JP2011133249A - 多層膜の膜厚測定方法およびその装置 - Google Patents

多層膜の膜厚測定方法およびその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】多層膜に光を照射して、その反射光のパワースペクトルのピーク位置から多層膜を構成する層の膜厚を算出する膜厚測定装置では、膜厚が同程度の層が複数あると、ピークが重なって層を同定できないという課題があった。本発明は、膜厚が同程度の層が複数あっても各層の膜厚を測定できる多層膜の膜厚測定方法及び装置を提供することを目的にする。
【解決手段】膜厚を測定する多層膜と一定距離離隔して光を反射するミラー板を設け、各層の境界およびミラー板で反射された反射光から膜厚を算出するようにした。多層膜とミラー板の距離を多層膜の厚さより厚くすることにより、ミラー板で反射されたピークと反射されないピークが分離でき、正確に膜厚を測定できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、多層膜の膜厚を測定する方法および装置に関し、概略厚さが同じ層が複数あっても、各層の厚さを同定することができる多層膜の膜厚測定方法および装置に関するものである。
図8に、光干渉式の膜厚測定装置の構成を示す。図8において、光源10の出力光は光ファイバプローブ11を経由して膜厚を測定する多層膜12に入射される。多層膜12の各層の境界から反射された光は分光器13に入力される。分光器13は、入力された反射光を分光し、この分光した光を電気信号に変換して反射分光スペクトルを得、この反射分光スペクトルを演算処理部14に出力する。
演算処理部14は、入力された反射分光スペクトルのうち、所定の波長範囲の信号を選択して、この選択した反射分光スペクトルを等波長間隔に並べ直して波数域反射分光スペクトルを演算する。そして、この波数域反射分光スペクトルにフーリエ変換を施して膜厚スペクトル(パワースペクトル)を求めて、この膜厚スペクトルのピーク位置から光学膜厚を演算し、この光学膜厚と屈折率から物理膜厚を算出する。
図9に、膜厚スペクトルの一例を示す。なお、測定する多層膜12はA、B、Cの3層構造を有し、A、B、Cの各層の概略膜厚をそれぞれ6μm、11μm、6μmとする。
光は各層の境界、および入射面と反対側の面で反射されるので、A、Cの各層単独、A+B層、C+B層、A+B+C層に対応するピークが得られる。多層膜の構成、および各層の概略膜厚から、パワースペクトルのピークと測定した膜厚の関係を同定する。
A、B、Cの各層の物理膜厚がそれぞれ6μm、11μm、6μmなので、ピーク20は膜厚が一番薄いA層およびC層単独の膜厚に対応するピーク、ピーク22は膜厚が一番厚いA+B+C層に対応するピークと同定できる。また、ピーク21はA+B層およびC+B層に対応するピークと同定できる。これらの関係、およびピークの位置から、A〜C層の正確な膜厚を算出する。
しかし、A層とC層の膜厚がほぼ同じなので、このような測定手法ではA層、あるいはC層単独のピークが重なり、各層がどの順番で並んでいるかを同定することが困難であるという課題があった。また、膜厚が近接していると、どのピークがどの層に対応するかを同定することが困難になるという課題もあった。実際に製造される多層膜は各層の膜厚が同程度、あるいは表面と裏面に接する層(A、C層)の膜厚が同程度のことが多いので、各層の正確な膜厚および層の順番を測定することが難しい場合が多々発生する。
特許文献1には、このような課題を解決して、各層の膜厚が同程度であっても各層の膜厚を正確に測定することができる膜厚測定装置の発明が記載されている。特許文献1では、被測定フィルムに対する透過率が異なる複数の波長帯域を設定し、この設定した波長帯域のパワースペクトル(膜厚スペクトル)を演算し、これらのパワースペクトルのピーク位置から膜厚を求める。
透過率が低い波長帯域のパワースペクトルから表面付近の層の膜厚を求め、透過率が高い波長帯域のパワースペクトルから多層膜全体の膜厚を求める。透過率が低い波長帯域では光の入射面から遠い層で反射された光は吸収されて戻ってこないので、同程度の膜厚の層があっても影響を受けずに測定することができる。多層膜の両面から測定することで、多層の測定ができる。
なお、膜厚測定装置の先行技術として、特許文献1の他に特許文献2〜6がある。特許文献2は微小なセル領域に形成された薄膜の膜厚を測定する際に、撮影用光源で測定位置の近傍を撮影した像から位置ずれを計算して位置修正を行った後に微小スポットの赤外光を照射し、その反射光から膜厚を測定するものである。
特許文献3は、干渉計において、光の経路に偏光ビームスプリッタ、ファラデーローテータ、立方体型ハーフミラー、波面変調器をこの順に設け、立方体型ハーフミラーで反射された光の経路に沿ってチューブレンズ、結像レンズ、カメラを設ける。測定物の全領域の波面を一度に測定できるという効果がある。
特許文献4は、半導体ウエハのための薄膜厚測定装置であって、異なる波長の集束された単色放射線で層の全開口領域を順次照射し、反射光を受信してパターン整合メリット関数を用いて基準特性と受信した放射線の特性を比較して、異なる厚さについてのメリット関数の表を行い、この評価に基づいて全開口領域の層の厚さに対応した出力を得るものである。
特許文献5は、ブロッキングプレートが内蔵されたマイケルソン干渉モジュールと可視光線分光領域範囲の注射が可能な音響光学変調フィルタを結合させた構造を取ることにより、形状と厚さを独立して測定できるようにしたものである。
特許文献6は、被測定材料の層を変形させて、この変形した材料層の前面と後面から反射されるように、材料層の前部表面に単色光を照射し、材料層の反射光と既知の厚さに対応する基準特徴を比較して、材料層の厚さを測定するものである。
特開2008−292473号公報 特開2006−184060号公報 特開2006−153573号公報 特許2788158号公報 特開2005−164556号公報 特開平6−42923号公報
しかしながら、このような膜厚測定装置には次のような課題があった。
前述したように、図8の膜厚測定装置は、概略厚さが同じ層が複数あると、これらの層に対応する膜厚スペクトルのピークが重なって、ピークと層の関係を同定することが難しくなり、層の順番および正確な膜厚を測定することができないという課題があった。
特許文献1に記載された膜厚測定装置は概略膜厚が同じ層が複数あっても各層の膜厚を正確に測定することができる。しかし、実際には適切な透過率となる波長帯域が一般的な分光器では測定できない領域になり、また帯域が狭すぎて長い周期の干渉縞が1周期も測定できないために十分な分解能が得られない場合がある。このため、測定対象が限られてしまうという課題があった。
特許文献2〜6に記載された発明はいずれも薄膜の膜厚を測定する装置に関するものであるが、前記の課題を解決するものではない。
本発明の目的は、概略厚さが同じ層が複数ある多層膜であっても、各層の膜厚および層の順番を同定することができる多層膜の膜厚測定方法およびその装置を実現することにある。
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
多層膜に光を照射し、この多層膜の反射光のパワースペクトルを演算して、このパワースペクトルのピークの位置から前記多層膜を構成する層の膜厚を算出する多層膜の膜厚測定方法において、
前記多層膜に光を反射するミラー板を近接させ、前記多層膜で反射された反射光、および前記多層膜を透過し、前記ミラー板で反射された反射光に起因するピークの位置から、前記多層膜を構成する層の膜厚を算出するようにしたものである。同程度の膜厚の層が複数あっても、各層の正確な膜厚を算出でき、かつ膜の順番を同定できる。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記ミラー板で反射された反射光に起因するピークの位置から前記多層膜の各層の膜厚範囲を算出し、前記多層膜で反射された反射光に起因するピークの位置から膜厚を算出し、これら算出した膜厚範囲と膜厚から、前記多層膜を構成する各層の膜厚を求めるようにしたものである。同程度の膜厚の層が複数あっても、各層の正確な膜厚を算出でき、かつ膜の順番を同定できる。
請求項3記載の発明は、
多層膜に光を照射し、この多層膜の反射光のパワースペクトルを演算して、このパワースペクトルのピークの位置から前記多層膜を構成する層の膜厚を算出する多層膜の膜厚測定装置において、
前記多層膜に光を照射する光照射部と、
前記多層膜に近接して、前記光照射部と反対側に配置され、入力された光を反射するミラー板と、
前記多層膜から反射された反射光、および前記多層膜を透過し、前記ミラー板で反射された反射光が入力され、入力された反射光から反射分光スペクトルを作成する分光器と、
前記分光器が作成した反射分光スペクトルが入力され、この反射分光スペクトルからパワースペクトルを演算して、このパワースペクトルのピーク位置から前記多層膜を構成する層の膜厚を算出する演算処理部と、
を具備したものである。同程度の膜厚の層が複数あっても、各層の正確な膜厚を算出でき、かつ膜の順番を同定できる。
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記演算処理部は、
前記ミラー板で反射された反射光に起因するピークの位置から前記多層膜の各層の膜厚範囲を算出し、前記多層膜で反射された反射光に起因するピークの位置から膜厚を算出し、これら算出した膜厚範囲と膜厚から、前記多層膜を構成する各層の膜厚を求めるようにしたものである。同程度の膜厚の層が複数あっても、各層の正確な膜厚を算出でき、かつ膜の順番を同定できる。
請求項5記載の発明は、請求項3若しくは請求項4に記載の発明において、
前記ミラー板はノズルを有し、このノズルから気体を吹き出させて、この気体によって前記ミラー板と前記多層膜の間の距離を一定に保つようにしたものである。被測定多層膜を固定できないオンライン測定に用いて好適である。
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1、2、3、4、および5の発明によれば、膜厚を測定する多層膜に近接して光を反射するミラー板を設置し、多層膜に光を照射して、多層膜からの反射光、および多層膜を透過してミラー板で反射した反射光のパワースペクトルのピーク位置から、多層膜を構成する層の膜厚および膜の順番を算出するようにした。
ミラー板からの反射光によってピークの数が増加するので、ピーク高さが高く、かつ重複していないピークを選択し、この選択したピークを用いて膜厚を算出できる。このため、膜厚が同程度の層が複数あっても、各層の膜厚および膜の順番を正確に測定できるという効果がある。
また、多層膜とミラー板の距離も独立して測定できるので、ミラー板がずれて多層膜との距離が変化しても、正確に膜厚および膜の順番を測定できるという効果もある。
また、ミラー板からの反射光に起因するピーク位置から各層の膜厚範囲を算出し、その他のピークから膜厚を算出して、これら膜厚範囲と膜厚から各層の膜厚を同定することにより、ミラー板が傾いてそのピークが低くなった場合でも、正確に膜厚および膜の順番を算出できるという効果もある。
さらに、ミラー板にノズルを設け、このノズルから気体を吹き出させて多層膜との間の距離を一定に保つようにすることにより、オンライン測定などで多層膜が動いても正確な測定が可能になるという効果もある。また、多層膜のばたつきを抑えることができるという効果もある。
本発明の一実施例を示した構成図である。 測定手順を説明するための表である。 本発明で得られるパワースペクトルである。 本発明の一実施例を示すフローチャートである。 図4フローチャートの動作を説明するための表である。 本発明の他の実施例を示す構成図である。 本発明の他の実施例を示す構成図である。 従来の膜厚測定装置の構成図である。 従来の膜厚測定装置で得られる膜厚スペクトルである。
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る多層膜の膜厚測定装置の一実施例を示した構成図である。なお、図8と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
図1において、30は演算処理部であり、分光器13が出力する反射分光スペクトルが入力される。演算処理部30は入力された反射分光スペクトルから多層膜12の各層の膜厚および層の順番を算出する。
31はミラー板であり、測定する多層膜12の下側、すなわち光ファイバプローブ11と反対側に、多層膜12と一定距離離して配置される。ミラー板31は入射した光を反射する。多層膜12の下面(光ファイバプローブ11と反対の面)とミラー板31間の距離Tは、多層膜12の膜厚より若干大きくなるように調整される。
光源10の出力光は光ファイバプローブ11を経由して膜厚を測定する多層膜12に照射される。多層膜12を構成する各層の境界および裏面で反射された反射光、および多層膜12を透過してミラー板31で反射され、再度多層膜12を透過した反射光は、光ファイバプローブ11を経由して分光器13に入力される。光源10、および光ファイバプローブ11は光照射部に相当する。
分光器13は、入力された反射光を分光し、この分光した光を電気信号に変換して反射分光スペクトルを得、この反射分光スペクトルを演算処理部30に出力する。
演算処理部30は、入力された反射分光スペクトルのうち、所定の波長範囲の信号を選択して、選択した反射分光スペクトルを等波長間隔に並べ直して波数域反射分光スペクトルを演算する。そして、この波数域反射分光スペクトルにフーリエ変換を施してパワースペクトル(膜厚スペクトル)を求めて、このパワースペクトルのピーク位置から各層の膜厚および膜の順番を算出する。
多層膜12はA〜Cの3つの層で構成され、これらの層の概略膜厚をそれぞれ6、11、6μmとする。また、多層膜12の下面とミラー板31との間は空気で満たされており、1つの層と考えることができる。この層をT層とし、その概略厚さを50μmとする。すなわち、多層膜12とミラー板31は、50μm離隔して配置されている。
多層膜12とT層を合わせて、新たな多層膜と考えることができる。演算処理部30が演算するパワースペクトルには、A〜C層とT層、およびこれらの層を合成した層に対応するピークが現れる。
図2(A)に検出される可能性があるパワースペクトルのピークの表を示す。図2(A)において、左列は層の構成である。A〜C、T層はそれぞれA〜C、T層の膜厚のみに関係するピークであり、A+B、B+C、C+T層はそれぞれA層とB層、B層とC層、C層とT層の膜厚に関係するピークである。同様に、A+B+C層、B+C+T層、A+B+C+T層は、それぞれA層とB層とC層、B層とC層とT層、A層とB層とC層とT層の膜厚に関係するピークである。
中列は概略膜厚であり、関係する層の概略膜厚を加算した値である。右列は予想される信号強度であり、多層膜の構成、膜厚、透過率、隣接する層との屈折率差などから推定する。
図2(B)は表(A)から測定可能なピーク(信号強度が二重丸印のピーク)を抜き出して膜厚順に並べたものである。パワースペクトルのピークは、この表の順に表れる。ピークが5つあるので、A〜CおよびT層の膜厚を個別に求めることができる。
図3に、測定したパワースペクトルの例を示す。このパワースペクトルには40〜46の7個のピークが存在する。ピーク40〜42はT層の膜厚50μmより薄く、ピーク43〜46はT層の膜厚50μmより厚いので、ピーク40〜42はT層が関係しないピーク、ピーク43〜46はT層が関係するピークであると同定できる。なお、ピーク40〜42は図9のピーク20〜22に対応するものであるが、図9に比べて、その高さは低くなる場合がある。
図2(A)の表から、ピーク40はA層のみ、C層のみに関係するピークが重複したピーク、ピーク41はA+B層に関係するピークとB+C層に関係するピークが重複したピーク、42はA+B+C層に関係するピークであると同定できる。また、図2(B)表の膜厚の順番から、ピーク43〜46はそれぞれT層、C+T層、B+C+T層、A+B+C+T層に関係するピークであると同定できる。
ピーク42〜46から算出した膜厚をそれぞれT42〜T46とすると、
T42=A〜C層の膜厚の和
T43=T層の膜厚
T44=C層とT層の膜厚の和
T45=B層、C層、T層の膜厚の和
T46=A〜C層、T層の膜厚の和
になる。
この関係から、
A層の膜厚=A+B+C+T層の膜厚−B+C+T層の膜厚=T46−T45
B層の膜厚=B+C+T層の膜厚−C+T層の膜厚=T45−T44
C層の膜厚=C+T層の膜厚−T層の膜厚=T44−T43
T層の膜厚=T43
となり、A〜C層およびT層の膜厚を個別に算出することができる。また、上式で算出したA〜C層の和とT42を比較することにより、測定の確かさを確認できる。
A層とC層の概略膜厚は同じであるが、A層はT46とT45から、C層はT44とT43から得られるので、これら2つの層を分離して測定することができる。また、T層(空気層)の膜厚も測定できるので、ミラー板31がずれても正確に膜厚を同定することができる。
従来の膜厚測定装置では、膜厚が同程度の層が複数あるとピークが重なり、どの測定値がどの層に対応するかの同定が困難な場合があった。このため、人手を介して膜厚測定を行わなければならなかったので、測定が煩雑になり、かつ時間および労力がかかるという課題があった。
この実施例では、ミラー板を用いることによりピークの数を増加させることができるので、同程度の膜厚の層が複数あっても、重複したピークを用いないで膜厚を算出することができる。このため、測定値の層の関係を正確に同定できる。また、人手を介さない自動測定が可能になるので、オフライン測定では測定時間を短縮でき、かつ省力化、測定の効率化ができる。また、オンライン測定では完全な自動制御が可能になり、生産性の向上に寄与できる。
また、光学系を機械的に移動させて層と測定値との関係を同定することが行われているが、機械の移動時間のために測定時間が長くなるという欠点がある。また、装置が複雑になるので、故障も多発する。
本実施例では光学系の移動を必要としないので、測定時間を短縮できる。特に、機械的な故障がなくなるので、オンライン測定では保全性を向上させることができる。また、多層膜12とミラー板31間の距離が変化しても測定には支障がないので、検出系を移動させながら測定するオンライン測定では、特にメリットが大きい。
なお、この実施例ではT層の厚さ(多層膜12とミラー板31の距離)を多層膜12の厚さよりも厚くするようにしたが、ミラー板31を多層膜12により近接させて、多層膜12の厚さより薄くしてもよい。但し、T層の厚さを多層膜12の厚さより厚くすると、ピークの同定が簡単になる。
被測定多層膜12とミラー板31が平行でないとT層に関係する干渉縞が弱くなり、ピークが低くなって正確な膜厚測定が困難になる。連続してフィルムを製造する製造プロセスでオンライン測定を行うときは、被測定フィルムが動いているので、このような状況が起きやすくなる。
このようなときは、パワースペクトルのT層(空気層)に関係するピークから膜厚の範囲を算出し、T層に関係しないピークを用いて層の正確な膜厚を算出して、これら膜厚範囲と正確な膜厚から、各層の膜厚を求めればよい。このようにすると、概略膜厚が同じ層が複数あっても、各層を分離して測定できる。図4にフローチャートを示す。
図4において、工程(P4−1)でT層に関係するピークの位置から各層の膜厚を算出し、これらの測定値の平均値と分散σを計算する。ピークが多数表れるので、これらのピークを組み合わせると、同じ層の厚さの測定値が複数個得られる。また、複数回測定し、これらの測定値の平均値、分散σを算出してもよい。
計算の手順は、図2、図3で説明した手順と同じ手順で行う。T層に関係するピークの高さが低いので、膜厚を正確に算出することはできないが、層を同定するだけなので、測定精度は悪くてもよい。
図3で説明したように、T層(空気層)の膜厚は多層膜12の膜厚よりも厚くなるようにミラー板31の位置を選定しているので、T層が関係しているピークであるか、関係していないピークであるかを簡単に知ることができる。
次に、工程(P4−2)で算出した平均値と分散σから、各層の膜厚範囲を算出する。膜厚範囲は、例えば膜厚範囲を(平均値±3σ)とする。
次に、工程(4−3)で、T層に関係しないピークの位置から、T層を除く層の正確な膜厚を算出する。算出手順はT層に含む層の場合と同じである。T層が関係していないので、ミラー板31が傾いていてもピークの高さは減じることはなく、正確な膜厚を算出できる。同じ概略膜厚の層が複数あるとピークが重なるが、ピークを分離する処理を施すことにより、各層の膜厚を算出できる。
そして、工程(P4−4)で算出した膜厚範囲と正確な膜厚から、各層の正確な膜厚と順番を決定する。
次に、具体例を用いて図4フローチャートを説明する。なお、被測定多層膜はA〜Cの3層で構成されているとする。図5(A)はT層に含むピークから算出した膜厚の平均値と分散σ、膜厚範囲を示す表である。
図5(A)では第1〜3層の3つの層がこの順番に並んでおり、膜厚平均値はそれぞれ5.5、10.1、6.2であり、分散の3倍である3σはそれぞれ0.3、0.15、0.4である。膜厚範囲は(平均値±3σ)で計算され、それぞれ5.2〜5.8、9.95〜10.25、5.8〜6.6となる。
図5(B)はT層に関係しないピークから算出した膜厚である。層Aの膜厚は5.6なので、表(A)の膜厚範囲から第1層であることがわかる。同様に、層Bは第2層、層Cは第3層であることが同定される。従って、測定した多層膜は膜厚5.6μmの層A、膜厚10.0μmの層B、膜厚5.9μmの層Cがこの順に並んだ膜であることが同定できる。
従来は、A層とC層が関係するピークが重なっている図9のピーク20を分離して、それぞれの層の膜厚を正確に測定しても、どちらの層の膜厚であるかを同定することができなかった。この実施例では、T層に関係するピークから膜厚範囲を算出することにより、どの層の膜厚であるかを同定することができる。
なお、この実施例では膜厚範囲を(平均値±3σ)で計算したが、測定値が近接している場合は、(平均値±2σ)あるいはその他の計算式で計算してもよい。この場合、スイッチなどを用いてどの計算式を用いるかを切り替えられるようにすると、測定環境に応じて最適な膜厚範囲を求めることができる。
図6にミラー板の他の実施例を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図6において、50はミラー板であり、ミラー部51、ノズル52、およびミラー部51、ノズル52が取り付けられている基材53で構成される。
ミラー部51は多層膜12を透過した光を反射する板であり、基材53に埋め込まれている。また、ノズル52から空気が多層膜12に向かって吹き出されている。この空気は、図示しない空気源から供給される。
吹き出した空気はミラー板50を浮上させる。ベルヌーイの定理によってミラー板50と多層膜12の間の距離は一定値に保たれる。ノズル52から吹き出す空気圧を一定に保つことにより、ミラー板50と多層膜12間の距離を、数十〜数百μmのオーダーで一定に保つことができる。
また、ノズル52から吹き出す空気圧を調整することにより、ミラー板50と多層膜12間の距離を変化させることができる。この構成によると、多層膜12とミラー板50の間の距離を自動的に一定に保つことができるので、オンラインの測定に用いると効果が大きい。また、ミラー板50を固定しておくと、多層膜12のばたつきを抑えることができる。なお、ノズル52から吹き出す気体は空気に限られることはなく、窒素など他の気体でもよい。
図7に更に他の実施例を示す。この実施例は、オフラインの測定に用いて好適な構成である。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
図7において、60はミラー板、61はミラー板60に固定されたミラー部、62は透明な粘着層である。多層膜12とミラー板60の間に透明な粘着層を挟むことにより、多層膜12とミラー板60間の距離を一定に保ち、かつ多層膜12をミラー板60に固定することができる。透明粘着層62の代わりに、エアチャックを用いて多層膜12を固定するようにしてもよい。
なお、ミラー板31、ミラー部51、61は入射した光を反射するものであればよいが、ガラス製の鏡よりも、ステンレスミラーのような表面を鏡面に仕上げた金属板の方が好適である。ガラスのように層構造を持つ物質は、この層構造が追加された層になるのでパワースペクトルのピーク構造が複雑になるが、金属板は表面で反射するので、このようなことが発生しないためである。なお、表面で光を反射するものであれば、金属板でなくてもよい。
10 光源
11 光ファイバプローブ
12 多層膜
13 分光器
30 演算処理部
31、50、60 ミラー板
40〜46 パワースペクトルのピーク
51、61 ミラー部
52 ノズル
53 基材
62 透明粘着層

Claims (5)

  1. 多層膜に光を照射し、この多層膜の反射光のパワースペクトルを演算して、このパワースペクトルのピークの位置から前記多層膜を構成する層の膜厚を算出する多層膜の膜厚測定方法において、
    前記多層膜に光を反射するミラー板を近接させ、前記多層膜で反射された反射光、および前記多層膜を透過し、前記ミラー板で反射された反射光に起因するピークの位置から、前記多層膜を構成する層の膜厚を算出するようにしたことを特徴とする多層膜の膜厚測定方法。
  2. 前記ミラー板で反射された反射光に起因するピークの位置から前記多層膜の各層の膜厚範囲を算出し、前記多層膜で反射された反射光に起因するピークの位置から膜厚を算出し、これら算出した膜厚範囲と膜厚から、前記多層膜を構成する各層の膜厚を求めるようにしたことを特徴とする請求項1記載の多層膜の膜厚測定方法。
  3. 多層膜に光を照射し、この多層膜の反射光のパワースペクトルを演算して、このパワースペクトルのピークの位置から前記多層膜を構成する層の膜厚を算出する多層膜の膜厚測定装置において、
    前記多層膜に光を照射する光照射部と、
    前記多層膜に近接して、前記光照射部と反対側に配置され、入力された光を反射するミラー板と、
    前記多層膜から反射された反射光、および前記多層膜を透過し、前記ミラー板で反射された反射光が入力され、入力された反射光から反射分光スペクトルを作成する分光器と、
    前記分光器が作成した反射分光スペクトルが入力され、この反射分光スペクトルからパワースペクトルを演算して、このパワースペクトルのピーク位置から前記多層膜を構成する層の膜厚を算出する演算処理部と、
    を具備したことを特徴とする多層膜の膜厚測定装置。
  4. 前記演算処理部は、
    前記ミラー板で反射された反射光に起因するピークの位置から前記多層膜の各層の膜厚範囲を算出し、前記多層膜で反射された反射光に起因するピークの位置から膜厚を算出し、これら算出した膜厚範囲と膜厚から、前記多層膜を構成する各層の膜厚を求めるようにしたことを特徴とする請求項3記載の多層膜の膜厚測定装置。
  5. 前記ミラー板はノズルを有し、このノズルから気体を吹き出させて、この気体によって前記ミラー板と前記多層膜の間の距離を一定に保つようにしたことを特徴とする請求項3若しくは請求項4記載の多層膜の膜厚測定装置。
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