス数Nipcが79パルスと、基準パルス数Nipcest(=80:出力回転部材28の一回転時)よりも1パルス小さくなるため、イナーシャ相の開始が判定されるものと判定される。ここで、上記においては、イナーシャ相開始前の入力軸26の回転速度Ninが2400rpmであり、イナーシャ相開始時の入力軸26の回転速度Ninが2370rpmと、回転速度差が30rpmと比較的小さくともイナーシャ相の開始判定が可能となる。
また、自動変速機12のイナーシャ相が開始され、入力軸回転速度Ninが2370rpmになった場合において、出力回転部材28が二回転(48パルス分)するのに要する時間tは、200ms(出力回転部材28の回転速度Noutが600rpmであるため)となることから、その間の入力軸26の回転は(2370rpm÷60)×0.20となり、まとめると158/20回転することなる。したがって、入力軸26において計数される累積パルス数Nipcは、158パルスとなる。これより、出力回転部材28の累積パルス数Nopcが、出力回転部材28の二回転分に相当する規定パルス数Nopcf(=48)に到達したときに計数される入力軸26の累積パルス数Nipcが158パルスと、出力回転部材28の二回転に相当する基準パルス数Nipcesti(=160)よりも2パルス小さくなるため、イナーシャ相開始が判定される。上記より、出力回転部材28が二回転した場合では、出力回転部材28の累積パルス数Nopcが二回転に相当する規定パルスNopcfに到達する時間は、一回転の場合と比較して長くなるものの、入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとの差が2パルスと大きくなり、一回転の場合に比べて判定精度が向上する。
さらに、自動変速機12のイナーシャ相が開始され、入力軸回転速度Ninが2385rpmになった場合において、出力回転部材28が二回転(48パルス分)するのに要する時間tは、200ms(出力回転部材28の回転速度Noutが600rpmであるため)となることから、その間の入力軸26の回転は(2385÷60)×0.2となり、まとめると159/20回転することとなる。したがって、入力軸26において計数される累積パルス数Nipcは、159パルスとなる。これより、出力回転部材28の累積パルス数Nopcが、出力回転部材28の二回転分に相当する規定パルス数Nopcf(=48)に到達したときに計数される入力軸26の累積パルス数Nipcが159パルスと、出力回転部材28の二回転分に相当する基準パルス数Nipcest(=160)よりも1パルス小さくなるため、イナーシャ相が開始されたものと判定される。上記より、出力回転部材28が二回転したときの、入力軸26の累積パルス数Nipcに基づいてイナーシャ相を判定する場合、出力回転部材28の累積パルス数Nopcが二回転に相当する規定パルスNopcfに到達する時間は、一回転の場合と比較して長くなるものの、イナーシャ相開始前の回転速度(=2400rpm)とイナーシャ相開始時の回転速度(=2385rpm)との差が、回転速度差が15rpmとさらに小さくなってもイナーシャ相の開始を判定することができる。
上記より、出力回転部材28の整数回転数が増加するにしたがって、出力回転部材28の規定パルスNopcfが増加するため、出力回転部材28の累積パルス数Nopcが規定パルスNopcfに到達する時間は長くなるものの、イナーシャ相開始の判定精度がさらに向上すると共に、イナーシャ相開始時の入力軸26の回転速度変化がさらに小さくともイナーシャ相の判定が可能となる。
ここで、本実施例では、出力回転部材28が整数回転したときを基準として、入力軸26の累積パルス数Nipcおよび基準パルス数Nipcestを比較することで、自動変速機12の変速状態が判定されるが、入力軸26が整数回転したときを基準として、出力回転部材28の累積パルス数Nopcに基づいて自動変速機12の変速状態を判定することもできる。すなわち、自動変速機12の入力軸26が整数回転したときを基準としても、そのときに出力回転部材28におい設定される基準パルス数は、予め理論的に算出することができるので、出力回転部材28の基準パルス数に基づいて自動変速機12の変速状態を判定することができる。要するに、入力軸26および出力回転部材28のいずれの整数回転を基準としても、そのときの他方の回転軸の累積パルス数は相対的に変化するため、自動変速機12の変速状態の判定が可能となる。
上述のように、本実施例によれば、出力回転部材28が整数回転したときの入力軸26の回転により得られるパルスの累積パルス数Nipcと予め設定された基準パルス数Nipcestとに基づいて自動変速機12の変速状態を判定することで、自動変速機12の変速状態を精度よく判定することができる。具体的には、出力回転部材28が整数回転したときに計数される、入力軸26の指標となる累積パルス数は、変速状態に応じて予め基準パルス数として設定できることが知られている。したがって、実際に計数される入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとを比較することで、自動変速機12の変速状態(イナーシャ相開始時点など)を判定することができる。ここで、変速状態の判定に際して、出力回転部材28が整数回転したときの入力軸26のパルスを用いるため、出力回転部材28が整数回転を外れた回転位置まで回転したときの入力軸26の累積パルス数Nipcに基づいて変速状態を判定する場合に比べて、変速状態の判定精度が向上する。出力回転部材28が整数回転を外れた場合、例えば出力回転部材28の回転位置を累積パルス数Nopcに基づいて検出するとき、出力回転部材28に形成されているパルス数検出用の歯の製造ばらつきに基づいて、検出パルス数に誤差が発生する可能性がある。これに対して、出力回転部材28が整数回転するときを基準とすることで、歯の製造ばらつきによる検出パルスの誤差もなくなるので、変速状態が精度良く判定されることとなる。
また、本実施例によれば、出力回転部材28の回転に伴って計数される累積パルスNopcが、出力回転部材28の整数回転に相当する予め設定された規定パルスNopcに到達することに基づいて、容易に出力回転部材28の整数回転を判断することができる。
また、本実施例によれば、規定パルス数Nopcfは、自動変速機12の出力回転部材28が一回転した際に得られるパルス数Nopc1とその出力回転部材28の整数回転の積で得られ、基準パルス数Nipcestは、自動変速機12の入力軸26が一回転した際に得られるパルス数Nipc1と、自動変速機12のギヤ比γと、出力回転部材28の整数回転数との積で得られるため、出力回転部材28の整数回転に応じた規定パルス数Nopc、およびその規定パルス数Nopcに対応する、すなわち出力回転部材28の整数回転に対応する入力軸26の基準パルス数Nipcestを容易に得ることができる。
また、本実施例によれば、入力軸26の回転により得られる入力軸26の累積パルス数Nipcと、基準パルス数Nipcestとが相違した際に、自動変速機12のイナーシャ相が開始したものと判定することができる。ここで、基準パルス数Nipcestは、自動変速機12の変速前のギヤ比γに基づいて設定されるので、イナーシャ相開始前において得られるべき累積パルス数Nipcが基準パルス数Nipcestとして算出される。したがって、イナーシャ相開始前では、入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとが一致するが、イナーシャ相が開始されると入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとが相違する。上記より、入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとを比較し、互いのパルス数が相違した際に、自動変速機12のイナーシャ相の開始を判定することができる。
また、本実施例によれば、入力軸26の回転により得られる入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとが一致した際に、自動変速機12の係合が完了したものと判定することができる。ここで、基準パルス数Nipcestは、自動変速機12の変速後のギヤ比γに基づいて算出されるので、係合完了後において得られるべき累積パルス数Nipcが基準パルス数Nipcestとして算出される。したがって、イナーシャ相中では、入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとが相違するが、係合が完了すると入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルス数Nipcestとが一致する。上記より、入力軸26の累積パルス数Nipcと基準パルスNipcestとを比較し、互いのパルス数が一致した際に、自動変速機12の係合完了を判定することができる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施例においては、入力軸26および出力回転部材28が共に整数回転した場合に計数される各累積パルス数に基づいて、自動変速機12のイナーシャ相開始時点および係合完了時点(イナーシャ相終了時点)を判定する。本実施例においては、前述した図3の機能ブロック線図に、整数回転相当判定手段80が付加される。
図3の機能ブロック線図に示す整数回転相当判定手段80は、出力回転部材28の計数された累積パルス数Nopcが、その出力回転部材28の整数回転に相当するパルス数に到達したか否かを判定する。具体的には、整数回転相当判定手段80は、出力回転部材28の回転により得られる累積パルス数Nopcが、予め算出されて記憶手段74に記憶されている出力回転部材28の整数回転に相当する規定パルス数Nopcfに到達したか否かを判定する。また、整数回転相当判定手段80は、出力回転部材28の回転により得られる累積パルス数Nopcと自動変速機12のギヤ比γとで計算される入力軸26の基準パルス数Nipcestが、予め算出されて記憶手段74に記憶されている入力軸26の整数回転に相当する規定パルス数Nipcfとなるか否かを判定する。なお、上記出力回転部材28の規定パルスNopcfは、出力回転部材28の一回転あたりのパルス数Nopc1と整数回転との積で算出され、入力軸26の規定パルス数Nipcfは、入力軸26の一回転あたりのパルス数Nipc1と整数回転との積で算出される。
図6は、本実施例の電子制御装置52の制御作動を説明するためのフローチャートである。以下、図6のフローチャートに基づいて本実施例の制御作動について説明する。なお、本フローにおいても、例えば第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフトにおいて、イナーシャ相開始時点を判定する際の電子制御装置52の制御作動を示している。
回転パルス計数手段73に対応するステップSB1において、所定の時点より自動変速機12の入力軸26の入力軸回転速度Ninの検出、および、累積パルス数Nipcの計数が開始されると共に、出力回転部材28の出力軸回転速度Noutの検出、および、出力回転部材28の累積パルス数Nopcの計数が開始される。
また、整数回転相当判定手段80に対応するSB2において、SB1において計数された出力回転部材28の累積パルス数Nopcが、出力回転部材28の整数回転に相当する規定パルス数Nopcfに到達したか否かが判定される。すなわち、出力回転部材28が整数回転したか否かが判定される。
SB2が否定されると、SB1に戻り、出力回転部材28の累積パルス数Nopcが出力回転部材28の整数回転に相当するパルス数に到達するまで、SB1およびSB2のステップが繰り返し実行される。SB2が肯定されると、整数回転相当判定手段80に対応するSB3において、出力回転部材28の累積パルス数Nopcと自動変速機12のギヤ比γから入力軸26からのパルスに換算した換算累積パルスNipcest1(=Nopc×γ)を算出し、算出された換算累積パルス数Nipcestが、入力軸26の整数回転に相当するパルス数となるか否かが判定される。なお、本実施例では、入力軸26に形成されているパルス検出用の歯数と出力回転部材28に形成されているパルス検出用の歯数とが等しいものとする。SB3が否定されると、SB1に戻り、SB3が肯定されるまで、SB1乃至SB3のステップが繰り返し実行される。
SB3が肯定されると、上記換算累積パルス数Nipcest1が基準パルス数Nipcestとして設定され、変速状態判定手段72に対応するSB4において、SB1において計数されている入力軸26の累積パルス数Nipcがその基準パルス数Nipcestよりも小さいか否かが判定される。SB4が否定される場合、SB1に戻り、SB1乃至SB4のステップが繰り返し実行される。SB4が肯定される場合、変速状態判定手段72に対応するSB5において、自動変速機12のイナーシャ相が開始されたものと判定される。
上述のように、本実施例によれば、入力軸26および出力回転部材28が共に整数回転した場合に計数される各パルス数に基づいて、自動変速機12の変速状態を判定する場合においても、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。また、入力軸26においても整数回転したときに自動変速機12の変速状態が判定されるため、変速状態判定時の誤差がさらに小さくなる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、出力回転部材28が整数回転したときを基準として、入力軸26の累積パルス数Nipcおよび基準パルス数Nipcestを比較することで、自動変速機12の変速状態が判定されるが、入力軸26が整数回転したときを基準として、出力回転部材28の累積パルス数Nopcに基づいて自動変速機12の変速状態を判定することもできる。すなわち、自動変速機12の入力軸26が整数回転したときを基準としても、そのときに出力回転部材28におい設定される基準パルス数は、予め理論的に算出することができるので、出力回転部材28の基準パルス数に基づいて自動変速機12の変速状態を判定することができる。
また、前述の実施例では、図5および図6に示すフローチャートにおいて、自動変速機12のイナーシャ相開始時点の判定を一例として説明したが、本発明は、イナーシャ相終了時点である係合完了時点についても適用することができる。なお、その場合、基準パルス数Nipcestの算出は、自動変速機12の変速後の変速段に対応するギヤ比γに基づいて算出され、入力軸26の累積パルス数Nipcが基準パルス数Nipcestと一致したとき、自動変速機12の係合が完了したものと判定される。
また、前述の実施例では、図5および図6に示すフローチャートにおいて、自動変速機12のアップシフトを一例に説明したが、本発明は、アップシフトに限定されずダウンシフトにおいても適用することができる。なお、その場合、入力軸26のパルス数Nipcが基準パルス数Nipcestよりも大きくなったか否かに基づいて判定される。
また、前述の実施例では、出力回転部材28の整数回転を累積パルス数Nopcが規定パルス数Nopcfに到達することで判断したが、出力回転部材28の整数回転は、必ずしも上記パルス数に基づいて判断する必要はなく、出力回転部材28の一回転毎の回転を検出する回転センサなど、他の手段に基づいて判断しても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
12:自動変速機(車両用自動変速機)
26:入力軸(第2回転軸)
28:出力回転部材(第1回転軸、出力軸)
72:変速状態判定手段
73:回転パルス計数手段
Nipc:累積パルス数
Nopc:累積パルス数
Nipc1:入力軸が一回転した際に得られる入力軸のパルス数
Nopc1:出力軸が一回転した際に得られる出力軸のパルス数
Nipcest:基準パルス数
Nopcf:規定パルス数
γ:ギヤ比
26:入力軸(第2回転軸)
28:出力回転部材(第1回転軸、出力軸)
72:変速状態判定手段
73:回転パルス計数手段
Nipc:累積パルス数
Nopc:累積パルス数
Nipc1:入力軸が一回転した際に得られる入力軸のパルス数
Nopc1:出力軸が一回転した際に得られる出力軸のパルス数
Nipcest:基準パルス数
Nopcf:規定パルス数
γ:ギヤ比
Claims (5)
- 第1回転軸の回転を複数の変速比から選択された所定の変速比で変速して第2回転軸へ伝達する車両用自動変速機の制御装置であって、
前記第1回転軸および第2回転軸のうちの少なくとも第2回転軸の回転により発生する第2回転パルスを計数する回転パルス計数手段と、
前記第1回転軸が整数回転したときの前記第2回転軸の回転により得られる前記第2回転パルスの累積パルス数と予め設定された基準パルス数とに基づいて前記自動変速機の変速状態を判定する変速状態判定手段と
を、含むことを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。 - 前記基準パルス数は、前記第1回転軸の整数回転に相当する前記第2回転軸の回転によって該第2回転軸から理論的に得られる予め設定されたパルス数であり、
前記変速状態判定手段は、前記第1回転軸の回転により発生する第1回転パルスの累積パルス数が該第1回転軸の整数回転に相当する予め設定された規定パルス数に到達したときの、該第1回転軸の整数回転にともなって回転する前記第2回転軸の回転により実際に得られる第2回転パルスの累積パルス数と、該基準パルス数との比較に基づいて、前記自動変速機の変速状態を判定するものである
請求項1の車両用自動変速機の制御装置。 - 前記第1回転軸は前記車両用自動変速機の出力軸であり、前記第2回転軸は該車両用自動変速機の入力軸であり、
前記規定パルス数は、前記出力軸が一回転した際に得られるパルス数と該出力軸の整数回転数との積で得られ、
前記基準パルス数は、前記入力軸が一回転した際に得られるパルス数と、前記車両用自動変速機のギヤ比と、前記出力軸の整数回転数との積で得られることを特徴とする請求項2の車両用自動変速機の制御装置。 - 前記変速状態判定手段は、前記出力軸が整数回転したときの前記入力軸の回転により得られる該入力軸の累積パルス数と前記基準パルス数とが相違した際に、前記車両用自動変速機のイナーシャ相が開始したものと判定するものであり、該基準パルス数は該車両用自動変速機の変速前のギヤ比に基づいて設定されることを特徴とする請求項3の車両用自動変速機の制御装置。
- 前記変速状態判定手段は、前記出力軸が整数回転したときの前記入力軸の回転により得られる該入力軸の累積パルス数と前記基準パルス数とが一致した際に、前記車両用自動変速機の係合が完了したものと判定するものであり、該基準パルス数は該車両用自動変速機の変速後のギヤ比に基づいて設定されることを特徴とする請求項3の車両用自動変速機の制御装置。
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2010
- 2010-02-03 JP JP2010022621A patent/JP2011158074A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2021027649A (ja) * | 2019-08-01 | 2021-02-22 | 日産自動車株式会社 | 変速制御方法及び変速制御システム |
JP7293956B2 (ja) | 2019-08-01 | 2023-06-20 | 日産自動車株式会社 | 変速制御方法及び変速制御システム |
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