JP2011127164A - 被膜、切削工具および被膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化物層を少なくとも1層含む被膜であって、酸化物層の組成は、以下の式(1)で表わされ、
(Al1−xZrx)2O3(1+y) …(1)
式(1)において、xは0.01≦x≦0.07を満たす実数であり、yは−0.1≦y≦0.2を満たす実数であって、酸化物層はγ−アルミナ型の結晶構造および非晶質構造を有する被膜である。また、その被膜を含む切削工具と、その被膜の製造方法である。
【選択図】図1
Description
(Al1−xZrx)2O3(1+y) …(1)
式(1)において、xは0.01≦x≦0.07を満たす実数であり、yは−0.1≦y≦0.2を満たす実数であって、酸化物層はγ−アルミナ型の結晶構造および非晶質構造を有する被膜である。
リング法により形成することができ、化合物層をアーク式イオンプレーティング法により形成することができる。
本発明の被膜は、後述する酸化物層を少なくとも1層含む。本発明の被膜が単層である場合には本発明の被膜は後述する酸化物層のみによって構成されることになるが、本発明の被膜が複数層である場合には後述する酸化物層を複数層含んでいてもよく、後述する酸化物層の他にたとえば後述する化合物層などの酸化物層以外の層を含んでいてもよい。
本発明の被膜は、酸化物層を1層以上含み、その酸化物層の組成は、以下の式(1)で表わされ、
(Al1−xZrx)2O3(1+y) …(1)
上記の式(1)において、xは0.01≦x≦0.07を満たす実数であり、yは−0.1≦y≦0.2を満たす実数であって、酸化物層はγ−アルミナ型の結晶構造および非晶質構造を有することを特徴としている。
μm以上5μm以下であることがより好ましい。酸化物層の層厚が0.05μm未満である場合には酸化物層の形成による耐摩耗性、耐熱性および化学的安定性の向上などの効果が十分でなく、切削工具の寿命を延長する効果を得ることが難しい。また、酸化物層の層厚が20μmを超える場合には酸化物層が剥離しやすくなる傾向にある。酸化物層の層厚が0.05μm以上20μm以下である場合、特に0.5μm以上5μm以下である場合には、たとえば高温環境下などのより厳しい環境下においても被膜が安定した耐摩耗性、耐熱性および化学的安定性を発揮する傾向にある。
本発明の被膜は、上記の酸化物層以外の層を少なくとも1層含んでいてもよい。上記の酸化物層以外の層としては、Ti、Al、Cr、ZrおよびSiからなる群から選択された少なくとも1種の金属の窒化物、炭窒化物、窒酸化物、炭酸化物または炭窒酸化物からなる化合物層(以下、「化合物層」と称する)が含まれ得る。
原子数の比が全く記載されていない場合には特に言及がない限りその原子数の比に限定がないことを意味している。すなわち、本明細書において、たとえば「TiAlN層」と記載されている場合には、原子数の比がTi:Al:N=0.5:0.5:1である層に限られず、TizAl1-zN(ただし、0<z<1)の式で表わされる従来から公知のあらゆる層のことを意味しており、これは「TiAlN層」以外の層の記載についても同様である。また、本発明における化合物層において、Ti、Al、SiまたはCrなどの金属元素と、N(窒素)、O(酸素)またはC(炭素)などの非金属元素と、は必ずしも化学量論的組成を構成している必要はない。
本発明の切削工具は、基材と、基材上に被覆された上記の本発明の被膜と、を含む構造を有している。本発明の切削工具としては、たとえばドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップまたはクランクシャフトのピンミーリング加工用チップなどを挙げることができる。
本発明の被膜は、たとえばPVD(Physical Vapor Deposition)法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法または湿式法などによって形成することができる。なかでも、緻密かつ圧縮残留応力を有する被膜を低温で容易に形成できる観点からは、本発明の被膜の製造方法としてはPVD法を用いることが好ましい。
以下に、アーク式イオンプレーティング法の一例として、アーク式イオンプレーティング法により基材上に上記の化合物層としてのTiAlN層を形成する方法の一例について説明する。
大きいため、高硬度かつ緻密であって耐摩耗性に優れた、Ti、Al、Cr、ZrおよびSiからなる群から選択された少なくとも1種の金属の窒化物、炭窒化物、窒酸化物、炭酸化物または炭窒酸化物からなる化合物層を低温で形成することができる傾向にある。
以下に、アンバランストマグネトロンスパッタリング法の一例として、アンバランストマグネトロンスパッタリング法により基材上に上記の酸化物層を形成する方法の一例について説明する。
以下に、デュアルマグネトロンスパッタリング法の一例として、デュアルマグネトロンスパッタリング法により基材上に上記の酸化物層を形成する方法の一例を説明する。
に発生したプラズマを基材近傍の範囲にまで到達させることができる。これにより、基材近傍のプラズマ密度を向上させることができることから、より効率的な酸化物層の形成が可能となる。
組成がJIS規格P30であり、形状がJIS規格SNG432である超硬合金製切削チップを基材として用い、その基材上に、図1にその概略を示した装置を用いアーク式イオンプレーティング法およびデュアルマグネトロンスパッタリング法により表1の試料No.1〜8の欄にそれぞれ記載された構成の被膜を形成して切削工具を作製した。以下、試料No.1〜8の切削工具の被膜の形成方法について具体的に説明する。
トロンスパッタ源12として、1対のマグネトロン電極の一方にはAlターゲットをセットし、他方にZrターゲットをセットした。
結晶構造と非晶質構造との含有比率(γ−アルミナ型の結晶構造/(γ−アルミナ型の結晶構造+非晶質構造))を示している。
表1に示す試料No.9〜15の被膜については各蒸発源としてセットするターゲットと装置1内に導入されるガス(導入ガス)を下記のものとし、第3層の形成時に導入されるメタンと窒素の体積比を変更したこと以外は、試料No.2〜7と同様に形成して試料No.9〜15の切削工具を得た。
第2アーク蒸発源14:Ti(50原子%)−Al(50原子%)ターゲット
導入ガス:窒素/酸素(第1層)、酸素/アルゴン(第2層)、窒素/メタン(第3層)
(試料No.16〜21)
表1に示す試料No.16〜21の被膜については各蒸発源としてセットするターゲットと導入ガスを下記のものとしたこと以外は、試料No.2〜7と同様にして基材上に形成して試料No.16〜21の切削工具を得た。
第1アーク蒸発源13:Ti(95原子%)−Si(5原子%)ターゲット
第2アーク蒸発源14:Al(50原子%)−Cr(40原子%)−Si(10原子%)
ターゲット
導入ガス:窒素/メタン(第1層)、酸素/アルゴン(第2層)、メタン(第3層)
(試料No.22)
従来の熱CVD法を用いて、表1に示す第1層、第2層および第3層が基材10の表面上に形成された試料No.22の切削工具を得た。
図1に示す第1アーク蒸発源13としてTi(50原子%)−Al(50原子%)ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTiターゲットをセットした。また、第1デュアルマグネトロンスパッタ源11および第2デュアルマグネトロンスパッタ源12としては何もセットしなかった。
表1に示す試料No.1〜23の切削工具を用いて、図2の模式的拡大側面図に示すように切削工具2の角を被削材3に接触させた後に被削材3を回転させることによって、表2に示す切削条件で被削材3を連続切削(連続切削試験)および断続切削(断続切削試験)することにより、切削工具2の逃げ面4の摩耗幅を測定した。その結果を表3に示す。表3に示す逃げ面摩耗幅の値が小さいほど切削工具の被膜の耐摩耗性が優れていることを示す。
試料No.1〜23で用いた基材に代えて、基材の形状をSNGN120408(JIS−B−4121)とし、基材の材質をサーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体とする、表5に示す2種の基材を用意した。
削工具を作製した。以下、試料No.24の切削工具の被膜の形成方法について具体的に説明する。
ルミナ型の結晶構造/(γ−アルミナ型の結晶構造+非晶質構造))は、試料No.24〜28のそれぞれと同一の方法および同一の条件で基材上に第1層、第2層および第3層をこの順序でそれぞれ作製し、作製した第3層の表面のそれぞれをSEMにより観察し、観察された第3層の表面の面積に対してγ−アルミナ型の結晶構造の結晶が占めている面積の割合をγ−アルミナ型の結晶構造の結晶が占めている面積の割合と非晶質構造が占めている面積の割合の和で割ることによって求めた。なお、上記のγ−アルミナ型の結晶構造の結晶が占めている面積は、γ−アルミナ型の結晶構造の結晶が複数存在する場合にはその総面積とし、上記の非晶質構造が占めている面積は、非晶質構造が複数存在する場合にはその総面積とした。
表4に示す試料No.25の被膜については各蒸発源としてセットするターゲットを下記のものとし、アンバランストマグネトロンスパッタ源11としてセットされるAl−Zrターゲットの組成などの条件を変更して第1層〜第3層を形成したこと以外は、試料No.24と同様に形成して、基材10の材質がサーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のそれぞれからなる2種類の試料No.25の切削工具を得た。
第1アーク蒸発源13:Cr(80原子%)−Si(20原子%)ターゲット
第2アーク蒸発源14:Ti(90原子%)−Si(10原子%)ターゲット
(試料No.26)
表4に示す試料No.26の被膜については各蒸発源としてセットするターゲットを下記のものとし、アンバランストマグネトロンスパッタ源11としてセットされるAl−Zrターゲットや導入ガスの組成などの条件を変更して第1層〜第3層を形成したこと以外は、試料No.24と同様に形成して、基材10の材質がサーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のそれぞれからなる2種類の試料No.26の切削工具を得た。
第1アーク蒸発源13:Ti(70原子%)−Al(15原子%)−Si(15原子%)ターゲット
第2アーク蒸発源14:Tiターゲット
(試料No.27)
試料No.1〜23で用いた基材に代えて、基材の形状をSNGN120408(JIS−B−4121)とし、基材の材質をサーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体とする、表5に示す2種の基材を用意した。
説明する。
表4に示す試料No.28の被膜については第2アーク蒸発源14としてセットするターゲットを下記のものとし、アンバランストマグネトロンスパッタ源11としてセットされるAl−Zrターゲットや導入ガスの組成などの条件を変更して第2層〜第3層を形成したこと以外は、試料No.27と同様にして基材上に形成して、基材10の材質がサーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のそれぞれからなる2種類の試料No.28の切削工具を得た。
第2アーク蒸発源14:Ti(80原子%)−Si(20原子%)ターゲット
(試料No.29)
従来の熱CVD法を用いて、表4に示す第1層、第2層および第3層が基材10の表面上に形成された試料No.29の切削工具を得た。
図1に示す第1アーク蒸発源13としてTi(50原子%)−Al(50原子%)ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTiターゲットをセットした。
表4に示す構成の被膜が形成された試料No.24〜30の切削工具を用いて、表5に示す切削条件で被削材の連続切削試験および溝のついた丸棒切削試験を行なうことにより、1分毎に切削工具の逃げ面摩耗幅を測定し、逃げ面摩耗幅が0.2mmを超えた時間を寿命として評価した。その結果を表6に示す。なお、表6に示す寿命の時間が長いほど耐摩耗性に優れた被膜であることを示している。また、基材がサーメットからなる試料No.24〜30の切削工具については連続切削試験を行い、基材がcBN焼結体からなる試料No.24〜30の切削工具については溝のついた丸棒切削試験を行なった。
ないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
Claims (15)
- 酸化物層を少なくとも1層含む被膜であって、
前記酸化物層の組成は、以下の式(1)で表わされ、
(Al1−xZrx)2O3(1+y) …(1)
前記式(1)において、xは0.01≦x≦0.07を満たす実数であり、yは−0.1≦y≦0.2を満たす実数であって、
前記酸化物層はγ−アルミナ型の結晶構造および非晶質構造を有することを特徴とする、被膜。 - 前記式(1)において、xは0.025≦x≦0.04を満たす実数であることを特徴とする、請求項1に記載の被膜。
- 前記酸化物層の層厚が0.05μm以上20μm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の被膜。
- 前記酸化物層が0.1GPa以上10GPa以下の圧縮残留応力を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の被膜。
- 前記酸化物層における前記γ−アルミナ型の結晶構造と前記非晶質構造との含有比率(γ−アルミナ型の結晶構造/(γ−アルミナ型の結晶構造+非晶質構造))が10%以上90%以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の被膜。
- Ti、Al、Cr、ZrおよびSiからなる群から選択された少なくとも1種の金属の窒化物、炭窒化物、窒酸化物、炭酸化物または炭窒酸化物からなる化合物層を少なくとも1層含む、請求項1から5のいずれかに記載の被膜。
- 前記被膜の膜厚が0.05μm以上25μm以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の被膜。
- 基材と、前記基材上に形成された請求項1から7のいずれかに記載の被膜と、を含む、切削工具。
- 前記基材が、高速度鋼、超硬合金、サーメット、セラミックス焼結体、ダイヤモンド焼結体または立方晶窒化硼素焼結体であることを特徴とする、請求項8に記載の切削工具。
- PVD法により、請求項1に記載の酸化物層を少なくとも1層形成する工程を含む、被膜の製造方法。
- PVD法により、Ti、Al、Cr、ZrおよびSiからなる群から選択された少なくとも1種の金属の窒化物、炭窒化物、窒酸化物、炭酸化物または炭窒酸化物からなる化合物層を少なくとも1層形成する工程を含む、請求項10に記載の被膜の製造方法。
- 前記PVD法は、アーク式イオンプレーティング法、アンバランストマグネトロンスパッタリング法およびデュアルマグネトロンスパッタリング法からなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項10または11に記載の被膜の製造方法。
- 前記酸化物層が前記デュアルマグネトロンスパッタリング法により形成され、前記化合物層が前記アーク式イオンプレーティング法により形成されることを特徴とする、請求項12に記載の被膜の製造方法。
- 前記デュアルマグネトロンスパッタリング法に用いる1対のマグネトロン電極に、AlターゲットとZrターゲットとがそれぞれ取り付けられることを特徴とする、請求項13に記載の被膜の製造方法。
- 前記酸化物層が前記アンバランストマグネトロンスパッタリング法により形成され、前記化合物層が前記アーク式イオンプレーティング法により形成されることを特徴とする、請求項12に記載の被膜の製造方法。
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