以下、発明について具体的に説明する。
本発明の静電荷像現像用マゼンタトナー(以下、単に「マゼンタトナー」ともいう。)は、少なくとも結着樹脂、着色剤、および離型剤(ワックス)を含有するマゼンタトナー粒子よりなる静電荷像現像用マゼンタトナーであって、マゼンタトナー粒子が少なくとも着色剤として、特定の2種類のマゼンタ顔料を特定の割合にて含有するものである。
本発明のマゼンタトナーを構成するマゼンタトナー粒子は、粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法、エステル伸張重合法などで作成されるものである。また、結着樹脂およびマゼンタ着色剤を含有するコア粒子と、その外周面を被覆する実質的にマゼンタ着色剤を含まないシェル層とよりなるコア−シェル構造のものであってもよい。
本発明のマゼンタトナーは、当該マゼンタトナーにイエロートナーを混色して、普通紙上に形成した朱色の可視画像が、明度をL* 、赤−緑方向の色相をa* 、黄−青方向の色相をb* とするL* a* b* 系表色系(マンセル表色系)によって表す場合に、朱肉の色域である(L* ,a* ,b*)=(55,62,33)を色域の内に含むものである。あるいは、明度をL* 、彩度をC* とする表色系(マンセル表色系)によって表す場合に、朱肉の色域である(L* ,C*)=(55,70)を色域の内に含むものである。
L* a* b* 系表色系とは色を数値化して表すのに有用に用いられる手段であり、z軸方向のL* は明度を表し、x軸およびy軸のa* およびb* の両者で色相と彩度を表す。「明度」とは色の相対的な明るさをいい、「色相」とは赤、黄、緑、青、紫などの色合いをいい、「彩度」とは色の鮮やかさの度合いをいう。
なお、イエロートナーは、用いるイエローの着色剤によらず明度が高いため、朱色の可視画像の色域は、マゼンタトナーの特性によって決定される。
<マゼンタ着色剤>
本発明のマゼンタトナーを構成するマゼンタトナー粒子は、特定の2種類のマゼンタ顔料を特定の割合にて含有するものである。
特定の2種類のマゼンタ顔料とは、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド48−3と、C.I.ピグメントレッド48−1の2つである。これら2種類のマゼンタ顔料を、C.I.ピグメントレッド48−3を主とし、C.I.ピグメントレッド48−1を副として混合する。
C.I.ピグメントレッド48−3は、透過特性として赤味が強く、また、紫色の透過率も高いといった特性がある。一方、C.I.ピグメントレッド48−1は、紫色の透過率が低く、着色力が弱いといった特性がある。
特定の割合(混合比)とは、マゼンタ顔料の総重量を10とした場合、C.I.ピグメントレッド48−3:C.I.ピグメントレッド48−1が、8:2〜5:5の範囲である。C.I.ピグメントレッド48−3に対するC.I.ピグメントレッド48−1の割合が増すほど、普通紙上に形成した可視画像の明度L* が高くなっていく。但し、C.I.ピグメントレッド48−1の割合が2割未満である場合は、C.I.ピグメントレッド48−3の特性が強く出るため、朱肉の色の高い明度L* が出ず、朱肉に色の再現ができない。また、逆に、C.I.ピグメントレッド48−1の割合が5割を超えると、着色力が弱いC.I.ピグメントレッド48−1の特性にて、結着樹脂に対する顔料の割合が高くなり、朱肉の色の彩度C*が出ず、朱肉に色の再現ができない。
C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1の混合比を8:2〜5:5までとすることで、普通紙上に形成した朱色の可視画像の色域が、朱肉の色域である(L* ,a* ,b*)=(55,62,33)あるいは(L* ,C*)=(55,70)を含むものとなる。
これら2種類のマゼンタ顔料よりなるマゼンタ着色剤は、マスターバッチとして、使用されることが好ましい。顔料のマスターバッチは、たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造することができる。合成樹脂としては、トナーの結着樹脂と同種の樹脂またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。合成樹脂と顔料との使用割合は特に制限されないが、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒径2〜3mm程度に造粒されて用いられる。
マゼンタトナー粒子おける、これら2種類のマゼンタ顔料よりなるマゼンタ着色剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上15重量部以下である。マスターバッチを用いる場合、本発明のトナーにおける上記マゼンタ用着色剤の含有量が前記範囲になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。上記マゼンタ用着色剤の含有量を前記範囲とすることによって、充分な画像濃度を有し、発色性が高く画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。
<結着樹脂>
本発明のマゼンタトナーを構成するマゼンタトナー粒子に用いる結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、カラートナー用の結着樹脂が使用される。たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレンおよびスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、ならびにエポキシ樹脂などが挙げられる。
あるいは、結着樹脂として、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応させて得られる樹脂を用いてもよい。この場合には、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。結着樹脂にポリエステル樹脂を含むことによって、離型剤の分散状態制御性が向上し、一層優れた定着性を有するトナーが得られる。さらに、トナーに優れた耐久性と透明性とを付与することができる。結着樹脂は、1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することもできる。
ポリエステル樹脂としては、とくに制限されるものではなく公知のものが使用される。たとえば、多塩基酸類と多価アルコール類との縮重合物が挙げられる。多塩基酸類とは、多塩基酸、および多塩基酸の誘導体たとえば多塩基酸の酸無水物またはエステル化物などのことである。多価アルコール類とは、ヒドロキシル基を2個以上含有する化合物のことであり、アルコール類およびフェノール類のいずれをも含む。
多塩基酸類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用できる。たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸およびナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸およびアジピン酸などの脂肪族カルボン酸類が使用される。多塩基酸類は、1種を単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を併用して使用してもよい。
多価アルコール類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものが使用される。たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびグリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよび水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類が挙げられる。
「ビスフェノールA」とは、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンのことである。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。多価アルコール類は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
ポリエステル樹脂は、縮重合反応によって合成することができる。たとえば、有機溶媒中または無溶媒下で、触媒の存在下に多塩基酸類と多価アルコール類とを重縮合反応、具体的には脱水縮合反応させることによって合成することができる。このとき、多塩基酸類の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用い、脱メタノール重縮合反応を行なってもよい。多塩基酸類と多価アルコール類との重縮合反応は、生成するポリエステル樹脂の酸価および軟化点が、合成しようとするポリエステル樹脂における値となったところで終了させればよい。
この重縮合反応において、多塩基酸類と多価アルコール類との配合比および反応率などの反応条件を適宜変更することによって、たとえば、得られるポリエステル樹脂の末端に結合するカルボキシル基の含有量、ひいては得られるポリエステル樹脂の酸価、軟化点、その他の物性値を調整することもできる。
結着樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。結着樹脂の酸価が5mgKOH/g未満であると、結着樹脂の酸価が5mgKOH/g以上である場合と比較して、結着樹脂と離型剤との親和性が大きくなるので、定着の際に離型剤がトナー表面に溶出しにくくなり、定着不良として高温オフセットが発生しやすくなる。結着樹脂の酸価が30mgKOH/gを超えると、結着樹脂の酸価が30mgKOH/g未満の場合より、トナー表面に残存する官能基が多くなり、水分を吸収しやすくなるので、高湿条件下においてトナー帯電量が低下し、帯電安定性が損なわれるおそれがある。
さらに、結着樹脂中における離型剤の分散性が低下しやすくなるので、トナーの製造の際に混練が不充分である場合には、トナー表面の離型剤の分散径が大きくなる可能性がある。結着樹脂の酸価が5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることによって、トナー粒子中での離型剤の分散性を所望の範囲にする、具体的には、トナー表面の離型剤の分散径を300nm未満に安定することができ、高湿条件下でのトナー帯電量の低下を抑えることができ、定着性が良好になるように結着樹脂と離型剤との親和性を制御することができる。
したがって、帯電安定性をより一層良好にすることができ、かつより良好な定着性を有することができるので、長期間にわたって高精細で高解像度の高画質画像をより一層安定して形成することができる。結着樹脂の酸価は、結着樹脂の合成において、結着樹脂の原料モノマー混合物、たとえばポリエステル樹脂の場合には、多塩基酸類、多価アルコール類の配合比および反応率などの反応条件を適宜変更することによって、得られる結着樹脂の末端に結合するカルボキシル基の含有量、ひいては得られる結着樹脂の酸価を調整することができる。
<離型剤>
本発明のマゼンタトナーを構成するマゼンタトナー粒子に用いる離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、ならびにマイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ならびにポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、エステル系ワックスなどが挙げられる。
マゼンタトナー粒子おける離型剤の含有量は、マゼンタトナー粒子の全重量に対して1.5重量%以上、5重量%以下が良い。1.5重量%未満では、中間転写ベルトに対するトナーの離型性が低下し、定着オフセットが発生する。一方、5重量%超では、定着性は良好であるものの現像装置内の撹拌熱によりトナーが凝集し、良好な画像が得られない。
離型剤の酸価は、4mgKOH/g未満である。離型剤の酸価が4mgKOH/g以上であると、離型剤の酸価が4mgKOH/g未満である場合と比較して、離型剤と結着樹脂との親和性が高くなるので、定着の際に離型剤がトナーから溶出しにくくなり、高温オフセットが発生しやすくなる。
<帯電制御剤>
本発明のマゼンタトナーを構成するマゼンタトナー粒子には、結着樹脂、マゼンタ着色剤、および離型剤の他に、帯電制御剤などのトナー添加成分を含有することが好ましい。帯電制御剤を含有させることによって、トナーに好ましい帯電性を付与することができる。帯電制御剤としては、正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤が使用される。
帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などの正電荷制御用の帯電制御剤と、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などの負電荷制御用の帯電制御剤とが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用することができ、あるいは2種以上を併用することができる。
マゼンタトナー粒子おける帯電制御剤の使用量は、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であり、より好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。帯電制御剤が5重量部よりも多く含まれると、キャリアが汚染されてしまい、トナー飛散が発生するおそれがある。帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、トナーに十分な帯電特性が付与されない。
<マゼンタトナー粒子の粒径>
本発明のマゼンタトナーを構成するマゼンタトナー粒子においては、トナーの体積平均粒子径が5.0μm以上7.0μm以下であり、個数平均粒子径5.0μm以下であるトナー粒子の含有率が、全トナー粒子の40個数%未満であることが好ましい。トナーの粒径分布および個数分布がこの範囲を満足することによって、トナーの飛散は抑えられ、高精細で高解像度の高画質画像が形成される。体積平均粒子径が5.0μm未満では、流動性低下によるトナー飛散が発生し、体積平均粒子径が7.0μmを超えると、充分に高精細で高解像度化された画像が形成されない。個数平均粒子径が5.0μm以下であるトナー粒子の含有率が、全トナー粒子の40個数%以上では、流動性低下によるトナー飛散および転写効率の悪化によるかぶりが生じる。
上記したトナーの体積平均粒径(D50V)および個数平均粒子径が5.0μm以下であるトナー粒子の含有率(体積%、個数%)は、ベックマン・コールター株式会社製粒度分布測定装置「Multisizer3」によって測定される。測定条件を以下に示す。
アパーチャ径:100μm
測定粒子数:50000カウント
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン1.19(ベッ クマン・コールター株式会社製)
電解液:ISOTON−II(ベックマン・コールター株式会社製)
分散剤:アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム
測定手順は、ビーカーに電解液50ml、試料であるトナー20mgおよび分散剤1mlを加え、超音波分散器にて3分間分散処理して測定用試料を調製し、測定装置「Multisizer3」により粒径の測定を行う。得られた測定結果から試料粒子の体積粒度分布および個数粒度分布を求め、体積粒度分布からトナーの体積平均粒径(D50V)を求める。また個数粒度分布から、個数平均粒子径が5.0μm以下であるトナー粒子の含有率(個数%)を求める。
<外添剤>
本発明のマゼンタトナーを構成するマゼンタトナー粒子には、たとえば、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤を混合してもよい。外添剤としては、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。外添剤は、1種を単独で使用することができ、あるいは、2種以上を併用することができる。
本発明のマゼンタトナーにおける外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、トナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対し0.1重量部以上10重量部以下が好適であり、2.0重量部以上4.0重量部未満がより好適である。外添剤を2.0重量部以上4.0重量部未満含むことにより、さらに流動性が良好で個々のトナー粒子の帯電を適正に制御することができるので、定着性を損なうことなく、かぶりが発生しない、高画質な画像を形成することができる。
外添剤の含有量が2.0重量部未満であると、トナー(特に小粒径トナー)に十分な流動性を付与することができないため、個々のトナー粒子が十分帯電されずに非画像部でのかぶりが発生しやすくなる。外添剤の含有量が4.0重量部以上であると、外添剤粒子同士が凝集しやすくなるため、トナー表面を効率よく覆うことができずに流動性を上げることができないため、個々のトナー粒子が十分帯電されずに非画像部でのかぶりが発生しやすい。
<記録紙>
本発明の画像形成方法及び画像形成装置において使用する記録紙(記録材)としては、白色度が60以上及び密度が0.70(g/cm3)以上であるものが望ましい。
白色度は、紙などの表面色の白さの程度を示す指標である。白色度が60を下回る記録紙では、如何に朱肉の色の再現性に優れた本発明のマゼンタトナーを使用しても、記録紙の有する紙色(下地色)が影響して、朱肉の色の再現性を確保できなくなる虞がある。白色度が60以上の記録紙であれば、記録紙の有する紙色の影響による上記不具合を回避できる。ここで、白色度の下限のみを規定しているが、より白色に近い方、つまり、白色度は100に近づくほど、朱肉の色の再現性は良好となる。したがって、白色度の上限値は100となる。
また、記録紙の密度とは、紙の坪量を紙厚で除した値である。記録材の密度が0.70(g/cm3)未満であると、如何に朱肉の色の再現性に優れた本発明のマゼンタトナーを使用しても、画像ガサツキ(粒状感)のあるトナーの隠蔽性に劣った画像となる虞がある。これは、密度が0.70(g/cm3)未満の記録紙の場合、記録紙の表面のパルプ繊維や添加するCa、Ti、Al等の無機物の間隙が広くなって、トナーの均一な隠蔽性が損なわれる結果、画像ガサツキが発生するためと考えられる。記録紙を構成するパルプ繊維や添加するCa、Ti、Al等の無機物が、記録紙の表面性に大きな影響を及ぼす。密度が0.70(g/cm3)以上の記録紙であれば、トナーの隠蔽性が向上し、画像ガサツキのない良好な画像の再現が可能となる。
<トナーの製造方法>
本発明のマゼンタトナーを構成するマゼンタトナー粒子は、上述したように、粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法、エステル伸張重合法などで作成されるトナーである。また、結着樹脂およびマゼンタ着色剤を含有するコア粒子と、その外周面を被覆する実質的にマゼンタ着色剤を含まないシェル層とよりなるコア−シェル構造のものであってもよい。
以下に、トナー粒子を、粉砕法にて製造するトナーの製造方法の一例を記載する。
少なくとも、結着樹脂、着色剤(マゼンタ着色剤)および離型剤を含む樹脂組成物を乾式混合(前混合)して溶融混練後、粉砕分級してトナー粒子(母体、コア)を作成する。次いで、トナー粒子と外添剤とを乾式混合して所望のトナーを得る。乾式混合に用いられる混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)およびメカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、ならびにコスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
トナー粒子は、前述の前混合における離型剤の添加量を結着樹脂100重量部に対して2.5重量部以上6.0重量部以下とする。混練機としては公知のものが使用される、たとえば、二軸押出し機、三本ロールおよびラボブラストミルなどの一般的な混練機が使用される。たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。トナー原料混合物は、複数の混練機を用いて溶融混練されてもよい。
トナー粒子の粉砕には、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子であるロータと固定子であるライナとの間に形成される空間に、粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などが用いられる。
分級には、遠心力による分級または風力による分級によって過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去することができる公知の分級機が使用される。たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などが使用される。トナー粒子は、球形化処理をしても良い。機械的衝撃力による球形化処理に用いられる衝撃式球形化装置としては、市販されているものを使用することができ、たとえば、ファカルティ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)などが用いられる。熱風による球形化処理に用いられる熱風式球形化装置としては、市販されているものを使用することができる。たとえば、表面改質機メテオレインボー(商品名、日本ニューマチック工業株式会社製)などが用いられる。
球形化処理は、トナーの円形度が、前述の好ましいトナーの円形度の範囲、具体的には、0.950以上0.960以下となるように行われることが好ましい。
<現像剤>
上述のように製造された本発明のマゼンタトナーは、そのまま1成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して2成分現像剤として使用することができる。本発明のマゼンタトナーを含むことで、明度の高い明るい朱色である朱肉の色を再現でき、耐光性にも優れたマゼンタ現像剤が得られる。
また、本発明のマゼンタトナーは、良好な定着性と良好な帯電安定性とを有し、長期の使用にわたり特性の安定した現像剤とすることができるので、良好な現像性を維持することのできる現像剤が得られる。
現像剤は、本発明のトナーとキャリアとからなる2成分現像剤であることが好ましい。本発明のトナーは、保存安定性に優れるので、現像剤の流動性低下を抑え、帯電安定性および現像性の良好な2成分現像剤が得られる。このような2成分現像剤を用いることによって、トナー飛散がなく、長期間にわたって高精細で高解像度の高画質画像を安定して形成することができる。
2成分現像剤を構成するキャリアとしては、磁性を有する粒子が使用される。磁性を有する粒子の具体例としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。
磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。樹脂被覆キャリアに用いられる樹脂としては特に制限はないけれども、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂、およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。キャリアの体積平均粒子径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、10μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上50μm以下であることが、より好ましい。キャリアの体積平均粒子径が10μm未満である場合には、キャリアの体積平均粒子径が10μm以上である場合と比較して、キャリアと現像ローラとの間の磁力が弱くなるので、現像工程において、キャリアがトナーと一緒に現像されやすくなる。
キャリアの体積平均粒子径が100μmを超えると、個々のトナー粒子を充分に帯電させることができないおそれがある。キャリアの体積平均粒子径が10μm以上100μm以下であることによって、キャリアの体積平均粒子径が100μmを超える場合と比較して、トナーとキャリアとの接触機会を増やすことができるので、個々のトナー粒子の帯電を制御し、充分なトナー帯電性を付与することができる。したがって、トナーの現像性が良好な2成分現像剤を得ることができる。キャリアの体積平均粒子径が30μm以上50μm以下であることによって、上記の効果をより安定して発揮することができる。
本実施形態において、キャリアの体積平均粒子径は、レーザ回折、散乱式粒度分布測定装置マイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)を用いて測定する。
<画像形成装置の一例>
上述のように製造された本発明のマゼンタトナーが使用される電子写真方式の画像形成装置100の全体構成について、図10を用いて説明する。
図中、100は画像形成装置を示す。画像形成装置100は、外部から伝達された画像データまたは原稿読み取りにより得られた画像データに基づいて、記録媒体である記録用紙に対して多色または単色の画像を形成する装置であり、装置本体110と、自動原稿処理装置120とを含んで構成されている。
装置本体110は、露光ユニット1と、4つの画像形成部Pと、中間転写ベルト61を含む中間転写ユニット(転写部)6と、定着ユニット7と、内部給紙ユニット81と、手差し給紙ユニット82と、排紙ユニット91とを含む。装置本体110の上部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台92が設けられ、原稿載置台92の上側には自動原稿処理装置120が取り付けられている。自動原稿処理装置120は、原稿載置台92上に自動で原稿を搬送する。また自動原稿処理装置120は矢印M方向に回動自在に構成され、原稿載置台92の上を開放することにより原稿を手置きで置くことができるようになっている。
画像形成装置100は、ブラック(K)、ならびにカラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の4色の各色相に対応した画像データを用いて、画像形成部Pにおいて画像形成を行う。4つの画像形成部Pは、中間転写ベルト61の移動方向(回転方向)に一列に配置されている。
4つの画像形成部Pは、それぞれ同様の構成であり、帯電装置(帯電部)5、感光体3、クリーナユニット4、および現像装置(現像部)2を有している。感光体3は像担持体であり、この周囲に、現像装置2、クリーナユニット4および帯電装置5が配置される。また、4つの画像形成部Pの各現像装置2には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナー(現像剤)が収容されている。本実施形態では、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を用いた二成分現像方式を例示するが、一成分現像方式であってもよい。
感光体3は、円筒状のドラム形状を呈し、図示しない駆動手段によって軸線まわりに回転駆動される。感光体3は、円筒状の導電性基体、および、導電性基体の表面に設けられる感光層を有する。
帯電装置5は、例えばスコロトロン型の放電器を備え、該放電器が感光体3の軸線方向に沿って感光体3に近接して配置される。そして、放電器より感光体3の表面を所定の電位に均一に帯電させる。なお、図10では非接触式の帯電装置5を例示したが、帯電ローラを備えた接触式の帯電装置であってもよい。
露光ユニット(露光部)1は、レーザ出射部および反射ミラーなどを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)である。露光ユニット1は、自動原稿処理装置120または外部から伝達された画像データに応じて変調されるレーザ光を出射するレーザ出射部と、レーザ出射部から出射されるレーザ光を主走査方向に偏向させるポリゴンミラーと、ポリゴンミラーにより主走査方向に偏向されるレーザ光を感光体3の表面に結像するように収束する収束レンズと、収束レンズにより収束されるレーザ光を反射する反射ミラーとを含んで構成される。
レーザ出射部から出射されるレーザ光は、ポリゴンミラーにより偏向され、さらに収束レンズにより収束され、反射ミラーによって反射されて、所定の電位および極性に帯電する感光体3の表面に照射され、画像データに応じた静電潜像が感光体3に形成される。なお、露光ユニット1としては、レーザスキャニングユニット(LSU)の他、EL(Electro Luminescence)やLED(Light Emitting Diode)などの発光素子をアレイ状に並べた書込み装置(例えば、書込みヘッド)を使用することもできる。
現像装置2は、感光体3に対向しかつ、現像ローラのスペーサが感光体3に圧接するように設けられ、感光体3の表面に形成される静電潜像に現像剤であるトナーを供給して、静電潜像を顕像化させるものである。
クリーナユニット4は、現像・画像転写後における感光体3の表面に残留したトナーを、除去・回収する。中間転写ユニット6は、感光体3の上方に配置され、中間転写ベルト61、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、一次転写ローラ64、および中間転写ベルトクリーニングユニット65を備えている。
中間転写ベルト61は、中間転写ベルト駆動ローラ62と中間転写ベルト従動ローラ63との間に張架されてループ状の移動経路を形成している無端状のベルト部材であり、その厚みは100μm〜150μm程度である。この中間転写ベルト61を挟んで感光体3に対向する位置に、一次転写ローラ64が配置されている。中間転写ベルト61が感光体3に対向する位置が一次転写位置である。
一次転写ローラ64には、感光体3の表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト61上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体3に形成された各色相のトナー像は中間転写ベルト61の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト61の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。但し、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合には、4つの画像形成部Pの各感光体3のうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像およびトナー像の形成が行われる。
例えば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応した感光体3のみにおいて静電潜像の形成およびトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト61の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。一次転写ローラ64は、直径8〜10mmの金属(例えば、ステンレス)を素材とする軸の表面を導電性の弾性材(例えば、EPDM:エチレンプロピレン共重合ゴム、発泡ウレタンなど)により被覆して構成されており、導電性の弾性材によって中間転写ベルト61に均一に高電圧を印加する。
一次転写ローラ64によって中間転写ベルト61の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト61の回転によって、二次転写ローラ10との対向位置である二次転写位置に搬送される。
二次転写ローラ10は、画像形成時において、内周面が中間転写ベルト駆動ローラ62の周面に接触する中間転写ベルト61の外周面に所定のニップ圧で圧接されている。内部給紙ユニット81または手差し給紙ユニット82から給紙された記録用紙が二次転写ローラ10と中間転写ベルト61との間を通過する際に、二次転写ローラ10にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト61の外周面から記録用紙の表面にトナー像が転写される。
感光体3の一部または全部から中間転写ベルト61に付着したトナーのうち記録用紙上に転写されずに中間転写ベルト61上に残存したトナーは、次工程での混色を防止するために、中間転写ベルトクリーニングユニット65によって除去・回収される。中間転写ベルトクリーニングユニット65には、中間転写ベルト61に当接してトナーを除去するクリーニングブレードが備えられている。
定着ユニット7は、ヒートローラ71および加圧ローラ72を有する。トナー像が転写された記録用紙は、定着ユニット7へ導かれ、ヒートローラ71と加圧ローラ72との間を通過することで加熱および加圧される。これによって、トナー像が、記録用紙の表面に堅牢に定着する。なお、定着ユニット7においてヒートローラ71には、外部からヒートローラ71を加熱する外部定着ベルト73が接触して設けられ、図示しない温度検出器によって検出される温度データに基づいて、ヒートローラ71が所定の定着温度となるように制御される。トナー像が定着した記録用紙は、搬送ローラ12bによって排紙ユニット91上へ排出される。
画像形成装置100には、内部給紙ユニット81および手差し給紙ユニット82に収容されている記録用紙を二次転写ローラ10と中間転写ベルト61との間および定着ユニット7を経由して排紙ユニット91へ送るための略垂直方向に延びる用紙搬送路Sが設けられている。用紙搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ11a,11b、複数の搬送ローラ12a〜12d、レジストローラ13が配置されている。
画像形成装置100において、内部給紙ユニット81および手差し給紙ユニット82から搬送される記録用紙は、用紙搬送路Sの搬送ローラ12aによってレジストローラ13まで搬送され、レジストローラ13によって所定のタイミングで二次転写ローラ10に搬送されて、二次転写ローラ10と中間転写ベルト61との間を通過したときにトナー像が転写される。トナー像が転写された記録用紙は、定着ユニット7を通過することによってトナー像が熱で溶融・固着され、搬送ローラ12bを経て排紙ユニット91上に排出される。
また、画像形成装置100において、記録用紙の両面に画像を形成する両面印字の場合には、片面印字が終了し、定着ユニット7を通過した記録用紙は、その後端が搬送ローラ12bで把持されたときに、搬送ローラ12bが逆回転することによって記録用紙を搬送ローラ12c,12dに導く。搬送ローラ12c、12dに導かれた記録用紙は、レジストローラ13、二次転写ローラ10および定着ユニット7を通過し、裏面の印字が行われて、排紙ユニット91に排出される。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本願出願者には、数あるマゼンタ着色剤を用い、単独で用いて添加量を振ったり、組み合わせて用いて混合比を振ったり、また、混ぜるイエロートナーの種類も変更したりしながら、朱肉の色が色域に含まれるかどうかを測定する実験を繰り返し、鋭意検討を行った結果、終に、マゼンタ着色剤として、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1の2種類を用い、割合を7:3とし、かつ、結着樹脂100重量部に対する添加量を6重量として作製したマゼンタトナーが、朱肉の色を色域に含むことを見出した。これを実施例1のマゼンタトナーおよびそれを含む2成分現像剤とする。
(実施例1):マゼンタ着色剤として、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1を7:3の割合で使用し、マゼンタ着色剤の添加量(含有量)を6重量%としたマゼンタトナー粒子を作製し、マゼンタトナーを得た。これを実施例1のマゼンタトナー、これにキャリアを加えたものが実施例1の2成分現像剤である。記録紙は、三菱製紙製のMI紙を用いた。
具体的には、以下の通りである。まず、結着樹脂としてのポリエステル樹脂Aを、以下のようにして作製した。温度計、攪拌機を備えたオートクレーブに、ジメチルテレフタレート113重量部、ジメチルイソフタレート75重量部、エチレングリコール97重量部、プロピレングリコール50重量部、および触媒としてテトラブトキシチタネート0.1重量部を加え、150℃以上230℃以下に加熱した状態で120分間攪拌させて反応させた。その後、250℃まで加熱し、反応系の圧力を1mmHg以上10mmHg以下まで減圧して、約1時間攪拌させてさらに反応させることによって、ポリエステル樹脂Aを得た。
得られたポリエステル樹脂Aは、数平均分子量:3200、体積平均分子量:6200、ガラス転移点:63℃、酸価:2.2mgKOH/g、還元粘土:0.335であった。なお、分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)測定、ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計)測定、スルホン酸ナトリウム基当量は硫黄の定量、酸価は酸塩基滴定によりそれぞれ求め、還元粘土はポリエステル樹脂0.01gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6:4)の混合溶媒250ccに溶解させ、オストワルト粘土計を用いて測定温度30℃で測定した。
上記のように作製したポリエステル樹脂A:100重量部、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1を7:3の割合で6.8重量部、パラフィンワックス(離型剤、商品名:HNP10PD、日本精鑞株式会社製、酸価0mgKOH/g、融点75℃):5重量部、アルキルサリチル酸金属塩(帯電制御剤、商品名:BONTRON E−84、オリエント化学株式会社製)1重量部を、ヘンシェルミキサで10分間混合することによって、混合物を作製した。作成した混合物を、オープンロール型連続混練機(商品名:MOS320−1800、三井鉱山株式会社製)で溶融混練し、溶融混練物を作製した。
溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、菱興産業株式会社製)で粗粉砕して粗粉砕物を作製した後、粗粉砕物をカウンタジェットミルで微粉砕した。粉砕後、ロータリー式分級機で過粉砕トナーを分級除去することによって、体積平均粒子径が約6.7μmであるトナー粒子(母体、コア)が作製した。
衝撃式球形化装置(商品名:ファカルティF−600型、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて粉砕物の球形化物を作製した。球形化したマゼンタトナー粒子100重量部、および外添剤として疎水性シリカ(商品名:R−974、日本アエロジル株式会社製)2.2重量部と、疎水性チタン(商品名:T−805、日本アエロジル株式会社製)1.6重量部との合計3.8重量部をヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合することによってトナーに外添剤を外添し、実施例1のマゼンタトナーを作製した。パラフィンワックスの含有量は、トナー全重量に対して4.8重量%である。
パラフィンワックスを1.5重量部(トナー全重量に対する含有量は、1.49重量%)、2重量部(トナー全重量に対する含有量は、1.98重量%)、3.5重量部(トナー全重量に対する含有量は、3.41重量%)とした場合は、いずれも良好な定着性が得られ、現像装置内でのトナーの凝集も見られず、良好な画像が得られる。ワックスの含有量は、1.5重量%以上4.8重量%以下の場合は良好である。
しかし、パラフィンワックスを1重量部(トナー全重量に対する含有量は、1.0重量%)では、定着オフセットが発生する。パラフィンワックスを5.5重量部(トナー全重量に対する含有量は、5.26重量%)では、定着性は良好であるが、現像装置内でトナーの凝集が発生し、画像にトナー凝集物が認められる。
2成分現像剤の作製は、キャリアとして、体積平均粒子径が45μmであるフェライトコアキャリアを用いて、キャリアに対するトナーの被覆率が60%となるようにV型混合器混合機(商品名:V−5、株会社特寿工作所製)で20分間混合することによって、実施例1のマゼンタトナーを含む2成分現像剤を作製した。
このように作製した実施例1のマゼンタトナーとイエロートナーとを組み合わせた場合に得られる色域を求め、色域に朱肉の朱色を含むかどうかを判定した。具体的には以下の通りである。
〔朱色の再現性の評価〕(L* ,a* ,b*)
朱色は、イエローとマゼンタとの掛け合わせにより得られる色なので、上記2色の掛け合わせのカラーパッチを出力する。例えば、主走査方向にマゼンタ、副走査方向にイエローの画像濃度を変化させたものを掛け合わせる。主走査方向、副走査方向のパッチ数が多いほど良い。出力したプリントサンプルを、反射分光濃度計(X−Rite 939:エックスライト株式会社製)により測色(L* ,a* ,b*)する。パッチの各行、各列ごとにL* の変化に着目すれば連続的にL* が変化しているので一定の L* 値ごとにデータを抽出する。目標のL* 値がない場合は、最寄の2データにより補間演算して求める。上記で求めた各データに対してC* 、Habを算出する。C* はa* ,b* 平面上での原点からの距離(彩度として代用する)。Hab はa* ,b* 平面上でのa* , 軸(+)方向からの角度θ°(色相として代用する)。このようにして、作成したマゼンタトナーとイエロートナーとの混色で得られる色域を求める。
また、再現したい朱肉のL* a* b*を、反射分光濃度計(X−Rite 939:エックスライト株式会社製)を使用して測定し、求めた色域内にこれを含むか否かで、朱色の再現性を評価した。朱肉の朱色のL* a* b* は(55,62,33)であり、実施例1のマゼンタトナーをイエロートナーと組み合わせて得られる色域に、朱肉の朱色のL* a* b* (55,62,33)が含まれていた。
そこで、次に、マゼンタ着色剤として、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1の2種類を用い、割合を実施例1と同じ7:3とし、マゼンタ着色剤の添加量を4重量%とした実施例2のマゼンタトナーおよびそれを含む2成分現像剤を作製した。
(実施例2):マゼンタ着色剤を4.4重量部とした以外は実施例1と同様にマゼンタトナー粒子を作製し、マゼンタトナーを得た。これを実施例2のマゼンタトナーとし、これにキャリアを加えたものを実施例2の2成分現像剤とした。
このように作製した実施例2のマゼンタトナーに対しても、実施例1と同様に、イエロートナーとを組み合わせた場合の色域を計算し、色域内に朱肉の朱色を含むかどうかを判定した結果、含むことがわかった。なお、具体的には記載しないが、添加量をさらに振って実験を繰り返した結果、結着樹脂に対するマゼンタ着色剤の添加量に再現性が左右されることはないことがわかった。
次に、マゼンタ着色剤として、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1の2種類を用い、マゼンタ着色剤の添加量を6重量%に固定し、混合の割合を8:2、5:5、9:1、4:6に振って、4つのマゼンタトナーおよびそれを含む2成分現像剤を作製した。なお、記載した変更点以外は、実施例1と同様とした。
このように作製した4種類のマゼンタトナーに対しても、実施例1と同様に、イエロートナーとを組み合わせた場合の色域を計測して求め、色域内に朱肉の朱色を含むかどうかを判定した。その結果、混合の割合が8:2、5:5のマゼンタトナーは含み、混合の割合が9:1、4:6のマゼンタトナーは含まないことがわかった。以下、混合の割合が8:2、5:5のマゼンタトナーを実施例3,4のマゼンタトナーと称し、混合の割合が9:1、4:6のマゼンタトナーを比較例1,2のマゼンタトナーと称する。また、これらマゼンタトナーにキャリアを加えたものを実施例3,4、比較例1、2の2成分現像剤と称する。
図1に、実施例1〜4、および比較例1,2の各マゼンタトナーとイエロートナーとの掛け合わせにより得られる色域を、横軸に彩度C* 、縦軸L* をとって、二次元的に示したグラフを示す。朱肉の朱色の(L* ,C*)=(55,70)を、ターゲット●として示す。
また、表1に、実施例1〜4、および比較例1,2のマゼンタトナーに対する評価結果を着色剤の配合比とともに示す。
先に述べた朱色の再現性以外に、画像濃度IDも評価した。また。朱色の再現性の評価では、色域に、朱肉の朱色のL* a* b* (55,62,33)を含んでいたものは「○」、含んでいないものを「×」とした。
〔画像濃度IDの評価〕
マゼンタトナーを含む2成分現像剤を用いて、MX−3100(シャープ株式会社製)を利用して、用紙上のトナー付着量が0.4±0.05mg/cm^2となるようにして画像を作成し、作成した画像の濃度IDを測定した。画像濃度IDとは、マクベス濃度計を用いて測定される画像濃度であって、画像への入射光量をPi、画像からの反射光量をPoとすると、
ID=10・log(Pi /Po )
で表されるものである。
画像濃度IDが1.2以上得られるもの「○」とし、得られないものは「×」とした。
〔コスト評価〕
高級顔料である有機合成顔料のキナクリドン顔料を使用するものは「×」とし、キナクリドン顔料以外の通常の顔料を使用するものを「○」とした。
図1および表1より分かるように、C.I.ピグメントレッド48−3:C.I.ピグメントレッド48−1が、8:2〜5:5の範囲であれば、充分な朱色の再現性を得ることができる。これに対し、比較例1のC.I.ピグメントレッド48−3に対するC.I.ピグメントレッド48−1の割合が1割である場合、充分な朱色の再現性を得ることができない。比較例1では、高い明度L* を得ることができなかった。また、比較例2のC.I.ピグメントレッド48−1の割合が5割を超えた場合も、充分な朱色の再現性を得ることができない。比較例2では、彩度C*が必要な値よりも低下してしまった。また、比較例2では、画像濃度IDも1.2に達しなかった。これは、着色力の弱いC.I.ピグメントレッド48−1の割合が多いためと考えられる。
したがって、朱肉の朱色に対して充分な再現性を得るには、C.I.ピグメントレッド48−3に対するC.I.ピグメントレッド48−1の割合は2割以上、5割以下とすることが必要であるといえる。
次に、マゼンタ着色剤として、副たる着色剤「B」にC.I.ピグメントレッド48−1を用い、主と副の混合割合を7:3に固定し、主たる着色剤「A」をC.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド57−1の2種に振り、かつ、マゼンタ着色剤の添加量を6重量%、4重量%に振って、4種類のマゼンタトナーおよびそれを含む2成分現像剤を作製した。なお、記載した変更点以外は、実施例1と同様とした。
このように作製した4種類のマゼンタトナーに対しても、実施例1と同様に、イエロートナーを掛け合わせた場合の色域を上記した手順にて求め、色域内に朱肉の朱色を含むかどうかを判定した結果、いずれのマゼンタトナーも含まないことがわかった。以下、主たる着色剤「A」がC.I.ピグメントレッド269で、添加量が6重量%、4重量%のマゼンタトナーを比較例3,4のマゼンタトナーと称し、主たる着色剤「A」がC.I.ピグメントレッド57−1で、添加量が6重量%、4重量%のマゼンタトナーを比較例5,6のマゼンタトナーと称する。また、これらマゼンタトナーにキャリアを加えたものを比較例3〜4の2成分現像剤と称する。
図2に、比較例3〜6の各マゼンタトナーとイエロートナーとの掛け合わせにより得られる色域を、横軸に彩度C* 、縦軸L* をとって、二次元的に示したグラフを示す。朱肉の朱色の(L* ,C*)=(55,70)を、ターゲット●として示す。また、表2に、比較例3〜6のマゼンタトナーに対する評価結果を着色剤の配合比とともに示す。
図2および表2より分かるように、副たる着色剤「B」を、C.I.ピグメントレッド48−1の割合を3割として、マゼンタ着色剤の結着樹脂に対する添加量を、実施例1,2と同じ範囲としても、主たる着色剤「A」が、C.I.ピグメントレッド48−3でない場合は、充分な朱色の再現を得ることができないことがわかる。なお、画像濃度IDとコストには問題なかった。
次に、マゼンタ着色剤として、主たる着色剤「A」にC.I.ピグメントレッド48−3を用い、主と副の混合割合を7:3とし、マゼンタ着色剤の添加量を6重量%に固定し、副たる着色剤「B」をC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッドPV19、C.I.ピグメントレッド207の3種類に振って、3種類のマゼンタトナーおよびそれを含む2成分現像剤を作製した。なお、記載した変更点以外は、実施例1と同様とした。
このように作製した3種類のマゼンタトナーに対しても、実施例1と同様に、イエロートナーを掛け合わせた場合の色域を上記した手順にて求め、色域内に朱肉の朱色を含むかどうかを判定した結果、いずれのマゼンタトナーも含まないことがわかった。以下、副たる着色剤「B」がC.I.ピグメントレッド122のマゼンタトナーを比較例7のマゼンタトナーと称し、副たる着色剤「B」がC.I.ピグメントレッドPV19のマゼンタトナーを比較例8のマゼンタトナーと称し、副たる着色剤「B」がC.I.ピグメントレッド207のマゼンタトナーを比較例9のマゼンタトナーと称する。また、これらマゼンタトナーにキャリアを加えたものを比較例7〜9の2成分現像剤と称する。
図3に、比較例7〜9の各マゼンタトナーとイエロートナーとの掛け合わせにより得られる色域を、横軸に彩度C* 、縦軸L* をとって、二次元的に示したグラフを示す。朱肉の朱色の(L* ,C*)=(55,70)を、ターゲット●として示す。また、表3に、比較例7〜9のマゼンタトナーに対する評価結果を着色剤の配合比とともに示す。
図3および表3より分かるように、主たる着色剤「A」を、C.I.ピグメントレッド48−3とし、その割合を3割として、マゼンタ着色剤の添加量を6重量%としても、副たる着色剤「B」が、C.I.ピグメントレッド48−1でない場合は、充分な朱色の再現を得ることができないことがわかる。特に、比較例7〜9で副たる着色剤「B」として用いているマゼンタ顔料は、透明性の高いキナクリドン顔料であり、イエロートナーと混色した場合にも、色が濁り難く、高い明度が出せるように考えられるが、充分な再現性を得ることができなかった。画像濃度IDは問題なかったが、何れもキナクリドン顔料であるため、コスト的にも問題があった。
さらに、マゼンタ着色剤として、主たる着色剤「A」にC.I.ピグメントレッド269を使用し、これに混合する副たる着色剤「B」として、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッドPV19、C.I.ピグメントレッド207の3種類に振って、3種類のマゼンタトナーおよびそれを含む2成分現像剤を作製した。主と副の混合割合は7:3、マゼンタ着色剤の添加量を6重量%に固定した。なお、記載した変更点以外は、実施例1と同様とした。
このように作製した3種類のマゼンタトナーに対しても、実施例1と同様に、イエロートナーを掛け合わせた場合の色域を上記した手順にて求め、色域内に朱肉の朱色を含むかどうかを判定した結果、いずれのマゼンタトナーも含まないことがわかった。以下、主たる着色剤「A」がC.I.ピグメントレッド269であり、副たる着色剤「B」がC.I.ピグメントレッド122のマゼンタトナーを比較例10のマゼンタトナーと称し、副たる着色剤「B」がC.I.ピグメントレッドPV19のマゼンタトナーを比較例11のマゼンタトナーと称し、副たる着色剤「B」がC.I.ピグメントレッド207のマゼンタトナーを比較例12のマゼンタトナーと称する。また、これらマゼンタトナーにキャリアを加えたものを比較例10〜12の2成分現像剤と称する。
図4に、比較例10〜12の各マゼンタトナーとイエロートナーとの掛け合わせにより得られる色域を、横軸に彩度C* 、縦軸L* をとって、二次元的に示したグラフを示す。朱肉の朱色の(L* ,C*)=(55,70)を、ターゲット●として示す。また、表4に、比較例10〜12のマゼンタトナーに対する評価結果を着色剤の配合比とともに示す。
図4および表4より分かるように、主たる着色剤「A」に従来のマゼンタトナーにもっぱら用いられているC.I.ピグメントレッド269を用い、副たる着色剤「B」として透明性の高い3種類のキナクリドン顔料を用い組み合わせても、朱肉の朱色に対して充分な再現性を得ることができなかった。
次に、実施例1の2成分現像剤を使用して形成した画像と、マゼンタ着色剤として、C.I.ピグメントレッド269を単独使用した参考例1のマゼンタトナーを含む参考例13の2成分現像剤、およびマゼンタ着色剤として、C.I.ピグメントレッド48−3に下記一般式(1)で表されるローダミン系化合物を加えた比較例13のマゼンタトナーを含む比較例13の2成分現像剤を用いて行った、耐光性試験について説明する。
(参考例1):マゼンタ着色剤として、C.I.ピグメントレッド269を単独で用い、マゼンタ着色剤の添加量を6重量%とした以外は実施例1と同様にマゼンタトナー粒子を作製し、マゼンタトナーを得た。これを参考例1のマゼンタトナーとし、これにキャリアを加えたものを参考例2の2成分現像剤とした。
(比較例13):マゼンタ着色剤として、C.I.ピグメントレッド269と、上記した一般式(1)のローダミン 6G Lakeを5:5の割合で用い、マゼンタ着色剤の添加量を6重量%とした以外は実施例1と同様にマゼンタトナー粒子を作製し、マゼンタトナーを得た。これを比較例13のマゼンタトナーとし、これにキャリアを加えたものを比較例13の2成分現像剤とした。
表5に、参考例1、および比較例13の着色剤の配合比を示す。
耐光性試験は、実施例1、参考例1、比較例13の2成分現像剤で形成した画像に対して、100時間の間、紫外線を照射し続け、画像濃度IDの変化を計測した。
図5に、耐光性試験の結果を示す。図5に示すように、2成分現像剤で形成された画像の劣化が、著しい。しかも、比較例13の2成分現像剤で形成された画像の劣化は、連続照射時間20時間といった、比較的早い段階から劣化を示す曲線が大きく下向きにカーブしており、実際の画像の退色が、短い期間で始まっていることがよくわかる。これに対し、本発明にかかる実施例1のマゼンタトナーは、一般的に知られている耐光性に問題のない通常のマゼンタトナーである参考例1の耐光性と同様の曲線カーブを示し、耐光性に問題がないことを確認した。
また、参考として、図6に、蛍光顔料であるローダミンを使用した比較例13のマゼンタトナーとイエロートナーとの掛け合わせにより得られる色域を、横軸に彩度C* 、縦軸L* をとって、二次元的に示したグラフを示す。朱肉の朱色の(L* ,C*)=(55,70)を、ターゲット●として示す。
さらに、図7に、実施例1、比較例1のマゼンタトナーについて、可視光域における光透過性を調べた結果を示す。
図7に示すように、本発明にかかる実施例1のマゼンタトナーは、波長440nmの光の透過率が35%程度であることがわかる。これに対し、図7に示すように、朱肉の色を充分に再現できない比較例1のマゼンタトナーは、波長440nmの光の透過率は、57%近くあった。図示しはいないが、その他の実施例および比較例について、可視光域における光透過性を調べたところ、実施例のマゼンタトナーでは、この波長440nmの光の透過率が45%以下にあり、比較例のマゼンタトナーには、45%を超えていることを確認した。
これより、明度の高い明るい朱色である朱肉の色を充分に再現するには、波長440nmの光の透過率が45%以下に抑える必要があると考察される。なお、波長440nmの光の透過率が30%を下回ると、シアントナーとの混色によるブルーが再現できなくなるそのため、波長440nmの光の透過率としては、30%以上45%以下であることが必要であると考察される。
ところで、朱肉の色を再現し、高品質な画像を得るためには、色相の明度、彩度とともに、紙種の影響を考慮しなければならない。
如何に、朱肉の色を再現できるマゼンタトナーであったとしても、トナーが転写される記録紙(記録材)に、トナーの色再現に影響を及ぼすような色が付いていたりすると、安定して朱肉の色を再現することができない。また、記録紙の表面が荒れていると、粒状感(ガサツキ感)のある、がさついた画像となってしまう。
特許文献6には、凹凸のある転写紙など紙種に影響されずに安定した高光沢の作像ができるように、定着装置の押圧部材の表面にオイルを塗布することが記載されている。上記定着にオイルを塗布して光沢性を向上させることで、見かけ上朱色の発色が改善することも可能である。しかしながら、オイル塗布する機構が必要な為、定着装置が大型化するといった問題がある。また、転写紙(記録紙)に転移するオイルの量を適量に制御せねばならないといった手間が必要となる。
そこで、本願出願人は、記録紙の特性にも着目し、朱肉の色の再現性に優れた本発明のマゼンタトナーの発色性を向上させる記録紙の特性についても鋭意検討を行った。つまり、上記の条件のマゼンタトナーを用いて様々な記録紙で画像評価を行い、朱色の発色性と記録紙の白色度と密度との影響を調べた。その結果、白色度が60以上及び密度が0.70(g/cm3)以上である記録紙を用いて画像形成することが朱色再現性に良好であり、隠蔽性が良好でガサツキのない画像を形成することを見出した。
表6、表7に実施例1のマゼンタトナーを用いて、様々な記録紙における画像評価を行った結果を示す。記録紙としては、三菱製紙製のM紙、igepa製のContinental LX Premium、FXOS製のJD紙、理想科学工業製の理想環境用紙10、丸住製紙製のやしまR100、王子製紙製のサンエースR100、紀州製紙製の再生PPC100,クリーンコピー,αエコペーパ,及びファインPPC、Steinbeis Temming製のRecycle Paper Classic、日本国の官製はがきの標準タイプ、北京造紙一廠製の三一牌70gB5を用いた。
表6、表7に、記録紙それぞれの坪量、紙厚、密度、白色度を示す。密度は、坪量を紙厚で除した値である。白色度は、日本電色工業製白色度測定装置「ZE2000」で測定した。また、画像評価として、先に述べた朱色再現性以外に、画像のガサツキも評価した。
〔画像ガサツキの評価〕
上記に述べたような画像を作成し、目視により画像ガサツキを評価した。図8(a)に画像ガサツキのない画像サンプルを示し、同図(b)に画像ガサツキのある画像サンプルを示す。
図8(b)に示す画像サンプルのような画像ガサツキがあるものは「×」とし、画像ガサツキがないものを「○」、濃淡差がやや見られるものを「△」とした。
また、図9(a)に、画像ガサツキのない画像の表面を倍率1000倍にて撮影した電子顕微鏡写真を示し、図9(b)に、画像ガサツキのある画像の表面を倍率1000倍にて撮影した電子顕微鏡写真を示す。電子顕微鏡(分析装置)としては、日立製作所製S-4100型のFE−SEMを用いた。
表7から分かるように、白色度が60未満のSteinbeis Temming製のRecycle Paper Classicを用いた場合には、十分な朱色再現性を得ることができなかった。ある程度の記録紙の白色度がないと色再現が困難であると言え、白色度は60以上が好ましい。
また、密度が0.70(g/cm3)未満の北京造紙一廠製の三一牌70gB5を用いた場合では、画像ガサツキが悪かった。これは、密度の低い記録紙の場合、表面のパルプ繊維や添加するCa、Ti、Al等の無機物の間隙が広くなり、延いてはトナーの均一な隠蔽性を損なうためと考えられる。図9(a)に示すように、画像ガサツキのない場合、紙の繊維上に均一にトナーが付着して定着されていることが確認できる。これに対し、同図9(b)示すように、画像ガサツキのある場合、紙の繊維間の空隙が大きく、紙の繊維間にトナーが埋没してしまっている。したがって、記録紙の密度としては、0.70(g/cm3)以上とすることが好ましい。
以上の結果より、良好な画像形成および朱色を再現するためには、白色度が60以上及び密度が0.70(g/cm3)以上である記録紙を用いることにより、朱肉の色の再現性が良好な画像を得ることができる。