以下、本発明に係る展開構造体の好適な実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明に係る展開構造体は、以下の実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
図1は、本発明に係る展開構造体におけるX位節構造体をモデル化して表したX位節構造体の平面図である。図1(a)は、展開構造体を構成する1つのX位節構造体を示した平面図であり、図1(b)は、当該X位節構造体を構成する第1ユニットを示した平面図であり、図1(c)は、当該X位節構造体を構成する第2ユニットを示した平面図である。なお、図1(a)中の矢印R,Lは、X位節構造体の第1ユニット及び第2ユニットが回転する回転方向を示しており、矢印Rは時計回り方向、矢印Lは反時計回り方向を示している。
図1(a)に示すように、本発明に係る展開構造体1の構成単位であるX位節構造体10は、第1ユニット110と第2ユニット120とで構成されている。このX位節構造体10を第1ユニット110と第2ユニット120とに分解すると、図1(b)及び図1(c)で示すように分解することができる。
図1(b)及び図1(c)に示すように、第1ユニット110及び第2ユニット120は、複数本の棒状部材の一端部同士が剛節されて構成されたものである。ここで、m本の棒状部材で構成されるユニットをm位節と称し、m位節のユニットを第1ユニットと称す。同様に、n本の棒状部材で構成されるユニットをn位節と称し、n位節のユニットを第2ユニットと称す。なお、mとnは、それぞれ3以上の自然数である。また、X位節構造体10を構成する棒状部材、すなわち、第1ユニット110と第2ユニット120を構成する各棒状部材は、例えば、はり部材で構成されており、長軸方向の長さが幅方向の長さよりも大きい部材のことを意味する。また、棒状部材の断面形状は、本実施形態では矩形状とするが、棒状部材の断面形状はこれに限定されない。例えば、棒状部材の断面形状を円形状や楕円形状としてもよい。
本実施形態においては、第1ユニット110及び第2ユニット120は、いずれも4本の棒状部材で構成された4位節(m=n=4)である。従って、図1(b)に示すように、第1ユニット110は、4本の棒状部材111,112,113,114で構成されており、その一端部同士が節点115において接続されている。第1ユニット110の節点115は剛節であり、4本の棒状部材111,112,113,114は、平面視したときに常に十字状になるように配置され、その一端部同士が、直接に又は回転部品等の連結部材によって固定されている。同様に、図1(c)に示すように、第2ユニット120も4本の棒状部材121、122,123,124で構成されており、その一端部同士が節点125において接続されている。第2ユニット120の節点125も剛節であり、平面視したときに、4本の棒状部材121,122,123,124は、常に十字状になるように、その一端部同士が、直接に又は回転部品等の連結部材によって固定されている。なお、これら第1ユニット110と第2ユニット120とが連結部品によって連結された具体的な構成については実施例において後述する。
図1(b)に示す第1ユニット110と図1(c)に示す第2ユニット120とは、お互いの剛節された剛節部分である節点115,125同士を一致させるようにして、すなわち、第1ユニット110と第2ユニット120とは共通の中心軸を有するようにして、互いに組み合わされている。これにより、図1(a)に示すようなX位節構造体10が構成される。X位節構造体10において、第1ユニット110と第2ユニット120とは滑節状態で組み合わされている。ここで、滑節とは、2つの部材が共通の節点で互いに回転自在に接合された部分のことである。すなわち、滑節では、理想的には回転剛性(回転抵抗)が0である。
具体的には、第1ユニット110と第2ユニット120とは、共通の節点115,125で接合された状態であって相互に回転可能な状態となるように連結されている。これにより、第1ユニット110と第2ユニット120とは、当該X位節構造体10においては互いに規制されることなく作動(回転)することができる。なお、これら第1ユニット110と第2ユニット120とが連結部品によって連結された具体的な構成については実施例において後述する。
ここで、X位節構造体10とは、X本の棒状部材が節で接合されて構成されることを意味し、「X」は、m位節の第1ユニット110の「m」とn位節の第2ユニット120の「n」によって、X=m+nで定義される。なお、mとnがそれぞれ3以上の自然数であるので、Xは6以上の自然数となる。
本実施形態では、図1(a)〜図1(c)に示すように、第1ユニット110及び第2ユニット120はいずれも4本の棒状部材で構成された4位節(m=n=4)であるので、本実施形態に係るX位節構造体10は8位節構造体である。
次に、本発明に係る展開構造体1について、図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る展開構造体1をモデル化して表した展開構造体1の平面図である。なお、図2は、展開途中の展開構造体1の状態を示したものである。
図2に示すように、本発明に係る展開構造体1は、図1(a)に示すX位節構造体10が複数個組み合わされて構成されたものである。例えば、展開構造体1を平面視したときに、展開構造体1は、複数個のX位節構造体10をp行q列(p×q)のマトリクス状に周期的に配置して構成することができる。ここで、pとqは、それぞれ2以上の自然数である。
本実施形態においては、図2に示すように、X位節構造体10としては8位節構造体を用い、この8位節構造体を5×5のマトリクス状に配置して展開構造体1を構成している。但し、図2に示す最外周に位置する8位節構造体は、正しくは8位節構造体ではなく、他の8位節構造体の棒状部材に連結できないような棒状部材については、その記載を省略した構成となっている。すなわち、図2に示す展開構造体1は、最大展開時において隣り合う棒状部材同士で矩形状に囲まれる領域を1セルとしたときに、4×4セルの構造である。
本実施形態に係る展開構造体1は、図2に示すように、互いに隣り合うX位節構造体10の棒状部材同士が滑節連結されて構成されている。すなわち、隣り合うX位節構造体10は、一方のX位節構造体10の棒状部材と、他方のX位節構造体の棒状部材とが滑節連結されて構成されている。
隣り合うX位節構造体10の連結部分について、図3を用いてさらに詳細に説明する。図3は、図2に示す破線部分Aを拡大して示した本発明の展開構造体の一部拡大平面図である。なお、図3に示される矢印R,Lは、X位節構造体10の回転方向を示しており、矢印Rは時計回り方向、矢印Lは反時計回り方向を示している。
図3の左側に示される第1の8位節構造体10Aは、図1で説明したX位節構造体10と同じように、同じ長さの4本の棒状部材111A,112A,113A,114Aの一端部同士が剛節された4位節である第1ユニット110Aと、同様に同じ長さの4本の棒状部材121A,122A,123A,124Aの一端部同士が剛節された4位節である第2ユニット120Aとからなる。第1ユニット110A及び第2ユニット120Aもそれぞれは、平面視したときに4本の棒状部材が常に十字状になるように配置されて固定されたものである。また、第1ユニット110Aと第2ユニット120Aとは、第1ユニット110Aの節点115Aと第2ユニット120Aの節点125Aとで滑節連結されている。
また、図3の右側に示される第2の8位節構造体10Bも第1の8位節構造体10Aと同様の構成をしており、第2の8位節構造体10Bは、同じ長さの4本の棒状部材111B,112B,113B,114Bの一端部同士が剛節された4位節である第1ユニット110Bと、同様に同じ長さの4本の棒状部材121B,122B,123B,124Bの一端部同士が剛節された4位節である第2ユニット120Bとからなる。第1ユニット110B及び第2ユニット120Bのそれぞれは、平面視したときに4本の棒状部材が常に十字状になるように配置されて固定されたものである。また、第1ユニット110Bと第2ユニット120Bとは、第1ユニット110Bの節点115Bと第2ユニット120Bの節点125Bとで滑節連結されている。
さらに、このように構成された隣り合う第1の8位節構造体10Aと第2の8位節構造体10Bとは、一方の8位節構造体の棒状部材の他端部と他方の8位節構造体の棒状部材の他端部とが滑節連結されている。具体的には、図3に示すように、第1の8位節構造体10Aにおける第1ユニット110Aの棒状部材114Aの他端部116A(節点115Aとは反対側の端部)は、第2の8位節構造体10Bにおける第2ユニット120Bの棒状部材123Bの他端部126B(節点125Bとは反対側の端部)とで滑節連結されている。また、第1の8位節構造体10Aにおける第2ユニット120Aの棒状部材121Aの他端部126A(節点125Aとは反対側の端部)は、第2の8位節構造体10Bにおける第1ユニット110Bの棒状部材112Bの他端部116B(節点115Bとは反対側の端部)とで滑節連結されている。
以上のとおり、隣り合う第1及び第2の8位節構造体10A,10Bは、異なるユニット同士における棒状部材同士が滑節連結されたものである。このような連結構成によって、第1の8位節構造体10Aと第2の8位節構造体10Bとは、相対的な変位は互いに拘束されるが、曲げモーメントに対してはお互いに回転自由な状態となっている。なお、滑節とは、上述のとおり、2つの部材が共通の節点で互いに回転自在に接合された部分である。本実施形態においては、一方の棒状部材の端部と他方の棒状部材の端部とが連結部材によってピン結合されることにより、滑節が構成されている。
なお、図3には示されていないが、左右方向に隣り合うX位節構造体だけではなく、上下方向に隣り合うX位節構造体についても、互いに隣り合うX位節構造体の棒状部材の他端部同士は図3に示す構成と同様の構成で滑節連結されている。
次に、以上のように構成された本発明に係る展開構造体1が展開する挙動について、図4及び図5を用いて説明する。なお、図4及び図5で示される展開構造体1は、隣り合う8位節構造体の各ユニットの棒状部材同士が干渉しないように構成されたものである。この棒状部材同士が干渉しない具体的な構造については実施例にて後述する。また、本発明に係る展開構造体1は、8位節構造体が回転する面(回転面)に沿って展開する構造のものであり、基本的に回転面に対して垂直な方向には展開しないような構造となっている。すなわち、本発明に係る展開構造体は、二次元的に拡大変形又は縮小変形する構造となっている。
図4は、本発明に係る展開構造体1が展開する様子を模式的に表した平面図である。図4(a)は本発明に係る展開構造体1が折畳んだ状態を示しており、図4(b)及び図4(c)はその展開構造体1が展開する途中の状態を示しており、図4(d)は展開構造体1が最も展開した状態を示している。なお、展開構造体1としては、図2で示したものと同様に、8位節構造体を5×5のマトリクス状に配置した4×4セル構造のものを用いている。
まず、図4(a)に示す状態において、展開構造体1を構成する複数のX位節構造体のいずれか1つに対して局所的に回転作用を付加すると、展開構造体1の展開が開始する。本実施形態においては、図4(a)に示すように、8位節構造体10Aにのみ回転作用を付加する。すなわち、8位節構造体10Aにのみ回転モーメントを外力として作用させる。
8位節構造体10Aに回転作用が付加されると展開構造体1は二次元的に拡大するようにして、図4(a)の状態から図4(b)の状態に漸次変化し、展開構造体1はさらに拡大して図4(b)の状態から図4(c)の状態に漸次変化する。そして、さらに展開構造体1は、図4(c)の状態から図4(d)の状態へと漸次変化する。図4(d)に示すように、隣り合うX位節構造体10の棒状部材同士が一直線上に位置することになったとき、展開構造体1は最も展開した状態(最大展開)となる。
次に、展開構造体1が展開する挙動について、図5を用いてさらに詳細に説明する。図5は、図4(a)〜図4(d)の各図に示す破線部分Bを拡大して示した、本発明に係る展開構造体が展開する様子を表した展開構造体の一部拡大平面図である。図5(a)は図4(a)に対応し、図5(c)は図4(b)の破線部分Bに対応し、図5(f)は図4(c)の破線部分Bに対応する。なお、図5(a)〜図5(g)には、図4の各図における隣り合う4つの8位節構造体10A,10B,10C,10Dとその棒状部材しか描いておらず、本来であれば隣り合う4つの8位節構造体以外の8位節構造体における棒状部材も描く必要があるが、分かりやすくするために4つの8位節構造体以外の8位節構造体の棒状部材については描いていない。また、図5の各図において、棒状部材等の各構成要素の重なり状態は正確には描かれていない。棒状部材等の重なり状態(棒状部材の干渉)を考慮した展開動作については実施例において後述する。従って、図5の各図においては、棒状部材等の各構成要素が重ならないものとして、展開構造体の展開動作の説明を行う。なお、図5(a)中の矢印R,Lは、X位節構造体の回転方向を示しており、矢印Rは時計回り方向、矢印Lは反時計回り方向を示している。
図5(a)〜図5(g)は、展開構造体1を構成する8位節構造体が回転した場合に、展開構造体1が変位する様子を表した模式図である。本実施形態では、展開構造体1を構成する隣り合う4つの8位節構造体のうち、図4に示す8位節構造体10A,10B,10C,10Dに着目して説明する。
まず、展開構造体を構成する8位節構造体のいずれか1つに対して局所的に回転作用を付加する。本実施形態においては、図5(a)に示す8位節構造体10Aにのみ回転作用を付加する。すなわち、8位節構造体10Aにのみ回転モーメントを外力として作用させる。
8位節構造体10Aに回転作用を付加する場合、8位節構造体10Aを構成する第1ユニットと第2ユニットのうち少なくともいずれか1つに回転作用を付加すればよい。例えば、第1ユニット又は第2ユニットのいずれか1つにのみ回転作用を付加してもよいし、第1ユニット及び第2ユニットに対して同時に回転作用を付加してもよい。いずれの場合も、展開構造体を構成する全ての8位節構造体の第1ユニット及び第2ユニットに回転作用が伝播する。
本実施形態においては、図5(a)に示すように、8位節構造体10Aの第1ユニット(黒色の棒状部材)には矢印Lに示されるような反時計回りの回転作用を付加するとともに、第2ユニット(白抜きの棒状部材)には矢印Rに示されるような時計回りの回転作用を付加した。このように、第1ユニットと第2ユニットとに回転作用を付加することにより、第1ユニット及び第2ユニットには互いに反対方向の回転作用が付加されることになる。すなわち、第1ユニットと第2ユニットには反対回転モーメントが外力として作用することになる。
このように、図5(a)の矢印R,Lに示されるように、8位節構造体10Aの第1ユニットに矢印L(反時計回り)の回転作用を付加し、第2ユニットには矢印R(時計回り)の回転作用を付加すると、8位節構造体10Aと棒状部材を介して滑節連結される8位節構造体10B,10Cに、8位節構造体10Aの回転作用が伝播する。
より具体的には、8位節構造体10Aの第1ユニットの反時計回り(矢印L方向)の回転作用は、8位節構造体10Aの第1ユニットの棒状部材と滑節連結されている8位節構造体10Bの第2ユニットの棒状部材に伝播する。これにより、8位節構造体10Bの第2ユニットは時計回りに回転することになる。
これと同時に、8位節構造体10Aの第2ユニットの時計回り(矢印R方向)の回転作用は、8位節構造体10Aの第2ユニットの棒状部材と滑節連結されている8位節構造体10Bの第1ユニットの棒状部材に伝播する。これにより、8位節構造体10Bの第1ユニットは反時計回りに回転することになる。
8位節構造体10Cについても同様のことがいえる。すなわち、8位節構造体10Bへの回転作用の伝播と同時に、8位節構造体10Aの第1ユニットの反時計回り(矢印L方向)の回転作用は8位節構造体10Cの第2ユニットに伝播し、これにより、8位節構造体10Cの第2ユニットは時計回りに回転することになる。また、8位節構造体10Aの第2ユニットの時計回り(矢印R方向)の回転作用は8位節構造体10Cの第1ユニットに伝播し、これにより、8位節構造体10Cの第1ユニットは反時計回りに回転することになる。
また、同様に、8位節構造体10Bと8位節構造体10Cの回転作用は、8位節構造体10Dに伝播し、これにより、8位節構造体10Dの第1ユニット及び第2ユニットが回転することになる。
このようにして、8位節構造体10Aの第1ユニット及び第2ユニットの回転が進むと、図5(b)〜図5(g)に示すように、8位節構造体10Aの第1ユニット及び第2ユニットの回転に従って、8位節構造体10B,10C,10Dの第1ユニット及び第2ユニットも順次回転することになる。
ここで、図5(b)の状態は、図5(a)の状態から、8位節構造体10Aの第1ユニットが反時計回り(矢印L方向)に10度、第2ユニットが時計回り(矢印R方向)に10度それぞれ回転した状態を示したものである。
また、図5(c)の状態は、図5(a)の状態から、8位節構造体10Aの第1ユニットが反時計回り(矢印L方向)に20度、第2ユニットが時計回り(矢印R方向)に20度それぞれ回転した状態を示したものである。
同様に、図5(d)、図5(e)、図5(f)、図5(g)の状態は、それぞれ、図5(a)の状態から、8位節構造体10Aの第1ユニットが反時計回り(矢印L方向)に30度、40度、55度、75度、第2ユニットが時計回り(矢印R方向)に30度、40度、55度、75度それぞれ回転した状態を示したものである。
そして、図5(a)〜図5(g)に示すように、8位節構造体10A,10B,10C,10Dの回転が進むに従って、8位節構造体10A,10B,10C,10Dの各中心間距離が大きくなるようにして、8位節構造体10A,10B,10C,10Dの位置は漸次変位する。すなわち、8位節構造体10Aの中心を仮に固定したとすると、図5(a)〜図5(g)に示すように、8位節構造体10B,10C,10Dはそれぞれ8位節構造体10Aから遠ざかる方向に漸次変位する。
なお、図5(g)の状態の後は図5には図示していないが、隣り合う8位節構造体の第1ユニット(又は第2ユニット)の棒状部材同士のなす角が略180度の状態になったときに、8位節構造体10A,10B,10C,10Dの各中心間距離は最大になる。すなわち、この場合が、展開構造体1が最大に展開した状態である。この状態は、図4(d)に示す状態である。
以上説明した展開構造体1の展開動作は、展開構造体1が折畳んだ状態から展開する場合、すなわち、展開構造体1が拡大変形する場合についての説明であるが、これとは逆に、展開構造体が最大に展開した状態から折畳む場合、すなわち、展開構造体1が縮小変形する場合についても同様である。展開構造体1が縮小変形する場合は、任意のX位節構造体10に回転作用を付加することにより、図5(g)から図5(a)に戻るようにして展開構造体1は折畳まれることになる。
以上のとおり、本発明に係る展開構造体1は、展開構造体1を構成するX位節構造体10のいずれか1つに対して局所的に回転作用を付加することにより、全てのX位節構造体10に対して回転作用を伝播させることができる。すなわち、任意のX位節構造体10に対して局所的に回転作用を付加するだけで、全てのX位節構造体10を一様に拡大又は縮小変形させることができる。従って、複数の動力源又は複雑な動力源を用いることなく、容易に展開構造体全体を展開又は折畳むことができる。
次に、本発明に係る展開構造体の具体的な構造を示した実施例について説明する。
上記の実施形態においては、本発明に係る展開構造体をモデル化して説明したが、実際には展開構造体の各構成要素は所定の形状や寸法等を有するので、展開構造体が展開又は折畳む際には、これらの各構成要素が干渉することを考慮しなければならない。すなわち、X位節構造体が回転する際、各構成要素同士が衝突することがありうる。以下、各構成要素の具体的構造を説明しながら、各構成要素の干渉について詳述する。
図6は、本発明の実施例に係る展開構造体1の平面図であり、図6(a)は、展開構造体1が最も折畳んだ時(最小時)の状態を示す展開構造体の平面図であり、図6(b)は、展開構造体1が最大に展開した時(最大時)の状態を示す展開構造体の平面図である。なお、本実施例においても、X位節構造体10としては8位節構造体を用い、同じ構成の8位節構造体を5×5のマトリクス状に周期的に配置した4×4セル構造の展開構造体1を構成する。なお、上述の実施形態と同様に、最外周に位置する8位節構造体は、正しくは8位節構造体ではなく、他の8位節構造体の棒状部材に連結できないような棒状部材については、その記載を省略した構造となっている。
また、本発明の実施例に係る展開構造体1は、上述した本発明の実施形態に係る展開構造体1に対応し、基本構成は、本発明の実施形態に係る展開構造体1の構成と同様の構成である。すなわち、本発明の実施例に係る展開構造体1におけるX位節構造体10は、同じ長さの4本の棒状部材の一端部が剛節された4位節である第1ユニットと、同様に同じ長さの4本の棒状部材の一端部が剛節された4位節である第2ユニットとからなる8位節構造体である。第1ユニット及び第2ユニットのそれぞれは、4本の棒状部材が平面視したときに十字状に配置されて固定されたものであり、各ユニット同士はお互いの中心同士で滑節連結されている。また、隣り合う8位節構造体の各ユニットの棒状部材の他端部同士は滑節連結されている。
ここで、図6(a)及び図6(b)に示すように、1つの8位節構造体において棒状部材400の一端部が剛節された部分であって、第1ユニットと第2ユニットが滑節された部分を節点部200(第1ユニット及び第2ユニットの連結部分)と称し、隣り合う8位節構造体の棒状部材400の他端部同士が滑節連結された部分を滑節部300と称す。
本実施例において、滑節である節点部200及び滑節部300において、滑節の回転剛性は0ではなく、棒状部材の曲げ剛性(又はヤング率)に対して相対的に十分小さい有限の大きさを持つと仮定する。
このとき、滑節部300における棒状部材400同士を、ぜんまい等の回転バネ(図示せず)で連結することにより、本実施例に係る展開構造体1を構成することができる。この場合、図6(b)に示すように、この展開構造体1が最大に展開している状態を平衡状態とすると、外力として回転作用が付加されて、図6(a)に示すように展開構造体1が折畳んでいる状態では、展開構造体1は回転バネによって付勢されているので、折畳み状態を維持するためにはロック機構が必要となる。そして、当該ロック機構のロックを解除することにより、回転バネの復元力よって自動的に(外力を付加することなく)展開構造体1の展開が開始し、上記の平衡状態に戻る。
なお、このような回転バネ等の付勢手段は、展開構造体1の全ての滑節部300に設けてもよいが、いずれか1つのみの滑節部300に設けても構わない。また、このような付勢手段は、滑節部300だけではなく、第1ユニットと第2ユニットとが滑節された節点部200にも適用することができる。
次に、図6の各図に示す8位節構造体を構成する各構成要素の形状等について図7及び図8を参照しながら説明する。
図7は、本発明の実施例に係る8位節構造体の第1ユニット及び第2ユニットを構成する棒状部材400の概観斜視図である。
図7に示すように、本発明の実施例に係る8位節構造体の第1ユニット及び第2ユニットを構成する各棒状部材400は、断面矩形状の棒状のはり401で構成される。はり401の一方の一端部402は、4本のはり401同士を固定するための部分である。本実施例においては、4本のはり401の一端部402は、後述する連結部品によって固定される。はり401の他方の他端部403は、他のユニットの棒状部材の他端部が接続される部分である。当該他端部403には、別のユニットの棒状部材の他端部と滑節接続させるための貫通孔404が設けられている。
なお、はり401の寸法は、例えば、長さLが100mmで、幅Wが10mmで、厚みtが5mmである。また、はり401の材質は、例えば、アルミニウムである。
図8は、本発明の実施例に係る展開構造体において、隣り合う8位節構造体の棒状部材の他端部同士が滑節された部分である滑節部300の拡大側面図である。
図8に示すように、隣り合う8位節構造体における滑節部300は、一方の8位節構造体における第1ユニットの棒状部材400Aの他端部403Aと、他方の8位節構造体における第2ユニットの棒状部材400Bの他端部403Bとが連結部材によってピン結合された構成となっている。具体的には、一方の8位節構造体に係る棒状部材400Aの他端部403Aの貫通孔404Aと、他方の8位節構造体における棒状部材400Bの他端部403Bの貫通孔404Bとに、共通ピン405が貫通されて互いに接続された構成となっている。共通ピン405は、貫通孔404A,404Bを貫通するピン軸405aと、棒状部材400A,400Bを挟むようにしてピン軸405aの両端に設けられた2つのボルト405bとで構成される。この構成により、2つの棒状部材400A,400Bは、共通ピン405を軸にして回転自在な状態となっている。なお、連結構成としては、リベット等を用いても構わない。
なお、滑節部300を構成する構造は、図8に示すものに限らず、滑節部300の機能を達成できるようなものであれば、いかなるものでも構わない。但し、図8に示すように、棒状部材400Aと棒状部材400Bとを連結する連結部材は、棒状部材400A、400Bを側面から見たときに、各棒状部材400A、400Bから見えないような構造とすることが好ましい。これは、棒状部材が回転したときに、当該連結部材同士が干渉することを回避するためである。
次に、本実施例に係る展開構造体1の各構成要素の干渉について、図6に戻って、図6を参照しながら説明する。
図6(a)及び図6(b)において、滑節部300の大きさが棒状部材400の幅と同じかそれよりも小さく、また、滑節部300の大きさが節点部200の大きさよりも小さく、さらに、棒状部材400の長さが節点部200及び滑節部300の大きさよりも十分に長い場合、考慮しなければならない干渉は、隣り合う8位節構造体における棒状部材400同士の干渉(又は棒状部材の他端部を構成する滑節部300同士の干渉、又は棒状部材400と滑節部300の干渉)、及び、棒状部材400(又は滑節部300)と隣り合う8位節構造体の節点部200との干渉である。すなわち、第1ユニットと第2ユニットとの回転面を構成するX−Y平面に平行な面において、節点部200、滑節部300及び棒状部材400が同一平面に存在する場合、これらの各構成要素において干渉(衝突)が生じることになる。
まず、隣り合う8位節構造体における棒状部材400同士の干渉(又は滑節部300同士の干渉、又は棒状部材400と滑節部300の干渉)について説明する。
上述の図4及び図5に示す展開構造体の動作においては、棒状部材400同士等の干渉を考慮しなかった。しかしながら、現実には、展開構造体の各構成要素は所定の形状を有するので、展開構造体が図4及び図5に示すような展開動作を行う場合、棒状部材400同士、又は滑節部300同士、又は棒状部材400と滑節部300とが干渉することになる。なお、棒状部材の幅Wが滑節部300の最大長さと同じかそれよりも大きい場合は、干渉としては、棒状部材400同士の干渉を回避できれば残りの干渉は回避できるので、以降は、棒状部材400同士の干渉について説明する。
棒状部材400同士が干渉する場合とは、隣り合う8位節構造体の棒状部材400が同一平面状にある場合である。この場合、展開構造体が展開または折畳まれる途中で棒状部材400同士が衝突してしまい、棒状部材400同士が交差することができない状態が生じる。このように棒状部材400同士が衝突しあうと、その時点で8位節構造体の回転は拘束され、展開構造体1の展開動作または折畳み動作は止まることになる。
従って、展開構造体1の展開率を最大にするためには、隣り合う8位節構造体の棒状部材400同士の干渉を回避する必要がある。このような干渉を回避するためには、8位節構造体の節点部200の構造が重要となる。ここで、展開率は、展開構造体が最も小さくなった状態(折畳み時)に対する最も大きくなった状態(展開時)の比で表すことができる。展開率は、棒状部材400同士の干渉を回避すればするほど大きくなるが、逆に、棒状部材同士が干渉すればするほど小さくなる。つまり、棒状部材400同士の干渉を全て回避することができれば最大の展開率を得ることができる。
図9は、本発明の実施例に係る展開構造体の節点部を構成する棒状部材干渉回避部材500の分解斜視図である。本発明の実施例に係る展開構造体に用いられる棒状部材干渉回避部材500は、棒状部材同士の干渉を全て回避することができるように構成された節点部200の具体的な構成である。
図9に示すように、本発明の実施例に係る展開構造体において、8位節構造体の節点部は、棒状部材干渉回避部材500で構成されている。図9に示す棒状部材干渉回避部材500は、8位節構造体を構成する第1ユニット及び第2ユニットにおける全ての棒状部材同士が干渉しないように構成されたものである。また、棒状部材干渉回避部材500は、1つの8位節構造体において、第1ユニットの4本の棒状部材が剛節され、第2ユニットの4本の棒状部材も剛節され、さらに、これら第1ユニットと第2ユニットとは滑節されている構成も実現している。
図9に示すように、棒状部材干渉回避部材500は、棒状部材を回転させるための8つの回転部品510a〜510hと、回転部品510a〜510hの中心の軸合わせを行って回転部品510a〜510hの回転軸をなすピン520と、8つの回転部品510a〜510hを所望に剛節又は滑節させるための2本のスタッドボルト530,531と、4つの六角ナット540と、その他、回転部品510a〜510hの間に挿入する7つの座金と、六角ナット540と回転部品510a,510hとの間に挿入する4つの座金とからなる。棒状部材干渉回避部材500を構成するこれらの部品はアルミニウム等の金属材料で作製することができる。なお、図9に示す回転部品510a〜510hには、それぞれ棒状部材が1本ずつ固定されている。すなわち、回転部品510a〜510hは、8位節構造体の各棒状部材を固定するための連結部品として機能し、本実施例では、回転部品510a〜510hと各棒状部材とは一体成形された構成となっている。
回転部品510a〜510hはそれぞれ、薄肉円板形状をなし、その中心に、ピン520を貫通させるためのピン用貫通孔が設けられている。また、回転部品510a〜510hには、それぞれ、スタッドボルト530,531を貫通させるための2つのボルト用貫通孔が設けられている。
図9に示すように、棒状部材干渉回避部材500は、8つの回転部品510a〜510hを積層し、各回転部品510a〜510hのピン用貫通孔にピン520を貫通し、各回転部品510a〜510hのボルト用貫通孔にスタッドボルト530,531を貫通させ、六角ナット540によってスタッドボルト530,531を固定することにより、作製することができる。これにより、第1ユニットを構成する4本の棒状部材同士が剛節されるとともに、第2ユニットを構成する4本の棒状部材同士が剛節され、また、第1ユニットと第2ユニットとが滑節された構成とすることができる。なお、各部材の間には、座金が挿入される。
このように棒状部材干渉回避部材500は、8つの回転部品510a〜510hが積層して構成されたものであり、下から順に、回転部品510a、回転部品510b、回転部品510c、回転部品510d、回転部品510e、回転部品510f、回転部品510g、回転部品510hが積み重ねられて構成されている。この積層した回転部品510a〜510hの各回転部品の位置を、レベル1〜レベル8の8つの階層レベルを用いて表現すると、回転部品510aはレベル1に位置する。同様に、回転部品510b〜回転部品510hは、それぞれレベル2〜レベル8に位置することになる。
ここで、各回転部品510a〜510hに棒状部材が固定された場合を考えると、8つの回転部品510a〜510hは4種類の形態となる。すなわち、棒状部材を考慮すると、レベル1に位置する回転部品510aとレベル8に位置する回転部品510hとは同じ構成となる。同様に、レベル2に位置する回転部品510bとレベル3に位置する回転部品510cとは同じ構成となる。同様に、レベル4に位置する回転部品510dとレベル5に位置する回転部品510eとが、また、レベル6に位置する回転部品510fとレベル7に位置する回転部品510gとが、同じ構成となる。
以下、棒状部材が固定された各回転部品の具体的な構成について、図10〜図13を用いて説明する。なお、図10〜図13に示す棒状部材の寸法は、図10〜図13以外の図に示される棒状部材の寸法とは正確には一致しない。
図10は、レベル1に位置する回転部品510aの平面図及び断面図である。
図10に示すように、レベル1に位置する回転部品510aには、その円形部分の中心にピン520を貫通させるためのピン用貫通孔511aが設けられている。さらに、回転部品510aには、2本のスタッドボルトのうちの一方のスタッドボルト530を貫通させるためのボルト用貫通孔512aと、他方のスタッドボルト531を貫通させるためのボルト用貫通孔513aとが設けられている。
ボルト用貫通孔512aの孔形状は、スタッドボルト530の断面形状と同じで円形状をしており、その孔径はスタッドボルト530の径とほぼ同じである。これにより、スタッドボルト530はボルト用貫通孔512aに規制されるので、回転部品510aが回転するときの回転角は、スタッドボルト530が回転部品510aの中心を中心として回転するときの回転角と連動する。
また、ボルト用貫通孔513aの孔形状は、ピン用貫通孔511aの中心を中心とし、当該中心からボルト用貫通孔513aに貫通されるスタッドボルト531の中心までの距離を半径とした円Caにおいて、貫通するスタッドボルト531が当該円Caの半円弧分移動可能な略C字形状をしている。このC字形状の開口幅は、スタッドボルト531の断面の円の直径とほぼ等しい。この構造により、スタッドボルト531がボルト用貫通孔513a内を円Caの円弧に沿って自由に移動可能な状態であり、回転部品510aの回転とスタッドボルト531の回転とは連動せず、スタッドボルト531の位置が変動しなくても、回転部品510aは最大で180度回転することができる。
ボルト用貫通孔512aは、ボルト用貫通孔の中心が上記円Caの円周上に位置するように設けられる。また、ボルト用貫通孔512aとボルト用貫通孔513aとは、スタッドボルト531がボルト用貫通孔513aの両端に位置する時のスタッドボルト531の中心をそれぞれOa、O’aとしたときに、ボルト用貫通孔512aの中心から中心Oa、O’aまでの距離が等しくなるような位置関係にある。
レベル1に位置する回転部品510aにおいて、棒状部材の一端部は、図10に示すように、ピン用貫通孔511aの中心とボルト用貫通孔512aの中心を通る直線上であって、ピン用貫通孔511aに対してボルト用貫通孔512a側の回転部品510aの側部に固定されている。
なお、回転部品510aに固定された棒状部材の他端部(開放端)の近傍には、他のユニットの棒状部材の他端部と滑節結合させるための貫通孔が設けられている。
次に、レベル2に位置する回転部品510bについて説明する。図11は、レベル2に位置する回転部品510bの平面図及び断面図である。
図11に示すように、レベル2に位置する回転部品510bは、レベル1に位置する回転部品510aと同様に、その中心にピン520を貫通させるために設けられたピン用貫通孔511bと、スタッドボルト530,531をそれぞれ貫通させるために設けられたボルト用貫通孔512b,513bとを有する。
ボルト用貫通孔512bは、図10に示すボルト用貫通孔513aと同様の略C字形状をしており、スタッドボルト530の位置が変動しなくても、回転部品510bは最大で180度回転することができる。また、ボルト用貫通孔513bは、図10に示すボルト用貫通孔512aと同様の形状をしており、回転部品510bが回転するときの回転角は、スタッドボルト531が回転部品510bの中心を中心として回転するときの回転角と連動する。
ボルト用貫通孔512bとボルト用貫通孔513bとの位置関係についても図10と同様に、両貫通孔は、スタッドボルト530がボルト用貫通孔512bの両端に位置する時のスタッドボルト530の中心をそれぞれOb、O’bとしたときに、ボルト用貫通孔513bの中心から中心Ob、O’bまでの距離が等しくなるような位置関係にある。
また、レベル2に位置する回転部品510bにおいて、棒状部材の一端部は、図11に示すように、中心Obと中心O’bを通る直線上であって、ピン用貫通孔511bに対して中心O’b側の回転部品510bの側部に固定されている。
なお、回転部品510bに固定された棒状部材の他端部(開放端)の近傍には、他のユニットの棒状部材の他端部と滑節結合させるための貫通孔が設けられている。
次に、レベル3に位置する回転部品510cについて説明する。
レベル3に位置する回転部品510cは、図11に示すレベル2に位置する回転部品510bと構造は全く同じであるので、その説明は省略する。
但し、スタッドボルト530,531が貫通するボルト用貫通孔は、レベル2に位置する回転部品510bとは異なり、レベル3に位置する回転部品510cでは、略C字形状のボルト用貫通孔にスタッドボルト531が貫通し、もう一方の小円形のボルト用貫通孔にスタッドボルト530が貫通する。この2本のスタッドボルトの各貫通孔への貫通方法は、レベル1に位置する回転部品510aにおけるスタッドボルト530,531の貫通方法と同様である。
次に、レベル4に位置する回転部品510dについて説明する。図12は、レベル4に位置する回転部品510dの平面図及び断面図である。
図12に示すように、レベル4に位置する回転部品510dは、レベル1〜3に位置する回転部品510a〜510cと同様に、その中心にピン520を貫通させるために設けられたピン用貫通孔511dと、スタッドボルト530,531をそれぞれ貫通させるために設けられたボルト用貫通孔512d,513dとを有する。
ボルト用貫通孔512dは、図10に示すボルト用貫通孔513aと同様に略C字形状をしており、スタッドボルト530の位置が変動しなくても、回転部品510dは最大で180度回転することができる。また、ボルト用貫通孔513dは、図10に示す小円形のボルト用貫通孔512aと同様の形状をしており、回転部品510dが回転するときの回転角は、スタッドボルト531が回転部品510bの中心を中心として回転するときの回転角と連動する。
ボルト用貫通孔512dとボルト用貫通孔513dとの位置関係についても図10と同様に、両貫通孔は、スタッドボルト530がボルト用貫通孔512dの両端に位置する時のスタッドボルト530の中心をそれぞれOd、O’dとしたときに、ボルト用貫通孔513dの中心から中心Od、O’dまでの距離が等しくなるような位置関係にある。
また、レベル4に位置する回転部品510dにおいて、棒状部材の一端部は、図12に示すように、ピン用貫通孔511dの中心とボルト用貫通孔513dの中心を通る直線上であって、ピン用貫通孔511dに対して略C字形状のボルト用貫通孔512d側の回転部品510dの側部に固定されている。
なお、回転部品510dに固定された棒状部材の他端部(開放端)の近傍には、他のユニットの棒状部材の他端部と滑節結合させるための貫通孔が設けられている。
次に、レベル5に位置する回転部品510eについて説明する。
レベル5に位置する回転部品510eは、図12に示すレベル4に位置する回転部品510dと構造は全く同じであるので、その説明は省略する。
但し、スタッドボルト530,531が貫通するボルト用貫通孔は、レベル4に位置する回転部品510dとは異なり、レベル5に位置する回転部品510eでは、略C字形状のボルト用貫通孔にスタッドボルト531が貫通し、もう一方の小円形のボルト用貫通孔にスタッドボルト530が貫通する。この2本のスタッドボルトの各貫通孔への貫通方法は、レベル1,3に位置する回転部品510a,510cにおけるスタッドボルト530,531の貫通方法と同様である。
次に、レベル6に位置する回転部品510fについて説明する。図13は、レベル6に位置する回転部品510fの平面図及び断面図である。
図13に示すように、レベル6に位置する回転部品510fには、レベル1に位置する回転部品510aと同様に、その中心にピン520を貫通させるために設けられたピン用貫通孔511fと、スタッドボルト530,531をそれぞれ貫通させるために設けられたボルト用貫通孔512f,513fとを有する。
ボルト用貫通孔512fは、図10に示すボルト用貫通孔513aと同様に略C字形状をしており、スタッドボルト530の位置が変動しなくても、回転部品510bは最大で180度回転することができる。また、ボルト用貫通孔513fは、図10に示す小円形のボルト用貫通孔512aと同様の形状をしており、回転部品510fが回転するときの回転角は、スタッドボルト531が回転部品510bの中心を中心として回転するときの回転角と連動する。
ボルト用貫通孔512fとボルト用貫通孔513fとの位置関係についても図10と同様に、両貫通孔は、スタッドボルト530がボルト用貫通孔512fの両端に位置する時のスタッドボルト530の中心をそれぞれOf、O’fとしたときに、ボルト用貫通孔513fの中心から中心Of、O’fまでの距離が等しくなるような位置関係にある。
また、レベル6に位置する回転部品510fにおいて、棒状部材の一端部は、図13に示すように、中心Ofと中心O’fを通る直線上であって、ピン用貫通孔511fに対して中心Of側の回転部品510fの側部に固定されている。
なお、回転部品510fに固定された棒状部材の他端部(開放端)の近傍には、他のユニットの棒状部材の他端部と滑節結合させるための貫通孔が設けられている。
次に、レベル7に位置する回転部品510gについて説明する。
レベル7に位置する回転部品510gは、図13に示すレベル6に位置する回転部品510fと構造は全く同じであるので、その説明は省略する。
但し、スタッドボルト530,531が貫通するボルト用貫通孔は、レベル6に位置する回転部品510fとは異なり、レベル7に位置する回転部品510gでは、略C字形状のボルト用貫通孔にスタッドボルト531が貫通し、もう一方の小円形のボルト用貫通孔にスタッドボルト530が貫通する。この2本のスタッドボルトの各貫通孔への貫通方法は、レベル1,3,5に位置する回転部品510a,510c,510eにおけるスタッドボルト530,531の貫通方法と同様である。
最後に、レベル8に位置する回転部品510hについて説明する。
レベル8に位置する回転部品510hは、図10に示すレベル1に位置する回転部品510aと構造は全く同じであるので、その説明は省略する。
但し、スタッドボルト530,531が貫通するボルト用貫通孔は、レベル1に位置する回転部品510aとは異なり、レベル8に位置する回転部品510hでは、略C字形状のボルト用貫通孔にスタッドボルト530が貫通し、もう一方の小円形のボルト用貫通孔にスタッドボルト531が貫通する。この2本のスタッドボルトの各貫通孔への貫通方法は、レベル2,4,6に位置する回転部品510b,510d,510fにおけるスタッドボルト530,531の貫通方法と同様である。
再び図9に戻って、棒状部材干渉回避部材500の全体構成について説明する。図9に示すように、棒状部材が固定されたこれらの回転部品510a〜510hを積み重ねて、回転部品510a〜510hの2つのボルト用貫通孔に上述した貫通方法によってスタッドボルト530,531を貫通させ、六角ナット540によってスタッドボルト530,531を固定し、各部品間に座金を配置することにより、棒状部材干渉回避部材500を作製することができる。
これにより、レベル1に位置する回転部品510aと、レベル3に位置する回転部品510cと、レベル5に位置する回転部品510eと、レベル7に位置する回転部品510gとは、スタッドボルト530によって剛節連結されることになり、スタッドボルト531によって滑節連結されることになる。この棒状部材が固定された回転部品510a,510c,510e,510gによって構成されるユニットが8位節構造体の第1ユニットである。
また、レベル2に位置する回転部品510bと、レベル4に位置する回転部品510dと、レベル6に位置する回転部品510fと、レベル8に位置する回転部品510hとは、スタッドボルト531によって剛節連結されることになり、スタッドボルト530によって滑節連結されることになる。この棒状部材が固定された回転部品510b,510d,510fによって構成されるユニットが8位節構造体の第2ユニットである。
そして、棒状部材が固定されたレベル1,3,5,7に位置する回転部品510a,510c,510e,510gで構成された第1ユニットと、棒状部材が固定されたレベル2,4,6,8に位置する回転部品510b,510d,510f,510hで構成された第2ユニットとを組み合わせることにより、8位節構造体を構成することとができる。
このように構成された8位節構造体において、レベル1,3,5,7に位置する回転部品を備える第1ユニットと、レベル2,4,6,8に位置する回転部品を備える第2ユニットとは、それぞれ4本の棒状部材が剛節されて構成されたものであるので、回転部品が回転しても各ユニットにおける4本の棒状部材の相対的な位置関係は変化しない。また、第1ユニットと第2ユニット同士は滑節されて構成されたものであるので、各ユニットの回転部品はお互いに規制されることなく回転することができる。このように、本実施例に係る8位節構造体は、上記の棒状部材干渉回避部材500を備えたものであるので、8位節構造体の8本の棒状部材は、それぞれ8層の異なった層に位置するように設けられる。これにより、第1ユニット及び/又は第2ユニットが回転したとしても、全ての棒状部材同士が干渉しあうことがない。すなわち、棒状部材同士の干渉を回避することができる。
このような棒状部材干渉回避部材500を展開構造体1全体に適用した場合について、図14を用いて説明する。図14(a)は、本発明に係る展開構造体1をモデル化して表した展開構造体の平面図であり、図14(b)は、本発明に係る展開構造体1における棒状部材の層レベルを示した図である。図14(a)、(b)における数字は、棒状部材の層レベルを表している。すなわち、「+1」がレベル1(1層目)、「+2」がレベル2(2層目)、「+3」がレベル3(3層目)、「+4」がレベル4(4層目)、「+5」がレベル5(5層目)、「+6」がレベル6(6層目)、「+7」がレベル7(7層目)、「+8」がレベル8(8層目)をそれぞれ表している。
図14(a)に示すように、全ての滑節部300において、滑節される隣り合う棒状部材400は1層違いの構造となっている。このように、隣り合う8位節構造体における隣り合う棒状部材400の全てにおいて層が異なっているので、展開構造体1が展開する際、又は折畳む際に、各棒状部材400同士が干渉することはない。
図15は、展開構造体1の折畳み時と展開時における8位節構造体の第1ユニット及び第2ユニットの棒状部材の層レベルを示した模式図である。図15(a)は、展開構造体の折畳み時における8位節構造体の棒状部材の位置を示しており、図15(b)は、展開構造体の展開時における8位節構造体の棒状部材の位置を示している。
また、図16は、図15に対応する展開構造体の折畳み時と展開時における8位節構造体の各レベルにおける回転部品の平面図である。図16(a)は、展開構造体が最も折畳まれた時(折畳み時)における各レベルの回転部品の位置を示しており、図16(b)は、展開構造体の最も展開した時(展開時)における各レベルの回転部品の位置を示している。
以上、図9〜図16に示すように、節点部200に棒状部材干渉回避部材500を用いることにより、8位節構造体を棒状部材400ごとの8層構造にすることができる。これにより、展開構造体1を拡大又は縮小させる際に、展開構造体1を構成する全ての8位節構造体において、8本の棒状部材同士の干渉を回避することができる。従って、展開構造体1を可能な限り小さく折畳むことができるとともに、可能な限り大きく展開させることが可能となる。
また、節点部200を構成する構造は、図9に示すものに限らず、節点部200の機能を達成できるようなものであれば、いかなるものでも構わない。すなわち、第1ユニット及び第2ユニットの各ユニットにおける棒状部材400同士が剛節され、さらに、第1ユニットと第2ユニットとが滑節されたものであればよい。また、棒状部材同士の干渉を回避するためには、図9に示した棒状部材干渉回避部材500を用いることで実現できるが、棒状部材同士の干渉を回避する部材としては、図9に示す棒状部材干渉回避部材500に限らない。
次に、再び図6に戻り、棒状部材400(又は滑節部300)と隣接する8位節構造体の節点部200との干渉について説明する。
棒状部材400(又は滑節部300)と節点部200との干渉を考慮すると、図6(a)に示す状態が、展開構造体が最も小さく折畳まれた時の状態となり、図6(b)に示す状態が、展開構造体が最も大きく展開した時の状態となる。これは、棒状部材400(又は滑節部300)と節点部200との干渉は回避することができないからである。
従って、本発明の実施例に係る展開構造体1は、図6(a)に示す最も小さく折畳まれた状態から、図6(b)に示す最も大きく展開した状態へと漸次展開する。なお、図6(a)から図6(b)までにおける展開構造体1が展開する際の挙動については、図4及び図5で説明した展開構造体1の挙動と同じであるので、展開構造体1の回転動作及び展開する様子の説明は省略する。
以上のとおり、本発明の実施例に係る展開構造体1においても、展開構造体1を構成するX位節構造体のいずれか1つに対して局所的に回転作用を付加することにより、全てのX位節構造体に対して回転作用を伝播させることができる。すなわち、任意のX位節構造体10に対して局所的に回転作用を付加するだけで、全てのX位節構造体を一様に拡大又は縮小変形させることができる。従って、複数の動力源又は複雑な動力源を用いることなく、容易に展開構造体全体を展開又は折畳むことができる。
なお、本実施例においては、展開構造体1を構成する全ての8位節構造体の各構成要素は全て同じ形状及び寸法であるとした。具体的には、全ての棒状部材400については、形状並びにその長さ、幅及び厚み等の寸法が同じであり、全ての節点部200及び滑節部300を構成する部品についても、その形状及び寸法等は全て同じである。
次に、本発明の実施例に係る展開構造体1の展開率について図17を用いて説明する。図17は、本発明の実施例に係る展開構造体1が最も折畳まれた時における展開構造体1の一部拡大図である。
展開構造体1が最も折畳んだ状態では、上述したように、上記の棒状部材干渉回避部材500を用いたとしても、棒状部材400と節点部200との干渉は避けることができない。従って、図17に示すように、展開構造体1が最も折畳んだ状態では、棒状部材400と節点部200とが接触した状態となる。
ここで、8位節構造体を図6に示すようにp×pのマトリクス状に複数個配置した展開構造体1において、図17に示すように、棒状部材400の長さをL、節点部200の直径をD、滑節部300の直径及び棒状部材400の幅をWとすると、展開構造体1が最大に展開した時における隣り合う8位節構造体間の中心距離Hmaxは、Hmax=2×(p−1)×Lで表される。また、展開構造体1が最も折畳んだ時(最小時)における隣り合う8位節構造体間の中心距離Hminは、Hmin=(p−1)×((D+W)×L)1/2となる。
従って、この場合、8位節構造体の展開率Dは、D=Hmax/Hminで表されるので、D=2(L/(D+W))1/2となる。
例えば、L=100mm、D=26mm、W=10mmとして8位節構造体を構成し、これを5×5のマトリクス状に配置して展開構造体1を作製したとすると、Hmax=800mm、Hmin=240mmとなるので、展開率Dは、D=約3.33となる。すなわち、この場合の展開構造体1は、折畳んだ状態から最大に展開すると、約3.33倍の大きさに展開することになる。
以上の本発明に係る展開構造体は、展開機構が比較的簡単であるため、モジュール化した展開構造体を容易に製造することができ、展開機構を必要とする様々な展開装置に適用することができる。
以上、本発明に係る展開構造体について具体的に説明したが、本発明に係る展開構造体は上記の実施形態及び実施例に限るものではない。例えば、以下のような場合も本発明に含まれる。
(変形例1)
上記の実施形態においては、4本の棒状部材で構成した第1ユニット110及び第2ユニット120を用い、X位節構造体10を8本の棒状部材で構成したが、これに限らない。
例えば、第1ユニット110と第2ユニット120をそれぞれ3本の棒状部材で構成し、6位節構造体としてもよい。また、第1ユニット110と第2ユニット120をそれぞれ6本以上の複数の棒状部材で構成し、X位節構造体を12位以上の節構造体としてもよい。例えば、第1ユニット110と第2ユニット120の棒状部材をそれぞれ6本の棒状部材で構成し、12位節構造体としてもよい。
(変形例2)
また、上記の実施形態においては、棒状部材を十字形状に構成した4位節のユニット同士を組み合わせて8位節構造体とし、これをマトリクス状に配置して展開構造体を構成したが、これに限らない。
例えば、図18に示すように、最大展開時において、1つの頂点に対して2つの三角形と2つの六角形とが接している構成が周期的に配置された、いわゆる籠目構造の展開構造体1’とすることもできる。
その他、(X+Y)位節構造体、または(X+Y+Z+・・・)位節構造体の様々な二次元配置構造とすることができる。但し、高い展開率を得るためには、周期構造であることが望ましい。
(変形例3)
上記の実施形態においては、第1ユニット110と第2ユニット120と2つのユニットでX位節構造体10を構成したが、X位節構造体10を2つ以上の複数のユニットで構成してもかまわない。
例えば、第1ユニット、第2ユニット、第3ユニットの3つのユニットで構成することができる。なお、この場合も上記の変形例1又は変形例2を適用することができる。
(変形例4)
上記の実施形態においては、展開構造体1を展開する際、1つのX位節構造体10に対して局所的に回転作用を付加したが、これに限るものではない。
例えば、図2に示す矩形状の展開構造体1において、1つの対角線上の端部に位置する2つのX位節構造体10に対して同時に回転作用を付加させてもよい。また、この展開構造体1において、2つの対角線上の端部に位置する4つのX位節構造体10に対して同時に回転作用を付加することができる。
このように、複数個所で同時に回転作用を付加することにより、展開構造体に対して大きな回転モーメントを付加することができるので、展開構造体が大きい場合や展開構造体の棒状部材の質量が大きい場合であっても、容易に当該展開構造体を展開することができる。
(変形例5)
上記の実施形態においては、展開構造体1を展開する際、積極的に外力を付加することにより第1ユニットと第2ユニットに反転回転作用を与えたが、結果として反転回転作用となる外力を付加してもかまわない。
例えば、図3において、棒状部材121Aと棒状部材112Bとの間及び棒状部材114Aと棒状部材123Bとの間における結合節の間にリニアアクチュエータを内挿し、当該リニアアクチュエータを上下に駆動させることによって、展開構造体1を展開又は折畳むこともできる。
なお、上記の実施形態及び変形例においては、全ての許容される外力は内部部材の回転変形に変換される。
(変形例6)
上記の実施形態においては、展開構造体1は複数個のX位節構造体10を二次元的な平面上に配置して構成したが、これに限るものではない。
例えば、図19に示すように、X位節構造体を半径が比較的大きい略球面体の一部である略曲面状に配置して展開構造体を構成することができる。図19(a)は、本発明の変形例6に係る展開構造体1”の平面図であり、図19(b)は、本発明の変形例6に係る展開構造体1”の断面図である。
図19(a)及び図19(b)に示すように、本発明の変形例6に係る展開構造体1”は、最大展開時における8位節構造体が3次元的に配置されている。つまり、展開構造体1”の中央に位置する8位節構造体のZ軸方向の位置を基準にすると、図19(b)に示すように、最大展開時においては、中央部に位置する8位節構造体から周辺部に位置する8位節構造体に向かうに従って、Z軸方向の位置が漸次大きくなる。
また、本変形例に係る展開構造体1”を、折畳み時から19(a)に示す最大展開時に展開する場合、各8位節構造体は、展開するに従って、Z軸方向の位置が漸次大きくなる。
このように構成される展開構造体1”は、図19(b)に示すように、1つの8位節構造体における各層レベルの棒状部材は全て水平になっている。また、それぞれの8位節構造体において、節点部(回転部品)と棒状部材との連結部分には僅かな角度変化をつけている。つまり、棒状部材の一端部と他端部の高さ方向(Z軸方向)の位置が異なるように構成されている。このように、本変形例に係る展開構造体1”は、三次元展開機構を有するものである。
(変形例7)
上記の実施例に係る展開構造体における棒状部材干渉回避部材500の回転部材については、図10〜図13に示すものに限られない。図20は、本発明の変形例7に係る展開構造体の棒状部材干渉回避部材における回転部品の平面図である。
図20に示すように、本発明の変形例7に係る展開構造体の棒状部材干渉回避部材における回転部品510iは、図10に示す回転部品510aと基本的な構成は同じである。図20に示す回転部品510iが図10に示す回転部品510aと異なる点は、図20に示す回転部品510iが回転部514を有している点である。なお、図20においては、分かりやすいように回転部514にはハッチングをかけている。
回転部514は、中心軸を中心として任意に回転することができる。また、回転部品510iは、回転部514が任意の位置で固定することができるようにロック機構(不図示)を有している。
このように構成された回転部品510iは、回転部514を回転させることによって、図10〜図13に示される回転部品と同じ構造の回転部品を得ることができる。従って、上記実施例のように棒状部材干渉回避部材の各層ごとに回転部品を製作する必要がなくなる。
また、図20に示す上記回転部品510iは、8位節構造体以外のX位節構造体にも適用することができる。例えば、図20に示す回転部品510iにおいて、ハッチングされた回転部514を120度ずつ回転させた3種類の回転部品を用意し、これらを組み合わせることにより、6位節構造体の場合における棒状部材干渉回避部材を得ることができる。このように、図20に示す上記回転部品510iは、部材長が全て等しい任意のX位節構造体に適用することができる。
以上、本発明に係る展開構造体に関し、実施形態、実施例及び変形例について説明してきたが、これらの展開構造体は様々な展開装置に適用することができる。以下、本発明に係る展開構造体の適用例について説明する。
(適用例1)
まず、本発明に係る展開構造体を太陽電池ユニットに適用した適用例1について、図21及び図22を用いて説明する。図21は、適用例1に係る太陽電池ユニットに用いられる展開構造体の平面図である。図22は、適用例1に係る展開構造体の各セルが展開する様子を表した図である。
図21に示すように、適用例1においては、上記実施例に係る8位節構造体で構成される展開構造体1を用いる。本適用例で用いられる展開構造体1は、8位節構造体を縦に5個、横に5個配置した4×4セル構造である。また、展開構造体1の展開率は3倍とした。
本適用例に係る太陽電池ユニット600は、スライド式太陽電池パネルを用いたものであり、図21に示すように、展開構造体1が折畳んだ状態において、展開構造体1の各セルの上面に、同じ形状の9枚のスライド式太陽電池パネル(不図示)が重ねられて構成されている。すなわち、本適用例では、144枚(16×9)の太陽電池パネルが用いられ、1つの太陽電池パネルの大きさは、展開構造体1の各セルとほぼ同じ大きさである。なお、各セルにおける9枚の太陽電池パネルについて、展開構造体1が最大に展開した時の各セルが9分割された9の領域のうち、左上領域に位置する太陽電池パネルについては各セルの最上段に配置し、9領域の中央領域に位置する太陽電池パネルについては最下段に配置する。
このように構成された太陽電池ユニット600に図21に示すような対角外側方向の外力Fが付加されると、各セル9枚の太陽電池パネルは、図22(a)〜図22(b)に示すように展開する。図22(a)〜図22(b)に示すように、各セル9枚の太陽電池パネル601〜609は、各太陽電池パネルに設けられたガイド601a〜609aに沿ってスライドし、最終的には、図22(c)に示すように、展開構造体が最大に展開したときに、各セル9枚の太陽電池パネル601〜609は全て露出する状態となり、太陽電池ユニット600全体としては、144枚全ての太陽電池パネルが露出する状態となる。なお、図22(c)に示す矢印線は、太陽電池パネル601〜609がスライドする順序を示している。
このように構成された太陽電池ユニット600は、例えば、展開及び折畳みの動作が必要な宇宙用展開構造体として利用することができる。すなわち、この太陽電池ユニットを人工衛星に折畳んだ状態で搭載し、宇宙空間において展開することにより、宇宙空間において太陽光発電装置を実現することができる。
なお、本適用例においては、展開構造体の展開率は3倍としたが、これに限るものではない。但し、展開率は整数であることが好ましい。
また、本適用例では、スライド式の太陽電池パネルを用いたが、これに限らない。例えば、四方に引っ張られることにより展開することができる折り畳み式の太陽電池パネルであっても構わない。
(適用例2)
次に、本発明に係る展開構造体を適用した折畳み用テント構造体700について、図23を用いて説明する。図23(a)は、適用例2に係る折畳み用テント構造体の平面図であり、折畳み時の状態を示している。図23(b)は、図23(a)に示す折畳み用テント構造体の側面図である。
図23(a)及び図23(b)に示すように、本発明に係る展開構造体を適用した折畳み用テント構造体700は、上記実施例の8位節構造体で構成される展開構造体1を用いている。なお、本適用例で用いられる展開構造体1は、8位節構造体を縦に5個、横に7個配置した4×6セル構造である。また、展開構造体1の展開率は3倍とした。
図23(a)及び図23(b)に示すように、本適用例に係る折畳み用テント構造体700は、上記展開構造体1とテント支柱である4本の対角バー701とで構成される。4本の各対角バー701は、折畳み用テント構造体700の展開前の状態において、展開構造体1の4隅の対角線上の外側方向に向かって伸びた構成を有している。各対角バー701の長さは、展開構造体1の対角線の長さと同じである。各対角バー701の一端部は、展開構造体1の4隅の各8位節構造体の下部に滑節連結されている。また、各対角バー701の他端部には土台702が設けられており、対角バー701の他端部は土台702を介して地面と固定される。なお、各対角バー701の他端部と土台702とは滑節連結されている。
また、展開構造体1の上部には、水平方向にスライド可能なテント布支え棒703が設けられている。テント布支え棒703は、2本の連結棒によって2つの8位節構造体と連結されている。
次に、本適用例に係る折畳み用テント構造体700の展開動作について、図24を用いて説明する。図24は、適用例2に係るテント構造体が展開する様子を表した図であり、図24(a)は、適用例2に係る折畳み用テント構造体の折畳み時の状態を示す図で、図24(b)は、適用例2に係る折畳み用テント構造体の展開時の状態を示す図である。
図24(a)に示すように、折畳んだ状態の折畳み用テント構造体700において、展開構造体1と対角バー701のそれぞれに、図24(a)に示すような外力F1及びF2を加えると、展開構造体1が水平展開するとともに4本の対角バー701が立ち上がる。なお、外力F1と外力F2は、両方加えてもよいし、どちらか1つを加えてもよい。
本適用例に係る折畳み用テント構造体700では、展開構造体1の展開率が3倍であり、対角バー701の長さが展開構造体1の対角線の長さと同じであるので、最終的には、図24(b)に示すように、展開構造体1が完全に展開した状態のときに、対角バー701は地面に対して垂直になる。
展開方法の詳細について説明すると、最初のうちは展開構造体1の外側部分にある8位節構造体を外側から引っ張り、展開構造体1がある程度大きくなった後は、内部に潜り込んで中心付近にある8位節構造体を回転させることにより展開構造体1を展開させることができる。
以上が本適用例に係るテント構造体を展開する場合であるが、折畳む場合についても逆の手順によって行うことができる。
なお、展開構造体1の展開動作の途中、あるいは、展開構造体1の展開作業を中断する場合において、折畳み用テント構造体700の自重によって展開構造体1が逆回転しないように、展開構造体1内の滑節機構に逆回転防止の弁を設けたり、対角バー701の滑節機構に逆回転防止の弁を設けたりすることが好ましい。逆回転防止の弁については、折畳み用テント構造体700を折畳むときの外しやすさを考慮すると、少なくとも1つの対角バー701について、土台702との滑節連結部分に設けることが好ましい。
また、折畳み用テント構造体700の各部材の材料については、折畳み用テント構造体700の剛性を考慮して、少なくとも、展開構造体1の周辺部の8位節構造体については剛性の高い材料を用いることが好ましい。これは、展開構造体1の周辺の8位節構造体については、上記の実施例で説明したように、一部の部材が取り除かれており、この部分での剛性が弱くなっているからである。具体的な材料としては、展開構造体1の内部の8位節構造体についてはアルミニウムを用い、展開構造体1の周辺部の8位節構造体についてはステンレスを用いる。また、対角バー701も高い剛性が要求されるので、ステンレスを用いることが好ましい。なお、各部材の剛性を高めるには、各部材の太さを大きくすることによっても実現できる。
最終的にテントとするためには、上記の折畳み用テント構造体700にテント布を設置する必要がある。図25は、適用例2に係るテントの側面図である。図25に示すように、展開した折畳み用テント構造体700を外側から覆うことができるテント布704を、テント布支え棒703を介して折畳み用テント構造体700に適宜設置することにより、テント750とすることができる。
なお、折畳み用テント構造体700を収納する際は、図26に示すように、各対角バー701を内側に二段階で折り曲げ、さらに、テント布支え棒を畳むことによって、折畳み用テント構造体700をコンパクトに折畳むことができる。
(適用例3)
次に、本発明に係る展開構造体を適用したアンテナ構造体について説明する。本発明に係るアンテナ構造体800は、グリッド型のパラボラアンテナとして利用することができる。図27は、適用例3に係るアンテナ構造体の外観斜視図である。
通常、パラボラアンテナは曲面形状に構成されているので、本適用例においては、3次元展開機構の上記変形例6に係る展開構造体1”を用いることによって、アンテナ構造体800を構成することができる。
すなわち、図27に示すように、本適用例に係るアンテナ構造体800は、上記変形例6に係る展開構造体1”を用いて構成したものであり、平面視したときに全体形状が円形となるように構成されている。本適用例に係るアンテナ構造体800において、反射面側の展開構造体1”の部材は金メッキ又はモリブデンによって構成されている。
なお、本適用例における展開構造体1”は8位節構造体を用いて構成したが、2つの3位節ユニットを組み合わせて6位節構造体を構成し、この6位節構造体を構成とした展開構造体を用いても構わない。
また、3次元展開機構の上記変形例6に係る展開構造体1”は、様々な骨組構造体、特に周期的骨組構造体に適用することもできる。この場合、展開構造体を構成するX位節構造体の結合節に僅かな角度変化を与えることにより、面外に円滑に変形する展開構造体を実現することができる。例えば、図28に示すように、球状の骨組構造からなる展開構造体1Sとすることもできる。この場合、球状の状態で展開又は折畳むことができる。
(その他の適用例)
また、本発明に係る展開構造体1を折畳み用傘に適用することもできる。例えば、本発明に係る展開構造体1を最大に展開させた状態のときに、当該展開構造体1に布等からなる傘布を張ることによって実現することができる。
また、本発明に係る全ての展開構造体を組立式玩具として利用することもできる。例えば、展開構造体を構成する部品をプラスチック等の樹脂で成形し、また、棒状部材干渉回避部材についても量産できるように図20に示すような回転部材510iを用いることにより、本発明に係る展開構造体を幼児等の組立式玩具として用いることができる。
このように本発明に係る展開構造体1,1’,1”,1Sを適用した展開装置においては、複数の動力源又は複雑な動力源を用いることなく、いずれの適用例についても容易に展開動作を実現することができる。
また、本発明に係る展開構造体1,1’,1”,1Sは、例示した上記の適用例に限るものではなく、展開又は折畳む必要がある様々な部品又は装置において適用することができる。