JP2011122303A - せん断補強工法とせん断補強筋支持具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
支障物を避けてコンクリート構造物の表面から元穴を削孔する。この元穴の内部に、元穴の中心線にほぼ直交する方向に向けて高圧水を噴射できるノズルを挿入して元穴を中心に縦溝を形成する。この縦溝の内部に、せん断補強筋支持具を組み立てて、構造物内にせん断補強筋を配置する。その後に充填材を充填して一体化する。
【選択図】図1
Description
そこで多くの既存の鉄筋コンクリート構造物において、そのせん断補強が実施されている。
その補強方法としては、鉄筋コンクリート構造物の全面にわたってせん断補強鋼材であるアンカーボルトを打ち込み、このアンカーボルトに鋼板を固定する方法が知られている。(特許文献1)
あるいはボックスカルバートを対象として、その壁面の内側からコンクリート構造物に長穴を削孔し、その内部にせん断補強筋を挿入して充填材を充填する方法も知られている。(特許文献2)
<1> 何れの方法でも、所定の間隔でコンクリート構造物に長穴を削孔する必要があるが、側壁にケーブル、管路などが取り付けてあるボックスカルバートのような場合にはそれらが障害となってそのままでは削孔ができない。
<2> そのためにケーブル、管路などをいったん移設し、せん断補強筋を設置後に戻すという手数を要している。
<3> 削孔する長穴は直線状態の円柱であるから、せん断補強筋は棒状のものに限られ、たとえばL字状のようなせん断補強筋を設置することはできない。
また本発明のせん断補強筋支持具は、下端を基礎台に固定し、上端に受け具を設けた下段支柱と、下端と上端に受け具を設けた上段支柱とより構成したものである。
<1> 既設のコンクリート構造物の壁面に電線、管路あるいは各種の設備が支障物として取り付けてあっても、それらを移設することなくコンクリート構造物の内部にせん断補強筋を設置することができる。
<2> 電線などの支障物の撤去と再度の取り付け作業を行うことがないから、特に延長の長いボックスカルバートのようなコンクリート構造物においてはその経済効果は極めて高いものである。
<3> 棒状の鉄筋のようなせん断補強筋に限らず、先端をフック状、L字状に曲げ加工したせん断補強筋をコンクリート内部に設置することができ、効率のよいせん断補強効果を得ることができる。
本発明の工法の対象は、特に壁面などに、削孔の障害となる支障物が存在するコンクリート構造物である。
例えばボックスカルバートのようなコンクリート構造物ではその壁面に全長にわたって電線や管路を取り付けてある場合が一般であり、本発明の工法の利用の範囲は広い。
なお、以下の説明は壁面について行うが、壁面に限らず、柱、スラブ、梁、床版、フーチングなども対象とすることができる。
本発明の縦溝5はウオータジェットによってコンクリートを破壊して形成する。
このウオータジェットは、図10に示すように、送水管の先端にほぼ直交する方向に向けたノズルを取り付けたものであり、このノズル部分は長いものに交換することが可能である。
このノズルから高圧の水を噴射することによってコンクリートを破壊し削孔する装置は公知である。
このウオータジェットを利用して、コンクリートを破壊して後述する縦溝5を形成する。なお図3はカッターで元穴51を、ウオータージェットで縦溝5を形成した例である。
本発明の工法では、せん断補強筋支持具Aを使用する。
その支持具Aは下段支柱1と上段支柱2によって構成するが、その構造を図4から図8によって説明する。
なお、一般に、支障物の背後に設置されるせん断補強筋は、その配置状況、すなわち「出来形」を目視確認するのが困難である。
しかし本発明の場合にはせん断補強筋支持具Aを使用するので、長穴5にせん断補強筋を設置する前に、事前に開放部で仮組立を行うことができる。
その仮組み立ての形状から、せん断補強筋の間隔が保持されている状態、せん断補強が前後に傾斜していない状態を目視して確認することができる。
その際に、せん断補強筋支持具Aの支持具には、せん断補強筋を所定の間隔に保持するスぺーサーの役割を持たせることができる。
下段支柱1は、棒状の柱材11の下端に基礎台12を固定し、上端に受け具13を固定して構成する。柱材11としては、異形鋼棒、普通丸鋼、全ねじボルトまたは各種形鋼などを使うことができる。
柱材11の下端の基礎台12としてはたとえば短いチャンネルを、開放部を下向きにして利用し、柱材11を直立させて固定する。
この基礎台12の幅は、後述する縦溝の幅よりも多少狭い幅で形成する。
柱材11の上端の受け具13は、たとえば短いパイプを中心軸と平行に半分に切断したような半円形の樋状の受け部材である。
この受け具13は、後述する下段のせん断補強筋3を支えることが可能なように、せん断補強筋3の直径よりも大きい直径の半円などで受け皿状に形成してあることが必要である。
この受け具13の幅も、後述する縦溝5の幅よりも短く形成する。
この受け具13が、下段のせん断補強筋3を下から支える部材となる。
上段支柱2は、鉄筋のような細い鋼棒の柱材21の下端と上端に受け具22、23を固定して構成する。
この受け具22、23も、短いパイプを中心軸と平行に半分に切断したような樋状の受け部材である。
柱材21の上端に固定した受け具23は、せん断補強筋を下から支える部材となる。
柱材21の下端に固定した受け具22は、下段支柱1の受け具13に搭載したせん断補強筋3の上に被せて、上段支柱2を支持する部材となる。
縦溝5内に上記の下段支柱1を平行に2本、設置する。
下段支柱1の柱材11は基礎台12に固定してあるから、倒れることはない。
2本の下段支柱1の上の受け具13に、下段のせん断補強筋3を搭載し設置する。
この下段のせん断補強筋3の上に、上段支柱2の下の受け具22を載せて、上段支柱2を立てる。
上段支柱2はせん断補強筋3に対して左右方向に傾斜する可能性があるが、縦溝5の壁面に支えられるから傾斜するだけで転倒することはない。
上段支柱2の上の受け具23の上に、上段のせん断補強筋4を搭載し設置する。
その上には順次、同様の工程で上段支柱2を重ねてゆき、側面から見て梯子状の組み合わせができる。
その場合に梯子の横桟に相当するのが、本発明のせん断補強筋である。
構造物の表面から、その表面にほぼ直交する方向に向けて元穴51を削孔する。
元来、構造物の表面には支障物が位置しているから、この元穴51の削孔は支障物の隙間を利用して行う。
削孔方法はウオータジェットやダイヤモンドカッターを利用した方法など公知の方法によって行う。
この元穴51は、支障物の隙間を使って複数個所に削孔しておくと、後工程の縦溝5の形成が容易である。
元穴51の内部に、前記したウオータジェットを挿入して、ノズル7を元穴51の上下に向けて高圧水を噴射してコンクリートを破壊して縦溝5を形成する。
このウオータジェットは、図10に示すように、送水管71の先端にほぼ直交する方向に向けたノズル7を取り付けてあるから、このノズル7の方向を多少左右に振りながら高圧の水を噴射することによって、コンクリートを一定幅で破壊し、縦溝5を形成することができる。
元穴51からのウオータジェットの噴射によって、縦に長い溝5を形成することができるが、特に元穴51を上下方向に同一線上で複数形成できると、それらを縦溝5で上下方向に連続させることにより、より容易に長い縦溝5を形成することができる。
ウオータジェットは、先端のノズル7部分が交換可能であるから、縦溝5が長くなるにしたがって長いノズル7と交換することにより、効率的に長溝を形成することができる。
ウオータジェットでのコンクリート破壊の場合に、その水圧を調整すれば、コンクリートだけを破壊し、既存の鉄筋は切断しないという選択を容易に行うことができる。
縦溝5の完成後に縦溝5内に支持具Aを組み立てる。
しかし、縦溝5と外部の作業空間の間には支障物が存在する。
だから、支持具Aを外部で組み立てておいて縦溝5の内部にそのままスライドさせることはできない。
そこで、いわゆるマジックハンドと称される、元側での開閉操作が長い筒の先端の指状片の開閉として伝達する公知の工具を使用して、支持具Aを構成する各部材をつかんで、縦溝5内で組み立てを行う。
その場合にも各部材を鉛直の姿勢で平行移動させて縦溝5内に挿入設置することができないので、1本ごとに支障物の下方や上方の空間を、水平に近い状態で寝かして通過させ、通過させた後に、支障物の裏の縦溝5内で徐々に鉛直に引き起こして配置することになる。
縦溝5の最下部に、下段支柱1を挿入する。
下段支柱1は、柱材11の下端に基礎台12が取り付けてあるから、溝5内で鉛直に立てると基礎台12を縦溝5の床面に設置した状態で柱材11を鉛直の姿勢に維持することができる。
こうして、2本の下段支柱1を縦溝5の奥と、手前に平行して設置する。
両下段支柱1の基礎台12の間は、最下段のせん断補強筋6で連結する。
そのために奥の下段支柱1の基礎台12には半円状の受筒14を設置しておき、手前の基礎台12には事前に最下段のせん断補強筋6を取り付けておき、このせん断補強筋6を奥の基礎台12の受け筒14に挿入して設置することができる。
並行して設置した2本の下段支柱1の上端には、上向きに開放した半円状の受け具13が取り付けてある。
そこでその受け具13の上に、せん断補強筋を搭載する。
これが下段せん断補強筋3である。
下段せん断補強筋3の上に、上段支柱2の下側の受け具22を被せて設置する。
この上段支柱2も、縦溝5の奥と手前に平行して設置する。
下側の受け具22は半円形の金具であるから、単に下段のせん断補強筋3の上から被せるだけで左右方向の固定はできない。
しかし上段支柱2の両側には縦溝5の壁面が接近して位置するから、上段支柱2が多少傾いても問題はない。
平行して設置した2本の上段支柱2の上端には、上向きに開放した半円状の受け具23が取り付けてある。
そこでその受け具23の上に、せん断補強筋を搭載する。
これが上段せん断補強筋4である。
上記したように先行して縦長の縦溝を形成してある。
したがって棒状のせん断補強筋に限らず、先端をフック状に加工した補強筋、あるいはL字状の補強筋などを、下段支柱1の受け具13の上に、あるいは上段支柱2の受け具23の上に搭載して配置することができる。
上記の工程によって、順次上に上段支柱2を搭載し、せん断補強筋を搭載する作業を繰り返して行き、側面から見て梯子状に組み立ててゆく。
前記したように梯子の横桟に相当するのがせん断補強筋、縦桁に相当するのが上下段の支柱である。
ひとつの縦溝5内で、支持具Aを用いたせん断補強筋の配置が終わったら、縦溝5の表面側に型枠として板を取り付け、縦溝5の内部にモルタルやコンクリートなどの充填材を充填する。
その結果、図に示すようにコンクリート構造物の内部に複数段にわたってせん断補強筋を設置した補強作業が完成し、表面に支障物のあるコンクリート構造物を、支障物を撤去したり移動することなく補強することができる。
1:上段支柱
2:下段支柱
3:下段のせん断補強筋
4:上段のせん断補強筋
5:縦溝
Claims (2)
- コンクリート構造物の壁面などに、削孔の障害となる支障物が存在する場合の工法であって、
支障物を避けてコンクリート構造物の表面から元穴を削孔し、
この元穴の内部に、元穴の中心線にほぼ直交する方向に向けて高圧水を噴射できるノズルを挿入して元穴を中心に縦溝を形成し、
この縦溝の内部に、
下端を基礎台に固定し、上端に受け具を設けた下段支柱を、少なくとも2基挿入し、
両下段支柱の受け具の上にせん断補強筋を搭載し、
搭載したせん断補強筋か下段支柱の上端に、
下端に受け具を設け、上端に受け具を設けた上段支柱を設置し、
搭載支柱の上端の受け具の上に、上段のせん断補強筋を搭載し、
この作業を繰り返した後、
縦溝内に、充填材を充填してせん断補強筋をコンクリート構造物の内部に設置する、
せん断補強工法。
- 柱材の下端を基礎台に固定し、上端に受け具を設けた下段支柱と、
柱材の下端と上端に受け具を設けた上段支柱とより構成し、
柱材の上端の各受け具は、せん断補強筋を搭載できる受け皿状に形成した、
せん断補強筋支持具。
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