JP2011147917A - 超音波洗浄方法と超音波洗浄装置、および超音波洗浄に用いる伝播水の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも、洗浄槽中の洗浄液に被洗浄物を浸漬し、超音波振動子から発生する超音波を伝播槽中の伝播水を介して前記洗浄液に伝播させて前記被洗浄物を洗浄する超音波洗浄方法であって、前記伝播水として、脱気した純水に、溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させたものを用いることを特徴とする超音波洗浄方法。
【選択図】図1
Description
ここで、被洗浄物の1つである半導体ウェーハの洗浄においては、効率良くパーティクルを除去するために超音波洗浄を併用するのが一般的であり、付着パーティクルの種類やウェーハの状態、洗浄後の品質等によって、周波数、出力、超音波制御方法、超音波洗浄槽の形態、洗浄時間等が決定される(特許文献1、特許文献2等参照)。
一方、超音波振動を緩和して、超音波振動による過度の衝撃を抑制する必要もある。
より具体的には、洗浄槽内に配置された被洗浄物の保持治具や配管の影となる部分にメガソニックが照射されないことに起因して、また、メガソニック振動子の配置に応じた洗浄ムラが生じてしまっていた。
この対策として、伝播水中の溶存ガスを脱気することで、伝播槽における減衰を大幅に低減することが開示されている(例えば特許文献3等参照)。
しかし、伝播水を脱気水とすると、今度は、伝播水内で起きていたメガソニックの散乱が無くなるため、振動子や振動板等起因の発振ムラが顕在化し、これが被洗浄物の洗浄ムラとなっている。
すなわち、一旦脱気した純水に溶存ガス濃度を飽和ガス濃度の35〜70%とコントロールした伝播水を用いることによって、超音波のエネルギーロスがほとんど無く、かつ適度な超音波の散乱を発生させることができるため、例えば指向性が強いメガソニック洗浄であっても、振動子・振動板・保持治具・配管等に起因する超音波の発振ムラが解消され、洗浄ムラの少ない超音波洗浄を行うことができる。
このように、溶存ガスが水素であれば、例えば水素水製造装置等によって、一旦脱気した純水に飽和ガス濃度の35〜70%の濃度の溶存ガス濃度にコントロールされたものを容易に得ることができるため、調達が容易であり、洗浄に要するコストを低減することができる。
このように、脱気した純水に溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させた伝播水を供給し続けて、オーバーフローさせながら超音波洗浄を行うことによって、超音波洗浄中に伝播水の溶存ガス濃度が安定して35〜70%となる。このため、更に超音波のエネルギーロスがほとんど無く、かつ超音波の発振ムラに基づく洗浄ムラの無い超音波洗浄を行うことができる。
このように、溶存ガスの濃度を、40〜60%とすることによって、前述の超音波のエネルギーロスがほとんど無く、かつ超音波の発振ムラが解消されるという効果をより強いものとすることができ、より洗浄ムラの無い超音波洗浄とすることができる。
このような伝播水では、超音波を伝播させる際に少量の溶存ガスが脱気されるが、溶存ガス濃度はコントロールされているため、超音波のエネルギーロスがほとんど無い上に、脱気させたガスによって発生する気泡によって、超音波を散乱させることができる。従って、被洗浄物の縦方向の洗浄力は高いままに発振ムラによる洗浄ムラの小さい超音波洗浄を行うことが可能な伝播水を得ることができる。
このように、一旦脱気した純水に飽和ガス濃度の35〜70%の濃度の溶存ガス濃度にコントロールされたものは、例えば水素水製造装置等によって容易に得ることができるため、溶存ガスが水素であれば、調達が容易であり、洗浄に要するコストを低減することができる。
一旦脱気された純水に水素が飽和ガス濃度の35〜70%の濃度にコントロールされた水は、例えば水素水製造装置等によって容易に得られるため、容易に超音波のエネルギーロスが小さく、かつ洗浄ムラの小さい超音波洗浄を行うことができる。
このように、脱気した純水に溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させた伝播水を供給し続ける伝播水供給機構を更に備えた超音波洗浄装置であれば、更に超音波洗浄中の伝播水の溶存ガス濃度は35〜70%の範囲に安定したものとできる。よって、より確実に洗浄後の被洗浄物に洗浄ムラが発生しない超音波洗浄を行うことができる超音波洗浄装置となる。
超音波伝播水に、脱気していない純水を用いた場合は、N2やO2等のガスがほぼ飽和の状態で溶解している。
このため、このような純水を伝播水として用いて超音波を照射すると、これらのガスを脱気してキャビテーションが発生し、エネルギーをロスしてしまうため、洗浄槽に伝わる超音波が弱くなって超音波の減衰により超音波振動子から距離のある部分の洗浄力が低下してしまい、ウェーハ全面を洗浄ムラ無く洗浄することができない、という問題があった。
しかしながら、脱気によって発生するキャビテーションの量が減少するため、超音波の散乱が減少する。すると超音波振動子の周波数、形状、配置等に起因する洗浄ムラが発生する、という新たな問題が発生する。
そして、この知見によれば、超音波振動子の周波数、形状、配置等に起因する洗浄ムラや、超音波の減衰による洗浄ムラやエネルギーロスを従来に比べて少ない超音波洗浄を行えることを発見し、本発明を完成させた。
本発明の超音波洗浄装置10は、少なくとも、超音波振動子11と、被洗浄物Wを浸漬させる洗浄液12aを保持する洗浄槽12と、超音波振動子11から発生する超音波を洗浄槽12に伝播させるための伝播水13aを保持する伝播槽13と、被洗浄物Wを洗浄液12a中で保持するための保持治具15とを備えるものである。
そして、伝播水13aとして、脱気した純水に飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶存ガスを溶解させたものが用いられている。
また伝播水中に溶存ガスが飽和濃度に対して70%以下の濃度で溶解しているため、キャビテーションの発生による超音波のエネルギー損失が必要以上に大きくならずに済み、パーティクルの除去効率が低下することも抑制できる。
これらの効果によって、必要な超音波洗浄の強度を維持しつつ、超音波振動子等に起因する洗浄ムラを解消することができる超音波洗浄装置が提供される。
上述のような伝播水を伝播水供給機構によって供給し続けながら超音波洗浄を行う超音波洗浄装置であれば、超音波洗浄中の伝播水の溶存ガス濃度が常に容易に35〜70%の範囲に安定して制御されたものとなる。従って、より洗浄ムラが発生しない超音波洗浄を行うことができる装置となる。
溶存ガスが水素であれば、例えば図14に示すような水素水製造装置等によって容易に製造することができるため、洗浄ムラの小さい超音波洗浄が更に容易に行うことができる。
但し、本発明における溶存ガスとしては、水素に限定されるものではなく、酸素、窒素、その他のガスとすることも可能である。
そしてこのような水素水製造装置では、脱気膜21によって純水中の気体を脱気し、脱気済みの純水に高純度の水素を溶解膜23によって所望の濃度となるように溶解させることによって、飽和ガス濃度に対する所望の濃度にコントロールされた水素水が作製される。
そして本発明では、この伝播水13aに、脱気した純水に、溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させたものを用いることを特徴とするものである。
また伝播水中の溶存ガス濃度が飽和濃度に対して70%以下のため、パーティクルの除去効率が低下する程の超音波のエネルギーロスが発生することを防止することができる。
このように、脱気した純水に対して溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させた伝播水を用いて超音波洗浄を行うことによって、超音波洗浄の強度は必要十分な水準に維持しつつ、振動子等の構造や配置に起因する洗浄ムラが発生することを抑制することができ、従来よりパーティクルの少ない清浄な被洗浄物を得ることができる。
このように、溶存ガスの濃度が、40〜60%となっている伝播水を用いることによって、より超音波のエネルギーロスが小さく、かつ超音波の発振ムラによる洗浄ムラを少なくすることができるため、更に洗浄ムラの少ない超音波洗浄を行うことができる。
一旦脱気した純水に飽和ガス濃度の35〜70%の濃度で水素が溶解された水は、上述のような水素水製造装置等によって容易に得られるため、伝播水の調達が容易となり洗浄コストの低減を図ることができる。
そして、純水に対する飽和濃度が1.6ppm程度と小さい水素であれば、伝播水中の溶存ガスが必要以上に溶解した状態とならず、キャビテーションも必要以上に発生しないものとできると考えられ、超音波のエネルギーロスを極力小さくすることができ、より洗浄ムラの少ない超音波洗浄を行うことができるためと考えられる。
このように、脱気した純水に溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させた伝播水を伝播槽に供給し続けて、オーバーフローさせながら超音波洗浄を行うことによって、超音波洗浄中における伝播水の溶存ガス濃度を35〜70%の間に容易に安定してコントロールすることができる。これによって、更に超音波のエネルギーロスが少なく、かつ超音波の発振ムラに基づく洗浄ムラのより少ない超音波洗浄を確実に行うことができる。
しかし、上記のような本発明の超音波洗浄装置や超音波洗浄方法を用いれば、1MHz以上の高周波による洗浄であっても、洗浄ムラが抑制された効果的なパーティクル除去を行うことができるため、有効である。但し、本発明における「超音波」の振動数については広義に解釈されるべきものであり、特定の振動数に限定されるものではない。
尚、ウェーハ等の洗浄において、ウェーハ表面粗さを低減するために、比較的低温(例えば50℃)の洗浄液で洗浄を行う方法があるが、このような洗浄能力が低めの洗浄液の場合でも、本発明の超音波洗浄装置や超音波洗浄方法によれば、効果的にパーティクルの除去を行うことができる。
(実施例1−5,比較例1−6)
図1に示すような超音波洗浄装置を用いて、鏡面研磨後の直径300mmのシリコンウェーハを6分間超音波洗浄した。使用した洗浄液はアンモニア、過酸化水素水、水の混合液(SC−1)とし、その混合比を1:1:10とした。また、洗浄液の温度は50℃とした。
またこの際に使用する伝播水は、溶存水素濃度0ppmの脱気水(比較例1)、脱気水に水素を溶解させて溶存水素濃度0.2ppm(飽和濃度の12.5%)とした水(比較例2)、脱気水に水素を溶解させて溶存水素濃度0.4ppm(飽和濃度の25%)とした水(比較例3)、脱気水に水素を溶解させて溶存水素濃度0.56ppm(飽和濃度の35%)とした水(実施例1)、脱気水に水素を溶解させて溶存水素濃度0.6ppm(飽和濃度の37.5%)とした水(実施例2)、脱気水に水素を溶解させて溶存水素濃度0.8ppm(飽和濃度の50%)とした水(実施例3)、脱気水に水素を溶解させて溶存水素濃度1.0ppm(飽和濃度の62.5%)とした水(実施例4)、脱気水に水素を溶解させて溶存水素濃度1.12ppm(飽和濃度の70%)とした水(実施例5)、脱気水に水素を溶解させて溶存水素濃度1.2ppm(飽和濃度の75%)とした水(比較例4)、脱気水に水素を溶解させて溶存水素濃度1.4ppm(飽和濃度の87.5%)とした水(比較例5)、脱気していない純水(比較例6)、の計9種類を用いた。
一方、脱気していない純水を使用した比較例6の場合、図12に示すように、超音波の減衰によると見られるシリコンウェーハ上部での超音波強度の不足のためと考えられるパーティクルの未除去部が発生しており、LPDはトータルで14517個であった。
また、図3、図4に示すように、飽和濃度の12.5%のガス濃度の伝播水を用いた比較例2や飽和濃度の25%のガス濃度の伝播水を用いた比較例3では、ウェーハ下部から上部に向かって振動子に起因すると見られる洗浄ムラが発生しており、LPDはそれぞれ5217個、5460個であった。
また図6に示すように、実施例2(飽和濃度の37.5%)も、同様に振動子起因の洗浄ムラや伝播水の脱気による超音波のエネルギーロスがほとんどなく、LPDは422個と少ないことが判った。
そして実施例3(飽和濃度の50%)では、図7に示すように、実施例1,2同様に比較的きれいに洗浄されており、LPDは135個と、最も少なかった。
更に実施例4(飽和濃度の62.5%)では、図8に示すように、実施例1−3と同様に、LPDは461個と少ないことが判った。
また、実施例5(飽和濃度の62.5%)では、図9に示すように、実施例1−4と同様、LPDは521個と少ないことが判った。
そして、飽和濃度の87.5%とした比較例5では、図11に示すように、LPD数が8649個となり、脱気水(比較例1)や脱気なし(比較例6)とほぼ同レベルのLPD数であり、洗浄能力が低いことが判った。
11…超音波振動子、 12…洗浄槽、 12a…洗浄液、 13…伝播槽、 13a…伝播水、 14…伝播水供給機構、 15…保持治具、 16…排水樋、
20…水素水製造装置、
21…脱気膜、 22…真空ポンプ、 23…溶解膜、
W…被洗浄物。
Claims (9)
- 少なくとも、洗浄槽中の洗浄液に被洗浄物を浸漬し、超音波振動子から発生する超音波を伝播槽中の伝播水を介して前記洗浄液に伝播させて前記被洗浄物を洗浄する超音波洗浄方法であって、
前記伝播水として、脱気した純水に、溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させたものを用いることを特徴とする超音波洗浄方法。 - 前記溶存ガスを、水素とすることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄方法。
- 前記被洗浄物の洗浄中に、前記脱気した純水に溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させた伝播水を前記伝播槽に供給し続けて、前記伝播水をオーバーフローさせながら前記被洗浄物の洗浄を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波洗浄方法。
- 前記溶存ガスの濃度を、40〜60%とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の超音波洗浄方法。
- 洗浄槽中の洗浄液に浸漬させた被洗浄物を超音波洗浄する際に、超音波振動子から発生する超音波を前記洗浄液に伝播させる伝播水の製造方法であって、
該伝播水を、純水を脱気した後に、溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度となるように溶解させることを特徴とする伝播水の製造方法。 - 前記溶存ガスを、水素とすることを特徴とする請求項5に記載の伝播水の製造方法。
- 少なくとも、超音波振動子と、被洗浄物を浸漬させる洗浄水を保持する洗浄槽と、前記超音波振動子から発生する超音波を前記洗浄水に伝播させるための伝播水を保持する伝播槽とを備える超音波洗浄装置であって、
前記伝播水に、脱気した純水に、溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させたものが用いられるものであることを特徴とする超音波洗浄装置。 - 前記溶存ガスが、水素であることを特徴とする請求項7に記載の超音波洗浄装置。
- 前記超音波洗浄装置は、更に、前記被洗浄物の洗浄中に、前記伝播槽に前記脱気した純水に溶存ガスを飽和濃度に対して35〜70%の濃度で溶解させた伝播水を供給し続ける伝播水供給機構を有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の超音波洗浄装置。
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