JP2011122265A - 表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形体に高い熱伝導性を付与できる熱伝導剤を提供すること。
【解決手段】ピッチ系黒鉛化短繊維を表面処理して臨界表面張力を低下させた表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、臨界表面張力を低下させる処理を施したピッチ系黒鉛化短繊維に関わるものであり、電子部品の放熱部材に好適に使用される。
高性能の炭素繊維はポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維と、一連のピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維に分類できる。そして炭素繊維は強度・弾性率が通常の合成高分子に比較して著しく高いという特徴を利用し、航空・宇宙用途、建築・土木用途、産業用ロボット、スポーツ・レジャー用途など広く用いられている。また、PAN系炭素繊維は、主として、その強度を利用する分野に、そしてピッチ系炭素繊維は、弾性率を利用する分野に用いられることが多い。
近年、省エネルギーに代表されるエネルギーの効率的使用方法が注目されている一方で、高速化されたCPUや電子回路のジュール熱による発熱が重篤な問題として認識されつつある。また、電子注入を発光原理とするエレクトロルミネッセンス素子においても同様に重篤な問題として顕在化している。一方、各種素子を形成するプロセスに目を向けると環境配慮型プロセスが求められており、その対策として鉛が添加されていない所謂鉛フリー半田への切り替えがなされている。鉛フリー半田は融点が通常の鉛含有半田に比較して高いため、プロセスの熱の効率的な使用が要求されている。そして、このような製品・プロセスが内包する熱に由来する問題を解決するためには、熱の効率的な処理(サーマルマネジメント)を達成する必要がある。
一般に炭素繊維は、他の合成高分子に比較して熱伝導率が高いと言われているが、サーマルマネジメント用途に向けた、さらなる熱伝導の向上が検討されている。ところが、市販されているPAN系炭素繊維の熱伝導率は通常200W/(m・K)よりも小さい。これは、PAN系炭素繊維が所謂難黒鉛化炭素繊維であり、熱伝導を担う黒鉛性を高めることが非常に困難なことに由来している。これに対して、ピッチ系炭素繊維は易黒鉛化炭素繊維と呼ばれ、PAN系炭素繊維に比べて、黒鉛性を高くすることができるため、高熱伝導率を達成しやすいと認識されている。よって、効率的に熱伝導性を発現できる形状にまで配慮がなされた高熱伝導性フィラーにできる可能性がある。
次にサーマルマネジメントに用いる成形体の特徴について考察する。一般的に炭素繊維を用いた成形体は、アスペクト比を有するために熱伝導材である炭素繊維同士が接触し、ネットワークを形成する可能性が高くなる。そのため、多くの無機化合物の様な球状熱伝導材を用いた成形体より高い熱伝導率を発揮しやすい。しかし、そのような炭素繊維ですら効率的にネットワークを形成しているとは言い難い。特に、シリコーンに代表される様に、低い表面張力を有する樹脂を成形体のマトリクスに使用する場合、マトリクスが炭素繊維の表面を覆ってしまい、炭素繊維同士のネットワークを遮断する可能性が高くなる(特許文献1、2参照)。
特開平9−283955号公報 特開2000−195998号公報
本発明の目的は、マトリックス中でのネットワーク形成能に優れ、高い熱伝導性を付与する事のできる表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維を提供することにある。また本発明の目的は表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アラミド樹脂、およびゴムからなる群から選択される少なくとも1種のマトリクス成分とからなる熱伝導性組成物、さらにそれからの成形体を提供することにある。
本発明者らは、熱伝導性に優れた放熱材料を作成するための優れた熱伝導剤を得ようと鋭意検討を重ねた結果、熱伝導性に優れるピッチ系黒鉛化短繊維の臨界表面張力を低下させることで、これを使用した熱伝導性組成物及び成形体が高い熱伝導性を得る事が可能である事を見出し、本発明に到達した。
本発明は、ピッチ系黒鉛化短繊維を表面処理して臨界表面張力が25mN/m以下である事を特徴とする表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維である。
本発明の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維は、熱伝導性に優れるピッチ系黒鉛化短繊維を、表面処理して臨界表面張力を低下させる事により、これを用いた熱伝導性組成物及び成形体が高い熱伝導性を得ることを可能にせしめている。
以下に、本発明の実施の形態について順次説明する。
本発明の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維は、ピッチ系黒鉛化短繊維を表面処理して臨界表面張力が25mN/m以下である事を特徴とする。
通常、フィラーの臨界表面張力よりマトリクスの表面張力がある程度下回る場合、マトリクスはフィラーの表面を十分に濡らす事ができる。結果として、マトリクス中でフィラーを分散させる事ができる。しかし、熱伝導率を向上させるという観点からは、マトリクス中でフィラーが分散している状態は必ずしも好ましくない。成形体の熱伝導性はフィラーがよりネットワークを形成している程向上するが、分散していると言う事は、フィラーの周りをマトリクスが覆っている事になり、フィラー同士の接触を阻害する事になる。
汎用樹脂の表面張力は30mN/mを超える場合が多い。そのため、フィラーの臨界表面張力が25mN/mであれば、マトリクスがフィラーの表面を十分に濡らす事が困難になり、フィラー同士のネットワークを形成するのがより促進される。しかしながら、ピッチ系黒鉛化短繊維を含む多くの炭素繊維の臨界表面張力は40〜50mN/mであり、マトリクスによる濡れ性がある程度ある。そこで、表面処理によって臨界表面張力を低下させる必要がある。
表面処理として特に限定は無いが、撥水処理として知られるフッ素処理、シリコーン処理などが挙げられる。フッ素化合物、シリコーン化合物の臨界表面張力は20mN/m前後である事が知られており、これらで表面処理する事でピッチ系黒鉛化短繊維の臨界表面張力を25mN/m以下にする事ができる。表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維の臨界表面張力の下限はとくに限定はないが実質18mN/mである。
フッ素処理としては特に限定はなく、ピッチ系黒鉛化短繊維の表面にフッ素またはフッ素化合物からなる層を形成することができれば良い。具体的には、テオラフルオロエチレンの塗布によるコーティングや、フッ素ガスによるフッ化グラファイト化が挙げられる。
シリコーン処理としては特に限定は無いが、ピッチ系黒鉛化短繊維の表面にシリコーン層を形成することができれば良い。具体的には、シリコーン塗布やシランカップリング処理等が挙げられる。
このときの表面層の厚さは特に限定はなく、処理後のピッチ系黒鉛化短繊の臨界表面張力が25mN/m以下が達成でき、かつピッチ系黒鉛化短繊維の高熱伝導性を損なわない程度の厚みとすることが好ましい。具体的には表面層の厚みはピッチ系黒鉛化短繊維の直径を100として、1〜20程度であることが好ましい。
またピッチ系黒鉛化短繊維の表面は完全に被覆する必要はなく、処理後のピッチ系黒鉛化短繊維の臨界表面張力が25mN/m以下が達成できれば十分であるが、具体的にはピッチ系黒鉛化短繊維表面の10〜60%に表面層が形成されていることが好ましい。ピッチ系黒鉛化短繊維の表面を部分的に被覆することで、効果的にピッチ系黒鉛化短繊維の臨界表面張力を25mN/m以下とすることができる。
また表面処理法によってはピッチ系黒鉛化短繊維がある程度凝集して表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維となる場合がある。このときの平均二次粒子径は、ピッチ系黒鉛化短繊維の繊維径や繊維長にも依存するが、50〜500μm程度であることが好ましく、適宜凝集した短繊維を分級したり、細粒化することが好ましい。
このように表面処理を施して処理後のピッチ系黒鉛化短繊維の臨界表面張力を25mN/m以下とすることにより、マトリクス成分との組成物とした場合に、表面処理黒鉛化短繊維がマトリクス成分を適度にはじくことができ、マトリクス中での黒鉛化短繊維のネットワーク形成が効果的に達成され、高い熱伝導性を付与するという本発明の目的が達成できる。この効果は、ピッチ系黒鉛化短繊維に対して優れた濡れ性を示す低い表面張力を有するマトリクスにおいて、特に顕著に発揮される。
本発明の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維を得るには、充填させたときの成形性や熱伝導性の発現等の観点から、特定の形状のピッチ系黒鉛化短繊維を用いることが好ましい。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は、光学顕微鏡で観測した平均繊維径が2〜20μmである事が好ましい。平均繊維径が2μmを下回る場合、マトリクスと複合する際に当該短繊維の本数が多くなるため、マトリクス/短繊維混合物の粘度が高くなり、成形が困難になることがある。逆に平均繊維径が20μmを超えると、マトリクスと複合する際に短繊維の本数が少なくなるため、当該短繊維同士が接触しにくくなり、複合材とした時に効果的な熱伝導を発揮しにくくなることがある。D1の好ましい範囲は5〜15μmであり、より好ましくは7〜13μmである。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は、光学顕微鏡で観測したピッチ系黒鉛化短繊維における繊維径分散の平均繊維径に対する百分率(CV値)は3〜15%が好ましい。CV値は繊維径のバラツキの指標であり、小さい程、工程安定性が高く、製品のバラツキが小さいことを意味している。CV値が3%より小さい時、繊維径が極めて揃っているため、ピッチ系黒鉛化短繊維の間隙に入るサイズの小さな短繊維の量が少なくなり、ピッチ系黒鉛化短繊維をより密に充填するのが困難になり、結果として高性能の複合材を得にくくなることがある。逆にCV値が15%より大きい場合、マトリクスと複合する際に、分散性が悪くなり、均一な性能を有する複合材を得ることが困難になることがある。CV値は好ましくは、5〜13%である。CV値は、紡糸時の溶融メソフェーズピッチの粘度を調節すること、具体的には、メルトブロー法にて紡糸する際は、紡糸時のノズル孔での溶融粘度を5.0〜25.0Pa・Sに調整する事で実現できる。
ピッチ系黒鉛化短繊維は、一般的には平均繊維長1mm未満からなるミルドファイバーと平均繊維長1mm以上10mm未満からなるカットファイバーの2種類がある。ミルドファイバーの外観は粉状のため分散性に優れ、カットファイバーの外観は繊維状に近いため、繊維同士が接触しやすいという特徴がある。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維はミルドファイバーに該当し、その平均繊維長は、20〜500μmであることが好ましい。ここで、平均繊維長は個数平均繊維長とし、光学顕微鏡下で測長器を用い、複数の視野において所定本数を測定し、その平均値から求めることができる。平均繊維長が20μmより小さい場合、当該短繊維同士が接触しにくくなり、効果的な熱伝導が期待しにくくなる。逆に平均繊維長が500μmより大きくなる場合、マトリクスと混合する際にマトリクス/短繊維混合物の粘度が高くなり、成形性が低くなる傾向にある。より好ましくは、20〜300μmの範囲である。この様なピッチ系黒鉛化短繊維を得る手法として特に制限はないがミリングの条件、すなわちカッター等で粉砕する際の、カッターの回転速度、ボールミルの回転数、ジェットミルの気流速度、クラッシャーの衝突回数、ミリング装置中の滞留時間を調節することにより平均繊維長を制御することができる。また、ミリング後のピッチ系炭素短繊維から、篩等の分級操作を行って、短い繊維長または、長い繊維長のピッチ系炭素短繊維を除去することにより調整することができる。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は、黒鉛結晶からなり、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが30nm以上であることが好ましい。結晶子サイズは六角網面の成長方向のいずれも、黒鉛化度に対応するものであり、熱物性を発現するためには、一定サイズ以上が必要である。六角網面の成長方向の結晶子サイズは、X線回折法で求める事ができる。測定手法は集中法とし、解析手法としては学振法が好適に用いられる。六角網面の成長方向の結晶子サイズは、(110)面からの回折線を用いて求めることができる。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は、透過型電子顕微鏡による繊維末端観察において、グラフェンシートの端面が閉じていることが好ましい。グラフェンシートの端面が閉じている場合、余分な官能基の発生や、形状に起因する電子の局在化が起こり難い。このため、ピッチ系黒鉛化短繊維に活性点が生じず、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂との混練で、触媒活性点の低下による硬化の抑制が可能となる。また、グラフェンシートの端面が閉じている事で、水などの吸着も低減でき、例えばポリエステルのような加水分解を伴う樹脂との混練においても、著しい湿熱耐久性能向上をもたらすことが出来る。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は50万〜400万倍に拡大した透過型電子顕微鏡による視野範囲で、グラフェンシートの端面は80%閉じている事が好ましい。グラフェンシート端面の閉鎖率が80%以下であると余分な官能基の発生や、形状に起因する電子の局在化を引き起こし、他材料との反応を促進する可能性があるため好ましくない。グラフェンシート端面の閉鎖率は90%以上が好ましく、更には95%以上が更に好ましい。
グラフェンシート端面構造は、黒鉛化の前に粉砕を実施するか、黒鉛化の後に粉砕を実施するかにより、大きく異なる。すなわち、黒鉛化後に粉砕処理を行った場合、黒鉛化で成長したグラフェンシートが切断破断され、グラフェンシート端面が開いた状態になり易い。一方、粉砕を行った後黒鉛化処理を行った場合、黒鉛の成長過程でグラフェンシート端面がU字上に湾曲し、湾曲部分がピッチ系黒鉛化短繊維端部に露出した構造になり易い。このため、グラフェンシート端面閉鎖率が80%を超えるようなピッチ系黒鉛化短繊維を得るためには、粉砕を行った後に黒鉛化処理することが好ましい。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は走査型電子顕微鏡での側面の観察表面が実質的に平坦であることが好ましい。ここで、実質的に平坦であるとは、フィブリル構造のような激しい凹凸をピッチ系黒鉛化短繊維に有しないことを意味する。ピッチ系黒鉛化短繊維の表面に激しい凹凸のような欠陥が存在する場合には、マトリクスとの混練に際して表面積の増大に伴う粘度の増大を引き起こし、成形性を悪化させる。よって、表面凹凸のような欠陥はできるだけ小さい状態が望ましい。より具体的には、走査型電子顕微鏡において800〜1000倍で観察した像での観察視野に、凹凸のような欠陥が10箇所以下であることとする。この様なピッチ系黒鉛化短繊維を得る手法としては、ミリングを行った後に黒鉛化処理を実施することによって、好ましく得る事ができる。
以下本発明で用いられるピッチ系炭素短繊維の好ましい製造法について述べる。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維の原料としては、例えば、ナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が挙げられる。その中でもナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物が好ましい。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維の原料としてはメソフェーズピッチを用いる。メソフェーズピッチのメソフェーズ率としては少なくとも90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。なお、メソフェーズピッチのメソフェーズ率は、溶融状態にあるピッチを偏光顕微鏡で観察することで確認出来る。
更に、原料ピッチの軟化点としては、230℃〜340℃が好ましい。不融化処理は、軟化点よりも低温で処理する必要がある。このため、軟化点が230℃より低いと、不融化処理を少なくとも軟化点未満の低い温度でする必要があり、結果として不融化に長時間を要するため好ましくない。一方、軟化点が340℃を超えると、紡糸に340℃を超える高温が必要となり、ピッチの熱分解を引き起こし、発生したガスで糸に気泡が発生するなどの問題を生じるため好ましくない。軟化点のより好ましい範囲は250℃〜320℃、更に好ましくは260℃〜310℃である。なお、原料ピッチの軟化点はメトラー法により求めることが出来る。原料ピッチは、二種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。組み合わせる原料ピッチのメソフェーズ率は少なくとも90%以上であり、軟化点が230℃〜340℃であることが好ましい。
メソフェーズピッチは溶融法により紡糸され、その後不融化、炭化、粉砕、黒鉛化によってピッチ系黒鉛化短繊維となる。場合によっては、粉砕の後、分級工程を入れることもある。
以下各工程の好ましい態様について説明する。
紡糸方法には、特に制限はないが、所謂溶融紡糸法を適応することができる。具体的には、口金から吐出したメソフェーズピッチをワインダーで引き取る通常の紡糸延伸法、熱風をアトマイジング源として用いるメルトブロー法、遠心力を利用してメソフェーズピッチを引き取る遠心紡糸法などが挙げられる。中でもピッチ系炭素繊維前駆体の形態の制御、生産性の高さなどの理由からメルトブロー法を用いることが望ましい。このため以下本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維の製造方法に関してはメルトブロー法について記載する。
ピッチ系炭素繊維前駆体を形成する紡糸ノズルの形状はどのようなものであっても良い。通常真円状のものが使用されるが、適時楕円などの異型形状のノズルを用いても何ら問題ない。ノズル孔の長さ(LN)と孔径(DN)の比(LN/DN)としては、2〜20の範囲が好ましい。LN/DNが20を超えると、ノズルを通過するメソフェーズピッチに強いせん断力が付与され、繊維断面にラジアル構造が発現する。ラジアル構造の発現は、黒鉛化の過程で繊維断面に割れを生じさせることがあり、機械特性の低下を引き起こすことがあるため好ましくない。一方、LN/DNが2未満では、原料ピッチにせん断を付与することが出来ず、結果として黒鉛の配向が低いピッチ系炭素繊維前駆体となる。このため、黒鉛化しても黒鉛化度を十分に上げることが出来ず、熱伝導性を向上させ難く好ましくない。機械強度と熱伝導性の両立を達成するには、メソフェーズピッチに適度のせん断を付与する必要がある。このため、ノズル孔の長さ(LN)と孔径(DN)の比(LN/DN)は2〜20の範囲が好ましく、更には3〜12の範囲が特に好ましい。
紡糸時のノズルの温度、メソフェーズピッチがノズルを通過する際のせん断速度、ノズルからブローされる風量、風の温度等についても特に制約はなく、安定した紡糸状態が維持できる条件、即ち、メソフェーズピッチのノズル孔での溶融粘度が1〜100Pa・sの範囲とする事が好ましい。
ノズルを通過するメソフェーズピッチの溶融粘度が1Pa・s未満の場合、溶融粘度が低すぎて糸形状を維持することが出来ず好ましくない。一方、メソフェーズピッチの溶融粘度が100Pa・sを超える場合、メソフェーズピッチに強いせん断力が付与され、繊維断面にラジアル構造を形成するため好ましくない。メソフェーズピッチに付与するせん断力を適切な範囲にせしめ、かつ繊維形状を維持するためには、ノズルを通過するメソフェーズピッチの溶融粘度を制御する必要がある。このため、メソフェーズピッチの溶融粘度を1〜100Pa・sの範囲にするのが好ましく、更には3〜30Pa・sの範囲にすることが好ましく、5〜25Pa・sの範囲にすることが更に好ましい。
メソフェーズピッチがノズルを通過する際のせん断速度は5000〜15000s−1であることが好ましい。
ブロー気流の方向は特に制限が無いが、紡糸方向に対して20〜70度である事が好ましく、より好ましくは30〜60度である。
ノズルからブローされる風量は線速5000〜20000m/分である事が好ましい。より好ましくは線速8000〜15000m/分である。
ノズルからブローされる気流の速度は330〜370℃である事が好ましく、より好ましくは340〜360℃である。
本発明で用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は、平均繊維径が2〜20μm以下であるが、ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径の制御は、ノズルの孔径を変更する、あるいはノズルからの原料ピッチの吐出量を変更する、あるいはドラフト比を変更することで調整可能である。ドラフト比の変更は、100〜400℃に加温された毎分5000〜20000m/分の線速度のガスを細化点近傍に吹き付けることによって達成することができる。吹き付けるガスに特に制限は無いが、コストパフォーマンスと安全性の面から空気が望ましい。
ピッチ系炭素繊維前駆体は、金網等のベルトに捕集されピッチ系炭素繊維前駆体ウェブとなる。その際、ベルト搬送速度により任意の目付量に調整できるが、必要に応じ、クロスラップ等の方法により積層させてもよい。ピッチ系炭素繊維前駆体ウェブの目付量は生産性及び工程安定性を考慮して、150〜1000g/mが好ましい。
このようにして得られたピッチ系炭素繊維前駆体ウェブは、不融化処理し、ピッチ系不融化繊維ウェブにする。不融化は、空気、或いはオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、ヨウ素、臭素を空気に添加したガスを用いた酸化性雰囲気下で実施できるが、安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すると連続処理が望ましい。不融化処理は150〜350℃の温度で、一定時間の熱処理を付与することで達成される。より好ましい温度範囲は、160〜340℃である。昇温速度は1〜10℃/分が好適に用いられ、連続処理の場合は任意の温度に設定した複数の反応室を順次通過させることで、上記昇温速度を達成できる。昇温速度のより好ましい範囲は、生産性及び工程安定性を考慮して、3〜9℃/分である。
ピッチ系不融化繊維ウェブは、600〜2000℃の温度で、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気中で炭化処理され、ピッチ系炭素繊維ウェブになる。炭化処理は、コスト面を考慮して、常圧かつ窒素雰囲気下での処理が望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すれば連続処理が望ましい。
炭化処理されたピッチ系炭素繊維ウェブは、所望の繊維長にするために、切断、破砕・粉砕等の処理が実施される。また、場合によっては、分級処理が実施される。処理方式は所望の繊維長に応じて選定されるが、切断にはギロチン式、1軸、2軸及び多軸回転式等のカッターが好適に使用され、破砕、粉砕には衝撃作用を利用したハンマ式、ピン式、ボール式、ビーズ式及びロッド式、粒子同士の衝突を利用した高速回転式、圧縮・引裂き作用を利用したロール式、コーン式及びスクリュー式等の破砕機・粉砕機等が好適に使用される。所望の繊維長を得るために、切断と破砕・粉砕を多種複数機で構成してもよい。処理雰囲気は湿式、乾式のどちらでもよい。分級処理には、振動篩い式、遠心分離式、慣性力式、濾過式等の分級装置等が好適に使用される。所望の繊維長は、機種選定のみならず、ロータ・回転刃等の回転数、供給量、刃間クリアランス、系内滞留時間等を制御することによっても得ることができる。また、分級処理を用いる場合には、所望の繊維長は篩い網孔径等を調整することによっても得ることができる。
上記の切断、破砕・粉砕処理、場合によっては分級処理を併用して作成したピッチ系炭素短繊維は、2000〜3500℃に加熱し黒鉛化して最終的なピッチ系黒鉛化短繊維とする。黒鉛化は、アチソン炉、電気炉等にて実施され、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気下等で実施される。
本発明の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維は、マトリクスと複合してコンパウンド、シート、グリース、接着剤等の熱伝導性組成物や成形体を得ることができる。この際、表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維は、マトリクス100重量部に対して3〜200重量部を添加させる。3重量部より少ない添加量では、熱伝導性を十分に確保することが難しい。一方、200重量部より多い表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維のマトリクスへの添加は困難であることが多い。
マトリクスは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アラミド樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種である。成形体に所望の物性を発現させるために熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を適宜混合して用いることもできる。すなわち本発明は、表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アラミド樹脂、およびゴムからなる群から選択される少なくとも1種のマトリクス成分とからなり、マトリクス成分100重量部に対して3〜200重量部の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維を含有する熱伝導性組成物を包含する。本発明の臨界表面張力が25mN/m以下である表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維を用いることで、マトリクス成分を適度にはじくことが可能となり、マトリクス中での黒鉛化短繊維のネットワーク形成が効果的に達成され、高い熱伝導性を付与する事ができる。本発明の効果は基本的にはマトリクスを限定しないが、表面処理前のピッチ系黒鉛化短繊維がマトリクスをはじきにくく、表面処理後のピッチ系黒鉛化短繊維がマトリクスを適度にはじき易い系において、すなわち低い表面張力を有するマトリクス、具体的にはシリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等において、特に顕著に発揮される。
マトリクスに用いることができる熱可塑性樹脂としてポリオレフィン及びその共重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体など)、ポリメタクリル酸及びその共重合体(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステルなど)、ポリアクリル酸及びその共重合体、ポリアセタール及びその共重合体、フッ素樹脂及びその共重合体(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエステル及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、液晶性ポリマーなど)、ポリスチレン及びその共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂など)、ポリアクリロニトリル及びその共重合体、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びその共重合体(変性PPE樹脂なども含む)、脂肪族ポリアミド及びその共重合体、ポリカーボネート及びその共重合体、ポリフェニレンスルフィド及びその共重合体、ポリサルホン及びその共重合体、ポリエーテルサルホン及びその共重合体、ポリエーテルニトリル及びその共重合体、ポリエーテルケトン及びその共重合体、ポリエーテルエーテルケトン及びその共重合体、ポリケトン及びその共重合体、エラストマー、液晶性ポリマー等が挙げられる。
中でもポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、脂肪族ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、及びアクリルにトリル−ブタジエン−スチレン系共重合樹脂からなる郡より選ばれる少なくとも一種の樹脂が好ましい。また、これらから一種を単独で用いても、二種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型変性PPE樹脂及び熱硬化型PPE樹脂、ポリイミド樹脂及びその共重合体、芳香族ポリアミドイミド樹脂及びその共重合体などが挙げられ、これらから一種を単独で用いても、二種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
アラミド樹脂としてはテレフタル酸及び/またはイソフタル酸からなる芳香族ジカルボン酸成分と、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、3,4‘−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンからなる郡より選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン成分に由来する全芳香族ポリアミドが例示される。
ゴムとしては特に限定は無いが天然ゴム(NR)、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBRゴム)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム及びその共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴムなどがある。
本発明の熱伝導性組成物は、表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維とマトリクスとを混合して作製するが、混合の際には、ニーダー、各種ミキサー、ブレンダー、ロール、押出機、ミリング機、自公転式の撹拌機などの混合装置又は混練装置が好適に用いられる。
本発明の熱伝導性組成物において、本発明の目的を損なわない範囲で、表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維と処理をしていないピッチ系黒鉛化短繊維の併用も可能である。
本発明の組成物の熱伝導率をより高めるために、表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維以外のフィラーを必要に応じて添加してもよい。具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛などの金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸化窒化アルミニウムなどの金属酸窒化物、炭化珪素などの金属炭化物、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属もしくは金属合金、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、ダイヤモンドなどの炭素材料などが挙げられる。これらを機能に応じて適宜添加してもよい。また、2種類以上併用することも可能である。ただ、上記化合物は、密度が表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維より大きなものが多く、軽量化を目的とするときには、添加量や添加比率に気を配る必要がある。
さらに、成形性、機械物性などのその他特性をより高めるために、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼化アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素ウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維などの繊維状フィラーを必要な機能に応じて適宜添加してもよい。これらを2種類以上併用することも可能である。ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、ガラスフレーク及びセラミックビーズなどの非繊維状フィラーも必要に応じて適宜添加することが可能である。これらは中空であってもよく、さらにはこれらを2種類以上併用することも可能である。ただ、上記化合物は、密度がピッチ系黒鉛化短繊維より大きなものが多く、軽量化を目的とするときには、添加量や添加比率に気を配る必要がある。
また、必要に応じて他の添加剤を複数、組成物に添加しても構わない。他の添加剤としては離型剤、難燃剤、乳化剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤を挙げることができる。
より具体的に、組成物の用途について説明する。当該組成物は、電子機器等において半導体素子や電源、光源などの電子部品が発生する熱を効果的に外部へ放散させるための放熱部材、伝熱部材あるいはそれらの構成材料等として用いることができる。
マトリクスが熱可塑性樹脂からなる熱伝導性組成物の場合は、射出成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、ロール成形法、押出成形法、注型成形法、およびブロー成形法からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法により成形して、成形体を得ることができる。そして、シート状成形体は、ロールによる押し出しや、ダイによる押し出しなど押出成形法にて、成形することが可能である。成形条件は、成形手法とマトリクスに依存し、当該樹脂の溶融粘度より温度を上げた状態で成形を実施する。
マトリクスが熱硬化性樹脂からなる熱伝導性組成物の場合は、射出成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、ロール成形法、押出成形法および注型成形法からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法により成形して、成形体を得ることができる。成形条件は、成形方法とマトリクスに依存し、適切な型において、当該樹脂の硬化温度を付与するといった方法を挙げる事ができる。
マトリクスがアラミド樹脂からなる熱伝導性組成物の場合は、アラミド樹脂を溶媒に溶解させ、ここに表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維を混合し、キャスト法を用いて成形する事ができる。ここで溶媒としてはアラミド樹脂が溶解できれば特に限定は無いが、具体的にはN.N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒を用いる事ができる。
マトリクスがゴムからなる熱伝導性組成物の場合は、プレス成形法、カレンダー成形法、ロール成形法からなる郡より選ばれる少なくとも一種の方法により成形して、成形体を得る事ができる。成形条件は、成形手法とマトリクスに依存し、当該ゴムの加硫温度を付与するといった方法を挙げる事ができる。
本発明はこのように上記熱伝導性組成物を成形して得られる成形体を包含する。
本発明の組成物は、その熱伝導率の高さを利用することで、電子部品用放熱板として用いることができる。また、表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維の添加量を多くすることで、高い熱伝導度が得られるため、電子部品においても、比較的耐熱性が要求される自動車や大電流を必要とする産業用パワーモジュールのコネクタ等に好適に用いることができる。より具体的には、放熱板、半導体パッケージ用部品、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、ダイパッド、プリント配線基板、冷却ファン用部品、筐体等に用いることができる。また、熱交換器の部品として用いることもできる。ヒートパイプに用いることができる。さらに、表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維の電波遮蔽性を利用し、特にGHz帯の電波遮蔽用部材として好適に用いることができる。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)ピッチ系黒鉛化短繊維、表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は、JIS R7607に準じ、光学顕微鏡下でスケールを用いて60本測定し、その平均値から求めた。
(2)ピッチ系黒鉛化短繊維、表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維長は、セイシン企業製PITA1を用いて1500本測定し、その平均値から求めた。
(3)ピッチ系黒鉛化短繊維の結晶子サイズは、X線回折に現れる(110)面からの反射を測定し、学振法にて求めた。
(4)ピッチ系黒鉛化短繊維の端面は、透過型電子顕微鏡で100万倍の倍率で観察し、400万倍に写真上で拡大し、グラフェンシートを確認した。
(5)ピッチ系黒鉛化短繊維の表面は走査型電子顕微鏡で1000倍の倍率で観察し、凹凸を確認した。
(6)ピッチ系黒鉛化短繊維及び表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維の臨界表面張力は、毛管浸透法(JIS K6768に記載の液体、水(73.0mN/m)、メタノール(22.6mN/m)、ホルムアミド(58.0mN/m)、エチレングリコールモノエチルエーテル(30.0mN/m)を使用)にて求めた。
(7)熱伝導性成形体の熱伝導率は、京都電子工業製QTM−500(非定常熱線法)で測定した。
[参考例1]
縮合多環炭化水素化合物より主としてなるピッチを主原料とした。原料ピッチの光学的異方性割合は100%、軟化点が283℃であった。直径0.2mmφの孔のキャップを使用し、スリットから加熱空気を毎分5500mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径11.2μmのピッチ系短繊維を作製した。この時の紡糸温度は325℃であり、溶融粘度は17.5Pa・S(175poise)であった。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付350g/mのピッチ系炭素繊維前駆体からなるピッチ系炭素繊維前駆体ウェブとした。
このピッチ系炭素繊維前駆体ウェブを空気中で170℃から300℃まで平均昇温速度5℃/分で昇温して不融化、更に800℃で焼成を行った。このピッチ系炭素繊維ウェブをカッター(ターボ工業製)を用いて900rpmで粉砕し、3000℃で黒鉛化した。
ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は8.1μm、平均繊維径に対する繊維径分散の比(CV値)は11%であった。個数平均繊維長は100μm、六角網面の成長方向に由来する結晶サイズは80nmであった。また、嵩密度は0.45g/cmであった。
ピッチ系黒鉛化短繊維の端面は透過型顕微鏡の観察によりグラフェンシートが閉じていることを確認した。また、表面は走査型電子顕微鏡の観察により、凹凸は1個であり実質的に平滑であった。
ピッチ系黒鉛化短繊維の臨界表面張力は45mN/mであった。
[実施例1]
参考例1で作成したピッチ系黒鉛化短繊維をフッ素ガスで、100℃、フッ素分圧1気圧で30分処理し表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維を得た。
表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は8.1μm、平均繊維径に対する繊維径分散の比(CV値)は12%であった。平均繊維長は100μmであった。また、臨界表面張力は23mN/mであった。
[実施例2]
二液硬化型シリコーン樹脂(東レダウシリコーン製商品名「SE1740A&B」)A液とB液各0.5重量部、計1重量部をトルエン200重量部に溶解させ、参考例1で作成したピッチ系黒鉛化短繊維100重量部とを自公転混合機(シンキー社製商品名「あわとり練太郎ARV310」)を用いて3分間混合した後トルエンを揮発させた。これを150℃、2時間処理し表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維を得た。
表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は8.1μm、平均繊維径に対する繊維径分散の比(CV値)は12%であった。平均繊維長は100μmであった。また、臨界表面張力は22mN/mであった。
[実施例3]
実施例1で得られた表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維30重量部とエポキシ樹脂主剤(ジャパンエポキシレジン製商品名「エピコート806」)44.75重量部、エポキシ樹脂硬化剤(ジャパンエポキシレジン製商品名「エピキュア307」)54.75重量部、エポキシ樹脂硬化触媒(ジャパンエポキシレジン製商品名「IMBI102」)0.5重量部を真空式自公転混合機(シンキー製あわとり練太郎ARV−310)を用いて3分間混合し、複合スラリーとした。このスラリーを真空プレス機(北川精機製)で、プレス加工し厚み0.5mmの平板状の複合成形体を得、130℃で2時間硬化することで、シート状熱伝導性成形体を作成した。シート状熱伝導性成形体の熱伝導率は5.8W/(m・K)であった。
[実施例4]
実施例2で得られた表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維30重量部とエポキシ樹脂主剤(ジャパンエポキシレジン製商品名「エピコート806」)44.75重量部、エポキシ樹脂硬化剤(ジャパンエポキシレジン製商品名「エピキュア307」)54.75重量部、エポキシ樹脂硬化触媒(ジャパンエポキシレジン製商品名「IMBI102」)0.5重量部を真空式自公転混合機(シンキー製あわとり練太郎ARV−310)を用いて3分間混合し、複合スラリーとした。このスラリーを真空プレス機(北川精機製)で、プレス加工し厚み0.5mmの平板状の複合成形体を得、130℃で2時間硬化することで、シート状熱伝導性成形体を作成した。シート状熱伝導性成形体の熱伝導率は5.2W/(m・K)であった。
[比較例1]
参考例で得られたピッチ系黒鉛化短繊維30重量部とエポキシ樹脂主剤(ジャパンエポキシレジン製商品名「エピコート806」)44.75重量部、エポキシ樹脂硬化剤(ジャパンエポキシレジン製商品名「エピキュア307」)54.75重量部、エポキシ樹脂硬化触媒(ジャパンエポキシレジン製商品名「IMBI102」)0.5重量部を真空式自公転混合機(シンキー製あわとり練太郎ARV−310)を用いて3分間混合し、複合スラリーとした。このスラリーを真空プレス機(北川精機製)で、プレス加工し厚み0.5mmの平板状の複合成形体を得、130℃で2時間硬化することで、シート状熱伝導性成形体を作成した。シート状熱伝導性成形体の厚み方向の熱伝導率は4.1W/(m・K)であった。
本発明の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維は、熱伝導率に優れるピッチ系黒鉛化短繊維を表面処理し臨界表面張力を低下する事で、成形体に高い熱伝導性を付与する事を可能にせしめている。これにより、高い放熱特性が要求される電子機器に幅広く用いることが可能になり、サーマルマネージメントを確実なものとする。

Claims (8)

  1. ピッチ系黒鉛化短繊維を原料とし、臨界表面張力が25mN/m以下である事を特徴とする表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維。
  2. 該ピッチ系黒鉛化短繊維が、メソフェーズピッチを原料とし、平均繊維径が2〜20μmであり、平均繊維径に対する繊維径分散の百分率(CV値)が3〜15であり、個数平均繊維長が20〜500μmであり、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが30nm以上であり、透過型電子顕微鏡によるフィラー端面観察においてグラフェンシートが閉じており、かつ走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平坦である請求項1に記載の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維。
  3. 該表面処理がフッ素処理もしくはシリコーン処理であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維の製造法。
  4. 請求項1〜2のいずれかに1項に記載の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、アラミド樹脂、およびゴムからなる群から選択される少なくとも1種のマトリクス成分とからなり、マトリクス成分100重量部に対して3〜200重量部の表面処理ピッチ系黒鉛化短繊維を含有する熱伝導性組成物。
  5. 該熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、脂肪族ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である請求項4に記載の熱伝導性組成物。
  6. 該熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型変性PPE樹脂、熱硬化型PPE類、ポリイミド樹脂及びその共重合体、芳香族ポリアミドイミド樹脂及びその共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である請求項4に記載の熱伝導性組成物。
  7. 該ゴムが、天然ゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、およびブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項4に記載の熱伝導性組成物。
  8. 請求項4〜7のいずれかに記載の熱伝導性組成物を、成形してなる熱伝導性成形体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017137603A (ja) * 2016-02-05 2017-08-10 東邦テナックス株式会社 炭素繊維、およびサイジング剤付着炭素繊維の製造方法

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