JP2013201187A - 太陽電池及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】SnSを含む太陽電池の開放電圧をより高める。
【解決手段】本発明の太陽電池10は、導電性を有する透明導電性基板14と透明導電性基板14に隣接し電子を輸送するバッファ層16とバッファ層16に隣接し光を吸収する光吸収層18とを有する光電極12と、対極20と、光電極12と対極20との間に形成された正孔輸送層22と、を備えている。この光吸収層18は、CuがドープされたSnSを含んでいる。この光吸収層18は、5.0at%以下のCuがSnSにドープされていることが好ましく、1.0at%以上2.0at%以下のCuがSnSにドープされていることがより好ましい。また、光吸収層18は、SnSを含む第1ターゲットと、Cuを含む第2ターゲットとを用いたスパッタ処理により形成されているものとしてもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池及びその製造方法に関する。
従来、太陽電池としては、光吸収層で被覆されたバッファ層(電子輸送層)を透明導電性基板上に備えた光電極と、この光電極に向かい合うように配置される対極との間に、正孔輸送層が介在するものが提案されている。なかでも、光吸収層にSnSを用いたものが提案されている(例えば、非特許文献1,2参照)。SnSは光吸収係数が105cm-1、バンドギャップが1.1〜1.4eVであり、光吸収層に用いるのに好適な光電子特性を有している。このようなSnS太陽電池は、バッファ層としてn型半導体を用いて作製されている。
Solar Energy Materials and Solar Cells 91(2007)774 Solar Energy Materials and Solar Cells 90(2006)3041
しかしながら、SnSを光吸収層に用いた太陽電池では、開放電圧Vocが低いことが問題であった。この点について、例えばCdSをバッファ層に用いたセルでは、開放電圧Vocが0.27V(非特許文献1)、0.26V(非特許文献2)であるが、産業応用上、Cdの使用は好ましくないと考えられる。このように、SnSを光吸収層に用いた太陽電池では、開放電圧Vocを高めることが求められていた。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、SnSを含むものにおいて、開放電圧をより高めることができる太陽電池を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、光吸収層であるSnSにCuをドープさせると、SnSを含む太陽電池の開放電圧をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の太陽電池は、
導電性を有する透明導電性基板と、前記透明導電性基板に隣接し電子を輸送するバッファ層と、前記バッファ層に隣接し光を吸収する光吸収層と、を有する光電極と、
対極と、
前記光電極と対極との間に形成された正孔輸送層と、を備え、
前記光吸収層は、CuがドープされたSnSを含むものである。
本発明の太陽電池の製造方法は、導電性を有する透明導電性基板と前記透明導電性基板に隣接し電子を輸送するバッファ層と前記バッファ層に隣接し光を吸収する光吸収層とを有する光電極と、対極と、前記光電極と対極との間に形成された正孔輸送層と、を備えた太陽電池を製造する方法であって、
(a)前記透明導電性基板に前記バッファ層を形成する工程と、
(b)SnSを含む第1ターゲットと、Cuを含む第2ターゲットとを用いたスパッタ処理により前記形成したバッファ層上にCuがドープされたSnSを含む前記光吸収層を形成する工程と、
(c)前記形成した光吸収層上に前記正孔輸送層及び前記対極を形成する工程と、
を含むものである。
本発明の太陽電池は、開放電圧をより高めることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。例えば、SnSにCuがドープされることにより、Cuがアクセプターとして振る舞うなどすることにより、SnSのキャリア密度が向上したためであると推察される。また、SnSにCuをドープすることにより、太陽電池の形状因子(フィルファクター,FF)を向上させる効果も得ることができる。なお、このCuをドープしたSnSは、Cu−Sn−S化合物、例えば、Cu2SnS3化合物ではないことを確認している。
太陽電池10の構成を示す概略断面図。 電池モジュール100の構成を示す概略断面図。 CuをドープしたSnSのXRDプロファイル。 Cuドープ量と、開放電圧及びフィルファクター(FF)値との関係図。
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の太陽電池10の構成を示す概略断面図である。本発明の太陽電池10は、導電性を有する透明導電性基板14と、透明導電性基板14に隣接し電子を輸送するバッファ層16と、SnSを含みバッファ層16に隣接し光を吸収する光吸収層18と、を有する光電極12と、対極20と、光電極12と対極20との間に形成された正孔輸送層22と、を備えている。この太陽電池10のうち、透明導電性基板14と対極20との間の領域の外周は、シール材24によって被覆されている。
透明導電性基板14は、ガラス基板などの透明基板14aのうちバッファ層16側に透明導電膜14bを積層した構成となっている。この透明導電性基板14の材質としては、例えば、フッ素ドープSnO2コートガラス(FTO)、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO2−Sb)コートガラス、ガリウムドープ酸化亜鉛コートガラス(GZO)等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン又は陰イオンをドープしたものや、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板上に設けたものも透明導電性基板14として使用できる。なお、透明基板14aとしては、透明なガラス基板のほか、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したものやすりガラス状の半透明のガラス基板などの光を透過する基板、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などを用いることもできるが、透明なガラス基板が好ましい。
バッファ層16は、光吸収層18で発生した電子を透明導電性基板14へ輸送する層である。このバッファ層16の材料としては、例えば、TiO2、ZnO、SnO2及びZn(1-X)MgXO(但し、0<X<1を満たす)などに代表されるn型半導体材料が挙げられ、これらのうちZn(1-X)MgXO(以下、ZMOとも称する)が好ましい。以下、ZMOを用いたものを主として太陽電池10を説明する。このバッファ層16のZMOは、例えば、Zn(1-X)MgXOのXが、0.1<X<0.2を満たすことがより好ましく、0.15≦X≦0.17を満たすことが更に好ましい。ここで、光吸収層(SnS)を基準としたバッファ層と光吸収層(SnS)との伝導帯下端の差をコンダクションバンドオフセット(CBOとも称する)と定義する。このとき、Xが0.1を超えると、CBOがより小さな負の値となり、透明導電性基板における電子と光吸収層であるSnSのホールとの再結合をより抑制することができ、好ましい。また、Xが0.2未満では、CBOがより小さな正の値となり、光吸収層18(SnS)から透明導電性基板14へ電子が輸送され易くなり、好ましい。
光吸収層18は、バッファ層16を被覆する層であり、CuがドープされたSnSを含む層である。SnSは、可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つ金属硫化物である。SnSは、光吸収係数が105cm-1、バンドギャップが1.1〜1.4eVであり、太陽電池に用いる光吸収剤として好適な光電子特性を有している。この光吸収層18は、Cuがドープされ、XRD測定においてSnSの(131)及び(002)のピークが消失したプロファイルを示すSnSからなるものとしてもよい。CuのドープによりXRDの高角側(2θ=38°以上)でのピークが消失することは、SnSの結晶が配向し、格子間距離が変化しているものと推察され、好ましい。また、光吸収層18は、Cuがドープされ、XRD測定においてSnSの(101)及び(111)が一体化したピークを示すSnSからなるものとしてもよい。CuのドープによりXRDの低角側(2θ=38°未満)でのピークが一体化することは、SnSの結晶が配向し、格子間距離が変化しているものと推察され、好ましい。
また、光吸収層18は、0.1原子(at)%以上のCuがSnSにドープされていることが好ましく、0.5at%以上のCuがSnSにドープされていることがより好ましく、1.0at%以上のCuがSnSにドープされていることが更に好ましい。Cuドープ量が0.1at%以上では、開放電圧をより高めることができ、好ましい。また、5.0at%以下のCuがSnSにドープされていることが好ましく、4.0at%以下のCuがSnSにドープされていることがより好ましく、3.0at%以下のCuがSnSにドープされていることが更に好ましい。Cuドープ量が5.0at%以下では、例えば、Cuの存在により生じうる不純物(例えばSnS2など)の生成をより抑制することができ好ましい。このうち、1.0at%以上3.0at%以下のCuがSnSにドープされていることがより好ましい。この範囲では、開放電圧をより高めると共に、不純物の生成をより抑制することができる。
対極20は、電子が通過可能な導電層であり、例えばAu,Ptなどの金属薄膜や多孔質の炭素薄膜などを使用することができるほか、上述した透明導電性基板14と同じ構成のもの(この場合、透明導電膜が正孔輸送層22と接触するように配置する)を使用することもできる。
正孔輸送層22は、太陽電池10の両極に負荷を接続した状態で対極20から電子を受け取る一方、光を吸収することにより光吸収層18で発生した正孔を輸送する層である。この正孔輸送層22の材料としては、例えば、CuI、CuSCN、CuO、Cu2O及びCuなどの銅化合物や、LiドープしたNiOなどに代表されるp型半導体材料が挙げられる。
シール材24は、バッファ層16や光吸収層18、正孔輸送層22が外気と接触するのを防止するためのものである。このシール材24としては、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいはエポキシ系接着剤を使用することができる。
次に、太陽電池10の作用について説明する。太陽電池10の両極に負荷を接続した状態で光を透明導電性基板14へ照射すると、光吸収層18では、電子と正孔とが生成し、バッファ層16へ電子が伝導すると共に、正孔輸送層22へ正孔が伝導する。放出された電子はバッファ層16を経由して透明導電性基板14の透明導電膜14bに移動し、負荷へ流れていく。正孔輸送層22は、電子を対極20から受け取る。このような一連の反応が起こることにより、太陽電池10に太陽光を照射すると負荷に電流が流れる。
次に、太陽電池10の製法について説明する。本発明の太陽電池10の製法は、(a)透明導電性基板14にバッファ層16を形成する工程と、(b)SnSを含む第1ターゲットと、Cuを含む第2ターゲットとを用いたスパッタ処理によりバッファ層16上にCuがドープされたSnSを含む光吸収層18を形成する工程と、(c)形成した光吸収層18上に正孔輸送層22及び対極20を形成する工程と、を含む。
まず、スプレーコート法などの公知の薄膜製造技術を用いてガラス基板などの透明基板14aに透明導電膜14bを形成することにより透明導電性基板14を得る。続いて、透明導電性基板14の透明導電膜14b上にバッファ層16を形成する。具体的には、所定の大きさ(例えば粒子径が20〜400nm程度)のn型半導体粒子を分散させた分散液を調製し、この分散液を透明導電膜14b上にバーコーター法や印刷法などにより塗布し、乾燥後焼成することによりバッファ層16を形成してもよい。あるいは、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)等の化学蒸着法により透明導電膜14b上にn型半導体からなる薄膜状のバッファ層16を形成してもよい。例えば、Zn(1-X)MgXO(但し、0.1<X<0.2を満たす)などを用いることが好ましい。ここで、X値の変更は、例えば、Zn(1-X)MgXOターゲットを用いたスパッタにより調整してもよいし、Zn(1-X)MgXOターゲット及びZnOターゲットを用いた二元同時スパッタなどにより調整するものとしてもよい。
続いて、バッファ層16上に光吸収層18を形成する。具体的には、SnSを含む第1ターゲットと、Cuを含む第2ターゲットとを用いたスパッタ処理により、バッファ層16上にCuがドープされたSnSを含む光吸収層18を形成する。このとき、第1ターゲットは、SnS以外の物質を含んで形成されていてもよいが、SnSで形成されていることがより好ましい。また、第2ターゲットは、Cu以外の物質を含んで形成されていてもよいが、Cuで形成されていることがより好ましい。スパッタ処理条件としては、例えば、成膜ガスを不活性ガスとし、ガス圧を0.1〜0.8Pa、印加電力を5〜100W、成膜温度を室温とする、などが挙げられる。その後、180〜210℃の条件下で加熱することにより光吸収層18を形成する。このスパッタ処理は複数回繰り返してもよい。
なお、光吸収層18は、例えば、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法又はCVDやCBD(Chemical Bath Deposition)等の化学蒸着法によりCuをドープしたSnSからなる薄膜を形成するものとしてもよい。
続いて、光吸収層18上に正孔輸送層22を形成する。具体的には、所定の大きさ(例えば粒子径が20〜400nm程度)のp型半導体粒子を分散させた分散液を調製し、この分散液を光吸収層18上にバーコーター法や印刷法などにより塗布し、乾燥後焼成することにより正孔輸送層22を形成してもよい。あるいは、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法又はCVD等の化学蒸着法により光吸収層18上にp型半導体からなる薄膜状の正孔輸送層22を形成してもよい。その後、対極20を正孔輸送層22上に形成する。具体的には、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法又はCVD等の化学蒸着法により正孔輸送層22上にAuやPtなどの金属薄膜からなる対極20を形成してもよい。あるいは、上述した透明導電性基板14と同じ基板を用意し、透明導電膜14bが正孔輸送層22と接触するように積層してもよい。そして、最後にバッファ層16,光吸収層18及び正孔輸送層22のそれぞれの側面をシール材24で被覆し、太陽電池10が完成する。
以上詳述した本実施形態の太陽電池10は、CuがドープされたSnSを含む光吸収層18を備えるため、開放電圧をより高めることができる。このような効果が得られる理由は、例えば、SnSにCuがドープされることにより、Cuがアクセプターとして振る舞うなどすることにより、SnSのキャリア密度が向上したためであると推察される。また、SnSにCuをドープすることにより、太陽電池の形状因子(フィルファクター,FF)を向上させる効果も得ることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、一つの太陽電池10について説明したが、図2に示すように複数の太陽電池(以下、単セルという)110を直列に接続した電池モジュール100としてもよい。単セル110は、図2で一点鎖線で囲まれた部分である。この単セル110は、透明導電性基板114の透明導電膜114bと対極120との間に、上述した実施形態の太陽電池10のバッファ層16、光吸収層18及び正孔輸送層22と同様のバッファ層116、光吸収層118及び正孔輸送層122を有するものである。一つの単セル110の対極120は、セルの厚み方向に屈曲されて隣接する一方の単セル110の透明導電膜114bと電気的に接続されているが、隣接する他方の単セル110の透明導電膜114bや隣接する両方の単セル110の対極120とはシール材124により電気的に絶縁されている。透明導電性基板114のうち、透明基板114aはすべての単セル110に共通の部材であるが、透明導電膜114bは各単セル110ごとに形成されている。この電池モジュール100は、高出力が要求される場合に有効である。また、平面的なスペースに配置することが可能である。なお、電池を配置するスペースによっては、複数の太陽電池10を縦方向に積み上げて直列接続してもよい。もちろん並列接続することも可能である。
以下には本発明の太陽電池(以下、素子ともいう)を具体的に作製した例を実験例として説明する。ここでは、光吸収層をCuがドープされたSnSとし、バッファ層をZn(1-X)MgXOとした素子を作製し、その特性について検討した。
図1に示す積層型の素子を以下の手順にしたがって作製した。透明導電性基板としてのITO薄膜(140nm)/ガラス基板上に、RFマグネトロンスパッタ法により、バッファ層としてのZn(1-X)MgXO(ZMO)の薄膜を成膜した。ZMO成膜は、Zn0.8Mg0.2OターゲットとZnOターゲットとを用いた二元同時スパッタにより行った。Mg量は、X=0.17となるようにZnOターゲットへの印加電力によって制御した。この成膜条件は、到達真空度を3×10-5Pa未満、成膜ガスをArガス、成膜ガス圧を0.5Pa、印加電力をZn0.8Mg0.2Oターゲットでは100W、ZnOターゲットでは50W、成膜温度を室温(20℃)とした。バッファ層16、光吸収層18、正孔輸送層22の成膜条件を表1に示す。また、バッファ層16のスパッタ後に、Ar雰囲気中、300℃、30分間に亘り熱処理を施し、表面改質を行った。得られたZMO薄膜の膜厚は100nm、Mg量は17%(Zn(1-X)MgXOのX=0.17)、光学バンドギャップは約3.7eVであり、ZnOと同様のウルツ鉱構造をもつことを確認した。
次に、光吸収層としてのCuドープSnS薄膜を、RFマグネトロンスパッタ法により、表1に示す条件でバッファ層16上に形成した。CuドープSnS成膜は、SnSターゲットとCuターゲットとを用いた二元同時スパッタにより行った。また、Cuドープ量は、Cuターゲットの印加電力により制御した。この成膜条件は、到達真空度を3×10-5Pa未満、成膜ガスをArガス、成膜ガス圧を0.5Pa、印加電力をSnSターゲットでは20W、Cuターゲットでは0W,10W,20W,50W、成膜温度を室温(20℃)とした。Cuドープ量は、エネルギー分散型X線分析(EDX)により測定した。ここでは、Cuドープ量が0at%、1.0at%、2.0at%、5.0at%のサンプルをそれぞれ実験例1〜4とした。
図3は、CuをドープしたSnSのXRDプロファイルである。Cuのドープ量に関わらずSnSに起因するピークが得られたことと、Cu−Sn−S合金(例えばCu2SnS3)に起因するピークが現れなかったことから、CuはSnSへドープされたものと推察された。ただし,Cuのドープ量に応じて、2θ=38°以上の高角側ピーク(131),(002)が消失し、2θ=38°未満の低角側ピーク(101),(111)が一体化していく傾向が見られた。この結果から、Cu導入によって、SnSの結晶が配向し、更にSnSの格子間距離が変化したことが推察された。なお、CuドープSnS薄膜を成膜後に、大気中、200℃で15分間、熱処理を行い、表面改質を行った。
続いて、正孔輸送層22としてのCu薄膜を、RFマグネトロンスパッタ法により、表1に示す条件で光吸収層18上に形成した。この成膜条件は、到達真空度を4×10-4Pa未満、成膜ガスをArガス、成膜ガス圧を0.4Pa、印加電力を30W、成膜温度を室温(20℃)とした。Cu成膜後に、Ar雰囲気、80℃で10分間加熱を行った。そして、対極20としてのPtを正孔輸送層22上に形成し、太陽電池10を得た。
以上のように作製したITO/ZMO/SnS:Cu/Cu太陽電池の特性を表2に示す。図4は、Cuドープ量と、開放電圧及びFF値との関係図である。表2及び図4に示すように、Cuドープ量の増加に伴い、開放電圧Voc及びフィルファクターFFが増加した。これは、例えば、SnSにCuがドープされることにより、Cuがアクセプターとして振る舞うなどすることにより、SnSのキャリア密度が向上したためであると推察された。Cuドープ量が2.0at%で開放電圧Vocが最大となり、5.0at%で0.01V低下する傾向を示した。FFは、Cuドープ量が2.0at%と5.0at%とでは大きな変化は見られなかった。したがって、更に高い開放電圧Vocを得るには、Cuを1.0at%以上3.0at%以下の範囲でドープするのがよいものと推察された。
本発明の太陽電池は、例えば家庭用、オフィス用、工場用の各種電化製品の電源や電気自動車、ハイブリッド自動車、電動自転車などのバッテリのほか、ソーラーパネルなどに利用可能である。
10 太陽電池、12 光電極、14 透明導電性基板、14a 透明基板、14b 透明導電膜、16 バッファ層、18 光吸収層、20 対極、22 正孔輸送層、24 シール材、100 電池モジュール、110 単セル、114 透明導電性基板、114a 透明基板、114b 透明導電膜、116 バッファ層、118 光吸収層、120 対極、122 正孔輸送層、124 シール材。

Claims (6)

  1. 導電性を有する透明導電性基板と、前記透明導電性基板に隣接し電子を輸送するバッファ層と、前記バッファ層に隣接し光を吸収する光吸収層と、を有する光電極と、
    対極と、
    前記光電極と対極との間に形成された正孔輸送層と、を備え、
    前記光吸収層は、CuがドープされたSnSを含む、太陽電池。
  2. 前記光吸収層は、Cuがドープされ、XRD測定においてSnSの(131)及び(002)のピークが消失したプロファイルを示すSnSからなる、請求項1に記載の太陽電池。
  3. 前記光吸収層は、Cuがドープされ、XRD測定においてSnSの(101)及び(111)が一体化したピークを示すSnSからなる、請求項1又は2に記載の太陽電池。
  4. 前記光吸収層は、5.0at%以下のCuがSnSにドープされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池。
  5. 前記光吸収層は、1.0at%以上3.0at%以下のCuがSnSにドープされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池。
  6. 導電性を有する透明導電性基板と前記透明導電性基板に隣接し電子を輸送するバッファ層と前記バッファ層に隣接し光を吸収する光吸収層とを有する光電極と、対極と、前記光電極と対極との間に形成された正孔輸送層と、を備えた太陽電池を製造する方法であって、
    (a)前記透明導電性基板に前記バッファ層を形成する工程と、
    (b)SnSを含む第1ターゲットと、Cuを含む第2ターゲットとを用いたスパッタ処理により前記形成したバッファ層上にCuがドープされたSnSを含む前記光吸収層を形成する工程と、
    (c)前記形成した光吸収層上に前記正孔輸送層及び前記対極を形成する工程と、
    を含む太陽電池の製造方法。
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