JP2011140621A - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスバリア性に優れ、かつ成形加工時にゲル生成が少ないポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンとジカルボン酸とを重縮合して得られたポリアミドと、アルカリ化合物(A)を含み、かつ次式(イ)を満足するポリアミド樹脂組成物。a≦1.5b・・・(イ)(ここで、aはポリマー中のアミノ末端基濃度(μeq/g)を表し、bはポリアミド樹脂組成物中のアルカリ土類金属濃度の2倍とアルカリ金属濃度の和(μmol/g)を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明はメタキシリレン基を含有するポリアミドに関する。詳しくは、成形加工時においてもゲルの発生が少ないポリアミドに関する。
ポリマー主鎖にメタキシリレン基を含有するポリアミドは剛性が高く、成形材料として広く利用されている他、酸素や炭酸ガス等を遮断する性能にも優れており、ボトル、シート、フィルム等の様々な包装材料のガスバリア材としても利用されている。特に、ボトル、シート、フィルム及び繊維等の用途に用いられるポリアミドでは、成形材料用途に用いられるポリアミド以上に異物の混入に対して注意が払われる。これは成形加工品が透明であったり、薄かったりする事、高度で微妙な成形加工技術を必要とする事、異物が成形加工品の機能を損なう恐れが非常に高い事等に起因し、異物の混入により外観不良、異物発生部位に起因した破断等の欠陥発生率の増加と生産性の低下を招く。ポリアミド由来の異物としては、ファインと呼ばれる粉体、フロスと呼ばれる薄膜、熱劣化を受けた黄変物・炭化物、そして、ゲル又はフィッシュアイと呼ばれるゲル状物、等が上げられる。これら異物は生成を防ぐことが一番の対策であるが、やむを得ず生成した場合、ペレット製品から分離除去する必要がある。粉体および薄膜は一般には風選で除かれ、黄変物・炭化物は光学センサーを用いた選別機で除くことができ、様々な分離機器が市販されており、確実な除去効果が期待できる。
ゲル又はフィッシュアイは、重合中および成形加工中に分子が損傷(ラジカルの発生などによるポリマー分子の劣化など)を受け、非直鎖の分子成長等の異常反応(三次元ポリマー化など)が起こり、他のポリアミド分子に比べ極端に高分子量化したものと想定される。このため、ゲル又はフィッシュアイの少ないポリアミドを得るため、製造工程において熱履歴を極力少なくする必要があり、また熱安定剤あるいは酸化防止剤を添加する等の工夫がなされる。しかし、これら添加剤の中にはアミド化反応に対し触媒効果を示すものがあり、逆に過剰に重合反応が進行しゲル又はフィッシュアイの増加を招く場合もある。その為、一般的にはさらに反応抑制効果を持つアルカリ化合物を特定量添加することで、反応の促進と抑制のバランスを保ちつつ重合が行われる。
溶融重合工程で生成したゲル又はフィッシュアイは、フィルター等で除去することが可能であるが、フィルターの目開きサイズより大きなゲルは流圧によって分散化し通過してしまう事も多々あり、また高粘度品の製造時に実施する固相重合の際に生成したゲル又はフィッシュアイにおいても、完全に除去することは不可能に等しい。
更にゲル又はフィッシュアイはポリアミドの製造中に生成する以外に、成形加工する際の溶融時においても生成する。ポリアミド製造後の品質評価において、ゲル又はフィッシュアイの生成量に顕著な差が認められないポリアミドを使用しても、成形加工した際に差が現れる場合があり、この原因には、製造後には観測されない様な僅かなポリアミド分子の損傷の差、あるいは異常反応の発生頻度の差が成形加工の際に、スクリュー溝、フィルターあるいはダイ等の滞留部分で一部のポリマーに過剰な熱履歴がかかり増幅されるためと推定される。そのことから、最終的にゲル又はフィッシュアイの少ない成形加工品を得るためには、更にゲルの少ない高品位なポリアミドの製造、滞留部分の極めて少ない成形加工装置の設計が重要である。しかし更にゲルの少ないポリアミドを製造するには、溶融重合時並びに固相重合時においても、製造時の熱履歴の抑制、効果的な安定剤の添加、生成したゲル又はフィシュアイの除去が必要であるが、如何なる対応においても、その効果には限界がある。また成形加工装置の設計は、滞留部位の完全に撤廃することは装置の構成上難しく、またポリアミドを成形する各々の装置に設計を対応させる必要があり、汎用性やコスト面で実現性に欠ける。特に本発明のキシリレンジアミンを主体とするジアミン成分から成るポリアミドでは、キシリレンジアミンのベンジルメチレン部位がラジカル生成しやすく、熱安定性が低い為、ゲルの発生はなお問題となっている。
特許文献1においては、該ポリアミドを成形加工する際に、滑剤、有機リン系安定剤、ヒンダードフェノール類化合物、ヒンダードアミン類化合物から選ばれた少なくとも1種類以上を0.0005〜0.5重量部添加することによりゲル又はフィッシュアイの生成を抑制する方法が提案されている。しかし記載される実施結果に要した添加剤のフィッシュアイ低減の優位性は、実用面から見ると乏しく、また夫々の添加剤を加える具体的なゲル生成抑制の根拠については殆ど言及されておらず、効果自体が不明瞭である。
特許文献2では、ポリアミドの滑性を向上させて成形加工時に剪断熱の発生を回避させる為、脂肪酸金属塩および多価アルコール化合物を0.001〜0.015重量部添加することにより、成形加工時のフィッシュアイ生成を抑制する方法が提案されている。ただし、ポリアミドの化学的性質に着目し、ポリアミドの変質そのものを抑制することについては一切記載が無い。
特開2001−164109号公報 特許第3808847号公報
本発明の目的は、ポリアミドを成形加工する際のゲル又はフィッシュアイ生成を抑制し、射出成形材料、フィルム・シート等の包装材料、および繊維用材料として工業的に有用なポリアミドを提供することにある。
本発明はガスバリア性に優れ、かつ成形加工時にゲル生成が少ないポリアミド樹脂組成物を提供する。
アルカリ化合物は、前記のように、重合時に添加されるリン系化合物の中和剤として使用されている。しかしながら、リン系化合物とのバランスの観点から、ポリアミドの重合時における使用量は制限されている。この点につき、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ポリアミドの重合後、成形加工時にアルカリ化合物を添加して高濃度化することで、成形加工時におけるゲルの生成を抑制することができ、ポリアミドの溶融滞留状態が長期間続いても、生成するゲル量が少なく、かつ得られた成形品はゲルや着色の少ない外観の良好なものとなることを見出した。本発明は、このような知見に基づきなされるに至ったものである。
すなわち本発明は、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンとジカルボン酸とを重縮合して得られたポリアミドと、アルカリ化合物(A)を含み、かつ次式(イ)を満足するポリアミド樹脂組成物に関する。
a≦1.5b ・・・(イ)
(ここで、aはポリマー中のアミノ末端基濃度(μmol/g)を表し、bはポリアミド樹脂組成物中のアルカリ土類金属濃度の2倍とアルカリ金属濃度の和(μmol/g)を表す。)
本発明のポリアミド樹脂組成物は、色調が良好で、かつ成形加工時にもゲル又はフィッシュアイ生成が少なく、成形材料、各種包装材料および繊維材料に利用できる非常に有用なものであり、その工業的価値は非常に高い。
ポリマーのアミノ末端基濃度とゲル化分率の関係を示した図である。
本発明のポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミドは、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンと、ジカルボン酸とを重縮合して得られたポリアミド(以下、「ポリアミド(X)」と称す)である。
ポリアミド(X)を構成するジアミンは、メタキシリレンジアミンが70モル%以上含まれることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。ジアミン中のメタキシリレンジアミンが70モル%以上であると、それから得られるポリアミドは優れたガスバリア性を発現することができる。メタキシリレンジアミン以外に使用できるジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
ポリアミド(X)を構成するジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。該ジカルボン酸は、アジピン酸が70モル%以上含まれることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。アジピン酸が70モル%以上であると、ガスバリア性の低下や結晶性の過度の低下を避けることができる。アジピン酸以外に使用できるジカルボン酸としては、炭素数4〜20のα,ω−直鎖状脂肪族ジカルボン酸のうち1種以上が好ましく使用される。
前記のジアミン、ジカルボン酸以外にも、ポリアミド(X)を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸、等の脂肪族アミノカルボン酸類;パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸も共重合成分として使用できる。
ポリアミド(X)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。ポリアミド(X)の重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸からなるナイロン塩を水の存在下に、加圧状態で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、メタキシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、メタキシリレンジアミンをアジピン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミドおよびポリアミド(X)の融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
また、ポリアミド(X)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行うことによって重縮合を行っても良い。ポリアミド(X)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
ポリアミド(X)は、数平均分子量が10000〜50000の範囲内のものが好ましく用いられる。なお、数平均分子量については、本発明のポリアミド樹脂組成物の用途や成形方法により適宜選択される。例えば、フィルム等、製造時にある程度の流動性が求められる場合には数平均分子量が20000〜30000程度のものが、シート等、製造時に溶融強度が必要とされる場合には30000〜45000程度のものが選択されるが、これに限定されるものではない。
ポリアミド(X)の数平均分子量については、下式(1)から算出される。
数平均分子量=2×1000000/([COOH]+[NH])・・・・・(1)
(式中、[COOH]はポリアミド中の末端カルボキシル基濃度(μmol/g)を表し、[NH]はポリアミド(X)中の末端アミノ基濃度(μmol/g)を表す。)
本発明では、末端アミノ基濃度は、ポリアミドをフェノール/エタノール混合溶液に溶解したものを希塩酸水溶液で中和滴定して算出した値を用い、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミドをベンジルアルコールに溶解したものを水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して算出した値を用いる。
ポリアミドの重合度の指標としてはいくつかあるが、相対粘度は一般的に使われるものである。ポリアミド(X)において好ましい相対粘度は1.5〜4.2であり、より好ましくは1.7〜4.0、さらに好ましくは2.0〜3.8である。ポリアミド(X)の相対粘度が1.5未満の場合には、溶融したポリアミド(X)の流動性が不安定になりやすく成形品の外観が悪化することがある。またポリアミド(X)の相対粘度が4.2を超えると、ポリアミド(X)の溶融粘度が高すぎて成形加工が不安定になることがある。
尚、ここで言う相対粘度は、ポリアミド(X)1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t0 ・・・(ロ)
ポリアミド(X)の製造時には、溶融成形時の加工安定性を高める観点及びポリアミド(X)の着色を防止する観点からリン原子含有化合物(B)が使用される。そのため、本発明のポリアミド樹脂組成物中には、リン成分が含まれている。
リン原子含有化合物(B)の好ましい具体例としては、次亜リン酸化合物(ホスフィン酸化合物又は亜ホスホン酸化合物ともいう)や亜リン酸化合物(ホスホン酸化合物ともいう)等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。リン原子含有化合物(B)は金属塩であってもよく、アルカリ金属塩であってもよい。
リン原子含有化合物(C)としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられる。
リン原子含有化合物(C)の添加量は、ポリアミド(X)中のリン原子濃度換算で1〜400ppmであることが好ましく、より好ましくは2〜350ppmであり、さらに好ましくは3〜300ppmである。1ppmを下回る場合、重合中にポリアミド(X)が着色やゲルが発生する傾向にあり好ましくない。また400ppmを超える場合、ポリアミド(X)のゲル化反応が促進したり、リン原子含有化合物(C)の熱劣化物に起因すると考えられるフィルターの目詰まりや、フィッシュアイが成形品中に混入する場合があり、成形品の外観が悪化する傾向があるため好ましくない。
また、ポリアミド(X)の重縮合系内には、リン原子含有化合物(C)と併用してアルカリ金属化合物(D)を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミド(X)の着色を防止するためにはリン原子含有化合物(C)を十分な量存在させる必要があるが、場合によってはポリアミド(X)のゲル化を招く恐れがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物(D)を共存させることが好ましい。アルカリ金属化合物(D)としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物(D)としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。
重縮合系内にてアルカリ金属化合物(D)を添加する場合、該化合物のモル数をリン原子含有化合物(C)のモル数で除した値が0.5〜1となるようにすることが好ましく、より好ましくは0.55〜0.95であり、さらに好ましくは0.6〜0.9である。この値が0.5を下回る場合、リン原子含有化合物(C)のアミド化反応促進効果を抑制する効果が不足することがあり、場合によってはポリアミド(X)中のゲルが多くなることがある。また1を超えるとリン原子含有化合物(C)のアミド化反応促進効果を抑制しすぎて、重縮合の進行が遅くなり、場合によってはポリアミド(X)製造時の熱履歴が増加してポリアミドのゲルが多くなることがあるので好ましくない。
ポリアミド(X)をそのまま成形加工して得られる成形品は、成形開始後は性状および外観の優れたものであるが、長時間の成形加工作業とともにゲル又はフィッシュアイが増加し、製品の品質が不安定となる場合や、フィルム等は破断により装置を停止せざるを得なくなり、生産効率が悪化する。これは溶融混練部からダイス間において、ポリアミドが局所的に滞留し続けることにより、過剰加熱されてゲル化し、かつ生成したゲルが流れ出すために起こると推測される。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形加工時に生じるポリアミドのゲル化を防止するべく、ポリアミド(X)にアルカリ化合物(A)を混合したものである。本発明ではポリアミド(X)の末端基濃度とゲル化との関連性を調査した結果、ポリアミド(X)のアミノ基濃度が低いほど、よりゲル生成が抑制され、また高金属濃度であれば、高アミノ基濃度でもゲル抑制効果が得られることを見出した。アミノ基と金属との相互作用は不明だが、アミノ基濃度が低下すると、ゲル生成の原因として考えられているアミノ基同士の結合によるポリマーの三次元化が抑制され、ゲル生成を抑制すると推測される。ここでaをポリマー中のアミノ末端基濃度(μmol/g)、bをポリアミド樹脂組成物中のアルカリ土類金属濃度の2倍とアルカリ金属濃度の和(μmol/g)と表した時、これらの濃度バランスは次式を満たすことが必要となる。
a≦1.5b ・・・(イ)
アミノ基濃度aに対し金属濃度の和bが式(イ)を満たさないとき、ゲルを抑制するための充分な濃度が得られ難い。また、アミノ基濃度は85μmol/g以下であることが望ましい。85μmol/gより大きい場合、分子量が低く製品として良好な物性を保つことが出来ない。
特に本発明ではアルカリ化合物(A)として、水酸化アルカリ金属、水素化アルカリ金属、アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、カルボン酸無水塩、カルボン酸含水塩が好ましく用いられる。水酸化アルカリ金属は、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。水素化アルカリ金属は、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。アルコキシドは、例えばナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、リチウム−t−ブトキシド、マグネシウム−t−ブトキシド、カルシウム−t−ブトキシド等が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩としては、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、さらにこれらの無水塩、含水塩が使用できる。カルボン酸無水塩やカルボン酸含水塩としては、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコ酸、ベヘン酸、モンタン酸、トリアコンタン酸などの直鎖飽和脂肪酸;12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸誘導体;シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、メバロン酸等のヒドロキシ酸;安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ピロメット酸、トリメリット酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸等が挙げられ、さらにカルボン酸と塩を形成する金属としてはナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。本発明に用いられるアルカリ化合物(A)は、上記のうち1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。特にこの中でも水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムにおいて、安価かつゲル抑制効果が高いため好ましい。
アルカリ化合物(A)は、ポリアミド(X)を製造する際に添加可能なアルカリ金属化合物(D)と同じ化合物も例示されるが、アルカリ金属化合物(D)を溶融重合時に過剰に添加すると、リン原子含有化合物(C)のアミド化反応促進効果を抑制しすぎて、重縮合の進行が遅くなり、場合によってはポリアミド(X)製造時の熱履歴が増加してポリアミド(X)のゲルが多くなることがある。その為、ポリアミド(X)をモノマーから溶融重合する際に添加するアルカリ金属化合物(D)を増量させることでは、成形加工の際に効果的にゲル生成を防止する役割を果たすことができず、溶融重合時後にアルカリ化合物(A)を添加することが最も好ましい。
また本発明では、溶融重合後に末端アミノ基濃度を減少させる目的で、ポリアミドに多価カルボン酸(B)を加えても良い。多価カルボン酸(B)は、1分子中に2ないし3個のカルボキシル基を有する芳香族または脂環族化合物、あるいはそのカルボキシル基の内の2個が酸無水物基を形成している(0ないし1個のカルボキシル基と1個の酸無水物基を有する)ものである。即ち、多価カルボン酸(B)は、芳香族3価カルボン酸、脂環族3価カルボン酸、芳香族2価カルボン酸、脂環族2価カルボン酸および前記酸無水物から選ばれる少なくとも1種の多価カルボン酸化合物からなる。なお、前記酸無水物は分子内酸無水物である。
多価カルボン酸(B)としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、アントラセンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ビフェニルジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ベンゾフェノンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、シクロヘキサンジカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ヘミメリット酸およびその無水物、トリメシン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸およびその無水物、1,2,3−シクロヘキサントリカルボン酸およびその無水物、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、アントラセントリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ビフェニルトリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物、ベンゾフェノントリカルボン酸(位置異性体を含む)およびその無水物等が挙げられる。
中でも、フタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸および無水トリメリット酸が好ましく、無水フタル酸、トリメリット酸および無水トリメリット酸がより好ましく、無水フタル酸および無水トリメリット酸が更に好ましく、無水フタル酸が特に好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、ポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)を押出機により溶融混練する工程を含む製造方法であることが好ましい。リン原子含有化合物(C)とアルカリ金属化合物(D)の含有量比によりアミド化速度が大きく変化するような溶融重合時以外、即ち溶融重合時以降においてアルカリ化合物(A)および/あるいは多価カルボン酸(B)を溶融混練して得ることが好ましい。例えば、成形加工時に直接ポリアミド(X)にアルカリ化合物(A)を添加するか、またはさらに多価カルボン酸(B)を添加して成形加工に供しても良い。あるいは、予めポリアミド(X)を1〜10重量部のアルカリ化合物(A)と共に押出機等を用いて溶融混練してペレットとし、アルカリ化合物(A)含有ペレットおよび多価カルボン酸(B)をポリアミド(X)とブレンドして成形加工に供しても良い。あるいは、上記のアルカリ化合物(A)含有ペレットをポリアミド(X)とブレンドして固相重合を実施した後、そのまま成形加工に供するか、またはさらに多価カルボン酸(C)とブレンドして成形加工に供しても良いが、これらの方法のみに限られるものではない。
溶融混練するための装置としては、バッチ式混練機、ニーダー、コニーダー、プラネタリ押出機、単軸もしくは二軸押出機等、公知の種々の押出機が挙げられるが、これらのなかでも混練能力や、生産性に優れる点から単軸押出機や二軸押出機が好ましく用いられる。
押出機に、ポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)、あるいはアルカリ化合物(A)および多価カルボン酸(B)を供給するには、ベルトフィーダー、スクリューフィーダー、振動フィーダー等を用いることができるが、これらの方法に限られるものではない。また、アルカリ化合物(A)および多価カルボン酸(B)は、樹脂組成物中に均一に分散できるのであればその形状に制限はなく、そのまま添加してもよく、加熱し融解させてから添加してもよく、溶剤に溶解してから添加してもよい。粉体をそのまま添加する場合、その粒径は、好ましくは0.01mm〜5.0mm、より好ましくは0.02〜3.0mmである。アルカリ化合物(A)を溶剤に溶解してから添加する場合、押出機に液添加用のフィーダー等の装置を用いて添加することや、タンブラー等で予めブレンドすることもできる。溶剤としては、水や任意の有機溶剤を使用することができる。
本発明では、ドライブレンドを行う際にはポリアミドとアルカリ化合物(A)あるいは多価カルボン酸(B)の分離を防止するために粘性のある液体を展着剤としてポリアミド(X)に付着させた後、アルカリ化合物(A)あるいはアルカリ化合物(A)および多価カルボン酸(B)を添加、混合する方法を採ることもできる。展着剤としては、界面活性剤等が挙げられるが、これに限定されることなく公知のものを使用することができる。
本発明ではポリアミド樹脂組成物のゲル生成の抑制効果を、成形時にポリアミドの曝される状態を想定して、高圧化、溶融状態にて一定時間かつ一定温度で加熱したポリアミドのゲル化割合を比較することで評価した。ゲル化割合は、加圧かつ加熱した樹脂をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中に24時間浸漬すると、ゲル化していない樹脂は該時間以内に完全に溶解するのに対し、ゲル化した樹脂は該時間浸漬後でも膨潤状態に留まって不溶成分として残るので、該不溶成分からゲル化分率を算出し評価を行った。本発明においてゲル化分率とは、上記不溶成分をメンブレンフィルターにて減圧濾過した結果得られる残渣重量に対し、HFIP浸漬前に予め秤量した樹脂重量を分母として除し、百分率で求めた値を言う。ゲル化分率が、成形加工時に添加剤を添加しないポリアミドを用いて求めた値を下回ると、成形加工時においてゲル又はフィッシュアイ生成量を減少させることができる。本発明においてゲル化分率は15%以下であることが好ましく、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは10%以下である。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン66,6、ポリエステル、ポリオレフィン、フェノキシ樹脂等の他樹脂を一種もしくは複数ブレンドできる。また、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、有機化クレイなどの板状無機充填剤、各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材、結晶核剤; 脂肪酸アミド系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤;銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;着色防止剤、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤などの添加剤、酸素捕捉能を付与する化合物であるコバルト金属、ベンゾキノン類、アントラキノン類、ナフトキノン類を含む化合物等の添加剤を添加することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガスバリア性や透明性に優れ、かつ安定した溶融特性を有する。本発明のポリアミド樹脂組成物は、該樹脂組成物を少なくとも一部に利用して成形品とすることで、シート、フィルム、射出成形ボトル、ブローボトル、射出成形カップ等、種々の包装材料あるいは包装容器とすることができる。これらの包装材料あるいは包装容器の製造方法について特に制限は無く、公知の技術を使用することができる。例えばTダイを備えた押出法や、インフレーションフィルム製法等を用いてフィルムやシートに加工でき、さらに得られた原反フィルムは延伸加工により、延伸フィルム、熱収縮フィルムを得ることができる。また、射出成形法により射出成形カップ、ブロー成形法によりブローボトルとすることができ、また射出成形によりプリフォームを製造した後、ブロー成形によりボトルとすることができる。また、押出ラミネートや、共押出などの方法を用いて他の樹脂、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6、PETや金属箔、紙等との多層構造のフィルム、シートに加工することができる。加工したフィルムやシートはさらにラップ、あるいは各種形状のパウチ、容器の蓋材、ボトル、カップ、トレイ、チューブ等の包装容器に利用できる。本発明のポリアミド樹脂組成物を利用して得られた包装容器は、ガスバリア性に優れ、かつ透明性に優れたものであり、例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし、マヨネーズ、味噌、すり下ろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品やそば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品類等に代表される高水分食品; 粉末スープ、だしの素等の粉末調味料、乾燥野菜、コーヒー豆、コーヒー粉、お茶、穀物を原料としたお菓子等に代表される低水分食品; その他農薬や殺虫剤等の固体状や溶液状の化学薬品、液体及びペースト状の医薬品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー、石鹸、洗剤等、種々の物品を収納することができる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガソリンバリア材料として自動車、バイクなどのガソリンタンク、ホース用材料とすることもできる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、モノフィラメント等の繊維材料とすることもできる。
以下実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお本発明における評価のための測定は以下の方法に依った。
(1)末端アミノ基濃度
ポリアミド0.3〜0.5gを精秤し、フェノール/エタノール=4/1容量溶液30mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、攪拌しつつN/100塩酸水溶液で中和滴定して求めた。
(2)ポリアミドの相対粘度
ポリアミド1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。tおよびt0から次式(ロ)により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0 ・・・(ロ)
(3)金属濃度(Na、Ca)定量分析
ポリアミド樹脂組成物を白金製るつぼにて灰化し、過塩素酸を加えて蒸発乾固させた後、1.0モル濃度塩酸を加えるか、あるいはポリアミド樹脂組成物を硝酸中、マイクロウェーブにて分解処理した後、原子吸光分析装置(商品名:AA−6650、(株)島津製作所製)及びICP発光分析装置(商品名:ICPE−9000、(株)島津製作所製)を用いて定量した。なお、測定値は重量分率(ppm)として得られるため、原子量及び価数を用いて算出した。
<実施例1>
(ポリアミドの溶融重合)
攪拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したアジピン酸15000g(102.6mol)、次亜リン酸ナトリウム432.6mg(4.082mol、ポリアミド中のリン原子濃度として5ppm)、酢酸ナトリウム206.4mg(2.516mmol、リン原子に対するモル数比として0.7)を入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を攪拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン13854g(101.7mol)を攪拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミドを得た。
(ポリアミドの固相重合)
次いで、窒素ガス導入管、真空ライン、真空ポンプ、内温測定用の熱電対を設けたジャケット付きのタンブルドライヤーに前記ポリアミドを仕込み、一定速度で回転させつつ、タンブルドライヤー内部を純度が99容量%以上の窒素ガスで十分に置換した後、同窒素ガス気流下でタンブルドライヤーを加熱し、約150分かけてペレット温度を150℃に昇温した。ペレット温度が150℃に達した時点で系内の圧力を1torr以下に減圧した。さらに昇温を続け、約70分かけてペレット温度を200℃まで昇温した後、200℃で30〜45分保持した。次いで、系内に純度が99容量%以上の窒素ガスを導入して、タンブルドライヤーを回転させたまま冷却して末端アミノ基濃度が10.6μeq/g、相対粘度が2.71のポリアミド(X1)を得た。
(ポリアミド樹脂組成物の調製)
ポリアミド1を2kgに対して、2mlの蒸留水に溶解した2000mgの酢酸ナトリウムを加え、撹拌混合してポリアミド樹脂組成物1を得た。
(フィルムの製造)
次いで、25mmφ単軸押出機、600メッシュのフィルターを設けたヘッド、Tダイからなるフィルム押出機、冷却ロール、巻き取り機等を備えた引き取り装置を使用して、押出機からポリアミド樹脂組成物1を3kg/hの吐出速度に保持しつつフィルム状に押し出し、引き取り速度を調節して幅15cm、厚み250ミクロンのフィルムとし、巻き取り機にて巻き取った。また押出機ヘッドの樹脂圧力を観察し、その変化の有無を確認した。
(滞留サンプルの作成)
次いで、上記フィルムを直径30mmの同心円状に切り取り、これを四枚作成した。該円状フィルムを重ね、孔径30mmにくり抜いた孔を持つ1mm厚の100×100mmポリテトラフルオロエチレンシートの孔部に重ねたフィルムをはめ込み、さらに該シートを1mm厚の100×100mmポリテトラフルオロエチレンシートにて挟み込んだ。
次いで、中央部に深さ3mmの120mm×120mmの溝を持つ15mm厚×150mm×150mm金属板に、上述のフィルムを挟み込んだテフロン(登録商標)シートを溝の中央に配置し、さらに15mm厚×150mm×150mm金属板にて上から蓋をした後、金属板同士をボルトで固定した。続けて、予め加温した熱プレス機により100kg/cm以上にて該金属板を挟んだ状態で290℃にて24時間加熱を続けた。24時間経過後に該金属板を取り出して急冷し、室温まで十分に冷却されてから滞留サンプルを取り出した。
(ゲル化分率の算出)
次いで、上記の滞留サンプルを60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥させた後、乾燥したサンプルを直ちに100mg秤量した。秤量した滞留サンプルを10mlの純度99%以上のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に24時間浸漬後、予め秤量した300μm孔径のポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルターを通し減圧濾過した。
メンブレンフィルターに残った残渣をHFIPにて洗浄した後、残渣の付着したフィルターを60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥した。
次いで、乾燥させた残渣とフィルターの総重量を秤量し、予め秤量したフィルター重量との差から、滞留サンプルのHFIP不溶成分量(ゲル量)を算出した。
ゲル化分率は滞留サンプルに対するHFIP不溶成分の重量%として求めた。結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1と同様のポリアミド(X1)を用い、酢酸ナトリウムの添加量を4000mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<実施例3>
メタキシリレンジアミンの量を13903g(102.1mol)とした以外は実施例1と同様に合成を行いポリアミド(X2)を得た(相対粘度;2.71、末端アミノ基濃度;19.6μeq/g)。ポリアミド(X2)を用い、酢酸ナトリウムの添加量を4000mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<実施例4>
メタキシリレンジアミンの量を13917g(102.3mol)とした以外は実施例1と同様に合成を行いポリアミド(X3)を得た(相対粘度;2.69、末端アミノ基濃度;26.4μeq/g)。ポリアミド(X3)を用い、酢酸ナトリウムの添加量を4000mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<実施例5>
メタキシリレンジアミンの量を13910g(102.2mol)とした以外は実施例1と同様に合成を行いポリアミド(X4)を得た(相対粘度;2.72、末端アミノ基濃度;15.3μeq/g)。ポリアミド(X4)を用い、かつ酢酸ナトリウムの添加量を1000mg、かつ無水フタル酸6000mgを混合した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<実施例6>
実施例5と同様のポリアミド(X4)を用い、かつ酢酸ナトリウムの添加量を1000mg、かつ無水フタル酸10000mgを混合した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<実施例7>
実施例5と同様のポリアミド(X4)を用い、かつ酢酸ナトリウムに代わりステアリン酸カルシウムを添加し添加量を8000mg、かつ無水フタル酸6000mgを混合した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1と同様のポリアミド(X1)を用い、酢酸ナトリウムを添加しなかった事以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
<比較例2>
実施例3と同様のポリアミド(X2)を用い、酢酸ナトリウムを添加しなかった事以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例3>
実施例4と同様のポリアミド(X3)を用い、酢酸ナトリウムを添加しなかった事以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例4>
メタキシリレンジアミンの量を13970g(102.6mol)とした以外は実施例1と同様に合成を行いポリアミド(X5)を得た(相対粘度;2.74、末端アミノ基濃度;39.1μeq/g)。ポリアミド(X5)を用い、酢酸ナトリウムを添加しなかった事以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例5>
実施例5と同様のポリアミド(X4)を用い、酢酸ナトリウムを添加しなかった以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例6>
実施例5と同様のポリアミド(X4)を用い、酢酸ナトリウムに代わり、無水フタル酸6000mgを混合した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例7>
実施例5と同様のポリアミド(X4)を用い、酢酸ナトリウムに代わり、無水フタル酸8000mgを混合した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例8>
実施例5と同様のポリアミド(X4)を用い、酢酸ナトリウムの添加量を1000mg、かつ無水フタル酸2000mgを混合した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例9>
実施例3と同様のポリアミド(X2)を用い、酢酸ナトリウムの添加量を1000mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例10>
実施例4と同様のポリアミド(X3)を用い、酢酸ナトリウムの添加量を2000mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
<比較例11>
比較例4と同様のポリアミド(X5)を用い、酢酸ナトリウムの添加量を4000mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレス機による溶融滞留を実施し、滞留サンプルを得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
表1の略称は、それぞれ以下のものを表す。
AcNa:酢酸ナトリウム
PAn:無水フタル酸
Figure 2011140621

Claims (11)

  1. メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンとジカルボン酸とを重縮合して得られたポリアミドと、アルカリ化合物(A)を含み、かつ次式(イ)を満足するポリアミド樹脂組成物。
    a≦1.5b ・・・(イ)
    (ここで、aはポリマー中の末端アミノ基濃度(μeq/g)を表し、bはポリアミド樹脂組成物中のアルカリ土類金属濃度の2倍とアルカリ金属濃度の和(μmol/g)を表す。)
  2. さらに多価カルボン酸(B)を含む請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 多価カルボン酸(B)が、フタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸および無水トリメリット酸から選ばれる1種以上である請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記ポリアミドとアルカリ化合物(A)、または前記ポリアミドとアルカリ化合物(A)と多価カルボン酸(B)を押出機により溶融混練する工程を含む製造方法で得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記ポリアミドが、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンと、アジピン酸を70モル%以上含むジカルボン酸を重縮合して得られたポリアミドである請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミドが、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンと、アジピン酸を70モル%以上、及びイソフタル酸を1〜30モル%含むジカルボン酸を重縮合して得られたポリアミドである請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を押出成形した成形品。
  8. 請求項7に記載の成形品を一軸延伸または二軸延伸した成形品。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形した成形品。
  10. 請求項9に記載の成形品を延伸ブローした成形品。
  11. 包装材料、包装容器又は繊維材料である請求項7〜10のいずれかに記載の成形品。
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