JP2011098865A - 石英ガラス母材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラス形成原料をバーナー10から発せられる酸水素火炎20中で加水分解して得られるガラス微粒子を、回転するターゲット30上に堆積、成長させて多孔質石英ガラス体40を合成する手順を含む石英ガラス母材の製造方法であって、前記ターゲット30上に形成される多孔質石英ガラス体40表面の前記ターゲットの回転軸と略一致する位置に、深さ5〜30mmの凹部42が形成されるように、多孔質石英ガラス体40の合成条件を制御することを特徴とする石英ガラス母材の製造方法。
【選択図】図1
Description
なお、本明細書における石英ガラス母材とは、石英、すなわち、SiO2のみで構成されるガラス母材以外に、TiO2のようなドーパントを含む石英ガラス母材も包含する。
また、VAD法は、波長0.2〜100nm程度の軟X線領域または真空紫外域の波長帯の光(EUV光)を光源とする光学装置の、フォトマスク、ミラーなどの光学部品材料として用いられる光学部材用ドーパント石英ガラスの製造にも応用されている。
このため、ガラス微粒子を堆積させる堆積面の形状は、バーナーに供給される合成ガス条件、ターゲットの回転軸に対するバーナーの角度や位置、あるいは、反応器内の温度によって変化し、形成される多孔質石英ガラス体の形状や収率に影響を与える。
また、堆積面の形状が変化すると、バーナーから発せられる火炎が堆積面に十分に当たらなくなり、該堆積面にかさ密度が低い箇所が局所的に生じてしまうため、合成中に多孔質ガラス体が崩壊することがある。大型の多孔質石英ガラス体の場合、長時間の合成が必要となるため、合成過程、特に合成後期に多孔質石英ガラス体が崩壊すると、原料歩留りが著しく悪化し、多孔質石英ガラス体、ひいては石英ガラス母材の収率が低下する。
このように、多孔質石英ガラス体を製造するうえで、堆積面を所定の形状とすることがきわめて重要である。
しかしながら、大型の多孔質石英ガラス体の場合、光ファイバ用多孔質ガラス体に比べて、製造物の寸法が明らかに異なること、および、合成に要する時間がはるかに長いことから、特許文献1に記載の方法を単純には適用できないことを本願発明者らは見出した。
すなわち、大型の多孔質石英ガラス体の場合、堆積面に形成される凹形状の寸法(具体的には、凹形状の深さや幅)や、凹形状を形成する位置によっては、意図した効果を発揮することができず、かえって収率の低下につながったり、合成過程での多孔質石英ガラス体の崩壊につながる場合があることを見出した。
前記ターゲット上に形成される多孔質石英ガラス体表面の前記ターゲットの回転軸と略一致する位置に、深さ5〜30mmの凹部が形成されるように、多孔質石英ガラス体の合成条件を制御することを特徴とする石英ガラス母材の製造方法を提供する。
本発明の石英ガラス母材の製造方法は、以下に述べる手順にしたがって、VAD法により多孔質石英ガラス体を合成した後、合成された多孔質石英ガラス体を透明ガラス化することで石英ガラス母材を得る。
図1において、ガラス微粒子の堆積面41、すなわち、ターゲット30上に形成された多孔質石英ガラス体40の表面の中心には凹部42が形成されている。VAD法により多孔質石英ガラス体を合成する場合、ターゲット上に形成される多孔質石英ガラス体の表面の中心と、ターゲットの回転軸と、が一致しない場合もあるが、本発明のように、大型の多孔質石英ガラス体、具体的には、質量51kg以上の多孔質石英ガラス体、または、径400mmφ以上の多孔質石英ガラス体を合成する場合、ターゲット30上に形成される多孔質石英ガラス体40の表面(堆積面41)の中心と、図中破線で示すターゲット30の回転軸と、が一致することが必要となる。
VAD法による多孔質石英ガラス体の合成時、堆積面41に凹部42が形成されるのは、堆積面41のうち凹部42が形成されている部位では、堆積面41の他の部位よりもガラス微粒子の焼結が進行し、その結果、多孔質石英ガラス体のかさ密度が高くなるためである。
特許文献1に記載の方法では、堆積面の中心からずれた位置に凹部を形成しているが、質量51kg以上、または、径400mmφ以上の大型の多孔質石英ガラス体を合成するためには、堆積面41の中心に凹部42を形成することが合成過程での多孔質石英ガラス体の崩壊を防止するうえで重要である。
特許文献1に記載の方法のように、堆積面の中心からずれた位置に凹部を形成すると、ターゲット上に形成される多孔質石英ガラスの形状が複雑になる、形成される多孔質石英ガラス体にかさ密度の不均等なばらつきが生じる等の理由から、大型の多孔質石英ガラス体の合成時には多孔質石英ガラス体の崩壊が起こりやすい。また、特許文献1に記載の方法のように、堆積面の中心からずれた位置に凹部を形成すると、バーナーから発せられる火炎に乱れが生じやすくなるので、これによっても多孔質石英ガラス体の崩壊が起こりやすくなる。
したがって、堆積面41に形成される凹部42、より具体的には、該凹部42の中心、と、ターゲット30の回転軸と、が完全に一致することが必要であるとも解することができる。
しかしながら、本発明においては、そのようなことは決して要求されず、堆積面41に形成される凹部42、より具体的には、該凹部42の中心、と、ターゲット30の回転軸と、が略一致していればよい。本発明において、堆積面41に形成される凹部42の中心と、ターゲット30の回転軸と、が略一致すると言った場合、ターゲット30上に形成される多孔質石英ガラス体40の最大径をd(mm)とするとき、凹部42の中心と、ターゲット30の回転軸と、の距離は0.3×d以内が好ましく、0.2×d以内がより好ましく、0.1×d以内が特に好ましい。
ターゲット30の回転軸に対して偏心させてバーナー10を設置した場合、図1に示すように、堆積面41のうち中心以外の部分はバーナー10から発せられる火炎20に晒されない状況が存在する。たとえば、図1に示す堆積面41のうち、ターゲット30の回転軸よりも左側の部分は、バーナー10から発せられる火炎20に晒されているのに対して、ターゲット30の回転軸よりも右側の部分は、バーナー10から発せられる火炎20に晒されていない。ターゲット30の回転軸よりも右側の部分はバーナー10から発せられる火炎20に晒されていないので、ターゲット30の回転軸よりも左側の部分よりも温度が低くなる。多孔質石英ガラス体40の合成時、ターゲット30は回転しているので、堆積面41のうち中心以外の部分は、このような温度差が交互に繰り返される。
一方、堆積面41の中心部分はバーナー10から発せられる火炎20に常に晒されているので、堆積面41のうち中心以外の部分よりも温度が高くなる。この結果、堆積面41の中心部分ではガラス微粒子の焼結がより進行し、多孔質石英ガラス体のかさ密度がより高くなり、凹部42が形成されることとなる。
0.05×d ≦ d1 ≦ 0.25×d
凹部42の深さが5mm未満だと、多孔質石英ガラス体40の中心付近のかさ密度が低くなるため、合成過程において、多孔質石英ガラス体40が崩壊するおそれがあり、また、多孔質石英ガラス体40の収率が低下する。
一方、凹部42の深さが30mm超だと、堆積面41の外周付近のかさ密度が低くなりすぎ、多孔質石英ガラス体の合成過程で該ガラス体の外周部が崩壊するおそれがある。また、温度の上昇による堆積面41の収縮によって、該堆積面41の外周部に引っ張り応力が加わる結果、合成過程において、多孔質石英ガラス体40の外周部が崩壊するおそれがある。また、バーナー10から発せられる火炎20が乱れることにより、堆積面41へのガラス微粒子の付着効率が低下することによって、多孔質石英ガラス体40の収率が低下する。
凹部42の深さは10〜30mmであることが好ましく、20〜30mmであることがより好ましい。
本発明の石英ガラス母材の製造方法において、合成初期の段階の堆積面の中心に凹部が存在しない場合や、凹部が存在していてもその深さが5mm未満の場合が存在しても大型の多孔質石英ガラス体を合成するうえで何ら不都合はない。
一方、ターゲット30上に形成された多孔質石英ガラス体40が、少なくとも厚さが100mm以上まで成長した段階で、堆積面41の中心に深さが5〜30mmの凹部42が存在していないと、意図した効果を発揮することができず、大型の多孔質石英ガラス体を合成するうえで不都合が生じることとなる。
VAD法により多孔質石英ガラス体を合成する際にバーナー10に供給されるガスとしては、ガラス形成原料、酸水素火炎を形成するための燃焼ガスである酸素および水素、ならびに、シールガスとしての不活性ガスが挙げられる。
これらバーナーに供給されるガスの供給条件を制御することで、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さを制御することができる。
一方、ガラス形成原料の供給量が減少すると、ガラス形成原料の火炎加水分解によって生成したガラス微粒子からの輻射による放熱が減少するので、バーナー10に供給されるガスに占める燃焼ガス(酸素、水素)の割合が増加するので、バーナー10から発せられる火炎20の温度が上昇する。この結果、火炎20に晒される堆積面41の温度も上昇し、堆積面41に付着したガラス微粒子の焼結がより進行するようになるので、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さが増加する。
一方、酸素および水素の供給量が減少すると、バーナー10から発せられる火炎20の温度が低下し、火炎20に晒される堆積面41の温度も低下する。この結果、堆積面41に付着したガラス微粒子の焼結がより進行しなくなるので、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さが減少する。
一方、不活性ガスの供給量が減少すると、バーナー10に供給されるガスに占める燃焼ガス(酸素、水素)の割合が増加するので、バーナー10から発せられる火炎20の温度が増加する。これにより、火炎20に晒される堆積面41の温度が上昇し、堆積面41に付着したガラス微粒子の焼結がより進行するようになるので、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さが増加する。
図1に示すように、VAD法による多孔質石英ガラス体の合成時、堆積面41の一部が局所的にバーナー10から発せられる火炎20に晒されることとなる。堆積面41のうち、バーナー10から発せられる火炎20に晒される部位を変えるように、バーナー10から発せられる火炎20と、堆積面41と、の位置関係を制御することにより、堆積面41の温度を局所的に変えることができる。
例えば、バーナー10から発せられる火炎20に晒される位置を堆積面41のより外周側にすれば、堆積面41の中心部分と、該堆積面41の中心部分以外の部分と、の温度差が小さくなるので、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さが減少する。
一方、バーナー10から発せられる火炎20に晒される位置を堆積面41のより中心側にすれば、堆積面41の中心部分と、該堆積面41の中心部分以外の部分と、の温度差が大きくなるので、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さが増加する。
第3の方法としては、多孔質石英ガラス体の合成を行う反応器の内壁の温度を制御する方法が挙げられる。
例えば、反応器の内壁の温度を高くすると、壁面からの輻射によって、堆積面41の温度が上昇する。これにより、堆積面41に付着したガラス微粒子の焼結がより進行するようになり、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さが増加する。
一方、反応器の内壁の温度を低くすると、壁面からの輻射熱が減少するので、堆積面41の温度が低下する。これにより、堆積面41に付着したガラス微粒子の焼結がより進行しなくなり、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さが減少する。
ここで、上述した効果を得るためには、反応器の内壁のうち、堆積面41よりも下方に位置する内壁の温度を変えることが好ましい。
上述したように、堆積面41の中心に凹部42が形成されるのは、バーナー10から発せられる火炎20に常に晒される堆積面41の中心部分と、バーナー10から発せられる火炎20に晒されない状況が存在する堆積面41の中心部分以外の部分と、で堆積面41の温度差が生じるためである。
ターゲット30の回転速度が上昇すると、該堆積面41の中心部分以外の部分がバーナー10から発せられる火炎20に晒されない状態となる時間が短くなるので、堆積面41の中心部分と、該堆積面41の中心部分以外の部分と、の温度差が小さくなり、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さが減少する。
一方、ターゲット30の回転速度が低下すると、該堆積面41の中心部分以外の部分がバーナー10から発せられる火炎20に晒されない状態となる時間が長くなるので、堆積面41の中心部分と、該堆積面41の中心部分以外の部分と、の温度差が大きくなり、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さが増加する。
VAD法により合成される多孔質石英ガラス体の形状を測定する手段として、特開2001−206729号公報には、CCDカメラのような画像センサの使用や、レーザ変位計の使用が記載されている。また、特許第3168274号明細書には、OVD法により合成される多孔質石英ガラス体の堆積厚を測定する手段として、レーザ変位計の使用や、ビデオカメラによる画像処理が記載されている。これらの方法のうち、CCDカメラやビデオカメラによる画像処理を用いる方法では、堆積面41の中心に形成される凹部42の深さを測定することができず、レーザ変位計の使用が必要となる。
すなわち、本発明の石英ガラス母材の製造方法は、光ファイバ母材を製造するための特開2001−206729号公報や特許第3168274号明細書に記載の方法にくらべて、合成する多孔質石英ガラス体がはるかに大きいため、反応器内を浮遊するガラス微粒子の量もはるかに多くなる。この結果、堆積面にレーザを照射した際に、反応器内を浮遊するガラス微粒子によってレーザ光が散乱される度合いが高くなり、堆積面からの戻り光の強度が低下し、十分な測定精度を得ることができない。しかも、バーナーや反応器壁面からの輻射の影響が大きいので、測定装置を堆積面の付近に設置して、測定精度の低下を補うことができない。
合成中の多孔質石英ガラス体のような、高温の対象物の形状の測定に使用可能なレーザ変位計は、その測定原理により三角測量型と、位相変調型と、に大別される。本発明の石英ガラス母材の製造方法では、これらのうち、測定対象となる部位と、レーザ変位計と、の間にガラス微粒子のような散乱体が存在しても正確な測定が可能であることから、三角測量型のレーザ変位計を用いることが好ましい。
クラス3R以上のレーザであれば、レーザの出力が十分高いため、本発明の石英ガラス母材の製造方法のように、反応器内に多量のガラス微粒子が浮遊する環境であっても、十分な測定精度で堆積面41の中心に形成される凹部42の深さを測定することができる。
クラス3R以上のレーザであればよいので、クラス3Bやクラス4のレーザも使用することができる。但し、安全性の観点から、クラス3Rのレーザを使用することが好ましい。
本発明の方法により製造される石英ガラス母材が、石英、すなわち、SiO2のみで構成される場合、ガラス形成原料として、SiO2前駆体をバーナーに供給する。
SiO2前駆体の具体例としては、四塩化ケイ素(SiCl4)、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Clなどの塩化物、四塩化フッ素(SiF4)、SiHF3、SiH2F2などのフッ化物、四臭化ケイ素(SiBr4)、SiHBr3などの臭化物、SiI4などのヨウ化物といったハロゲン化ケイ素化合物、またRnSi(OR)4-n(ここでRは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数。なお、Rは同一でも異なっていてもよい。)で示されるアルコキシシラン等が例示される。
本発明の方法により製造される石英ガラス母材が、TiO2等の金属ドーパントを含有する場合、上述したSiO2前駆体に加えて、該金属ドーパントの前駆体をバーナーに供給する。たとえば、金属ドーパントとして、TiO2を含有する場合、上述したSiO2前駆体に加えて、TiO2前駆体をバーナーに供給する。
TiO2前駆体の具体例としては、TiCl4、TiBr4などのハロゲン化チタン化合物、またRnTi(OR)4-n(ここでRは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数。なお、Rは同一でも異なっていてもよい。)で示されるアルコキシチタン等が例示される。
なお、上記のガラス形成原料は、キャリアガスとともにバーナーに供給してもよい。この場合、キャリアガスとしては、燃焼ガスとしても用いる酸素および水素のうち、一方が通常用いられる。
上述したように、酸水素火炎を形成するための燃焼ガスとして、酸素および水素をバーナーへ供給する。ここで、安全上の理由から、水素は完全に酸水素火炎中で消費させる必要があるため、両者の供給量は、酸素に対する水素の割合(水素/酸素)は、0.5以上となる量とする。合成の安定性から考えると0.5〜0.7となるように供給することがさらに好ましい。
シールガスとして供給する不活性ガスとしては、窒素、または、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスを用いることができる。
これらの中でも、安価である等の理由から、窒素、アルゴンが好ましい。
実施例1では、図1に示す手順でVAD法により多孔質石英ガラス体を合成し、該多孔質ガラス体を透明ガラス化して石英ガラス母材を得た。
バーナー10には、ガラス形成原料として四塩化ケイ素を、キャリアガスとしての水素とともに供給した。また、バーナー10には、燃焼ガスとして酸素および水素、シールガスとして窒素を供給した。
バーナー10から発せられる火炎(酸水素火炎)20中でガラス形成原料が加水分解することによって生成したガラス微粒子(シリカ微粒子)を、回転するターゲット(中空のシリカ製の球状体。球の外径は200mmφ)30上に堆積させ、成長させることによって多孔質石英ガラス体40を合成した。多孔質石英ガラス体の合成時、ガラス微粒子(シリカ微粒子)は堆積面41に逐次付着するので、ターゲット30を徐々に上方へ移動させて、バーナー10端面と堆積面41との距離を一定に保った。
多孔質石英ガラス体の合成開始後、レーザ変位計−堆積面41中心間の距離が増加し、堆積面41の中心に凹部が形成されたことを確認した。多孔質石英ガラス体の合成開始から30時間経過後、レーザ変位計−堆積面41中心間の増加分が30mmまで増加したので、バーナー10への四塩化ケイ素の供給量を増やし、レーザ変位計−堆積面中心間の増加分が25mmまで減少させた。多孔質石英ガラス体の合成開始から50時間経過した時点で合成を終了し、平均径が500mmφ(質量80kg)の多孔質石英ガラス体を得た。バーナー10へ供給した四塩化ケイ素に対する収率は80%であった。
合成された多孔質石英ガラス体を真空下で1450℃で3時間加熱して透明ガラス化することにより、平均径が280mmφ(質量77kg)の石英ガラス母材を得た。バーナー10へ供給した四塩化ケイ素に対する収率は77%であった。
多孔質石英ガラス体の合成開始から30時間までは実施例1と同様の条件で実施した。合成開始から30時間経過後、レーザ変位計−堆積面41中心間の増加分が30mmまで増加したので、バーナー10から発せられる火炎20に晒される位置が堆積面41のより外周側となるように火炎20の向きを変えることにより、レーザ変位計−堆積面中心間の増加分が25mmまで減少させた。多孔質石英ガラス体の合成開始から50時間経過した時点で合成を終了し、平均径が500mmφ(質量80kg)の多孔質石英ガラス体を得た。バーナー10へ供給した四塩化ケイ素に対する収率は80%であった。
合成された多孔質石英ガラス体を真空下で1450℃で3時間加熱して透明ガラス化することにより、平均径が280mmφ(質量77kg)の石英ガラス母材を得た。バーナー10へ供給した四塩化ケイ素に対する収率は77%であった。
実施例1と同様の手順で多孔質石英ガラス体の合成を実施した。但し、光源としてレーザクラス2のレーザを備えた光干渉型レーザ変位計を用いてレーザ変位計−堆積面41中心間の距離の測定を実施した。
多孔質石英ガラス体の合成開始から1時間経過した時点で、レーザ変位計−堆積面41中心間の距離が測定できなくなった。反応器内を浮遊するガラス微粒子によるレーザ光の散乱が原因と考えられる。そのため、多孔質石英ガラス体の合成開始後1時間以降は、堆積面の中心に形成された凹部の深さに応じた多孔質石英ガラス体の合成条件の制御ができなかった。多孔質石英ガラス体の合成開始から50時間経過した時点で合成を終了し、平均径が450mmφ(質量70kg)の多孔質石英ガラス体を得た。バーナー10へ供給した四塩化ケイ素に対する多孔質石英ガラス体の収率は70%であった。
実施例1の結果から、多孔質石英ガラス体の合成過程で堆積面の中心に形成された凹部の深さが30mm超となり、堆積面41へのガラス微粒子の付着効率が低下した結果、多孔質石英ガラス体の収率が低下したものと考えられる。
合成された多孔質石英ガラス体を真空下で1450℃で3時間加熱して透明ガラス化することにより、平均径が230mmφ(質量67kg)の石英ガラス母材を得た。バーナー10へ供給した四塩化ケイ素に対する収率は67%であった。
酸素と水素の供給量を0.9倍にする以外は実施例1と同様の手順で多孔質石英ガラス体の合成を実施した。但し、レーザ変位計によるレーザ変位計−堆積面中心間の距離の測定は実施しなかった。
多孔質石英ガラス体の合成開始から35時間経過した時点で多孔質石英ガラス体が崩壊した。この結果から、堆積面の中心に凹部が形成されなかったか、または、形成された凹部の深さが5mm未満であったために、多孔質石英ガラス体の中心付近のかさ密度が低くなり、多孔質石英ガラス体の強度が不十分となったことで、該ガラス体が崩壊したものと考えられる。
酸素と水素の供給量を1.1倍にする以外は実施例1と同様の手順で多孔質石英ガラス体の合成を実施した。但し、レーザ変位計によるレーザ変位計−堆積面中心間の距離の測定は実施しなかった。
多孔質石英ガラス体の合成開始から35時間経過した時点で多孔質石英ガラス体の外周部が崩壊した。この結果から、温度の上昇による堆積面の収縮によって、該堆積面の外周部に引っ張り応力が加わった結果、該ガラス体の外周部が崩壊したものと考えられる。この際、堆積面の中心に形成された凹部の深さは30mm超となっていたと考えられる。
また、本発明の石英ガラス母材の製造方法は、波長0.2〜100nm程度の軟X線領域または真空紫外域の波長帯の光(EUV光)を光源とする光学装置の、フォトマスク、ミラーなどの光学部品材料として用いられる光学部材用ドーパント石英ガラスの製造にも好適である。
20:火炎
30:ターゲット
40:多孔質石英ガラス体
41:堆積面
42:凹部
Claims (6)
- ガラス形成原料をバーナーから発せられる酸水素火炎中で加水分解して得られるガラス微粒子を、回転するターゲット上に堆積、成長させて多孔質石英ガラス体を合成する手順を含む石英ガラス母材の製造方法であって、
前記ターゲット上に形成される多孔質石英ガラス体表面の前記ターゲットの回転軸と略一致する位置に、深さ5〜30mmの凹部が形成されるように、多孔質石英ガラス体の合成条件を制御することを特徴とする石英ガラス母材の製造方法。 - 三角測量方式のレーザ変位計を用いて測定される、前記多孔質石英ガラス体表面に形成される凹部の深さに基づいて、多孔質石英ガラス体の合成条件を制御する請求項1に記載の石英ガラス母材の製造方法。
- JIS C6802に基づくクラス3R以上のレーザを光源とするレーザ変位計を用いて測定される、前記多孔質石英ガラス体表面に形成される凹部の深さに基づいて、多孔質石英ガラス体の合成条件を制御する請求項1または2に記載の石英ガラス母材の製造方法。
- 前記バーナーへのガス供給条件を制御することにより、前記多孔質石英ガラス体の合成条件を制御する請求項1〜3のいずれかに記載の石英ガラス母材の製造方法。
- 前記バーナーから発せられる酸水素火炎と、前記ターゲット上に形成される多孔質石英ガラス体表面と、の位置関係を制御することにより、前記多孔質石英ガラス体の合成条件を制御する請求項1〜4のいずれかに記載の石英ガラス母材の製造方法。
- 前記ターゲット上に形成される多孔質石英ガラス体表面よりも下方に位置する反応器の内壁の温度を制御することにより、前記多孔質石英ガラス体の合成条件を制御する請求項1〜5のいずれかに記載の石英ガラス母材の製造方法。
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JPH0383830A (ja) * | 1989-08-25 | 1991-04-09 | Shin Etsu Chem Co Ltd | グレーテッドインデックス型光ファイバ母材の製造方法 |
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JPH0383830A (ja) * | 1989-08-25 | 1991-04-09 | Shin Etsu Chem Co Ltd | グレーテッドインデックス型光ファイバ母材の製造方法 |
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JP5521500B2 (ja) | 2014-06-11 |
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