JP2011105429A - 可変ピッチプロペラを用いた振動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】吊り荷等の振動を急速に減衰させる振動制御装置を提供する。
【解決手段】プロペラ108を回転させて得られる推力によって吊り荷106の振動を制御する振動抑制装置であって、ピッチ角が変更可能であるプロペラを用いて、プロペラを回転させつつ、吊り荷の振動方向に応じて回転角を変更し、プロペラから得られる推力を吊り荷の振動方向に一致させ吊り荷の振動を減衰させる。また、プロペラを搭載した回転ステージを備えたり、プロペラを複数備えて減衰を増進させる。
【選択図】図1
【解決手段】プロペラ108を回転させて得られる推力によって吊り荷106の振動を制御する振動抑制装置であって、ピッチ角が変更可能であるプロペラを用いて、プロペラを回転させつつ、吊り荷の振動方向に応じて回転角を変更し、プロペラから得られる推力を吊り荷の振動方向に一致させ吊り荷の振動を減衰させる。また、プロペラを搭載した回転ステージを備えたり、プロペラを複数備えて減衰を増進させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、可変ピッチプロペラを用いた振動制御装置に関する。特に、可変ピッチプロペラを用いたクレーン吊り荷の振動制御装置に関する。
クレーンの吊り荷等の物体の振動を抑制するために幾つかの方法が提案されている。例えば、(1)吊りロープを吊下しているクレーンブーム全体の動きを制御して吊りロープに掛る吊り下げ力を制御する方法(特許文献1等)、(2)吊り荷に動吸振器を搭載し、その慣性力により制振力を与える方法(特許文献2等)、(3)吊り荷にジャイロを搭載し、ジャイロモーメントにより制振力を与える方法、(4)振動方向に合わせてプロペラを回転させ、その推力によって吊り荷に制振力を与える方法、等が提案されている。
ところで、上記方法(1)では、振動制御のための機構が大掛かりとなり、精度よく制御することが難しいという欠点がある。また、上記方法(2)では、対象となる振動のストロークが限定されるため、振動が長周期となる大型クレーン等の振動制御は困難である。また、上記(1)及び(2)のいずれにおいても、吊りロープの変化に伴って吊り荷の振動周期が変化するので、制御のために必要なパラメータを変更する必要があり、それらのパラメータの設定が複雑になるという問題がある。また、上記方法(3)でも、ジャイロから与えられるジャイロモーメントが3次元となるので制御のために必要なパラメータの設定が複雑になるという問題がある。
これらの方法に対して、上記方法(4)では、長周期の振動に対しても有効であり、かつ制御のためのパラメータ等の設定も簡単であるという利点がある。
しかしながら、プロペラは回転し始めてから推力が得られるまでの間の時間的な遅れが大きく、吊りロープ長が短い場合等において振動の周期が短くなると十分な振動制御の応答速度が得られないという問題がある。また、頻繁にプロペラの回転・停止を繰り返すことで、駆動エネルギーの損失や機械の消耗を招くという問題もある。
本発明の1つの態様は、プロペラを回転させて得られる推力によって物体の振動を制御する振動制御装置であって、前記プロペラは、ピッチ角が変更可能である可変ピッチプロペラである振動制御装置である。
ここで、前記物体は、クレーンの吊り荷である場合に本発明の作用は顕著となる。また、前記プロペラは、前記クレーンのクレーンブームに設置されていることが好適である。
また、前記物体の振動方向に応じて回転角を変更し、前記プロペラから得られる推力を前記物体の振動方向に一致させる前記プロペラを搭載した回転ステージを備えることが好適である。
前記プロペラを複数備え、同一方向に向けられた前記プロペラは回転方向が逆であることが好適である。また、前記プロペラは、逆方向に回転するプロペラが同軸に複数設けられた2重反転プロペラであることが好適である。
本発明によれば、吊り荷等の振動を急速に減衰させることができる。
本発明の実施の形態におけるクレーンシステム100は、図1に示すように、クレーン本体102及び制御装置104を含んで構成される。クレーンシステム100は、振動制御装置104aを含む制御装置104によってクレーン本体102を制御することによって、吊り荷106を吊り上げて移動・旋回等を行う。
クレーン本体102は、油圧モータ10、旋回駆動機構12、油圧シリンダ14、ブーム16及び吊り具18を含んで構成される。制御装置104は、変位センサ20、位置制御部22、誤差演算器24及び駆動ドライバ26を含んで構成される。また、制御装置104に含まれる振動制御装置104aは、速度センサ30、振動制御演算部32及びプロペラ駆動ドライバ34を含んで構成される。
クレーン本体102のブーム16には、吊り具18が吊りロープ18aによって吊られており、吊り具18によって吊り荷106が把持される。
クレーンシステム100の基本動作について説明する。クレーン作業者は、制御装置104の位置制御部22に含まれる操作ハンドル等を用いて吊り荷106の移動速度(移動方向及び速さ)及び旋回速度(旋回方向及び速さ)の目標値を誤差演算器24へ入力する。一方、クレーン本体102の吊り具18には変位センサ20が設けられており、変位センサ20によって吊り具18の移動速度(移動方向及び速さ)及び旋回速度(旋回方向及び速さ)の実測値が誤差演算器24へ入力される。誤差演算器24は、位置制御部22から入力された移動速度の目標値と変位センサ20から入力された移動速度の実測値との差分を演算し、演算で得られた差分に応じた速度制御信号を生成する。また、誤差演算器24は、位置制御部22から入力された旋回速度の目標値と変位センサ20から入力された旋回速度の実測値との差分を演算し、演算で得られた差分に応じた旋回制御信号を生成する。速度制御信号及び旋回制御信号は駆動ドライバ26へ入力される。駆動ドライバ26は、速度制御信号を適切なゲインで増幅し、移動速度の目標値と実測値との差分を補償するように油圧モータ10を駆動させる。油圧モータ10が駆動されることにより、ブーム16が移動速度の目標値と一致するように動かされる。また、駆動ドライバ26は、旋回制御信号を適切なゲインで増幅し、旋回速度の目標値と実測値との差分を補償するように油圧モータ10を駆動させる。このような制御によって、クレーン本体102のブーム16によって吊り荷106が移動及び旋回される。
次に、本実施の形態におけるクレーンシステム100での振動制御について説明する。クレーンシステム100における振動制御は、制御装置104に含まれる振動制御装置104aによってプロペラ108の回転を制御することで実現される。
プロペラ108は、図2に示すように、羽根40、回転軸42、推力モータ44、ピッチ変更モータ46及びピッチ変更機構48を含んで構成される。羽根40は、回転軸42の周囲に単数又は複数設けられる。推力モータ44は、回転軸42を回転させる。推力モータ44は、回転軸42と共に羽根40を回転させることによって推力を発生させる。また、プロペラ108には、ピッチ変更モータ46とピッチ変更機構48が設けられ、ピッチ変更モータ46を回転させることによって、図2の破線で示すように、羽根40のピッチ(ねじり角θ)が変更可能とされている。ピッチ変更モータ46は、例えば、ステッピングモータのように回転角が高い精度で制御可能なモータとすることが好ましい。また、ピッチ変更機構48は、既存の機械的機構であってよい。羽根40のピッチを変更可能とすることによって、回転軸42を同一の角速度で回転させている状態においてもピッチを変更することによってプロペラ108によって得られる推力を調整することを可能としている。
なお、プロペラ108は、回転ステージ50を含んで構成してもよい。回転ステージ50は、吊り荷106の振動の方向に応じて、プロペラ108の回転軸42の方向を変更するために用いられる。
なお、図2の構成は、プロペラ108の一例であり、プロペラ108の構成はこれに限定されるものではない。
プロペラ108は、吊り荷106を移動又は旋回させた際に生ずる振動を抑制できる推力を吊り荷106に与えられる位置に配置する。例えば、図3に示すように、プロペラ108は、吊り具18に取り付けることが好適である。また、例えば、図4に示すように、プロペラ108は、吊り荷106自体に取り付けてもよい。なお、図3及び図4では、構成を明確に示すためにプロペラ108を簡略化して示している。
振動制御は、例えば、図5のフローチャートに沿って行われる。振動制御が開始されると、振動制御演算部32からプロペラ108の回転制御信号がプロペラ駆動ドライバ34へ出力され、プロペラ駆動ドライバ34から回転駆動電力が推力モータ44へ出力されて推力モータ44によって回転軸42が回転させられる。
ステップS10では、振動制御装置104aに含まれる速度センサ30によって、吊り荷106を移動又は旋回させた際の吊り荷106の振動の速度(吊り荷106の揺れの方向及び速さ)を取得する。速度センサ30は、図3又は図4に示すように、吊り具18や吊り荷106に設けることが好適である。振動の速度は、振動制御演算部32に入力される。
ステップS12では、速度センサ30から得られた吊り荷106の振動が正方向、負方向及び中立のいずれであるかを判定する。振動制御演算部32は、入力された吊り荷106の振動の速度の情報から振動の速さを求め、その速さが所定の閾値以下であるか否かを判定する。振動の速さが所定の閾値以下である場合には、振動は中立な状態にあるとしてステップS14へ処理を移行させる。一方、振動の速さが所定の閾値より大きい場合には、振動の速度の情報から振動の方向を求め、正方向であればステップS16へ処理を移行させ、負方向であればステップS18へ処理を移行させる。ここで、正方向及び負方向とは、プロペラ108の回転軸42に沿った互いに反対向きの方向をそれぞれ正方向及び負方向として規定する。すなわち、羽根40を正ピッチにしたときに得られるプロペラ108の推力の方向を正方向、羽根40を負ピッチにしたときに得られるプロペラ108の推力の方向を負方向とする。
ステップS14では、振動制御演算部32は、プロペラ108からの推力が実質的に発生しないように羽根40のピッチ(ねじり角θ)となるようにピッチ制御信号をプロペラ駆動ドライバ34へ出力する。プロペラ駆動ドライバ34は、ピッチ制御信号を受けて、ピッチ変更モータ46を回転させてピッチ変更機構48を作用させ、プロペラ108から実質的に推力が得られないように羽根40のピッチに変更する。ここで、プロペラ108から推力が実質的に発生しないとは、吊り荷106の振動に対して有意の変化を与えることがない程度の力以下の推力しか発生しないことを意味する。
ステップS16では、振動制御演算部32は、プロペラ108からの推力が負方向に一致するようにピッチ制御信号をプロペラ駆動ドライバ34へ出力する。プロペラ駆動ドライバ34は、ピッチ制御信号を受けて、ピッチ変更モータ46を回転させてピッチ変更機構48を作用させ、羽根40のピッチ(ねじり角θ)が負ピッチとなるように調整する。これにより、プロペラ108から負方向へ推力が発生し、振動により正方向に移動している吊り荷106に対して反対向きの力が加えられ、吊り荷106の振動を減衰させる作用が得られる。
ステップS18では、振動制御演算部32は、プロペラ108からの推力が正方向に一致するようにピッチ制御信号をプロペラ駆動ドライバ34へ出力する。プロペラ駆動ドライバ34は、ピッチ制御信号を受けて、ピッチ変更モータ46を回転させてピッチ変更機構48を作用させ、羽根40のピッチ(ねじり角θ)が正ピッチとなるように調整する。これにより、プロペラ108から正方向へ推力が発生し、振動により負方向に移動している吊り荷106に対して反対向きの力が加えられ、吊り荷106の振動を減衰させる作用が得られる。
ステップS10〜S18を繰り返すことによって、吊り荷106の振動を短時間に減衰させることができる。特に、吊りロープ18aが短い場合等において、吊り荷106の振動の周期が短くなった場合であっても、プロペラ108の羽根40のピッチ(ねじり角θ)を調整することによって振動の周期に対して十分に短い周期でプロペラ108からの推力の方向を変更することができ、吊り荷106の振動の減衰に効果的である。また、頻繁にプロペラの回転・停止を繰り返すよりも、駆動エネルギーの損失や機械の消耗を低減することができる。
例えば、表1に示すような実験装置において、推力方向の切り換え時の立ち上がり特性を測定した。図6に示すように、羽根40のピッチを固定して回転軸42の回転方向のみを変更することによって推力の方向を切り換えた場合(破線)より羽根40のピッチを調整して推力の方向を切り換えた場合の方が応答速度は速いことが分かる。なお、図6の縦軸は推力の測定値、横軸は時間である。
また、吊り荷106に初期振幅0.5mを与え、その振幅の変化をレーザ変位センサにより計測した。振動制御を行わなかった場合には図7に示すように振動が継続したが、羽根40のピッチを調整して振動制御を行った場合には図8に示すように振動を急速に減衰させることができた。なお、図7及び図8の縦軸は振動の振れ幅、横軸は時間である。また、図7及び図8には、実験値(実線)に併せて、シミュレーションの結果(破線)も示している。
なお、上記の振動制御方法では、プロペラ108のピッチのみを調整して振動制御を行ったが、吊り荷106の振動の速度に応じてプロペラ108の回転速度の調整、吊り荷106の振動の方向に応じて回転ステージ50の回転角度の調整を組み合わせてもよい。例えば、振動による吊り荷106の移動の速さが大きくなるにつれて回転軸42の回転速度を大きくし、振動による吊り荷106の移動の速さが小さくなるにつれて回転軸42の回転速度を小さくするようにしてもよい。また、吊り荷106の振動方向に応じて、その振動方向にプロペラ108の推力の発生方向が一致するように回転ステージ50の回転角度の調整するようにしてもよい。
また、プロペラ108の羽根40の回転に伴うトルクの発生を打ち消すように、互いに逆方向に回転して回転トルクを与えるプロペラ108を同一方向に向けてペアで配置することも好適である。また、プロペラ108を2重反転プロペラとして、発生する回転トルクを抑制するようにしてもよい。
10 油圧モータ、12 旋回駆動機構、14 油圧シリンダ、16 ブーム、18 吊り具、18a 吊りロープ、20 変位センサ、22 位置制御部、24 誤差演算器、26 駆動ドライバ、30 速度センサ、32 振動制御演算部、34 プロペラ駆動ドライバ、40 羽根、42 回転軸、44 推力モータ、46 ピッチ変更モータ、48 ピッチ変更機構、50 回転ステージ、100 クレーンシステム、102 クレーン本体、104 制御装置、104a 振動制御装置、106 吊り荷、108 プロペラ。
Claims (6)
- プロペラを回転させて得られる推力によって物体の振動を制御する振動制御装置であって、
前記プロペラは、ピッチ角が変更可能である可変ピッチプロペラであることを特徴とする振動制御装置。 - 請求項1に記載の振動制御装置であって、
前記物体は、クレーンの吊り荷であることを特徴とする振動制御装置。 - 請求項2に記載の振動制御装置であって、
前記プロペラは、前記クレーンのクレーンブームに設置されていることを特徴とする振動制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の振動制御装置であって、
前記物体の振動方向に応じて回転角を変更し、前記プロペラから得られる推力を前記物体の振動方向に一致させる前記プロペラを搭載した回転ステージを備えることを特徴とする振動制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1つに記載の振動制御装置であって、
前記プロペラを複数備え、同一方向に向けられた前記プロペラは回転方向が逆であることを特徴とする振動制御装置。 - 請求項1〜5のいずれか1つに記載の振動制御装置であって、
前記プロペラは、逆方向に回転するプロペラが同軸に複数設けられた2重反転プロペラであることを特徴とする振動制御装置。
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JP2009261050A JP2011105429A (ja) | 2009-11-16 | 2009-11-16 | 可変ピッチプロペラを用いた振動制御装置 |
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JP2021156885A (ja) * | 2020-03-26 | 2021-10-07 | 株式会社三矢研究所 | 高所検査用の吊り下げ台 |
Citations (4)
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2009
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