JP2011131680A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】 操縦安定性及び耐久性を悪化させることなく転がり抵抗を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 ビード部3からサイドウォール部2にかけて複数本のスチールコード10を含む補強層7を埋設し、そのスチールコード10のタイヤ周方向に対する傾斜角度を10°〜80°の範囲に設定した空気入りタイヤにおいて、補強層7を構成する各スチールコード10として素線径dが0.17mm以上0.30mm以下のモノフィラメント11を用い、モノフィラメント11にスパイラル状又は平面波状の癖付けを施す。
【選択図】図1
【解決手段】 ビード部3からサイドウォール部2にかけて複数本のスチールコード10を含む補強層7を埋設し、そのスチールコード10のタイヤ周方向に対する傾斜角度を10°〜80°の範囲に設定した空気入りタイヤにおいて、補強層7を構成する各スチールコード10として素線径dが0.17mm以上0.30mm以下のモノフィラメント11を用い、モノフィラメント11にスパイラル状又は平面波状の癖付けを施す。
【選択図】図1
Description
本発明は、ビード部からサイドウォール部にかけて複数本のスチールコードを含む補強層を埋設した空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、操縦安定性及び耐久性を悪化させることなく転がり抵抗を改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤにおいて、ビード部廻りの剛性を高めて操縦安定性等の走行性能を改善するために、ビード部からサイドウォール部にかけて複数本のスチールコードを含む補強層を埋設することが行われている(例えば、特許文献1〜2参照)。
ここで、上記補強層を構成する各スチールコードとして、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り線からなるスチールコードを用いた場合、フィラメント間のフレッティング(擦れ)によるエネルギー損失が大きく、それが転がり抵抗を増大させる要因になるという欠点がある。一方、上記補強層を構成する各スチールコードとして、モノフィラメントを用いた場合、走行時のエネルギー損失が小さいものの、モノフィラメントが座屈し易く耐久性に劣るという欠点がある。そのため、ビード部からサイドウォール部にかけてスチールコード補強層を埋設するにあたって、操縦安定性と耐久性と転がり抵抗の改善要求を同時に満たすことは極めて困難である。
本発明の目的は、操縦安定性及び耐久性を悪化させることなく転がり抵抗を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、ビード部からサイドウォール部にかけて複数本のスチールコードを含む補強層を埋設し、前記スチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を10°〜80°の範囲に設定した空気入りタイヤにおいて、前記補強層を構成する各スチールコードとして素線径dが0.17mm以上0.30mm以下のモノフィラメントを用い、該モノフィラメントにスパイラル状又は平面波状の癖付けを施したことを特徴とするものである。
本発明では、ビード部からサイドウォール部にかけて複数本のスチールコードを含む補強層を埋設した空気入りタイヤにおいて、補強層を構成する各スチールコードとして、所定の素線径dを有すると共にスパイラル状又は平面波状の癖付けを施したモノフィラメントを使用することにより、操縦安定性及び耐久性を悪化させることなく転がり抵抗を改善することができる。つまり、スチールコード補強層に基づいて操縦安定性の改善効果を得る一方で、その補強層を構成する各スチールコードとしてモノフィラメントを用いることにより、走行時において補強層に起因するエネルギー損失を小さくして転がり抵抗を低減することができる。しかも、モノフィラメントには癖付けが施されているため、モノフィラメントに座屈を生じ難く、良好な耐久性を確保することができる。
本発明において、モノフィラメントにスパイラル状の癖付けを施した場合、モノフィラメントの波付けピッチp、波付け高さh、及び、これら波付けピッチpと波付け高さhと素線径dとから求められる癖付け比h/pdは、p=5mm〜25mm、h=0.10mm〜0.50mm、h/pd<0.20(mm-1)の範囲に設定することが好ましい。これにより、転がり抵抗の改善効果と耐久性の改善効果とをより高いレベルで両立することができる。
モノフィラメントに平面波状の癖付けを施した場合、モノフィラメントの波付けピッチp、波付け高さh、及び、これら波付けピッチpと波付け高さhと素線径dとから求められる癖付け比h/pdを、p=3mm〜20mm、h=0.15mm〜0.75mm、h/pd<0.30(mm-1)の範囲に設定することが好ましい。これにより、転がり抵抗の改善効果と耐久性の改善効果とをより高いレベルで両立することができる。
また、モノフィラメントに平面波状の癖付けを施した場合、モノフィラメントの断面形状を長方形又は長円形とし、モノフィラメントの断面における短辺をスチールコードの長手方向及びモノフィラメントの振幅方向に対して垂直な方向に配置することが好ましい。これにより、補強層のゲージを薄くすることが可能になるので、転がり抵抗の低減において有利である。
車両装着時におけるタイヤ表裏の装着向きが指定された空気入りタイヤにおいては、補強層のうち、車両外側に配置される補強層のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を40°以上にし、車両内側に配置される補強層のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を30°以下にすると共に、それぞれの補強層におけるモノフィラメントの波付けピッチpと波付け高さhと素線径dとから求められる癖付け比h/pdを車両内側よりも車両外側において相対的に大きくすることが好ましい。つまり、操縦安定性の観点から、車両外側に配置される補強層のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を相対的に大きくすることで車両外側のサイドウォール部の剛性を高めた構造を採用した場合、その車両外側のサイドウォール部は旋回時にタイヤ径方向の圧縮力を受けるため、車両外側の補強層のモノフィラメントが座屈しないように癖付け比h/pdを車両内側よりも車両外側において相対的に大きくするのである。このことは、耐久性を改善するだけでなく、操縦安定性の改善にも大きく寄与する。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4はタイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。カーカスコードとしては、有機繊維コードを用いることが好ましいが、スチールコードを使用しても良い。
ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部分と折り返し部分により包み込まれている。また、ビード部3からサイドウォール部2にかけては、引き揃えられた複数本のスチールコード10を含む補強層7がタイヤ全周にわたって埋設されている。この補強層7は、内周端がビードコア5の近傍に位置し、外周端がビードフィラー6の頂点よりもタイヤ径方向外側に位置し、ビードフィラー6とカーカス層4の折り返し部分との間に介在するように配置されている。補強層7において、スチールコード10のタイヤ周方向に対する傾斜角度は10°〜80°の範囲、好ましくは、15°〜50°の範囲に設定されている。補強層7のスチールコード10の傾斜角度は、必要とされる操縦安定性に応じて適宜設定することができ、その傾斜角度を大きくすることにより操縦安定性を高めることができる。なお、補強層7はカーカス層4の折り返し部分よりもタイヤ幅方向外側に配置しても良い。
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層8が埋設されている。これらベルト層8はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。ベルトコードとしては、スチールコードを用いることが好ましいが、有機繊維コードを使用しても良い。ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は15°〜40°の範囲に設定されている。
ベルト層8の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層9が配置されている。このベルトカバー層9は少なくとも1本の補強コードを引き揃えてゴム被覆してなるストリップ材をタイヤ周方向に連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。
上記空気入りタイヤにおいて、補強層7を構成する各スチールコード10として、素線径dが0.17mm以上0.30mm以下であると共にスパイラル状又は平面波状の癖付けを施したモノフィラメント11(図2〜図4参照)が使用されている。なお、癖付けを施したモノフィラメント11からなるスチールコード10の傾斜角度とは、スパイラル状又は平面波状の癖付けを施したモノフィラメント11の振幅の中心線の傾斜角度、即ち、スチールコード10の長手方向の傾斜角度を意味する。
上述のようにビード部3からサイドウォール部2にかけて複数本のスチールコード10を含む補強層7を埋設した空気入りタイヤにおいて、補強層7を構成する各スチールコード10として、所定の素線径dを有すると共にスパイラル状又は平面波状の癖付けを施したモノフィラメント11を使用することにより、操縦安定性及び耐久性を悪化させることなく転がり抵抗を改善する。
ここで、モノフィラメント11の素線径dが0.17mm未満であると剛性不足により操縦安定性が不十分になり、逆に0.30mm超であるとモノフィラメント11の耐疲労性が悪化するためタイヤの耐久性が不十分になる。また、補強層7を構成する各スチールコード10として、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り線からなるスチールコードを用いた場合、フィラメント間のフレッティング(擦れ)によるエネルギー損失が大きいため転がり抵抗が増大する。更に、補強層7に使用するモノフィラメントに癖付けを施していないと、例えば、スラローム走行等によりタイヤに歪みを生じた場合、モノフィラメントが座屈し易いためタイヤの耐久性が不十分になる。
図2は本発明で補強層に使用されるスチールコードの一例(スパイラル状の癖付けが施されたモノフィラメント)を示すものである。図2(a),(b)において、スチールコード10は、スパイラル状の癖付けを施したモノフィラメント11から構成されている。この場合、モノフィラメント11の波付けピッチp、波付け高さh、及び、これら波付けピッチpと波付け高さhと素線径dとから求められる癖付け比h/pdは、p=5mm〜25mm、h=0.10mm〜0.50mm、h/pd<0.20(mm-1)の範囲に設定されている。スパイラル状の癖付けを施したモノフィラメント11において、波付けピッチp、波付け高さh及び癖付け比h/pdを上記範囲に設定することにより、転がり抵抗の改善効果と耐久性の改善効果とをより高いレベルで両立することができる。
図3は本発明で補強層に使用されるスチールコードの一例(平面波状の癖付けが施されたモノフィラメント)を示すものである。図3(a),(b)において、スチールコード10は、モノフィラメントに平面波状の癖付けを施したモノフィラメント11から構成されている。この場合、モノフィラメント11の波付けピッチp、波付け高さh、及び、これら波付けピッチpと波付け高さhと素線径dとから求められる癖付け比h/pdは、p=3mm〜20mm、h=0.15mm〜0.75mm、h/pd<0.30(mm-1)の範囲に設定されている。平面波状の癖付けを施したモノフィラメント11において、波付けピッチp、波付け高さh及び癖付け比h/pdを上記範囲に設定することにより、転がり抵抗の改善効果と耐久性の改善効果とをより高いレベルで両立することができる。
図4は本発明で補強層に使用されるスチールコードの一例(平面波状の癖付けが施されたモノフィラメント)を示すものである。図4(a),(b)において、スチールコード10は、モノフィラメントに平面波状の癖付けを施したモノフィラメント11から構成されている。この場合、モノフィラメント11の断面形状は長方形又は長円形に加工されており、モノフィラメント11の断面における短辺(最小厚さとなる部分)がスチールコード10の長手方向及びモノフィラメント11の振幅方向に対して垂直な方向に配置されている。このような構造を採用した場合、補強層7のゲージを薄くすることが可能になるので、転がり抵抗の低減において有利である。なお、長方形又は長円形の断面形状を有するモノフィラメント11においては、長辺(短辺と直交する方向に延長する部分)の寸法を素線径dとする。
図2〜図4のスチールコード10において、波付けピッチpが下限値を下回るとモノフィラメント11の周囲のゴムに生じる歪みが大きくなるため発熱が増加して転がり抵抗が増大し、逆に上限値を上回るとモノフィラメント11の耐疲労性が悪化するためタイヤの耐久性が不十分になる。波付け高さhが下限値を下回るとモノフィラメント11の耐疲労性が悪化するためタイヤの耐久性が不十分になり、逆に上限値を上回るとモノフィラメント11の周囲のゴムに生じる歪みが大きくなるため発熱が増加して転がり抵抗が増大する。癖付け比h/pdは値が大きいほど伸び易いことを示すパラメータであるが、この癖付け比h/pdが上限値を上回るとモノフィラメント11の周囲のゴムに生じる歪みが大きくなるため発熱が増加して転がり抵抗が増大する。
ところで、空気入りタイヤには車両装着時におけるタイヤ表裏の装着向きが指定されたものがあるが、そのような空気入りタイヤにおいては一対の補強層7を非対称構造にすることができる。より具体的には、一対の補強層7のうち、車両外側に配置される補強層7のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を40°以上にし、車両内側に配置される補強層7のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を30°以下にすると共に、それぞれの補強層7におけるモノフィラメントの波付けピッチpと波付け高さhと素線径dとから求められる癖付け比h/pdを車両内側よりも車両外側において相対的に大きくする。
このように車両外側に配置される補強層7のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を相対的に大きくすることで車両外側のサイドウォール部2の剛性を高めた構造を採用した場合、操縦安定性の点で有利である。しかしながら、車両外側のサイドウォール部2は旋回時にタイヤ径方向の圧縮力を受けるため、その対策が必要である。そこで、車両外側の補強層7のモノフィラメントが座屈しないように、癖付け比h/pdを車両内側よりも車両外側において相対的に大きくする。これにより、耐久性及び操縦安定性の更なる改善効果を得ることができる。
なお、車両外側に配置される補強層7のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度が40°未満であると操縦安定性の改善効果が低下する。一方、車両内側に配置される補強層7のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を30°以下にするのは良好な乗心地を確保するためである。
タイヤサイズ235/45R17で、ビード部からサイドウォール部にかけて複数本のスチールコードを含む補強層を埋設し、そのスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を30°に設定した空気入りタイヤにおいて、補強層を構成する各スチールコードの構造、癖付け形状、素線径d、コード径、波付け高さh、波付けピッチp、癖付け比h/pd、コード打ち込み密度、コード量指数を表1のように設定した従来例1,2、比較例1,2及び実施例1,2のタイヤを製作した。
従来例1のタイヤでは3本のフィラメントを撚り合わせた撚り線からなるスチールコード(1×3)を採用し、それ以外のタイヤではモノフィラメントからなるスチールコード(1×1)を採用した。コード量指数とは、補強層を構成するスチールコードの総重量を従来例1を100として表す指数であり、このコード量指数が大きいほどスチールコードの総重量が大きいことを意味する。各タイヤのコード量指数は、補強層を側方から見たときのコード充填率が55%となるようにコード径に基づいて設定したものである。
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、転がり抵抗、操縦安定性、荷重耐久性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
転がり抵抗:
各試験タイヤをリムサイズ17×8.5JJのホイールに組付けて空気圧230kPaの条件で転がり抵抗を測定した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が小さいほど転がり抵抗が小さいことを意味する。
各試験タイヤをリムサイズ17×8.5JJのホイールに組付けて空気圧230kPaの条件で転がり抵抗を測定した。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が小さいほど転がり抵抗が小さいことを意味する。
操縦安定性:
各試験タイヤをリムサイズ17×8.5JJのホイールに組付けて試験車両に装着し、空気圧230kPaとして、訓練された5名のドライバーにてテストコースを走行してフィーリングを評価した。評価結果は、基準タイヤとの相対比較にて、以下の判定基準をもとに5点法で採点し、最高点と最低点を除いた3名の平均点で表した。
各試験タイヤをリムサイズ17×8.5JJのホイールに組付けて試験車両に装着し、空気圧230kPaとして、訓練された5名のドライバーにてテストコースを走行してフィーリングを評価した。評価結果は、基準タイヤとの相対比較にて、以下の判定基準をもとに5点法で採点し、最高点と最低点を除いた3名の平均点で表した。
判定基準
5:素晴らしい、4:優れる、3.5:やや優れる、3:基準同等、2.5:やや劣る(実用下限)、2:劣る、1:大きく劣る
この評価値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
5:素晴らしい、4:優れる、3.5:やや優れる、3:基準同等、2.5:やや劣る(実用下限)、2:劣る、1:大きく劣る
この評価値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
荷重耐久性:
ドラム表面が平滑で直径1707mmの鋼製ドラムを備えたドラム試験機を用い、周辺温度を38±3℃に制御し、リムサイズ17×8.5JJ、試験内圧180kPaにてインフレートさせた試験タイヤについて、負荷荷重をJATMAで規定された最大負荷能力の150%とし、2500kmの走行試験を実施した。それとは別に、リムサイズ17×8.5JJ、試験内圧300kPaにてインフレートさせた試験タイヤについて、負荷荷重をJATMAで規定された最大負荷能力の200%とし、20000kmの走行試験を実施した。評価結果は、補強層において故障が発生した場合を「×」で示し、補強層において故障が発生しなかった場合を「○」で示した。
ドラム表面が平滑で直径1707mmの鋼製ドラムを備えたドラム試験機を用い、周辺温度を38±3℃に制御し、リムサイズ17×8.5JJ、試験内圧180kPaにてインフレートさせた試験タイヤについて、負荷荷重をJATMAで規定された最大負荷能力の150%とし、2500kmの走行試験を実施した。それとは別に、リムサイズ17×8.5JJ、試験内圧300kPaにてインフレートさせた試験タイヤについて、負荷荷重をJATMAで規定された最大負荷能力の200%とし、20000kmの走行試験を実施した。評価結果は、補強層において故障が発生した場合を「×」で示し、補強層において故障が発生しなかった場合を「○」で示した。
表1において、従来例1のタイヤでは、荷重耐久性(200%×20000km)の評価試験において補強層のスチールコードにセパレーションが発生していた。これに対して、実施例1,2のタイヤでは、いずれも、補強層を構成する各スチールコードとして所定の素線径dを有すると共にスパイラル状の癖付けを施したモノフィラメントを使用しているため、従来例1との対比において、転がり抵抗を低減しつつ操縦安定性及び耐久性を良好に維持することができた。
一方、従来例2のタイヤでは、補強層を構成する各スチールコードとして癖付けが施されていないモノフィラメントを使用しているため、荷重耐久性が悪いものであった。従来例2のタイヤを荷重耐久性(150%×2500km)の評価試験後に解体するとフィラメントに破断箇所があったため、荷重耐久性(200%×20000km)の評価試験は実施しなかった。比較例1のタイヤでは、モノフィラメントの素線径dが細過ぎて剛性が足りないため操縦安定性が不十分であった。また、比較例2のタイヤでは、モノフィラメントの素線径dが太過ぎてモノフィラメントの耐疲労性が悪いため荷重耐久性が不十分であった。
次に、タイヤサイズ235/45R17で、ビード部からサイドウォール部にかけて複数本のスチールコードを含む補強層を埋設し、そのスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を30°に設定した空気入りタイヤにおいて、補強層を構成する各スチールコードの構造、癖付け形状、素線径d、コード径、波付け高さh、波付けピッチp、癖付け比h/pd、コード打ち込み密度、コード量指数を表2のように設定した実施例3〜12のタイヤを製作した。
これら試験タイヤについて、上述の評価方法により、転がり抵抗、操縦安定性、荷重耐久性を評価し、その結果を表2に併せて示した。
表2から判るように、実施例3〜12のタイヤは、いずれも、従来例1との対比において、転がり抵抗を低減しつつ操縦安定性及び耐久性を良好に維持することができた。なお、実施例3,7,12のタイヤでは、モノフィラメントの癖付けが過度であり、モノフィラメントの周囲のゴムに生じる歪みが大きくなるため、発熱が増加して転がり抵抗が増大する傾向が見られた。一方、実施例6,8のタイヤでは、モノフィラメントの癖付けが過少であり、モノフィラメントの耐疲労性が悪いため、過酷な条件での荷重耐久性が低下する傾向が見られた。
次に、タイヤサイズ235/45R17で、ビード部からサイドウォール部にかけて複数本のスチールコードを含む補強層を埋設し、そのスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を30°に設定した空気入りタイヤにおいて、補強層を構成する各スチールコードの構造、癖付け形状、素線径d、コード径、波付け高さh、波付けピッチp、癖付け比h/pd、コード打ち込み密度、コード量指数を表3のように設定した実施例13〜22のタイヤを製作した。
これら試験タイヤについて、上述の評価方法により、転がり抵抗、操縦安定性、荷重耐久性を評価し、その結果を表3に併せて示した。
表3から判るように、実施例13〜22のタイヤは、いずれも、従来例1との対比において、転がり抵抗を低減しつつ操縦安定性及び耐久性を良好に維持することができた。なお、実施例13,17,22のタイヤでは、モノフィラメントの癖付けが過度であり、モノフィラメントの周囲のゴムに生じる歪みが大きくなるため、発熱が増加して転がり抵抗が増大する傾向が見られた。一方、実施例16,18のタイヤでは、モノフィラメントの癖付けが過少であり、モノフィラメントの耐疲労性が悪いため、過酷な条件での荷重耐久性が低下する傾向が見られた。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 補強層
8 ベルト層
9 ベルトカバー層
10 スチールコード
11 モノフィラメント
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 補強層
8 ベルト層
9 ベルトカバー層
10 スチールコード
11 モノフィラメント
Claims (5)
- ビード部からサイドウォール部にかけて複数本のスチールコードを含む補強層を埋設し、前記スチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を10°〜80°の範囲に設定した空気入りタイヤにおいて、前記補強層を構成する各スチールコードとして素線径dが0.17mm以上0.30mm以下のモノフィラメントを用い、該モノフィラメントにスパイラル状又は平面波状の癖付けを施したことを特徴とする空気入りタイヤ。
- 前記モノフィラメントにスパイラル状の癖付けを施し、前記モノフィラメントの波付けピッチp、波付け高さh、及び、これら波付けピッチpと波付け高さhと素線径dとから求められる癖付け比h/pdを、p=5mm〜25mm、h=0.10mm〜0.50mm、h/pd<0.20(mm-1)の範囲に設定したことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記モノフィラメントに平面波状の癖付けを施し、前記モノフィラメントの波付けピッチp、波付け高さh、及び、これら波付けピッチpと波付け高さhと素線径dとから求められる癖付け比h/pdを、p=3mm〜20mm、h=0.15mm〜0.75mm、h/pd<0.30(mm-1)の範囲に設定したことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記モノフィラメントに平面波状の癖付けを施し、前記モノフィラメントの断面形状を長方形又は長円形とし、前記モノフィラメントの断面における短辺を前記スチールコードの長手方向及び前記モノフィラメントの振幅方向に対して垂直な方向に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の空気入りタイヤ。
- 車両装着時におけるタイヤ表裏の装着向きが指定された空気入りタイヤにおいて、前記補強層のうち、車両外側に配置される補強層のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を40°以上にし、車両内側に配置される補強層のスチールコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を30°以下にすると共に、それぞれの補強層におけるモノフィラメントの波付けピッチpと波付け高さhと素線径dとから求められる癖付け比h/pdを車両内側よりも車両外側において相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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JP2015178301A (ja) * | 2014-03-19 | 2015-10-08 | 横浜ゴム株式会社 | 空気入りラジアルタイヤ |
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