JP2011099126A - 3価クロムめっき浴 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の3価クロムめっき浴の問題点を解消して、工業用として有効に利用できる新規な3価クロムめっき浴を提供する。
【解決手段】
水溶性3価クロム化合物、伝導性塩及びpH緩衝剤を含有する水溶液からなり、該水溶液中の3価クロムイオンの濃度が0.003〜0.12モル/Lであることを特徴とする3価クロムめっき浴、
該3価クロムめっき浴中において被めっき物を陰極としてクロムめっき皮膜を形成した後、3価クロムイオンの錯化剤を含む水洗水中で該被めっき物の水洗処理を行う工程を含むクロムめっき方法、及び
該3価クロムめっき浴を用いて形成されたクロムめっき皮膜を有する物品。
【選択図】図1
【解決手段】
水溶性3価クロム化合物、伝導性塩及びpH緩衝剤を含有する水溶液からなり、該水溶液中の3価クロムイオンの濃度が0.003〜0.12モル/Lであることを特徴とする3価クロムめっき浴、
該3価クロムめっき浴中において被めっき物を陰極としてクロムめっき皮膜を形成した後、3価クロムイオンの錯化剤を含む水洗水中で該被めっき物の水洗処理を行う工程を含むクロムめっき方法、及び
該3価クロムめっき浴を用いて形成されたクロムめっき皮膜を有する物品。
【選択図】図1
Description
本発明は、3価クロム化合物を含むめっき浴、該めっき浴を用いるめっき方法及びクロムめっき皮膜が形成された物品に関する。
クロムめっきは、装飾用、工業用等の各種の分野で広く利用されている。従来から主として用いられているクロムめっき浴は、クロム成分として6価クロムを多量に含むものである。しかしながら、近年、6価クロムの有害性が問題となっており、作業環境や排水処理などの点から、毒性の少ないめっき液の開発が強く望まれている。
6価クロムと比較して毒性の低い3価クロムを含むクロムめっき浴として、各種のめっき浴が知られており(下記特許文献1〜3及び非特許文献1〜3参照)、浴中の3価クロムイオン濃度が0.4モル以上であって、水溶液脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の成分を3価クロムイオン1モルに対して1.0〜3.0モル程度の範囲で含有するクロムめっき浴が報告されている。この様な3価クロムめっき浴については、めっき厚の薄い装飾用クロムめっきとして一部実用化が進んでおり、例えば、商標名:アレクラ3000(アルブライトアンドウイルソン社),商標名:エンバイロクロム(カニング社)、商標名:トリクロライト(ユージライト社),商標名:トライクロムプラス(アトテックジャパン)などのめっき浴が市販されている。
しかしながら、従来の3価クロムめっき浴から形成されるめっき皮膜は、6価クロムめっき浴から形成されるめっき皮膜と比較すると、皮膜外観が暗く装飾性において劣るものである。このため、6価クロム浴から得られるクロムめっき皮膜に類似した白色外観のクロムめっき皮膜を形成できる3価クロムめっき浴に対して強い要望がある。
表面技術 vol.56, No.6, 324p (2005) 表面技術 Vol.47, No.3, 245p (1996) 近畿アルミニウム表面処理研究会 平成18年度秋季特別講演 講演要旨集 特開55-119192号公報
特開平4-45598号公報
特開2002-285375号公報
表面技術 vol.56, No.6, 324p (2005) 表面技術 Vol.47, No.3, 245p (1996) 近畿アルミニウム表面処理研究会 平成18年度秋季特別講演 講演要旨集
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、上記した従来の3価クロムめっき浴の問題点、特に、6価クロム浴から形成されるめっき皮膜と比較すると皮膜外観が暗く、装飾性で劣るという問題点を解消して、工業用に有効に利用できる新規な3価クロムめっき浴を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、めっき浴中の3価クロムイオン濃度を0.003〜0.12モル/Lという従来の3価クロムめっき浴と比較して低い濃度とし、且つ水溶液脂肪族カルボン酸類の濃度を3価クロムイオン1モルに対して0.3モル以下に制限することによって、6価クロム化合物を含むめっき浴から形成されるクロムめっき皮膜に類似した装飾性の高い白色外観のクロムめっき皮膜を形成できることを見出した。しかも、該クロムめっき浴は、建浴直後においても付き回性が良好であり、広い電流密度範囲において良好なクロムめっき皮膜を形成でき、形成されるクロムめっき皮膜は、良好な耐食性と高い硬度を有し、厚付けも可能であり、工業的に有用性が高いものであることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の3価クロムめっき浴、該めっき浴を用いるめっき方法及びクロムめっき皮膜が形成された物品を提供するものである。
1. 水溶性3価クロム化合物、伝導性塩及びpH緩衝剤を含有する水溶液からなり、該水溶液中の3価クロムイオンの濃度が0.003〜0.12モル/Lであることを特徴とする3価クロムめっき浴。
2. 3価クロムイオンを0.003〜0.12モル/L、伝導性塩を50〜400g/L、及びpH緩衝剤を60〜120g/L含有する水溶液からなる3価クロムめっき浴。
3. 更に、SO2基を有する化合物及びSO3基を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の含イオウ化合物を1〜10g/L含有する上記項1又は2に記載の3価クロムめっき浴。
4. 水溶性脂肪族カルボン酸類の含有量が、3価クロムイオン1モルに対して、0.3モル以下である上記項1〜3のいずれかに記載の3価クロムめっき浴。
5. 上記項1〜4のいずれかに記載の3価クロムめっき浴中において被めっき物を陰極としてクロムめっき皮膜を形成した後、3価クロムイオンの錯化剤を含む水洗水中で該被めっき物の水洗処理を行う工程を含むクロムめっき方法。
6. 上記項1〜4のいずれかに記載の3価クロムめっき浴を用いて形成されたクロムめっき皮膜を有する物品。
1. 水溶性3価クロム化合物、伝導性塩及びpH緩衝剤を含有する水溶液からなり、該水溶液中の3価クロムイオンの濃度が0.003〜0.12モル/Lであることを特徴とする3価クロムめっき浴。
2. 3価クロムイオンを0.003〜0.12モル/L、伝導性塩を50〜400g/L、及びpH緩衝剤を60〜120g/L含有する水溶液からなる3価クロムめっき浴。
3. 更に、SO2基を有する化合物及びSO3基を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の含イオウ化合物を1〜10g/L含有する上記項1又は2に記載の3価クロムめっき浴。
4. 水溶性脂肪族カルボン酸類の含有量が、3価クロムイオン1モルに対して、0.3モル以下である上記項1〜3のいずれかに記載の3価クロムめっき浴。
5. 上記項1〜4のいずれかに記載の3価クロムめっき浴中において被めっき物を陰極としてクロムめっき皮膜を形成した後、3価クロムイオンの錯化剤を含む水洗水中で該被めっき物の水洗処理を行う工程を含むクロムめっき方法。
6. 上記項1〜4のいずれかに記載の3価クロムめっき浴を用いて形成されたクロムめっき皮膜を有する物品。
以下、本発明の3価クロムめっき浴について詳細に説明する。
本発明の3価クロムめっき浴は、水溶性3価クロム化合物、伝導性塩、及びpH緩衝剤を必須成分として含有するものである。
上記した成分の内で、3価クロム化合物は、3価クロムを含む水溶性の化合物であればよく、例えば、硫酸クロム、硝酸クロム、酢酸クロム、塩基性硫酸クロムなどを用いることができる。これらの3価クロム化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
本発明の3価クロムめっき浴では、3価クロムイオン濃度は、0.003〜0.12モル/Lの範囲内にあることが必要である。従来の3価クロムめっき浴には、通常、3価クロムイオンは0.4モル/L程度以上含まれている。しかしながら、本願発明者の研究によれば、めっき浴中における3価クロムイオン濃度が高くなると製膜速度が高くなるものの、めっき皮膜の色調が暗くなり、一方、3価クロムイオン濃度が低い場合には皮膜の色調は明るくなるが、製膜速度が低下することが明らかとなった。この点を考慮して研究を重ねた結果、形成されるクロムめっき皮膜について、良好な白色外観と適度な製膜速度を両立して、工業的に使用に適したものとするためには、3価クロムイオン濃度が0.003〜0.12モル/L程度の範囲内であることが必要であり、0.04〜0.1モル/L程度の範囲内であることが好ましいことが明らかとなった。
また、本発明の3価クロムめっき浴では、3価クロムイオン濃度が上記範囲内にあることに加えて、水溶性脂肪族カルボン酸類の濃度が3価クロムイオン1モルに対して0.3モル以下であることが必要である。従来の3価クロムめっき浴では、めっき浴の安定性を維持するために、水溶性脂肪族カルボン酸類が必須であると考えられており、通常、3価クロムイオンに対して等モル程度以上の水溶性カルボン酸類が使用されている。これに対して本発明の3価クロムめっき浴によれば、3価クロムイオン濃度を0.003〜0.12モル/L程度という比較的低濃度とすることによって、水溶性脂肪族カルボン酸類が含まれない場合であってもめっき浴の安定性が阻害されることがなく、しかも驚くべきことに、この様な低い3価クロムイオン濃度のめっき浴から形成されるめっき皮膜は、6価クロム化合物を含むめっき浴から形成されるクロムめっき皮膜に類似した装飾性に優れた白色外観を有し、更に、良好な耐食性と高い硬度を有するものとなる。
本発明の3価クロムめっき浴では、形成されるクロムめっき皮膜の特性に影響がない範囲であれば、水溶性脂肪族カルボン酸類が含まれていてもよい。例えば、3価クロムイオン1モルに対して0.3モル以下の水溶性脂肪族カルボン酸類が含まれていても良い。特に、水溶性脂肪族カルボン酸類の量は0.2モル以下であることが好ましい。
尚、水溶性脂肪族カルボン酸類とは、水溶性脂肪族カルボン酸又はその塩であり、例えば、ギ酸、酢酸等の脂肪族物モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;グルコン酸などの脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸:リンゴ酸等の脂肪族ヒドロキシジカルボン酸;クエン酸等の脂肪族ヒドロキシトリカルボン酸などのカルボン酸、これらのカルボン酸の水溶性塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を例示できる。
本発明の3価クロムめっき浴は、上記した通り、水溶性脂肪族カルボン酸類を全く含まないか、或いは、その含有量が非常に少量である。従来の3価クロムめっき浴では、水溶性脂肪族カルボン酸類が比較的多量に含まれているために、めっき浴を建浴後、錯体を安定化させるために、長時間の電解処理が必要であったが、本発明のめっき浴では、水溶性脂肪族カルボン酸類を含まないか、或いは、その含有量が非常に少ないために、建浴直後においても6価クロム皮膜と類似した良好な白色クロムめっき皮膜を形成できる。このため、長時間の電解処理が不要となり、作業効率が大きく向上する。また、クロム化合物を補給する際にも錯体の安定化のための時間が不要であり、めっき浴の管理が容易である。
本発明の3価クロムめっき浴では、伝導性塩としては、例えば、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩、塩化カリウム、塩化ナトリウムアルカリ金属塩化物などを用いることができる。これらの伝導性塩は一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
伝導性塩の濃度については特に限定されないが、濃度が低い場合には浴電圧が上昇して電解中に浴温が上昇するため一定温度に保持するために電解槽を冷却する必要が生じる。また,伝導性塩濃度が高い場合には浴電圧は低下するが建浴時に溶解させることが困難であり、しかも、めっき作業を中止してめっき浴の温度が低下した場合には、沈殿などが生成することになる。これらの点から伝導性塩の濃度は、50〜400g/L程度とすることが好ましく、150〜300g/L程度とすることがより好ましい。
本発明の3価クロムめっき浴には、pH緩衝剤を添加することが必要である。pH緩衝剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウムなどを使用することができる。pH緩衝剤の濃度が低い場合には陰極反応界面でのpH上昇が起こり,クロムの水酸化物などが生成するため良好なクロムめっき皮膜が得られない。このことから,良好なクロムめっき皮膜を得るためには、pH緩衝剤の濃度は60〜120g/L程度とすることが好ましく、80〜100g/L程度とすることがより好ましい。
本発明の3価クロムめっき浴には、更に、必要に応じて、SO2基を有する化合物及びSO3基を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の含イオウ化合物を添加することができる。これらの含イオウ化合物は、形成されるクロム皮膜を緻密で良好な外観とするために有効な成分である。
これらの内でSO2基を有する化合物としては、サッカリン、サッカリンナトリウム等を例示でき、SO3基を有する化合物としは、スルホベンズアルデヒド、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、これらの塩等を例示できる。これらの含イオウ化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることが出来る。
含イオウ化合物の濃度については、特に限定されないが、通常、1〜10g/L程度とすることが好ましく、2〜7g/L程度とすることがより好ましい。
本発明の3価クロムめっき浴は、上記した各成分を水に溶解したものであり、各成分を溶解する順序は任意である。
上記した各成分を用いて建浴した3価クロムめっき液のpHは、使用する錯化剤の種類により多少の変動があるが、通常、pH2〜4程度の範囲内とすることが好ましい。この程度のpH範囲とすることによって、水溶性脂肪族カルボン酸類を含まない場合であっても、水酸化クロムによる沈殿の発生を防止することができる。
本発明の3価クロムめっきによれば、めっき作業時の浴温が低い場合にはつき回り性は向上するが製膜速度は低下する傾向があり、逆に浴温が高い場合には,製膜速度は向上するが低電流密度領域へのつき回り性は低下する傾向がある。この点を考慮して適切な浴温を決めればよいが、通常、工業的に使用する際の浴温としては、30〜60℃程度の温度範囲が好ましい。
めっき時に使用する陽極としては、特に限定的ではなく、通常は、Ti−Pt電極などの公知の不溶性陽極を用いることができる。特に、Ir−Ta複合酸化物薄膜で被覆したTi電極を用いる場合には、6価クロムの生成を抑制できる点で有利である。
本発明の3価クロムめっき浴は、付き回りが良好であり、例えば、1A/dm2程度の低電流密度においても良好なクロムめっき皮膜を形成できる。このため、1〜20 A/dm2程度の広い陰極電流密度範囲において良好な外観のクロムめっき皮膜を形成できる。
本発明の3価クロムめっき浴によれば、常法に従って、該クロムめっき浴中において被めっき物を陰極として通電することによって、被めっき物上に良好なクロムめっき皮膜を形成できる。但し、水溶性脂肪族カルボン酸類を全く含まないか、或いは水溶性脂肪族カルボン酸類の含有量が少ない場合には、めっき処理後の水洗水中において水酸化クロムの沈殿が生じる場合がある。この様な場合には、クロムめっき処理の直後の水洗水中に3価クロムの錯化剤を添加することによって、水洗水中における沈殿の発生を防止することができる。この様な錯化剤としては、3価クロムに対して錯化力がある化合物であれば特に限定なく使用でき、例えば、上記した水溶性脂肪族カルボン酸類を用いることができ、その他に、エチレンジアミンテトラ酢酸、イミノジ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸などのコンプレクサン類、これらの水溶性塩等を用いることができる。水洗水中の錯化剤の濃度については特に限定的ではないが、例えば、1〜10 g/L程度とすればよい。
本発明の3価クロムめっき浴によれば、下記に示す顕著な効果が奏される。
(1)建浴直後においても6価クロム皮膜と類似した良好な白色クロムめっき皮膜を形成できる。このため、長時間の電解処理が不要となり、作業効率が大きく向上する。
(2)低電流密度領域での付き回り性に優れ、広い電流密度範囲において良好なクロムめっき皮膜を形成できる。
(3)めっき時間に応じてめっき皮膜が成長するので、1μmを上回る厚付けが可能である。
(4)高い皮膜硬度を有し、耐食性にも優れた良好なクロムめっき皮膜を得ることができる。
(5)クロム酸浸漬処理を行わない場合にも良好な耐食性を有するクロムめっき皮膜を形成できる。
(1)建浴直後においても6価クロム皮膜と類似した良好な白色クロムめっき皮膜を形成できる。このため、長時間の電解処理が不要となり、作業効率が大きく向上する。
(2)低電流密度領域での付き回り性に優れ、広い電流密度範囲において良好なクロムめっき皮膜を形成できる。
(3)めっき時間に応じてめっき皮膜が成長するので、1μmを上回る厚付けが可能である。
(4)高い皮膜硬度を有し、耐食性にも優れた良好なクロムめっき皮膜を得ることができる。
(5)クロム酸浸漬処理を行わない場合にも良好な耐食性を有するクロムめっき皮膜を形成できる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1〜4及び比較例1〜2
下記表1に示す各成分を水に溶解して3価クロムめっき浴を調製し、表中に示すpH値及び浴温で、下記の方法によってめっき試験を行った。
下記表1に示す各成分を水に溶解して3価クロムめっき浴を調製し、表中に示すpH値及び浴温で、下記の方法によってめっき試験を行った。
めっき試験方法は以下の通りである。その結果を下記表2に示す。
(めっき試験方法)
1)皮膜の色調評価
建浴直後の各3価クロムめっき浴を用い、500 mLハーリングセルで製膜した試験片の色調を目視により評価した。試験片には0.48 dm2の真鍮板に光沢Niめっきを約3μm製膜したものを使用し電流密度7.5 A/dm2、めっき時間5分間とし、陽極としては、Ir−Ta複合酸化物薄膜で被覆したTi電極を用いた。
(めっき試験方法)
1)皮膜の色調評価
建浴直後の各3価クロムめっき浴を用い、500 mLハーリングセルで製膜した試験片の色調を目視により評価した。試験片には0.48 dm2の真鍮板に光沢Niめっきを約3μm製膜したものを使用し電流密度7.5 A/dm2、めっき時間5分間とし、陽極としては、Ir−Ta複合酸化物薄膜で被覆したTi電極を用いた。
尚、6価クロムめっき浴から形成されたクロムめっき皮膜と、実施例1と比較例1で得られためっき皮膜については、反射率の測定結果を図1に示す。
2)ハルセル試験
建浴直後の各3価クロムめっき浴を用い、被めっき物として、真鍮板に光沢Niめっきを約3μm製膜したものを使用して、ハルセル試験を行った。ハルセル試験条件は、槽電流5A、めっき時間5分間とし、陽極としては、Ir−Ta複合酸化物薄膜で被覆したTi電極を用いた。
建浴直後の各3価クロムめっき浴を用い、被めっき物として、真鍮板に光沢Niめっきを約3μm製膜したものを使用して、ハルセル試験を行った。ハルセル試験条件は、槽電流5A、めっき時間5分間とし、陽極としては、Ir−Ta複合酸化物薄膜で被覆したTi電極を用いた。
クロムめっき後の被めっき物(ハルセル板)について、電流密度分布スケールを基準としてどの電流密度に相当する部分までめっきが析出しているかを判定して、つき回り性を評価した。その後、電解式膜厚計を使用しハルセル板の各電流密度における膜厚を測定した。下記表2には1次電流密度で10A/dm2に相当する部分の膜厚を記載する。
3)製膜時間と膜厚の関係
各3価クロムめっき浴を用い、電流密度7.5A/dm2の条件でNiめっき真鍮板にめっき時間を変化させてクロムめっき皮膜を析出させ、製膜時間と膜厚の関係を調べた。膜厚は析出重量と面積から算出した。
各3価クロムめっき浴を用い、電流密度7.5A/dm2の条件でNiめっき真鍮板にめっき時間を変化させてクロムめっき皮膜を析出させ、製膜時間と膜厚の関係を調べた。膜厚は析出重量と面積から算出した。
4)ビッカース硬度測定
上記試験で厚膜化が可能であった被めっき物について、ビッカース硬度を測定した。
上記試験で厚膜化が可能であった被めっき物について、ビッカース硬度を測定した。
5)耐食性評価
各3価クロムめっき浴を用いて、光沢Niめっきを行なった真鍮板に約0.1μmの3価クロムめっき皮膜を形成した。水洗後、クロム酸浸漬処理を行うことなく、塩水噴霧試験(JIS 2371)を行った。72時間後に装置から取り出し、水洗後に目視による観察で腐食の進行状態をめっき品全体に対する白さびが発生した面積の割合で評価した。
各3価クロムめっき浴を用いて、光沢Niめっきを行なった真鍮板に約0.1μmの3価クロムめっき皮膜を形成した。水洗後、クロム酸浸漬処理を行うことなく、塩水噴霧試験(JIS 2371)を行った。72時間後に装置から取り出し、水洗後に目視による観察で腐食の進行状態をめっき品全体に対する白さびが発生した面積の割合で評価した。
以上の結果から次のことが明らかである。
(1)浴中の3価クロムイオン濃度が0.03〜0.12モルであり、かつ、カルボン酸類濃度が3価クロムイオン1モルに対して0.2モル以下である実施例1〜4の各3価クロムめっき浴から得られた皮膜は、6価クロムめっき皮膜に類似した白色外観を示した。これに対して、浴中3価クロムイオン濃度が0.288モルである比較例1のめっき浴およびカルボン酸類/浴中金属クロム比が1.0の比較例2のめっき浴からは、実施例1〜4の場合と比較すると色調の暗いクロムめっき皮膜が形成された。
(2)実施例1〜4の各3価クロムめっき浴では、ハルセル試験において良好なつき回り性を示し、1A/dm2程度の低電流密度域まで良好なクロムめっき皮膜を形成できた。これに対して、比較例1及び2のめっき浴では、建浴直後においては低電流密度領域へのつき回り性が十分でなく、ハルセル試験においては4A/dm2に相当する部分にまでしかめっきが析出しなかった。
(2)実施例1〜4の各3価クロムめっき浴では、製膜時間とともに膜厚が増加し、5時間経過時点においても製膜時間と膜厚はほぼ直線関係を示し、製膜時間を延長することによって厚膜化が可能であった。また、厚膜化されたクロムめっき皮膜は、1000HV程度という高いビッカース硬度を示した。
(1)浴中の3価クロムイオン濃度が0.03〜0.12モルであり、かつ、カルボン酸類濃度が3価クロムイオン1モルに対して0.2モル以下である実施例1〜4の各3価クロムめっき浴から得られた皮膜は、6価クロムめっき皮膜に類似した白色外観を示した。これに対して、浴中3価クロムイオン濃度が0.288モルである比較例1のめっき浴およびカルボン酸類/浴中金属クロム比が1.0の比較例2のめっき浴からは、実施例1〜4の場合と比較すると色調の暗いクロムめっき皮膜が形成された。
(2)実施例1〜4の各3価クロムめっき浴では、ハルセル試験において良好なつき回り性を示し、1A/dm2程度の低電流密度域まで良好なクロムめっき皮膜を形成できた。これに対して、比較例1及び2のめっき浴では、建浴直後においては低電流密度領域へのつき回り性が十分でなく、ハルセル試験においては4A/dm2に相当する部分にまでしかめっきが析出しなかった。
(2)実施例1〜4の各3価クロムめっき浴では、製膜時間とともに膜厚が増加し、5時間経過時点においても製膜時間と膜厚はほぼ直線関係を示し、製膜時間を延長することによって厚膜化が可能であった。また、厚膜化されたクロムめっき皮膜は、1000HV程度という高いビッカース硬度を示した。
これに対して、比較例1及び2の3価クロムめっき浴では、めっき開始から60分間程度経過後に製膜速度が大幅に低下し、製膜時間を長くしてもクロムめっき皮膜は3μm程度までしか成長せず、厚膜化が出来なかった。
(3)実施例1〜4の各3価クロムめっき浴から形成されたクロムめっき皮膜は、クロム酸浸漬処理を行わない場合にも良好な耐食性を示した。
(3)実施例1〜4の各3価クロムめっき浴から形成されたクロムめっき皮膜は、クロム酸浸漬処理を行わない場合にも良好な耐食性を示した。
Claims (6)
- 水溶性3価クロム化合物、伝導性塩及びpH緩衝剤を含有する水溶液からなり、該水溶液中の3価クロムイオンの濃度が0.003〜0.12モル/Lであることを特徴とする3価クロムめっき浴。
- 3価クロムイオンを0.003〜0.12モル/L、伝導性塩を50〜400g/L、及びpH緩衝剤を60〜120g/L含有する水溶液からなる3価クロムめっき浴。
- 更に、SO2基を有する化合物及びSO3基を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の含イオウ化合物を1〜10g/L含有する請求項1又は2に記載の3価クロムめっき浴。
- 水溶性脂肪族カルボン酸類の含有量が、3価クロムイオン1モルに対して、0.3モル以下である請求項1〜3のいずれかに記載の3価クロムめっき浴。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の3価クロムめっき浴中において被めっき物を陰極としてクロムめっき皮膜を形成した後、3価クロムイオンの錯化剤を含む水洗水中で該被めっき物の水洗処理を行う工程を含むクロムめっき方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の3価クロムめっき浴を用いて形成されたクロムめっき皮膜を有する物品。
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JP2008013585A JP2011099126A (ja) | 2008-01-24 | 2008-01-24 | 3価クロムめっき浴 |
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