JP2009179700A - 熱伝導性粉体塗料組成物 - Google Patents

熱伝導性粉体塗料組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】複雑形状を持つ電子機器の筐体を鑑み、熱伝導性粉体塗料を塗装し皮膜として、従来の防錆性に加えて電子機器の熱対策を実施、熱伝導性粉体塗料組成物を提供すること。
【解決手段】樹脂成分100重量部とメソフェーズピッチを原料とした特定のピッチ系炭素短繊維フィラーを含む熱伝導性材料20〜900重量部を配合したことを特徴とする熱伝導性粉体塗料組成物により、熱伝導率が3W/(m・K)超の熱伝導性に優れる熱伝導性皮膜を与える粉体塗料組成物を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ピッチ系炭素繊維フィラーを原料に用いた粉体塗料組成物に関わるものである。さらに詳しくは、メルトブロー法によって作製したピッチ系炭素繊維を粉砕してなるピッチ系炭素短繊維フィラーのサイズや形態を制御したうえで、樹脂と複合した熱伝導性粉体塗料組成物である。本発明の組成物を用いて形成した皮膜は発熱性電子部品の熱伝導用途に適するものである。
高性能の炭素繊維はポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維と、一連のピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維に分類できる。そして炭素繊維は強度・弾性率が通常の合成高分子に比較して著しく高いという特徴を利用し、航空・宇宙用途、建築・土木用途、産業用ロボット、スポーツ・レジャー用途など広く用いられている。また、PAN系炭素繊維は、主として、その強度を利用する分野に、そしてピッチ系炭素繊維は、弾性率を利用する分野に用いられることが多かった。
近年、省エネルギーに代表されるエネルギーの効率的使用方法が注目されている一方で、高速化されたCPUや電子回路のジュール熱による発熱が重篤な問題として認識されつつある。また、電子注入を発光原理とするエレクトロルミネッセンス素子においても同様に重篤な問題として顕在化している。一方、各種素子を形成するプロセスに目を向けると環境配慮型プロセスが求められており、その対策として鉛が添加されていない所謂鉛フリー半田への切り替えがなされている。鉛フリー半田は融点が通常の鉛含有半田に比較して高いため、プロセスの熱の効率的な使用が要求されている。そして、このような製品・プロセスが内包する熱に由来する問題を解決するためには、熱の効率的な処理(サーマルマネジメント)を達成する必要がある。
サーマルマネジメントを具現化するには、金属・金属酸化物・金属窒化物・金属酸窒化物・合金といった、熱伝導性の高い無機材料を用いることが多い。金属ダイカストは、その典型的な例と考えることができる。しかし、複雑な形状をした電気部品などの筐体を作製するには、上述した材料をフィラーとして何らかのマトリクスに混合した複合材として用いることが、費用対効果の面から望ましい。サーマルマネジメントは、設計によって種々の方法で実行されるが、塗装による皮膜形成も技術分野として応用範囲が広い。
一般に炭素繊維は、他の合成高分子に比較して熱伝導率が高いと言われているが、サーマルマネジメント用途に向けた、さらなる熱伝導の向上が検討されている。ところが、市販されているPAN系炭素繊維の熱伝導率は通常200W/(m・K)よりも小さい。これは、PAN系炭素繊維が所謂難黒鉛化炭素繊維であり、熱伝導を担う黒鉛性を高めることが非常に困難なことに由来している。これに対して、ピッチ系炭素繊維は易黒鉛化炭素繊維と呼ばれ、PAN系炭素繊維に比べて、黒鉛性を高くすることができるため、高熱伝導率を達成しやすいと認識されている。よって、効率的に熱伝導性を発現できる形状にまで配慮がなされた高熱伝導性フィラーにできる可能性がある。
ただ、炭素繊維単体での熱伝導性部材への加工は困難であり、非常に特殊な手法を用いる必要がある。そこで、金属系フィラー等と同様に、何らかのマトリクスと炭素繊維を組成物化し、それを成形し、その成形体の熱伝導度を向上させることが求められている。
このような熱対策技術において、塗装による皮膜形成は大型で複雑な形状を余儀なくされているテレビや照明に対して、良い解決策を提供できるものと考えられる。
このような技術課題に対して、均一な性能の皮膜を得ることは重要であり、そのために皮膜厚みを厚くする技術である粉体塗装は有効な手段であると考えられる。しかしながら特許文献1や特許文献2に開示されているように、耐食性や防錆性に注目した用途が中心となっており、サーマルマネジメントの分野には、適応されていなかった。
特開平11−158415号公報 特開2005−162930号公報
電子機器の大型・薄型化は、設計上、無駄と思われる空間を減らしている。そのため、電子機器に用いられている筐体は平板の組合せといった単純なものではなく、複雑形状を組合せたものとなっている。また無駄と思われる空間を機器からなくしているため、ジュール熱などの熱が系外へ逃げ難く機器内部の温度が高くなってしまい、回路等に種々のトラブルを起こすことが問題となっていた。本発明の目的は、複雑形状を持つ電子機器の筐体を鑑み、熱伝導性粉体塗料を塗装し皮膜として、従来の防錆性に加えて電子機器の熱対策を実施することを目的とし、熱伝導性粉体塗料組成物を提供することを目的とするものである。
本発明は、塗装という自由度の高い手法による皮膜形成において、特に皮膜厚みを厚くできる粉体塗層に着目し、筐体の外側や内側に自由形状で熱伝導性高い皮膜を設けるものである。上記の目的を達成するための手段は、樹脂成分100重量部に対し、ピッチ系炭素短繊維フィラーを含む熱伝導性材料を20〜900重量部配合したことを特徴とする熱伝導性粉体塗料組成物であり、当該ピッチ系炭素短繊維フィラーがメソフェーズピッチを原料とし、平均繊維径が5〜20μmであり、平均繊維長が5〜300μmであり、平均繊維径に対する繊維径分散の百分率(CV値)が5〜20%であり、走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平滑であり、かつ透過型電子顕微鏡での端面観察において、グラフェンシートが閉じていることを特徴とする熱伝導性粉体塗料組成物である。
また本発明は、この熱伝導性粉体塗料組成物を塗装し、その後塗膜を加熱し、熱伝導性粉体塗料組成物の構成成分を相互に接触させて形成されてなる熱伝導性皮膜であり、また本発明は、この熱伝導性粉体塗料組成物を塗装しその後、塗膜を加熱し、熱伝導性粉体塗料組成物の構成成分を相互に接触させて、熱伝導性皮膜を形成する熱伝導性皮膜の製造方法である。
本発明の熱伝導性粉体塗料組成物を塗装して熱伝導性皮膜を得ることができるが、その際に形状の自由度が高く、しかも塗膜形成後熱をかけて硬化させるという単純な工程のため適応範囲が広い。本発明の熱伝導性粉体塗料組成物は複雑形状の機器の内側や外側に熱伝導性の高い皮膜を形成するのに好適である。
次に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明では、樹脂成分100重量部に対して、熱伝導性材料を20〜900重量部配合する。20重量部より少ない添加量では、十分な熱伝導性を得ることが困難になる。900重量部より添加量を多くすると、樹脂が熱伝導性材料を覆うことができずに、熱伝導性材料が落下しはじめる。より好ましくは、20〜500重量部である。
本発明に用いる樹脂成分には熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂または、それらの混合物を用いることができる。
本発明に用いる樹脂は、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。本発明に用いる熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、熱硬化型変性PPE系樹脂、および熱硬化型PPE系樹脂、ポリブタジエン系ゴム及びその共重合体、アクリル系ゴム及びその共重合体、シリコーン系ゴム及びその共重合体、天然ゴム、不飽和ポリエステル系樹脂等を用いることができる。中でも、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、およびウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種から好ましく選択することができる。これらの熱硬化性樹脂に難燃剤等の添加剤などが混入していても良い。
特にエポキシ系樹脂においては、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)、ノボラック系のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、ジシクロペンタジエン型などが挙げられ、ハンドリングや柔軟性という観点でビスフェノール型が好適である。軟化点が30〜100℃程度のものが扱いやすい。
エポキシ系樹脂の硬化剤や硬化促進剤に特に制約はなく、アミン系(芳香族系、脂肪族系など)や酸無水物系などが用いられることが多い。特に電子機器の用途では揮発成分が機器性能に影響を及ぼすことがあるので、酸無水物系が好適に用いられる。これらは、一種以上を混合しても構わない。硬化促進剤は、適量を添加することが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂及びその共重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体など)、ポリエステル系樹脂及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、液晶性ポリマーなど)、脂肪族ポリアミド類及びその共重合体、芳香族ポリアミド類及びその共重合体等を挙げることができる。さらに、ポリイミド類及びその共重合体、ポリアミドイミド類及びその共重合体、ポリメタクリル酸類及びその共重合体(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステルなど)、ポリアクリル酸類及びその共重合体、ポリアセタール類及びその共重合体、フッ素樹脂類及びその共重合体(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリスチレン類及びその共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂など)、ポリアクリロニトリル類及びその共重合体、ポリフェニレンエーテル(PPE)類及びその共重合体(変性PPE樹脂なども含む)、ポリカーボネート類及びその共重合体、ポリフェニレンスルフィド類及びその共重合体、ポリサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルニトリル類及びその共重合体、ポリエーテルケトン類及びその共重合体、ポリエーテルエーテルケトン類及びその共重合体、ポリケトン類及びその共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂としてはポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の熱伝導性材料は、ピッチ系炭素短繊維フィラーまたはピッチ系炭素短繊維フィラーと金属化合物フィラーよりなる。
ピッチ系炭素短繊維フィラーの原料ピッチとしては、ナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が例示できる。その中でもナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物が好ましく、特にメソフェーズピッチが好ましい。メソフェーズピッチのメソフェーズ率としては少なくとも90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。なお、メソフェーズピッチのメソフェーズ率は、溶融状態にあるピッチを偏向顕微鏡で観察することで確認出来る。更に、原料ピッチの軟化点としては、230℃以上340℃以下が好ましい。不融化処理は、軟化点よりも低温で処理する必要がある。このため、軟化点が230℃より低いと、少なくとも軟化点未満の低い温度で不融化処理する必要があり、結果として不融化に長時間を要するため好ましくない。一方、軟化点が340℃を超えると、紡糸に340℃を超える高温が必要となり、ピッチの熱分解を引き起こし、発生したガスで糸に気泡が発生するなどの問題を生じるため好ましくない。軟化点のより好ましい範囲は250℃以上320℃以下、更に好ましくは260℃以上310℃以下である。なお、原料ピッチの軟化点はメトラー法により求めることが出来る。原料ピッチは、二種以上を適宜組合せて用いてもよい。組合せる原料ピッチのメソフェーズ率は少なくとも90%以上であり、軟化点が230℃以上340℃以下であることが好ましい。
本発明におけるピッチ系炭素短繊維フィラーは、光学顕微鏡で観測した平均繊維径(D1)が5〜20μmである。D1が5μmを下回る場合、ハンドリングが困難になる。逆にD1が20μmを超えると、加熱により皮膜を形成する際に、隙間がき、皮膜の付着強度が不十分になる。D1の好ましい範囲は5〜15μmであり、より好ましくは7〜13μmである。
本発明におけるピッチ系炭素短繊維フィラーは、光学顕微鏡で観測したピッチ系炭素短繊維フィラーにおける繊維径分散(S1)のD1に対する百分率(CV値)は5〜20である。CV値は小さい程、工程安定性が高く、製品のバラツキが小さいことを意味している。CV値が5より小さい時、繊維径が極めて揃っているため、フィラーの間隙に入るサイズの小さなフィラーが入り込む量が少なくなり、熱硬化性樹脂と複合する際に多量のフィラーを添加するのが困難になり、結果として高性能の熱伝導性粉体塗料組成物を得にくくなる。逆にCV値が20より大きい場合、熱硬化性樹脂と複合する際に、分散性が悪くなり、均一な性能を有する熱伝導性粉体塗料組成物を得ることが困難になる。CV値は好ましくは、5〜15である。
本発明におけるピッチ系炭素短繊維フィラーの平均繊維長(L1)は、5〜300μmである。ここで、平均繊維長は個数平均繊維長とし、光学顕微鏡下で測長器を用い、複数の視野において所定本数を測定し、その平均値から求めることができる。L1は目的によって適した値があるが、本発明では当該フィラーを熱伝導性に主眼をおいた粉体塗料組成物に用いるので、L1は5〜300μmの範囲が好ましい。L1が5μmより小さい場合、フィラー同士が接触しにくくなり、効果的な熱伝導が期待しにくくなる。逆に300μmより大きくなる場合、熱伝導性粉体樹脂組成物の大きさが、吹き付け等の塗装方法で対応できない大きさになる。より好ましくは、5〜100μmの範囲である。
本発明におけるピッチ系炭素短繊維フィラーは、六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズが30nm以上であり、さらに六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが50nm以上であることが好ましい。結晶子サイズは六角網面の厚み方向、六角網面の成長方向のいずれも、黒鉛化に対応するものであり、熱物性を発現するためには、一定サイズ以上が必要である。六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズ及び六角網面の成長方向の結晶子サイズは、X線回折法で求める事ができる。測定手法は集中法とし、解析手法としては、学振法を用いた。六角網面の厚み方向の結晶子サイズは、(002)面からの回折線を用いて求め、六角網面の成長方向の結晶子サイズは、(110)面からの回折線を用いてそれぞれ求めることができる。
本発明におけるピッチ系炭素短繊維フィラーは走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平坦であることを特徴とする。ここで、実質的に平坦であるとは、フィブリル構造のような激しい凹凸をピッチ系炭素短繊維フィラー表面に有しないことを意味する。ピッチ系炭素短繊維フィラーの表面に激しい凹凸のような欠陥が存在する場合には、マトリクス樹脂との混練に際して表面積の増大に伴う粘度の増大を引き起こし、成形性を悪化させる。よって、表面凹凸のような欠陥はできるだけ小さい状態が望ましい。より具体的には、走査型電子顕微鏡において1000倍で観察した像での観察視野に、凹凸のような欠陥が10箇所以下であることとする。
本発明におけるピッチ系炭素短繊維フィラーは、透過型電子顕微鏡でのフィラー端面の観察表面は、グラフェンシートが閉じた構造になっていることを特徴とする。フィラーの端面がグラフェンシートとして閉じている場合には、余分な官能基の発生や、形状に起因する電子の局在化が起こらないので、ピッチ系炭素短繊維フィラーが活性点を持たなくなる様になる。結果、熱硬化性樹脂の触媒活性低下による硬化阻害を抑制することができる。更には、水などの吸着を低減することができ湿熱耐久性能向上をもたらすことができる。特に、本発明のうちの好ましい形態である平均繊維長が5μm以上300μm以下のピッチ系炭素短繊維フィラーにおいては、ピッチ系炭素短繊維フィラー表面積に占める端面の割合が高くなることから、グラフェンシートが閉じている構造が特に好ましい。なお、グラフェンシートが閉じているとは、ピッチ系炭素短繊維フィラーを構成するグラフェンシートそのものの端部がピッチ系炭素短繊維フィラー端部に露出することなく、グラファイト層が略U字上に湾曲し、湾曲部分がピッチ系炭素短繊維フィラー端部に露出している状態である。このような状態が端面全体の80%以上を占めているときに、殊更にこれらの効果は顕在化される。
本発明におけるピッチ系炭素短繊維フィラーの好ましい作製方法を以下に示す。
原料ピッチは溶融法により紡糸され、その後不融化、焼成、ミリング、黒鉛化によってピッチ系炭素短繊維フィラーとなる。場合によっては、ミリングの後、分級工程を入れることもある。本発明のピッチ系炭素短繊維フィラーは透過型電子顕微鏡によるフィラー端面観察においてグラフェンシートが閉じていることを特徴とするが、このようなピッチ系炭素短繊維フィラーは、ミリングを行った後に黒鉛化処理を実施することによって、好ましく得ることができる。これは、黒鉛化後にミリングを行うと、黒鉛化に伴い生成したグラフェンシートが切断端面にて開いたままになるのに対して、炭化ピッチ繊維ウェブをミリングしピッチ系炭化短繊維とした後で黒鉛化を行うと、ピッチ系炭化短繊維端面のグラフェンシートがループ状に閉じるという黒鉛の成長過程を用いたものである。以下各工程の好ましい態様について説明する。
紡糸方法には、特に制限はないが、所謂溶融紡糸法を好ましく挙げることができる。具体的には、口金から吐出した原料ピッチをワインダーで引き取る通常の紡糸延伸法、熱風をアトマイジング源として用いるメルトブロー法、遠心力を利用して原料ピッチを引き取る延伸紡糸法などが挙げられる。中でもピッチ繊維の形態の制御、生産性の高さなどの理由からメルトブロー法を用いることが望ましい。このため以下本発におけるピッチ系炭素短繊維フィラーの製造方法に関してはメルトブロー法について記載する。
本発明においては、ピッチ系炭素短繊維フィラーの原料となるピッチ繊維を形成するための紡糸ノズルの形状については特に制約はない。通常真円状のものが使用されるが、適時楕円などの異型形状を用いても何ら問題ない。ノズル孔の長さ(LN)と孔径(DN)の比(LN/DN)としては2〜20の範囲が好ましい。LN/DNが20を超えると、ノズルを通過する原料ピッチに強いせん断力が付与され、繊維断面にラジアル構造が発現する。ラジアル構造の発現は、黒鉛化の過程で繊維断面に割れを生じることがあり、機械特性の低下を引き起こすことがあり好ましくない。一方、LN/DNが2未満では、原料ピッチにせん断を付与することが出来ず、結果として黒鉛の配向が低い繊維となる。このため、黒鉛化しても黒鉛化度が十分に上がらず熱伝導性を向上させ難くなり好ましくない。機械強度と熱伝導性の両立を達成するためには、原料ピッチに適度のせん断を付与する必要がある。このため、ノズル孔の長さ(LN)と孔径(DN)の比(LN/DN)は2〜20の範囲が好ましく、更には3〜12の範囲が特に好ましい。
紡糸時のノズルの温度についても特に制約はなく、安定した紡糸状態が維持できる温度、即ち、原料ピッチの粘度を1〜100Pa・sの範囲にせしめる温度が好ましい。原料ピッチの粘度が1Pa・s未満の状態では、粘度が低すぎて糸形状を維持することが出来ないため好ましくない。一方、原料ピッチの粘度が100Pa・sを超えると、ノズルを通過する際に強いせん断力が付与され、生成されるピッチ繊維断面にラジアル構造が発現するため好ましくない。せん断力を適切な範囲にせしめ、かつ繊維形状を維持するためには、原料ピッチの粘度を適切に制御する必要がある。このため、原料ピッチの粘度は1〜100Pa・sの範囲が好ましく、更には3〜30Pa・sが好ましく、5〜25Pa・sがより好ましい。
本発明のピッチ系炭素短繊維フィラーは、平均繊維径(D1)が5〜20μmであることを特徴とするが、ピッチ系炭素短繊維フィラーの繊維径の制御方法は、ノズルの孔径を変更する、あるいはノズルからの原料ピッチの吐出量を変更する、あるいはドラフト比を変更することで可能である。ドラフト比の変更は、100〜400℃に加温された毎分100〜10000mの線速度のガスを細化点近傍に吹き付けることによって達成することができる。吹き付けるガスに特に制限は無いが、コストパフォーマンスと安全性の面から空気が望ましい。
紡糸されたピッチ繊維は、金網等のベルトに捕集されピッチ繊維ウェブとなる。その際、ベルト搬送速度により任意の目付量に調整できるが、必要に応じ、クロスラップ等の方法により積層させてもよい。ピッチ繊維ウェブの目付量は生産性及び工程安定性を考慮して、150〜1000g/mが好ましい。
このようにして得られたピッチ繊維ウェブは、公知の方法で不融化処理し、不融化ピッチ繊維ウェブにする。不融化は、空気、或いはオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、ヨウ素、臭素を空気に添加したガスを用いた酸化性雰囲気下で実施できるが、安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すると連続処理が望ましい。不融化処理は150〜350℃の温度で、一定時間の熱処理を付与することで達成される。より好ましい温度範囲は、160〜340℃であり、さらに好ましくは、170〜330℃の範囲である。昇温速度は1〜10℃/分が好適に用いられ、連続処理の場合は任意の温度に設定した複数の反応室を順次通過させることで、上記昇温速度を達成できる。昇温速度のより好ましい範囲は、生産性及び工程安定性を考慮して、3〜8℃/分であり、さらに好ましくは4〜6℃/分である。
不融化ピッチ繊維ウェブは、500〜1500℃の温度で、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気中で焼成処理され、炭化ピッチ繊維ウェブになる。焼成処理は、コスト面を考慮して、常圧かつ窒素雰囲気下での処理が望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すれば連続処理が望ましい。
焼成処理された炭化ピッチ繊維ウェブは、所望の繊維長にするために、切断、破砕・粉砕等の処理が実施される。また、場合によっては、分級処理が実施される。処理方式は所望の繊維長に応じて選定されるが、切断にはギロチン式、回転式等のカッター、1軸、2軸及び多軸回転刃式等が好適に使用され、破砕、粉砕には衝撃作用を利用したハンマ式、ピン式、ボール式、ビーズ式及びロッド式、粒子同士の衝突を利用した高速回転式、圧縮・引裂き作用を利用したロール式、コーン式及びスクリュー式等の破砕機・粉砕機等が好適に使用される。所望の繊維長を得るために、切断と破砕・粉砕を多種複数機で構成してもよい。処理雰囲気は湿式、乾式のどちらでもよい。分級処理には、振動篩い式、遠心分離式、慣性力式、濾過式等の分級装置等が好適に使用される。所望の繊維長は、機種選定のみならず、ロータ・回転刃等の回転数、供給量、刃間クリアランス、系内滞留時間等を制御することによっても得ることができる。また、分級処理を用いる場合には、所望の繊維長は篩い網孔径等を調整することによっても得ることができる。
上記の切断、破砕・粉砕処理、場合によっては分級処理を併用して作成したピッチ系炭化短繊維は、2500〜3500℃に加熱し黒鉛化して最終的なピッチ系炭素短繊維フィラーとする。黒鉛化は、アチソン炉、電気炉等にて実施され、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気下等で実施される。
本発明におけるピッチ系炭素短繊維フィラーは、熱硬化性樹脂との親和性をより高めること、成形性の向上や粉落ち低減を目的として、表面処理やサイジング処理をしても良い。また、必要に応じて表面処理した後にサイジング処理をしても良い。表面処理の方法として特に限定は無いが、具体的にはオゾン処理、プラズマ処理、酸処理などが挙げられる。サイジング処理に用いるサイジング剤に特に限定は無いが、具体的にはエポキシ化合物、水溶性ポリアミド化合物、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、酢酸ビニル、水、アルコール、グリコールを単独又はこれらの混合物で用いることができる。サイジング剤はフィラーに対し0.01〜10重量%、付着させても良い。しかし、サイジング剤付着ピッチ系炭素繊維フィラーは活性点を持つ可能性もあることから、サイジング処理は極力少ない事が好ましい。好ましい付着量は0.1〜2.5重量%である。
本発明においては、熱伝導性材料としてピッチ系炭素短繊維フィラーに加え金属化合物フィラーを含むことも好ましい。金属化合物フィラーとしては、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化ホウ素、石英、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、金属合金、等が挙げられる。中でも、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化ホウ素、石英、炭化珪素、酸化珪素、および窒化珪素からなる群より選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。
また、ピッチ系炭素短繊維フィラーや金属化合物フィラー以外の熱伝導性材料としては天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、ダイヤモンドなどの炭素材料などを適宜用いることができる。
熱伝導性材料中のピッチ系炭素短繊維フィラー100重量部に対して金属化合物フィラーが1〜100重量部とすることが好ましい。
また本発明の熱伝導性粉体塗料組成物には、必要に応じて他の添加剤を適宜添加しても構わない。他の添加剤としては離型剤、難燃剤、乳化剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤を挙げることができる。
本発明の熱伝導性粉体塗料組成物は、ミキサーでドライブレンドした後、加熱溶融混練し、粉砕し、分級することにより好ましく製造できる。このように製造された粉体塗料組成物の平均粒子径は10〜100μm、特に塗膜平滑性の観点から15〜40μmの範囲が好ましい。粉砕は公知の方法で実施することでき、熱伝導性粉体塗料組成物は、所望のサイズに粉砕できる。また、粒子のサイズを揃えるために、分級を適宜行い所望の粒子径にすることができる。
本発明の熱伝導性粉体塗料組成物を塗装しその後、塗膜を加熱し、熱伝導性粉体塗料組成物の構成成分を相互に接着させて熱伝導性皮膜を形成することができる。塗装方法は公知の方法により実施することができ、例えば、静電粉体塗装法、流動浸漬塗装法などにより、塗装することができる。また、塗着した熱伝導性粉体塗料組成物は、熱風炉、赤外炉、誘導加熱炉などで焼付けることにより熱伝導性皮膜を形成することができる。
本発明の熱伝導性皮膜のみの熱伝導率は3W/(m・K)より高い熱伝導率を示す。3W/(m・K)の熱伝導率は、熱硬化性樹脂単体に比較すると約一桁高い熱伝導率である。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
(1)ピッチ系炭素短繊維フィラーの平均繊維径及び繊維径分散:
黒鉛化を経たピッチ系炭素繊維フィラーをJIS R7607に準じ、光学顕微鏡下でスケールを用いて60本測定し、その平均値から求めた。
(2)ピッチ系炭素短繊維フィラーの平均繊維長:
平均繊維長は、個数平均繊維長であり、黒鉛化を経たピッチ系炭素短繊維フィラーを光学顕微鏡下で測長器で2000本以上測定し、その平均値から求めた。倍率は繊維長に応じて適宜調整した。
(3)結晶サイズ:
X線回折法にて求め、六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズは(002)面からの回折線を用いて求め、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズは(110)面からの回折線を用いて求めた。また、求め方は学振法に準拠して実施した。
(4)ピッチ系炭素短繊維フィラーの熱伝導率:
粉砕工程以外を同じ条件で作製した、黒鉛化後のピッチ系炭素繊維ウェブから糸を抜き出し抵抗率を測定し、特開平11−117143号公報に開示されている熱伝導率と電気比抵抗との関係を表す下記式(1)より求めた。
K=1272.4/ER−49.4 (1)
ここで、Kは熱伝導率W/(m・K)、ERは電気比抵抗μΩmを表す。
(5)ピッチ系炭素短繊維フィラーのグラフェンシートの端面微細構造:
ピッチ系炭素短繊維フィラーを透過型電子顕微鏡にて50,000倍で観察した像の視野中の閉じているグラフェンシートの数を計測した。
(6)実質的に平坦な表面の確認:
ピッチ系炭素短繊維フィラーを走査型電子顕微鏡にて1000倍で観察した像に、凹凸のような欠陥が何箇所あるかを数えた。10箇所以下の場合平滑とした。
(7)平板状皮膜の熱伝導率:
京都電子工業製QTM−500で測定した。
[参考例1:ピッチ系炭素短繊維フィラーの作製]
ピッチ系炭素短繊維フィラーは以下の手順で作製した。縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が285℃であった。直径0.2mmの孔の紡糸口金を使用し、スリットから加熱空気を毎分6000mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径10.5μmのピッチ繊維を作製した。紡出された繊維をベルト上に捕集してピッチ繊維ウェブとし、さらにクロスラッピングで目付380g/mとした。
このピッチ繊維ウェブを空気中で170℃から330℃まで平均昇温速度6℃/分で昇温して不融化ピッチ繊維ウェブとした後、更に800℃で焼成を行い炭化ピッチ繊維ウェブとした。この炭化ピッチ繊維ウェブをカッター(ターボ工業製)を用いて粉砕し、3000℃で黒鉛化した。
黒鉛化後のピッチ系炭素短繊維フィラーの平均繊維径は7.5μm、平均繊維径に対する繊維直径分散の比は13%であった。平均繊維長は40μmであった。六角網面の厚み方向に由来する結晶サイズは35nmであった。六角網面の成長方向に由来する結晶サイズは70nmであった。ピッチ系炭素短繊維フィラーの走査型電子顕微鏡で観察した表面は平滑であった。また、透過型電子顕微鏡で観察した端面の像にはグラフェンシートが閉じている構造のみが観察された。炭化ピッチ繊維ウェブを粉砕せずに3000℃で黒鉛化したピッチ系炭素繊維ウェブから抜き出した単糸の電気伝導率より求めた熱伝導率は670W/(m・K)であった。
[実施例1]
エポキシ系樹脂(ジャパンエポキシレジン製1001)および、反応性硬化剤としてフェノール系樹脂(ジャパンエポキシレジン製170)を、エポキシ系樹脂100重量部に対してフェノール系樹脂を65重量部混合した熱硬化性樹脂系を用いた。熱伝導性材料として参考例1で得られたピッチ系炭素短繊維フィラーを用いた。熱硬化性樹脂100重量部に対してピッチ系炭素短繊維フィラー50重量部を添加し、ドライブレンドを行い、加熱溶融混練を行った。混合物をミルシステム社製卓上型インパクトミルで粉砕し、振目開き40μmの篩で分級することで平均粒径が40μmの熱伝導性粉体塗料組成物とした。
粉砕された熱伝導性粉体塗料組成物を厚さ1mmのステンレス板に、熱伝導性粉体塗料組成物の厚みが200μmになるように日本パーカライジング社製ラボガンシステムの静電塗装機で塗装を行い、160℃に設定した赤外線ヒーターを用いて15分焼付けを行い、熱伝導性皮膜を形成した。形成した熱伝導性皮膜を剥離し、熱伝導率を測定したところ3.4W/(m・K)であった。
[実施例2]
熱硬化性樹脂100重量部に対してピッチ系炭素短繊維フィラーの添加量を150重量部とした以外は実施例1と同様に熱伝導性粉体塗料組成物を作製した。実施例1と同様の方法で熱伝導性皮膜を作製し、剥離後、熱伝導率を測定したところ、4.4W/(m・K)であった。
[実施例3]
ピッチ系炭素短繊維フィラー100重量部に対して、直径10μmの酸化亜鉛(堺化学製)10重量部を添加し熱伝導性材料とした以外は実施例2と同様に熱伝導性粉体塗料組成物を作製した。実施例1と同様の方法で熱伝導性皮膜を作製し、剥離後、熱伝導率を測定したところ、4.1W/(m・K)であった。
[実施例4]
ウレタン系樹脂(ユニチカ製ER−6610)および、反応性硬化剤(第一工業製薬社製エラストロンBN−4)をウレタン系樹脂100重量部に対してフェノール系樹脂を20重量部混合した熱硬化性樹脂系を用いた他は実施例1と同様に熱伝導性粉体塗料組成物を作製した。形成した熱伝導性皮膜を剥離し、熱伝導率を測定したところ3.2W/(m・K)であった。
[実施例5]
樹脂として、熱可塑性樹脂である三洋化成製マレイン酸変性ポリプロピレン、商品名ユーメックスを用いた他は実施例1と同様に熱伝導性粉体塗料組成物を作製した。形成した熱伝導性皮膜を剥離し、熱伝導率を測定したところ3.3W/(m・K)であった。
[比較例1]
ピッチ系炭素短繊維フィラーの添加量を熱硬化性樹脂100重量部に対して5重量部とした以外は実施例1と同様に熱伝導性粉体塗料組成物を作製した。実施例1と同様の方法で熱伝導性皮膜を作製し、剥離後、熱伝導率を測定したところ、2.3W/(m・K)であった。
[比較例2]
ピッチ系炭素短繊維フィラーの代わりにPAN系炭素繊維(東邦テナックス(株)製・商品名ベスファイト)をボールミルで粉砕することにより作製した平均繊維径が10μmであり、平均繊維長が50μmのPAN系炭素短繊維を熱硬化性樹脂100重量部に対して150重量部添加した以外は実施例1と同様に熱伝導性粉体塗料組成物を作製した。実施例1と同様の方法で熱伝導性皮膜を作製し、剥離後、熱伝導率を測定したところ、1.3W/(m・K)であった。
[参考例2]
参考例1で作製した炭化ピッチ繊維ウェブを3000℃で黒鉛化したピッチ系炭素繊維ウェブをターボ工業製カッターを用いて粉砕し、ピッチ系炭素短繊維フィラーを作製した。走査型電子顕微鏡で観察した表面は、一部フィブリル状になっていた。透過型電子顕微鏡でフィラー端面を観察したところ、グラフェンシートは開いていた。その他は参考例1と同等のピッチ系炭素短繊維フィラーが得られた。
[比較例3]
参考例2で作製したピッチ系炭素短繊維フィラーを熱硬化性樹脂100重量部に対して150重量部添加した以外は実施例1と同様に熱伝導性粉体塗料組成物を作製したが、樹脂とピッチ系炭素短繊維フィラーとの混合に長く時間を要し、また混合工程における発熱が大きく冷却が必要であった。
本発明の熱伝導性粉体塗料組成物は、特定のピッチ系炭素短繊維フィラーを用いることで、高い熱伝導性が発現でき、電子機器の筐体内の熱を、系外に逃がすことを可能にならしめ、従来、熱抵抗にしかならなかった塗装皮膜にサーマルマネジメントの機能を付与することができる。

Claims (10)

  1. 樹脂成分100重量部に対し、ピッチ系炭素短繊維フィラーを含む熱伝導性材料を20〜900重量部配合したことを特徴とする熱伝導性粉体塗料組成物であり、当該ピッチ系炭素短繊維フィラーがメソフェーズピッチを原料とし、平均繊維径が5〜20μmであり、平均繊維長が5〜300μmであり、平均繊維径に対する繊維径分散の百分率(CV値)が5〜20%であり、走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平滑であり、かつ透過型電子顕微鏡での端面観察においてグラフェンシートが閉じていることを特徴とする熱伝導性粉体塗料組成物。
  2. 樹脂成分が、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の熱伝導性粉体塗料組成物。
  3. 樹脂成分が、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、およびウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の熱伝導性粉体塗料組成物。
  4. 樹脂成分が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の熱伝導性粉体塗料組成物。
  5. 熱伝導性材料としてピッチ系炭素短繊維フィラーに加え金属化合物フィラーを含む請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性粉体塗料組成物。
  6. 金属化合物フィラーが、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、金、銀、銅、鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化ホウ素、石英、炭化珪素、酸化珪素、および窒化珪素からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の熱伝導性粉体塗料組成物。
  7. 熱伝導性材料中のピッチ系炭素短繊維フィラー100重量部に対して金属化合物フィラーが1〜100重量部である請求項5または6に記載の熱伝導性粉体塗料組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性粉体塗料組成物を塗装し、その後塗膜を加熱し、熱伝導性粉体塗料組成物を相互に接着させて形成されてなる熱伝導性皮膜。
  9. 熱伝導率が3W/(m・K)より高い請求項8記載の熱伝導性皮膜。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性粉体塗料組成物を塗装しその後、塗膜を加熱し、熱伝導性粉体塗料組成物の構成成分を相互に接着させて熱伝導性皮膜を形成する熱伝導性皮膜の製造方法。
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