JP2011121852A - 高純度シリコンの製造方法 - Google Patents

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豊一 仲宗根
Eiji Nomura
英司 野村
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Abstract

【課題】 本発明は、太陽電池用、半導体用高純度化シリコンの製造における原料シリコンの前処理に係わるものであり、原料シリコンに含まれる不純物を前もって効率的に除去することにより、後段の精製工程における高純度シリコンの生産性の向上と製品品質の安定化を図るものである。
【解決手段】 原料の金属シリコンを1mm以下に粉砕した後、酸性水溶液又は塩基性水溶液に分散させてスラリー状とし、浸出温度を100℃以上、1tom以上の加圧下において浸出処理を行うことにより不純物を除去する。さらに効率的に不純物を除去するには、加圧下での浸出処理を行う前に、粉砕した原料シリコンを1000〜1400℃で焼成処理を行うことが望ましい。

Description

本発明は、品位の低い粗製金属シリコンから太陽電池用・半導体用高純度シリコンを製造するための前処理方法に関するものである。
太陽電池に用いられるシリコンの純度は7N以上、また半導体用シリコンの純度は9N以上が要求されている。出発原料である粗製金属シリコンの純度は通常96〜99.9%程度であるため、太陽電池用・半導体用に使用するには、原料シリコンを要求される高純度まで、含有している鉄、アルミニウム、チタン、燐、ホウ素、炭素などの不純物を除去する精製処理が必要である。
金属シリコンの高純度化には、原料シリコンを四塩化ケイ素、トリクロロシラン、モノシラン等を経由して精製した後、還元して高純度シリコンを得る化学法と、原料シリコンを溶融状態にして、真空処理及び不活性ガス・酸化性ガス・還元性ガスの送入による不純物の気化除去による冶金法が提唱されている。いずれの高純度化の精製方法においても、原料シリコンに含まれる不純物含有量の変動が、最終製品である高純度シリコンの純度・品質に大きく影響することから、安定した高純度シリコン製造には、原料シリコンの不純物の低減化と均一化が課題であった。
このため高純度化の前処理として原料シリコンの酸洗浄が提唱されているが、シリコン粒子の内部に包含している不純物の溶解・浸出が進まず、不純物の除去は不完全であった。特に最終製品である高純度シリコンの品質・特性に影響する燐、ホウ素の除去が難しく、これまでの原料シリコンの前処理は満足するものではなかった。
特開平6−144822 特開平9−165212 特開2002−29727 特開2006188367
本発明は、粗製金属シリコンから高純度シリコンの製造を目的とするものであり、原料シリコンの精製にあたり、前処理として原料シリコンに含有する不純物の浸出除去を促進させて、不純物の低減化と均一化を図るものである。
本発明の第1発明は、金属シリコンの高純度化を行うに当たり、前処理として原料の金属シリコンを平均粒径を1mm以下に粉砕し、酸性水溶液又は塩基性水溶液に分散させた後、100℃以上の温度、1tom以上の加圧下において不純物を浸出除去するものであり、原料シリコンに含まれる不純物を効率的に除去することが出来る。
本発明の第2発明は、金属シリコンの高純度化を行うに当たり、前処理として酸性水溶液による酸性浸出処理および塩基性水溶液による塩基性浸出処理を組み合わせて行うものである。
本発明の第3発明は、金属シリコンの高純度化の前処理として、酸性浸出処理や塩基性浸出処理を行うに当たり、粉砕した原料シリコンを1000〜1400℃の温度で焼成処理し、冷却した後に酸性・塩基性水溶液による浸出処理を行うものである。
これまでの前処理としての酸洗浄方式では、表面に存在する不純物の洗浄・除去に留まり、原料シリコンの結晶・粒子内部に存在する不純物の除去は困難な状況にあった。本発明の高純度シリコンの製造のために前処理の酸性・塩基性水溶液による浸出処理は、100℃以上の温度、かつ1atm以上の加圧力下において行うことから、シリコン粒子内部への浸出液の浸透性、溶解性が向上し、内部に存在する不純物を効率的に抽出・除去することが出来る。
さらに、本発明では、酸性・塩基性水溶液での浸出処理を行う前に、粉砕した原料シリコンを1000〜1400℃の温度で焼成処理し、冷却してから酸性・塩基性水溶液による浸出処理を行うことにより、原料シリコンの粒子・結晶内部に存在する不純物を粒子表面や結晶界面に拡散・移動させることが出来、酸性・塩基性水溶液による浸出処理において、鉄、アルミニム、チタンの他に、燐、ホウ素等の不純物を効率よく除去することが出来る。
本発明の原料シリコンの前処理方法は、不純物の低減化が進行し、原料品質の均一化・安定化が向上することから、後段工程の化学的精製処理や冶金法による精製処理における精製条件の緩和、精製操作の簡便化、製品品質の安定化を図ることが出来る。
上記の目的を達成ために本発明の実施の形態について述べる。高純度シリコンの製造に使用される原料は、金属シリコンの品位が96〜99.9%のものが使用される。不純物としては、Fe、Al、Ti等の金属の他に最終製品の品質・特性に大きく影響するP、Bが含まれる。高純度シリコン製造の上からは、P、Bの含有量が低い高品位の原料が好まれるが、製造コストの面からは低品位原料の使用となる。不純物含有量と製造コストのバランスから原料シリコンの品位は98〜99%程度のもの使用が多い。
本発明における原料シリコンの前処理方法は、酸性・塩基性水溶液による浸出処理の前に原料シリコンを平均粒子径として1mm以下に粉砕処理を行う。使用する粉砕機としては、ジョークラッシャー、ロールクラッシャー、ハンンマーミル、ボールミル、チューブミル、コーンミル等を使用することが出来る。浸出処理における不純物除去の上からは粉砕粒度を微細にする方が好ましいが、100μm以下の微細にすると、粉砕機からの不純物の混入が著しくなり、粉砕処理でのエネルギー消費量が増大する。また浸出処理後の洗浄・濾過性が著しく悪くなる。従って、粉砕物の平均粒度は1mm以下とするも、特に100〜500μmに粉砕することが好ましい。
原料シリコンの粉砕処理後に、浸出処理を行っても良いが、不純物を効率的に除去するには、浸出処理の前に、粉砕物を高温で焼成処理することが好ましい。この焼成処理の方法は、粉砕処理した原料シリコンを不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲気において、1000℃〜1400℃の温度で焼成処理を行うものである。この焼成処理により原料シリコンの粒子・結晶内部に存在した不純物を結晶粒界面ならびに粒子表面への移行を図ることが出来る。
この焼成処理におけるガス雰囲気としては、通常の空気の送入でも良いが、金属シリコンの酸化防止の面より不活性ガスまたは還元性ガスの送入が好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスの単独または混合ガスを使用することが出来る。還元性ガスとしては、不活性ガスに水素、COの還元ガスの他にメタン、プロパン、ブタンなどの炭化水素ガスを1〜50容量%の範囲で混入させたものを使用することが出来る。
焼成処理の温度は、1000〜1400℃であるが、これ以下の温度では不純物の移行が起こりにくい、また1400以上の高温では原料シリコンが融点する恐れがあり好ましくない。
焼成処理の保持時間は、5分〜180分であるが、5分以下では不純物の移行が不十分であり、逆に保持時間が長くなると加熱装置での滞留時間が長くなり、装置規模が増大し、また生産性が低下するので、保持時間としては15〜60分が好ましい。
焼成処理後は浸出処理を行うが、先ずは焼成物を100℃以下に冷却し、酸性水溶液または塩基性水溶液に投入し、分散させてスラリー状にする。スラリーの固形物濃度は10〜30%が好ましい。次いでオートクレーブに移送し、100℃以上の温度、1atm以上の加圧下において不純物の浸出・除去を行う。
浸出処理に使用する酸性水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素などの鉱産を水に対して1%〜30重量%を添加して調製することが出来る。塩基性水溶液は水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、アンモニアなどの塩基性化合物を水に対して1%〜30重量%を添加して調製することが出来る。
原料シリコンの浸出処理は、酸性水溶液と塩基性水溶液による単独の浸出処理でも良いが、酸性浸出と塩基性浸出処理との組み合わせて行うことが、不純物をより効率的に除去出来ることから好ましい。
原料シリコンの浸出処理後は、濾過・洗浄処理を行う。小規模の実験室レベルではブフナーロートでの吸引濾過により濾過・洗浄を行うことが出来る。また工業規模ではフィルタープレス、ロータリーバッキュウムフィルターなどの濾過機で濾過・洗浄を行うことが出来る。洗浄はイオン交換樹脂で不純物を除去した純水で行う。洗浄は洗浄濾液の比抵抗値が5万Ωcm以上になるまで行う。
濾過洗浄処理を終えて分離したケーキは乾燥機に投入して含有水分を1%以下にする。このように前処理をして得られた原料シリコンは、不純物が除去されて純度・品位が向上しており、後段の化学法や冶金法の精製処理工程に供することが出来る。本発明の前処理方法で精製された原料シリコンは、品位・品質が均一・安定しているので、後段の精製工程における精製処理操作が容易となり、製品品質の安定化が可能になる。
以下本発明の実施例について、更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 なお各例において使用する原料シリコンとしては、平均粒径が3〜10mmの塊状であり、純度が98%の金属シリコンを用いた。原料の粉砕処理はロールクラッシャーを使用して3mm以下に粗砕した後、さらにハンマーミルで平均粒径が150〜160μmになるように粉砕した。また、粉砕後の浸出処理には、1.5L容量のオートクーブを使用した。
[実施例1]
粉砕した原料シリコン(150g)を10%濃度の塩酸溶液(850g)に加えて、固形濃度が15%のスラリーとした。オートクレーブにシリコンスラリー(1,000g)を仕込み、150℃、約4.8atmの加圧下において、1時間攪拌を行いながら不純物の浸出処理を行った。大型ブフナーロートで吸引濾過を行い、さらに100,000Ωcm以上の抵抗値を有する洗浄用純水(5,000g)を使用して洗浄を行った。洗浄操作は洗浄濾液の比抵抗値が50,000Ωcm以上になるまで行った。濾過・洗浄操作で得られたケーキは、水分が1%以下になるよう熱風循環型乾燥機で130℃で乾燥し、不純物を除去した金属シリコンを得た。
[実施例2]
実施例1と同じ原料シリコンを用い、また同様の方法で粉砕処理を行い、次いで同様の方法でスラリー状とし、同条件下(150℃、約4.8atmの圧力、1時間)で浸出処理を実施した。実施例1と同じブフナーロートで同様に濾過・洗浄を実施した。その後、得られたウエットケーキを5%カセイソーダー溶液(560g)に投入してスラリー状にし、前記のオートクレーブを仕込み、酸浸出処理と同条件で浸出処理をおこなった。
その後、実施例1と同様に濾過・洗浄処理と乾燥処理を実施して、不純物を除去した金属シリコンを得た。
[実施例3]
実施例1、2と同じ原料シリコンを使用し、同様に粉砕処理を行った後、酸性・塩基性水溶液での浸出処理を実施する前に、外熱式小型回転炉において、粉砕シリコン(1,000g)を投入し、窒素ガスに水素ガスを5容量%を含有させた還元性ガスを送入しながら1,250℃で1時間の焼成処理を行った。次いで実施例2と同じように酸性・塩基性水溶液での浸出処理を行い、同様に濾過・洗浄処理、乾燥処理を行って不純物を除去した金属シリコンを得た。
[比較例1]
実施例1と同じ原料シリコンを用い、また同じ粉砕機で粉砕処理を行い、次いで10%塩酸で実施例1と同様にスラリー状にし、オートクレーブを用いて85℃、大気圧(1atm)、1時間の条件で浸出処理を実施した。次いで実施例1と同じ方法で濾過・洗浄処理、乾燥処理を行って、不純物を除去した金属シリコンを得た。
上記の実施例、比較例で得られた不純物を除去処理した金属シリコンの不純物含有量の分析結果を表1に示す。
Figure 2011121852

Claims (3)

  1. 金属シリコンの高純度化を行うに当たり、前処理として原料である金属シリコンを平均粒径を1mm以下に粉砕し、酸性水溶液又は塩基性水溶液に分散させた後、100℃以上の温度、1tom以上の加圧下において浸出処理によって不純物を除去することを特徴とする金属シリコンの精製方法。
  2. 金属シリコンの高純度化を行うに当たり、前処理として酸性水溶液による酸性浸出処理および塩基性水溶液による塩基性浸出処理を組み合わせて行うことを特徴とする請求項1の金属シリコンの精製方法。
  3. 金属シリコンの高純度化の前処理として、酸性浸出処理、塩基性浸出処理を行うに当たり、粉砕した原料シリコンを1000〜1400℃の温度で焼成処理した後、冷却してから不純物を浸出・除去することを特徴とする請求項1、2の金属シリコンの精製方法。
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