JP2011133451A - 光学的植生指数センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】植生の内外で同時測定する必要がなく、年間を通して連続して安定した測定を行うことができ、安価で小型、軽量で出力が大きい光学的植生指数センサを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の光学的植生指数センサは、葉又は葉群を透過した透過放射を受光すると、400nm〜700nmの放射に対して分光特性の補正を行い、光電変換して光合成有効放射度または光合成光量子束密度の何れかを示すPAR出力として出力するPARセンサ2と、受光した放射に対して700nm〜1000nmの放射を取出し、光電変換してPAR出力と共通する単位の放射度または光量子束密度の何れかを示すIR出力を出力できるIRセンサ3と、IR出力の積算値をPAR出力の積算値で割って比を算出し、該比に対応した葉面積指数を求める演算部5を備えたことを主な特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、植生の単位地表面積当たりの植物の葉の量(葉面積指数)または光合成有効放射吸収率を光学的にかつ非破壊的に測定する光学的植生指数センサに関する。
葉面積指数(LAI;Leaf Area Index)とは、単位水平面積当りのその上部の植生のすべての葉の片側の面積の合計を示す指標値のことである。例えば1mの地面上に存在する葉の総面積が2mであれば、LAI=2であり、つまり葉を地面に隙間なく並べたとき2枚重なるということを意味する。通常の森林植生の葉面積指数は3〜7程度である。また、光合成有効放射吸収率(fAPAR)は、植生の光合成器官によって吸収された光合成有効放射(PAR;Photosynthetic Active Radiation)の吸収前後の比率を示す指標値のことである。例えば、林冠上のPARが2000μmol/m2/sで、同時刻の林床のPARが50μmol/m2/sであれば、fAPARは0.975となる。
葉面積指数は、植生機能を評価するための重要なパラメータであり、光合成有効放射の吸収、光合成・蒸散量や、植生の炭素吸収能力を示す重要な指標として、農業、森林科学や生態学・地球環境科学などで広く用いられている。しかし、その光学的葉面積指数センサの開発は遅れており、また、植生による光合成有効放射吸収率を外部との比較測定無しに測定できる光合成有効放射吸収率センサは今まで開発されていない。
ところで、葉面積指数は伐採を行うことによって直接測定することができるものである。刈り取り法あるいはサンプリング法は、単位地表面積上に存在する全ての葉を刈り取り、その総面積を求めることでこれを得る。この方法は原理的に正確になるが、植生を伐採し、結果として測定対象の植生を完全に破壊することになる。人的労力の負担が大きく、実際に実施するのは難しい。
一方、葉面積指数の測定のために光学的性質を利用する方法も提案されている。従来から植生に入射した太陽放射は放射量が次第に減衰することが知られている。しかし、赤色放射(R:波長域650〜700nm)は葉群を通る間に減衰するが、短波長側の近赤外放射(FR:波長域700〜800nm)はこれを通ってもあまり減衰しない。このような分光吸収特性が起きる原因を考えると、光合成に有効な光合成有効放射(PAR)と呼ばれる400nmから700nmの波長領域の放射が葉群を通過するとき、葉はほぼ黒体として機能し、総面積で放射が吸収されることが主因であると考えられる。そこで、この葉の分光吸収特性を利用して葉面積指数を推定する方法が考えられる。
例えば、植生下で魚眼レンズと電子式撮像素子を用いて、近赤外放射と赤色放射とのそれぞれについて、露出時間を複数種類に変えて植生内の所定領域の画像を撮影し、この所定領域を細分した細分領域毎に近赤外放射と赤色放射のそれぞれについて輝度値を求め、この細分領域毎の近赤外放射と赤色放射との輝度値比を求めて、輝度値比を用いて相対日射量を推定し、葉面積指数を求める技術が提案されている(特許文献1参照)。撮像した画像を画像処理することにより葉面積指数を推定する。ナローバンドの植生透過放射の放射輝度の比の空間分布を求めて葉面積指数の推定を行うものである。
また、従来、植生を通過した赤色放射(波長675nm)と近赤外線放射(波長800nm)の分光強度比(=800/675)が葉量の増加に伴って増加することも従来開示されている(非特許文献1参照)。ナローバンドの分光強度比の測定によって葉面積指数を求めようとするものである。
この非特許文献1には、葉面積指数Xと分光強度比Y(=800/675)との間には相関関係があり、logY=0.3813+0.0989Xという関係を有することが報告されている。また、葉緑素xmg/mと分光強度比Yとの間にlogY=0.3813+0.0002908xの関係があると予測されている。上述したように光合成に有効な放射はPAR(400nmから700nmの波長領域の放射)であり、葉緑素量は葉の総量にほぼ比例するから、分光強度比Y(=800/675)が大きくなったときは放射がこの葉群を通過する間に葉によって吸収され光合成が活発に行われたことを示唆している。
さらに、今まで実用化されている光学的葉面積指数センサの一例を挙げると、米国のLI−COR社による全天をリング状に光学的に5分割して測光するプラントキャノピーアナライザーがある。この技術は、近赤外線放射は利用せず、青色放射(320〜490nm)のセンサを利用したナローバンドの透過放射の空間分布を測定して葉面積指数を求めるものである。
また、林内のPAR平面分布を測定し、その測定値の変動量からLAIを推定する手法も実用化されている(非特許文献2参照)。この技術は、晴天日にPARセンサを移動させながら測定し、PAR強度分布から葉の密集度などを推定して葉面積指数を求めるものである。
次に、以上説明したような透過放射ではなく、反射放射を使ったリモートセンシングも提案されている。森林からの太陽放射の反射放射を人工衛星で測定し、次のような植生指標(Normalized Differential Vegetation Index,NDVI)を用いて葉面積指数を推定するものである。ここで、NIRを近赤外波長帯反射率、REDを可視赤色波長帯反射率とすると、NDVI=(NIR−RED)/(NIR+RED)と表わされる。LANDSAT−TMデータの場合、4バンド(NIR)の波長は760nm〜900nmであり、3バンド(RED)の波長は630nm〜690nmである。従って、NDVIはナローバンドの反射放射の反射率による葉面積指数の指標ということができる。
特開2007−171033号公報
Carl F. Jordan,「 Derivation of Leaf-Area Index from quality of light on the forest floor 」Ecology,1969,vol.50,No.4, 663-666 Jing M. Chen and Josef Cihlar,「 Plant canopy gap-size analysis theory for improving optical measurements of leaf area index 」,Applied Optics,1995,vol.34,No.27,6211−6222
以上説明したように葉面積指数を求めるために刈り取り法あるいはサンプリング法によるのでは植生を伐採して破壊してしまう。しかも、人的労力の負担が大きく、事実上この方法では測定は難しい。
そして、魚眼レンズと電子式撮像素子を用いて、近赤外放射と赤色放射のそれぞれについて所定領域の画像を撮影し、その輝度値比を求めて相対日射量を推定するという特許文献1の技術は、画像の撮影時の天候に作用され(晴天時の画像は利用できない)、露出に配慮して撮影する必要があり、その後に画像処理が必要になる。高コストの装置になり、画像処理が必要になることから連続測定が難しい。
また、一定の葉面積指数を持った植生を通過した赤色放射と近赤外線放射の放射強度比がほぼ一定であるとの非特許文献1の報告では、実験室内の植物生理学的知見から675nmと800nmの2波長の分光強度を選択して、葉面積指数を算出する。また、太陽の高さや、葉による放射の散乱などを抑えるために直上からの放射を狭角な指向性を持ったセンサによって測定を行う必要があり、曇天時の測定は勧められていない。従って、この非特許文献1の技術を利用した葉面積指数センサはナローバンドセンサであって狭角な指向性を持つため、センサへの放射量(放射強度)が不足し低感度になることが避けられない。実際に野外の測定を行うと測定値のバラツキが大きく、実用性がなかった。
また、特許文献1の中で報告されているように、ナローバンドの透過放射を利用し、(近赤外放射の(空間的)積算値)/(赤色放射の(空間的)積算値)を計算して相対日射比を計算したとしても、葉が茂っていない部分の放射量の重みが相対的に高くなり、葉が茂っている部分の放射量の重みが低くなって、推定精度が低下すると予測される。この方法による葉面積指数の推定が失敗に帰したことは特許文献1において報告済みである。
そして、赤色放射と近赤外線放射の狭角なナローバンドセンサでは波長700nmにおけるレッドエッジシフトや葉の分光特性の微妙な種間差の影響を受け易く、出力が小さく、屋外で安定して測定することが難しかった。
さらに既に実用化されているナローバンドの光学的葉面積指数センサは、林内と林外で同時測定を行う必要があったり、林内を移動させて測定する必要があり、また、測定時の天候に強く影響を受けるものであった。加えて複雑な光学系が必要であったり、測定値について複雑な解析が必要でもあった。しかも、測定には人の操作が必要なため、長期にわたる無人測定を行うこともできないものであった。
また、人工衛星によるリモートセンシングも、反射放射を高解像度で受光するには高い指向性が必要になるが、反射放射は葉面積指数に対して指数関数的に減少するため、葉面積指数の増加とともに反射放射強度の減少が検出できなくなることが避けられなかった。とくにLAIが2以上になると推定精度が著しく低下するし、撮影時の天候にも大きく影響される。様々な補正方法が提案されているが、決定的な補正方法は提案されていない。
このように、従来の光学的葉面積指数センサは何れもナローバンドセンサであって、長期間にわたり自動的に連続して測定でき、植生の内外で同時測定する必要がなく、野外でもノイズの影響を受けずに安定した測定が行え、出力が大きい、ブロードバンドでの測定が行える光学的葉面積指数センサは存在せず、光学的手法を用いて実測値に近い葉面積指数を得るのは困難であった。また、光合成有効放射吸収率を光学的に植生内の測定のみで得られる光合成有効放射吸収率センサは開発されていない。このように葉面積指数または光合成有効放射吸収率の測定が行える光学的植生指数センサに期待が集まっている。
そこで、本発明は、植生の内外で同時測定する必要がなく、長期間にわたり自動的に連続して安定した放射測定を行うことができ、安価で小型、軽量で出力が大きいブロードバンドで葉面積指数または光合成有効放射吸収率の測定が行える光学的植生指数センサを提供することを目的とする。
本発明の光学的植生指数センサは、葉又は葉群を透過した透過放射を受光すると、400nm〜700nmの可視放射領域の放射に対して補正フィルタにより光量子束密度で測定するための分光特性の補正を行い、補正後の放射を受光部で光電変換することによって光合成有効放射度または光合成光量子束密度の何れかを示すPAR出力として出力する第1放射センサと、受光した放射に対してバンドパスフィルタにより700nm〜1000nmの赤外放射領域のみの放射を取出し、この放射を受光部で光電変換することによってPAR出力と共通する単位の放射度または光量子束密度の何れかを示すIR出力を出力できる第2放射センサと、PAR出力とIR出力を時間と共に積算し、IR出力の積算値をPAR出力の積算値で割って比を算出し、該比に対応した葉面積指数を求める演算部を備えたことを主な特徴とする。
また本発明の光学的植生指数センサは、葉又は葉群を透過した透過放射を受光すると、400nm〜700nmの可視放射領域の放射に対して補正フィルタにより光量子束密度で測定するための分光特性の補正を行い、補正後の放射を受光部で光電変換することによって光合成有効放射度または光合成光量子束密度の何れかを示すPAR出力として出力する第1放射センサと、受光した放射に対してバンドパスフィルタにより700nm〜1000nmの赤外放射領域のみの放射を取出し、この放射を受光部で光電変換することによってPAR出力と共通する単位の放射度または光量子束密度の何れかを示すIR出力を出力できる第2放射センサと、PAR出力とIR出力を時間と共に積算し、IR出力の積算値をPAR出力の積算値で割って比を算出し、該比に対応した光合成有効放射吸収率を求める演算部を備えたことを主な特徴とする。
本発明の光学的植生指数センサによれば、林内で連続して安定した放射測定を行うことができ、植生の内外での同時測定無しで、安価で小型、軽量で出力が大きく、ブロードバンドで葉面積指数または光合成有効放射吸収率の測定が行える光学的植生指数センサを提供することができる。
本発明の実施例1における光学的植生指数センサの全体の構成図 本発明の実施例1における光学的植生指数センサのPARセンサの構造図 本発明の実施例1における光学的植生指数センサのIRセンサの構造図 光合成の吸収帯を示すスペクトル特性の説明図 光合成光量子束密度の説明図 デイゴの葉における分光反射特性と分光透過特性の説明図 マテバシイの表側と裏側の葉の反射と吸収のスペクトル特性の説明図 広域放射度比(IR/PAR)の対数ln(IR/PAR)と葉面積指数LAIの相関を示す説明図 広域放射度比(IR/PAR)の一次関数の対数ln{(IR/PAR)−0.6}と葉面積指数LAIの相関を示す説明図 落葉広葉樹林の葉面積指数LAIの季節変化を示す説明図 本発明の実施例2における光学的植生指数センサの全体の構成図 広域放射度比(IR/PAR)と光合成有効放射吸収率(fAPAR)の相関を示す説明図
本発明の第1の発明の形態は、葉又は葉群を透過した透過放射を受光すると、400nm〜700nmの可視放射領域の放射に対して補正フィルタにより光量子束密度で測定するための分光特性の補正を行い、補正後の放射を受光部で光電変換することによって光合成有効放射度または光合成光量子束密度の何れかを示すPAR出力として出力する第1放射センサと、受光した放射に対してバンドパスフィルタにより700nm〜1000nmの赤外放射領域のみの放射を取出し、この放射を受光部で光電変換することによってPAR出力と共通する単位の放射度または光量子束密度の何れかを示すIR出力を出力できる第2放射センサと、PAR出力とIR出力を時間と共に積算し、IR出力の積算値をPAR出力の積算値で割って比を算出し、該比に対応した葉面積指数を求める演算部を備えたことを特徴とする光学的植生指数センサである。この構成によって、葉を透過した透過光に対してIR出力の積算値とPAR出力の積算値の比、例えば赤外線放射度の積算値を光合成放射度の積算値で割った比を基にして葉面積指数を求めることができるので、林内で連続して安定した放射測定を行うことができ、植生の内外での同時測定無しで、安価で小型、軽量で出力が大きく、ブロードバンドで葉面積指数の測定が行える光学的植生指数センサを提供することができる。
本発明の第2の発明の形態は、第1の発明の形態において、第1放射センサと第2放射センサの受光面には放射をコサイン補正できる光拡散板が設けられ、入射放射の入角特性が広角に設定されたことを特徴とする光学的植生指数センサである。この構成によって、林冠全体を平均化し、太陽の高さや光の散乱などに大きく作用されず、広角で安定して大量の光を受光することができ、高感度、高出力のセンサを実現でき、ノイズの影響が少なく、ブロードバンドで葉面積指数の測定が行える光学的植生指数センサを提供することができる。
本発明の第3の発明の形態は、第1又は2の発明の形態において、演算部が、PAR出力とIR出力をそれぞれ積算する積算手段と、積算したIR出力の積算値をPAR出力の積算値で割って比を算出する比演算手段と、前記比に基づいてこれと対応する葉面積指数を求める葉面積指数換算手段とを備えたことを特徴とする光学的植生指数センサである。この構成によって、葉を透過した透過光に対してIR出力の積算値とPAR出力の積算値の比、例えば赤外線放射度の積算値を光合成放射度の積算値で割った比を基に積算手段と比演算手段、葉面積指数換算手段とによる簡単な演算で正確な葉面積指数を求めることができる。
本発明の第4の発明の形態は、第1乃至第3の何れかの発明の形態において、葉面積指数が比またはその関数を真数とする対数関数の一次関数であることを特徴とする光学的植生指数センサである。この構成によって、葉を透過した透過光に対してIR出力の積算値とPAR出力の積算値の比を基にして簡単な演算を行うだけで正確な葉面積指数を求めることができるので、林内で連続して安定した放射測定を行うことができ、植生の内外での同時測定無しで、安価で小型、軽量で出力が大きく、ブロードバンドで葉面積指数の測定が行える光学的植生指数センサを提供することができる。
本発明の第5の発明の形態は、葉又は葉群を透過した透過放射を受光すると、400nm〜700nmの可視放射領域の放射に対して補正フィルタにより光量子束密度で測定するための分光特性の補正を行い、補正後の放射を受光部で光電変換することによって光合成有効放射度または光合成光量子束密度の何れかを示すPAR出力として出力する第1放射センサと、受光した放射に対してバンドパスフィルタにより700nm〜1000nmの赤外放射領域のみの放射を取出し、この放射を受光部で光電変換することによってPAR出力と共通する単位の放射度または光量子束密度の何れかを示すIR出力を出力できる第2放射センサと、PAR出力とIR出力を時間と共に積算し、IR出力の積算値をPAR出力の積算値で割って比を算出することにより該比に対応した光合成有効放射吸収率に換算する演算部を備えたことを特徴とする光学的植生指数センサである。この構成によって、葉を透過した透過光に対してIR出力の積算値とPAR出力の積算値の比、例えば赤外線放射度の積算値を光合成放射度の積算値で割った比を基にして光合成有効放射吸収率に換算することができるので、林内で連続して安定した放射測定を行うことができ、植生の内外での同時測定無しで、安価で小型、軽量で出力が大きく、ブロードバンドで光合成有効放射吸収率の測定が行える光学的植生指数センサを提供することができる。
以下、本発明の実施例1における光学的植生指数センサについて説明をする。図1,図2,図3に示すように、実施例1の光学的植生指数センサである光学的葉面積指数センサ1は、光合成有効放射域放射センサ2(本発明における第1放射センサ、以下PARセンサ2)と、赤外線域放射センサ3(本発明における第2放射センサ、以下IRセンサ3)と、このPARセンサ2,IRセンサ3にそれぞれ接続された出力ケーブル41,42と、PARセンサ2,IRセンサ3からのそれぞれの出力(PAR出力,IR出力)に対して、両出力値の比を算出し葉面積に換算する演算部5とから構成される。PARセンサ2、IRセンサ3の形状は、全方位から受光するからといっても円筒状には限られず、例えば、林内の平均放射が測定できるように長い棒状、あるいは複数のセンサから構成されても良い。演算部5は図1に示す波線のようにコンピュータ7内にソフトウェア的に構成される構成であっても、その他の電気的な演算回路でアナログ演算を行う装置であってもよい。
まず第1放射センサとして、光合成光量子束密度(μmol/m/s)または光合成放射度(W/m)を示すPAR出力を出力するPARセンサ2は、図2のようにホトダイオードからなる受光部11が取り付けられた基板29を収容する筐体18を備えたセンサである。この筐体18の天面には光拡散板20が設けられる。ここで、この光合成放射度とは、後述するように光合成に利用可能な単位面積当たりの光量子の量(光合成光量子束密度)をエネルギー(放射度(W/m))に換算した値に相当する。従って、受光部11で光電交換された電荷量の変化を示す出力電圧(mV)は放射度(W/m)と光量子束密度(μmol/m/s)の、どちらの単位にも換算して出力することができる。ここで受光部11には例えば量子型の光検出器であるSiホトダイオードを採用するのが好適である。このように受光部11をホトダイオードとすることによりPARセンサ2の小型化、低下価格化が可能になる。光拡散板20と受光部11の間の空間には、上から順にUV/IRカットフィルタ13、青色拡張フィルタ15が配設される。受光部11で光電変換された出力電圧(検出信号)は埋め込みコネクタ31に出力され、ケーブルコネクタ32を介して出力ケーブル41に出力される。なお、UV/IRカットフィルタ13と青色拡張フィルタ15が本発明の補正フィルタに相当する。
この筐体18は円筒状で天面には凹部が形成されており、光拡散板20がこの凹部内の中央で天面側を開放した状態で突出して設置される。さらに好適には、エッジ部分にRを施したり形状をドーム状にしたりする。このような構造を持つ光拡散板20によって、ほぼ十分な入射角特性(コサイン補正)が得られる。さらに光拡散板20から出射される光を受光部11に導く光路が筐体18内に設けられる。光拡散板20は全天からの光を広角で受光部11に広く取り込むための構成である。拡散板20からの出射光を導く光路にはUV/IRカットフィルタ13、青色拡張フィルタ15が配置され、これらのフィルタの作用で波長領域が特定の範囲に限定され、かつ感度調整される。詳細は後述するが、光量子束密度で測定するための分光特性の補正が行われる。
従って、植生を通った外界からの光はすべて光拡散板20の上方から入射し、コサイン補正されて内部で拡散・平均化され、その底面から筐体18内へ出射される。これらの構成により外界からのほぼすべての光を取り込むことができる。なお、下方からの入射光は筐体18によって遮断される。受光部11は基板29上の光拡散板20側となる上面側に受光面が置かれる。光路の上からの順でいうと、光拡散板20、UV/IRカットフィルタ13と青色拡張フィルタ15、受光部11の順に部材が配置される。
なお、筐体18の構造は、UV/IRカットフィルタ13、青色拡張フィルタ15、基板29などを確実に固定して配置することができ、光を所定の特性に調整して受光部11で光電変換できるのであれば十分であり、構造的にとくに限定されるものではない。また、基板29、埋め込みコネクタ31とケーブルコネクタ32の構造も、基板29において検出信号のゲイン調整をして出力できる構成であれば特定の構造に限られるものではない。
次に第2放射センサとして、IR(赤外:Infrared)領域の放射度を測定してIR出力を出力するIRセンサ3には、ホトダイオードからなる受光部12が取り付けられた基板30を収容する筐体19が設けられ、この筐体19の天面には光拡散板21が設けられている。Siホトダイオードは量子型の光検出器であり、400nm〜1000nmの範囲で高い直線性感度を有していることから、受光部12にはPARセンサ2と同様にSiホトダイオードを採用するのが好適である。ホトダイオードとすることによりIRセンサ3の小型化、低下価格化が可能になる。光拡散板21と受光部12の間の空間にはIRパスフィルタ14(本発明におけるバンドパスフィルタ)が配設される。受光部12で光電変換された電圧(検出信号)は埋め込みコネクタ33に出力され、ケーブルコネクタ34を介して出力ケーブル42に出力される。
この筐体19は円筒状で天面には凹部が形成されており、光拡散板21がこの凹部内の中央で天面側を開放した状態で突出して設置される。さらに光拡散板21から出射される光を受光部12に導く光路が筐体19内に設けられる。光拡散板21は全天から光を広角で受光部12に取り込むために光の拡散・平均化をするための構成である。出射光の光路として筐体19の中央にIRパスフィルタ14が配置され、このIRパスフィルタ14の下方に受光部12が配置される。
この筐体19は、受光した光の光路上にIRパスフィルタ14を確実に固定して配置することができ、光を所定の特性に調整して受光部12で光電変換できるのであれば十分である。また、埋め込みコネクタ33とケーブルコネクタ34も検出信号を出力できる構造であればよい。
IRセンサ3においては、植生を通った光はすべて光拡散板21の上方から入射され、内部で拡散されて底面から筐体19内へ出射される。受光部12で光電変換された電圧(検出信号)はゲイン調整後に埋め込みコネクタ33に出力され、ケーブルコネクタ34を介して出力ケーブル42に出力される。このIRパスフィルタ14の作用で波長領域の限定と感度調整が行われる。
なお、PARセンサ2,IRセンサ3の主要部品は、2つの放射センサで共通する部品を使用することができる。PARセンサ2,IRセンサ3は、光の特性を調整するフィルタなどの構造は一部異なるが、筐体18,19の本体や、ケーブルコネクタ32,34など、残りの主要部品の構成は共通の仕様にすることができ、部品の共用化、光学特性の共通化を図ることができるものである。
続いて、2つの放射センサからの出力(PAR出力,IR出力)に基づいて葉面積指数を算出する構成について説明する。PARセンサ2,IRセンサ3からの各出力は演算部5に入力される。受光部11で光電交換された電圧(mV)は、設定により、放射度(W/m)と光量子束密度(μmol/m/s)の、何れの単位にでも換算でき、前者は光合成有効放射度(W/m)に、後者は光合成光量子束密度(μmol/m/s)になる。光電交換された電圧(mV)に換算係数を掛けることにより(ゲイン調整)、放射度と光量子束密度の何れの単位にでも容易に換算できる。一方の単位が基準として採用されている場合は、設定を変えることで一方から他方へ容易に出力の変更が行える。なお、演算部5において変換することもできる。受光部12で光電交換された電圧(mV)についても、700nm〜1000nmの赤外放射領域の放射度(以下、赤外線放射度(W/m))とその光量子束密度(以下、赤外線光量子束密度(μmol/m/s))のどちらの単位にも換算できる。本発明にとって重要なことは、PAR出力,IR出力となる放射度と光量子束密度の単位を、放射度(W/m)あるいは光量子束密度(μmol/m/s)のどちらか一方となる共通の単位に揃えて出力もしくは演算することである。
演算部5は、アナログ量である2つの出力値を時計、タイマ等の計時手段(図示しない)を使ってカウントした日照時間と共に積算してその比、すなわちIR出力の積算値/PAR出力の積算値を計算するアナログ演算回路を備える。あるいは、A/D変換後にコンピュータ7においてデジタル的に演算を行うソフトウェア構成の演算部であってもよい。ここで、IR出力の積算値がIRセンサ3で光電交換された電荷の変化の総量に相当し、PAR出力の積算値がPARセンサ2で光電交換された電荷の変化の総量に相当するから、(IR出力の積算値/PAR出力の積算値)は400nm〜700nmの可視放射領域と700nm〜1000nmの赤外放射領域で受光した光量子の総数の比に相当する。そしてこの比は、(赤外線放射度の積算値/光合成有効放射度の積算値)と(赤外線光量子束密度の積算値/光合成光量子束密度の積算値)のどちらの比であっても、実質は同一の比であることが分かる。それぞれで分母と分子の量の単位を揃えていればどちらでも同じ計算結果が得られる。図1のように、演算部5に設けられた積算手段53によって2つの出力値を積算し、比演算手段51がこの2つの積算値の比を出力する。なお、ソフトウェア的な比演算手段51、積算手段53はコンピュータ7に比を計算するプログラムを読み込んで、この処理を実行する機能実現手段である。
演算結果は演算部5に設けられている図1の葉面積指数換算手段52に渡され、葉面積指数換算手段52が演算結果である比に対応する葉面積指数を求める。算出に当たっては、上述のソフトウェア的な演算部5の場合、予めメモリ6に比と葉面積指数の相関関数(換算式61)を登録しておき、葉面積指数換算手段52がこの換算式61によって比(IR出力の積算値/PAR出力の積算値)から演算により葉面積指数を出力する。あるいは、比演算手段51で直接比を演算して葉面積指数を出力するのではなく、演算部5に例えば図示しない放射度推定手段を設けると共に、予め単位を揃えたIR出力とPAR出力とを関係づける植生ごとの検量線、例えば光合成有効放射度(PAR出力)と赤外線放射度(IR出力)の検量線をメモリ6に保存しておき、この検量線と測定したPAR出力、例えば実際に測定した光合成有効放射度を基に、検量線で関係づけられたIR出力、例えば赤外線放射度を放射度推定手段によって求め、積算手段53によってこれらを積算し、比演算手段51、葉面積指数換算手段52の作用で演算部5が比(IR出力の積算値/PAR出力の積算値)を計算してこれに対応した葉面積指数を出力することもできる。
またあるいは、演算方式とは異なって、比と葉面積指数を対応づける換算テーブル62をメモリ6に保存しておき、この換算テーブル62を参照して葉面積指数を出力することもできる。演算回路の場合、アナログ計算によって比から葉面積指数を直接算出する。コンピュータ7に表示装置を接続しておき、連続的に測定された比を時間軸で一覧表示することもできる。例えば後述する図10のように葉面積指数の季節の移り変わりにおける変化をみることができる。
さて、以上、光学的葉面積指数センサ1の各構造を中心に説明したが、PARセンサ2,IRセンサ3で行われる感度調整について詳しく説明する。まずPARセンサ2について説明する。以下PAR出力が光合成有効放射度(W/m)、IR出力が赤外線放射度(W/m)の場合について説明する。
PARセンサ2の感度調整は光合成有効波長内の光量子数を正確に表すために行われる。PARセンサ2の受光部11を構成するのは可視光の領域である400nm〜700nmの波長領域に感度特性を有するホトダイオードである。このため、UV/IRカットフィルタ13が400nmよりも短い波長の紫外(UV)域の光と700nmより長い波長の赤外(IR)域の光を遮断する。
続いて青色拡張フィルタ15が、この紫外域と赤外域の波長がカットされた光に対して、青色付近を拡張するようにそのスペクトル特性を補正し、ここから補正された光を受光部11で受光する。従って、UV/IRカットフィルタ13の透過特性に青色拡張フィルタ15の透過特性を掛けたスペクトル特性に補正し、受光部11ではこれに感度特性が掛けられた特性で受光されることになる。さらに実施例1では、出力されるスペクトル特性が平坦な特性になるように補正され、これが光電交換されて基板30から光合成有効放射度を示す出力としてケーブル41から出力される。
ここで、この紫外域と赤外域の波長領域のカットと青色付近のスペクトル特性の補正の必要性について説明する。
植物は光放射エネルギーを光合成に利用する。光量子1個のエネルギーは、短波長の光ほどエネルギーが大きく、長波長へ行くに従ってエネルギーが小さくなる。すなわち、光量子はその波長に反比例してエネルギー量が変化する。プランクの定数(6.63×10−34Js)をh、光速をc(3×10m/s)、波長をλとすると、光量子エネルギーeはe=hc/λと表される。
また、葉に含まれる葉緑素は図4のように吸収帯を2つもっており、赤色光(400nm〜500nm)と青色光(600nm〜700nm)を主に吸収する。しかし、この2つの領域では波長λが異なるため光量子1個の持っているエネルギーは上述したように異なる。そして植物の光合成は葉緑素が光を吸収すると光量子単位で反応するから、光量子を吸収する個数が重要になる。葉緑素に吸収されない光が照射されても光合成に寄与しないので、照射されなかったのと等しい。従って、光がどれだけ光合成に利用できるかは波長で異なることになる。
従って、光量子を放射の単位として測定することにすれば、言い換えれば光量子束密度(PFD;Photon Flux Density)を光の単位として使うことにすれば、光合成効率を波長に依存せずに評価することができる。植物は、植物ごとに葉の大きさや、厚さ、形態などで少し異なるが、400nm〜700nmの放射を利用して植物ごとに葉によって吸収された光合成光量子束密度(PPFD;Photosynthetic Photon Flux Density;μmol/m/s)を測定すれば、光合成の反応程度が分かる。光合成活性は平均的には葉緑素の量に比例し、葉緑素量は葉面積に比例するから、光合成光量子束密度の吸収量から植物ごとに葉の量が分かる。図5は光合成光量子束密度のスペクトル特性を示すものであり、光合成有効放射は単位となるPFDのスペクトル分布とよく一致している。
このように光合成有効放射が400nm〜700nmの光であるため、UV/IRカットフィルタ13によって光合成有効光量子束密度測定の妨げになる不要な波長領域の光をカットする。さらに青色拡張フィルタ15によって青色付近の波長領域で感度を上げるように特性を補正する。これにより光量子束密度を単位とする測定、すなわち光量子の数による放射度の測定が可能になる。そして、この光がホトダイオードの感度特性に従ってホトダイオードに受光され、光電交換後に光合性有効成放射度として出力される。なお、光合成光量子束密度は平均的陸上植物の光合成有効放射(PAR)と良好な一致を示すことが知られている。
図6はデイゴの葉における分光反射特性と分光透過特性を示す。図6において、太線はデイゴの葉の裏側(太陽光に対して裏側)での反射率であり、細線はデイゴの葉の表側の反射率である。また、一点鎖線は透過率を示す。
図6によれば、700nmが境界になって光の反射と透過の性質が大きく変化していることが分かる。光量子の反射率は700nm以下で葉の上方位置からの方が下方位置からより相対的に大きい。これに対して700nmより長い波長領域では、葉の上方位置、下方位置共に3倍から6倍程度の反射率を測定できている。
これを透過率でみると、700nm以下では光が透過しないが、700nm以上の赤外域では光をきわめて良好に透過させている。すなわち、植生内では光合成に利用できない赤外域の光量子の比率が高まっている。なお図6はデイゴの葉の測定例であるが、マテバシイ、タケ、ヤツデなど多くの植物の分光反射特性を測定しても、葉間差、種間差はほとんどない。
このように光合成光量子束密度を測定すれば、PARセンサ2によって透過光が葉群を通過する間に光合成がどの程度行われたか、光がどれだけ減衰したかを絶対値で知ることができる。
これに対して、IRセンサ3で行われる感度調整について説明する。IRセンサ3の感度調整は透過光の赤外領域の赤外線光量子束密度、あるいは単位面積当たりの光エネルギーに当たる赤外線放射度を表すようにするものである。IRセンサ3においては、受光された光はIRパスフィルタ14によって700〜1000nmの赤外域の光のみを透過し、所定の感度特性を有する受光部12のホトダイオードで受光され、光電変換される。すなわち、IRパスフィルタ14の透過特性に受光部121の感度特性が掛け合わされて、更に赤外線放射度を出力できるようにゲイン調整される。
図6によれば700nm以上の赤外域では葉または葉群は光量子をきわめて安定的かつ良好に透過する。すなわち、植生内では光合成に利用できなかった赤外域の光量子の比率が高まる。そこで透過光の放射測定は少なくとも700nmより大きな波長領域の光を使えばよいことが分かる。
光合成光量子束密度と赤外光の放射測定を行うときに最も重要なことは、PARセンサ2で400nmから700nmの波長領域で光量子束密度(光量子の量)を測定しなければならないことであり、かつ、IRセンサ3で700nmより大きな赤外光領域の光量子束密度もしくは放射束密度(放射度)を測定しなければならないことである。加えて、両測定値は放射度または光量子束密度の一方に単位を揃えておくことも必要である。そしてPARセンサ2とIRセンサ3の何れかにおいて、700nmを含んだ波長領域を跨って測定したのでは、光量子束密度と赤外領域の放射束密度(放射度)は不正確な値となる。
また、赤外領域の放射測定を行うとき、無制限に広い波長領域で放射測定するのは好ましくない。というのは、所定の波長より長波長の波長領域はスペクトルが葉中、葉上の水分等が影響して変動するからである。図7はマテバシイの表側と裏側の葉の反射と吸収スペクトル特性であるが、1000nmを越える波長領域において、何れも葉の水分のため光が吸収され、透過率が低下し、不安定な値を示している。このように透過光の放射測定を行うときには、含水率の影響が少ない安定した1000nm以下、すなわち700nm〜1000nm程度の波長領域が適当である。700nm〜1000nmのスペクトル特性はほぼ一定の傾向をもつ。これらはマテバシイに限ったことではなく、別の植物でも同様である。
ここで、単位の関係について詳細に説明する。光量子束密度の単位は既に述べたようにμmol/m/sである。これに対し、放射束密度(放射度)の単位はW/mである。
この光量子束密度は放射度に換算できる。このため光量子1個のエネルギーeがe=hc/λであることを使う。光量子束密度にこの光量子1個のエネルギーとアボガドロ数を積算すると、放射度(W/m)となる。つまり、放射度(W/m)=光量子束密度(μmol/m/s)×アボガドロ数(1/mol)×プランク定数(Js)×光速度(m/s)/波長(m)である。
この関係から、PARセンサ2は光合成光量子束密度に相当する光合成有効放射度(W/m)を出力することができ、IRセンサ3は700nm〜1000nmの赤外線放射度(W/m)を出力することができる。何れも絶対量である。そしてこの両者の対応関係を基にすれば、植生の中の所定地点において、植物のタイプ(木本,草本,落葉,常緑)に応じて葉がどの程度茂っているのかを評価することが可能になる。
また、本発明者は葉または植生を透過する透過光の光合成有効放射度と700nm〜1000nmの波長領域の赤外線放射度、あるいは、光合成光量子束密度と赤外線光量子束密度に関して次のような知見を得た。すなわち、PARセンサ2のPAR出力(光合成有効放射度あるいは光合成光量子束密度)とIRセンサ3のIR出力(赤外線放射度あるいは赤外線光量子束密度)の日照時間にわたって積算したそれぞれの積算値の比を算出すると、これは日積算値(あるいは平均することにより日中の平均値)を利用するものとなり、林床における放射強度比の時空間的変動要因が平均化され、天候への依存性がほとんどなくなってしまい、植生ごとにほぼ一定になる、という事実である。
これには次のような理由が考えられる。光合成有効光量子束密度として測定されたのは光合成に利用したその葉または葉群に特有な放射束密度(光合成有効放射度)であり、700nm〜1000nmで測定されたのもその葉または葉群の定まった所定領域の放射束密度(赤外線放射度)であるため、葉または葉群が決まればその比はこの植生林冠(キャノピー)にとって固有の値となって、ほぼ一定な値になるためと考えられる。その領域に存在する葉緑素がPARを吸収した分だけIRの割合が増え、この植生林冠がどれだけの割合で光合成有効放射(PAR)を吸収するか、一義的に決まるからである。両者は絶対量であり、その比は太陽の高さなどにあまり依存することなく、林冠による光量子の反射・吸収率だけに依存する。植物のタイプや葉の形態、葉の重なり状態,天候(雲の量)によってこの比は若干変化するが、葉によるIR/PAR比の変化に対してノイズ成分としては十分に小さい。
図8,図9は、広域放射度比を波長領域700nm〜1000nmの赤外線放射度または赤外線光量子束密度を示すIR出力の積算値(これをIRと表記する)/波長領域400nm〜700nmの光合成有効放射度または光合成光量子束密度を示すPAR出力の積算値(これをPARと表記する)としたとき、eを底としこの広域放射度比(IR/PAR)またはその関数を真数とする自然対数、すなわち広域放射度比の対数ln(IR/PAR)が、葉面積指数LAIと相関することを示す。図8は落葉広葉樹林における葉面積指数LAIと広域放射度比の対数ln(IR/PAR)の相関関係、図9は広域放射度比の一次関数の対数ln{(IR/PAR)−0.6}と葉面積指数LAIの相関関係を示す説明図である。
図8のように葉面積指数LAIと広域放射度比(IR/PAR)の対数ln(IR/PAR)の関係はほぼ直線となる。図8によればLAI=2.9285・ln(IR/PAR)+1.0942の関係式(1)で算出できる。言い換えれば、葉面積指数LAIは広域放射度比(IR/PAR)を真数とする対数関数の一次関数として表される。なお、定数“2.9285”、“1.0942”は各植生でそれぞれ若干異なった値をもつ。図1のメモリ6の換算式61に関係式(1)を登録して演算すればよい。このLAIとln(IR/PAR)の相関係数をRとしたとき相関係数Rは0.975、寄与率Rは0.9541であって、LAIとln(IR/PAR)間にはきわめて強い相関関係があることが分かる。従って、演算結果をこのまま正確な情報として利用することができる。葉量の季節変化などをとらえる場合にはこれをLAI情報として利用することができる。
ところで、全天の場合に(光拡散板の上方に覆いがないとき)、葉面積指数LAIはLAI=0であり、かつIR/PARがおおよそ0.8程度の値を示すため、図9で示すLAI=1.9635・ln{(IR/PAR)−0.6}+2.8279なる関係式(2)に置き換えることもできる。すなわち、LAIは広域放射度比(IR/PAR)の一次関数を真数とする対数関数の一次関数として表現される。図1のメモリ6の換算式61に関係式(2)を登録して演算を行う。この定数“1.9635”、“2.8279”は植生によってそれぞれ異なった値をもつ。この関係を利用することでLAIが小さい値をとる場合、(IR/PAR)のばらつきによりLAIがマイナスになったりする割合を減らせ、演算処理が容易になる。しかもこの式(2)による場合相関係数Rは0.985、寄与率Rは0.9703となり、上記関係式(1)より更に直線性を示し、強い相関関係が出現する。
なお、上述した関係式(1)(2)のLAIと(IR/PAR)の関係は、ある植生で得られた一例としての相関関係である。他の植生においても似た傾向が出現する可能性は高いが、LAIと(IR/PAR)が常にこの関数(1)(2)で記述されるということではない。つまりLAIは(IR/PAR)を使って、例えば、上述した対数関数の一次以上の冪関数や、あるいは単純に(IR/PAR)の冪関数などとして記述できる可能性がある。LAIと(IR/PAR)の関係は(1)(2)に限定されない。
以上説明した広域放射度比(IR/PAR)の対数ln(IR/PAR)と葉面積指数LAIの関係式(1),(2)を使えば対数ln(IR/PAR)から葉面積指数へきわめて簡単かつ正確に換算することが可能なことが分かる。これにより演算結果を葉面積指数LAIの正確な情報として利用することができ、葉面積指数LAIの推定精度を飛躍的に向上させることができる。この広域放射度比(IR/PAR)が本発明の比に相当するものである。この関係式(1)あるいは(2)で落葉広葉樹林のLAIの季節変化を示すと図10のようになる。図10によれば季節の移り変わりにより春から夏にかけて葉が展開し、LAIは6.5程度まで増加するが、秋には紅葉、落葉し、LAIは0近くになることが分かる。
ところで、実施例1の光学的葉面積指数センサ1は広域放射度比(IR/PAR)を使った演算のほかに他の方式による演算をすることができる。既に上述したように、予め単位を揃えたIR出力とPAR出力とを関係づける植生ごとの検量線をメモリ6に保存しておき、演算部5に例えば図示しない放射度推定手段を設け、この検量線とPAR出力、例えば光合成有効放射度を基に検量線で関係づけられたIR出力、例えば赤外線放射度を求め、これらからPAR出力とIR出力の積算値を計算し、更にこれらを基にIR出力の積算値をPAR出力の積算値で割った広域放射度比に対応する葉面積指数を求めるのでもよい。
また、光学的葉面積指数センサ1を使って従来と同様に植生内と植生外において透過光の同時測定を行うことによって植生の波長領域別放射吸収・透過量を求めることができる。また、同時測定した両測定値を比較することによって、葉量、幹枝量を推定することもできる。このために演算部5にこれらの演算回路を設けることができる。すなわち、林内と林外で測定した場合、葉がなければ(林内PAR/林外PAR)/(林内IR/林外IR)≒1となる。これに対し葉が存在すると、その量に応じて、(林内PAR/林外PAR)/(林内IR/林外IR)<1となる。光学的葉面積指数センサ1で測定された林内PAR、林外PAR、林内IR、林外IRの値によって、このパラメータα=(林内PAR/林外PAR)/(林内IR/林外IR)を計算することによりαの関数であるLAIを求めることができる。なお、ここで林内PAR、林外PAR、林内IR、林外IRの何れもが積算値を示す。
また、このαの中に含まれるパラメータβ=(林内PAR/林外PAR)は(枝・幹+葉)による植生全体の被陰率を示すから、これを比較することによって、葉量、幹枝量を推定できる。比演算手段51以外にこのパラメータαやβによる演算を行う演算手段を設け、この演算手段によってLAIや被陰率を推定すればよい。さらに、αの関数としてLAIを演算する場合も、予めαと葉面積指数を関係づける検量線をメモリに保存しておき、この検量線と林内PAR、林外PARの出力の林内林外比から葉面積指数を求めることができる。
以上説明したように本発明の実施例1によれば、400nmから700nmまでの光合成有効放射域放射センサと、700nmから1000nmまでの赤外線域放射センサを組み合わせて、地上から上方の植生林冠の量的、質的な情報である葉面積指数を測定することができる。
また、Siホトダイオードを利用したブロードバンド測定を行って、400nmから1000nmを2分割してそれぞれで放射量を測定するので、放射量の比だけでなく、放射量の絶対値を得ることができ、森林内と新林外の同時測定を行うことによって植生の波長領域別放射吸収・透過量を求めることができる。絶対量であるため、森林内と森林外の測定値を比較することによって、葉量、幹枝量を推定することができる。
光合成有効放射域放射センサと赤外線域放射センサのペアを用いて植生を構成する樹種に応じた検量線をあらかじめ作成する場合、検量線を利用することにより現場では赤外域放射センサを用いる必要がなく、あるいは現場に赤外域放射センサを設置することなく、葉面積指数を確定することができる。検量線のデータはあらかじめメモリに保存しておき、参照する。
本発明の光学的植生指数センサは、入角特性を狭角に設定するのではなく、入角特性を広角に設定しているため、出力が大きく、高感度である。また、反射光ではなく、透過光を利用しているため、植生内での光の散乱、反射などの平均的な影響を含んだ植生全体の性質を反映する。
さらに、衛星観測データを利用して計算されるNADI(TM3バンド630nm〜690nm、TM4バンド760nm〜900nm)の波長領域と良く対応するため、衛星リモートセンシングのグラウンドトゥルース(ground truth)用センサとして利用することができる。
以下、本発明の実施例2における光学的植生指数センサについて説明をする。実施例2の光学的植生指数センサは光合成有効放射吸収率センサである。図11は本発明の実施例2における光学的植生指数センサの全体の構成を示し、図12は広域放射度比(IR/PAR)と植生の光合成有効放射吸収率(fAPAR)の関係を示す。実施例2の光合成有効放射吸収率センサ201は実施例1で求めたLAIを使って演算を行うため、その構成は実施例1の光学的葉面積指数センサ1の構成と重複する。従って、以下実施例2においても図2〜図10を参照することとし、実施例1の構成と実施例2の構成とで同一符号は同一の構成を示すものとし、この説明は実施例2では省略する。
光合成有効放射吸収率(fAPAR)は、植生の光合成器官によって吸収された光合成有効放射(PAR)の吸収前後の比率を示す指標値のことである。例えば、林冠上のPARが2000μmol/m/sで同時刻の林床のPARが50μmol/m/sであれば、fAPARは0.975となる。
実施例1からも分かるように、本発明の光学的植生指数センサは、葉緑素がPARを吸収した分だけIRの割合が増えるという性質を利用するセンサである。従って、植生林冠が決まれば葉緑素の量が決まり、植生林冠ごとに光学的にどれだけの割合で光合成有効放射(PAR)を吸収しているのか、ということが推定できる。そして、例えば地球温暖化の原因でもある二酸化炭素を吸収するグローバルな測定指標など、fAPARの方が重要な指標になる場合がある。こうした理由から光合成有効放射吸収率(fAPAR)を光学的に測定できる光合成有効放射吸収率センサ201が望まれている。
図11に示すように光合成有効放射吸収率センサ201には、図1〜図3と同様のPARセンサ2、IRセンサ3、演算部5、メモリ6が設けられる。これらの詳細構造は以下説明する所定の構成を除いて基本的に実施例1と同様のものである。その説明は実施例1に譲る。図11に示すように演算部5には、LAIを算出する比演算手段51、葉面積指数換算手段52、積算手段53の構成のほかに、光合成有効放射吸収率を計算するfAPAR算出手段54が設けられている。また、メモリ6には、LAIを基にfAPARを算出するためのfAPAR換算式63が登録されている。
図12はLAIのパラメータである(IR/PAR)と光合成有効放射吸収率(fAPAR)の相関関係を示す。両対数グラフにおいて両者は直線関係を示す。(1−fAPAR)と(IR/PAR)の相関係数Rは0.98、寄与率R2は0.96であって、fAPARとln(IR/PAR)間にはきわめて強い相関関係があることが分かる。例えばk〜kを定数として両者の関数形を示すと、fAPAR換算式63(図11参照)はfAPAR=k・ln[k・LAI]+kなどのような形で表現できる。LAIはfAPARを得るための指標となり得る。なお、これに関係する文献として、Monsi M,Saeki T,「 Uber den Lichtfaktor in den Pflanzengesellschaften und seine Bedeutung fur die Stoffproduktion」,Japanese Journal of Botany ,1953,vol.14,22-52などがある。
なお、fAPARは植生上部で測定されたPAR量と林床で測定されたPAR量の比を1から引いたものであるから、PARセンサ2を使って直接この2つのPAR量を測定し、比をとってこれを演算することができる。しかし、この直接測定を行うには、植生内外で同時に測定することが必要で、連続して安定した放射測定を行うことはより難しい。この点、実施例2の光合成有効放射吸収率センサ201はこの困難を解消する。
そして、fAPAR=1−(林床でのPAR量)/(植生上部のPAR量)という関係があるから、この関係を利用すると、ある植生に対してfAPARとPARとの検量線を求めておけば、植生内でのPARを測定することにより、植生上部、すなわち植生外のPARを簡単に推定することができる。このため図11において、予め単位を揃えたIR出力とPAR出力とを関係づける植生ごとの検量線をメモリ6に保存しておき、演算部5に図示しない放射度推定手段を設け、この検量線とPAR出力(例えば光合成有効放射度)を基に検量線によって関係づけられたIR出力(例えば赤外線放射度)を求め、これらからPAR出力とIR出力の積算値を計算し、更にこれを基にIR出力の積算値をPAR出力の積算値で割った広域放射度比に対応するfAPARを求める。これにより検量線を利用した光合成有効放射吸収率センサを得る。そして、さらにこのセンサのfAPARを基にすると、林外のPARを換算により推定することができる。そして、林外のPARが推定できれば、林内を測定しながら外界の日射の放射度を推定できる。すなわち、日射計の機能ももたせることができる。
このように実施例2によれば、林内で連続して安定した放射測定を行うことができ、植生内外での同時測定無しで、安価で小型、軽量で出力が大きく、ブロードバンドで光合成有効放射吸収率の測定が行える光合成有効放射吸収率センサを提供することができる。
実施例2の光合成有効放射吸収率センサは、入角特性を広角に設定しているため出力が大きく、高感度である。また、反射光ではなく、透過光を利用しているため、植生内での光の散乱、反射などの平均的な影響を含んだ植生全体の性質を反映することができる。
本発明は光学的葉面積指数センサや光合成有効放射吸収率センサなどの広域放射度比(IR/PAR)を用いた光学的植生指数センサに適用できる。
1 光学的葉面積指数センサ
2 光合成有効放射域放射センサ(PARセンサ)
3 赤外線域放射センサ(IRセンサ)
5 演算部
6 メモリ
7 コンピュータ
11,12 受光部
13 UV/IRカットフィルタ
15 青色拡張フィルタ
18,19 筐体
20,21 光拡散板
29,30 基板
31,33 埋め込みコネクタ
32,34 ケーブルコネクタ
41,42 出力ケーブル
51 比演算手段
52 葉面積指数換算手段
53 積算手段
54 fAPAR算出手段
61 換算式
62 換算テーブル
63 fAPAR換算式

Claims (5)

  1. 葉又は葉群を透過した透過放射を受光すると、400nm〜700nmの可視放射領域の放射に対して補正フィルタにより光量子束密度で測定するための分光特性の補正を行い、補正後の放射を受光部で光電変換することによって光合成有効放射度または光合成光量子束密度の何れかを示すPAR出力として出力する第1放射センサと、
    受光した放射に対してバンドパスフィルタにより700nm〜1000nmの赤外放射領域のみの放射を取出し、この放射を受光部で光電変換することによって前記PAR出力と共通する単位の放射度または光量子束密度の何れかを示すIR出力を出力できる第2放射センサと、
    前記PAR出力と前記IR出力を時間と共に積算し、前記IR出力の積算値を前記PAR出力の積算値で割って比を算出し、該比に対応した葉面積指数を求める演算部を備えたことを特徴とする光学的植生指数センサ。
  2. 前記第1放射センサと前記第2放射センサの受光面には放射をコサイン補正できる光拡散板が設けられ、入射放射の入角特性が広角に設定されたことを特徴とする請求項1の光学的植生指数センサ。
  3. 前記演算部が、前記PAR出力と前記IR出力をそれぞれ積算する積算手段と、積算した前記IR出力の積算値を前記PAR出力の積算値で割って比を算出する比演算手段と、前記比に基づいてこれと対応する葉面積指数を求める葉面積指数換算手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の光学的植生指数センサ。
  4. 前記葉面積指数が前記比またはその関数を真数とする対数関数の一次関数であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載された光学的植生指数センサ。
  5. 葉又は葉群を透過した透過放射を受光すると、400nm〜700nmの可視放射領域の放射に対して補正フィルタにより光量子束密度で測定するための分光特性の補正を行い、補正後の放射を受光部で光電変換することによって光合成有効放射度または光合成光量子束密度の何れかを示すPAR出力として出力する第1放射センサと、
    受光した放射に対してバンドパスフィルタにより700nm〜1000nmの赤外放射領域のみの放射を取出し、この放射を受光部で光電変換することによって前記PAR出力と共通する単位の放射度または光量子束密度の何れかを示すIR出力を出力できる第2放射センサと、
    前記PAR出力と前記IR出力を時間と共に積算し、前記IR出力の積算値を前記PAR出力の積算値で割って比を算出することにより該比に対応した光合成有効放射吸収率に換算する演算部を備えたことを特徴とする光学的植生指数センサ。
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