JP2011113683A - 色素増感型太陽電池及びその製法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機系増感剤を用いる色素増感型太陽電池において、光を吸収することにより生じる電流や電圧を従来と比べて増加させる。
【解決手段】色素増感型太陽電池10は、光吸収層18で被覆された電子輸送層16を透明導電性基板14上に備えた光電極12とこの光電極12に向かい合うように配置された対極20との間に正孔輸送層22が介在している。光吸収層18は、増感色素として、正孔輸送層との界面に硫黄より電気陰性度の高い元素を所定量含む表面改質層を持つ金属硫化物(例えばSnS)を含んでいる。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感型太陽電池及びその製法に関する。
従来より、色素増感型太陽電池として、増感色素を含む光吸収層で被覆された電子輸送層を透明導電性基板上に備えた光電極と、この光電極に向かい合うように配置される対極との間に、正孔輸送層が介在するものが知られている。増感色素としては、ルテニウム錯体などに代表される有機系増感剤のほか、硫化カドミウム(CdS)や二硫化銅インジウム(CuInS)、硫化スズ(SnS)などに代表される無機系増感剤が知られている。このうち、SnSは光吸収係数が105cm-1、バンドギャップが1.1〜1.4eVであるため、色素増感型太陽電池に用いる増感剤として好適な光電子特性を有している。例えば、特許文献1には、このSnSを無機系増感剤とし、p型半導体であるCuSCNを正孔輸送層とする全固体色素増感型太陽電池が開示されている。
特開2006−216958号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたSnSを無機系増感剤とする全固体色素増感型太陽電池は、短絡電流密度Iscも開放電圧Vocも低く、その結果、極めて低い変換効率しか得られていない。その理由は、定かではないが、以下のように考察される。すなわち、SnSが光を吸収することにより生じた電子(キャリア)は電子輸送層に運び出されなければならないが、SnSと正孔輸送層であるCuSCNとの界面における準位密度が高いため、その界面で電子と正孔輸送層の正孔とが再結合してしまうからではないかと考えられる。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、無機系増感剤を用いる色素増感型太陽電池において、光を吸収することにより生じる電流や電圧を従来と比べて増加させることを主目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明者らは、色素増感型太陽電池を作製するにあたり、透明基板に形成された電子輸送層上に増感色素である金属硫化物の膜を形成し、その後、所定条件下で加熱したところ、金属硫化物の表面が硫黄より電気陰性度の高い元素(例えば酸素とか窒素)で改質されることにより色素増感型太陽電池がダイオード特性(整流作用)を有するようになり、光吸収により発生する電流や電圧が従来に比べて高くなることを見いだし、本発明を完成するに至った
即ち、本発明の色素増感型太陽電池は、
増感色素を含む光吸収層で被覆された電子輸送層を透明導電性基板上に備えた光電極とこの光電極に向かい合うように配置された対極との間に正孔輸送層が介在する色素増感型太陽電池であって、
前記光吸収層は、前記正孔輸送層側の表面に硫黄より電気陰性度の高い元素が吸着した金属硫化物を含むものであり、該元素は、前記金属硫化物の最表面において原子濃度が最大となり、該最大となる原子濃度が18〜31%の範囲のものである。
また、本発明の色素増感型太陽電池の製法は、
増感色素を含む光吸収層で被覆された電子輸送層を透明導電性基板上に備えた光電極とこの光電極に向かい合うように配置された対極との間に正孔輸送層が介在する色素増感型太陽電池を製造する方法であって、
前記透明導電性基板に前記電子輸送層を形成し、該電子輸送層上に前記増感色素として金属硫化物の膜を形成し、その後、硫黄より電気陰性度の高い元素を含む雰囲気中で前記金属硫化物の温度が180〜210℃になるように加熱することにより前記金属硫化物の表面に前記元素を吸着させ、その後、前記金属硫化物の表面に前記正孔輸送層と前記対極とをこの順に積層するものである。
本発明の色素増感型太陽電池によれば、光吸収により発生する電流や電圧が従来に比べて高くなり、ひいては変換効率も向上する。その理由は、定かではないが、次のように考察される。すなわち、金属硫化物を硫黄より電気陰性度の高い元素を含む雰囲気中で加熱することにより、金属硫化物の表面にその元素が吸着する。このように電気陰性度の高い元素が適度な原子濃度で吸着した金属硫化物を含む光吸収層と正孔輸送層との間の界面には、界面分極が形成される。その界面分極によって、光吸収層で発生し正孔輸送層側に拡散した電子は光吸収層へ追い返され、正孔輸送層で発生し光吸収層側に拡散した正孔は正孔輸送層へ追い返される。このため、正孔輸送層の正孔と光吸収により生じた光吸収層の電子とが界面付近で再結合してしまうことがない。その結果、色素増感型太陽電池が逆方向バイアス電圧に対して電流がほとんど流れず順方向バイアス電圧に対して電流が急増するダイオード特性を有するようになり、光吸収により発生する電流や電圧が従来に比べて高くなったと考えられる。
本発明の色素増感型太陽電池の製法によれば、硫黄より電気陰性度の高い元素を含む雰囲気中で金属硫化物の温度が180〜210℃になるように加熱するという簡単な工程により、上述したダイオード特性を持つ色素増感型太陽電池を容易に作製することができる。
色素増感型太陽電池10の構成を示す概略断面図である。 光吸収層18と正孔輸送層22との界面の様子を示す模式図である。 電池モジュール100の構成を示す概略断面図である。 電子輸送層16,光吸収層18及び正孔輸送層22の構造がナノ構造の場合の模式図である。 実験例1〜15で作製した積層型の色素増感型太陽電池の構成を示す概略断面図である。 第2中間基板の管状炉中での加熱時間と第2中間基板の温度との関係を示すグラフである。 実験例1,4,13の太陽電池特性を示すグラフである。 実験例14,15の太陽電池特性を示すグラフである。 実験例1,4の分光感度特性を示すグラフである。 実験例1〜8のダイオード特性を示すグラフである。 実験例1,9〜12のダイオード特性を示すグラフである。 加熱温度ごとのSnS膜のX線回折パターンである。 実験例1,4,6の酸素原子濃度深さ分布を示すグラフである。 加熱処理温度と酸素原子濃度との関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の色素増感型太陽電池10の構成を示す概略断面図、図2は、光吸収層18と正孔輸送層22との界面の様子を示す模式図であり、(a)は界面分極が生じている場合、(b)は界面分極が生じていない場合を示す。
色素増感型太陽電池10は、無機系増感剤を含む光吸収層18で被覆された電子輸送層16を透明導電性基板14上に備えた光電極12と、この光電極12に向かい合うように配置された対極20との間に、正孔輸送層22が介在しているものである。この色素増感型太陽電池10のうち透明導電性基板14と対極20との間の領域の外周は、シール材24によって被覆されている。
透明導電性基板14は、ガラス基板などの透明基板14aのうち電子輸送層16側に透明導電膜14bを積層した構成となっている。この透明導電性基板14の材質としては、例えば、フッ素ドープSnO2コートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO2−Sb)等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン又は陰イオンをドープしたものや、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板上に設けたものも透明導電性基板14として使用できる。なお、透明基板14aとしては、透明なガラス基板のほか、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したものやすりガラス状の半透明のガラス基板などの光を透過する基板、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などを用いることもできるが、透明なガラス基板が好ましい
電子輸送層16は、光吸収層18で発生した電子を透明導電性基板14へ輸送する層である。この電子輸送層16の材料としては、例えば、TiO2、ZnO、SnO2などに代表されるn型半導体材料が挙げられ、これらのうちTiO2が好ましい。TiO2の結晶構造としては、例えば、ルチル型、アナターゼ型が挙げられ、これらのうちアナターゼ型が好ましい。その理由は、アナターゼ型及びルチル型のバンドギャップは、それぞれ3.2eV及び3.0eVであり、アナターゼ型のほうが伝導帯の下端のエネルギー準位が高く、開放端電圧が高いという報告や、色素増感型太陽電池ではアナターゼ型がルチル型よりも効率が高いという報告があるからである(Chem.Mater., vol.14, p2930(2002))。TiO2粒子としては、アナターゼ型粒子を単独で使用してもよく、アナターゼ型とルチル型との混合粒子を使用してもよい。TiO2粒子の粒子径は5nm〜500nmとするのが好ましい。TiO2粒子の粒子径が5nm未満では、粒子径が上記範囲にある場合と比べて、電子輸送層16の細孔径が小さくなりすぎ、光吸収層18の無機系増感剤の吸着時間が増大したり正孔輸送層22の拡散が困難となって拡散抵抗が増大したりする傾向がある。一方、粒子径が500nmを超えると、粒子径が上記範囲にある場合と比べて無機系増感剤の吸着量が減少するほか、粗大粒子により電子輸送層16内の応力が増大して機械的強度が不足し電子輸送層16が剥がれやすくなる傾向がある。また、拡散抵抗をより低く抑えると共に電子輸送層16をより剥がれにくくするには、TiO2粒子の粒子径を10nm〜100nmとするのが好ましい。さらに、特開2000−106222号公報に記載されるように、粒子径の大きいTiO2粒子(10nm〜300nm)と粒子径の小さいTiO2粒子(10nm以下)とを混在させてもよい。この場合、電子輸送層16に入射する入射光が、大きい粒子によって電子輸送層16の内部で散乱されるためエネルギー変換効率が向上する。また、電子輸送層16を有する光電極12において、特開2003−142171公報に記載されるように、電子輸送層16の上にルチル型のTiO2粒子からなる光反射層を設けてもよい。この場合の電子輸送層16は平均粒子径が70nm以下のTiO2粒子と平均粒子径が150nm以上のTiO2粒子とを混合したものであってもよく、光反射層は、ルチル型のTiO2粒子(平均粒子径が150nm以上、屈折率が2.4以上)とSiO2粒子(屈折率が1.8以下)とを混合させたものであってもよい。
光吸収層18は、電子輸送層16を被覆する層であり、無機系増感剤として金属硫化物を含んでいる。この金属硫化物は、可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つものであり、例えば、SnS,Sb23,Cu2S,ZnS,FeS2,TiS2,MoS2からなる群より選ばれた少なくとも1つが挙げられる。このうち、SnSが好ましい。SnSは、光吸収係数が105cm-1、バンドギャップが1.1〜1.4eVであり、色素増感型太陽電池に用いる増感剤として好適な光電子特性を有しているからである。また、金属硫化物は、正孔輸送層22側の表面に硫黄より電気陰性度の高い元素(例えばO,N,F,Cl又はBr)が吸着している。そして、その元素の原子濃度は、金属硫化物の深さ方向の分布をみたときに最表面で最大となり、その最大値は18〜31%、好ましくは21〜23%である。なお、金属硫化物の表面に硫黄より電気陰性度の高い元素を吸着させる方法としては、例えば、透明導電性基板14上に形成された電子輸送層16に金属硫化物層を形成した状態で所定の条件で加熱することが挙げられるが、詳しくは後述する。このように表面に電気陰性度の高い元素が吸着した金属硫化物を含む色素増感型太陽電池は、逆方向バイアス電圧に対して電流がほとんど流れず順方向バイアス電圧に対して電流が急増するダイオード特性を備えている。
対極20は、電子が通過可能な導電層であり、例えばAu,Ptなどの金属薄膜や多孔質の炭素薄膜などを使用することができるほか、上述した透明導電性基板14と同じ構成のもの(この場合、透明導電膜が正孔輸送層22と接触するように配置する)を使用することもできる。
正孔輸送層22は、色素増感型太陽電池10の両極に負荷を接続した状態で対極20から電子を受け取る一方、光を吸収することにより光吸収層18で発生した金属硫化物の陽イオンを対極20から受け取った電子で元の中和状態に戻す層である。この正孔輸送層22の材料としては、例えば、CuI,CuSCN,LiドープしたNiOなどに代表されるp型半導体材料のほか、酸化還元種(I3-/I-系の電解質、Br3-/Br-系の電解質、ハイドロキノン/キノン系の電解質などのレドックス電解質)を含んだ電解液や公知のゲル化剤(高分子又は低分子のゲル化剤)を添加したゲル状電解質が挙げられる。
シール材24は、電子輸送層16や光吸収層18、正孔輸送層22が外気と接触するのを防止するためのものである。このシール材24としては、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいはエポキシ系接着剤を使用することができる。
次に、色素増感型太陽電池10の作用について説明する。色素増感型太陽電池10の両極に負荷を接続した状態で太陽光を透明導電性基板14へ照射すると、光吸収層18の金属硫化物のうち太陽光の当たったものは電子を放出して陽イオンになる。放出された電子は電子輸送層16を経由して透明導電性基板14の透明導電膜14bに移動し、負荷へ流れていく。正孔輸送層22は、負荷を経由した電子を対極20から受け取る一方、その受け取った電子で光吸収層18で発生した金属硫化物の陽イオンを元の中和状態に戻す。このような一連の反応が起こることにより、色素増感型太陽電池10に太陽光を照射すると負荷に電流が流れる。
ここで、正孔輸送層22と金属硫化物を含む光吸収層18との間の界面について、光吸収層18中の金属硫化物がSnS、正孔輸送層22がCuIの場合を例に挙げて説明する。SnSは、正孔輸送層22側の表面に硫黄より電気陰性度の高い元素が吸着しており、その元素の原子濃度は、SnSの深さ方向の分布をみたときに最表面で最大となり、その最大値は18〜31%である。このように電気陰性度の高い元素が吸着した層を表面改質層と称する。この表面改質層が存在するため、SnSとCuIとの界面には、図2(a)に示すように、界面分極26が形成される。その界面分極26によって、光吸収層18で発生し正孔輸送層側に拡散した電子(e-)は光吸収層18へ追い返され、正孔輸送層22で発生し光吸収層側に拡散した正孔(h+)は正孔輸送層22へ追い返される。このため、正孔輸送層22の正孔と光吸収により生じた光吸収層18の電子とが界面付近で再結合してしまうことがないと考えられる。これに対して、光吸収層18が上述した表面改質層を持たない金属硫化物(つまり加熱処理を施していない状態の金属硫化物)を含む場合、図2(b)に示すように界面分極が形成されないため、光吸収層18で発生し正孔輸送層側に拡散した電子と正孔輸送層22で発生し光吸収層側に拡散した正孔とが再結合してしまうと考えられる。したがって、光吸収層18が表面改質層を有する金属硫化物からなる本実施形態では、光吸収層18が表面改質層を有さない金属硫化物からなる場合に比べて、光吸収により発生する電流や電圧が高くなる。
次に、色素増感型太陽電池10の製法について説明する。まず、スプレーコート法等の公知の薄膜製造技術を用いてガラス基板などの透明基板14aに透明導電膜14bを形成することにより透明導電性基板14を得る。
続いて、透明導電性基板14の透明導電膜14b上に電子輸送層16を形成する。具体的には、所定の大きさ(例えば粒子径が20〜400nm程度)のn型半導体粒子を分散させた分散液を調製し、この分散液を透明導電膜14b上にバーコーター法や印刷法などにより塗布し、乾燥後焼成することにより電子輸送層16を形成してもよい。あるいは、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)等の化学蒸着法により透明導電膜14b上にn型半導体からなる薄膜状の電子輸送層16を形成してもよい。
続いて、電子輸送層16上に光吸収層18を形成する。具体的には、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法又はCVDやCBD(ChemicalBath Deposition)等の化学蒸着法により電子輸送層16上に金属硫化物からなる薄膜を形成し、その後、所定の条件下で加熱することにより光吸収層18を形成する。なお、蒸着は複数回繰り返してもよい。ここで、所定の条件は、金属硫化物が表面改質層を持つように設定する。表面改質層を備えた金属硫化物は、金属硫化物の表面に硫黄より電気陰性度の高い元素が吸着したものであり、その元素の原子濃度は、金属硫化物の深さ方向の分布をみたときに最表面で最大となり、その最大値が18〜31%の範囲にある。所定の条件は、例えば、硫黄より電気陰性度の高い元素を含む雰囲気中で金属硫化物の温度が180〜210℃になるように加熱することとしてもよい。この場合、金属硫化物からなる薄膜を形成したものを180〜210℃の加熱炉内に入れ、その薄膜の温度が加熱炉の温度と略同じになるのに要する時間が経過したあとに加熱炉から取り出すようにしてもよい。あるいは、金属硫化物からなる薄膜を形成したものを210℃を超える温度(例えば400℃とか500℃)の加熱炉内に入れ、その薄膜の温度が180〜210℃に収まるような時間が経過したあとに加熱炉から取り出すようにしてもよい。
続いて、光吸収層18上に正孔輸送層22を形成する。具体的には、所定の大きさ(例えば粒子径が20〜400nm程度)のp型半導体粒子を分散させた分散液を調製し、この分散液を光吸収層18上にバーコーター法や印刷法などにより塗布し、乾燥後焼成することにより正孔輸送層22を形成してもよい。あるいは、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法又はCVD等の化学蒸着法により光吸収層18上にp型半導体からなる薄膜状の正孔輸送層22を形成してもよい。
その後、対極20を正孔輸送層22上に形成する。具体的には、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法又はCVD等の化学蒸着法により正孔輸送層22上にAuやPtなどの金属薄膜からなる対極20を形成してもよい。あるいは、上述した透明導電性基板14と同じ基板を用意し、透明導電膜14bが正孔輸送層22と接触するように積層してもよい。そして、最後に電子輸送層16,光吸収層18及び正孔輸送層22のそれぞれの側面をシール材24で被覆し、色素増感型太陽電池10が完成する。
なお、正孔輸送層22として酸化還元種を含む電解液を使用する場合には、上述した光吸収層18上に正孔輸送層22を形成する工程や対極20を正孔輸送層22上に形成する工程は実施せず、その代わり、対極20を光吸収層18上に空隙を開けて配置した状態でシール材24を形成する工程やその空隙に通じる注入口を介して電解液を注入し注入後に注入口を塞ぐ工程を実施する。
以上詳述した本実施形態の色素増感型太陽電池10は、表面改質層を持つ金属硫化物からなる光吸収層18を備えているため、逆方向バイアス電圧に対して電流がほとんど流れず順方向バイアス電圧に対して電流が急増するダイオード特性を有している。このため、光吸収により発生する電流や電圧が従来に比べて高くなり、ひいては変換効率も向上する。また、本実施形態の製法によれば、硫黄より電気陰性度の高い元素を含む雰囲気中で金属硫化物の温度が180〜210℃に加熱するという簡単な工程により、色素増感型太陽電池10を容易に作製することができる。更に、正孔輸送層22として電解液ではなくCuIなどのp型半導体を採用した場合には、全固体型の太陽電池となるため、液漏れなどのおそれがない。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、一つの色素増感型太陽電池10について説明したが、図3に示すように複数の色素増感型太陽電池(以下、単セルという)110を直列に接続した電池モジュール100としてもよい。単セル110は、図3で一点鎖線で囲まれた部分である。この単セル110は、透明導電性基板114の透明導電膜114bと対極120との間に、上述した実施形態の色素増感型太陽電池10の電子輸送層16,光吸収層18及び正孔輸送層22と同様の電子輸送層116,光吸収層118及び正孔輸送層122を有するものである。一つの単セル110の対極120は、セルの厚み方向に屈曲されて隣接する一方の単セル110の透明導電膜114bと電気的に接続されているが、隣接する他方の単セル110の透明導電膜114bや隣接する両方の単セル110の対極120とはシール材124により電気的に絶縁されている。透明導電性基板114のうち、透明基板114aはすべての単セル110に共通の部材であるが、透明導電膜114bは各単セル110ごとに形成されている。この電池モジュール100は、高出力が要求される場合に有効である。また、平面的なスペースに配置することが可能である。なお、電池を配置するスペースによっては、複数の色素増感型太陽電池10を縦方向に積み上げて直列接続してもよい。もちろん並列接続することも可能である。
上述した実施形態では、電子輸送層16,光吸収層18及び正孔輸送層22の詳細な構造について触れなかったが、例えば、これらの層をスパッタや真空蒸着などの成膜技術を利用して順次形成した場合には、3層の膜が積層した構造となる。一方、電子輸送層16をスクリーン印刷とそれに続く加熱処理により微粒子薄膜として形成し、光吸収層18をCBD法により形成し、正孔輸送層22を真空蒸着などの成膜技術を利用して形成した場合には、図4に示すようなナノ構造となる。図4のナノ構造は、光吸収層18を担持したn型半導体の微粒子アレイ薄膜(電子輸送層16)が形成され、その微粒子アレイ間に正孔輸送層22が浸透した構造である。微粒子アレイ薄膜は、隣接する微粒子が接触しており、20−400nmの細孔を形成している構造を持っている。光吸収層18の無機系増感剤は、微粒子の表面に厚さ1−150nmで被覆されている。こうしたナノ構造を作製する具体的な手順の一例を以下に示す。まず、透明導電性基板14としてITOガラス基板を用意し、そのITOガラス基板にスクリーン印刷により電子輸送層16としてTiO2微粒子薄膜を形成し、大気中150℃で10分間加熱後、同様に大気中450℃で2時間加熱する。その後、光吸収層18としてSnS薄膜をCBD法で作製する。CBDは、以下のようにして行う。(1)TiO2微粒子薄膜が形成されたITOガラス基板を、SnCl2・2H2O水溶液(0.025M)に10秒浸漬した後、表面に吸着した余分な薬品を水洗する。(2)同様に、基板を、Na2S・9H2O水溶液(0.025M)に10秒浸漬した後、水洗する。(3)上記(1)、(2)を1サイクルとして、サイクル数を変えて膜厚を変化させる。その後、正孔輸送層としてCuIを真空蒸着法により成膜することにより、図4のナノ構造とすることができる。また、CuIを真空蒸着法で成膜する方法の他に、CuIのアセトニトリル溶液を滴下して乾燥させてCuIを形成することでも図4のナノ構造を形成することができる。実際に、CBDプロセスのサイクル数に対する膜の色の変化を観察したところ、0サイクルではTiO2微粒子薄膜は透明であり、CBDプロセスによりTiO2微粒子薄膜の領域のみ変色し、サイクル数が増えるにしたがい色が濃くなっていった。また、CBDプロセスのサイクル数に対応してXRDスペクトルを測定したところ、サイクル数が2回以上で、斜方晶SnSの結晶に起因するピークが観察された。
[1]色素増感型太陽電池(以下、素子ともいう)の作製
・実験例1〜8
図5に示す積層型の素子を以下の手順にしたがって製造した。まず、表1の成膜条件Aで、透明導電性基板(ITO基板)上に厚さ50nmの電子輸送層(TiO2膜)を成膜し、第1中間基板とした。続いて、その第1中間基板を管状炉に挿入し、大気中にて30分間、500℃で加熱した。次に、表1の成膜条件Bで、第1中間基板のTiO2膜上に厚さ20nmの光吸収層(SnS膜)を成膜し、第2中間基板とした。次に、第2中間基板のSnS膜の表面改質を行った。具体的には、予め所定の温度まで加熱し、該所定の温度が安定している管状炉に第2中間基板を挿入した。その状態で第2中間基板を15分間管状炉中に放置した後、取り出した。このとき管状炉の管の両端は開放されていたため、第2中間基板のSnS膜は大気中で加熱されたとみなした。第2中間基板のSnS膜の表面改質を行うにあたり、実験例1では、SnS膜を加熱せず、実験例2〜8では、SnS膜をそれぞれ150℃,180℃,200℃,220℃,250℃,300℃及び350℃で加熱した。次に、表1の成膜条件Cで、このように表面改質を行った後の第2中間基板のSnS膜上に厚さ50nmの正孔輸送層(CuI膜)を成膜し、第3中間基板とした。その後、表1の成膜条件Dで、第3中間基板のCuI膜上に厚さ100nmの対極(Au膜)を成膜し、素子を得た。
Figure 2011113683
・実験例9〜12
第2中間基板のSnS膜の表面改質を行う際の条件を変更した以外は、実験例1〜8と同様にして積層型の素子を得た。SnS膜の表面改質は、次のようにして行った。すなわち、予め加熱して温度が400℃で安定している管状炉に第2中間基板を挿入した。その状態で第2中間基板を所定の加熱時間だけ管状炉中に放置した後、取り出した。このとき管状炉の間の両端は開放されていたため、第2中間基板のSnS膜は実験例1〜8と同様に大気中で加熱されたとみなした。第2中間基板の管状炉中での加熱時間と第2中間基板の温度との関係を図6に示す。図6から明らかなように、第2中間基板の温度は管状炉へ挿入してから1分後に210℃、2分後に290℃、5分後に360℃、15分後に370℃程度まで昇温する。ここで、実験例9では、加熱時間を1分とし、実験例10〜12では、加熱時間をそれぞれ2分、5分及び15分とした。
・実験例13
第2中間基板のSnS膜の表面改質を行う際の条件を変更した以外は、実験例1〜8と同様にして積層型の素子を得た。SnS膜の表面改質は、次のようにして行った。すなわち、第2中間基板を管状炉の管内に設置した後、その管を密閉し、室温でN2ガスを流量2L/分で30分間流入させた。これにより、管内の大気はN2ガスですべて置換されたとみなした。その状態で第2中間基板を昇温速度6.7℃/分で200℃まで昇温し、その状態で30分間保持した後、加熱を終了して第2中間基板を取り出した。
・実験例14,15
実験例14では、成膜条件Bで光吸収層(SnS膜)を成膜するときの光吸収層の厚さを20nmから50nmに変更したこと以外は、実験例4と同様の手法で素子を作製した。実験例15では、成膜条件Bで光吸収層(SnS膜)を成膜するときの光吸収層をの厚さを20nmから50nmに変更したこと以外は、実験例1と同様の手法で素子を作製した。
[2]太陽電池特性評価
実験例1,4,13で得られた素子の太陽電池特性(擬似太陽光照射時の電流−電圧特性)をソーラーシミュレータで測定した。測定は室温、大気中で行った。AM1.5擬似太陽光を素子に照射したときの太陽電池特性を図7に示す。図7では、横軸に素子に印加したバイアス電圧(図1中、透明導電性基板側の端子に対する対極側の端子の電位、以下同じ)を、縦軸に素子から発生した電流密度をプロットした。SnS膜を加熱処理しなかった実験例1の素子の短絡電流密度Iscは0.26mA/cm2であり、その後バイアス電圧を増加させると、0.04V(開放電圧Voc)で電流が流れなくなった。短絡電流密度Iscと開放電圧Vocとの積に対する、最適動作電圧と最適動作電流との積の比で定義される最大出力の比であるフィルファクター(FF)は0.26であった。一方、SnS膜を大気中200℃で加熱した実験例4の素子の短絡電流密度Iscは1.2mA/cm2、開放電圧Vocは0.11V、FFは0.23であった。以上の結果から、SnS膜を大気中200℃で加熱処理した場合、加熱処理しなかった場合に比べて、素子の短絡電流密度Iscは5倍、開放電圧Vocは3倍に向上した。また、SnS膜をN2雰囲気中200℃で加熱した実験例13の素子の短絡電流密度Iscは1.7mA/cm2、開放電圧Vocは0.12V、FFは0.19であった。以上の結果から、SnS膜をN2雰囲気中200℃で加熱した場合、加熱処理しなかった場合に比べて、素子の短絡電流密度Iscは7倍、開放電圧Vocは3倍に向上した。
同じく実験例14,15で得られた素子の太陽電池特性をソーラーシミュレータで測定した。AM1.5擬似太陽光を素子に照射したときの太陽電池特性を図8に示す。SnS膜を加熱処理しなかった実験例15の素子の短絡電流密度Iscは1.6mA/cm2、開放電圧Vocは0.04V、FFは0.24であった。SnS膜を大気中200℃で加熱処理した実験例14の素子の短絡電流密度Iscは6.3mA/cm2、開放電圧Vocは0.10V、FFは0.29であった。以上の結果から、SnS膜を大気中200℃で加熱した場合は、加熱処理をしない場合に比べて、素子の短絡電流密度Iscは4倍弱向上し、開放電圧Vocは2倍以上向上した。
[3]分光感度特性評価
実験例1,4で得られた素子の分光感度特性(特定の波長の光に対する太陽電池素子の光電変換特性)を分光感度測定装置で測定した。測定は室温、大気中で行った。SnS膜を加熱処理しなかった実験例1の素子と大気中200℃で加熱処理した実験例4の素子の分光感度特性を図9に示す。図9では、横軸に素子に照射した光の波長を、縦軸に外部量子収率(入射光の光子数に対する素子から発生した電子数)をプロットした。量子収率は波長400nmで最大値をとり、実験例1の素子で0.05,実験例4の素子で0.17であった。いずれの素子も波長400nm以上の領域で光電変換を行うことから、SnSによる増感作用を確認できた。波長300〜600nmの範囲で、実験例4の素子の外部量子収率が、実験例1の素子の外部量子収率を上回ったことから、SnS膜を大気中200℃で加熱した場合、加熱処理しなかった場合に比べて、素子の光電変換特性が向上したと判断した。
[4]ダイオード特性評価
実験例1〜8で得られた素子のダイオード特性(暗所環境中での電流−電圧特性)をプローバで測定した。測定は室温、大気中で行った。各素子のダイオード特性を図10に示す。図10では、横軸に素子に印加したバイアス電圧を、縦軸に素子に流れた電流をプロットした。SnS膜を加熱処理しなかった実験例1の素子(図10(a))と150℃で加熱処理した実験例2の素子(図10(b))では、電流がバイアス電圧に対して一様に増加し、整流作用を示さなかった。一方、SnS膜を180℃で加熱処理した実験例3の素子(図10(c))と200℃で加熱処理した実験例4の素子(図10(d))では、順方向バイアス電圧(V>0[V])に対して電流が急激に増加するのに対し、逆方向バイアス電圧(V<0[V])に対してはほとんど電流が流れなかったことから、整流作用を示すことがわかった。また、SnS膜を220℃で加熱した実験例5の素子(図10(e))と250℃で加熱した実験例6の素子(図10(f))では、順方向バイアス電圧に対する電流の増加が小さくなり、逆方向バイアス電圧に対しても電流量が増加するようになったことから、整流作用を示さないと判断した。SnS膜を300℃で加熱した実験例7の素子(図10(g))と350℃で加熱した実験例8の素子(図10(h))では、順方向バイアス電圧に対して電流がほとんど流れないのに対し、逆方向バイアス電圧に対して電流量が急激に増加するようになった。
実験例9〜12で得られた素子のダイオード特性を図11に示す。なお、横軸、縦軸は図9と同じである。また、実験例1の結果も図11(a)として併せて示す。400℃で1分放置して素子温度が210℃になるまで加熱した実験例9の素子(図11(b))では、順方向バイアス電圧(V>0[V])に対して電流が急激に増加するのに対し、逆方向バイアス電圧(V<0[V])に対してはほとんど電流が流れなかったことから、整流作用を示すと判断した。また、400℃で2分放置して素子温度が290℃になるまで加熱した実験例10の素子(図11(c))では、順方向バイアス電圧に対する電流の増加が小さくなり、電流がバイアス電圧に対して一様に増加し、整流作用を示さなかった。SnS膜を400℃で5分放置して素子温度が360℃になるまで加熱した実験例11の素子(図11(d))と15分放置して素子温度が370℃になるまで加熱した実験例12の素子(図11(e))では、順方向バイアス電圧に対して電流がほとんど流れないのに対し、逆方向バイアス電圧に対して電流量が増加するようになった。
[5]SnS膜の構造評価
SnS膜の構造評価には、表1の成膜条件Bと同じ条件でガラス基板上に成膜したSnS膜を用いた。作製したSnS膜を実験例1,4,6と同じ条件で大気中で加熱処理した後、X線回折装置で回折パターンを測定した。加熱処理温度別のSnS膜のX線回折パターンを図12に示す。加熱処理していないSnS膜と実験例4と同様に200℃で加熱したSnS膜と実験例6と同様に250℃で加熱したSnS膜のいずれの回折パターンも2θ=31.5°近辺に回折線を示した。この回折線はSnS(111)面からの回折線と考えられる。SnS膜の加熱処理によって、回折線の位置が31.32°(加熱処理していない膜(図12(a))から31.66°(250℃で加熱処理した膜(図12(c))まで変化した。しかし、加熱処理によってこの回折線は消失せず、回折パターン中に新しい回折線は示されなかった。以上のことから、SnS膜を加熱処理しても、SnS以外の結晶は生成されず、SnSの斜方晶が保持されたと考えられる。
[6]SnS膜の組成分析
SnS膜の組成分析には、表1の成膜条件Bと同じ条件でSi基板上に成膜したSnS膜を用いた。作製したSnS膜を実験例1,4,6と同じ条件で大気中で加熱処理した後、XPSで光電子スペクトルを測定した。光電子スペクトルから求めたSnS膜内のO(酸素)原子濃度深さ分布を、加熱処理温度別に図13に示す。図13の横軸には、スペクトル測定時のAr+イオンエッチング時間から求めた深さを示した。1分間のAr+イオンエッチングをした後にスペクトルを測定した地点(図13の点線部)において、Sn起源の信号強度が十分に得られたことから、この地点をSnS膜の最表面とみなした。最表面の酸素量は、加熱処理をしていない場合は13%だが、200℃で20%、250℃で32%と温度の上昇と共に増加した。また、図13中の深さ3nm程度までの部分を見ても明らかなように、内部の酸素量も加熱処理温度と共に増加した。以上より、SnS膜は加熱処理によって、SnS膜の表面に酸素が入り込んで吸着することと、加熱処理温度が上昇すると酸素含有量が増加することが明らかとなった。図13(d)は実験例1,4,6の酸素原子濃度を比較したグラフである。図13(d)から、いずれの実験例でも、酸素原子濃度はSnS膜の最表面において最大値をとり、深さが深くなるにつれて小さくなることがわかる。加熱処理をしていない素子と200℃で加熱処理した素子につき、こうした酸素量の測定を複数回繰り返したところ、図14に示すように、加熱処理をしていない素子は15±2%、200℃で加熱処理した素子は22±1%であった。図9のダイオード特性の評価結果を参照すると、SnS膜を大気中200℃で加熱処理した素子(最表面の酸素原子濃度21〜23%)はダイオードとして機能したが、SnS膜を加熱処理していない素子(最表面の酸素原子濃度13〜17%)や250℃以上で加熱処理した素子(最表面の酸素原子濃度32%)はダイオードとして機能しなかったことから、最表面での酸素原子濃度が17%以下の場合や32%以上の場合は好ましくなく、最表面での酸素原子濃度がそれ以外の場合つまり18〜31%の場合が好ましく、21〜23%の場合がより好ましい。また、図12(d)の実験例4の結果から、最表面から深さ1〜3nmの範囲において酸素原子濃度が5〜23%、特に5〜16%となるようにするのが好ましく、最表面から深さ3nmを超えて最深部に至る各領域において、酸素原子濃度が0〜5%となるようにするのが好ましい。
[7]まとめ
以上の結果を表2にまとめた。実験例4,13は、太陽電池特性が良好であり、逆方向バイアス電圧に対して電流がほとんど流れず順方向バイアス電圧に対して電流が急増するダイオード特性を示したため、本発明の実施例に相当する。実験例3,9は、太陽電池特性は未測定であるが、実験例4,13と同様のダイオード特性を示したことから、これらと同様のメカニズムにより太陽電池特性が良好であると予測されるため、本発明の実施例に相当する。その他の実験例は比較例に相当する。
Figure 2011113683
本発明の色素増感型太陽電池は、例えば家庭用、オフィス用、工場用の各種電化製品の電源や電気自動車、ハイブリッド自動車、電動自転車などのバッテリのほか、ソーラーパネルなどに利用可能である。
10 色素増感型太陽電池、12 光電極、14 透明導電性基板、14a 透明基板、14b 透明導電膜、16 電子輸送層、18 光吸収層、20 対極、22 正孔輸送層、24 シール材、26 界面分極、100 電池モジュール、110 単セル、114 透明導電性基板、114a 透明基板、114b 透明導電膜、116 電子輸送層、118 光吸収層、120 対極、122 正孔輸送層、124 シール材、Isc 短絡電流密度、Voc 開放電圧

Claims (6)

  1. 増感色素を含む光吸収層で被覆された電子輸送層を透明導電性基板上に備えた光電極とこの光電極に向かい合うように配置された対極との間に正孔輸送層が介在する色素増感型太陽電池であって、
    前記光吸収層は、前記正孔輸送層側の表面に硫黄より電気陰性度の高い元素が吸着した金属硫化物を含むものであり、該元素は、前記金属硫化物の最表面において原子濃度が最大となり、該最大となる原子濃度が18〜31%の範囲である、
    色素増感型太陽電池。
  2. 前記金属硫化物は、金属元素がSn,Sb,Cu,Zn,Fe,Ti及びMoからなる群より選ばれた少なくとも1つである、
    請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
  3. 前記最大となる原子濃度が21〜23%の範囲である、
    請求項1又は2に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 前記元素は、O,N,F,Cl及びBrからなる群より選ばれた少なくとも1つである、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  5. 前記電子輸送層は、n型半導体であるTiO2,ZnO及びSnO2からなる群より選ばれた1つであり、
    前記正孔輸送層は、p型半導体であるCuI,CuSCN,LiをドープしたNiO、酸化還元種を含んだ電解液及びゲル化剤を添加したゲル状電解質からなる群より選ばれた1つである、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  6. 増感色素を含む光吸収層で被覆された電子輸送層を透明導電性基板上に備えた光電極とこの光電極に向かい合うように配置された対極との間に正孔輸送層が介在する色素増感型太陽電池を製造する方法であって、
    前記透明導電性基板に前記電子輸送層を形成し、該電子輸送層上に前記増感色素として金属硫化物の膜を形成し、その後、硫黄より電気陰性度の高い元素を含む雰囲気中で前記金属硫化物の温度が180〜210℃になるように加熱することにより前記金属硫化物の表面に前記元素を吸着させ、その後、前記金属硫化物の表面に前記正孔輸送層と前記対極とをこの順に積層する、
    色素増感型太陽電池の製法。
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