JP2011132578A - 鉱石を用いた粒鉄製造方法 - Google Patents

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大樹 藤原
Koichi Nushishiro
晃一 主代
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Hiroyuki Hirohane
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Abstract

【課題】低品位鉱石の有効利用を可能とする、製造効率良く還元鉄である粒鉄を製造可能な、鉱石を用いた粒鉄製造方法を提供すること。
【解決手段】CaOおよび酸化鉄を除く酸化物成分を合計で8mass%以上、鉄を5mass%以上含有する鉱石と、炭素系固体還元材と、造滓材とを、混合した混合原料を移動型炉床上に積載し、該炉床上部から熱供給して前記混合原料を還元し、更に溶融させて、還元鉄である粒鉄を製造するに際し、前記造滓材の少なくとも一部としてNa及び/またはKの化合物を使用し、該化合物の使用量が前記造滓材中の10mass%以上であることを特徴とする鉱石を用いた粒鉄製造方法を用いる。CaO、酸化鉄に加えて、移動型炉床での加熱中に揮発する酸化物を、酸化物成分の合計量から除くこと、造滓材として使用するNaの化合物としてNa2CO3を、Kの化合物としてKCO3を使用することが好ましい。
【選択図】図2

Description

本発明は、加熱炉内で炉床を水平方向に移動する過程で炉床上の積載物の昇温を行う、移動型炉床炉を用いて鉄含有物の還元を行う方法を用いて、低品位の鉄鉱石から還元鉄である粒鉄を製造する方法に関する。
粗鋼生産法は、鉄鉱石より銑鉄を生産して鋼とする高炉−転炉法と、スクラップを溶解して精錬する電炉法とに大別される。中国などの新興国の台頭により、全世界的な粗鋼生産量は急激に増加しており、特に高炉−転炉法で使用する鉄鉱石の需給は逼迫し、価格が高騰すると共に、良質な鉄鉱石が入手困難となりつつあるのが今日の鉄資源の状況である。
また上記の他に、移動型炉床炉を用いた還元鉄の製造方法も知られている。移動型炉床炉法は、還元鉄に代表される還元金属を製造するプロセスのひとつであり、水平方向に移動する炉床に、鉄鉱石と固体還元材等を積載し、上方から輻射伝熱によって加熱して鉄鉱石を還元し、炉床上でこの還元生成物を溶融し、スラグとメタルを分離して還元鉄を製造するものである(例えば、特許文献1、2参照。)。
この移動型炉床炉を用いて還元鉄を製造するプロセスは高炉プロセスと比較して、使用する鉄鉱石の成分や粒度に対する制約は小さいが、酸化鉄以外の酸化物を多量に含有する低品質の鉄鉱石(低品位鉱石)を使用する場合、酸化鉄に対する他の酸化物の割合が高くなり、スラグとメタルの分離が遅延し還元鉄の製造効率を低下させる原因となる。
特開平11−335712号公報 特開平11−172312号公報
上記のように、移動型炉床炉で低品位鉱石を使用し、還元鉄を製造する場合、反応によりスラグ融液が多量に生成し、これがメタルとスラグの分離を妨げ、還元鉄の製造効率を低下させる原因となるという問題がある。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、低品位鉱石の有効利用を可能とする、製造効率良く還元鉄である粒鉄を製造可能な、鉱石を用いた粒鉄製造方法を提供することにある。
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)CaOおよび酸化鉄を除く酸化物成分を合計で8mass%以上、鉄を5mass%以上含有する鉱石と、炭素系固体還元材と、造滓材とを、混合した混合原料を移動型炉床上に積載し、該炉床上部から熱供給して前記混合原料を還元し、更に溶融させて、還元鉄である粒鉄を製造するに際し、前記造滓材の少なくとも一部としてNa及び/またはKの化合物を使用し、該化合物の使用量が前記造滓材中の10mass%以上であることを特徴とする鉱石を用いた粒鉄製造方法。
(2)CaO、酸化鉄に加えて、移動型炉床での加熱中に揮発する酸化物を、酸化物成分の合計量から除くことを特徴とする、(1)に記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
(3)造滓材として使用するNaの化合物としてNa2CO3を、Kの化合物としてKCO3を使用することを特徴とする、(1)または(2)に記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
(4)炉床上に炭材を積載した上に、混合原料を積層することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
(5)混合原料を塊成化して、炉床上に積載することを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
(6)混合原料を1450℃以上で加熱することを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
本発明によれば、低品位鉱石を鉄原料として使用した場合の還元鉄製造効率を向上させ、含有する鉄分を有効に利用することができる。
本発明で用いる回転炉床炉の一実施形態を示す概略図。 鉱石中のCaOおよび酸化鉄以外の酸化物の含有量と銑滓分離完了時間との関係を示すグラフ。 メタル質量に対するスラグ質量と粒鉄の製造速度との関係を示すグラフ。 加熱時間と混合原料の還元率との関係を示すグラフ。 本発明で用いる設備フローの一実施形態を示す概略図。 造滓材中の炭酸ナトリウムの含有量と粒鉄の製造速度との関係を示すグラフ。
本発明者らは低品位鉱石を使用し、含有鉄分を有効に利用するために、移動型炉床炉を用いることを考えた。移動型炉床炉を用いた粒鉄の製造方法は還元鉄を製造するプロセスのひとつであり、水平方向に移動する炉床に、鉄分含有鉱石と固体還元材等を積載し、上方から輻射伝熱によって加熱して鉄分含有鉱石を還元し、炉床上でこの還元生成物を溶融し、スラグとメタルを分離して還元鉄である粒鉄を製造するものである。
この移動型炉床炉は、加熱炉の炉床が水平に移動する過程で加熱を施す炉であり、水平に移動する炉床とは、図1に示すような回転移動の形態を有するのが代表的であり、この形態の移動型炉床炉は、特に回転炉床炉と呼ばれている。本発明ではこのような移動型炉床炉、特に回転炉床炉を用いて低品位鉱石を還元・溶融処理して還元鉄である粒鉄を製造するものである。以下において、移動型炉床炉として回転炉床炉を用いる場合について本発明を説明する。
なお、本発明で用いる低品位鉱石とは、通常の高炉原料として利用される鉄鉱石と比較して、CaOおよび酸化鉄以外の酸化物の含有量が高く、CaOおよび酸化鉄以外の酸化物を8mass%以上、鉄を5mass%以上含有する鉄鉱石である。本発明で用いる低品位鉱石の、CaOおよび酸化鉄以外の酸化物含有量、および鉄含有量の上限に制約はない。ただし、粒鉄の製造費用の観点から鉄を40mass%以上含有しているものが好ましく、例えばローブリバー鉄鉱石(オーストラリア産)、タハロア砂鉄(ニュージーランド産)、レイテ砂鉄(フィリピン産)などの鉱石を用いることが好ましい。なお、CaOおよび酸化鉄以外の酸化物成分とは、SiO2、Al23、MgO、MnO、TiO2などである。
ここで、本発明で用いる低品位鉱石のCaOおよび酸化鉄以外の酸化物の含有率を8mass%以上とした理由は、図2に黒丸の点で示すように、CaOおよび酸化鉄以外の酸化物の含有量が8mass%以上の場合に、回転炉床炉で鉱石の還元・溶融を行う際に、銑滓分離完了時間が急激に増加するためである。なお、左側の縦軸に示す銑滓分離完了時間とは、未分離状態のメタルとスラグが発生しない、下限の加熱時間を指す。ここでの加熱は雰囲気温度を1520℃まで上昇させた後は一定とし、前記銑滓分離完了時間は雰囲気温度が1520℃に到達した後に銑滓分離が完了するまでの時間である。また、図2において白丸で示しているのは右側の縦軸に示すメタル中の炭素濃度であり、メタル中の炭素濃度とは、銑滓分離完了時間における銑鉄中の炭素濃度を指す。本発明が対象とする反応プロセスでは、浸炭によりメタルの融点が下がり、溶融・凝集することでスラグとメタルの分離が可能となる。図2において、メタル中の炭素濃度は、CaOおよび酸化鉄以外の酸化物の含有率が変化してもほぼ一定であることから、CaOおよび酸化鉄以外の酸化物の含有量が増加するにつれ浸炭の進行速度が低下していると考えられる。
なお、本発明で対象とする低品位鉱石が含有する酸化物からCaOを除く理由は、脈石として含有されているCaOの含有量の分だけ、石灰などの造滓材の使用量を低減でき、スラグの量を低減できるため、CaOは含有していることが好ましい成分であるからである。また、ZnOのように加熱中に揮発してスラグにはならない酸化物が鉱石に含まれている場合は、上記の「CaOおよび酸化鉄以外の酸化物の含有量」から、さらに除くことが好ましい。この場合、本発明で用いる低品位鉱石は、CaO、酸化鉄、および回転炉床炉(移動型炉床)で鉱石を還元・溶融する際に揮発してスラグにはならない酸化物を除く酸化物成分を合計で8mass%以上、鉄を5mass%以上含有する鉱石となる。
図1を用いて本発明に用いる回転炉床炉の一実施形態を説明する。回転炉床炉1は、図1に示すように、予熱帯2a、還元帯2b、溶融帯2cおよび冷却帯2dに区画された炉体2にて、回転移動する炉床3を覆ってなるものである。この回転炉床3の上に、例えば低品位鉱石と固体還元材からなる原料4が積載される。この原料4として、低品位鉱石と、炭素系固体還元材と、造滓材とを混合した混合原料を用いる。混合原料は以下に述べるように塊成化することもできる。回転炉床3を覆う炉体2は耐火物が貼られている。さらに炉床耐火物の保護のために、炉床3の上に炭材を積載し、その上に原料4を積層する場合もある。また、炉体2の上部にはバーナー5が設置され、このバーナー5での燃料燃焼熱を熱源として、回転炉床3上の混合原料4中の鉄鉱石を還元する。なお、図1において、6は原料を回転炉床3上に装入する装入装置、7は還元物を排出する排出装置、8は冷却装置である。また、炉体2内の雰囲気温度は1300℃前後にされているが、溶融帯では1450℃前後の高温に制御されるのが通常である。
移動する炉床上にて加熱することで、a)鉱石中の酸化鉄が炭素系固体還元材中の炭素と反応して金属鉄ができる、b)鉄分は浸炭反応により、他の酸化物分(TiO2、SiO2、Al23、MgOなど)は石灰粉、ドロマイト、蛇紋岩などCaO、Na2Oなどの塩基性成分と混合して、融点が低下し、溶融する、c)一定期間溶融状態とすることで、溶融金属鉄部分(メタル)と溶融した酸化物分(スラグ)に分離する効果を得ることができ、銑鉄と同様に使用可能な還元鉄である粒鉄を製造することができる。
低品位鉱石は、その産地によって量に差はあるもののCaOおよび酸化鉄以外の酸化物成分を多量に含んでいる。また、炭素系固体還元材の代表例である石炭、石炭チャー、コークスには灰分が含まれている。そのために、還元操作のみを行う移動炉床炉法では、高炉−転炉法とは異なり、成品である還元鉄にスラグとしての酸化物が混入することは不可避であり、さらに還元材からの灰分も成品に付着し混入する可能性がある。回転炉床炉の炉床上において原料を還元・溶融させた場合、還元により生成したメタルと残滓であるスラグとを速やかに分離することができ、高密度の成品粒鉄を得ることができる。
本発明で得られる粒鉄は、上記のように還元して溶融されてスラグ成分が分離されており、回転炉床炉から排出されたなりの、圧縮等を行う前の状態で、みかけ密度を5000kg/m3以上とすることができる。なお、通常の場合、成品粒鉄は篩い分け工程を経て、粒径が3mm以上、100mm以下となる。
回転炉床炉を用いて、低品位鉱石を還元処理する際には、炭素系固体還元材と造滓材とともに混合して回転移動する炉床上に積載するものとする。炭素系固体還元材とは、石炭、コークス、黒鉛などであり、造滓材とは、石灰粉、ドロマイト、蛇紋岩などCaO、Na2Oなどの塩基性成分などを含むものである。
本発明者らは、低品位鉱石を用いた場合の、還元により生成したメタルと残滓であるスラグとの分離反応を詳細に検討した結果、図3に示すように、メタル質量に対するスラグ質量の比率が増加すると、生産性に相当する粒鉄の製造速度は低下することが分かった。すなわち、メタルとスラグとの分離反応時間短縮にはメタル質量に対するスラグ質量の比率を減少させることが重要であり、反応の途中でスラグ質量を低減させることで粒鉄の製造効率を大幅に改善できることを見出した。すなわち、スラグの量が少なければ、メタルと炭素とが反応して浸炭の速度が増加して凝集が早まるため、スラグは役目を果たした溶融後には揮発させることが望ましい。
そこで本発明では、酸化物の含有量が高い低品位鉱石と炭素系固体還元材、造滓材を混合した混合原料を移動型炉床上に積載し、炉床上部から熱供給して混合原料を還元し、更に溶融させて、還元鉄を製造するに際し、Na及び/またはKの化合物を使用量が造滓材中で10mass%以上となる条件で使用する。ここで、Na及び/またはKの化合物を使用する理由は、化合物中のNaおよびKが、鉱石及び炭素系固体還元材中の酸化鉄以外の酸化物と化合物を形成し、溶融したのちにNa及び/またはKとして揮発し、結果として、反応の途中でスラグ質量を低減することが可能であるためである。Na及び/またはKの化合物の使用量の上限に制約はなく、造滓材の全量をNa及び/またはKの化合物としてもよい。鉱石に対する造滓材の割合も上限に制約は無く、生産性との兼ね合いで適宜決定すればよい。Naの化合物とKの化合物は、単独で用いる場合も、混合して用いる場合も同様に効果を発揮する。
Naの化合物、Kの化合物としては塩化物やヨウ化物が挙げられるが、汚染ガスの発生が問題となるため、溶出造滓材として使用するNaの化合物としてNaOを含有する化合物を、Kの化合物としてKOを含有する化合物を使用することが好ましい。NaOを含有する化合物としてはNa2CO3を、KOを含有する化合物としてはKCO3を用いることが好ましい。
また、造滓材としてNa及び/またはKの化合物を使用することで、スラグの融点が低下し、その結果、溶融以降の反応が前倒しとなり還元反応終了までの時間が短縮されるという効果も期待できる。図4に造滓材としてNa及び/またはKの化合物を用いない場合と、炭酸ナトリウム(NaCO)を造滓材の20mas%用いた場合について、低品位鉱石と、炭素系固体還元材と、造滓材とを、混合した混合原料の、加熱時間と還元率との関係を測定した結果を示す。なお、低品位鉱石としては後述する実施例1で用いる鉱石Aを1695kg/t−iron、炭素系固体還元材として石炭を382kg/t−iron、造滓材として石灰を150kg/t−iron用いた。
図4によれば、NaCOを添加した場合は溶融開始〜還元終了までの期間が加熱早期側にシフトしており、NaCOの添加により、スラグの融点が低下するため、還元終了に要する時間が短縮されることが分かる。
本発明は低品位鉱石を用いて粒鉄を製造する技術であるが、低品位鉱石を回転炉床炉で還元する際に、通常の鉄鉱石(CaOおよび酸化鉄を除く酸化物成分を合計で8mass%未満含有する鉄鉱石)を混合して用いることも可能である。通常の鉄鉱石と混合して用いる場合であっても、鉄に対するスラグの質量比が鉄1トンあたりスラグ200kg以上である場合は本発明の効果を充分得ることができる。例えば、後述する鉱石A(低品位鉱石)と鉱石B(通常の鉱石)の場合では、低品位鉱石が4割以上(通常鉱石が6割以下)配合される場合がそれに該当する。
低品位鉱石が塊鉱石の場合、粉砕の上でたとえば粒径10mm以下の鉱石粉としてから、炭素系固体還元材等と混合して回転炉床に積載し、還元することができる。
低品位鉱石が微粉鉱石の場合(粒径3mm以下)には、炭素系固体還元材、造滓材とともに塊成化して、炭材内装ペレットとして用いることもできる。同様に圧縮成型して、ブリケットとしてから使用することもできる。また、造粒時、ベントナイトなどの無機バインダー、糖蜜、コーンスターチなどの有機バインダーを混合して、より強度を高めることもできる。これらペレットやブリケットは水分を蒸発させてから、使用することも可能である。
一方で、低品位鉱石を粉状のままで使用することも効果的である。粉原料のまま使用することにより、塊を製造するための設備、電力、バインダーなどの費用が不要になり、経済性向上に寄与することができる。
回転炉床炉で低品位鉱石を還元・溶融する際の加熱温度は、1450℃以上とすることが好ましい。回転炉床炉内の最高温度を1450℃以上とすることにより、炉内および炉内で還元・溶融する原料は高温となる。特に溶融した原料は1450℃以上とすることで、十分な流動性を確保することが可能となり、金属鉄中の酸化物成分を除去しやすくなり、良好な性状の粒鉄を製造することが可能となる。
炉床上に炭材を積載し、該炭材の上に低品位鉱石を含む混合原料を積層することにより、溶融したメタルやスラグが炉床の耐火物を侵食することを防止することが可能になる。耐火物侵食の際には鉄分が耐火物に取り込まれるため、炉床の耐火物の侵食を防止することで鉄分のロスが少なくなり、粒鉄の生産性向上に寄与することができる。
回転炉床炉で発生する排ガスに含有されるダストは、回収される。混合原料はNa及び/またはKを含有しているが、このダストは混合原料と比較して、Na及び/またはKを濃化しているので、再び造滓材として使用することが可能である。図5に、このようなダスト回収を行う回転炉床炉の一般的な設備フローの概略図を示す。
図5において、鉱石ホッパー11、石炭ホッパー12、造滓材ホッパー13から排出された鉄鉱石、石炭、造滓材は混合機14(必要に応じてペレタイザー等を用いる)で混合して混合原料とし、回転炉床炉15で加熱して還元・溶融して還元鉄(粒鉄)となり還元鉄排出口16から排出される。回転炉床炉15で発生した排ガスは吸引ファン19により吸引され煙突20から排出されるが、その際に、排ガスダクト用バグフィルター17でダスト回収を行う。回収されたダストは粉体搬送用ローリー18等を用いて搬出する。
本発明の有効性を確認するために図1に示すものと同様の回転炉床炉において、表4に示す条件で配合した混合原料より還元鉄を得る実験を行った。回転炉床炉のスペックを表1に示す。
Figure 2011132578
使用した鉱石の組成を表2に示す。なお、鉱石の成分分析はJISの方法に従い実施した。
Figure 2011132578
鉱石Aは、CaOおよび酸化鉄を除く酸化物成分を合計で18.61mass%含有する低品位鉱石であり、鉱石Bは酸化鉄以外の酸化物含有量の低い、CaOおよび酸化鉄を除く酸化物成分を合計で2.69mass%含有する一般的な鉱石である。鉱石Aは酸化鉄以外の酸化物分が多く鉄分が少なく、酸化鉄以外の酸化物質量は鉱石Bの約7倍程度である。
鉱石と、炭素系固体還元材としての石炭と、造滓材としての石灰とを混合して混合原料とした。表3に使用した石炭の組成を、表4に試験に用いた混合原料の配合について示す。なお、石炭の成分分析はJISの方法に従い実施した。ここで、FC:固定炭素量(mass%)、VM:揮発成分(mass%)、Ash:灰成分(mass%)である。
Figure 2011132578
Figure 2011132578
表4に示す配合1〜5を用いて、表5に示す条件で回転炉床炉を操業した(操業No.1〜5)。炉床上に混合原料を塊成化せず層厚約6mmに積載して使用した。各操業条件における還元鉄である粒鉄の製造速度を、生産性として表5に併せて示す。また、Na回収率も表5に併せて示す。ここで粒鉄の生産性である製造速度とは、未分離のメタルとスラグが生じない、最大の製造速度である。また、造滓材中の炭酸ナトリウムの含有量と、生産性(粒鉄の製造速度)との関係を図6に示す。
Figure 2011132578
表5および図6から分かるように、低品位鉱石であるA鉱石を用いた場合には、造滓材として炭酸ナトリウムを使用することで製造速度が増加し、生産性が向上した。一方で、一般的な鉱石である鉱石Bを用いた場合には、造滓材として炭酸ナトリウムを使用しても生産性は向上しなかった。
以上のように、本発明方法を用いることで低品位鉱石を用いた粒鉄の製造効率が向上することが分かった。
1 回転炉床炉
2 炉体
2a 予熱帯
2b 還元帯
2c 溶融帯
2d 冷却帯
3 回転炉床
4 混合原料
5 バーナー
6 装入装置
7 排出装置
8 冷却装置
11 鉱石ホッパー
12 石炭ホッパー
13 造滓材ホッパー
14 混合機
15 回転炉床炉
16 還元鉄排出口
17 排ガスダクト用バグフィルター
18 粉体搬送用ローリー
19 吸引ファン
20 煙突

Claims (6)

  1. CaOおよび酸化鉄を除く酸化物成分を合計で8mass%以上、鉄を5mass%以上含有する鉱石と、炭素系固体還元材と、造滓材とを、混合した混合原料を移動型炉床上に積載し、該炉床上部から熱供給して前記混合原料を還元し、更に溶融させて、還元鉄である粒鉄を製造するに際し、前記造滓材の少なくとも一部としてNa及び/またはKの化合物を使用し、該化合物の使用量が前記造滓材中の10mass%以上であることを特徴とする鉱石を用いた粒鉄製造方法。
  2. CaO、酸化鉄に加えて、移動型炉床での加熱中に揮発する酸化物を、酸化物成分の合計量から除くことを特徴とする、請求項1に記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
  3. 造滓材として使用するNaの化合物としてNa2CO3を、Kの化合物としてKCO3を使用することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
  4. 炉床上に炭材を積載した上に、混合原料を積層することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
  5. 混合原料を塊成化して、炉床上に積載することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
  6. 混合原料を1450℃以上で加熱することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の鉱石を用いた粒鉄製造方法。
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