JP2011103791A - 融合タンパク質およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 FcレセプターFcγRIを宿主で大量に発現させるためのポリヌクレオチド、およびそれを用いたFcγRIの製造方法を提供すること。
【解決手段】 FcγRI細胞外領域をコードするポリヌクレオチドの5’末端側に中性プロテアーゼの部分領域をコードするポリヌクレオチドを付加したポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現プラスミド、および前記プラスミドで宿主を形質転換して得られる形質転換体を用いることで、抗体結合活性を有したFcγRIを簡便に製造することができた。
【選択図】 図4

Description

本発明は医薬品、臨床検査薬、バイオセンサー、アフィニティーリガンド(分離剤)などの用途に使用可能な、IgGのFc領域に特異的に結合するFcγレセプターを遺伝子工学的手法により製造する方法に関する。
Fcレセプターは、免疫グロブリン分子のFc領域に結合する一群の分子である。Fcレセプターはその結合する免疫グロブリンの種類によって分類されており、IgGのFc領域に結合するFcγレセプター、IgEのFc領域に結合するFcεレセプター、IgAのFc領域に結合するFcαレセプター等がある(非特許文献1)。また、各レセプターは、その構造の違いによりさらに細かく分類され、Fcγレセプターの場合、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIの存在が報告されている(非特許文献1)。
Fcγレセプターの一つであるFcγRIは単球とマクロファージ中で発現しており、好中球ではγインターフェロンにより誘導的に発現される(非特許文献1)。また、FcγRIはIgGに対する結合親和性が高く、その平衡解離定数(Kd)は10−8M以下である(非特許文献2)。FcγRIは、細胞外領域、細胞膜貫通領域、細胞質内領域に区分され、IgGとの結合は、IgGのFc領域とFcγRIの細胞外領域で起こり、その後細胞質へとシグナルが伝達される。FcγRIはIgGとの結合に直接関わる分子量約42000のα鎖と、γ鎖の2種類のサブユニットによって構成されており、γ鎖は細胞膜と細胞外領域との境界で共有結合することでホモダイマーを形成している(非特許文献3)。
ヒト型FcレセプターFcγRIのアミノ酸配列、および遺伝子配列(配列番号1)はExPASy(Primary accession number:P12314)などの公的データベースに公表されている。また、FcγRIの構造上の機能ドメイン、細胞膜を貫通するためのシグナルペプチド配列、細胞膜貫通領域の位置についても同様に公表されている。図1にヒト型FcγRIの構造略図を示す。なお、図中のアミノ酸番号は配列番号1に記載のアミノ酸番号に対応する。すなわち、配列番号1のアミノ酸番号1のメチオニン(Met)から289のバリン(Val)までが細胞外領域、配列番号1のアミノ酸番号290のロイシン(Leu)から374のスレオニン(Thr)までが細胞膜貫通領域および細胞内領域とされている。
近年になり、Fcレセプターの予想外の免疫抑制的な生物学的特性は、特に自己免疫疾患または自己免疫症候群、移植物の拒絶および悪性リンパ増殖の領域において医薬として注目を浴びつつある(非特許文献2)。また、FcγRIの機能である抗体の吸着能は各種抗体精製用クロマトグラフィーゲルの捕捉機能を担うタンパク質としても利用することができる。
FcγRIα鎖のアミノ酸配列および遺伝子配列(非特許文献4)はJanet等により明らかにされ、その後、遺伝子組換え技術により、大腸菌(特許文献1)あるいは動物細胞を利用した発現が報告されている。しかしながら、大腸菌を利用した発現系においてはFcγRIの細胞外領域タンパク質の発現量は極めて低く、また、発現されたタンパク質は菌体内発現のため、多くの場合発現したタンパク質は不溶性の封入体となる。封入体タンパク質は可溶化等の操作をすることにより、活性型タンパク質として調製することは可能であるが、煩雑な操作を必要とする。また、動物細胞を用いた系では、大腸菌以上の発現量が報告(非特許文献3)されているが培養に多大な時間を要し、かつ、生産性も高くない。一方、バチルス属細菌をFcγRI遺伝子を導入したプラスミドベクターで形質転換し、FcγRIを発現させている例も知られている(特許文献2)。しかしながら、バチルス属の細菌はプロテアーゼ活性が高く、生産されたFcγRIが分解されてしまうという問題点があった。本発明者は以前、バチルス属細菌の一種であるBrevibacillus formosus野生株(NBRC15716)を変異原物質で処理することで得られる、プロテアーゼ活性が低下したBrevibacillus formosus変異株を、ヒト型FcγRI生産における宿主として用いることで、ヒト型FcγRI生産量が向上することを見出している(特願2009−008680号)。しかしながら、工業的にヒト型FcγRIを生産するにはさらなる生産性の改善が求められる。
遺伝子工学的手法により宿主から異種タンパク質を生産する際、目的タンパク質が十分に得られない場合は、多くの場合、宿主において高発現することが知られているタンパク質の部分構造を目的とするタンパク質のN末端側に付加することで生産性が改善されることが知られている。例えば、大腸菌を宿主として異種タンパク質を発現させる際、前述したように単独で発現すると封入体となってしまうことがある。その場合、前記異種タンパク質のN末端側にチオレドキシンやグルタチオン−S−トランスフェラーゼを付加することにより異種タンパク質を可溶性かつ活性を有する形態として効率よく得られることが知られている。また、タンパク質の分泌発現能が高いことで知られるバチルス属細菌の一種であるBrevibacillus choshinensisを宿主とした場合、糸状菌由来のプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)をN末端側に付加する(融合させる)ことにより、IgGのL鎖や超好熱菌由来のゲラニルゲラニル2リン酸合成酵素の生産性が改善した例が知られている(非特許文献5)。しかしながら、非特許文献5の方法において、N末端側に付加するPDIは約6万の分子量を有するホモダイマータンパクであるため、融合タンパク質としてそのまま使用するには分子量が大きいという問題があった。すなわち、融合タンパク質として発現させた目的タンパク質を実際に使用する場合は、多くの場合、融合したPDI部分を切断除去する必要があるため、結果として不用なPDI部分を生産するための余分な原料を必要とする。また、PDIは大きな分子量を有し、かつ二量体(ダイマー)を形成するため、立体障害の影響が大きく、PDI部分の良好な切断ができない場合がある。
以上のような背景から、宿主、特にバチルス属細菌でヒト型FcγRIを発現させるための、ヒト型FcγRIのN末端側に付加するタンパク質として、より分子量が小さく、かつ単量体からなるタンパク質が求められていた。
特表2004−530419号公報 特開2009−201403号公報 特開平5−184363号公報
J.V.Ravetch等,Annu.Rev.Immunol.,9,457,1991 Toshiyuki Takai,Jpn.J.Clin.Immunol.,28,318,2005 A.Paetz等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,338,1811,2005 J.M.Allen等,Science,243,378,1989 T.Kajino等,Appl.Environ.Microbiol.,66,638,2000 W.Schumann,Adv.Appl.Microbiol.,62,137,2007 Hanahan、J.Mol.Biol.、16,557、1983 Debnau and Avidoff−Abelson、J.Mol.Biol.、56,209,1971
本発明は、医薬品、臨床検査薬、バイオセンサー、アフィニティーリガンド(分離剤)などの用途に使用可能なFcγRIを、宿主で大量に発現させるためのポリヌクレオチド、およびそれを用いたFcγRIの製造方法を提供することにある。
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の発明を包含する。
(1)ヒト型FcレセプターFcγRIをコードするポリヌクレオチドの5’末端側に中性プロテアーゼの部分領域をコードするポリヌクレオチドを付加した、ポリヌクレオチド。
(2)中性プロテアーゼの部分領域がサーモライシンのプロ領域である、(1)に記載のポリヌクレオチド。
(3)(1)または(2)に記載のポリヌクレオチドを含む、ヒト型FcレセプターFcγRIを発現させるためのプラスミド。
(4)(3)に記載のプラスミドで宿主を形質転換して得られる、ヒト型FcレセプターFcγRIを発現可能な形質転換体。
(5)(4)に記載の形質転換体を用いた、ヒト型FcレセプターFcγRIの製造方法。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においてヒト型FcγRIをコードするポリヌクレオチドは、必ずしもヒト型FcγRIの全領域のアミノ酸をコードするポリヌクレオチドでなくてもよく、ヒト型FcγRIのアミノ酸のうち、少なくとも抗体(IgG)のFc領域に結合する本来の機能を発現し得る領域のアミノ酸をコードするポリヌクレオチドを含んでいればよい。ヒト型FcγRIをコードするポリヌクレオチドの具体的態様として、配列番号1に示すヒト型FcγRIのアミノ酸配列のうち、細胞外領域(1番目から289番目のアミノ酸)の全アミノ酸をコードするポリヌクレオチドや、前記細胞外領域のアミノ酸のうちN末端側15から25残基を削除したアミノ酸(16番目から289番目のアミノ酸のうち、少なくとも26番目から289番目のアミノ酸を含むアミノ酸)をコードするポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがあげられる。
本発明のポリヌクレオチドは、前述したヒト型FcγRIをコードするポリヌクレオチドの5’末端側に中性プロテアーゼの部分領域をコードするポリヌクレオチドを付加していることを特徴としている。本発明における中性プロテアーゼの部分領域とは、Ananas comosus由来のプロテアーゼ、Aspergillus oryzae由来のプロテアーゼ、Bacillus amyloliquefaciens由来のプロテアーゼ、Bacillus subtilis(枯草菌)由来のプロテアーゼ、Geobacillus caldoproteolyticus由来のプロテアーゼ、パパイン、トリプシン、Bacillus stearothermophilus由来のプロテアーゼ(サーモライシン)といった中性プロテアーゼの部分領域を含むポリペプチドのことをいう。ヒト型FcγRIをコードするポリヌクレオチドの5’末端側に付加する中性プロテアーゼの部分領域をコードするポリヌクレオチドは、前述した中性プロテアーゼの部分領域からヒト型FcレセプターFcγRIを発現させる宿主に応じて適宜選択し、選択した部分領域(アミノ酸配列)をヌクレオチド配列に変換することで得られる。なお、宿主がバチルス属細菌の場合は、サーモライシンのプロ領域を中性プロテアーゼの部分領域として用いると好ましい。サーモライシンのプロ領域の具体的態様として、配列番号2に示すサーモライシンのアミノ酸配列のうち、1番目から250番目のアミノ酸からなるポリペプチドや、31番目から236番目のアミノ酸を含むポリペプチドをあげることができる。特に宿主がバチルス属細菌の場合、配列番号2の31番目から236番目のアミノ酸を含むポリペプチドを、本発明の中性プロテアーゼの部分領域として用いると好ましい。
なお、本発明においてヒト型FcγRIおよび中性プロテアーゼの部分領域のポリペプチドは、正常な立体構造を形成し、かつ本来の機能(ヒト型FcγRIの場合は、抗体(IgG)のFc領域に結合する機能)を発現し得る範囲で構成するアミノ酸の置換および/または欠失および/または挿入があってもよい。
バチルス属細菌をヒト型FcγRI生産の宿主とする場合における、本発明のポリヌクレオチドのより好ましい態様は、サーモライシンのプロ領域をコードするポリヌクレオチドの5’末端側に、バチルス属で機能することが知られている任意のシグナル配列をコードするポリヌクレオチドをさらに付加したポリヌクレオチドである。前記シグナル配列の一例として、配列番号2の1番目から30番目までのアミノ酸(サーモライシンのプレ領域)からなるポリペプチドがあげられる。前記シグナル配列の別の例としては、アミラーゼのシグナル配列や、細胞壁タンパク質のシグナル配列などがあげられる。なお、ここで付加したシグナル配列は、ヒト型FcγRIとサーモライシンのプロ領域との融合タンパク質が細胞膜を通過して分泌発現される際に、細胞膜に存在するシグナルペプチダーゼにより切除されることが知られている。
ヒト型FcγRIをコードするポリヌクレオチドの5’末端側に中性プロテアーゼの部分領域をコードするポリヌクレオチドを付加する際、直接付加してもよいが、任意のオリゴペプチドをコードするポリヌクレオチドを介して付加してもよい。前記任意のオリゴペプチドの一例として、Gly−Ser−Gly−Ser−Glyといった、グリシンとセリンが任意に数個ずつ連結したオリゴペプチドがあげられる。また、前記任意のオリゴペプチドの別の例として、発現したヒト型FcγRIと中性プロテアーゼの部分領域との融合タンパク質のうち中性プロテアーゼ部分とFcγRI部分を切り離すために用いる特異的プロテアーゼを認識するオリゴペプチドがあげられ、具体的にはエンテロキナーゼで認識されるAsp−Asp−Asp−Asp−Lysからなるオリゴペプチドなどがある。前記任意のオリゴペプチドのさらに別の例として、分析や精製を容易にするための、6残基程度のHisよりなるHisタグペプチドやc−myc抗原ペプチドといったタグペプチドがあげられる。なお、前記タグペプチドはヒト型FcγRIと中性プロテアーゼの部分領域との間に挿入してもよいし、ヒト型FcγRIのC末端側に付加してもよい。
本発明において、ヒト型FcγRIおよび中性プロテアーゼの部分領域のアミノ酸配列をヌクレオチド配列に変換する際、アミノ酸が変化しない範囲で置換すればよいが、好ましくは、ヒト型FcγRIと中性プロテアーゼの部分領域との融合タンパク質を発現させる宿主におけるコドンの使用頻度を考慮の上変換するのが好ましい。コドンの使用頻度は公的データベース(URL http://www.kazusa.or.jp/codon)を用いることで解析することができる。一例として、バチルス属細菌を宿主として用いた場合、ヒト型FcγRI遺伝子のコドンをバチルス属細菌型のコドンに置き換えた配列番号3に示すポリヌクレオチドを、本発明におけるヒト型FcγRIをコードするポリヌクレオチドとして用いることができる。
本発明の形質転換体は、本発明のポリヌクレオチドを対象宿主に適切なプラスミドへ挿入することで本発明のプラスミドを調製後、本発明のプラスミドで宿主を形質転換することで得られる。バチルス属細菌を宿主として用いた場合、pUB110(非特許文献6)やpUBTZ2(バチルス・ステアロサーモフィルス由来の中性プロテアーゼ遺伝子をクローニングした大腸菌および枯草菌間のシャトルベクター、特許文献4)といったバチルス属細菌内に保持されるプラスミドの任意の位置に本発明のポリヌクレオチドを挿入することで本発明のプラスミドを調製後、枯草菌(Bacillus subtilis)DB117株といった適切なバチルス属細菌を前記本発明のプラスミドで形質転換することで本発明の形質転換体が得られる。また、バチルス属細菌のゲノム上の任意のオリゴヌクレオチド配列(例えばアミラーゼ遺伝子の部分配列)の間に本発明のオリゴヌクレオチドを挿入し直鎖状のDNAとしてバチルス属細菌を形質転換しても本発明の形質転換体を得ることができる。
前述の方法で得られた本発明の形質転換体の保存方法については特に限定はなく、任意の培地に継代培養することで菌の活性を維持した状態で保存してもよいし、凍結法や凍結乾燥法により保存してもよい。なお、継代培養により保存する場合は菌が活発に増殖している状態で新たな培地に継代するのが好ましい。凍結法により保存する場合は本発明の形質転換体の培養液に凍結補助剤を添加して凍結すればよい。凍結補助剤としては、グリセロール、マンニトール、ジメチルスルフォキシドといった通常の微生物の保存に用いられるものの中から適宜選択さればよい。また、凍結補助剤の添加量は本発明の形質転換体の生存に影響のない範囲で用いればよく、例えばグリセロールの場合は培養液容量の10分の1から3分の1容量添加すればよい。凍結温度は特に限定はないものの、可能な限り低温であることが好ましく、具体的には−20℃以下、特に−80℃以下が好ましい。凍結乾燥法により保存する場合は、任意の凍結補助剤を添加し、可能な限り低温(−20℃以下が好ましく、特に好ましくは−80℃以下)で凍結後、減圧乾燥すればよい。凍結乾燥の場合の凍結補助剤としては前述したもののほかにスキムミルクなどがあげられる。凍結乾燥後の形質転換体は室温以下の温度で、好ましくは4℃以下で、さらに好ましくは−20℃以下で保存すればよい。
本発明の形質転換体を培養する方法については特に限定はなく、通常の液体培地やそれを寒天で固めた固体培地を用いればよい。固体培地の形状にも限定はなく、斜面培地であってもよいし平板培地であってもよい。培地の組成としては、本発明の形質転換体が増殖し、かつヒト型FcγRIを発現し得るものであればよい。炭素源としては、糖蜜、グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、デンプン、乳糖、グリセロール、酢酸などが用いられる。窒素源としては、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ペプトン、コーンスティープリカー、酵母エキスなどが用いられる。無機塩としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウムなどのリン酸塩、塩化ナトリウムなどが用いられる。金属イオンとしては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、塩化カルシウム・二水和物、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化銅、硫酸マンガン、塩化マンガンなどが用いられる。ビタミン類としては、酵母エキス、ビオチン、ニコチン酸、チアミン、リボフラビン、イノシトール、ピリドキシンなどが用いられる。なお、固体培地を用いる場合には上記の組成の培地に寒天やジェランガムといった固形化剤を加熱溶解させた後に、培養に用いる試験管やシャーレに分注し、さらに目的の温度まで冷却して固形化することで得られる。培養温度は15℃から40℃が好ましく、pHは6から8が好ましい。また、培養時間は任意に設定できるが、ヒト型FcγRIが十分に生産される時間であることが好ましく、通常は数時間から200時間の間に設定すればよい。
本発明の製造方法で得られたヒト型FcγRIの分析方法は、培養液から安定的にかつ効率的に定量できる方法であれば特に限定はなく、ELISA法(酵素結合免疫吸着法)やウェスタンブロット法があげられる。
本発明の製造方法で得られたヒト型FcγRIは培養液の状態のまま使用することも可能であり、高度に精製したものを使用することも可能であり、またその中間の純度の様々な精製度合いで使用することも可能である。ヒト型FcγRIの精製は、遠心分離、限外ろ過、硫酸アンモニウム沈殿分画、カラムクロマトグラフィーなど様々な方法を組合わせて、目的の純度に達するまで行なえばよい。なお、本発明のポリヌクレオチドにHisタグペプチドやc−myc抗原ペプチドといったタグペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれている場合、本発明の形質転換体によって発現したヒト型FcγRIにはそのN末端側またはC末端側に前記タグペプチドが付加されているため、前記タグペプチドを特異的に認識するアフィニティークロマトグラフィーを用いて簡便に精製することができる。
本発明の製造方法で得られたヒト型FcγRIは、医薬品、臨床検査薬、バイオセンサー、またはアフィニティーリガンド(分離剤)といった様々な用途に用いることができる。
本発明のポリヌクレオチドは、ヒト型FcレセプターFcγRIをコードするポリヌクレオチドの5’末端側に中性プロテアーゼの部分領域をコードするポリヌクレオチドを付加していることを特徴としている。また、本発明のポリヌクレオチドを対象宿主に適切なプラスミドに挿入することで本発明のプラスミドを調製後、前記本発明のプラスミドで宿主を形質転換して得られる本発明の形質転換体を培養することで、ヒト型FcγRIを抗体結合活性を有した状態で発現させることができる。
特に宿主がバチルス属細菌の場合、中性プロテアーゼの部分領域としてサーモライシンのプロ領域(分子量約2万)を用いることで、バチルス属細菌でヒト型FcγRIとサーモライシンのプロ領域とが融合したタンパク質(分子量約5万)を発現することができ、前記タンパク質は従来技術であるPDIとヒト型FcγRIとの融合タンパク質(分子量約9万)と比較し、分子量にして約4万の低分子化が可能である。また、サーモライシンのプロ領域はPDI(二量体)と異なり単量体であるため、ヒト型FcγRIをバチルス属細菌で発現させる際に、生産性が高くかつ効率的に発現させることができる。
本発明の方法で得られたヒト型FcγRIは、その特徴である抗体(IgG)のFc領域への特異的結合活性を保持しているため、医薬品、臨床検査薬、バイオセンサー、またはアフィニティーリガンド(分離剤)といった様々な用途に用いることができる。
ヒト型FcレセプターFcγRIの構造を示す図である。 プラスミドpUBCTPPFcR1作成の工程図である。図中のTLN−Pro領域はサーモライシンのプロ領域の遺伝子断片を、Proはサーモライシンのプロモーターを、SDはサーモライシンのSD配列を、Signalはサーモライシンのシグナルペプチド領域を、c−mycはc−mycタグの遺伝子を、stopはストップコドンを、Kmrはカナマイシン耐性遺伝子領域を、Ampはアンピシリン耐性遺伝子領域をそれぞれ表す。また、SnaBI、HindIII、SalI、EcoRI、KasIは対応する制限酵素の切断サイトを示す。 プラスミドpUBCTPPFcR2作成の工程図である。図中のLinkはリンカー配列を示し、他の略号は図2と同じである。 枯草菌に発現させたタンパク質をウェスタンブロット法により分析した結果を示す。レーン1は枯草菌形質転換体培養上清を、レーン2はヒト型FcγRIを、レーン3は分子量マーカーをそれぞれ示す。
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることはいうまでもない。
実施例1 融合タンパク質発現プラスミドの調製(その1)
以下に示す方法で、サーモライシンのプレ−プロ領域およびヒト型FcレセプターFcγRIをコードするポリヌクレオチドを含む、発現プラスミドを調製した。
(1)サーモライシンのプレ−プロ領域をコードするポリヌクレオチドの調製
鋳型として特許文献3に開示されたプラスミドpUBTZ2を、プライマーとして配列番号4および5に示すオリゴヌクレオチドを使用し、タカラバイオ社製DNAポリメラーゼ(商品名:PrimeSTAR HS DNA Polymerase)を用いてPCRを行ないDNAを増幅した。PCR反応は98℃で5分加熱後、98℃での加熱(10秒)−55℃でのアニーリング(5秒)−72℃での伸長反応(2分)のサイクルを25回繰返した後、72℃で7分加温することによって行なった。PCR反応後の反応液よりキアゲン社製PCR精製キットを用いて、配列番号6に示すポリヌクレオチドを含んだ溶液50μLを得た。
(2)ヒト型FcγRIをコードするポリヌクレオチドの調製
鋳型としてDNAアセンブリー法によりBacillus属型のコドンに改変したFcγRI遺伝子断片(配列番号3)が挿入されたプラスミドを、プライマーとして配列番号7および8に示すオリゴヌクレオチドを使用した他は、(1)と同様の方法で行ない、配列番号9に示すポリヌクレオチドを含んだ溶液50μLを得た。
(3)発現プラスミドの調製
(3−1)特許文献3に開示されたプラスミドpUBTZ2を制限酵素SnaBIおよびHindIIIで消化した。その後、アルカリフォスファターゼによる脱リン酸処理を行ない、1%アガロースゲル電気泳動からの切り出し精製により、約5kbpのDNA断片を調製した。前記断片に予めT4DNAキナーゼ処理によりリン酸化した2つのオリゴヌクレオチド(配列番号10および11)をT4リガーゼにより連結させることで、プラスミドpUBC1を合成した。
(3−2)(1)で得られたサーモライシンのプレ−プロ領域の遺伝子断片(配列番号6)を制限酵素SalIおよびKasIにより消化し、(2)で調製したFcγRI遺伝子断片(配列番号9)を制限酵素KasIおよびHindIIIにより消化した。また、(3−1)で調製したプラスミドpUBC1を制限酵素SalIおよびHindIIIにより消化し、アルカリフォスファターゼによる脱リン酸化後、1%アガロースゲル電気泳動からの切り出し精製により、約5kbpのDNA断片を調製した。前記3つのポリヌクレオチド断片をT4DNAリガーゼで結合させることで融合タンパク質遺伝子(配列番号12)が挿入された発現プラスミドpUBCTPPFcR1を調製した(図2)。
実施例2 融合タンパク質発現プラスミドの調製(その2)
以下に示す方法で、サーモライシンのプレ−プロ領域、リンカー配列およびヒト型FcレセプターFcγRIをコードするポリヌクレオチドを含む、発現プラスミドを調製した。
(1)サーモライシンのプレ−プロ領域をコードするポリヌクレオチドの調製
プライマーとして配列番号4および13に示すオリゴヌクレオチドを使用した他は、実施例1の(1)と同様な方法で行ない、C末端側にGly−Ser−Gly−Ser−Gly−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号18)のリンカー配列を付加したサーモライシンのプレ−プロ領域のポリヌクレオチド(配列番号14)の溶液50μLを得た。
(2)ヒト型FcγRIをコードするポリヌクレオチドの調製
プライマーとして配列番号15および8に示すオリゴヌクレオチドを使用した他は、実施例1の(2)と同様の方法で行ない、N末端側にGly−Ser−Gly−Ser−Gly−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号18)のリンカー配列を付加したFcγRIのポリヌクレオチド(配列番号16)の溶液50μLを得た。
(3)リンカー配列を含む融合タンパク質遺伝子の合成
鋳型およびプライマーとして(1)および(2)で合成した二つのポリヌクレオチド、PCRのサイクル数を5回とした他は、実施例1の(1)と同様の方法でPCR反応を行なった。その後、配列番号4および8に示すオリゴヌクレオチドを終濃度5μMになるように添加して、さらにPCR反応(反応サイクル数が30回とした他は1回目のPCRと同じ条件)を行なった。2回目のPCR反応後の反応液より1%アガロースゲル電気泳動からの切り出し精製により、約2kbpのDNA断片を調製した。
(4)発現プラスミドの調製
(3)で合成したDNAを制限酵素SalIおよびHindIIIで消化した後、実施例1と同様にベクターpUBC1のSalIサイトおよびHindIIIサイト間に挿入し、配列番号17に示す融合タンパク質遺伝子が挿入された発現プラスミドpUBCTPPFcR2を調製した(図3)。
実施例3 枯草菌(Bacillus subtilis)への形質転換
以下に示す方法により、実施例1および2で調製した発現プラスミドで枯草菌を形質転換した。
(1)大腸菌JM103株のコンピテントセルをHanahanの方法(非特許文献7)に従って作成し、発現ベクターpUBCTPPFcR1(図2)またはpUBCTPPFcR2(図3)で形質転換した。
(2)(1)で得られた形質転換大腸菌を100μg/mLのアンピシリンを含むLB培地で一晩培養し、培養液よりキアゲン社プラスミド抽出キットを用いて各プラスミドを調製した。
(3)枯草菌DB117株のコンピテントセルを公知の方法(非特許文献8)に従って調製した。
(4)(3)で調製した枯草菌DB117株の懸濁液100μLに(1)で調製した各プラスミドの水溶液5μLを加えて、37℃で1時間穏やかに振とうした後、LB培地900μLを加えて1.5時間激しく振とうして培養した。
(5)(4)の培養液より遠心分離機で菌体を回収し、100μLの生理食塩水に再懸濁後、50μg/mLのカナマイシンを含むLB平板培地に10μLまたは90μLを塗布して37℃で一晩静置培養した。
(6)生育したカナマイシン耐性のコロニーより目的のプラスミドを持つものを選別し、目的の枯草菌形質転換体である、DB117/pUBCTPPFcR1およびDB117/pUBCTPPFcR2を調製した。
実施例4 融合タンパク質の発現(その1)
以下に示す方法により、実施例3で調製したDB117/pUBCTPPFcR2を用いて、サーモライシンのプレ−プロ領域とヒト型FcレセプターFcγRIとの融合タンパク質を発現させた。
(1)実施例3で調製した形質転換体枯草菌DB117/pUBCTPPFcR2を2L培地(ポリペプトン 20g/L、バクト酵母エキス 10g/L、NaCl 10g/L)0.75mLを入れた96穴深穴プレート(BM6030S深穴プレート角型V底、ビーエム機器製)に植菌し、温度30℃でバイオシェーカーMBR−022UP(商品名)(タイテック社製)を用いて1200rpmの振とう速度で24時間培養した。
(2)(1)の培養液を遠心分離により菌体を除去後、上清中に分泌された融合タンパク質を下記に示すウェスタンブロット法により検出した。
(2−1)培養上清の一部に1/2量の6% SDS、24% グリセロール、12% 2−メルカプトエタノール、および0.15% ブロモフェノールブルーを含むトリス塩酸緩衝液(pH6.8)を加えて2分間煮沸したのち、12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行なった。
(2−2)泳動後のゲルよりインビトロジェン社製iBlotキットを用いてPVDF膜上に電気泳動で展開されたタンパク質を転写した。
(2−3)転写したPVDF膜にSNAPidキット(ミリポア社製)を用いてペルオキシダーゼ標識された抗ヒトCD64抗体または抗c−myc−タグ抗体を反応後、GEヘルスケア社製発光基質キット(Amersham ECL Plus Western Blotind Detection System、商品名)を用いて感光フィルム上に抗体と反応したタンパク質を検出した。
その結果を図4に示す。分子量5万の位置にヒト型FcγRI融合タンパク質の生成を確認した。
実施例5 融合タンパク質の発現(その2)
実施例4と同様に枯草菌DB117/pUBCTPPFcR1を培養後、上清中に分泌された融合タンパク質をウェスタンブロット法により検出した。その結果、実施例4と同様、分子量5万の位置に融合タンパク質の生成が確認された。

Claims (5)

  1. ヒト型FcレセプターFcγRIをコードするポリヌクレオチドの5’末端側に中性プロテアーゼの部分領域をコードするポリヌクレオチドを付加した、ポリヌクレオチド。
  2. 中性プロテアーゼの部分領域がサーモライシンのプロ領域である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  3. 請求項1または2に記載のポリヌクレオチドを含む、ヒト型FcレセプターFcγRIを発現させるためのプラスミド。
  4. 請求項3に記載のプラスミドで宿主を形質転換して得られる、ヒト型FcレセプターFcγRIを発現可能な形質転換体。
  5. 請求項4に記載の形質転換体を用いた、ヒト型FcレセプターFcγRIの製造方法。
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