JP2011148752A - トリアリールボランの製造方法及びトリアリールボラン錯体の製造方法 - Google Patents

トリアリールボランの製造方法及びトリアリールボラン錯体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属塩を含まない原料を用いて、安定な前駆体から簡便なプロセスで製造することで、簡便かつイオン性不純物の影響が少ないトリアリールボランの製造方法及びトリアリールボラン錯体の製造方法を提供する。
【解決手段】テトラアリールボレート塩を不活性ガス気流下で加熱する、トリアリールボランの製造方法。前記のトリアリールボランの製造方法により製造されたトリアリールボランと、含窒素芳香複素環化合物またはホスフィン化合物またはアミン化合物とを反応させる、トリアリールボラン錯体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、トリアリールボランの製造方法及びトリアリールボラン錯体の製造方法に関する。
トリフェニルボランは水中防汚剤、船底塗料、工業用防腐防黴剤等の有効成分として用いられているトリフェニルボラン−アミン錯体やエポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられているトリアリールボラン−ホスフィン錯体の重要な前駆体である。
トリアリールボラン−アミンまたはトリアリールボラン−ホスフィン錯体の製造法は、以下に示すようにいくつか知られている。
(従来法1)
ベリヒテ、第57巻、813頁(1924年)、米国特許第3211679号明細書には、トリフェニルボランの無水エーテル溶液を調整し、窒素気流下、種々のアミンと反応させることにより、相当するトリフェニルボラン−アミン錯体を合成する方法が記載されている。
(従来法2)
特開平8−311074号公報にはトリフェニルボランの水酸化ナトリウム付加体を水溶液中でアミンと反応させることにより、トリフェニルボラン−アミン錯体を製造する方法が記載されている。
(従来法3)
また、特許第3618515号公報、特許第3751713号公報ではナトリウムテトラフェニルボレートと無機酸または有機酸を反応させてトリアリールボランを生成した後、アミンまたはホスフィンを反応させることで製造する方法が記載されている。
米国特許第3211679号明細書 特開平8−311074号公報 特許第3618515号公報 特許第3751713号公報
Chem.Ber.,vol.57,813,1924
トリアリールボラン−ホスフィン錯体をエポキシ樹脂の硬化促進剤として用いる場合、エポキシ樹脂は電気絶縁材料、塗料、接着剤など幅広い分野で使用されており、特に電子部品用途で使用する際には電気絶縁性及び耐腐食性などが必要とされるためイオン性不純物を含まない高純度品が求められている。また、硬化促進剤として使用する場合、さまざまな硬化条件、硬化物特性等の使用条件に合わせて硬化促進剤の構造を修飾する必要があるため、少量多品種に対応できる簡便な製造方法も求められている。
従来法1の場合トリフェニルボランが水及び酸素に不安定であるため、そのつど調製する必要があること、高価で引火性の非常に高いエーテルを使用することなどから、工業スケールでの多量の取り扱いには問題がある。従来法2または3の場合、原料にナトリウム塩を使用するため、イオン性不純物の除去が必要である。
本発明の目的は、簡便かつ適用範囲が広く反応時にイオン性不純物の影響が少ない、トリアリールボランの製造方法及びトリアリールボラン錯体の製造方法を提供するものである。
本発明は以下のことに関する。
(1) 下記一般式(I)で表されるボレート塩を不活性ガス気流下で加熱することを特徴とするトリアリールボランの製造方法。
Figure 2011148752

(式中のR〜Rは同一でも異なっていても良く、アルキル基を示し、R〜Rは同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。)
(2) 一般式(I)で表されるボレート塩の対カチオンが、独立に炭素数1〜3のアルキル基を有するアンモニウム塩であることを特徴とする前記のトリアリールボランの製造方法。
(3) 一般式(I)で表されるボレート塩の対カチオンが、トリエチルアンモニウム塩であることを特徴とする前記のトリアリールボランの製造方法。
(4) 前記のトリアリールボランの製造方法により製造されたトリアリールボランと、含窒素芳香複素環化合物またはホスフィン化合物またはアミン化合物とを反応させることを特徴とするトリアリールボラン錯体の製造方法。
本発明により、金属塩を含まない原料を用いて、安定な前駆体から簡便なプロセスで製造することで、簡便かつイオン性不純物の影響が少ないトリアリールボランの製造方法及びトリアリールボラン錯体の製造方法を提供することが可能になった。
本発明で原料として用いる、一般式(I)で表されるテトラアリールボレート塩は活性プロトンと反応し脱アリール化することでトリアリールボランを生成する。そのため、アンモニウム−テトラアリールボレートは加熱によってトリアリールボラン−アミン錯体が生成し、引き続きアミンが脱離することでトリアリールボランを発生させる前駆体として作用するものである。
本発明で原料として用いるテトラアリールボレート塩は従来法であるナトリウムテトラアリールボレートとアンモニウム塩の塩化物を水中で塩交換することで容易に得ることができる。
Figure 2011148752

(式中のR〜Rは同一でも異なっていても良く、アルキル基を示し、R〜Rは同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。)
また、本発明で用いるテトラアリールボレート塩のアリール基の代わりに一般式(II)で示すチオフェン、フラン及びピロール骨格等の複素環化合物を導入したボレート塩でも良い。
Figure 2011148752

(式中のR〜Rは同一でも異なっていても良く、アルキル基を示し、R〜Rは同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示し、Xは酸素原子、硫黄原子、窒素原子を示す。)
本発明で用いるアンモニウム塩の対カチオンは、テトラアリールボレート塩にした際に安定に保管、取り扱いできること、適切な温度でアミンが脱離すること、脱離後のアミン化合物を容易に除去できること、さらに、容易に精製できることが好ましい。
一級から三級アミンのアンモニウム塩を対カチオンとするアンモニウム−テトラアリールボレート塩は活性プロトンを持つため、加熱によって脱アリール化し、残存するアミンと錯形成しトリアリールボラン−アミン錯体を生成する。しかしながら一級及び二級アミンはトリアリールボラン−アミン錯体形成後も活性プロトンが存在するため、さらに脱アリール化し複雑な副反応を引き起こす。一方、三級アミンの場合、中間体のトリアリールボラン−アミン錯体はアミンの脱離のみ起こるため副反応を引き起こしにくい。更に三級アミンはトリアリールボランとの立体反発のため比較的容易に三級アミンの脱離が速やかに進行するため好ましい。
また、芳香族アミンは対応するアンモニウム塩の酸性度が高いため保存中に脱アリール化が進行することと、沸点が高く脱離後の除去が困難になるため、脂肪族アミンが好ましい。また、脂肪族アミンのアルキル基は炭素数1〜3であれば、脱離後のアミンが低沸点であるため蒸留によって容易に除去できるため好ましい。以上の条件を満たしかつ容易に入手可能なものとして、具体的にはトリエチルアンモニウム塩が挙げられる。本発明で用いるテトラアリールボレート塩は入手可能なものであれば任意のものを用いることができる。
本発明における加熱反応時において、無溶媒でも行うことができるが、溶媒に溶解または分散状態で行うのが好ましい。このとき、沸点において前駆体であるアンモニウム−テトラアリールボレート塩の脱離反応が進行することが必要で、そのためには使用する溶媒の沸点は100〜200℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは140〜170℃である。
よって、加熱温度は100〜200℃が好ましい。
沸点が100℃未満では前駆体であるアンモニウム−テトラアリールボレート塩の分解反応が十分に進行しない可能性がある。200℃より高温の場合では脱離反応終了後に溶媒を加熱濃縮による溶媒の除去が困難になり、さらにアミンの脱離以外の副反応がおこるため収率、純度の低下を引き起こす可能性がある。
また、使用する溶媒はアンモニウム−テトラアリールボレート塩、及び生成物であるトリアリールボランやアミンと反応性を持たないものが好ましい。具体的には、キシレン及びメシチレン等の芳香族炭化水素化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のポリエーテル系化合物が好ましいが、これに限定されるものではない。また沸点及び溶解性を調節する目的で複数の溶媒を混合しても良い。
加熱温度は使用する溶媒の還流温度で行うと温度制御が容易であることに加えて、共沸によって前駆体のアミンを効率的に除去できるため好ましい。ただし、トリアリールボラン−アミン錯体の熱分解温度に合わせて沸点以下の温度で行っても良い。
加熱時間は使用するアンモニウム−テトラアリールボレート塩の熱分解温度と加熱時間で調節する必要があるが、30分〜4時間が好ましく、2〜3時間がより好ましい。さらに、反応溶液をサンプリングし、核磁気共鳴(NMR)、赤外分光(FT−IR)、ガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマト(HPLC)、薄層クロマト(TLC)等の手段で、反応溶液中の原料の消失を確認して反応時間の決定をするのが最も好ましい。また、還流蒸気をサンプリングし、pHなどで発生するアミンをモニタすることで反応の終了を確認しても良い。
また、生成するトリアリールボランは酸素に不安定であるため、窒素またはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行う必要がある。加熱中に発生するアミン化合物を効率的に反応系中から除去する目的で不活性ガスをフローさせると好ましい。さらに、このとき溶媒蒸気を同時に反応系中から除去させることで共沸よってさらに効率的にアミン化合物を除去できるため、より好ましい。このとき減少した溶媒を加熱中に追加してもよい。
トリアリールボラン生成後に加熱濃縮によって溶媒を濃縮または除去することが望ましい。このとき、沸点を下げるため減圧下で加熱するとさらに好ましい。
本発明では、反応溶液を濃縮または冷却して結晶を析出させることで中間体であるトリアリールボランを単離することが可能である。
さらに濃縮後、窒素雰囲気下室温(25℃)で、トリアリールボランと、含窒素芳香複素環化合物またはホスフィン化合物またはアミン化合物と反応させることで、目的とするトリアリールボラン錯体を生成することもできる。このとき、トリアリールボランを単離、もしくは反応容器中で再結晶させた後、反応溶液をデカンテーションによって除去すると更に高純度化できるためより好ましい。
交換反応を行う、含窒素芳香複素環化合物またはホスフィン化合物またはアミン化合物が、前駆体に用いるアミンよりもトリアリールボランとの反応性が高くかつ沸点が高いならば、あらかじめ前駆体のトリアリールボラン−アミン錯体と交換反応を行う、含窒素芳香複素環化合物またはホスフィン化合物またはアミン化合物を共存させて反応させても良い。
さらに、このとき交換反応を行う、含窒素芳香複素環化合物またはホスフィン化合物またはアミン化合物が、加熱濃縮可能ならば溶媒として大過剰用いても良い。
本発明で使用される、含窒素芳香複素環化合物またはホスフィン化合物またはアミン化合物としては、脂肪族一級〜三級アミン、芳香族アミン、アニリン誘導体、ピリジン誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィンが挙げられる。これらの化合物を分子内に複数有する化合物、及びポリマーの主鎖及び側鎖に有するものでも良い。
このとき、一般的な有機溶媒に溶解させて行うと好ましい。トリアリールボラン錯体化反応は加熱の必要はないが、溶解性を上げるため加熱しても良い。また、単離時に溶媒を濃縮する際、熱分解を避けるため目的とするトリアリールボラン錯体の熱分解温度よりも低い沸点を有する溶媒を使用するのが好ましい。
得られたトリアリールボラン錯体溶液を冷却または、濃縮または、貧溶媒による再沈殿によってトリアリールボランを析出させることで単離を行う。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートの合成)
300mlフラスコにナトリウムテトラフェニルボレート(北興化学工業株式会社製、商品名;ホクボロンNa)17.1g(50mmol)と蒸留水100gを加えた。空気中室温でトリエチルアミン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)6.85g(50mmol)を蒸留水100gに溶かした溶液を滴下した。空気中25℃で1時間撹拌することで白色沈殿が析出した。得られた白色沈殿をろ過、水洗いした後真空乾燥し、2−ブタノンとトルエンの混合溶媒で再結晶することで白色結晶を収率95%で得た。得られた化合物はプロトン核磁気共鳴分光法(HNMR)で確認した(下記参照)。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ7.17(m,8H),6.92(t,J=7.3Hz,8H),6.79(t,J=7.3Hz,4H),3.08(q,J=7.2Hz,6H),1.16(t.J=7.2Hz,9H)
(トリエチルアンモニウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレートの合成)
原料であるテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレートのナトリウム塩は公知の化合物であり、三フッ化ホウ素のエーテル錯体と4−フルオロフェニルマグネシウムとの反応により容易に合成できる。
これを上述のトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートの合成法と同様にトリエチルアミン塩酸塩と反応させることで白色結晶を収率40%で得た。得られた化合物はプロトン核磁気共鳴分光法(HNMR)で確認した(下記参照)。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ7.05(m,8H),6.74(t,J=8.7Hz,8H),3.00(m,6H),1.14(t.J=7.2Hz,9H)
(実施例1)
(トリフェニルボランの合成)
100mlフラスコに、合成したトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート4.2g(10mmol)とメシチレン(和光純薬工業株式会社製)4gの分散液を加え窒素置換を行った。窒素気流下オイルバスを用い170℃で3時間加熱した。窒素雰囲気下、25℃で放置することで析出した白色結晶をプロトン核磁気共鳴分光法(HNMR)で構造を確認した(下記参照)。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ7.28(d,J=8.1Hz,6H),7.14(t,J=6.9Hz,6H),7.04(t,J=7.2Hz,3H)
(実施例2)
(トリス(4−フルオロフェニル)ボランの合成)
100mlフラスコに、合成したトリエチルアンモニウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート4.9g(10mmol)とメシチレン(和光純薬工業株式会社製)4gの分散液を加え窒素置換を行った。窒素気流下オイルバスを用い170℃で3時間加熱した。窒素雰囲気下、25℃で放置することで析出した白色結晶をプロトン核磁気共鳴分光法(HNMR)で構造を確認した(下記参照)。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ7.83(dd,J=7.2Hz,8.7Hz,6H),7.14(t,J=8.7Hz,6H)
(実施例3)
(トリフェニルボラン 2−エチル−4−メチルイミダゾール錯体の合成)
実施例1で合成したトリフェニルボランの反応溶液に2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製)1.1g(10mmol)を加え窒素気流下オイルバスを用い120℃で1時間加熱した後にダイヤフラムポンプ(株式会社アルバック製、DTU−20)を用い減圧(到達圧力200Pa)加熱しながら濃縮したのち加熱を停止した。残渣をトルエンから再結晶することでトリフェニルボラン2−エチル−4−メチルイミダゾール錯体を収率90%で得た。得られた化合物はプロトン核磁気共鳴分光法(HNMR)で確認した(下記参照)。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ12.8(s,1H),7.10(m,12H),7.01(m,3H),6.33(s,1H),2.14(m,5H),0.62(t,J=7.5Hz,3H)
本発明により、金属塩を含まない原料(テトラアリールボレート塩)を用いて、簡便かつ収率良く、トリアリールボラン及びトリアリールボラン錯体を得ることができた。

Claims (4)

  1. 下記一般式(I)で表されるボレート塩を不活性ガス気流下で加熱することを特徴とするトリアリールボランの製造方法。
    Figure 2011148752

    (式中のR〜Rは同一でも異なっていても良く、アルキル基を示し、R〜Rは同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。)
  2. 一般式(I)で表されるボレート塩の対カチオンが、独立に炭素数1〜3のアルキル基を有するアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1記載のトリアリールボランの製造方法。
  3. 一般式(I)で表されるボレート塩の対カチオンが、トリエチルアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1記載のトリアリールボランの製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載のトリアリールボランの製造方法により製造されたトリアリールボランと、含窒素芳香複素環化合物またはホスフィン化合物またはアミン化合物とを反応させることを特徴とするトリアリールボラン錯体の製造方法。
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