以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図1を参照しながら詳細に説明する。
図1において、1は電気透析装置としての電気透析槽であり、この電気透析槽1は、ヨウ素イオンが含まれた原料である廃液としての原液Dからヨウ化水素酸(HI)を濃縮分離する濃縮分離装置である。
電気透析槽1は、2つの試料室に交互に仕切られて構成された2室1組の2室法を用いたものである。具体的には、この電気透析槽1の両側には、一対の電極2a,2bが配設されている。そして、これら一対の電極2a,2bの一方、すなわち電極2aが正極としての陽極とされる。また、これら一対の電極2a,2bの他方、すなわち電極2bが負極としての陰極とされる。
さらに、電気透析槽1は、図示しない切欠部を有する枠体としての室枠3を備えており、この室枠3の長手方向に沿った両端部の内側に電極2a,2bが取り付けられる。そして、この室枠3内には、室枠3の電極2aが配設された正極側から、正極側の電極室4aに供給される極液Pを仕切る陽イオン交換膜Kにつづいて、第1の陰イオン交換膜A1、および第1の陽イオン交換膜K1が等間隔に離間された状態にて繰り返し交互に配設されている。よって、電気透析槽1内の電極2a,2b間は、第1の陰イオン交換膜A1、および第1の陽イオン交換膜K1にて交互に仕切られている。
また、各陽イオン交換膜K、第1の陰イオン交換膜A1および第1の陽イオン交換膜K1のそれぞれは、張力を持たせるために、長手方向に沿って引っ張られた状態で、これら各陽イオン交換膜K、第1の陰イオン交換膜A1および第1の陽イオン交換膜K1それぞれの両端が室枠3の両側面に締め付け固定されている。
第1の陰イオン交換膜A1としては、例えば、一般的な強塩基性スチレン−ジビニルベンゼン系均一陰イオン交換膜などが使用される。また、原液D中に硫酸イオン(SO4 2−)などの2価イオンまたはホウ酸イオン(BO3 3−)などの3価イオンが不純物として含まれている場合には、この第1の陰イオン交換膜A1として1価陰イオン選択透過性が高められた1価陰イオン選択透過膜を用いることにより、ヨウ素イオン(I−)の選択透過性をより向上できるので効果的である。さらに、この1価陰イオン選択透過膜としては、例えば旭硝子株式会社製のセレミオンASV(セレミオンは登録商標)や旭化成株式会社製のアシプレックスA−192(アシプレックスは登録商標)などが用いられる。
また、陽イオン交換膜K、および第1の陽イオン交換膜K1としては、例えば、強酸性スチレン−ジビニルベンゼン系均一陽イオン交換膜などが使用される。また、原液D中にナトリウムイオン(Na+)やカルシウムイオン(Ca2+)などが不純物として含まれている場合には、これら陽イオン交換膜K、および第1の陽イオン交換膜K1として水素イオン選択透過膜、または1価陽イオン選択透過膜を用いることにより、水素イオン(H+)の選択透過性をより向上できるので効果的である。さらに、これら水素イオン選択透過膜、または1価陽イオン選択透過膜としては、例えば旭硝子株式会社製のセレミオンHSV(セレミオンは登録商標)や旭化成株式会社製のアシプレックスK−192(アシプレックスは登録商標)などがある。
一方、電気透析槽1の電極2a,2bが内部に収容され、両極側が陽イオン交換膜Kまたは第1の陽イオン交換膜K1にて仕切られた室枠3内が極液室としての電極室4a,4bとなる。また、これら電極室4a,4b間の第1の陰イオン交換膜A1と、陽イオン交換膜Kまたは第1の陰イオン交換膜A1の陽極側に位置する第1の陽イオン交換膜K1とにて仕切られた室枠3内が試料室としての生成槽である濃縮室5となる。さらに、電極室4a,4b間の第1の陰イオン交換膜A1とこの第1の陰イオン交換膜A1の陰極側に位置する第1の陽イオン交換膜K1とにて仕切られた室枠3内が試料室としての脱塩室である原液室6となる。
言い換えると、この原液室6は、一対の電極2a,2bによる陽極側が第1の陰イオン交換膜A1にて仕切られ、陰極側が第1の陽イオン交換膜K1にて仕切られている。また、濃縮室5は、一対の電極2a,2bによる陽極側が陽イオン交換膜Kまたは第1の陽イオン交換膜K1にて仕切られ、陰極側が第1の陰イオン交換膜A1にて仕切られている。そして、これら原液室6および濃縮室5は、交互に形成されている。さらに、電極室4a,4bは、交互に形成された原液室6および濃縮室5の幅方向である両側に位置している。
また、陽極側の電極室4aは、陽イオン交換膜Kにて仕切られている。さらに、陰極側の電極室4bは、陽極側から数えて最終組の第1の陽イオン交換膜K1である陽イオン交換膜Knにて仕切られている。
また、電極室4a,4bの長手方向に沿った室枠3の両側面に位置する液供給口および液排出口は、例えば硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)水溶液などの極液Pの入口および出口となる極液入口および極液出口とされている。
さらに、原液室6の長手方向に沿った室枠3の両側面に位置する液供給口および液排出口は、原液Dの入口および出口となる原液入口および原液出口とされている。したがって、原液Dは、第1の陰イオン交換膜A1と第1の陽イオン交換膜K1との間の原液室6に供給される。ここで、原液Dは、ヨウ素イオンを含有する廃液であり、この原液D中には、ヨウ素イオン以外の無機イオンや有機陰イオンなどの不純物が含まれている。原液Dに含有される不純物は特に限定されず、例えば、無機イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ホウ酸イオン等が挙げられ、有機陰イオンとしては、酢酸イオン、ギ酸イオン、シュウ酸イオン等が挙げられる。
また、濃縮室5の長手方向に沿った室枠3の両側面に位置する液供給口および液排出口は、ヨウ化水素酸濃縮液としての濃縮液Cの入口および出口となる濃縮液入口および濃縮液出口とされている。ここで、この濃縮液Cは、少なくとも水およびヨウ化水素酸を含み、このヨウ化水素酸が濃縮されたヨウ化水素酸水溶液などである。
よって、原液室6には、原液Dが原液入口から供給される。また、濃縮室5には、濃縮液Cが濃縮液入口から供給される。さらに、原液室6および濃縮室5の幅方向である両側に位置し、各電極2a,2bと接する電極室4a,4bには、陽極液および陰極液としての極液Pが極液入口から供給される。
ここで、電気透析槽1の室枠3内の第1の陰イオン交換膜A1と第1の陽イオン交換膜K1との配列の繰り返し回数nは、目的に応じて適宜選択でき、好ましくは、10以上1000以下程度の繰り返し数である。なお、電気透析槽1の電極室4a,4b、原液室6、および濃縮室5への極液P、原液Dおよび濃縮液Cそれぞれの各液の供給は連続的にもできる。
さらに、原液室6内の原液Dは、この原液室6内で電気透析を続けることにより、ヨウ化水素酸の濃度が低下する。このため、ヨウ化水素酸の濃度が充分に低下した原液Dを処理液として適宜抜き出し、新たな原液Dを補充させる。また、この処理液を連続的に抜き出すとともに、連続的に補充する連続運転とすることもできる。
また、濃縮室5内の濃縮液Cは、電気透析を続けることにより、陽イオン交換膜Kおよび第1の陽イオン交換膜K1を透過した水素イオン(H+)および第1の陰イオン交換膜A1を透過したヨウ素イオン(I−)によって、濃縮液C中のヨウ化水素酸の濃度が上昇する。このため、このヨウ化水素酸の濃度が上昇した濃縮液Cを必要に応じた回数または連続的に抜き出すことによって高濃度のヨウ化水素酸濃縮液を得ることができる。
次に、上記第1の実施の形態の廃液からのヨウ化水素酸の回収方法を説明する。
まず、電気透析槽1の各電極室4a,4bの電極2a,2b間に、予め測定した限界電流密度以下の電流を供給する。
すると、図1に示すように、正極側の電極室4a内の水素イオン(H+)が陽イオン交換膜Kを透過するとともに、原液室6内の水素イオンが第1の陽イオン交換膜K1を透過する。また同時に、各原液室6内のヨウ素イオン(I−)が第1の陰イオン交換膜A1を透過する。
このとき、ヨウ素イオンやその他の陰イオンは、陽イオン交換膜Kおよび第1の陽イオン交換膜K1を透過できない。また、水素イオンは、第1の陰イオン交換膜A1を透過できない。
このため、濃縮室5内の濃縮液C中のヨウ化水素酸濃度が上昇し、原液室6内の原液D中のヨウ化水素酸濃度が低下する。この後、濃縮室5内のヨウ化水素酸の濃度が上昇した処理液、すなわち濃縮液Cを濃縮室5から抜き出すことによって、高濃度のヨウ化水素酸水溶液であるヨウ化水素酸濃縮液を得ることができる。
そして、上記第1の実施の形態によれば、電気透析槽1の第1の陰イオン交換膜A1と第1の陽イオン交換膜K1との間の原液室6に原液Dを供給するとともに、陽イオン交換膜Kまたは第1の陽イオン交換膜K1と第1の陰イオン交換膜A1との間の濃縮室5に濃縮液Cを供給してから、この電気透析槽1の電極2a,2b間に電流を供給することによって、原液D中のヨウ化水素酸が電気透析法にて濃縮室5内の濃縮液Cへと分離される。この結果、この濃縮室5内の濃縮液C中のヨウ化水素酸濃度が上昇するから、原液Dからヨウ化水素酸を容易に濃縮分離できる。
したがって、電気透析法を用いることにより、ヨウ素イオンを含む廃液からヨウ化水素酸を容易に濃縮分離できるので、廃液からヨウ化水素酸を容易に回収できる。
また、バイポーラ膜などの特殊なイオン交換膜を用いず、通常のイオン交換膜を用いて電気透析するので、簡単な構成で原液Dからヨウ化水素酸を濃縮分離できる。
なお、原液Dは、ヨウ素およびヨウ素化合物の少なくとも一方を使用した工程にて生成されたヨウ素イオンを含む廃液であれば、どのような製造工程で得られるものでもよく、ヨウ素イオンの濃度、およびその他の不純物の種類や含量などについては、特に限定されるものではない。
また、廃液中に不溶物が存在する場合は、その廃液を直接、またはpH調整後に不溶物を除去したものを原液Dとして電気透析を行ってもよい。
電気透析の実施に際しては、原液Dは、水溶液であることが好ましい。特に、原液Dが有機化合物製造工程から排出される廃液である場合はそのほとんどが有機溶媒であることもある。
電気透析で使用するイオン交換膜は、スチレン−ジビニルベンゼン系高分子が素材として通常用いられている。原液Dに有機物が含まれていても、その有機物が膜に損傷を与えない限りは、そのまま原料として使用することができる。例えば、酢酸、プロピオン酸、エタノール、およびアセトンなどの含酸素有機化合物は20質量%程度含まれていてもそのまま使用することができる。有機溶媒の種類によってはイオン交換膜が損傷することもある。このような場合は、水と混合してヨウ素成分を水層へ抽出してその水層を原料として用いることができる。
ここで、原液Dとして用いる廃液中にヨウ素イオン以外に、塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオンおよびホウ酸イオンなどの無機イオンや、酢酸イオン、ギ酸イオンおよびシュウ酸イオンなどの有機陰イオンが含まれている場合、ヨウ素イオン以外の陰イオンも陰イオン交換膜を透過する可能性が考えられるが、強塩基性スチレン−ジビニルベンゼン系の通常の均一陰イオン交換膜を用いた場合は、ヨウ素イオンの透過選択性が非常に良好であり、廃液中のヨウ素イオン濃度が非常に低くなるまではヨウ素イオン以外の陰イオンが透過しにくいことを見出した。したがって、濃縮液C中にはヨウ素イオンが濃縮され、他の陰イオンの混入を非常に少なくでき、ヨウ化水素酸を効果的に濃縮分離できる。
また、電気透析法にて廃液である原液Dからヨウ化水素酸を濃縮分離したヨウ化水素酸濃縮液にヨウ化水素酸以外の微量の無機イオンや有機陰イオンを含む場合には、蒸留フラスコを備えた磁製ラシヒ充填塔などの蒸留装置を用いてヨウ化水素酸濃縮液を蒸留精製してもよく、蒸留精製することにより、ヨウ化水素酸を高純度で効率よく回収できる。
したがって、電気透析法を用いることにより、ヨウ素イオンを含む廃液からヨウ化水素酸濃縮液を容易に濃縮分離できるので、このヨウ化水素酸濃縮液を蒸留精製することにより、廃液から高純度のヨウ化水素酸を容易に回収できる。
ただし、ヨウ化水素酸濃縮液に硫酸イオンを含む場合には、ヨウ化水素酸濃縮液に水酸化バリウムまたは硫酸以外のバリウム塩を添加し、硫酸をバリウム塩として沈殿させて分離させる方法がある。
なお、ヨウ化水素酸濃縮液からヨウ素イオン以外の無機イオンや有機陰イオンを除去する方法は、上記の方法に限定されず、ヨウ素イオン以外の無機イオンや有機陰イオンを除去できる公知の方法であれば適用可能である。
次に、第2の実施の形態を図2を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
図2に示す電気透析槽1は、基本的には図1に示す電気透析槽1の構成と同様であるが、この電気透析槽1の両端に配設された電極2a,2b間を正極側から極液Pを仕切る陽イオン交換膜Kに続いて、第1の陰イオン交換膜A1、第1の陽イオン交換膜K1、第2の陰イオン交換膜A2、および第2の陽イオン交換膜K2にて交互に仕切ることにより、4つの試料室に交互に仕切られて形成された4室1組の試料室が、目的に応じて選択される複数、好ましくは5以上500以下の繰り返し回数nで設けられたものである。
電気透析槽1は、陰極側の電極室4bに隣接した原液室6が設けられている。この原液室6は、陰極側が第2の陽イオン交換膜K2にて仕切られ、陽極側が第2の陰イオン交換膜A2にて仕切られている。
また、この原液室6の陽極側には、第2の陰イオン交換膜A2を介して原液室6に隣接した濃縮室5が設けられている。この濃縮室5は、陰極側が第2の陰イオン交換膜A2にて仕切られ、陽極側が第1の陽イオン交換膜K1にて仕切られている。
さらに、濃縮室5の陽極側には、第1の陽イオン交換膜K1を介して濃縮室5に隣接した試料室としての酸室7が設けられている。この酸室7は、陰極側が第1の陽イオン交換膜K1にて仕切られ、陽極側が第1の陰イオン交換膜A1にて仕切られている。そして、この酸室7には、硫酸などの強酸の水溶液である酸液Aが供給される。ここで、酸室7の長手方向に沿った室枠3の両側面に位置する液供給口および液排出口は、酸液Aの入口および出口となる酸入口および酸出口とされている。また、酸室7は、酸入口から酸液Aが供給されるとともに、酸出口から酸液Aが導出される。
酸室7の陽極側には、第1の陰イオン交換膜A1を介して酸室7に隣接した試料室としての溶液室である塩室8が設けられている。この塩室8は、陰極側が第1の陰イオン交換膜A1にて仕切られ、陽極側が陽イオン交換膜Kまたは第1の陰イオン交換膜A1の陽極側に位置する第2の陽イオン交換膜K2にて仕切られている。そして、この塩室8には、酸室7に供給される酸液Aに対応して副生される酸または塩の水溶液、例えば硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)水溶液などの塩液Sが供給される。
ここで、塩室8の長手方向に沿った室枠3の両側面に位置する液供給口および液排出口は、塩液Sの入口および出口となる塩入口および塩出口とされている。そして、塩室8は、塩入口から塩液Sが供給されるとともに、塩出口から塩液Sが導出される。
この結果、電気透析槽1による回分法での電気透析により、原液室6内へと供給した原液D中のヨウ素イオン(I−)と、酸室7内に供給した酸液A中の水素イオン(H+)とから、複置換透析反応によってヨウ化水素酸が生成されて、濃縮室5内の濃縮液C中のヨウ化水素酸の濃度が上昇するとともに、塩室8内の塩液S中の酸または塩の濃度、例えば硫酸水素ナトリウムの濃度が上昇する。
また、原料系の原液室6内の原液D中のヨウ化水素酸の濃度、および酸室7内の酸液A中の酸の濃度が次第に低下するとともに、この濃度の低下に伴って電流値が低下する。
電流値が充分に低下した後、電気透析槽1による電気透析を一旦停止して、原料系の原液室6内および酸室7内の原液Dおよび酸液Aを処理液として適量抜き出し、これら原液室6および酸室7に原料液である原液Dおよび酸液Aを再び充填する。
そして、生成系の濃縮室5および塩室8内の濃縮液Cおよび塩液Sは、一部を次回の電気透析の原料として使用するために残し、残りを生成液として抜き出す。また、電極室4a,4b、原液室6、濃縮室5、酸室7および塩室8へ極液P、原液D、濃縮液C、酸液Aおよび塩液Sそれぞれの各液を連続的に供給および抜き出すことによって、連続運転もできる。
よって、上述の工程を繰り返すことにより、高濃度の目的とするヨウ化水素酸の水溶液を得ることができる。
なお、このように複置換電気透析法により廃液からヨウ化水素酸を回収する構成にする場合、電気透析槽1は、4室の試料室を1組として組み込まれた構成であればよく、濃縮室5、原液室6、酸室7および塩室8が上述のように設けられた構成に限定されない。すなわち、例えば、第1の陰イオン交換膜A1と、陽イオン交換膜Kまたは第1の陰イオン交換膜A1の陽極側に位置する第2の陽イオン交換膜K2との間を濃縮室5とし、陰イオン交換膜A1と第1の陽イオン交換膜K1との間を原液室6とし、第1の陽イオン交換膜K1と第2の陰イオン交換膜A2との間を塩室8とし、第2の陰イオン交換膜A2と第2の陽イオン交換膜K2との間を酸室7とする構成などにしてもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。
図2に示す電気透析槽1(旭化成株式会社製のG4型の電気透析槽であり、4室/1組、組込み膜数5組、有効膜面積0.02m2/枚)を用いて、ヨウ素イオン、塩素イオンおよび酢酸イオンを含有する廃液からヨウ化水素酸を濃縮分離するため、電気透析を行った。
第1の陽イオン交換膜K1および第2の陽イオン交換膜K2として、旭硝子株式会社製のセレミオンCMVを用いた。また、第1の陰イオン交換膜A1として一般的な陰イオン選択透過膜である旭硝子株式会社製のセレミオンAMVを用い、第2の陰イオン交換膜として1価陰イオン選択透過膜である旭硝子株式会社製のセレミオンASVを用いた。
そして、調整したモデル廃液1384g(組成:ヨウ素イオン8.7質量%、酢酸イオン0.8質量%、塩素イオン0.2%)を原液Dとして原液室6に供給し、1質量%のヨウ化水素酸水溶液713gを濃縮液Cとして濃縮室5に供給した。同時に、3.3質量%の硫酸水溶液1782gを酸液Aとして酸室7に供給し、1.7質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1000gを塩液Sとして塩室8に供給した。また、5質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1000gを極液Pとして各電極室4a,4bに供給した。
この状態で、8.5V定電圧で1.7時間の電気透析処理をした後、各室の液量を測定するとともに、これら各室の液組成をイオンクロマトグラフィにて測定した。
各室の液量は、原液室6内の原液Dが1083g、濃縮室5内の濃縮液Cが942g、酸室7内の酸液Aが1572g、塩室8内の塩液Sが1198g、電極室4a,4b内の極液Pが992gであった。
また、各室のイオン濃度は、原液室6内の原液Dのイオン濃度がヨウ素イオン0.5質量%、酢酸イオン0.9質量%、塩素イオン0.2質量%であり、濃縮室5内の濃縮液Cのイオン濃度がヨウ素イオン12.9質量%、酢酸イオン0.1質量%未満、塩素イオン0.1質量%未満であり、酸室7内の酸液Aのイオン濃度が硫酸イオン0.2質量%であり、塩室8内の塩液Sのイオン濃度が硫酸イオン5.4質量%であった。
この結果、原液Dから濃縮液Cへのヨウ素イオンの透過率が95%であり、酢酸イオンの除去率が93%であった。
実施例1と同様の電気透析槽1、陽イオン交換膜K、第1の陰イオン交換膜A1、第1の陽イオン交換膜K1、第2の陰イオン交換膜A2、および第2の陽イオン交換膜K2を用いて電気透析を行った。また、原液Dとして、ヨウ素イオン、硫酸イオンおよびホウ酸イオンを含有する廃液を用いた。
そして、調整したモデル廃液1416g(組成:ヨウ素イオン8.6質量%、硫酸イオン3.1質量%、ホウ素0.34質量%)を原液Dとして原液室6に供給し、1質量%のヨウ化水素酸水溶液720gを濃縮液Cとして濃縮室5に供給した。同時に、3.3質量%の硫酸水溶液1782gを酸液Aとして酸室7に供給し、1.7質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1000gを塩液Sとして塩室8に供給した。また、5質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1000gを極液Pとして各電極室4a,4bに供給した。
この状態で、8.5V定電圧で2.6時間の電気透析処理をした後、各室の液量を測定するとともに、これら各室の液組成をイオンクロマトグラフィおよびICP発光分光分析装置にて測定した。
各室の液量は、原液室6内の原液Dが1156g、濃縮室5内の濃縮液Cが923g、酸室7の酸液Aが1571g、塩室8の塩液Sが1203g、電極室4a,4b内の極液Pが976gであった。
また、各室のイオン濃度は、原液室6内の原液Dのイオン濃度がヨウ素イオン0.8質量%、硫酸イオン3.8質量%であり、濃縮室5内の濃縮液Cのイオン濃度がヨウ素イオン13.2質量%、硫酸イオン0.2質量%であり、酸室7内の酸液Aのイオン濃度が硫酸イオン0.1質量%未満であり、塩室8内の塩液Sのイオン濃度が硫酸イオン3.8質量%であった。さらに、原液Dのホウ素が0.4質量%であり、濃縮液Cのホウ素が0.01質量%未満であった。
この結果、原液Dから濃縮液Cへのヨウ素イオンの透過率が94%であり、ホウ素の除去率が98%であった。
実施例1と同様の電気透析槽1、陽イオン交換膜K、第1の陰イオン交換膜A1、第1の陽イオン交換膜K1、第2の陰イオン交換膜A2、および第2の陽イオン交換膜K2を用いて電気透析を行った。また、原液Dとして、ヨウ素イオン、塩素イオン、硝酸イオン、および臭素イオンを含有する廃液を用いた。
そして、調整したモデル廃液1086g(組成:ヨウ素イオン9.0質量%、塩素イオン1.6質量%、硝酸イオン0.7質量%、臭素イオン0.6質量%)を原液Dとして原液室6に供給し、1質量%のヨウ化水素酸水溶液721gを濃縮液Cとして濃縮室5に供給した。同時に、3.3質量%の硫酸水溶液1903gを酸液Aとして酸室7に供給し、1.7質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1004gを塩液Sとして塩室8に供給した。また、5質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1000gを極液Pとして各電極室4a,4bに供給した。
この状態で、8.5V定電圧で2時間の電気透析処理をした後、各室の液量を測定するとともに、これら各室の液組成をイオンクロマトグラフィにて測定した。
各室の液量は、原液室6内の原液Dが881g、濃縮室5内の濃縮液Cが777g、酸室7の酸液Aが1794g、塩室8の塩液Sが1194g、電極室4a,4b内の極液Pが984gであった。
また、各室のイオン濃度は、原液室6内の原液Dのイオン濃度がヨウ素イオン1.0質量%、塩素イオン1.9質量%、硝酸イオン0.6質量%、臭素イオン0.6質量%であり、濃縮室5内の濃縮液Cのイオン濃度がヨウ素イオン12.2質量%、塩素イオン0.2質量%、硝酸イオン0.2質量%、臭素イオン0.2質量%であり、酸室7内の酸液Aのイオン濃度が硫酸イオン0.1質量%であり、塩室8内の塩液Sのイオン濃度が硫酸イオン5.7質量%であった。
この結果、原液Dから濃縮液Cへの透過率は、ヨウ素イオンが90%であり、硝酸イオンが24%であり、臭素イオンが20%であり、塩素イオンが9%であった。
実施例1と同様の電気透析槽1、陽イオン交換膜K、第1の陰イオン交換膜A1、第1の陽イオン交換膜K1、第2の陰イオン交換膜A2、および第2の陽イオン交換膜K2を用いて電気透析を行った。また、原液Dとして、ヨウ化水素酸と、1,10−ジヨードデカンとを用いて、ヨウ素化反応によりジヨウ素化合物を製造し、さらに、カリウム化合物存在下にてアセトンと反応させて得られた副生成物であるヨウ化カリウム含有廃液を用いた。
ヨウ化カリウム含有廃液1500g(ヨウ化カリウム11質量%、硫酸カリウム1.7質量%を含む。)を原液Dとして原液室6に供給し、1質量%のヨウ化水素酸水溶液700gを濃縮液Cとして濃縮室5に供給した。同時に、5質量%の硫酸水溶液1000gを酸液Aとして酸室7に供給し、1質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液500gを塩液Sとして塩室8に供給した。また、5質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1000gを極液Pとして各電極室4a,4bに供給した。
この状態で、8.5V定電圧で2時間の電気透析処理をした後、各室の液量を測定するとともに、これら各室の液組成をイオンクロマトグラフィにて測定した。
原液室6内の原液Dは、液量が1180gであり、イオン濃度が、ヨウ素イオン0.5質量%、硫酸イオン1.0質量%であった。
また、濃縮室5内の濃縮液Cは、液量が940gであり、イオン濃度が、ヨウ素イオン13.2質量%、硫酸イオン0.2質量%であった。
この結果、原液Dから濃縮液Cへのヨウ素イオンの透過率が93%であった。
電気透析法により廃液からヨウ化水素酸を濃縮分離したヨウ化水素酸濃縮液923g(組成:ヨウ素イオン12質量%、硫酸イオン0.2質量%)を、三口フラスコに採取し、窒素気流、室温、および攪拌下にて炭酸バリウム4.6gを添加した。
この後、30分間攪拌した後、析出した結晶を濾過し、少量の水で洗浄してから、濾液983gを得た。そして、この濾液の組成をイオンクロマトグラフィにて分析した結果、ヨウ素イオンが11.3質量%であり、硫酸イオンは全く検出されなかった。
電気透析法により廃液からヨウ化水素酸を濃縮分離したヨウ化水素酸濃縮液942g(組成:ヨウ素イオン12.3質量%、塩素イオン0.1質量%)を蒸留フラスコに移し、30質量%の次亜リン酸(H3PO2)1.4gを添加して、内径が18mmで、塔高が1mである磁製ラシヒ充填塔を用いて、窒素気流下にて減圧して濃縮した後に蒸留した。初留を分離してから、50mmHgで65℃以上66℃以下の留分170gを得た。また、この得られた留分を分析したところ、ヨウ化水素酸濃度が58質量%であり、イオンクロマトグラフィによる分析にて他の無機塩は全く認められなかった。
実施例1と同様の電気透析槽1、陽イオン交換膜K、第1の陰イオン交換膜A1、第1の陽イオン交換膜K1、第2の陰イオン交換膜A2、および第2の陽イオン交換膜K2を用いて電気透析を行った。また、原液Dとして、ヨウ素イオン、硫酸イオンおよびホウ酸イオンを含有する廃液を用いた。
そして、調整したモデル廃液1300g(組成:ヨウ素イオン12.6質量%、硫酸イオン2.0質量%、塩素イオン1.0質量%、ホウ素1.0質量%)を原液Dとして原液室6に供給し、1質量%のヨウ化水素酸水溶液720gを濃縮液Cとして濃縮室5に供給した。同時に、3.3質量%の硫酸水溶液2294gを酸液Aとして酸室7に供給し、1.7質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1287gを塩液Sとして塩室8に供給した。また、5質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液1000gを極液Pとして各電極室4a,4bに供給した。
この状態で、8.5V定電圧で3.3時間の電気透析処理をした後、各室の液量を測定するとともに、これら各室の液組成をイオンクロマトグラフィおよびICP発光分光分析装置にて測定した。
各室の液量は、原液室6内の原液Dが1089g、濃縮室5内の濃縮液Cが1205g、酸室7の酸液Aが2105g、塩室8の塩液Sが1612g、電極室4a,4b内の極液Pが978gであった。
また、各室のイオン濃度は、原液室6内の原液Dのイオン濃度がヨウ素イオン0.9質量%、硫酸イオン2.0質量%、塩素イオン0.78質量%、ホウ素1.2質量%であり、濃縮室5内の濃縮液Cのイオン濃度がヨウ素イオン13.1質量%、硫酸イオン0.32質量%、塩素イオン0.38質量%、ホウ素0.01質量%未満であり、酸室7内の酸液Aのイオン濃度が硫酸イオン0.1質量%未満であり、塩室8内の塩液Sのイオン濃度が硫酸イオン3.8質量%であった。
この結果、原液Dから濃縮液Cへのヨウ素イオンの透過率が92%であり、ホウ素の除去率が99%であった。
次いで、ヨウ化水素酸濃縮液である濃縮液Cを三角フラスコに移し、室温および攪拌下にて炭酸バリウム29.8gを添加し、30分間攪拌した後、一晩静置して不溶物を沈降させ、上澄液1003gを得た。
そして、この上澄液の組成をイオンクロマトグラフィにて分析した結果、硫酸イオンは全く検出されなかった。
さらに、上澄液を蒸留フラスコに移し、30質量%の次亜リン酸(H3PO2)1.0gを添加して、内径が18mmで、塔高が1mである磁製ラシヒ充填塔を用いて、窒素気流下にて減圧して濃縮した後に蒸留した。初留を分離してから60mmHg、68℃以上70℃以下の留分195gを得た。また、この得られた留分を分析したところ、ヨウ化水素酸濃度が58質量%であり、イオンクロマトグラフィによる分析で他の無機塩は全く認められなかった。
図1に示す電気透析槽1(旭化成株式会社製のG4型の電気透析槽であり、2室/1組、組込み膜数10組、有効膜面積0.02m2/枚)を用いて、ヨウ素イオン、塩素イオン、酢酸イオンを含有する廃液からヨウ化水素酸を濃縮分離した。また、陽イオン交換膜Kおよび第1の陽イオン交換膜K1として水素イオン選択透過膜であるセレミオンHSV膜(旭硝子株式会社製)、第1の陰イオン交換膜A1として一価陰イオン選択透過膜であるセレミオンASV(旭硝子株式会社製)を用いた。
調整したモデル廃液2842g(組成:ヨウ素イオン8.6質量%、酢酸イオン0.8質量%、塩素イオン0.2質量%)を原液Dとして原液室6に供給し、1質量%のヨウ化水素酸水溶液1847gを濃縮液Cとして濃縮室5に供給した。また、5質量%の硫酸水素ナトリウム水溶液2000gを極液Pとして各電極室4a,4bに供給した。
この状態で、8.5V定電圧で2.3時間の電気透析処理をした後、各室の液量を測定するとともに、これら各室の液組成をイオンクロマトグラフィにて測定した。
各室の液量は、原液室6内の原液Dが2249g、濃縮室5内の濃縮液Cが2391g、電極室4a,4b内の極液Pが2009gであった。
また、各室のイオン濃度は、原液室6内の原液Dのイオン濃度がヨウ素イオン0.3質量%、塩素イオン0.1質量%、酢酸イオン1.0質量%であり、濃縮室5内の濃縮液Cのイオン濃度がヨウ素イオン10.7質量%、塩素イオン0.1質量%、酢酸イオン0.1質量%未満であった。
この結果、原液Dから濃縮室Cへのヨウ素イオンの透過率が97%であり、酢酸イオンの除去率が95%であった。