JP2011088890A - 貼付剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】リドカインの経皮吸収性が水含有量の大小によって変化を受けにくい貼付剤を提供すること。
【解決手段】貼付剤は、支持体と、この支持体上に位置する粘着剤層とを備え、この粘着剤層は、リドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩と、12以下のHLB値を有する界面活性剤と、水と、を含有する。粘着剤層は、N−メチル−2−ピロリドンを更に含有することが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】貼付剤は、支持体と、この支持体上に位置する粘着剤層とを備え、この粘着剤層は、リドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩と、12以下のHLB値を有する界面活性剤と、水と、を含有する。粘着剤層は、N−メチル−2−ピロリドンを更に含有することが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、リドカインを含有する貼付剤に関する。
近年、薬物の経口投与、注射による静脈投与等に代わり、経皮投与のため、粘着剤に薬物を配合した膏体が支持体上に位置する貼付剤がさかんに開発されている。貼付剤は、皮膚に貼付してから剥がすまでの間、長時間に亘って略一定量の薬物を経皮吸収させることが望ましい場合が多く、貼付剤の開発にあたっては、薬物の経皮吸収量の一定化が重要な問題である。
貼付剤には、水を含有する貼付剤(パップ剤)、及び非水性の貼付剤(テープ剤、プラスター剤等)の二つのタイプがある。このうち、非水性の貼付剤については、幾つかの試みが開示されており、例えば、非特許文献1(p62左欄下から10行目〜p64左欄下から4行目)では、粘着剤中に、溶解している薬物と、結晶の薬物とが均一に分散した貼付剤が開示されている。この貼付剤は、皮膚に貼付されると、溶解した薬物が皮膚へ移行するとともに、減少した粘着剤層中の薬物を補うために、結晶の薬物が溶解し拡散して、粘着剤層中の薬物濃度が一定に保たれる、いわゆる結晶レジボアシステムを採用することにより、粘着剤層から放出される薬物(ツロブテロール)の量を一定化している。
YAKUGAKU ZASSHI 122(1)57−69(2002)
他方、水を含有する貼付剤(パップ剤)は非水性の貼付剤にない優れた特性を有するものの、皮膚に貼付されると経時的に水分が蒸発して、薬物の経皮吸収性が変化してしまう問題を依然として有している。このため、パップ剤の有用性を充分に発揮できないというのが現状である。
かかる現状は、局所麻酔薬、不整脈薬であるリドカインを含有する貼付剤に関しても同様である。水を含有するリドカイン貼付剤として、例えば、水溶性高分子物質、水、保湿剤等からなる粘着剤に、リドカイン1〜10質量%程度を配合してなる粘着剤層を有するものが従来開示されている。しかし、この貼付剤では、粘着剤層中の水含量が少なくなると、リドカインの経皮吸収性が変化してしまうという問題があり、リドカインの経皮吸収性の一定化という観点で、満足のいくものではない。
このような背景から、リドカインを含有する貼付剤としては、リドカインの経皮吸収性が水含有量の大小によって変化を受けにくい水含有貼付剤が求められていた。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、リドカインの経皮吸収性が水含有量の大小によって変化を受けにくい貼付剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定の界面活性剤を配合することで、リドカインの経皮吸収性が水含有量の大小によって変化を受けにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 支持体と、この支持体上に位置する粘着剤層と、を備える貼付剤であって、
前記粘着剤層は、リドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩と、12以下のHLB値を有する界面活性剤と、水と、を含有する貼付剤。
前記粘着剤層は、リドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩と、12以下のHLB値を有する界面活性剤と、水と、を含有する貼付剤。
(2) 前記粘着剤層は、N−メチル−2−ピロリドンを更に含有する(1)記載の貼付剤。
(3) 水を前記粘着剤層の全質量に対し70質量%以下の量で配合してなる(1)又は(2)記載の貼付剤。
(4) 前記粘着剤層の全質量に対し10質量%以上の量でグリセリンを更に配合してなる(1)から(3)いずれか記載の貼付剤。
(5) 12以下のHLB値を有する界面活性剤を含有する、貼付剤の粘着剤層の水含有量の大小によるリドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩の経皮吸収性の変化を抑制する経皮吸収性変化抑制剤。
(6) N−メチル−2−ピロリドンを更に含有する(5)記載の経皮吸収性変化抑制剤。
(7) 貼付剤の粘着剤層に、リドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩と水とともに、12以下のHLB値を有する界面活性剤を配合することで、水含有量の大小によるリドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩の経皮吸収性の変化を抑制する方法。
(8) 前記粘着剤層にN−メチル−2−ピロリドンを更に配合する(7)記載の方法。
本発明によれば、貼付剤の粘着剤層に、リドカイン類及び水とともに、12以下のHLB値を有する界面活性剤を配合したので、リドカイン類の経皮吸収性が水含有量の大小によって変化を受けにくくすることができる。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明を限定する趣旨ではない。
本発明に係る貼付剤は、支持体と、この支持体上に位置する粘着剤層とを備え、この粘着剤層は、リドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩と、12以下のHLB値を有する界面活性剤と、水と、を含有する。各要素の詳細を以下説明する。
[粘着剤層]
リドカインは、帯状疱疹後神経痛等の持続性疼痛の緩和薬、局所麻酔薬、抗不整脈薬として日本薬局方に収載されているように、有用な薬物である。
リドカインは、帯状疱疹後神経痛等の持続性疼痛の緩和薬、局所麻酔薬、抗不整脈薬として日本薬局方に収載されているように、有用な薬物である。
粘着剤層に含有されるリドカインは、主に遊離形態であるが、薬理学的に許容できる塩の形態であってもよい。薬理学的に許容できる塩は、特に限定されないが、塩酸塩であることが好ましい。
リドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩(以下、リドカイン類とも称する)の配合量は、特に限定されないが、多すぎると、リドカイン類が激しく析出し、製剤中に保持するのが困難である一方、少なすぎると、十分な作用が得られにくい。そこで、リドカイン類の配合量は、粘着剤層の全質量に対し0.1質量%〜50質量%、好ましくは1.0質量%〜30質量%、更に好ましくは3質量%〜10質量%、最も好ましくは5質量%である。
本発明者は、リドカイン類の経皮吸収性が水含有量の大小に影響されやすいことを発見するとともに、12以下のHLB値を有する界面活性剤を配合することで、リドカインの経皮吸収性が水含有量の大小によって変化を受けにくくすることができることを見出した。
この効果が得られる機構は、HLB12以下という親油性の界面活性剤の作用により、リドカイン類は粘着剤層中の非連続油相へと分配されやすいため、水含有量の低下により連続水相が変化しても、影響されにくいことによると推測される。したがって、本発明で使用し得る界面活性剤のHLB値の下限は、当該界面活性剤が有するHLB以外の他の側面を考慮し適宜選択されるものである。
12以下のHLB値を有する界面活性剤としては、
自己乳化型ステアリン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、自己乳化型ステアリン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステル、
ミリスチン酸グリセリル、親油型モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、親油型モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸、モノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、モノステアリン酸エチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、モノイソステアリン酸グリセリル、親油型モノオレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、
モノステアリン酸ポリグリセリル、モノオレインサンポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリル、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、等のポリグリセリン脂肪酸エステル、
ヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、等のソルビタン脂肪酸エステル、
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)(別名:ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(6E.O.)、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)(別名:ポリソルベート85)、等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、
PEG−5水添ヒマシ油(商品名:NIKKOL HCO−5)、PEG−10水添ヒマシ油(商品名:NIKKOL HCO−10)、PEG−20水添ヒマシ油(商品名:NIKKOL HCO−20)、PEG−30水添ヒマシ油(商品名:NIKKOL HCO−30)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、
ポリオキシエチレンフィトステロール等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、
ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル(3E.O.)(商品名:NIKKOL BT−3)、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル(商品名:NIKKOL BT−5)、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル(商品名:NIKKOL BT−7)、等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(10E.O.)(4P.O.)(商品名:NIKKOL PBC−33)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(1E.O.)(8P.O.)(商品名:NIKKOL PBC−41)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル(商品名:NIKKOL PEN−4612、NIKKOL PEN−4620、NIKKOL PEN−4630)、等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸(商品名:NIKKOL DDP−2、NIKKOL DDP−4、NIKKOL DDP−6、NIKKOL DDP−8、NIKKOL TDP−2、NIKKOL TDP−6、NIKKOL TDP−8)等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩、
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(商品名:NIKKOL MYS−10V)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(商品名:NIKKOL MYO−6V、NIKKOL MYO−10V、EGMS−70V)、ジイソステアリン酸PEG−8(商品名:NIKKOL CDIS−400)等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、
その他、ステアロイル乳酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて含んでよい。
自己乳化型ステアリン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、自己乳化型ステアリン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステル、
ミリスチン酸グリセリル、親油型モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、親油型モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸、モノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、モノステアリン酸エチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、モノイソステアリン酸グリセリル、親油型モノオレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、
モノステアリン酸ポリグリセリル、モノオレインサンポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、グリセリン脂肪酸エステル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリル、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、等のポリグリセリン脂肪酸エステル、
ヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、等のソルビタン脂肪酸エステル、
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)(別名:ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(6E.O.)、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)(別名:ポリソルベート85)、等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、
PEG−5水添ヒマシ油(商品名:NIKKOL HCO−5)、PEG−10水添ヒマシ油(商品名:NIKKOL HCO−10)、PEG−20水添ヒマシ油(商品名:NIKKOL HCO−20)、PEG−30水添ヒマシ油(商品名:NIKKOL HCO−30)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、
ポリオキシエチレンフィトステロール等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、
ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル(3E.O.)(商品名:NIKKOL BT−3)、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル(商品名:NIKKOL BT−5)、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル(商品名:NIKKOL BT−7)、等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(10E.O.)(4P.O.)(商品名:NIKKOL PBC−33)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(1E.O.)(8P.O.)(商品名:NIKKOL PBC−41)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル(商品名:NIKKOL PEN−4612、NIKKOL PEN−4620、NIKKOL PEN−4630)、等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸(商品名:NIKKOL DDP−2、NIKKOL DDP−4、NIKKOL DDP−6、NIKKOL DDP−8、NIKKOL TDP−2、NIKKOL TDP−6、NIKKOL TDP−8)等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩、
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(商品名:NIKKOL MYS−10V)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(商品名:NIKKOL MYO−6V、NIKKOL MYO−10V、EGMS−70V)、ジイソステアリン酸PEG−8(商品名:NIKKOL CDIS−400)等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、
その他、ステアロイル乳酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて含んでよい。
界面活性剤の配合量は、リドカイン類の配合量等に応じて適宜設定されてよいが、一般的には、粘着剤層の全質量に対し0.1質量%以上10.0質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上1.0質量%以下であってよい。
本発明に係る貼付剤の粘着剤層は、N−メチル−2−ピロリドンを更に含有することが好ましい。これにより、水含有量の大小によるリドカイン類の経皮吸収性の変化をより抑制することができる。この効果は、N−メチル−2−ピロリドンによってリドカイン類の溶解性が向上し、粘着剤層中の非連続油相への移行が促進されることによると推測される。
N−メチル−2−ピロリドンの配合量は、リドカイン類及び界面活性剤の配合量等に応じて適宜設定されてよいが、多すぎると、N−メチル−2−ピロリドンが粘着剤から相分離し、液体成分が染み出るブリーディング現象が生じやすい一方、少なすぎると、上記効果が不充分になったり、リドカイン類が析出したりしやすい。そこで、N−メチル−2−ピロリドンの配合量は、粘着剤層の全質量に対し、一般的には0.01質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上5質量%以下、最も好ましくは2.0質量%以上3.0質量%以下である。
前述のように、リドカイン類の経皮吸収性が水含有量の大小により影響されにくいことから、本発明の貼付剤では、水の配合量の自由度が極めて大きく、幅広い範囲から適宜選択することができる。ただし、水の配合量は、多すぎると、後述のグリセリン等の他の有用成分の配合量が制限され、貼付剤を皮膚から剥離する際に使用者に与える痛みが大きくなりやすい一方、少なすぎると、他成分(例えばグリセリン等)の配合量が嵩み、製造コストが増したり、ブリーディング等が生じやすくなったりし得る。そこで水の配合量は、粘着剤層の全質量に対し5質量%以上70質量%以下であってよく、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは20質量%以上30質量%以下である。特に、水の配合量が粘着剤層の全質量に対し30質量%以下と小さい場合には、リドカイン類の皮膚透過性が、HLB値の大きい界面活性剤を使用すると大きく低下するが、本発明の界面活性剤を使用すると影響を受けにくい。
粘着剤層は、上記成分の他に、必要に応じてポリアクリル酸及び/又はその塩等の賦形剤、架橋剤、架橋コントロール剤、粘着増強剤、保湿剤、リドカイン類の溶解助剤、pH調節剤、清涼化剤、水溶性高分子化合物、無機粉体、酸化防止剤、防腐剤、色素等が挙げられる。
粘着剤層のpHは、4.5未満であると皮膚への移行性が悪くなる。そこで、粘着剤層のpHは4.5以上であることが望まれるが、このように弱酸性のpH域では一般に使用される架橋剤とは異なるもの、具体的にはジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート(別名;アルミニウムグリシネート)を使用することが好ましい。ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートのアルミニウムは、弱酸性から中性付近にて良好に溶出し、後述のポリアクリル酸(塩)等と良好に架橋反応することができる。
なお、架橋剤としては、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートに限られず、多価金属塩が挙げられ、その中でもアルミニウム化合物が好ましい。アルミニウム化合物としては、前述のジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、水酸化アルミニウムのような水酸化物、あるいは塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウムのような無機酸または有機酸の塩、アルミニウム明ばんのような複塩、アルミン酸ナトリウムのようなアルミン酸塩、無機性アルミニウム錯塩および有機性アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。これらのアルミニウム化合物は水溶性であっても、難溶性であってもよい。
また、架橋剤として水酸化アルミニウムゲルを用いてもよいが、この場合にはpHが4.5以上6.0以下であることが好ましい。pHが6.0を超えると、水酸化アルミニウムゲルのアルミニウムが溶出しにくく、粘着剤の架橋反応が不充分で保型性が悪化しやすい。これに対し、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートを用いる場合、粘着剤層のpHは6.0超であってよい。
なお、pHはpH調整剤を用いて設定することができ、かかるpH調整剤としては、酒石酸、リン酸、リンゴ酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて含まれてよいが、酒石酸が好ましい。
ポリアクリル酸及び/又はその塩としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物「NP−800(商品名)」及び「NP−700(商品名)」(昭和電工社製)などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて含まれてよい。
粘着増強剤としては、メタクリル酸・アクリル酸n−ブチル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、ポリブテン、エステルガム、テルペン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。その配合量は、粘着剤層の全質量に対し5質量%以上30質量%以下であってよく、好ましくは7質量%以上20質量%以下である。
架橋コントロール剤としては、エデト酸ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)、クエン酸等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて含まれてよいが、エデト酸ナトリウムが好ましい。
保湿剤としては、濃グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、マルチトール、キシリトール等の多価アルコール等、流動パラフィンが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて含まれてよいが、中でも、濃グリセリンが好ましく、その配合量は水の配合量に応じて適宜設定されてよいが、粘着剤層の全質量に対し10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、最も好ましくは30質量%以上である。なお、グリセリンの配合量の上限は、製造コストやブリーディングの生じやすさ等を考慮して適宜設定されてよい。
リドカイン類の溶解助剤としては、クロタミトン、N−メチル−2−ピロリドン以外のピロリドン誘導体、ハッカ油、1,3−ブチレングリコール等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて含まれてよい。
清涼化剤としては、カンフル、チモールの他、l−メントール、dl−メントール、2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、5−メチル−2−(l−メチルエチル)−シクロヘキシル−2−ヒドロキシプロピオネート等のメントール誘導体等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて含まれてよい。
水溶性高分子化合物としては、ゼラチン、カンテン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プロピレンカーボネート、カルボキシメチルセルロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、無水マレイン酸共重合体、カラギーナン等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて含まれてよい。
無機粉体としては、例えばカオリン、酸化亜鉛、酸化チタン、無水ケイ酸等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて含まれてよい。
酸化防止剤としては、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸及び/又はその誘導体、亜硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて含まれてよい。
防腐剤としては、メチルパラベン、ブチルバラベン、プロピルパラベン、チモール等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて含まれてよい。
色素としては、その種類は特に限定されず、法定色素ハンドブック記載の色素が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
[支持体]
支持体は、従来から知られている貼付剤に用いられる織布、不織布、編布などの布帛、樹脂フィルム、紙及び、それらの積層体で構成されてよい。支持体の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート、レイヨン、綿、ポリウレタンからなる群から選ばれる1種または2種以上であってよく、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。コストの面からは、ポリエチレンテレフタレートからなる不織布で構成された支持体が好ましく用いられる。また、樹脂フィルムを用いる場合には、白色、肌色等の塗料を印刷し又は練り込んで着色を施したり、文字等を記入したりした支持体を用いてもよく、粘着剤の投錨性を向上するために、ポリウレタン処理や、艶消し処理等を施した支持体を使用することもできる。
支持体は、従来から知られている貼付剤に用いられる織布、不織布、編布などの布帛、樹脂フィルム、紙及び、それらの積層体で構成されてよい。支持体の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリエチレンテレフタレート、レイヨン、綿、ポリウレタンからなる群から選ばれる1種または2種以上であってよく、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。コストの面からは、ポリエチレンテレフタレートからなる不織布で構成された支持体が好ましく用いられる。また、樹脂フィルムを用いる場合には、白色、肌色等の塗料を印刷し又は練り込んで着色を施したり、文字等を記入したりした支持体を用いてもよく、粘着剤の投錨性を向上するために、ポリウレタン処理や、艶消し処理等を施した支持体を使用することもできる。
[剥離ライナ]
本発明に係る貼付剤は、粘着剤層を被覆する剥離ライナを更に備えてもよい。かかる剥離ライナとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロリピレン等の樹脂フィルムが好ましく、シリコン等の剥離処理をしたもの、エンボス加工を施したものを用いてもよい。また、白色等の塗料を印刷し又は練り込んだものを剥離ライナとして用いることもできる。
本発明に係る貼付剤は、粘着剤層を被覆する剥離ライナを更に備えてもよい。かかる剥離ライナとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロリピレン等の樹脂フィルムが好ましく、シリコン等の剥離処理をしたもの、エンボス加工を施したものを用いてもよい。また、白色等の塗料を印刷し又は練り込んだものを剥離ライナとして用いることもできる。
(調製方法)
本発明の貼付剤は、従来の方法で調製することができ、上記必須成分及び必要に応じて上記任意成分を適宜配合して公知の方法で均一になるまで練合し、貼付剤単位面積当りにおける粘着剤質量が0.03〜0.15g/cm2になるように剥離ライナに展延した後、その粘着剤層の表面にさらに支持体を積層し、次いで100mm×140mmの矩形状に裁断して調製することができる。また、支持体上に先に粘着剤を展延した後、剥離ライナをその上に積層することによって調製することもできる。
本発明の貼付剤は、従来の方法で調製することができ、上記必須成分及び必要に応じて上記任意成分を適宜配合して公知の方法で均一になるまで練合し、貼付剤単位面積当りにおける粘着剤質量が0.03〜0.15g/cm2になるように剥離ライナに展延した後、その粘着剤層の表面にさらに支持体を積層し、次いで100mm×140mmの矩形状に裁断して調製することができる。また、支持体上に先に粘着剤を展延した後、剥離ライナをその上に積層することによって調製することもできる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明が実施例に限定されるものではない。
<実施例1〜6>
各実施例及び比較例について、表1に示す各成分(2通り)を一定時間に亘って撹拌し混合した後、剥離ライナ上に、貼付剤1枚当り(140mm×100mm)の粘着剤質量が約14gになるように均一に展延した。その後、粘着剤層の表面にポリエチレンテレフタレート製不織布を貼り合わせ、次いで100mm×140mmの大きさに裁断することで、貼付剤を調製した。なお、各実施例及び比較例で用いた界面活性剤は、表2に示すとおりである。
各実施例及び比較例について、表1に示す各成分(2通り)を一定時間に亘って撹拌し混合した後、剥離ライナ上に、貼付剤1枚当り(140mm×100mm)の粘着剤質量が約14gになるように均一に展延した。その後、粘着剤層の表面にポリエチレンテレフタレート製不織布を貼り合わせ、次いで100mm×140mmの大きさに裁断することで、貼付剤を調製した。なお、各実施例及び比較例で用いた界面活性剤は、表2に示すとおりである。
(試験例)リドカインの皮膚透過性
縦型拡散セルにセットしたヘアレスマウス摘出皮膚(日本エスエルシー社より購入)の真皮層側のレシーバに0.05mol/L McIlvaine buffer(pH7.4)を1.2mL入れ、角質層側のドナーに各貼付剤及び市販品(「リドダーム」(帝国製薬社製))の1.77cm2片の粘着剤層を貼付した。その後24時間に亘り、所定時間ごとにレシーバ液0.6mLを採取し、レシーバ液中のリドカイン濃度をHPLC法で測定した。なお、0.6mL採取した後には、レシーバに新しい0.05mol/L McIlvaine bufferを0.6mL補充した。各時点で測定したリドカイン濃度を合算した24時間でのリドカインの累積透過量を図1に示す。また、各時点で測定したリドカイン濃度を合算した24時間でのリドカインの累積透過量を実施例6及び比較例5について対比したものを図2に示す。
縦型拡散セルにセットしたヘアレスマウス摘出皮膚(日本エスエルシー社より購入)の真皮層側のレシーバに0.05mol/L McIlvaine buffer(pH7.4)を1.2mL入れ、角質層側のドナーに各貼付剤及び市販品(「リドダーム」(帝国製薬社製))の1.77cm2片の粘着剤層を貼付した。その後24時間に亘り、所定時間ごとにレシーバ液0.6mLを採取し、レシーバ液中のリドカイン濃度をHPLC法で測定した。なお、0.6mL採取した後には、レシーバに新しい0.05mol/L McIlvaine bufferを0.6mL補充した。各時点で測定したリドカイン濃度を合算した24時間でのリドカインの累積透過量を図1に示す。また、各時点で測定したリドカイン濃度を合算した24時間でのリドカインの累積透過量を実施例6及び比較例5について対比したものを図2に示す。
図1に示されるように、比較例1〜4では、リドカインの皮膚透過性が、水配合量50質量%のときには良好であるのに対し、水配合量28質量%のときには大きく低下していた。これに対し、実施例1〜6では、リドカインの皮膚透過性が、水配合量50質量%のときと、28質量%のときとの間でほぼ同様であった。また、図2に示されるように、比較例5では、リドカインの皮膚透過性が、水配合量28質量%のときには良好であるのに対し、水配合量52質量%のときには大きく低下していた。これに対し、実施例6では、リドカインの皮膚透過性が、水配合量50質量%のときと、28質量%のときとの間でほぼ同様であった。これにより、12以下のHLBを有する界面活性剤を、好ましくはN−メチル−2−ピロリドンとともに配合することで、リドカイン類の経皮吸収性が水含有量の大小によって変化を受けにくくすることができることが確認された。したがって、使用後の時間経過等により水含有量が低下しても、リドカイン類の皮膚透過量は大きく変化しないことが強く示唆される。
Claims (8)
- 支持体と、この支持体上に位置する粘着剤層と、を備える貼付剤であって、
前記粘着剤層は、リドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩と、12以下のHLB値を有する界面活性剤と、水と、を含有する貼付剤。 - 前記粘着剤層は、N−メチル−2−ピロリドンを更に含有する請求項1記載の貼付剤。
- 水を前記粘着剤層の全質量に対し70質量%以下の量で配合してなる請求項1又は2記載の貼付剤。
- 前記粘着剤層の全質量に対し10質量%以上の量でグリセリンを更に配合してなる請求項1から3いずれか記載の貼付剤。
- 12以下のHLB値を有する界面活性剤を含有する、貼付剤の粘着剤層の水含有量の大小によるリドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩の経皮吸収性の変化を抑制する経皮吸収性変化抑制剤。
- N−メチル−2−ピロリドンを更に含有する請求項5記載の経皮吸収性変化抑制剤。
- 貼付剤の粘着剤層に、リドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩と水とともに、12以下のHLB値を有する界面活性剤を配合することで、水含有量の大小によるリドカイン及び/又はその薬理学的に許容できる塩の経皮吸収性の変化を抑制する方法。
- 前記粘着剤層にN−メチル−2−ピロリドンを更に配合する請求項7記載の方法。
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