特許文献2の開示技術は、製造コストの低廉化及び装置の静音化という利点を提供する一方で、ローラと分岐爪との間でのシートの挟持に起因するシートの損傷(特に、形成された画像への損傷)を生じさせる。
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、製造コストの低廉化、装置の静音化及びシートへの負荷の低減化を図ることができるとともにシートの搬送方向を切り換えることが可能な搬送装置及び該搬送装置が組み込まれた画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態に係る搬送装置は、第1経路に沿って搬送されたシートを第1方向に搬送した後、該第1方向とは逆の第2方向に搬送し、第2経路に前記シートを送り込むように第1回転方向及び該第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転可能な搬送要素を含む搬送装置であって、前記搬送要素に駆動力を伝達するための駆動ギアと、前記第1経路を開く第1位置と、前記第1経路を閉じるとともに前記第2経路を開く第2位置との間で回動する案内部材と、前記駆動ギアに噛み合う中継ギアと、該中間ギアを回転可能に支持するシャフトと、該シャフトに回転可能に支持されるとともに前記案内部材と接触し、前記案内部材を前記第1位置及び前記第2位置のうち少なくとも一方へ回動させるレバーと、該レバーに回転可能に支持されるとともに前記中継ギアと噛み合う作動ギアと、前記レバーと接続されるとともに前記作動ギアに抗力を与え、前記作動ギアの回転を遅らせる伝達機構と、を備え、前記レバーは、前記駆動ギアが前記第1回転方向に回転しているとき、前記案内部材を前記第1位置に向けて回動させる第1動作及び前記駆動ギアが前記第2回転方向に回転しているとき、前記案内部材を前記第2位置に向けて回動させる第2動作のうち少なくとも一方をなすことを特徴とする(請求項1)。
上記構成によれば、搬送要素は、第1経路に沿って搬送されたシートを第1方向に搬送するように第1回転方向に回転する。その後、搬送要素は、第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転し、第2経路にシートを送り込む。駆動ギアは、搬送要素に駆動力を伝達する。案内部材は、第1経路を開く第1位置と、第1経路を閉じるとともに第2経路を開く第2位置との間で回動する。シャフトは、駆動ギアに噛み合う中継ギア及び案内部材と接触し、案内部材を第1位置及び第2位置のうち少なくとも一方へ回動させるレバーとを回転可能に支持する。作動ギアは、レバーに回転可能に支持されるとともに中継ギアと噛み合う。レバーと接続される伝達機構は、作動ギアに抗力を与え、作動ギアの回転を遅らせる。作動ギアの回転の遅れに相当する運動エネルギによって、レバーは、搬送要素が第1回転方向に回転しているとき、案内部材を第1位置に向けて回動させる第1動作及び搬送要素が第2回転方向に回転しているとき、案内部材を前記第2位置に向けて回動させる第2動作のうち少なくとも一方をなすことができる。かくして、電磁ソレノイドを用いることなく、シートの搬送経路を切り換えることができるので、製造コストの低廉化及び装置の静音化が図られる。また、シートが挟持されることなく、シートの搬送方向を切り換えられるので、シートへの負荷の低減化を図ることができる。
上記構成において、前記伝達機構は、前記作動ギアに接触するとともに前記作動ギアに摩擦力を負荷するパッドと、前記レバーと接続されるとともに、前記パッドを前記作動ギアに向けて付勢する第1弾性部材と、を含むことが好ましい(請求項2)。
上記構成によれば、第1弾性部材によって作動ギアに付勢されたパッドが負荷する摩擦力が抗力となって、作動ギアの回転を遅らせる。作動ギアの回転の遅れに相当する運動エネルギによって、レバーは、搬送要素が第1回転方向に回転しているとき、案内部材を第1位置に向けて回動させる第1動作と、搬送要素が第2回転方向に回転しているとき、案内部材を前記第2位置に向けて回動させる第2動作のうち少なくとも一方をなすことができる。かくして、電磁ソレノイドを用いることなく、シートの搬送経路を切り換えることができるので、製造コストの低廉化及び装置の静音化が図られる。また、シートが挟持されることなく、シートの搬送方向を切り換えられるので、シートへの負荷の低減化を図ることができる。
上記構成において、前記搬送要素が前記第1回転方向に回転している間、前記第1位置にある前記案内部材の姿勢を保つように前記レバーを付勢するとともに、前記搬送要素が前記第2回転方向に回転している間、前記第2位置にある前記案内部材の姿勢を保つように前記レバーを付勢する保持機構を更に備えることが好ましい(請求項3)。
上記構成によれば、保持機構が、案内部材の姿勢を保つようにレバーを付勢するので、搬送装置を通過するシートによって比較的大きな負荷がレバーに与えられても、案内部材の姿勢を安定的に保持することが可能となる。
上記構成において、前記シャフトを支持する筐体を更に備え、前記保持機構は、前記レバーに接続される第1端部と前記筐体に接続される第2端部とを含む第2弾性部材を含み、該第2弾性部材は、前記案内部材が前記第1位置にある間、前記レバーと前記案内部材との間の接触部と前記シャフトとの間で定められる区間領域を横切るように伸長し、前記案内部材が前記第2位置にある間、前記接触部から離間する方向に前記区間領域から外れた位置で伸長し、伸長している間、前記案内部材の姿勢を保つように前記レバーを付勢することが好ましい(請求項4)。
上記構成によれば、案内部材が第1位置にある間と第2位置にある間とで、レバーに与えられるシャフト周りの回転モーメントの向きが互いに異なることとなる。かくして、搬送装置を通過するシートによって比較的大きな負荷がレバーに与えられても、案内部材の姿勢を安定的に保持することが可能となる。
上記構成において、前記案内部材は前記筐体に回動可能に取り付けられ、前記レバーは、前記案内部材を前記第1位置又は前記第2位置のうち一方へ回動させ、前記案内部材は、前記第1位置又は前記第2位置のうち他方へ付勢されるように前記筐体に取り付けられることが好ましい(請求項5)。
上記構成によれば、案内部材は、レバーによって回動される方向と逆方向に付勢されるので、搬送要素が第1回転方向及び第2回転方向のうち他方に回転されたとき、案内部材は、レバーによって回動される方向と逆方向に回動することとなる。かくして、電磁ソレノイドを用いることなく、第1経路と第2経路との間で、シートの搬送経路を切り換えることができる。したがって、製造コストの低廉化及び装置の静音化が図られる。また、シートが挟持されることなく、第1経路と第2経路との間で、シートの搬送方向を切り換えられるので、シートへの負荷の低減化を図ることができる。
上記構成において、前記筐体は、前記レバーの回動範囲を定める規制部を含むことが好ましい(請求項6)。
上記構成によれば、レバーの回動範囲が規制部によって定められるので、シートの切り換え制御が安定化される。
本発明の他の実施形態に係る画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成部と、該画像形成部から送り出された前記シートを案内するための第1経路及び前記画像が形成された前記シートを再度前記画像形成部に案内するための第2経路を形成する筐体と、前記第1経路から供給された前記シートを前記筐体外へ排出する方向に送るための第1回転方向及び前記シートを筐体内に引き戻し前記第2経路に送るための第2回転方向に回転可能なローラに接続される駆動ギアと、前記第1経路を開く第1位置と、前記第1経路を閉じるとともに前記第2経路を開く第2位置との間で回動する案内部材と、前記駆動ギアに噛み合う中継ギアを回転可能に支持するシャフトと、該シャフトに回転可能に支持されるとともに前記案内部材と接触し、前記第1位置へ前記案内部材を回動させるレバーと、該レバーに回転可能に支持されるとともに前記中継ギアと噛み合う作動ギアと、前記レバーと接続されるとともに前記作動ギアに抗力を与え、前記作動ギアの回転を遅らせる伝達機構と、を備え、前記レバーは、前記ローラが前記第1回転方向に回転しているとき、前記案内部材を前記第1位置に向けて回動させる第1動作及び前記駆動ギアが前記第2回転方向に回転しているとき、前記案内部材を前記第2位置に向けて回動させる第2動作のうち少なくとも一方をなすことを特徴とする(請求項7)。
上記構成によれば、画像形成部はシートに画像を形成する。筐体は、画像が形成されたシートを案内する第1経路と、画像が形成されたシートを再度画像形成部へ案内する第2経路を形成する。ローラは、第1経路から供給されたシートを筐体外へ排出する方向に送るための第1回転方向及びシートを筐体内に引き戻し第2経路に送るための第2回転方向に回転可能である。案内部材は、第1経路を開く第1位置と、第1経路を閉じるとともに第2経路を開く第2位置との間で回動可能である。中継ギアは、ローラに接続される駆動ギアと噛み合う。中継ギアを回転可能に支持するシャフトは、レバーも回転可能に支持する。レバーは、中継ギアと噛み合う作動ギアを回転可能に支持する。レバーと接続される伝達機構は、作動ギアに抗力を与え、作動ギアの回転を遅らせる。作動ギアの回転の遅れに相当する運動エネルギによって、レバーは、ローラが第1回転方向に回転しているとき、案内部材を第1位置に向けて回動させる第1動作及びローラが第2回転方向に回転しているとき、案内部材を前記第2位置に向けて回動させる第2動作のうち少なくとも一方をなすことができる。かくして、電磁ソレノイドを用いることなく、シートの搬送経路を切り換えることができるので、製造コストの低廉化及び装置の静音化が図られる。また、シートが挟持されることなく、シートの搬送方向を切り換えられるので、シートへの負荷の低減化を図ることができる。
上記構成において、前記伝達機構は、前記作動ギアに接触するとともに前記作動ギアに摩擦力を負荷するパッドと、前記レバーと接続されるとともに、前記パッドを前記作動ギアに向けて付勢する第1弾性部材と、を含むことが好ましい(請求項8)。
上記構成によれば、第1弾性部材によって作動ギアに付勢されたパッドが負荷する摩擦力が抗力となって、作動ギアの回転を遅らせる。作動ギアの回転の遅れに相当する運動エネルギによって、レバーは、搬送要素が第1回転方向に回転しているとき、案内部材を第1位置に向けて回動させる第1動作と、搬送要素が第2回転方向に回転しているとき、案内部材を前記第2位置に向けて回動させる第2動作のうち少なくとも一方をなすことができる。かくして、電磁ソレノイドを用いることなく、シートの搬送経路を切り換えることができるので、製造コストの低廉化及び装置の静音化が図られる。また、シートが挟持されることなく、シートの搬送方向を切り換えられるので、シートへの負荷の低減化を図ることができる。
上記構成において、前記レバーが前記第1動作を行うとき、前記案内部材は、前記第2位置に付勢されるように前記筐体に取り付けられ、前記レバーが前記第2動作を行うとき、前記案内部材は、前記第1位置に付勢されるように前記筐体に取り付けられることが好ましい(請求項9)。
上記構成によれば、レバーが第1動作を行うとき、案内部材は、第2位置に向けて付勢されるように筐体に取り付けられるので、ローラが第2回転方向に回転されたとき、案内部材は、レバーによって回動される方向と逆方向に回動することとなる。レバーが第2動作を行うとき、案内部材は、第1位置に向けて付勢されるように筐体に取り付けられるので、ローラが第1回転方向に回転されたとき、案内部材は、レバーによって回動される方向と逆方向に回動することとなる。かくして、電磁ソレノイドを用いることなく、第1経路と第2経路との間で、シートの搬送経路を切り換えることができる。したがって、製造コストの低廉化及び装置の静音化が図られる。また、シートが挟持されることなく、第1経路と第2経路との間で、シートの搬送方向を切り換えられるので、シートへの負荷の低減化を図ることができる。
上述の如く、製造コストの低廉化、装置の静音化及びシートへの負荷の低減化を図ることができるとともにシートの搬送方向を切り換えることが可能となる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。尚、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とするものであり、何ら本発明を限定するものではない。更に、以下の説明で用いられる「シート」との用語は、コピー用紙、トレーシングペーパ、厚紙、OHPシートや画像を形成することが可能な他のシートを意味する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を概略的に示す。尚、図1に示される画像形成装置は、本発明の原理に基づいて構築された搬送装置が組み込まれた装置の一例として説明されるものであって、画像形成処理以外の任意の処理をシートに施与する装置に、本発明の原理は好適に適用可能である。図1に示される画像形成装置は、カラープリンタであるが、モノクロプリンタ、複写機、ファクシミリ装置やシートに画像を形成可能な他の装置であってもよい。
画像形成装置1は、例えば、画像に関する情報を含む信号を外部から受信し、この信号に基づき画像を形成する。画像形成装置1は、略直方体形状の筐体2を備える。筐体2内部には、外部からの信号に基づきシートSに画像を形成するための様々な装置(例えば、後述されるカセット31、画像形成部52、定着部53や排出部54を構成する各要素)が収容される。
画像形成装置1は、シートSを貯留するための貯留部3を備える。貯留部3は、筐体2内に配設されるカセット31と、筐体2の左面に対して突出する手差しトレイ32とを含む。手差しトレイ32はシートSを支持可能に形成される。手差しトレイ32の基端部には、給紙ローラ41と捌きパッド42とが配設される。手差しトレイ32は、手差しトレイ32の基端部に向けて下方に傾斜し、手差しトレイ32上に配設されたシートSは給紙ローラ41及び/又は捌きパッド42に接触する。給紙ローラ41が回転すると、手差しトレイ42から筐体2の内部にシートSが送り込まれる。給紙ローラ41によって、複数のシートSが筐体2内に送り込まれるとき、捌きパッド42は、最も上側に位置するシートSを除くシートSが筐体2内に送り込まれることを阻む摩擦力を生じさせる。この結果、手差しトレイ32から1枚ずつシートSが筐体2内に送り込まれることとなる。
給紙ローラ41及び/又は捌きパッド42を基端として、第1供給搬送路43が右方に延びる。第1供給搬送路43は、筐体2内に配設された上壁431と、上壁431の下方に配設されるとともに上壁431に対向して配設される下壁432との間に形成される。第1供給搬送路43の途中部には、シートSを搬送するための複数の搬送ローラ対433が適所に配設される。第1供給搬送路43は、水平方向から垂直方向に湾曲して、上方に延びる。
カセット31は、水平方向に延びる第1供給搬送路43の下方に配設される。カセット31は、筐体2に対して着脱自在に取り付けられる。カセット31は、上方に開口した略箱形をなし、シートSを収容可能に形成される。カセット31内には、シートSを支持するように形成されたリフト板311が配設される。リフト板311は、右方に向けて上方に傾斜する。
リフト板311の右端部上には、ピックアップローラ44が配設される。シートSは、リフト板311の右端部とピックアップローラ44とで挟持される。ピックアップローラ44が回転すると、カセット31外にシートSが送り出される。ピックアップローラ44の下流に給紙ローラ45及び捌きローラ46が配設される。給紙ローラ45は、ピックアップローラ44と同方向に回転し、シートSを下流へ送り出す。給紙ローラ45の下方に配設された捌きローラ46は、ピックアップローラ44から送り出されたシートSをカセット31の方向へ向けて送り出すように回転する。したがって、ピックアップローラ44が複数のシートSをカセット31外へ送り出したとき、捌きローラ46は、最も上に位置するシートを除くシートをカセット31に戻すため、シートPは給紙ローラ45によって、1枚ずつ下流へ送り出されることとなる。
給紙ローラ45の下流に、右方に向けて上方に湾曲する案内壁46が形成される。案内壁46の上方に搬送ローラ対48が配設される。搬送ローラ対48は、下方から上方に向けてシートを搬送する。カセット31から送り出されたシートSを案内する第2供給搬送路49は、搬送ローラ対48の上流で、上述の第1供給搬送路43と合流し、合流搬送路50を形成する。合流搬送路50は、本実施形態において、シートが搬送されるための第1経路を形成する。
合流搬送路50は、上方に向けて延び、合流搬送路50の途中部に、レジストローラ対51、画像形成部52、定着部53及び排出部54が配設される。レジストローラ対51は、合流搬送路50の下端部付近に配設される。画像形成部52による画像形成のタイミングに合わせて、レジストローラ対51はシートSを画像形成部52へ送り出す。レジストローラ対51は、筐体2の内部壁に取り付けられる第1レジストローラ511と、搬送ユニット20に取り付けられる第2レジストローラ512とを含む。第1レジストローラ511及び第2レジストローラ512は、シートSを挟持しつつ、上方にシートSを搬送する。
画像形成部52は、合流搬送路50に沿って搬送されるシートSにトナー画像を形成する。筐体2内には、マゼンダ色のトナーでトナー画像を形成するマゼンダ用ユニット52M、シアン色のトナーでトナー画像を形成するシアン用ユニット52C、イエロ色のトナーでトナー画像を形成するイエロ用ユニット52Y及びブラック色のトナーでトナー画像を形成するブラック用ユニット52Kが配設される。マゼンダ用ユニット52M、シアン用ユニット52C、イエロ用ユニット52Y及びブラック用ユニット52Kは、左方から右方に順次配設されている。
各ユニット52M,52C,52Y,52Kは、感光体ドラム521及び感光体ドラム521にトナーを供給する現像装置522を備える。感光体ドラム521の周面に静電潜像が形成された後、現像装置522からトナーが供給され、静電潜像に対応するトナー像(可視像)が形成される。
図1中の感光体ドラム521は時計回りに回転する。感光体ドラム521に形成されたトナー像は、感光体ドラム521の上方を移動する中間転写ベルト525に転写される。
筐体2には、マゼンダ色のトナー、シアン色のトナー、イエロ色のトナー及びブラック色のトナーをそれぞれ収容する4つのトナーカートリッジ520が着脱自在に取り付けられる。これらトナーカートリッジ520は、中間転写ベルト525と、排出部54から排出されたシートSを支持可能に形成された筐体2の上壁21との間に位置する。各トナーカートリッジ520から各ユニット52M,52C,52Y,52Kに向けてトナー補給ダクト(図示せず)が延び、各ユニット52M,52C,52Y,52Kへトナーが補給される。
画像形成部52は、各ユニット52M,52C,52Y,52Kの感光体ドラム521の下方に設けられた帯電装置523と、帯電装置523の下方に設けられた露光装置524とを更に含む。帯電装置523は、感光体ドラム521の周面を一様に帯電させる。露光装置524は、受信された画像データに関するデジタル信号に基づき、レーザ光を帯電された感光体ドラム521の周面に照射する。この結果、各ユニット52M,52C,52Y,52Kの感光体ドラム521の周面には、原稿の各色成分に対応した静電潜像が形成されることとなる。その後、現像装置522は、感光体ドラム521の周面にトナーを供給し、静電潜像にトナーが静電的に付着し、トナー画像が形成される。
各感光体ドラム521上方の中間転写ベルト525は、右方の駆動ローラ525aと左方の従動ローラ525bとの間で延びる。下側に位置する中間転写ベルト525(右方へ向けて移動する)の下面は、各感光体ドラム521の周面に当接する。中間転写ベルト525の外周面は、トナーを担持する面として用いられる。各感光体ドラム521の上方には、転写ローラ526が配設される。転写ローラ526によって、中間転写ベルト525は感光体ドラム521の周面に押しつけられながら、駆動ローラ525aと従動ローラ525bとの間を周回する。駆動ローラ525aと従動ローラ525bとの間に、テンションローラ525cが配設されている。テンションローラ525cは、例えば、付勢部材(図示せず)によって、上方に付勢されている。付勢部材によって上方に押し上げられたテンションローラ525cは、従動ローラ525bの近くで、上方に突出した山型の中間転写ベルト525の輪郭を作り出し、中間転写ベルト525に張力を生じさせる。
中間転写ベルト525の周回の間、マゼンダ用ユニット52Mの感光体ドラム521が中間転写ベルト525にマゼンダトナーのトナー像を転写する。その後、マゼンダ色のトナー像上に、シアン用ユニット52Cがシアントナーのトナー像を転写する。更にその後、マゼンダトナーとシアントナーとが重ね合わせられてなるトナー像上に、イエロ用ユニット52Yがイエロトナーのトナー像を転写する。最後に、マゼンダトナー、シアントナー及びイエロトナーが重ね合わせられてなるトナー像上に、ブラック用ユニット52Kがブラックトナーのトナー像を転写し、フルカラートナー像が完成する。中間転写ベルト525上で完成されたフルカラートナー像は貯留部3から搬送されたシートSに転写される。
画像形成部52の左方において上下方向に延びる合流搬送路50に案内されて搬送されたシートSは、第2転写ローラ513と中間転写ベルト525で形成された2次転写ニップへ向かう。合流搬送路50は、第2転写ローラ513を含む。第2転写ローラ513は、中間転写ベルト525が巻回された駆動ローラ525aに対向し、中間転写ベルト525の外周面に当接し、2次転写ニップ部を形成する。合流搬送路50に案内され、中間転写ベルト525と第2転写ローラ513との間の2次転写ニップ部に送られたシートSは、中間転写ベルト525と第2転写ローラ513によって押圧挟持され、中間転写ベルト525上で完成されたフルカラートナー像がシートSに転写される。
画像形成装置1は更に、クリーニング装置528を備える。クリーニング装置528はシートSへのトナー画像の転写(一般に、二次転写と称される)後に中間転写ベルト525上に残留したトナーを除去し、中間転写ベルト525を清浄化する。クリーニング装置528は従動ローラ525bに対向して配設される。
定着部53は、画像形成部52によってシートS上に転写されたトナー像に対して定着処理を行う。定着部53は、加熱ローラ531と、加熱ローラ531に対向して配設される加圧ローラ532とを含む。加熱ローラ531は、加熱源として用いられる通電発熱体を内蔵する。
トナー像を担持したシートSは、定着部53に搬送される。シートSが加圧ローラ532と高温の加熱ローラ531との間を通過する間、トナー像は加熱ローラ531から熱を受け、シートSに定着される。
定着部53による定着処理が完了し、カラー印刷が終了する。カラー印刷が施与されたシートSは、定着部53から上方に延びる合流搬送路50に案内され、排出部54から排出される。筐体2の上面(上壁21)は、カラー印刷が施与されたシートSを支持する排紙トレイとして用いられる。
中継装置60は、筐体2内において、筐体2の正面壁に沿って配設される。中継装置60の上面は、各トナーカートリッジ520の前端を支持可能に形成される。中継装置60の背面側に画像形成装置1の構成要素(感光体ドラム521,中間転写ベルト525、現像装置522、帯電装置523)が配設される。中継装置60は、トナーカートリッジ520から中間転写ベルト525の下方に配設される各現像装置522に向けて供給されるトナーを案内する。
中継装置60は、更に、転写工程後に生じた廃トナーを収容する役割を担う。各感光体ドラム521の左方には、クリーニング装置527が配設される。クリーニング装置527は、中間転写ベルト525へのトナー像の転写(一次転写と称される)を終えた感光体ドラム521の周面に残留するトナーを除去し、除去されたトナーは、廃トナーとして中継装置60内に収容される。クリーニング装置527により清浄化された感光体ドラム521の周面は、帯電装置523へ向かい、新たに、帯電処理を施与される。また、クリーニング装置528が、中間転写ベルト525の右方において、従動ローラ525bに対向して配設される。クリーニング装置528は、シートSへのトナー像の転写(二次転写と称される)を終えた中間転写ベルト525の外周面に残留するトナーを除去し、除去されたトナーは、廃トナーとして中継装置60内に収容される。クリーニング装置528により清浄化された中間転写ベルト525の外周面は、その後、各感光体ドラム521から新たなトナー像の転写を受ける。
図1に示される如く、画像形成装置1は、シートSの両面に印刷することが可能である。定着部53によって、一方の面に画像の定着処理を施与されたシートSは、排出部54に設けられた搬送ローラ対540によって、排出ローラ対541へ送り出される。外部から送信される信号によって、一方の面だけの印刷を指示されているときは、シートSは、そのまま筐体2の上壁21上に排出される。一方、外部から送信される信号によって、両面の印刷を指示されているときは、排出ローラ対541は、所定量だけシートSを筐体2外に排出した後、再度、筐体2内に引き戻すように逆回転する。その後、シートSは、筐体2の右面に沿って下方に延びる戻し搬送路55へ送り込まれる。戻し搬送路55は、本実施形態において、シートSが搬送されるための第2経路を形成する。本実施形態において、排出ローラ対541は、上側のローラ541a及び下側のローラ541bを含むが、上側のローラ541aに後述される駆動ギア(図1に示されず)が接続される。本実施形態において、筐体2外へ向かうシートSの搬送方向は、第1方向と便宜的に称され、筐体2内へ引き戻されるシートSの搬送方向は、第2方向と便宜的に称される。また、第1方向にシートSが送り出される間の上側のローラ541aの回転方向(図1中、時計回り)は、第1回転方向と便宜的に称され、第2方向にシートが送り出される間の上側のローラ541aの回転方向(図1中、反時計回り)は、第2回転方向と便宜的に称される。
戻し搬送路55の適所に、シートSを搬送するための搬送ローラ対551が配設される。戻し搬送路55は、搬送ユニット20の右面及び下面を取り囲むように湾曲し、第1搬送ローラ57及び第2搬送ローラ48が形成するニップ部の直前で第2供給搬送路49と合流する。したがって、戻し搬送路55へ送り込まれたシートSは、再度第1搬送ローラ47及び第2搬送ローラ48によって、レジストローラ対51へ送り込まれる。その後、レジストローラ対51は、画像形成部52の画像形成のタイミングに合わせて、シートSを画像形成部52へ送り込む。したがって、本実施形態において、戻し搬送路55は、画像形成処理が施与されたシートSを、再度、画像形成部52へ案内する役割を担う。画像形成部52は、シートSのブランク面(印刷がなされていない方の面)に画像を形成する。その後、新たなトナー画像は、定着部53によって、シートSに定着され、排出ローラ対541によって、筐体2の上壁21上に排出されることとなる。図1に示されるように、筐体2内に、画像形成部52から送り出されたシートSを排出部54へ案内する合流搬送路50と、排出部54において合流搬送路50と接続されるとともに画像形成処理が施与されたシートSを、再度、画像形成部52へ案内する戻し搬送路55とを形成することによって、シートの両面に印刷処理を施与することが可能となる。
図2は、戻し搬送路55へシートSが戻されるときの排出部54の動作を概略的に説明する図である。図2と併せて、図1を参照しつつ、排出部54の動作が概略的に説明される。
図1及び図2に示されるように、排出部54は搬送ローラ対540の近傍に案内部材600を含む。図1に示される案内部材600は、第1位置にあり、図2に示される案内部材600は、第2位置にある。第1位置にある案内部材600は、第1経路として用いられる合流搬送路50を開き、第2位置にある案内部材600は、合流搬送路50を閉じるとともに第2経路として用いられる戻し搬送路55を開く。案内部材600は、第1位置と第2位置の間で回動可能に筐体2の内壁に取り付けられる。尚、ここで用いられる「搬送路を開く」、「経路を開く」やこれらに類する文言は、シートSの搬送を妨げることなく、シートSを所定の方向に案内することを意味する。また、ここで用いられる「搬送路を閉じる」、「経路を閉じる」やこれらに類する文言は、シートSの下流への搬送を妨げることを意味する。図1に示されるように、案内部材600の先端が上方位置に存するとき、案内部材600の緩やかに湾曲した下面は、搬送ローラ対540から排出ローラ対541に向けてシートSを案内する役割を担う。この間、案内部材600は、排出ローラ対541から延びる戻し搬送路55内を横切るように突出し、戻し搬送路55を閉じる。一方、図2に示されるように、案内部材600の先端が下方位置に存するとき、案内部材600の下面は、合流搬送路50を閉じるように横たわるとともに、案内部材600の上面は、戻し搬送路55を形成する壁面として用いられる。第1位置に案内部材600がある間、排出ローラ対541の上側のローラ541aは、筐体2外へシートSを排出するための第1回転方向に回転する。第2位置に案内部材600がある間、排出ローラ対541の上側のローラ541aは、筐体2内へシートSを引き戻すための第2回転方向に回転する。
図3及び図4は、排出ローラ対541と案内部材600とを連動させるための連動機構を示す画像形成装置1の斜視図である。図3に示される案内部材600は、第1位置にあり、図4に示される案内部材600は、第2位置にある。図5は、連動機構を示す画像形成装置の側面図である。図3乃至図5と併せて、図1及び図2を参照しつつ、連動機構が説明される。
図3及び図4に示されるように、案内部材600及び排出ローラ対541は、筐体2によって部分的に取り囲まれる。図3及び図4において、排出ローラ対541の上側のローラ541aが示され、下側のローラ541bは筐体2によって隠されている。
案内部材600は、略三角柱状に形成され、略三角形状の端面610を含む。端面610から略円柱形状のピン611が突出し、ピン611の先端は、筐体2の外方に現れ、排出ローラ対541と案内部材600とを連動させるための連動機構650に接触する。案内部材600は、例えば、捻りバネ(図示せず)を用いて、第2位置に向かう方向に付勢されて、筐体2の内壁面に回動可能に取り付けられる。
連動機構650は、排出ローラ対541の上側のローラ541aのシャフト542の端部に取り付けられる駆動ギア651を含む。筐体2の外部に配設された駆動ギア651には、正転及び逆転可能な駆動源(図示せず)からの駆動力が入力される。したがって、駆動ギア651は、筐体2からシートSを排出する方向と、筐体2内へシートSを引き戻す方向とに回転可能である。図3に示される駆動ギア651は、反時計回りに回転され、図4に示される駆動ギア651は時計回りに回転される。図3及び図4に示される駆動ギア651は、例えば、略多段円筒形状をなし、図3及び5に示される径大のギア部と筐体2との間に径小のギア部が形成されている。
連動機構650は、筐体2によって支持されるとともに筐体2の外壁面から突出するシャフト652と、シャフト652に回転可能に取り付けられる中継ギア653及びレバー654とを含む。中継ギア653は、駆動ギア651の径小のギア部と噛み合う。レバー654は、シャフト652の周面を取り囲む円柱部655と、円柱部655から一体的に形成された略Y字板状のアーム部656とを含む。アーム部656は、案内部材600のピン611に向けて延び、アーム部656の上縁659はピン611に接触する。
連動機構650は、レバー654の外面から突出するシャフト657と、シャフト657に回転可能に取り付けられた作動ギア658とを含む。作動ギア658は、中継ギア653と噛み合う。図3に示されるように、駆動ギア651が反時計回りに回転されると、駆動ギア651と噛み合う中継ギア653は時計回りに回転する。図4に示されるように、駆動ギア651が時計回りに回転されると、駆動ギア651と噛み合う中継ギア653は反時計回りに回転する。連動機構650は、レバー654と作動ギア658との間に、中継ギア653の回転力を、作動ギア658を介してレバー654へ伝達するための伝達機構(後述される)を備える。伝達機構を介して、中継ギア653の回転力を伝達されたレバー654は、シャフト652周りに上下に回動する。レバー654と接触する案内部材600は、上方に向かって回動するレバー654によって、第1位置に回動される。したがって、本実施形態では、案内部材600は、レバー654によって、第1位置に向けて回動され、案内部材600を取り付けるために用いられる付勢部材(捻りバネ)によって、第2位置へ回動される。尚、レバー654のアーム部656の下縁がピン611に接触するようにレバー654が配設される場合には、レバー654によって第2位置に向けて案内部材600が回動される。このとき、案内部材600を取り付けるために用いられる付勢部材は、第1位置に案内部材600が付勢されるように配設される。かくして、付勢部材は、レバー654によって回動される方向と逆方向に案内部材600を付勢するように筐体2及び案内部材600との間に取り付けられる。
筐体2は、レバー654の回動範囲を定める規制部24を含む。規制部24は、筐体2の外壁面から突出するとともにアーム部656の上縁659に接触可能に配設された上側規制部24aと、筐体2の外壁面から突出するとともにアーム部656の下縁に接触可能に配設された下側規制部24bとを含む。
図6は、作動ギア658を介してレバー654へ伝達するための伝達機構を示す画像形成装置1の斜視図であり、図7は作動ギア658とレバー654との間の空間に配設される作動ギア658を示す。尚、図6及び図7は、伝達機構の一例を示すものにすぎず、作動ギア658に抗力を与え、作動ギア658の回転を遅らせた分の運動エネルギを、レバー654を回動させるための運動エネルギに変換する任意の機構が伝達機構として用いられてもよい。
伝達機構660は、作動ギア658の内面(レバー654に対向する面)に接触する円板状のパッド661と、パッド661と一体的に接続される円板状の剛性部材662と、レバー654に接続される基端部と剛性部材662に接続される先端部とを含む第1弾性部材663とを含む。パッド661は、作動ギア658の回転を抑制可能な程度の摩擦力を作動ギア658に与えることが可能な任意の材料から形成される。例えば、パッド661は、シリコンゴムから形成されてもよい。剛性部材662は、パッド661の摩擦力を不必要に減ずることがない程度の剛性を発揮することが可能な任意の材料から形成される。例えば、剛性部材662は、プラスチック樹脂から形成されてもよい。本実施形態において第1弾性部材663として、コイルバネが用いられているが、本発明はこれに限られるものではなく、作動ギア658の回転を抑制可能な程度の摩擦力を作動ギア658に与えること可能な程度の付勢力をパッド661に与えることが可能な任意の要素が第1弾性部材663として用いられてもよい。本実施形態では、第1弾性部材663は、作動ギア658を支持するシャフト657を取り巻くように配設され、パッド661及び剛性部材662はシャフト657に沿って移動するように形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1弾性部材663が、回転中の作動ギア658とパッド661との間の接触を維持可能な程度の剛性を有するならば、シャフト657に対して偏心してレバー654に取り付けられてもよい。
図3及び図4と併せて、図6及び図7を参照しつつ、伝達機構660の作用が説明される。
図3に示されるように、駆動ギア651の反時計回りの回転に伴い、中継ギア653は時計回りの回転をする。パッド661と作動ギア658との間の摩擦力は、パッド661が接触されていないときの作動ギア658の回転速度と比して、低い作動ギア658の回転速度をもたらす。作動ギア658の減速分に相当する運動エネルギは、レバー654を回動させるために用いられる。図3に示されるように、中継ギア653が時計回りで回転するとき、作動ギア658の減速分に相当する運動エネルギは、中継ギア653を支持するシャフト652周りに作動ギア658を回転させる力となって、作動ギア658を支持するシャフト657に作用する。この結果、図3中、矢印で示されるような上向きの力(時計回りの力)Fuがレバー654に作用することとなる。かくして、レバー654は上方に回動し、案内部材600を第1位置に回動させる。したがって、排出ローラ対541の上側のローラ541aが第1回転方向(シートSが排出される方向)に回転している間、案内部材600は、第1位置に向けて回動されることとなる。
図4に示されるように、駆動ギア651の時計回りの回転に伴い、中継ギア653は反時計回りの回転をする。パッド661と作動ギア658との間の摩擦力は、パッド661が接触されていないときの作動ギア658の回転速度と比して、低い作動ギア658の回転速度をもたらす。作動ギア658の減速分に相当する運動エネルギは、レバー654を回動させるために用いられる。図4に示されるように、中継ギア653が反時計回りで回転するとき、作動ギア658の減速分に相当する運動エネルギは、中継ギア653を支持するシャフト652周りに作動ギア658を回転させる力となって、作動ギア658を支持するシャフト657に作用する。この結果、図4中、矢印で示されるような下向きの力(反時計回りの力)Fdがレバー654に作用することとなる。かくして、レバー654は下方に回動し、案内部材600と筐体2との接続に用いられる付勢部材の付勢力によって、案内部材600は第2位置に回動する。したがって、排出ローラ対541の上側のローラ541aが第2回転方向(シートSが筐体2内へ引き戻される方向)に回転している間、案内部材600は、第2位置に向けて回動されることとなる。
図8は、他の実施形態に係る連動機構650を示す斜視図である。尚、図8に示される連動機構650は、第1位置及び第2位置に存する案内部材600の姿勢を保持するための保持機構を除いて、図3乃至図7に関連して詳述された連動機構650と同様の構造を備える。図8と併せて、図3乃至図7を参照しつつ、保持機構が説明される。
本実施形態において、レバー654は第1ピン710を含み、筐体2は第2ピン720を含む。第1ピン710及び第2ピン720はそれぞれ、レバー654及び筐体2から外方に突出する。保持機構700は、第1ピン710と第2ピン720との間で伸長する第2弾性部材730とを含む。以下の説明において、第1ピン710と接続される第2弾性部材730の端部は、便宜的に、第1端部と称され、第2ピン720と接続される第2弾性部材730の端部は、便宜的に、第2端部と称される。本実施形態において、第2弾性部材730は、コイルバネであるが、他の実施形態において、伸長されている間、縮小する方向の力を発生させる任意の部材が第2弾性部材730として用いられてもよい。本実施形態において、第2弾性部材730の第1端部及び第2端部を回転可能に保持する保持部材として第1ピン710及び第2ピン720が用いられているが、他の実施形態において、第2弾性部材730の第1端部及び第2端部を回転可能に保持することが可能な任意の形状、構造及び/部材が保持部材として用いられてもよい。図8において、符号「R」で示される仮想空間は、区間領域と便宜的に称される。本実施形態において、区間領域Rは、案内部材600のピン611とレバー654との間の接触部Pcとシャフト652の中心軸Cとの間の区間においてシャフト652の延出方向に向けて延びる平面領域として定義される。
図9及び図10は、保持機構700の動作を示す模式図である。図9に示される案内部材600は、第1位置に存し、図10に示される案内部材600は、第2位置に存する。図9及び図10と併せて、図3、図4、図7及び図8を参照しつつ、保持機構700の動作が説明される。
図3及び図4に関連して説明された如く、駆動ギア651が反時計回りに回転すると、レバー654は案内部材600を第1位置に向けて移動させる。引き続き、駆動ギア651が反時計回りに回転し続けると、パッド661(図7参照)と作動ギア658との間の摩擦力を支配する摩擦係数は、静摩擦係数から動摩擦係数に切り替わる。一般的に、静摩擦係数と較べて、動摩擦係数は小さい値であるので、パッド661と作動ギア658との間に生ずる摩擦力は低下することとなる。図9に示される如く、案内部材600が第1位置に存する間、第1ピン710と第2ピン720との間の第2弾性部材730は、シャフト652の中心軸Cと、案内部材600のピン611とレバー654との接触部Pcとの間の区間領域Rを横切るように伸長される。この結果、第2弾性部材730の弾性変形力Feは、レバー654をシャフト652周りで時計回りに回転させる方向のモーメントM1を生じさせる。かくして、駆動ギア651が反時計回りに回転している間(即ち、上側のローラ541が第1回転方向に回転している間)、第1位置にある案内部材600の姿勢を保つように第2弾性部材730はレバー654を付勢することとなる。
図10に示される如く、駆動ギア651の回転方向が、その後、時計回りに切り替わると、パッド661と作動ギア658との間の摩擦力を支配する摩擦係数は、動摩擦係数から静摩擦係数に切り替わる。この結果、パッド661と作動ギア658との間の摩擦力は増大し、図9に示された時計回り方向のモーメントM1に抗して、レバー654が下方に回動することとなる。レバー654の回動に伴い、第2位置に向けて付勢された案内部材600は、第2位置に到達する。案内部材600が第2位置に到達した後、引き続き、駆動ギア651が時計回りに回転し続けると、パッド661と作動ギア658との間の摩擦力を支配する摩擦係数は、静摩擦係数から動摩擦係数に切り替わる。図10に示される如く、案内部材600が第2位置に存する間、第1ピン710と第2ピン720との間の第2弾性部材730は、案内部材600のピン611とレバー654との接触部Pcから離間する方向に区間領域Rから外れた位置で伸長する。この結果、第2弾性部材730の弾性変形力Feは、レバー654をシャフト652周りで反時計回りに回転させる方向のモーメントM2を生じさせる。かくして、駆動ギア651が時計回りに回転している間(即ち、上側のローラ541が第2回転方向に回転している間)、第2位置にある案内部材600の姿勢を保つように第2弾性部材730はレバー654を付勢することとなる。
上記の実施形態において、第1位置への案内部材600の回動をレバー654が担い、第2位置への案内部材600の回動を、案内部材600を筐体2に取り付けるために用いられた捻りバネといった付勢手段が担ったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、レバー654を案内部材600のピン611の上下に延出させることにより、レバー654は、排出ローラ対541の上側のローラ541aが第1回転方向に回転しているときに、第1位置へ案内部材600を回動させる第1動作及び排出ローラ対541の上側のローラ541aが第2回転方向に回転しているときに、第2位置へ案内部材600を回動させる第2動作を実行してもよい。他の手法として、レバー654に案内部材600のピン611と係合可能な、貫通孔、凹部や溝部を形成することによって、レバー654を用いて、第1位置及び第2位置へ案内部材600を回動させることも可能である。更なる他の手法として、案内部材600の自重によって、第2位置へ案内部材600が移動されてもよい。
本実施形態では、画像形成装置1の排出部54に本発明の搬送装置の原理が適用されたが、シートSを搬送するための任意の装置に本発明の搬送装置の原理は適用可能である。更に、画像形成装置1以外の他の任意の処理をシートSに施与するための装置に、本発明の搬送装置の原理が適用されてもよい。
本実施形態では、第1回転方向と第2回転方向に回転可能な搬送要素として、排出ローラ対541の上側のローラ541aが用いられたが、本発明はこれに限定されるものではなく、シートSの搬送を実現可能な任意の搬送要素(例えば、バキュームベルト)が搬送要素に適用されてもよい。