本発明の構成を用いたプロセスカートリッジを有する転写式電子写真装置の概略構成を図2に示した。図2を用いて、電子写真プロセスを説明する。101は像担持体としての電子写真感光体であり軸101aを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体はその回転過程で帯電手段102によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで露光部103にて不図示の像露光手段により光像露光L(スリット露光・レーザービーム走査露光など)を受ける。これにより電子写真感光体周面に露光像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
その静電潜像はついで現像スリーブ104aを内蔵する現像手段104でトナー現像されそのトナー像が転写手段105により不図示の給紙部から電子写真感光体101と転写手段105との間に電子写真感光体の回転と同期取りされて給送された転写材Pの面に順次転写されていく。ここにおいて、現像スリーブ104aが本発明に示される方法で結合部材を組み付けた円筒状基体で形成されていてもよい。
像転写を受けた転写材Pは電子写真感光体面から分離されて定着手段108へ導入されて像定着を受けて複写物(コピー)又はプリントとして機外へプリントアウトされる。
像転写後の電子写真感光体の表面はクリーニング手段106にて転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに、前露光手段107により除電処理されることにより繰り返して像形成に使用される。
電子写真感光体の帯電手段102としてはコロナ帯電装置や接触帯電方式のローラ帯電装置が一般に広く使用されている。また転写手段105に関しても同様である。電子写真装置として、上述の電子写真感光体や現像手段、クリーニング手段などの構成要素のうち、複数のものを装置ユニットとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。例えば、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段の少なくとも1つを電子写真感光体とともに一体に支持してユニットを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成にしても良い。このとき、上記の装置ユニットのほうに帯電手段および/または現像手段を伴って構成しても良い。
また、光像露光Lは、電子写真装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、原稿を読取り信号化し、この信号によりレーザービームの走査、LEDアレイの駆動、または液晶シャッターアレイ駆動などにより行われる。
また、ファクシミリのプリンターとして使用する場合には、光像露光Lは受信データをプリントするための露光になっている。
上述の帯電、露光、現像および転写等における本発明の電子写真プロセスのスピードはサイクルタイムで表す。これは、電子写真感光体における電子写真プロセスが1周期するのに要する時間(秒)を意味する。近年の高速化に対応するために、サイクルタイムは0.30秒以下に設定されている。
なお、一般に広く使用されているプロセスカートリッジのように、電子写真感光体101、帯電手段102、現像手段104、転写手段105およびクリーニング手段106などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めて一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。
本発明では、上記の電子写真プロセスを用いて画像形成を繰返し行う際に、転写手段による転写材への転写の有無に関わらず、電子写真感光体の表面の領域Mに点状のトナーパターンを形成させ、該トナーの潤滑性を利用して、クリーニングブレード(ブレード状のクリーニング手段)のめくれを抑制する。従来の技術では、使用開始前、画像形成終了時あるいは画像形成時の画像と画像の間といった非画像領域(転写材に転写しないタイミング)において、電子写真感光体の表面上にトナーパターンを形成させていたが、画像形成を行っているタイミング(転写材に転写しているタイミング)において領域Mに点状のトナーパターンを形成させることでクリーニングブレードのめくれの抑制効果が増大することが本発明で見出された。トナーパターンを線状・帯状でなく、点状にすると、電子写真感光体の回転時にトナーがこぼれ落ちにくくなる。電子写真感光体の表面の領域Mに選択的に点状パターンを形成させるには、露光手段を用いて点状の潜像を形成させることもできるが、領域Mは軸方向の配置が転写手段と合致しない領域、すなわち通常の画像形成領域の外側であるため、露光装置のレーザービームの走査領域を広げる必要があり、露光装置のコスト上昇につながりやすい。また、転写領域の画像形成と同時に、領域Mの画像パターンを組み込む必要があり、露光制御も複雑になりやすい。本発明では装置のコストを上昇させず、且つ制御を複雑にすることなく、領域Mに選択的に点状パターンを容易に形成させるために、特定の層構成を有する電子写真感光体を用いる。これにより、露光手段を用いずに、帯電手段と現像手段のみで領域Mに点状パターンを形成させることができる。
領域Mに点状パターンを形成させるには、帯電手段と現像手段を軸方向の中心が同じになるように配置させた場合、両者の軸方向の長さの差を3.0mm以下とする必要がある。図1では現像手段のほうが帯電手段よりも長い構成であるが、図3のように帯電手段のほうが現像手段よりも長い構成にしてもよい。図1において、両者の軸方向の長さの差が3.0mmを超えると、領域Mの外側の端部域で余計な点状パターンが形成されやすく、トナーの消費量を必要以上に増やしてしまう可能性がある。一方、図3において、両者の軸方向の長さの差が3.0mmを超えると、領域Mの中で両者の配置が重ならない端部域で点状パターンの形成が不十分になる危険性がある。
電子写真感光体の表面における領域Mの軸方向の幅は短いほどクリーニングブレードのめくれは発生しにくくなる。前述したように、高速化された電子写真装置を高温・高湿の環境下で繰返し使用する場合は、電子写真感光体の表面の領域Mにおける摩擦係数が上昇しやすく、クリーニングブレードのめくれを完全に防止することは難しくなる。特に、電子写真プロセスのサイクルタイムが0.3秒以下の場合や、使用環境の温度が30℃を超える場合は、その傾向が顕著となる。なお、帯電手段および転写手段の軸方向の長さを等しくして、電子写真感光体の表面における領域Mを無くせば、領域Mにおけるクリーニングブレードのめくれは発生しない。しかしながら、帯電手段の両端部では、繰返し使用時の位置ズレや成形精度等の影響で帯電が不安定となる場合があり、電子写真感光体の表面における領域Mの軸方向の幅を無くすことができないのが実状である。
図4は領域Mを含む電子写真感光体の層構成を示した断面図例である。本発明の電子写真感光体は、円筒状基体上に導電層と感光層を設けた積層型の電子写真感光体である。導電層は、導電性材料と結着樹脂を含有しており、円筒状基体の表面の欠陥を被覆するために、円筒状基体上に設けられる。導電層には表面で反射したレーザー光が干渉して画像形成時に干渉縞が発生しないように粗し材粒子を添加し、粗面化することが好ましい。さらに導電層の上に感光層が設けられるが、本発明では導電層と感光層の間に中間層(下引き層、バリア層)を設けている。図4における導電層は、軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域Mに相当する表面において、基準長さ2.0mmでの最大山高さをそれぞれRp(C)、Rp(E)としたとき、Rp(C)<Rp(E)である。これは、領域Mのほうが転写手段と合致する領域よりも粗面化されていることを意味する。また、中間層は軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域Mに相当する表面における最小膜厚をそれぞれUT(C)、UT(E)としたとき、UT(C)>UT(E)である。中間層の膜厚は導電層の粗面状態を利用して制御する。粗面化された導電層上に中間層用の塗布液を塗布する際、導電層の山の部位で生じる塗布液のはじき効果を利用し、中間層の膜厚を薄くすることができる。膜厚はRpに相当する部位で最小となる。よって、中間層の膜厚は、高度に粗面化されている領域Mのほうが転写手段と合致する領域よりも薄くなる。中間層の表面に設けられる感光層についても、導電層および中間層の粗面状態を利用し、導電層の山の部位に相当する部位で感光層の膜厚も薄くすることができる。感光層は中間層の表面に電荷発生層と電荷輸送層をこの順に設けて形成する。よって、粗面化された導電層の山の部位では、中間層や電荷輸送層等の膜厚が薄くなっており、帯電手段による帯電後の表面電位の絶対値は小さくなる傾向にある。これは、導電層の山の部位に相当する部位では中間層の膜厚が薄いためにバリア性が損われており、さらに電荷輸送層の膜厚も薄いことから、帯電後の暗減衰が大きくなっているためと考えられる。ただし、軸方向の配置が転写手段と合致する導電層の領域では干渉縞を抑制できる範囲で緩やかに粗面化されているため、中間層や感光層の膜厚への影響は殆どなく、帯電後の電位には影響しない。以上のような層構成を有する電子写真感光体では、画像形成時にRp(C)、Rp(E)に相当する電子写真感光体の表面が帯電手段の帯電バイアスにより帯電されたときの表面電位をそれぞれVa、Vbとしたとき、│Va│>│Vb│とすることができる。本発明ではRp(E)および周辺の山の高さが接近しているため、│Va│>│Vb│の関係はRpの部位に限らず、その周辺の山の部位においても成立するが、山の高さが最大となるRpで最も顕著になりやすい。さらに、画像形成を繰返し行っていくと、Rp(E)およびその周辺の山の部位では電気的疲労によるバリア性の低下が顕著になり、Rp(C)およびその周辺の山の部位よりも表面電位の絶対値はより小さくなる傾向にある。
ここで、本発明の電子写真感光体を用い、現像手段のトナーに印加される現像バイアスをVcとしたとき、│Vb│−│Vc│が0V以上60V以下の関係が成立つように設定すれば、Rp(E)および周辺の山の部位に対するトナーの点状現像により領域Mに選択的に点状パターンを容易に形成させることができることが判明した。│Vb│−│Vc│が60Vを超えると、電子写真感光体表面とトナーの電位差が大きくなるため、クリーニングブレードのめくれの抑制に効果のある点状現像は起こりにくくなる。│Vb│−│Vc│が0Vよりも小さくなると、トナーと電子写真感光体表面の電位差が大きくなり、形成パターンが線状もしくは帯状となるだけでなく、さらに現像量も増えてくるので、電子写真プロセスのサイクルタイムが短くなるに従ってトナーが電子写真感光体の表面からこぼれ落ちる可能性が高くなる。なお、Rp(C)に対応するVaは、画像形成を繰返し行っても帯電性が安定しているため、画像形成時の現像バイアスVcに対して、点状現像が起こらず、領域Mのような点状パターンは形成されない。
さらに、領域Mにおけるクリーニングブレードのめくれを強力に抑制するには、上述の転写手段による転写材への転写が行われるタイミングに加え、画像形成時の画像と画像の間といった転写材への転写が行われないタイミングにおいても領域Mに点状パターンを形成させればよい。転写材への転写が行われないタイミングでは、上述したように電子写真感光体の表面からトナーがこぼれ落ちない範囲で現像バイアス│Vc│を小さく設定することができる。
導電層のRpの部位におけるVa、Vbは、電子顕微鏡やレーザー顕微鏡による断面観察から各層の膜厚を測定後、該膜厚に設定した積層型の電子写真感光体を作製し、電子写真プロセスの所定のタイミングにおける表面電位を測定することで求めた。電子顕微鏡としては、(株)島津製作所製のナノサーチ顕微鏡SFT−3500、(株)キーエンス製のリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−9800、日立製作所(株)製のFE−SEM S−4700等を用いることができる。レーザー顕微鏡としては、オリンパス(株)製の走査型共焦点レーザー顕微鏡OLS3000、レーザーテック(株)製のリアルカラーコンフォーカル顕微鏡オプリテクスC130等を用いることができる。
なお、図4では電子写真感光体の表面の領域Mにおける導電層および中間層の層構成は、電子写真感光体の軸方向における領域Mの外側すなわち両端部にわたって形成されているが、領域Mの部分のみに形成されていてもよい。
図5は、領域Mの電荷輸送層の膜厚が軸方向の配置が転写手段と合致する領域よりも薄くなっている場合の断面図であり、図4の場合よりも領域Mにおける電位の暗減衰が大きくなるため、領域Mに点状パターンを形成させやすくなる。また、電子写真感光体の領域Mにおける中間層をなくすことでも点状パターンを形成させることができる。ただし、領域Mで形成されるパターンが点状になるように、導電層の粗面状態や現像バイアス等の調整が必要となる場合がある。
次に、本発明の電子写真感光体の構成についてさらに詳しく説明する。
本発明においては、領域Mの粗面状態を利用する層構成とするため、積層型であることが好ましい。以下に、積層型の電子写真感光体構成について説明する。
本発明に用いられる円筒状基体としてはアルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄の如き金属または合金が挙げられるが、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金が選択されることが多い。
上述したように、円筒状基体と後述の中間層との間には、レーザー光の散乱による干渉縞の防止や、円筒状基体の傷の被覆を目的として、導電層を設けている。
導電層は、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物粒子の如き導電性粒子と結着樹脂を溶剤とともに分散させて得られる導電層用塗布液を円筒状基体上に塗布し、乾燥させることで形成することができる。好適な金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛や酸化チタンの粒子が挙げられる。また、導電性粒子として、硫酸バリウムの粒子を用いることもできる。導電性粒子には、表面に被覆層を設けてもよい。導電層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール、ケトン、スルホキシド、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。
導電性粒子の体積抵抗率は0.1Ω・cm以上1000Ω・cm以下の範囲が好ましく、特には1Ω・cm以上1000Ω・cm以下の範囲がより好ましい。この体積抵抗率は、三菱油化(株)製の抵抗測定装置ロレスタAPを用いて測定して求めた値である。測定サンプルは49MPaの圧力で固めてコイン状としたものを用いている。また、導電性粒子の体積平均粒径は0.05μm以上1.00μm以下の範囲が好ましく、特には0.07μm以上0.70μm以下の範囲がより好ましい。この体積平均粒径は、遠心沈降法により測定した値である。導電層中の導電性粒子の割合は、導電層全質量に対して1.0質量%以上90.0質量%以下の範囲が好ましく、特には5.0質量%以上80.0質量%以下の範囲がより好ましい。
導電層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。これらは、円筒状基体に対する接着性が良好であるとともに、導電性粒子の分散性を向上させ、かつ、成膜後の耐溶剤性が良好である。これらの中でも、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリアミド酸樹脂が好ましい。
導電層の体積抵抗率は軸方向の配置が転写手段と合致する領域、すなわち画像形成領域において、帯電手段による電子写真感光体表面の帯電性を安定化させるという観点から1.0×105Ω・cm以上9.9×1010Ω・cm以下であることが好ましく、後述の中間層の体積抵抗率と組み合わせることが好ましい。体積抵抗率は、測定対象の導電層と同じ材料によってアルミニウム板上に被膜を形成し、この被膜上に金の薄膜を蒸着により形成して、アルミニウム板と金薄膜の両電極間を流れる電流値をpAメーターで測定して求めた値である。このとき、印加電圧は100Vとし、測定開始1分後の値を採用し、体積抵抗率を算出した。
転写手段と合致する領域に相当する導電層の最大山高さRp(C)は0.70μm以上1.45μm以下であることが好ましい。Rp(C)が0.70μmよりも小さいと導電層の膜厚が厚い場合に干渉縞が発生しやすい。Rp(C)が1.45μmよりも大きいと電子写真感光体の表面の帯電性が損なわれ、中間層や電荷輸送層の膜厚によっては点状現像が発生する可能性がある。一方、領域Mに相当する導電層の最大山高さRp(E)は1.60μm以上4.00μm以下であることが好ましく、3.00μm以上4.00μm以下であることがより好ましい。Rp(E)が1.60μmよりも小さいとクリーニングブレードのめくれの抑制に効果のある点状現像が領域Mで一様に発生しにくくなる。Rp(E)が4.00μmよりも大きいと導電層上に中間層や感光層を塗布することが困難となる。
導電層の最大山高さRpの測定は、JIS−B0601−2001に記載の方法に従う。Rpとは基準長さ2.0mmにおいて、平均線から最も高い山頂までの高さである。測定は、表面粗さ測定計(商品名:サーフコーダSE3500型、(株)小坂研究所製)を用い、対象領域内の任意の20箇所に関して、送り速度0.1mm/秒、カットオフ0.8mm、測定長さ2.0mmの設定で行い、得られた各測定値の平均値をRp値として採用した。
領域Mにおいて、Rp(C)<Rp(E)となるように粗面化させ、最適な最大山高さRpを形成させるには、上記の粗し材粒子を含有する導電層の膜厚を転写手段と合致する領域よりも薄くなるように制御するとよい。導電層の膜厚は、転写手段と合致する領域では帯電性を安定させると同時に点状現像を発生させない粗面を形成させるという観点から12.0μm以上40.0μm以下であることが好ましい。領域Mに相当する領域では、点状現像に最適な最大山高さRpを形成させるため、導電層の膜厚は5.0μm以上15.0μm以下であることが好ましく、後述の粗し材粒子の大きさを考慮して設定するとよい。
粗面化された導電層の表面では、Rpに相当する部位と他の山の部位の山高さを接近させることが好ましい。前述したように、領域Mでは両者の山高さが接近していると、Rp部とほぼ同様の点状パターンを領域Mに一様に形成させることができる。そのためには、導電層を粗面化する手段として、粒径のばらつきが小さい粗し材の粒子を使用するとよい。粒径の分布はシャープであり、粒径のばらつきの範囲は0.5μm以下であることが好ましい。このばらつきの範囲内であれば、Rp部と周辺の山の部位との高さの差を0.3μm以下に抑えることができ、上述の帯電および現像設定において、Rp部だけでなく周辺の山の部位にも点状現像を形成させることができることがわかった。本発明では、粒径のばらつきの範囲が1.0μm以下である樹脂粒子を用いた。粒径のばらつきを上記範囲内に入れるためには、必要に応じてフィルターを介して選別してもよい。粗し材は不定形粒子ではなく、多面体やボール状のように形状が定まった樹脂粒子が好ましい。例えば、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の硬化性樹脂の粒子が挙げられる。中でも、凝集しにくいシリコーン樹脂の粒子が好ましい。粗し材粒子の平均粒径は、4.0μm以上9.0μm以下であることが好ましい。平均粒径が4.0μmよりも小さいと点状現像を発生させる山の部位の形成が難しくなり、9.0μmよりも大きいと山の部位の均一性が損なわれる。平均粒径は、任意の100個の粒子の粒径を電子顕微鏡を用いて測定し、平均することで算出した。電子顕微鏡としては、日立製作所(株)製のFE−SEM S−4700等を用いた。
粗し材粒子の含有量は均一かつ適切な粗面を形成させるという観点から導電性粒子と結着樹脂の総和に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
また、領域Mの粗面化は、転写手段と合致する領域の干渉縞を抑制させるための導電層用塗布液を用いて第一の塗布、乾燥を行った後、領域Mを粗面化させるための導電層用塗布液を用いて第二の塗布、乾燥を領域Mに相当する範囲にのみ塗布することで達成することもできる。この場合、領域Mにおける第一の塗布時の膜厚を薄くし、第二の塗布後の総膜厚が、転写手段と合致する領域の膜厚と同等になるにように制御することが好ましい。
上述したように、導電層と電荷発生層との間には、バリア機能や接着機能を有する中間層を設ける。中間層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、円筒状基体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。
中間層を形成するための樹脂としては以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エチルセルロース樹脂、エチレン−アクリル酸コポリマー、エポキシ樹脂、カゼイン樹脂、シリコーン樹脂、ゼラチン樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂の如き樹脂。さらに、酸化チタンや酸化アルミニウムを含有させてもよい。
中間層は上記の樹脂と溶剤からなる中間層用塗布液を導電層上に塗布し、乾燥させることによって形成させることができる。中間層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。
中間層の体積抵抗率は軸方向の配置が転写手段と合致する領域、すなわち画像形成領域において、バリア性を維持し、帯電手段による電子写真感光体表面の帯電性を安定化させるという観点から2.0×1011Ω・cm以上1.0×1013Ω・cm以下であることが好ましく、前述の導電層の体積抵抗率と組み合わせることが好ましい。中間層の体積抵抗率は、導電層の場合と同様に、測定対象の中間層と同じ材料によってアルミニウム板上に被膜を形成し、この皮膜上に金の薄膜を蒸着により形成して、アルミニウム板と金薄膜の両電極間を流れる電流値をpAメーターで測定して求めた値である。このとき、印加電圧は100Vとし、測定開始1分後の値を採用し、体積抵抗率を算出した。
軸方向の配置が転写手段と合致する領域に相当する中間層の最小膜厚UT(C)は0.50μm以上2.50μm以下であることが好ましく、0.50μm以上2.00μm以下であることがより好ましい。UT(C)が0.50μmよりも小さいと点状現像が発生する可能性が高くなる。UT(C)が2.50μmよりも大きいと残留電位が上昇し、電子写真特性が悪化する可能性がある。一方、領域Mに相当する中間層の最小膜厚UT(E)は0.10μm以上0.35μm以下であることが好ましく、0.10μm以上0.30μm以下であることがより好ましい。UT(E)が0.10μmよりも小さいと点状の現像が面状となり、電子写真装置のサイクルタイムが短くなるに従い、トナーがこぼれ落ちる可能性が高くなる。UT(E)が0.35μmよりも大きいとクリーニングブレードのめくれの抑制に効果のある点状現像が発生しにくくなる。
積層型電子写真感光体の場合、中間層の上には電荷発生層が形成される。電荷発生層は電荷発生材料を0.3倍以上4倍以下の重量の結着樹脂および溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルまたは液衝突型高速分散機を使用して分散した分散液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
本発明に用いられる電荷発生材料としては、以下のものが挙げられる。セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドンおよび非対称キノシアニン系の各顔料。上記の各種電荷発生物質の中でも、高感度であるという点で、近年フタロシアニン顔料が広く使用されている。代表的なフタロシアニン顔料としては、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが挙げられる。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、セルロース樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、メラミン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルメタクリレート樹脂、ポリビニルアクリレート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂。特には、ブチラール樹脂などが好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択されるが、有機溶剤としてはアルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。
電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.01μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、電子搬送性剤を必要に応じて添加することもできる。
電荷発生層上には電荷輸送層が形成される。電荷輸送層には電荷輸送物質が含有され、電荷輸送物質としては、以下のものが挙げられる。トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリールメタン化合物。これら電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂。
特に、電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、下記式(1)
(式(1)中、X
1は、2価の有機基であることを示す。R
1およびR
2は、それぞれ独立に置換あるいは無置換のアルキル基または置換あるいは無置換のアリール基であることを示す。Zは、炭素数が1以上4以下である置換あるいは無置換のアルキレン基であることを示す。nは、構造単位の繰り返し数の平均値を示し、20以上80以下である。)
で示される構造単位および下記式(2)
(式(2)中、R
11乃至R
18は、それぞれ独立に水素、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基または置換あるいは無置換のアルコキシ基であることを示す。X
2は、2価の有機基であることを示す。Yは、単結合、置換あるいは無置換のアルキレン基、置換あるいは無置換のアリーレン基、酸素原子または硫黄原子であることを示す。)
で示される構造単位を有するポリエステル樹脂であることが好ましい。さらに、該ポリエステル樹脂の全質量に対するシロキサン部位の質量比が5以上30%以下であり、且つ電荷輸送層を構成する全結着樹脂に対し、該ポリエステル樹脂が30%以上含有されることが好ましい。該ポリエステル樹脂を電子写真感光体の最表面層に用いた場合、さらに上記のようなシロキサン部位の質量比にすることで、クリーニングブレードから受ける衝撃を緩和させることができ、優れたクリーニングブレードのめくれの抑制効果を発揮する。質量比が5%以上でめくれの抑制効果が得られるが、30%まで引き上げると電荷輸送物質との相溶性が向上するため、電子写真特性も良くなる傾向にある。特に、該ポリエステル樹脂を用いた電子写真感光体は、繰り返し使用してもクリーニングブレードのめくれの抑制効果を長期にわたり維持できることが見出された。従って、画像形成時に領域Mでの点状現像を利用した電子写真感装置において、該ポリエステル樹脂を用いた電子写真感光体を用いることで、より優れたクリーニングブレードのめくれの抑制効果を得ることが可能となる。
該ポリエステル樹脂について詳しく説明する。
上記式(1)中のX1は、2価の有機基であることを示す。2価の有機基としては、置換あるいは無置換のアルキレン基、置換あるいは無置換のシクロアルキレン基、置換あるいは無置換のアリーレン基、置換あるいは無置換のビフェニレン基、あるいは複数のフェニレン基がアルキレン基、酸素原子あるいは硫黄原子により結合した2価の有機基であることを示す。中でも、置換あるいは無置換のアルキレン基、置換あるいは無置換のアリーレン基、または複数のフェニレン基がアルキレン基、酸素原子あるいは硫黄原子により結合した2価の有機基であることが好ましい。
置換あるいは無置換のアルキレン基としては、主鎖を構成する炭素原子数が3以上10以下のアルキレン基であることが好ましい。置換あるいは無置換のアルキレン基としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基またはデシレン基が挙げられる。中でも、ブチレン基またはヘキシレン基であることが好ましい。
置換あるいは無置換のシクロアルキレン基としては、環を構成する炭素原子数が5以上10以下のシクロアルキレン基であることが好ましい。置換あるいは無置換のシクロアルキレン基としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基またはシクロデシレン基が挙げられる。中でも、シクロヘキシレン基であることが好ましい。
置換あるいは無置換のアリーレン基としては、オルト位で結合するフェニレン基、メタ位で結合するフェニレン基またはパラ位で結合するフェニレン基が挙げられる。中でも、メタ位で結合するフェニレン基またはパラ位で結合するフェニレン基であることが好ましい。
複数のフェニレン基がアルキレン基、酸素原子あるいは硫黄原子により結合した2価の有機基のフェニレン基としては、オルト位で結合するフェニレン基、メタ位で結合するフェニレン基またはパラ位で結合するフェニレン基が挙げられる。中でもパラ位で結合するフェニレン基であることが好ましい。複数のフェニレン基を結合させるアルキレン基としては、主鎖を構成する炭素原子数が1以上4以下の置換あるいは無置換のアルキレン基が挙げられる。中でも、メチレン基またはエチレン基であることが好ましい。
上記アルキレン基、シクロアルキレン基およびアリーレン基が有してもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはブトキシ基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基が挙げられる。中でも、メチル基であることが好ましい。
上記式の中でも(3−2)、(3−4)、(3−12)、(3−13)および(3−18)で示される構造であることが好ましい。
上記式(1)中のX1は、上記の2価の有機基の中から選択されるが、単一の構造である必要はなく、樹脂の溶解性の向上や機械的強度の向上の特性を付与するために複数の構造の2価の有機基を用いてもよい。
上記式(1)中のR1およびR2は、それぞれ独立に置換あるいは無置換のアルキル基または置換あるいは無置換のアリール基であることを示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基が挙げられる。アリール基としてはフェニル基が挙げられる。中でも、メチル基であることがクリーニングブレードからの衝撃を緩和させる点で好ましい。
上記式(1)中のZは、炭素数が1以上4以下である置換あるいは無置換のアルキレン基であることを示す。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基が挙げられる。中でも、プロピレン基であることが電荷輸送物質とシロキサン構造を有するポリエステルとの相溶性の向上の観点から好ましい。
上記式(1)中のnは、構造単位の繰り返し数の平均値を示し、20以上80以下である場合には、電荷輸送物質とシロキサン構造を有するポリエステル樹脂との相溶性が向上し、良好な電子写真特性を示す。さらには、nで示される構造単位の繰り返し数の平均値が、25以上70以下であることが好ましい。
次に、上記式(1)で示される構造単位の具体例を示す。
中でも(1−6)、(1−7)、(1−8)、(1−10)、(1−12)、(1−13)、(1−14)、(1−16)、(1−21)または(1−22)で示される構造単位であることが好ましい。
上記式(2)中のR11乃至R18は、それぞれ独立に水素、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基または置換あるいは無置換のアルコキシ基であることを示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基またはナフチル基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはブトキシ基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基またはフェニル基であることが好ましい。さらには、メチル基であることが電荷輸送物質とシロキサン構造を有するポリエステル樹脂との相溶性の向上の観点から好ましい。
上記式(2)中のX2も2価の有機基であり、具体的には前記した(3−1)乃至(3−19)と同様である。X2も上記式(3−2)、(3−4)、(3−12)、(3−13)および(3−18)で示される構造であることが好ましい。
上記式(2)中のYは、単結合、置換あるいは無置換のアルキレン基、置換あるいは無置換のアリーレン基、酸素原子または硫黄原子であることを示す。
上記式(2)中のYで示される置換あるいは無置換のアルキレン基としては、炭素数1以上4以下である置換あるいは無置換のアルキレン基が挙げられるが、機械的強度の観点から置換あるいは無置換のメチレン基であることが好ましい。置換あるいは無置換のメチレン基の好ましい構造は、下記式(4)
(式(4)中、R
51およびR
52は、それぞれ独立に水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、フルオロアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、またはR
51とR
52とが結合して形成される置換あるいは無置換のシクロアルキリデン基またはフルオレニリデン基を示す。)
で示される構造である。
R51およびR52で示される置換あるいは無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基が挙げられる。R51およびR52で示される置換あるいは無置換のアリール基としては、フェニル基またはナフチル基が挙げられる。R51およびR52で示されるフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基またはペンタフルオロエチル基が挙げられる。R51およびR52で示される置換あるいは無置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはブトキシ基が挙げられる。中でも、メチル基であることが好ましい。R51とR52とが結合して形成される置換あるいは無置換のシクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基またはシクロヘプチリデン基が挙げられる。中でも、シクロヘキシリデン基であることが好ましい。
以下に、上記式(4)で示される構造の具体例を示す。
中でも、上記式(4−1)、(4−2)、(4−3)または(4−8)で示される構造であることが好ましい。
上記式(2)中のYで示される置換あるいは無置換のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基あるいはナフチレン基が挙げられる。
以下に、上記式(2)で示される構造単位の具体例を示す。
中でも、(2−1)、(2−2)、(2−8)、(2−9)、(2−10)、(2−12)、(2−17)で示される構造単位であることが好ましい。
本発明の電子写真感光体の表面層に用いられる上記式(1)で示される構造単位および上記式(2)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂の全質量に対するシロキサン部位の質量比は、5%以上30%以下である。本発明におけるシロキサン部位とは、シロキサン部分を構成する両端のケイ素原子およびその置換基と、該ケイ素原子間にはさまれている酸素原子、ケイ素原子およびその置換基を含む部分である。
具体的に本発明におけるシロキサン部位を示すと下記式(1−6−S)
で示される構造単位の破線でかこまれた部位であることを示す。上記式(1)で示される構造単位および上記式(2)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂の全質量に対するシロキサン部位の質量比が5%以上である場合、クリーニングブレードから受ける衝撃を緩和させる効果が有効に発現する。また、シロキサン部位の質量比が30%以下である場合には、クリーニングブレードから受ける衝撃を緩和する効果が持続的に得られ、且つ電荷輸送物質との相溶性が良好であり、安定した電子写真特性が得られる。
また、本発明における上記式(1)で示される構造単位および上記式(2)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂の全質量に対するシロキサン部位の質量比は一般的な分析手法で解析可能であるが、分析手法の例を以下に示す。
電子写真感光体の表面層を溶解可能な溶剤で溶解させた後、サイズ排除クロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーのような各組成成分を分離回収可能な分取装置で、表面層中に含有される種々の材料を分取する。分取されたポリエステル樹脂をアルカリ存在下などで加水分解させ、カルボン酸部分とビスフェノール部分に分解する。得られたビスフェノール部分に対し、核磁気共鳴スペクトル分析や質量分析により、シロキサン部分の繰り返し数やモル比を算出し、質量比に換算する。
本発明の電子写真感光体の表面層に用いられるポリエステル樹脂は、上記式(1)で示される構造単位および上記式(2)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂であり、その重合形態は、ブロック重合またはランダム重合のいずれでもよい。さらには重合形態として、ランダム重合であることが好ましい。
上記式(1)で示される構造単位および上記式(2)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂は、重量平均分子量が80,000以上400,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が80,000以上であることは、十分に機械的強度が高く、電子写真感光体の耐久性向上の点で好ましい。重量平均分子量が400,000以下であることは、電子写真感光体作製上の生産性の観点から好ましい。さらには、重量平均分子量が90,000以上300,000以下であることが好ましい。本発明において、樹脂の重量平均分子量は、常法に従い、測定されたポリスチレン換算重量平均分子量である。
すなわち、測定対象樹脂をテトラヒドロフラン中に入れ、数時間放置した後、振盪しながら測定対象樹脂とテトラヒドロフランとよく混合し、さらに12時間以上静置した。その後、東ソー(株)製のサンプル処理フィルターマイショリディスクH−25−5を通過させたものをGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)用試料とした。
次に、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、GPC用試料を10μl注入して、測定対象樹脂の重量平均分子量を測定した。カラムには、東ソー(株)製のカラムTSKgel SuperHM−Mを用いた。
測定対象樹脂の重量平均分子量の測定にあたっては、測定対象樹脂が有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料には、アルドリッチ社製の単分散ポリスチレンの分子量が、3,500、12,000、40,000、75,000、98,000、120,000、240,000、500,000、800,000および1,800,000のものを10点用いた。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
上記式(1)で示される構造単位および上記式(2)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸エステルとジオール化合物とのエステル交換法によって合成することが可能である。また、ジカルボン酸ハライドなどの2価の酸ハロゲン化物とジオール化合物との重合反応によっても合成することも可能である。
以下に本発明の電子写真感光体の表面層に用いられる上記式(1)で示される構造単位および上記式(2)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂の合成例を示す。合成例中の(部)は(質量部)を、(%)は(質量%)を意味する。
(合成例1:上記式(1−6)、(1−12)、(2−12)および(2−24)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂P1の合成)
下記式(5−1)
で示されるジカルボン酸ハライド(24.6g)および下記式(5−2)
で示されるジカルボン酸ハライド(24.6g)をジクロロメタンに溶解させ、酸クロライド溶液を調製した。
また、酸クロライド溶液とは別に、下記式(6−1)
で示されるシロキサン構造を有するジオール(21.7g)および下記式(7−1)
で示されるジオール(43.9g)を10%水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。さらに、重合触媒としてトリブチルベンジルアンモニウムクロライドを添加して攪拌し、ジオール溶液を調製した。
次に、酸クロライド溶液をジオール溶液に攪拌しながら加え、重合を開始した。重合は、反応温度を25℃以下に保ち、攪拌しながら、3時間行った。
その後、酢酸の添加により重合反応を終了させ、水相が中性になるまで水での洗浄を繰り返した。洗浄後、攪拌下のメタノールに滴下して、重合物を沈殿させ、この重合物を真空乾燥させて、上記式(1−6)、(1−12)、(2−12)および(2−24)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂P1を(82g)得た。P1の組成は、式(1)で示される構造単位が(1−6)/(1−12)=5/5であり、式(2)で示される構造単位が(2−12)/(1−24)=5/5である。
得られたポリエステル樹脂P1の核磁気共鳴スペクトル分析や質量分析によりポリエステル樹脂の全質量中のシロキサン部位の質量%を算出すると、30質量%であった。また、ポリエステル樹脂P1の重量平均分子量は150,000であった。
(合成例2:上記式(1−6)、(1−12)、(2−12)および(2−24)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂P2の合成)
合成例1で用いたジカルボン酸ハライド(5−1)および(5−2)、ジオール(6−1)および(7−1)の合成時の使用量を調整し、式(1)および式(2)で示される構造単位の組成が合成例1と同様であり、シロキサン部位の質量比が異なるポリエステル樹脂P2を合成した。合成例1と同様に、得られたポリエステル樹脂P2の核磁気共鳴スペクトル分析や質量分析により、樹脂の全質量中のシロキサン部位の質量%を算出すると、5質量%であった。また、ポリエステル樹脂P2の重量平均分子量は100,000であった。
本発明の樹脂において共重合体である樹脂の共重合比は、一般的な手法である樹脂の1H−NMR測定による樹脂を構成している水素原子のピーク面積比による換算法を行うことで確認できる。
これらの樹脂は、単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、2:1乃至1:2(質量比)の範囲が好ましい。
電荷輸送層の膜厚は、軸方向の配置が転写手段と合致する領域では7.0μm以上30.0μm以下であることが好ましい。特に、領域Mに相当する領域では帯電後の暗減衰を制御するという観点から2.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。
電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、フッ素含有オイルの如き界面活性剤、フッ素樹脂粉体の如きフィラー、更にフッ素原子含有化合物の如き添加剤が含まれていてもよい。
本発明の電子写真感光体の表面層には電荷輸送層上に保護層を設けることもできる。保護層は導電性金属酸化物の如き導電性粒子を含有してもよい。この場合、上述の電位の暗減衰には、電荷輸送層および保護層の両膜厚が関与する。
また、感光層が単層型の場合は、上述のような電荷発生材料や電荷輸送材料を上述のような結着樹脂とともに分散あるいは溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。軸方向の配置が転写手段と合致する領域の膜厚は5.0μm以上40.0μm以下であることが好ましく、特には15.0μm以上30.0μm以下であることが好ましい。
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法の如き塗布方法を用いることができる。塗布後は、熱風乾燥炉等を用いて乾燥させることで各層の塗膜を形成させる。
(実施例1)
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は質量部である。
内径がφ29.00mm、肉厚が0.8mm、長さが260.5mmからなるアルミニウムシリンダーを円筒状基体とした。
次に、10質量%のアンチモンを含有させた酸化錫を被覆した酸化チタン導電性粒子(粉体抵抗150Ω・cm、酸化錫の被覆率45質量%)12部、フェノール樹脂4部、平均粒径6.5μmのシリコーン樹脂粒子(粗し材)1.92部、メチルエチルケトン22部を、直径1mmのガラスビ−ズを用いたサンドミル装置で3時間分散して、導電層用塗布液を調製した。
この導電層用塗布液を、円筒状基体上の転写部材と合致する領域の膜厚が26.0μm、領域Mにおける膜厚が9.0μmとなるように塗布速度を調節して浸漬塗布し、145℃で30分間熱硬化させて、導電層を形成した。表面粗さ測定計(商品名:サーフコーダSE3500型、(株)小坂研究所製)を用い、Rp(C)およびRp(E)を測定した結果、Rp(C)<Rp(E)を満たしていた。なお、測定は各対象領域の任意の20箇所に関して、送り速度0.1mm/秒、カットオフ0.8mm、測定長さ2.0mmの設定で行い、各領域における測定値の平均値をRpとした。結果を表1に示す。
また、上記導電層用塗布液を用いてアルミニウム板上に導電層の皮膜を形成し、この皮膜上に金の薄膜を蒸着により形成して、アルミニウム板と金薄膜の両電極間を流れる電流値をpAメーターで測定した。このとき、印加電圧は100Vとし、測定開始1分後の値を採用し、体積抵抗率を算出した結果、2.5×109Ω・cmであった。
次に、ポリアミド樹脂(商品名:アミランCM4000、東レ(株)製)1部、および、メトキシメチル化6ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学(株)製)1.9部を、メタノール55部の混合溶媒で溶解して、中間層用塗布液を調製した。
この中間層用塗布液を、表1に示すように、導電層上の転写部材と合致する領域の膜厚が2.25μm、領域Mにおける膜厚が0.35μmとなるように、すなわち中間層の最小膜厚であるUT(C)およびUT(E)が、UT(C)>UT(E)を満たすように塗布速度を調節して浸漬塗布し、105℃で10分間熱風乾燥させて、導電層上に中間層を形成した。
また、上記中間層用塗布液を用いてアルミニウム板上に中間層の皮膜を形成し、この皮膜上に金の薄膜を蒸着により形成して、アルミニウム板と金薄膜の両電極間を流れる電流値をpAメーターで測定した。このとき、印加電圧は100Vとし、測定開始1分後の値を採用し、体積抵抗率を算出した結果、7.1×1011Ω・cmであった。
次に、CuKαの特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.4°、16.6°、25.5°および28.2°に強いピークを有するクロロガリウムフタロシアニン6.5部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学工業(株)製)3部およびシクロヘキサノン50部からなる溶液を直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で8時間分散し、次に、酢酸エチル100部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を、中間層上に浸漬塗布し、90℃で10分間乾燥して、膜厚が0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送物質8部、
下記式で示される構造を有する電荷輸送物質4部、
および下記式で示される構造単位を有するポリエステル樹脂10部
を、モノクロロベンゼン80部/ジメトキシメタン20部の混合溶媒で溶解して、電荷輸送層用塗布液を調製した。
この電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上の転写部材と合致する領域および領域Mにおける膜厚がともに9.0μmとなるように塗布速度を調節して浸漬塗布し、120℃で60分間熱風乾燥させて、電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。
以上のようにして、電子写真感光体を作製した。
次に、上記の電子写真感光体をヒューレットパッカード社から販売されているレーザービームプリンター(LaserJet4350)のプロセスカートリッジに装着した。このとき、現像手段の現像剤担持体と電子写真感光体の隙間が、上記のプロセスカートリッジの初期設定の距離となるように調整した。このプロセスカートリッジを該レーザービームプリンター本体に設置し、高温高湿環境(温度35℃、相対湿度80%)に24時間放置した。なお、レーザービームプリンター本体およびプロセスカートリッジはDC帯電の仕様に変更し、且つサイクルタイムが0.30秒となるように駆動系および制御系を改造した。電子写真感光体、クリーニング手段、現像手段、帯電手段、転写手段の軸方向の配置は図1に従った。初期の帯電条件は、軸方向の配置が転写手段と合致する領域の電子写真感光体の表面電位が−500Vになるように帯電部材への印加電圧を調整した。該高温高湿環境において画像形成間隔を5秒あけて1cm間隔の2ドット幅の横線画像で12000枚の画出し耐久を行った。現像バイアスは−370Vに設定したが、紙への転写を行わない画像形成の間隔に相当するタイミングにおいては、現像バイアスを印加しなかった。
また、導電層のRpの部位におけるVa、Vbは、電子顕微鏡による断面観察から各層の膜厚を測定後、該膜厚に設定した積層型の電子写真感光体を別に作製し、上述の本体を用いて12000枚の画出し耐久後における表面電位をそれぞれ測定することで求めた。なお、電荷輸送層に関し、軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚は、それぞれ8.5μm、5.0μmであった。また、│Va│>│Vb│であり、│Vb│−│Vc│の値は55Vであった。結果を表2に示す。実際に、12000枚の時点で電子写真プロセスの途中で本体を停止させ、電子写真感光体表面の領域Mを観察した結果、点状現像したトナーの存在が確認できた。電子顕微鏡としては、日立製作所(株)製のFE−SEM S−4700を用いた。
画出し耐久の最後にハーフトーン画像をプリントし、画像欠陥の有無を判定した。4000枚目近辺で、クリーニングブレード部でのスリップ音が発生したが、クリーニングブレードのめくれには至らず、ハーフトーン画像上の欠陥も見られなかった。画像の判断基準は以下に示す。
A:画像欠陥無し。
B:画像欠陥無し。ただし、クリーニングブレード部でのスリップ音が不定期に発生。
C:軽微な薄いスジが発生しているが、実用上、問題とならないレベル。
D:画像内で部分的にスジが発生。
E:画像全面で明確なスジ、ムラが発生。
また、画出し耐久後のプロセスカートリッジを本体から取り出し、さらにプロセスカートリッジから電子写真感光体を取り外して、クリーニングブレードの状態を観察したが、クリーニングブレードのめくれによるエッジ欠けは発生していなかった。それらの結果を表3に示す。
(実施例2)
実施例1において、導電層用塗布液の導電性粒子を10質量%のアンチモンを含有させた酸化錫を被覆した酸化チタン(粉体抵抗70Ω・cm、酸化錫の被覆率50質量%)に代え、導電性粒子とフェノール樹脂の組成をそれぞれ14部、2部に代え、中間層用塗布液のポリアミド樹脂とメトキシメチル化6ナイロン樹脂の組成をそれぞれ2.9部、1部に代えた以外は実施例1と同様に測定および評価を行った。導電層および中間層の体積抵抗率は、それぞれ1.1×105Ω・cm、2.0×1011Ω・cmであった。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例3)
実施例1において、導電層用塗布液の導電性粒子を10質量%のアンチモンを含有させた酸化錫を被覆した酸化チタン(粉体抵抗300Ω・cm、酸化錫の被覆率35質量%)に代え、導電性粒子とフェノール樹脂の組成をそれぞれ12.5部、5部に代え、中間層用塗布液のポリアミド樹脂とメトキシメチル化6ナイロン樹脂の組成をそれぞれ0.8部、3.2部に代えた以外は実施例1と同様に測定および評価を行った。導電層および中間層の体積抵抗率は、それぞれ9.9×1010Ω・cm、1.0×1013Ω・cmであった。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例4)
実施例1において、導電層用塗布液の導電性粒子を酸素欠損型酸化錫を被覆した酸化チタン(粉体抵抗105Ω・cm、酸化錫の被覆率55質量%)に代え、導電性粒子とフェノール樹脂の組成をそれぞれ14部、4部に代え、円筒状基体上の転写部材と合致する領域の導電層の膜厚を21.0μmに代え、シリコーン樹脂粒子の平均粒径と含有量は表1のように代えた。導電層および中間層の体積抵抗率は、それぞれ8.2×10
8Ω・cm、7.1×10
11Ω・cmであった。また、電荷輸送層の結着樹脂を下記式で示される構造単位を有するポリエステル樹脂、
に代え、さらに図5のように転写部材と合致する領域および領域Mにおける膜厚をそれぞれ12.0μm、7.0μmに代えた。その結果、電荷輸送層に関し、軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はそれぞれ11.0μm、4.0μmであった。画像形成時の現像バイアスは−360Vに設定し、紙への転写を行わない画像形成の間隔に相当するタイミングにおいては、−375Vに設定した。本実施例では画像形成時に加え、転写を行わないタイミングにおいても点状現像が確認された。上記以外は実施例1と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例5)
実施例4において、導電層用塗布液のシリコーン樹脂粒子の平均粒径を表1のように代えた。その結果、電荷輸送層に関し、軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はそれぞれ11.0μm、5.0μmであった。上記以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例6)
実施例4において、導電層用塗布液のシリコーン樹脂粒子の平均粒径と含有量を表1のように代えた。その結果、電荷輸送層に関し、軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はそれぞれ10.5μm、2.5μmであった。上記以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例7乃至実施例11)
実施例4において、中間層の膜厚を表1のように代えた以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例12)
実施例4において、円筒状基体上の転写部材と合致する領域および領域Mの導電層の膜厚をそれぞれ13.0μm、5.0μmに代え、シリコーン樹脂粒子の平均粒径は表1のように代えた。その結果、電荷輸送層に関し、軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はそれぞれ11.0μm、3.0μmであった。上記以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例13)
実施例4において、円筒状基体上の転写部材と合致する領域および領域Mの導電層の膜厚をそれぞれ30.0μm、11.0μmに代え、シリコーン樹脂粒子の平均粒径は表1のように代えた。その結果、電荷輸送層に関し、軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はそれぞれ11.0μm、3.5μmであった。上記以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例14)
実施例4において、円筒状基体上の転写部材と合致する領域および領域Mの導電層の膜厚をそれぞれ40.0μm、15.0μmに代え、シリコーン樹脂粒子の平均粒径と含有量は表1のように代えた。その結果、電荷輸送層に関し、軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はそれぞれ12.0μm、3.0μmであった。上記以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例15および実施例16)
実施例4において、電荷輸送層の結着樹脂をポリエステル樹脂P1およびP2にそれぞれ代えた以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例17)
実施例7において、電荷輸送層の結着樹脂をポリエステル樹脂P1に代えた以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例18および実施例19)
実施例4において、電子写真プロセスのサイクルタイムを0.25秒、0.22秒にそれぞれ代えた以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例20)
実施例4において、電子写真感光体、クリーニング手段、現像手段、帯電手段、転写手段の軸方向の配置を図3のように代えた以外は実施例4と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例21)
実施例5において、円筒状基体上の領域Mの導電層の膜厚を17.0μmに代えた。得られた導電層の領域Mに相当する領域には第二の導電層用塗布液を用いてスプレー塗布を行い、145℃で30分間熱硬化させて膜厚が4.0μmの第二の導電層を設けた。その結果、電荷輸送層に関し、領域MにおけるRp部の膜厚は4.5μmであった。
第二の導電層用塗布液は、酸化欠損型酸化錫を被覆した酸化チタン導電性粒子(粉体抵抗105Ω・cm、酸化錫の被覆率55質量%)14部、フェノール樹脂4部、平均粒径1.5μmのシリコーン樹脂粒子1.08部、メチルエチルケトン72部を、直径1mmのガラスビ−ズを用いたサンドミル装置で2.5時間分散し、調製した。
上記以外は実施例5と同様に電子写真感光体の作製、測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(実施例22)
実施例6において、円筒状基体上の領域Mの導電層の膜厚を17.0μmに代えた。得られた導電層の領域Mに相当する領域には第二の導電層用塗布液を用いてスプレー塗布を行い、145℃で30分間熱硬化させて膜厚が4.0μmの第二の導電層を設けた。その結果、電荷輸送層に関し、領域MにおけるRp部の膜厚は3.0μmであった。
第二の導電層用塗布液は、酸化欠損型酸化錫を被覆した酸化チタン導電性粒子(粉体抵抗105Ω・cm、酸化錫の被覆率55質量%)14部、フェノール樹脂4部、平均粒径2.0μmのシリコーン樹脂粒子1.44部、メチルエチルケトン70部を、直径1mmのガラスビ−ズを用いたサンドミル装置で2.5時間分散し、調製した。
上記以外は実施例5と同様に電子写真感光体の作製、測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(比較例1)
実施例1において、円筒状基体上の転写部材と合致する領域および領域Mの導電層の膜厚をともに35.0μmに代え、シリコーン樹脂粒子の含有量は表1のように代えた。その結果、電荷輸送層に関し、軸方向の配置が転写手段と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はともに8.5μmであった。画像形成時の現像バイアスを表2のように代えた。上記以外は実施例1と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(比較例2)
実施例1において、円筒状基体上の転写部材と合致する領域および領域Mの導電層の膜厚を28.0μm、35.0μmにそれぞれ代え、シリコーン樹脂粒子の含有量は表1のように代えた。その結果、電荷輸送層に関し、転写部材と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はそれぞれ8.0μm、8.5μmであった。画像形成時の現像バイアスを表2のように代えた。上記以外は実施例1と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(比較例3乃至比較例5)
実施例1において、中間層の膜厚を表1のように代え、シリコーン樹脂粒子の含有量は表1のように代えた。その結果、電荷輸送層に関し、転写部材と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はともに8.5μmであった。画像形成時の現像バイアスを表2のようにそれぞれ代えた。上記以外は実施例1と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(比較例6)
実施例1において、導電層に粗し粒子を使用せず、円筒状基体上の転写部材と合致する領域および領域Mの導電層の膜厚をともに35.0μmに代えた。その結果、電荷輸送層に関し、転写部材と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はともに9.0μmであった。上記以外は実施例1と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
(比較例7および比較例8)
実施例1において、円筒状基体上の転写部材と合致する領域および領域Mの導電層の膜厚をともに35.0μmに代え、シリコーン樹脂粒子の含有量は表1のように代えた。その結果、電荷輸送層に関し、転写部材と合致する領域および領域MにおけるRp部の膜厚はともに8.5μmであった。画像形成時の現像バイアスを表2のように代えた。さらに、本体のサイクルタイムを0.25秒、0.22秒にそれぞれ代えた以外は実施例1と同様に測定および評価を行った。条件および結果を表1乃至表3に示す。
以上より、上記の実施例1〜22においては、高速化された電子写真装置を高温高湿の環境下で使用しても、12000枚の時点で電子写真感光体の表面の領域Mに点状現像されたトナーが存在しており、実用上問題となるクリーニングブレードのめくれやエッジ欠け等に起因したクリーニング不良は発生しなかった。なかでも本発明の領域Mにおける点状現像と特定構造のポリエステル樹脂を併用した実施例17は、耐久を通じて変音が発生することなく、耐久時の横線画像および耐久後のハーフトーン画像が最も鮮明であった。
一方、比較例1、2、7および8では電子写真感光体の表面の領域Mに点状現像されたトナーが存在しておらず、比較例3では微小な点状トナーが存在し、比較例4および比較例5では帯状のトナーの存在が確認された。比較例1、2、7および8では耐久時にクリーニングブレードのめくれによる問題が発生した。特に、比較例8ではクリーニングブレードの端部が欠けていた。比較例3ではクリーニングブレードのめくれは発生しなかったが、約8000枚でブレード音が発生し始め、画像の端部で縦スジの画像欠陥が不定期に発生した。比較例4、5でもクリーニングブレードのめくれは発生しなかったが、耐久時の横線画像上に点状の画像欠陥が確認された。特に、比較例4および比較例5では本体内でトナーの飛散が確認された。なお、比較例6では干渉縞が初期から発生したため、耐久評価を中止した。