JP2016216384A - 経皮吸収型製剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】関節リウマチの予防または治療において、経口投与に伴って生じうる副作用を回避しつつ、優れた薬理効果を発揮させることが可能な、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の新規投与手段を提供する。【解決手段】支持体と薬物含有層とを有する経皮吸収型製剤であって、該薬物含有層が、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤および吸収促進剤を含有し、該粘着剤がアクリル系樹脂およびゴム系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する、経皮吸収型製剤。【選択図】なし
Description
本発明は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する経皮吸収型製剤に関するものであって、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の経皮投与による関節リウマチの予防手段または治療手段を提供する。
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は慢性の炎症性疾患であり、関節滑膜を中心に関節炎が起こってくる自己免疫疾患である。関節炎が持続することにより関節痛が生じたり、関節軟骨および骨の破壊を介して関節の変形が生じたりするなど、機能障害が引き起こされる。関節機能障害は、日常労作の障害、ひいては生活の質の低下へとつながっていく。関節機能障害の発病当初は、可逆的な治療経過をとるが、関節破壊が出現した後は不可逆的となることが多い。骨びらんなどの関節破壊は、発症後6か月以内に出現することが多く、進行も病初期が顕著である。
関節リウマチの治療としては、従来から非ステロイド性抗炎症薬やステロイドなどによる対症療法が行われてきたが、近年、初期段階からメトトレキサート(MTX)をはじめとする疾患修飾性抗リウマチ薬が使用されるようになり、さらにこれらの治療で不十分な患者には、抗ヒト腫瘍壊死因子薬(TNFα阻害薬)、サイトカイン阻害薬(IL―6受容体阻害薬など)などの生物学的製剤が使用されている。生物学的製剤の登場は、関節リウマチの治療に進歩をもたらしたが、日常診療で一般的に使用されるに従い、治療抵抗性や2次無効の患者がいること、注射製剤であること、感染症などの副作用の問題が明らかになり、さらに新しい関節リウマチ治療薬が望まれている。
トファシチニブ(化合物名:3−((3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]−ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル)−3−オキソプロピオニトリル)は、細胞内に存在するチロシンキナーゼの一種「ヤヌスキナーゼ」(JAK)を阻害することで炎症を抑制する新機序の関節リウマチ治療薬で、ヤヌスキナーゼ阻害薬(JAK阻害薬)と呼ばれている(特許文献1)。細胞内に存在するJAKは、関節リウマチにおける炎症性サイトカインなどの産生に深く関与しており、トファシチニブはこのJAKが関与する細胞内のシグナル伝達経路(JAK Pathway)を阻害し、抗炎症作用を発揮することが特徴である(非特許文献1)。トファシチニブは下記式(I)の化学構造を有する公知の化合物である。
トファシチニブは、2012年11月に米国において、メトトレキサート効果不十分または不耐性の中等度から重度の活動性関節リウマチの患者の治療薬として、5mg×2回/日の投与方法で承認され、日本においては、既存治療薬で効果不十分な関節リウマチを適応症に5mg×2回/日の投与方法で承認され、2013年7月より発売されている(商品名:ゼルヤンツ(登録商標))。現在までに得られている臨床試験データに基づくと、本剤の関節リウマチ患者に対する症状徴候の改良効果は既存の生物学的製剤に匹敵するものと考えられるが、更なるアドヒアランス向上の観点から、投与回数を1回/日にすることが望まれている。
トファシチニブの1日1回投与の医薬剤形として、持続放出剤形が提案されている(特許文献2)。しかしながら、経口製剤であり、消化不良や悪心・嘔吐など、経口投与に伴う副作用が懸念される。
一方、トファシチニブのような薬物を経皮吸収型製剤化することは、経口投与に比較して、より持続的に血中薬物濃度を維持することを可能とし、また、初回通過効果が回避されるため、肝臓における代謝を低減することや薬物相互作用を低減できることから、有用な薬物投与方法として期待されている。また、経皮吸収型製剤による投与では、食事の影響を受けないことや、嚥下困難な患者への投与が可能であること、投薬の確認及び中断が容易であること、血中濃度ピーク起因の副作用を低減できること等、多くの優れた点がある。
関節リウマチ治療薬の経皮吸収型製剤は過去の文献(特許文献3、特許文献4、および特許文献5)に記載されているが、具体的な内容は一切開示されていない。
トファシチニブの経皮投与方法も提案されているが(特許文献6)、局所製剤を目的とした軟膏製剤の具体例の提示に留まり、支持体と薬物含有層とを有する経皮吸収型製剤についての開示はない。
ゼルヤンツ錠インタビューフォーム(2014年6月改訂第5版)
本発明は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する経皮吸収型製剤を提案し、アドヒアランスが高く、副作用の少ない関節リウマチ治療の予防または治療に有効な新規投与手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、従来経口投与されていたトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を経皮吸収型製剤として投与することが可能であることを見出し、さらにトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の皮膚透過速度を適切に制御することにより、関節リウマチの予防または治療に有効な量のトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を経皮吸収させ、トファシチニブの血中濃度を一定以上に維持することができることを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]支持体と薬物含有層とを有する経皮吸収型製剤であって、該薬物含有層が、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤および吸収促進剤を含有し、該粘着剤がアクリル系樹脂およびゴム系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する、経皮吸収型製剤。
[2]前記吸収促進剤が、N−メチルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、ポリビニルピロリドン、および炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の経皮吸収型製剤。
[3]前記吸収促進剤が、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の経皮吸収型製剤。
[4]前記炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLB値が10〜16である、[2]または[3]に記載の経皮吸収型製剤。
[5]前記薬物含有層が、さらに塩基性化合物を含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[6]前記塩基性化合物が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEである、[5]に記載の経皮吸収型製剤。
[7]前記アクリル系樹脂が、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとN−ビニル−2−ピロリドンをモノマー単位として含有する共重合体である、[1]〜[6]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[8]剥離ライナーをさらに有し、支持体、薬物含有層、および剥離ライナーの順に積層されている、[1]〜[7]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[9]前記[1]に記載される経皮吸収型製剤の製造方法であって、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤および吸収促進剤を含む混合物を調製し、この混合物を剥離ライナー上に塗布(展延)して薬物含有層を形成し、この薬物含有層に支持体を貼り合わせることを含む、製造方法。
[1]支持体と薬物含有層とを有する経皮吸収型製剤であって、該薬物含有層が、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤および吸収促進剤を含有し、該粘着剤がアクリル系樹脂およびゴム系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する、経皮吸収型製剤。
[2]前記吸収促進剤が、N−メチルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、ポリビニルピロリドン、および炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の経皮吸収型製剤。
[3]前記吸収促進剤が、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の経皮吸収型製剤。
[4]前記炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLB値が10〜16である、[2]または[3]に記載の経皮吸収型製剤。
[5]前記薬物含有層が、さらに塩基性化合物を含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[6]前記塩基性化合物が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEである、[5]に記載の経皮吸収型製剤。
[7]前記アクリル系樹脂が、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとN−ビニル−2−ピロリドンをモノマー単位として含有する共重合体である、[1]〜[6]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[8]剥離ライナーをさらに有し、支持体、薬物含有層、および剥離ライナーの順に積層されている、[1]〜[7]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[9]前記[1]に記載される経皮吸収型製剤の製造方法であって、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤および吸収促進剤を含む混合物を調製し、この混合物を剥離ライナー上に塗布(展延)して薬物含有層を形成し、この薬物含有層に支持体を貼り合わせることを含む、製造方法。
本発明によれば、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を経皮吸収型製剤化することにより、トファシチニブの血中濃度を、関節リウマチの治療または予防に有効であり、かつ副作用を生じない一定のレベルに維持することが実現できる。そのため、血中濃度の変動に起因する副作用(例えば、悪心・嘔吐、感染症など)を回避しながら関節リウマチの予防または治療を行うことが可能になる。仮に副作用の兆候が認められた場合には、経皮吸収型製剤をすぐに皮膚から剥離することにより、直ちに投与を中止できる。更に、目視による投薬確認が可能になり、一日一回の投与が可能になることから、服薬アドヒアランスの向上も期待できる。
また、本発明の経皮吸収型製剤は、特許文献6に記載されている軟膏剤と比較して、手を汚さず皮膚へ貼付でき、薬剤を定量的かつ長時間持続的に投与できるという利点がある。
本発明において経皮吸収型製剤とは、非経口製剤であって、有効成分が皮膚を通して吸収され血流に送達されるものをいう。本発明の経皮吸収型製剤は、支持体と薬物含有層とを有する貼付剤であり、例えばテープ剤、パップ剤、プラスター剤などが挙げられる。
本発明の経皮吸収型製剤は、薬物含有層に粘着剤を含有するマトリックス型貼付製剤であってもよいが、薬物含有層の皮膚貼付側に、薬剤の経皮吸収を調節するための放出制御膜および皮膚へ貼付するための粘着層をさらに有するリザーバー型貼付製剤であってもよい。これらの構成により、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を効率的に経皮吸収させることが可能となる。
製剤設計および製造の容易さの観点から、マトリックス型貼付製剤であることが好ましい。以下、マトリックス型貼付製剤を例に本発明の構成を説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
本明細書において、「を含有する」または「を含む」には、「から本質的になる」または「のみからなる」の意味も包含する。
<薬物含有層>
1.有効成分
本発明の経皮吸収型製剤において、薬物含有層は、有効成分としてトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を含有する。トファシチニブは細胞内に存在するチロシンキナーゼの一種「ヤヌスキナーゼ」(JAK)を阻害することで炎症を抑制する関節リウマチ治療薬で、ヤヌスキナーゼ阻害薬(JAK阻害薬)と呼ばれている。細胞内に存在するJAKは、関節リウマチにおける炎症性サイトカインなどの産生に深く関与しており、トファシチニブはこのJAKが関与する細胞内のシグナル伝達経路(JAK Pathway)を阻害し、抗炎症作用を発揮することが特徴である。
1.有効成分
本発明の経皮吸収型製剤において、薬物含有層は、有効成分としてトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を含有する。トファシチニブは細胞内に存在するチロシンキナーゼの一種「ヤヌスキナーゼ」(JAK)を阻害することで炎症を抑制する関節リウマチ治療薬で、ヤヌスキナーゼ阻害薬(JAK阻害薬)と呼ばれている。細胞内に存在するJAKは、関節リウマチにおける炎症性サイトカインなどの産生に深く関与しており、トファシチニブはこのJAKが関与する細胞内のシグナル伝達経路(JAK Pathway)を阻害し、抗炎症作用を発揮することが特徴である。
「関節リウマチ」とは、慢性の炎症性疾患であり、関節滑膜を中心に関節炎が起こる自己免疫疾患である。関節炎が持続することにより関節痛が生じたり、関節軟骨および骨の破壊を介して関節の変形が生じたりするなど、機能障害が引き起こされる。関節機能障害の発病当初は、可逆的な治療経過をとるが、関節破壊が出現した後は不可逆的となることが多い。骨びらんなどの関節破壊は、発症後6か月以内に出現することが多く、進行も病初期が顕著である。
本明細書において、関節リウマチの予防または治療とは、ヒトなどの対象において、関節リウマチの発症の遅延もしくは抑制、発症後の病的状態の治療、発症後の再発の遅延もしくは抑制をいう。
本発明においてトファシチニブは、フリー体であってもよく、また薬学的に許容される塩であってもよい。薬学的に許容される塩としては、例えば、無機酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩など;および有機酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、カンファー酸塩、アジピン酸塩、ソルビン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、フタル酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、コハク酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、パモ酸塩、p−トルエンスルホン酸塩(トシレート)、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)などが挙げられ、これらに限定されない。
トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩は、結晶の形態で使用されてもよく、該結晶は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩のみから形成されていても、共結晶や溶媒和物(例えば水和物、好ましくは一水和物)を形成していてもよい。トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩は、いずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。本発明では、関節リウマチ薬として、既に経口投与における有効性と安全性が確立されているトファシチニブクエン酸塩を用いることが好ましい。
本発明の経皮吸収型製剤におけるトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の含有量は、関節リウマチの予防または治療に対する有効量である。ここで有効量とは、本発明の経皮吸収型製剤を生体の皮膚に適用した場合に、関節リウマチの予防または治療に有効なトファシチニブの血中濃度を達成しうる量である。そのような含有量は、経口投与の薬物動態に関する情報に基づいて適宜調整することができ、投与対象、疾患、症状などにより異なりうる。例えば、薬物含有層に対して(即ち、薬物含有層の全質量を基準として;以下同じ)1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましく、1〜20質量%がさらに好ましい。
関節リウマチの予防または治療に有効なトファシチニブの血中濃度は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の経口薬の場合と同程度とすることができる。
本発明の経皮吸収型製剤において、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の皮膚透過速度を調整することによって、関節リウマチの予防または治療に有効な血中濃度を達成することができる。皮膚透過速度の調整は、薬物含有層中のトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の含有量を調整すること、後述の吸収促進剤を薬物含有層に添加することなどの、任意の手段によって行うことができる。なお、本発明においてトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の皮膚透過速度とは、後述の実施例に記載するインビトロ皮膚透過性試験により測定される値を意味する。
トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の皮膚透過速度は、通常0.1〜30μg/cm2/時間であり、好ましくは0.2〜20μg/cm2/時間である。皮膚透過速度が0.1μg/cm2/時間以上であれば、十分な血中濃度を得ることができる。皮膚透過速度が30μg/cm2/時間以下であれば、血中濃度が高くなりすぎず、安全性の観点から好ましい。
2.塩基性化合物
薬物含有層は、さらに塩基性化合物を含有していてもよい。特に、トファシチニブの薬学的に許容される塩として酸付加塩を用いる場合には、薬物含有層中に塩基性化合物を含有させることが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、塩基性窒素を含有する低分子化合物(例えば、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類);塩基性窒素を含有する高分子化合物(例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピリジン等);塩基性アルカリ金属塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等);アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)などが挙げられる。また、オイドラギットシリーズ(オイドラギットE100、オイドラギットEPO:エボニックインダストリー社製)などの市販の塩基性アクリル系樹脂を使用してもよい。なかでも、塩基性窒素を含有する高分子化合物、エタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましく、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEがより好ましい。
薬物含有層は、さらに塩基性化合物を含有していてもよい。特に、トファシチニブの薬学的に許容される塩として酸付加塩を用いる場合には、薬物含有層中に塩基性化合物を含有させることが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、塩基性窒素を含有する低分子化合物(例えば、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類);塩基性窒素を含有する高分子化合物(例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピリジン等);塩基性アルカリ金属塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等);アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)などが挙げられる。また、オイドラギットシリーズ(オイドラギットE100、オイドラギットEPO:エボニックインダストリー社製)などの市販の塩基性アクリル系樹脂を使用してもよい。なかでも、塩基性窒素を含有する高分子化合物、エタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましく、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEがより好ましい。
このような塩基性化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。塩基性化合物の含有量は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩(特に酸付加塩)の当量に対して0.5〜10当量であることが好ましく、0.7〜5当量であることがより好ましい。また、塩基性化合物の含有量は、薬物含有層に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、0.1〜40質量%であることがより好ましく、0.1〜30質量%であることがさらに好ましい。このような塩基性化合物を含有することにより、塩基性化合物がトファシチニブの薬学的に許容される塩(特に、酸付加塩)に作用し、トファシチニブ塩の皮膚透過性が向上する。特に、塩基性化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、上記範囲外である場合と比較して皮膚透過性の向上効果がより顕著になる。
3.吸収促進剤
薬物含有層は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の皮膚透過性向上のため、吸収促進剤をさらに含有してもよい。吸収促進剤は、経皮投与において皮膚透過促進作用が認められているいずれの化合物であってもよく、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、グリセリンオレイン酸モノエステル、イソステアリン酸ヘキサデシルなどの脂肪酸またはそのエステル類;乳酸、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、グリコール酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、サッカリンなどの有機酸またはそれらの塩;リン酸などの無機酸またはそれらの塩;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ベンジルアルコール、オレイルアルコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコールなどのアルコールまたはそのエステル類もしくはそのエーテル類;炭素数3〜8の多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、オクタンジオール等);モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタンなどのソルビタンエステル類またはエーテル類;モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのフェノールエーテル類;ヒマシ油または硬化ヒマシ油;オレオイルサルコシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリル硫酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤;炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等)、ジメチルラウリルアミンオキサイドなどの非イオン性界面活性剤;ラウリン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アミド;ジメチルスルホキサイド、デシルメチルスルホキサイドなどのアルキルメチルスルホキサイド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類;1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ゲラニルアザシクロヘプタン−2−オンなどのアザシクロアルカン類;メントール、カンフル、リモネンなどのテルペン類などが挙げられる。なかでも、N−メチルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、ポリビニルピロリドン、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。吸収促進剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
薬物含有層は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の皮膚透過性向上のため、吸収促進剤をさらに含有してもよい。吸収促進剤は、経皮投与において皮膚透過促進作用が認められているいずれの化合物であってもよく、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、グリセリンオレイン酸モノエステル、イソステアリン酸ヘキサデシルなどの脂肪酸またはそのエステル類;乳酸、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、グリコール酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、サッカリンなどの有機酸またはそれらの塩;リン酸などの無機酸またはそれらの塩;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、ベンジルアルコール、オレイルアルコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコールなどのアルコールまたはそのエステル類もしくはそのエーテル類;炭素数3〜8の多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、オクタンジオール等);モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタンなどのソルビタンエステル類またはエーテル類;モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのフェノールエーテル類;ヒマシ油または硬化ヒマシ油;オレオイルサルコシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリル硫酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤;炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等)、ジメチルラウリルアミンオキサイドなどの非イオン性界面活性剤;ラウリン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アミド;ジメチルスルホキサイド、デシルメチルスルホキサイドなどのアルキルメチルスルホキサイド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類;1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ゲラニルアザシクロヘプタン−2−オンなどのアザシクロアルカン類;メントール、カンフル、リモネンなどのテルペン類などが挙げられる。なかでも、N−メチルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、ポリビニルピロリドン、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。吸収促進剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、HLB値が10〜16(特に10〜15)であることがさらに好ましい。HLB値とは界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値であり、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなる。HLB値が10〜16の炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いた場合、角質層への浸透性が良好となり、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の皮膚透過性を促進する効果を高めることが可能である。
HLBの測定方法は、「ハンドブック −化粧品・製剤原料− 改定版」、日光ケミカルズ株式会社、昭和52年2月1日改訂版発行、854−855頁に記載の乳化法によるHLB値の実測に準拠する。(X)成分のHLB値を求める具体的な方法としては、(X)成分と、乳化剤の標準物質としてモノステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS−10、HLB4.7)とを組み合わせ、これらの2種の乳化剤の全量は一定にし、割合のみを変えて被乳化物である流動パラフィン(HLB10.1)を乳化し、一昼夜放置後、クリーミング量、白濁度、下層の水分離などから安定性の高い最適な乳化剤の割合を求め、(X)成分のHLB値xを下記式(1)により算出する。
y=(x×使用量(質量%)+z×使用量(質量%))/100・・・式(1)
ここで、式(1)において、「x」は、(X)成分のHLB値を示し、「y」は、流動パラフィンのHLB値を示し、「z」は、モノステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS−10)のHLB値を示す。ただし、(X)成分が親油性であれば、乳化剤の標準物質にはモノステアリン酸POEソルビタン(NIKKOL TS−10、HLB14.9)を使用する。
ここで、式(1)において、「x」は、(X)成分のHLB値を示し、「y」は、流動パラフィンのHLB値を示し、「z」は、モノステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS−10)のHLB値を示す。ただし、(X)成分が親油性であれば、乳化剤の標準物質にはモノステアリン酸POEソルビタン(NIKKOL TS−10、HLB14.9)を使用する。
具体的には、例えば、BL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、BL−9EX(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB値14.5:日光ケミカルズ社製)、BO−7V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、HLB値10.5:日光ケミカルズ社製)、BO−10V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、HLB値14.5:日光ケミカルズ社製)、BC−5.5(ポリオキシエチレンセチルエーテル、HLB値10.5:日光ケミカルズ社製)、BC−7(ポリオキシエチレンセチルエーテル、HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、BC−10(ポリオキシエチレンセチルエーテル、HLB値13.5:日光ケミカルズ社製)などの市販のポリオキシエチレンアルキルエーテル類を使用してもよい。
吸収促進剤の含有量は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の種類に応じて適宜調節することができるが、薬物含有層に対して0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜35質量%がより好ましく、1〜35質量%がさらに好ましい。
4.粘着剤
薬物含有層はさらに粘着剤を含有し、必要に応じて粘着付与剤、可塑剤等を含有してもよい。
薬物含有層はさらに粘着剤を含有し、必要に応じて粘着付与剤、可塑剤等を含有してもよい。
薬物含有層に含有される粘着剤としては、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂およびシリコーン系樹脂等を含むものが挙げられる。
粘着剤としては、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが好ましく、さらにアクリル系樹脂およびゴム系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とするものがより好ましい。ここで、「主成分」とは、粘着剤の全質量に対し、通常70質量%以上、さらに80質量%以上、よりさらに90質量%以上、特に100質量%を意味する。
アクリル系樹脂としては、例えば、モノマー単位として、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどに代表される(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも1種含有する重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸2−エチルエキシル・N−ビニル−2−ピロリドン・ジメタクリル酸−1,6−ヘキサングリコール共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸2−ヒドロキシエチル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体溶液、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液などが挙げられる。好ましくは、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとN−ビニル−2−ピロリドンをモノマー単位として含有する共重合体であり、より好ましくは、アクリル酸2−エチルエキシル・N−ビニル−2−ピロリドン・ジメタクリル酸−1,6−ヘキサングリコール共重合体である。また、DURO−TAK(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(DURO TAK 87-900A、DURO TAK 87-9301、DURO TAK 87-4098、DURO TAK 387-2510、DURO TAK 87-2510、DURO TAK 387-2287、DURO TAK 87-2287、DURO TAK 87-4287、DURO TAK 387-2516、DURO TAK 87-2516、DURO TAK 87-2074、DURO TAK 387-235A、DURO TAK 387-2353、DURO TAK 87-2353、DURO TAK 87-2852、DURO TAK 387-2051、DURO TAK 87-2051、DURO TAK 387-2052、DURO TAK 87-2052、DURO TAK 387-2054、DURO TAK 87-2054、DURO TAK 87-2194、DURO TAK 87-2196:ヘンケル社製)、GELVAシリーズ(GELVA GMS 3083、GELVA GMS 3253、GELVA GMS 788、GELVA GMS 9073:ヘンケル社製)、MAS−683、MAS−811、MASCOS10、MAS11D1(コスメディ製薬社製)などの市販のアクリル系樹脂を使用してもよく、好ましくはMAS−683である。
ゴム系樹脂としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム、ポリイソブチレン(PIB)、ポリブテン、ブチルゴム、天然ゴム、生ゴム、アラビアゴム、アラビアゴム末、イソプレンゴムなどが挙げられるが、好ましくはSISである。またクレイトンDポリマーシリーズ(クレイトンポリマージャパン社製)やJSR SIS/TRシリーズ(JSRライフサイエンス社製)などの市販のゴム系樹脂を使用してもよい。
シリコーン系樹脂としては、例えば、オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマーおよびその誘導体が挙げられ、具体的には、例えば、ジメチルポリシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサンなどが挙げられる。また、BIO−PSAシリーズ(ダウコーニング社製)などの市販のシリコーン系樹脂を使用してもよい。
本発明の経皮吸収型製剤の薬物含有層に含有される粘着剤として、上述のアクリル系樹脂、ゴム系樹脂およびシリコーン系樹脂のうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。より好ましくは、アクリル系またはゴム系樹脂であり、さらに好ましくはアクリル系樹脂である。
薬物含有層中に含有される粘着剤の含有量は、薬物含有層の形成、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の十分な皮膚透過性などを考慮して調整される。粘着剤の含有量は、薬物含有層に対して通常5〜98.9質量%、好ましくは10〜98.5質量%である。粘着剤がアクリル系樹脂の場合は、粘着剤の含有量は、薬物含有層に対して40〜98.9質量%が好ましく、50〜98.5質量%がより好ましく、60〜98質量%がさらに好ましい。粘着剤がゴム系樹脂の場合は、粘着剤の含有量は、薬物含有層に対して5〜98.9質量%が好ましく、10〜98.5質量%がより好ましく、12〜98質量%がさらに好ましい。粘着剤がシリコーン系樹脂の場合は、粘着剤の含有量は、薬物含有層に対して合計で40〜98.9質量%が好ましく、50〜98.5質量%がより好ましく、60〜98質量%がさらに好ましい。
5.可塑剤
薬物含有層は、可塑剤をさらに含有してもよい。可塑剤としては、石油系オイル(例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィンなど)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油など)、シリコーンオイル、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、液状ゴム(例えば、ポリブテン、液状イソプレンゴムなど)、液状脂肪酸エステル類(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルなど)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトンなどが挙げられる。また可塑剤として、モレスコホワイトシリーズ(モレスコ社製)、ハイコールシリーズ(カネダ社製)などの市販されているものを適宜使用してもよい。特に粘着剤として前記ゴム系樹脂を用いる場合には、流動パラフィンを可塑剤として使用することが好ましい。可塑剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
薬物含有層は、可塑剤をさらに含有してもよい。可塑剤としては、石油系オイル(例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィンなど)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油など)、シリコーンオイル、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、液状ゴム(例えば、ポリブテン、液状イソプレンゴムなど)、液状脂肪酸エステル類(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルなど)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトンなどが挙げられる。また可塑剤として、モレスコホワイトシリーズ(モレスコ社製)、ハイコールシリーズ(カネダ社製)などの市販されているものを適宜使用してもよい。特に粘着剤として前記ゴム系樹脂を用いる場合には、流動パラフィンを可塑剤として使用することが好ましい。可塑剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
可塑剤の含有量は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の十分な透過性および貼付剤としての十分な凝集力の維持を考慮して調整される。粘着剤としてゴム系樹脂用いる場合は、薬物含有層に対して1〜70質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。粘着剤としてシリコーン系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましく、0〜20質量%がさらに好ましい。粘着剤としてアクリル系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して0〜50質量%が好ましく、0〜40質量%がより好ましく、0〜30質量%がさらに好ましい。
6.粘着付与剤
薬物含有層は、粘着力向上のために粘着付与剤をさらに含有してもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステルなどのロジン誘導体、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、マレイン酸レジン、カルナウバロウ、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、キトサン、グリセリン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、軽質無水ケイ酸、酢酸ベンジル、タルク、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。また粘着付与剤として、アルコンシリーズ(荒川化学社製)、パインクリスタルシリーズ(荒川化学社製)、クリアロンシリーズ(ヤスハラケミカル社製)、YSレジンシリーズ(ヤスハラケミカル社製)などの市販されているものを適宜使用してもよい。特に粘着剤として前記ゴム系樹脂を用いる場合には、水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂を粘着付与剤として使用することが好ましい。粘着付与剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
薬物含有層は、粘着力向上のために粘着付与剤をさらに含有してもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステルなどのロジン誘導体、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、マレイン酸レジン、カルナウバロウ、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、キトサン、グリセリン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、軽質無水ケイ酸、酢酸ベンジル、タルク、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。また粘着付与剤として、アルコンシリーズ(荒川化学社製)、パインクリスタルシリーズ(荒川化学社製)、クリアロンシリーズ(ヤスハラケミカル社製)、YSレジンシリーズ(ヤスハラケミカル社製)などの市販されているものを適宜使用してもよい。特に粘着剤として前記ゴム系樹脂を用いる場合には、水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂を粘着付与剤として使用することが好ましい。粘着付与剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
粘着付与剤の含有量は、貼付剤としての十分な粘着力を考慮して、粘着剤としてゴム系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%がさらに好ましい。粘着剤としてシリコーン系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましく、0〜10質量%がさらに好ましい。粘着剤としてアクリル系樹脂を用いる場合は、薬物含有層に対して0〜40質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましく、0〜20質量%がさらに好ましい。
7.その他の任意成分
薬物含有層は、必要に応じて、pH調節剤、架橋剤、抗酸化剤、着色剤、紫外線吸収剤、充填剤、または、防腐剤などの公知の添加剤をさらに含有してもよい。
薬物含有層は、必要に応じて、pH調節剤、架橋剤、抗酸化剤、着色剤、紫外線吸収剤、充填剤、または、防腐剤などの公知の添加剤をさらに含有してもよい。
pH調節剤は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の溶解性、安定性、および皮膚透過性の向上、皮膚に対する安全性の向上などの目的で、薬物含有層のpHを調節するために使用することができる。pH調節剤は、医薬品の分野において通常pH調整に用いられる酸もしくは塩基またはそれらの塩であればいずれの化合物であってもよく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、メタンスルホン酸、エデト酸、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メグルミン、トロメタモール、グリシン、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
架橋剤としては、例えばアミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属または金属化合物等の無機系架橋剤が挙げられる。なかでも、イソシアネート化合物またはブロックイソシアネート化合物が好ましい。
抗酸化剤としては、例えばトコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
着色剤としては、例えばインジゴカルミン、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カーボンブラック、カラメル、感光素201号、クマザサエキス、黒酸化鉄、ケッケツ、酸化亜鉛、酸化チタン、三二酸化鉄、アマランス、水酸化ナトリウム、タルク、銅クロロフィリンナトリウム、ハダカムギ緑葉エキス末、d−ボルネオール、ミリスチン酸オクチルドデシル、メチレンブルー、リン酸マンガンアンモニウム、ローズ油などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばアミノ酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、桂皮酸誘導体、シアノアクリレート誘導体、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体などが挙げられる。
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸マグネシウムナトリウム等)、水酸化マグネシウム、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどが挙げられる。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどが挙げられる。
その他の任意成分の合計の含有量は、薬物含有層に対して0〜10質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましい。
本発明の経皮吸収型製剤における薬物含有層の面積は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の含有量および/または皮膚透過速度などに応じて適宜調整することができる。典型的には、2〜140cm2、好ましくは2〜100cm2、さらに好ましくは4〜50cm2の範囲である。またその形状は、特に限定されず、正方形、長方形、円形、楕円形などであってよい。
本発明の経皮吸収型製剤における薬物含有層の厚さは、粘着剤の種類、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩の含有量および/または皮膚透過速度などに応じて適宜調整することができ、特に限定されない。典型的には、20〜300μm、好ましくは30〜200μm、さらに好ましくは30μm〜150μmの範囲である。
本発明の経皮吸収型製剤における薬物含有層は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤および吸収促進剤を含有し、粘着剤がアクリル系樹脂またはゴム系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含有することを特徴とする(前記[1]を参照)。
そのうち、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩としては、トファシチニブフリー体またはトファシチニブ酸付加塩(特にクエン酸塩)が好ましい。
粘着剤としては、アクリル系樹脂を主成分として含有するものが好ましい。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも1種含有する重合体または共重合体が好ましく、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびN−ビニル−2−ピロリドンをモノマー単位として含有する共重合体がより好ましい。
吸収促進剤としては、N−メチルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、ポリビニルピロリドン、および炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、HLB値が10〜16である炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルが特に好ましい。
薬物含有層に対して、トファシチニブまたははその薬学的に許容される塩の含有量が1〜30質量%、粘着剤の含有量が5〜98.9質量%、吸収促進剤の含有量が0.1〜40質量%であることが好ましい。
本発明の経皮吸収型製剤における薬物含有層は、さらに塩基性化合物を含有することが好ましい。特に、トファシチニブ酸付加塩(特にクエン酸塩)を用いる場合、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、アルカノールアミン類、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピリジン、塩基性アルカリ金属塩、およびアルカリ金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE等がより好ましく、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEが特に好ましい。
薬物含有層に塩基性化合物を含有する場合、薬物含有層に対して、トファシチニブまたははその薬学的に許容される塩の含有量が1〜30質量%、粘着剤の含有量が5〜98.8質量%、吸収促進剤の含有量が0.1〜40質量%、塩基性化合物の含有量が0.1〜50質量%であることが好ましい。
<支持体>
本発明の経皮吸収型製剤における支持体には、薬物不透過性で伸縮性または非伸縮性の支持体を使用することができる。このような支持体としては、医薬品の分野において通常用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ナイロン、ポリウレタンなどの合成樹脂フィルムもしくはシートまたはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙、織布、不織布などが挙げられる。
本発明の経皮吸収型製剤における支持体には、薬物不透過性で伸縮性または非伸縮性の支持体を使用することができる。このような支持体としては、医薬品の分野において通常用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ナイロン、ポリウレタンなどの合成樹脂フィルムもしくはシートまたはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙、織布、不織布などが挙げられる。
<剥離ライナー>
本発明の経皮吸収型製剤は、剥離ライナーをさらに有してもよい。この場合、剥離ライナーは、支持体上に積層された薬物含有層の、支持体に接する面と反対側の面上に積層され、経皮吸収型製剤を皮膚に適用するまで薬物含有層を保護することができる。剥離ライナーは、少なくとも薬物含有層中のトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩について不透過性であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子材料で作られたフィルム、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙の上にシリコーンオイルなどを塗付したものなどが挙げられる。
本発明の経皮吸収型製剤は、剥離ライナーをさらに有してもよい。この場合、剥離ライナーは、支持体上に積層された薬物含有層の、支持体に接する面と反対側の面上に積層され、経皮吸収型製剤を皮膚に適用するまで薬物含有層を保護することができる。剥離ライナーは、少なくとも薬物含有層中のトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩について不透過性であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子材料で作られたフィルム、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙の上にシリコーンオイルなどを塗付したものなどが挙げられる。
<経皮吸収型製剤の製造>
本発明の経皮吸収型製剤は、公知の方法に従って製造することができる。トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤、および吸収促進剤、ならびに必要に応じ上記任意成分を含む混合物を調製し、この混合物を剥離ライナー上に塗布(展延)して薬物含有層を形成し、この薬物含有層に支持体を貼り合わせることにより製造することができる。
本発明の経皮吸収型製剤は、公知の方法に従って製造することができる。トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤、および吸収促進剤、ならびに必要に応じ上記任意成分を含む混合物を調製し、この混合物を剥離ライナー上に塗布(展延)して薬物含有層を形成し、この薬物含有層に支持体を貼り合わせることにより製造することができる。
具体的には、例えば、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤、および吸収促進剤、ならびに必要に応じて、塩基性化合物、可塑剤、粘着付与剤、および/または他の添加剤を、前記含有量となるように有機溶媒に加え、混合撹拌して塗布液を調製する。混合方法としては、例えば撹拌、インラインミキシング、超音波処理等を用いることができる。有機溶媒としては、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、トルエン、シクロヘキサン、クロロホルム、塩化メチレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、それらの混合溶媒などを用いることができる。塗布液中の有機溶媒の含有量は特に限定されず、例えば、塗布液全体に対して30〜90質量%、好ましくは40〜80質量%である。
次に、この塗布液を剥離ライナー上に展延し、当該塗布液中の溶媒を蒸発させて薬物含有層を形成した後、支持体を貼り合わせることによって経皮吸収型製剤を得ることができる。または、塗布液を支持体上に展延し、当該塗布液中の溶媒を蒸発させて薬物含有層を形成した後、剥離ライナーを貼り合わせることによって経皮吸収型製剤を得ることもできる。製造容易かどうかの観点からは、塗布液を剥離ライナー上に展延し、当該塗布液中の溶媒を蒸発させて薬物含有層を形成した後、支持体を貼り合わせる方法が好ましい。塗布液の塗布は、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター、ダイコーターを用いて行うことができる。
また本発明の経皮吸収型製剤は、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤、および吸収促進剤、ならびに必要に応じて、塩基性化合物、可塑剤、粘着付与剤、および/または他の添加剤を加熱溶融させ、この溶融物を剥離ライナー上に展延し、薬物含有層を形成した後、支持体を貼り合わせることによって経皮吸収型製剤を製造することもできる。溶融物を支持体上に展延し、薬物含有層を形成した後、剥離ライナーを貼り合わせることによって経皮吸収型製剤を製造してもよい。
<投与方法>
本発明の経皮吸収型製剤による関節リウマチの予防または治療は、本発明の経皮吸収型製剤を対象の皮膚に直接貼付して、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を経皮投与することによって行うことができる。本発明における対象は、ヒトなどの哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
本発明の経皮吸収型製剤による関節リウマチの予防または治療は、本発明の経皮吸収型製剤を対象の皮膚に直接貼付して、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を経皮投与することによって行うことができる。本発明における対象は、ヒトなどの哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
本発明の経皮吸収型製剤によりトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を経皮投与する場合、関節リウマチの予防または治療に有効な血中濃度を達成するように、薬物含有層中のトファシチニブの含有量および/または皮膚透過速度、ならびに薬物含有層の面積および/または薬物含有層の厚さ等を適宜調整した上で、本発明の経皮吸収型製剤を皮膚に貼付することができる。
本発明の経皮吸収型製剤は、貼付可能であれば身体のいずれの部位の皮膚に適用してもよく、例えば、上腕部、腹部、胸部、頸部、腰背部、臀部または脚部などに貼付することができる。
本発明の経皮吸収型製剤の対象への経皮投与は、必要に応じて、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩以外の医薬成分を含有する医薬組成物の投与と組み合わせてもよい。この場合、投与形態は、同時投与であっても、時間差をおいての投与であってもよく、当該医薬組成物は、静脈内、腹腔内、皮下および筋肉内、経口、局所または経粘膜を含む種々の経路により投与できる。またトファシチニブまたはその薬学的に許容される塩以外の医薬成分を含有する医薬組成物は、当該医薬成分について通常用いられる投与経路によって対象に投与される。トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩以外の医薬成分としては、メトトレキサート等の疾患修飾性抗リウマチ薬などが挙げられるが、これらに限定されない。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また各実施例において、%は、特に断りがない限りは全て質量%である。
(トファシチニブ含有経皮吸収型製剤の製造)
実施例1
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブ、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ製薬社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た。
成分名 配合比率
トファシチニブ 5%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 20%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 75%
実施例1
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブ、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ製薬社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た。
成分名 配合比率
トファシチニブ 5%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 20%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 75%
塗布液を剥離フィルム(75μm片面シリコン処理PETフィルム、フィルムバイナ75E−0010 BD:藤森工業社製)上に、溶媒留去後の厚さが約50μmになるように塗布し、乾燥させた後、支持体(25μmのPETフィルム、ルミラーT−60:東レ社製)を貼り合わせ、経皮吸収型製剤を製造した。
実施例2
実施例1において、BL−4.2に代えてN−メチル−2−ピロリドン(東京化成工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例1において、BL−4.2に代えてN−メチル−2−ピロリドン(東京化成工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例3
実施例1において、MAS−683の配合比率を75%に代えて65%とし、BL−4.2に代えてBL−9EX(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値14.5:日光ケミカルズ社製)を配合比率30%で用いた以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例1において、MAS−683の配合比率を75%に代えて65%とし、BL−4.2に代えてBL−9EX(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値14.5:日光ケミカルズ社製)を配合比率30%で用いた以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例4
実施例3において、BL−9EXに代えてIPM−EX(ミリスチン酸イソプロピル:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例3と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例3において、BL−9EXに代えてIPM−EX(ミリスチン酸イソプロピル:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例3と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例5
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ製薬社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 81%
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ製薬社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 81%
実施例6
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 7%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 74%
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 7%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 74%
実施例7
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブ、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブ 2.5%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 82.5%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブ、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブ 2.5%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 82.5%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
実施例8
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブ、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブ 2.5%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 3.5%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 79%
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブ、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブ 2.5%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 3.5%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 79%
実施例9
実施例7において、MAS−683(コスメディ製薬社製)に代えてDURO TAK387−2516(ヒドロキシル基含有アクリル系樹脂、ヘンケル社製)を用いた以外は、実施例7と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例7において、MAS−683(コスメディ製薬社製)に代えてDURO TAK387−2516(ヒドロキシル基含有アクリル系樹脂、ヘンケル社製)を用いた以外は、実施例7と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例10
実施例6において、BL−4.2に代えてBL−2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値9.5:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例6において、BL−4.2に代えてBL−2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値9.5:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例11
実施例6において、BL−4.2に代えてBO−2V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値7.5:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例6において、BL−4.2に代えてBO−2V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値7.5:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例12
実施例6において、BL−4.2に代えてBO−7V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値10.5:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例6において、BL−4.2に代えてBO−7V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値10.5:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例13
実施例6において、BL−4.2に代えてBO−10V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値14.5:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例6において、BL−4.2に代えてBO−10V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値14.5:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例14
実施例6において、BL−4.2に代えてBO−20V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値17:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例6において、BL−4.2に代えてBO−20V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値17:日光ケミカルズ社製)を用いた以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例15
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、およびコリドン 30(ポリビニルピロリドン:BASF社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
コリドン 30(BASF社製) 10%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 7%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 64%
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、およびコリドン 30(ポリビニルピロリドン:BASF社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
コリドン 30(BASF社製) 10%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 7%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 64%
実施例16
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、およびBO−7V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値10.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 10%
BO−7V(日光ケミカルズ社製) 5%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 7%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 74%
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、およびBO−7V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル HLB値10.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 10%
BO−7V(日光ケミカルズ社製) 5%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 7%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 74%
実施例17
実施例16において、BL−4.2の配合比率を10%に代えて7.5%とし、BO−7Vの配合比率を5%に代えて7.5%とした以外は、実施例16と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例16において、BL−4.2の配合比率を10%に代えて7.5%とし、BO−7Vの配合比率を5%に代えて7.5%とした以外は、実施例16と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例18
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物として適量のエタノールに溶解した水酸化ナトリウム(和光純薬社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
水酸化ナトリウム(和光純薬社製) 1%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 80%
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物として適量のエタノールに溶解した水酸化ナトリウム(和光純薬社製)、粘着剤としてMAS−683(ピロリドン環含有アクリル系樹脂、コスメディ社製)を、適量の酢酸エチル中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
水酸化ナトリウム(和光純薬社製) 1%
MAS−683(コスメディ製薬社製) 80%
実施例19
・ゴム系樹脂組成物(1)の調製
固形分が下記の配合比率となるように、SIS5002(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、JSR社製)、KE−311(水添ロジングリセリンエステル、荒川化学工業社製)、ハイコールM−352(流動パラフィン、カネダ社製)をトルエンに溶解し、ゴム系樹脂組成物(1)を得た。
成分名 配合比率
SIS5002(JSR社製) 40%
KE−311(荒川化学工業社製) 40%
ハイコールM−352(カネダ社製) 20%
・ゴム系樹脂組成物(1)の調製
固形分が下記の配合比率となるように、SIS5002(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、JSR社製)、KE−311(水添ロジングリセリンエステル、荒川化学工業社製)、ハイコールM−352(流動パラフィン、カネダ社製)をトルエンに溶解し、ゴム系樹脂組成物(1)を得た。
成分名 配合比率
SIS5002(JSR社製) 40%
KE−311(荒川化学工業社製) 40%
ハイコールM−352(カネダ社製) 20%
・経皮吸収型製剤の製造
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてゴム系樹脂組成物(1)を、適量のトルエン中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 7%
ゴム系樹脂組成物(1) 74%
塗布乾燥後の固形分が下記の配合比率となるように、有効成分としてトファシチニブクエン酸塩、吸収促進剤としてBL−4.2(ポリオキシエチレンラウリルエーテル HLB値11.5:日光ケミカルズ社製)、塩基性化合物としてオイドラギットEPO(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:エボニックインダストリーズ社製)、粘着剤としてゴム系樹脂組成物(1)を、適量のトルエン中で混合撹拌した後、塗布液を得た以外は、実施例1と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
成分名 配合比率
トファシチニブクエン酸塩 4%
BL−4.2(日光ケミカルズ社製) 15%
オイドラギットEPO(エボニックインダストリーズ社製) 7%
ゴム系樹脂組成物(1) 74%
比較例1
実施例5において、MAS−683の配合比率を81%に代えて96%とし、BL−4.2を使用しなかった以外は、実施例5と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例5において、MAS−683の配合比率を81%に代えて96%とし、BL−4.2を使用しなかった以外は、実施例5と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
比較例2
実施例7において、MAS−683の配合比率を82.5%に代えて97.5%とし、BL−4.2を使用しなかった以外は、実施例7と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例7において、MAS−683の配合比率を82.5%に代えて97.5%とし、BL−4.2を使用しなかった以外は、実施例7と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
試験例1 インビトロ(in vitro)皮膚透過性試験
得られた経皮吸収型製剤を用いて、以下の手順に従ってインビトロ皮膚透過性試験を行った。
得られた経皮吸収型製剤を用いて、以下の手順に従ってインビトロ皮膚透過性試験を行った。
7週齢の雄性Hos:HR−1系ヘアレスマウス摘出皮膚(ラボスキン、星野実験動物飼育所社製)の角層側に各実施例及び比較例の経皮吸収型製剤を貼付した後、32℃の温水を外周部に循環させた縦型拡散セル(商品名:パームセル縦型TP−6:ビードレックス社製)に、皮膚基底膜がレシーバー側となるように装着した。レシーバーセルに、薄めたMcIlvaine緩衝液pH 7.5(関東化学社製)とポリエチレングリコール400を60対40(容量比)で混合した水溶液を満たし、経時的にレシーバー液をサンプリングし、HPLC法によりレシーバー液中のトファシチニブ量を測定した。測定結果より試験開始後24時間でのトファシチニブの累積透過量(トファシチニブ換算)を算出し、皮膚透過速度を算出した(n=3の平均値)。得られた結果を表1および2に示す。
<HPLC測定条件>
カラム:ODS
検出波長:210nm
移動相:10mMリン酸塩緩衝液(pH2.6)/アセトニトリル混液、0.1%SDS
<HPLC測定条件>
カラム:ODS
検出波長:210nm
移動相:10mMリン酸塩緩衝液(pH2.6)/アセトニトリル混液、0.1%SDS
表1および2から明らかなように、本発明の経皮吸収型製剤は、トファシチニブを放出して皮膚を透過させることができた。一方、吸収促進剤を使用していない比較例1および2では皮膚透過性が認められなかった。また、吸収促進剤として、HLB値が10から16であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いた場合、顕著な皮膚透過性の向上が認められた。さらに、塩基性化合物の添加により、皮膚透過性の向上が認められた。
試験例2 インビボ(in vivo)皮膚透過性試験
8週齢の雄性SD系ラット(チャールズリバー社製、n=6)の背部皮膚を電気バリカンで剪毛した。実施例6で製造した経皮吸収型製剤(10cm2)を背部に貼付し、メンバン(白十字社製)、Tagaderm Roll(スリーエムヘルスケア社製)、不織布粘着包帯(シルキーテック、ALCARE社製)を巻いて24時間閉塞した。24時間後に製剤を除去した。貼付後、2、4、6、8、10、および24時間に、無麻酔下で尾静脈より採血(約0.3mL)し、血液をポリプロピレン製容器に移した。得られた血液は遠心分離機(4℃、1000g)により血漿を分離した。Oasisを用いて得られた血漿について固相抽出を行い、LC/MS/MSを用いて各時間におけるトファシチニブの血漿中濃度(ng/mL)を測定し、6検体の平均値を算出した(トファシチニブ濃度として換算)。トファシチニブの定量はLC/MS法により行った。この結果を図1に示す。
<LC/MS/MS測定条件>
装置:ACQUITY UPLC H-Classシステム(Waters社製)
カラム:Acquity UPLC BEH C18 1.7μm 2.1×50mm(Waters社製)
検出器:Xevo G2-S Q-Tof(Waters社製)
検出条件:Resolution・Positive、m/z=318.18
移動相:0.1%蟻酸水溶液と0.1%蟻酸-メタノール溶液の混合液
8週齢の雄性SD系ラット(チャールズリバー社製、n=6)の背部皮膚を電気バリカンで剪毛した。実施例6で製造した経皮吸収型製剤(10cm2)を背部に貼付し、メンバン(白十字社製)、Tagaderm Roll(スリーエムヘルスケア社製)、不織布粘着包帯(シルキーテック、ALCARE社製)を巻いて24時間閉塞した。24時間後に製剤を除去した。貼付後、2、4、6、8、10、および24時間に、無麻酔下で尾静脈より採血(約0.3mL)し、血液をポリプロピレン製容器に移した。得られた血液は遠心分離機(4℃、1000g)により血漿を分離した。Oasisを用いて得られた血漿について固相抽出を行い、LC/MS/MSを用いて各時間におけるトファシチニブの血漿中濃度(ng/mL)を測定し、6検体の平均値を算出した(トファシチニブ濃度として換算)。トファシチニブの定量はLC/MS法により行った。この結果を図1に示す。
<LC/MS/MS測定条件>
装置:ACQUITY UPLC H-Classシステム(Waters社製)
カラム:Acquity UPLC BEH C18 1.7μm 2.1×50mm(Waters社製)
検出器:Xevo G2-S Q-Tof(Waters社製)
検出条件:Resolution・Positive、m/z=318.18
移動相:0.1%蟻酸水溶液と0.1%蟻酸-メタノール溶液の混合液
図1から明らかなように、本発明の経皮吸収型製剤をラットに貼付した場合、トファシチニブは持続的に経皮吸収され、貼付している24時間の間、一定以上の血漿中濃度が維持されることが確認された。
参考例1
実施例6において、トファシチニブクエン酸塩を使用しなかった以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
実施例6において、トファシチニブクエン酸塩を使用しなかった以外は、実施例6と同様にして経皮吸収型製剤を製造した。
試験例3 ウサギ皮膚一次刺激性試験
19週齢のJW雌ウサギを用いた。毛が除去されたスムーススキン部分に、実施例6および参考例1で製造した経皮吸収型製剤(1.5cm×1.5cm角)を背部に貼付し、Tegaderm Roll(スリーエムヘルスケア社製)で固定した後、粘着剤付きフォームパッド(スリーエムヘルスケア社製)で背部を覆い、その上から自着性弾力包帯(3M Coban Self−Adherent Wrap,スリーエムヘルスケア社製)を胴体に巻いた後、さらにポリエチレンフィルムテープ(キープポアA、ニチバン社製)で固定した。投与24時間後に経皮吸収型製剤を剥離し、アセトンで湿らせた脱脂綿で貼付部位を清拭した。投与より24および48時間後に皮膚反応を観察し、表3に示すDraizeの基準(1959年)を参考に皮膚刺激性指数(Primary irritation index:P.I.I.)を算出し、皮膚刺激性を評価した。但し、投与24時間後は、清拭約1時間後に観察を行った。被験物質ごとに、投与24および48時間後における固体別評点を算出し、観察回数(3回)で除して個体別P.I.I.(Individual P.I.I.)を算出した。Individual P.I.I.値を合計し、その平均値をトファシチニブ経皮吸収型製剤のP.I.I.とした。
19週齢のJW雌ウサギを用いた。毛が除去されたスムーススキン部分に、実施例6および参考例1で製造した経皮吸収型製剤(1.5cm×1.5cm角)を背部に貼付し、Tegaderm Roll(スリーエムヘルスケア社製)で固定した後、粘着剤付きフォームパッド(スリーエムヘルスケア社製)で背部を覆い、その上から自着性弾力包帯(3M Coban Self−Adherent Wrap,スリーエムヘルスケア社製)を胴体に巻いた後、さらにポリエチレンフィルムテープ(キープポアA、ニチバン社製)で固定した。投与24時間後に経皮吸収型製剤を剥離し、アセトンで湿らせた脱脂綿で貼付部位を清拭した。投与より24および48時間後に皮膚反応を観察し、表3に示すDraizeの基準(1959年)を参考に皮膚刺激性指数(Primary irritation index:P.I.I.)を算出し、皮膚刺激性を評価した。但し、投与24時間後は、清拭約1時間後に観察を行った。被験物質ごとに、投与24および48時間後における固体別評点を算出し、観察回数(3回)で除して個体別P.I.I.(Individual P.I.I.)を算出した。Individual P.I.I.値を合計し、その平均値をトファシチニブ経皮吸収型製剤のP.I.I.とした。
結果を表4に示す。なお、刺激性の評価は、P.I.Iが0の場合「無刺激物」、0より大きく2未満の場合「軽度刺激物」、2以上5未満の場合「中等度刺激物」、5以上のときは「強度刺激物」とした。評価に際して統計処理は実施しなかった。
表4から明らかなように、実施例6の経皮吸収型製剤の皮膚刺激性は軽度であった。
本発明によれば、経口投与に伴って生じうる副作用を回避することが可能な、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩を含有する経皮吸収型製剤が提供される。本発明の経皮吸収型製剤は、アドヒアランスが高く、副作用の少ない関節リウマチ治療の予防または治療に有効な新規投与手段を提供することが可能である。
Claims (8)
- 支持体と薬物含有層とを有する経皮吸収型製剤であって、該薬物含有層が、トファシチニブまたはその薬学的に許容される塩、粘着剤および吸収促進剤を含有し、該粘着剤がアクリル系樹脂およびゴム系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する、経皮吸収型製剤。
- 前記吸収促進剤が、N−メチルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、ポリビニルピロリドン、および炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の経皮吸収型製剤。
- 前記吸収促進剤が、炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の経皮吸収型製剤。
- 前記炭素数10〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLB値が10〜16である、請求項2または3に記載の経皮吸収型製剤。
- 前記薬物含有層が、さらに塩基性化合物を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
- 前記塩基性化合物が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEである、請求項5に記載の経皮吸収型製剤。
- 前記アクリル系樹脂が、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとN−ビニル−2−ピロリドンをモノマー単位として含有する共重合体である、請求項1〜6のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
- 剥離ライナーをさらに有し、支持体、薬物含有層、および剥離ライナーの順に積層されている、請求項1〜7のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
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