JP2011086398A - 燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】硫黄化合物による燃料電池の触媒被毒による電池性能の低下を検知することができる、燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック101、電圧印加器102、及び被毒判定器120aを備え、電圧印加器102は他方の電極の電位が水素酸化還元電位よりも低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を燃料電池に印加し、その後、他方の電極の電位が、白金触媒の表面に酸化物が生成する電位となる電圧(以下、第2の電圧)を燃料電池に印加し、被毒判定器120aは、燃料電池の被毒判定をする際における第2の電圧が印加されたときの電流値(以下、第2電流値)と第1の電圧が印加されたときの電流値(以下、第1電流値)との差が、燃料電池初期における第2電流値と第1電流値との差よりも小さい場合に、燃料電池が被毒されていると判定する、燃料電池システム100。
【選択図】図2

Description

本発明は、燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法に関する。
高分子電解質形燃料電池(以下、PEFCという)は、水素を含有した燃料ガスと空気等の酸素を含有した酸化剤ガスとを電気化学反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させるものである。PEFCの単電池(セル)は、高分子電解質膜及び一対のガス拡散電極(アノード及びカソード)から構成されるMEA(Membrane−Electrode−Assembly:膜−電極接合体)と、ガスケットと、導電性の板状のセパレータと、を有している。そして、PEFCは、一般的には、このセルを複数積層し、積層されたセルの両端を端板で挟み、該端板とセルとを締結具により締結することにより、燃料電池スタックとして形成されている。
PEFCのアノード及びカソードに用いる電極触媒としては、一般に白金又は白金合金が用いられている。白金又は白金合金は高い反応性を有しているため、電極触媒としては非常に優れた材料であるが、反応ガス又はPEFC内部に不純物が存在する場合、その量が極めて少量であっても、電極触媒の表面に不純物が付着して、触媒が被毒され、電池性能が低下するという問題がある。中でも、二酸化硫黄、メチルメルカプタン、硫化水素等の硫黄化合物は白金の被毒効果が大きいことが知られている。
燃料電池の酸化剤としては空気を用いるのが一般であるが、空気中には、硫黄酸化物や二酸化硫黄等の大気汚染物質が含まれている。したがって、空気を供給する燃料電池では、不純物、とりわけ、硫黄化合物による触媒被毒で発電性能が大きく低下することが問題となっている。すなわち、空気中の硫黄化合物が燃料電池のカソード触媒を被毒して発電性能が大きく低下し、また、高分子電解質膜を硫黄化合物が透過して、アノード触媒を被毒して発電性能が大きく低下する場合がある。さらに、都市ガスを改質して燃料ガスを生成するような場合、都市ガス中に含まれるメチルメルカプタンが燃料ガス中に混入するおそれがある。このような場合も、燃料電池の触媒が被毒して、発電性能が大きく低下する場合がある。
このような問題に対して、触媒被毒による発電性能の低下後に、触媒性能を回復する処理を行なう燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、周期的に変化する電圧を印加することで、電極触媒表面に付着している不純物を除去する燃料電池システムが開示されている。
また、触媒層から排出される水の量を増加させることにより、触媒活性を回復させる燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、通常の運転時よりも燃料電池の温度を下げる等して、触媒層から排出される水の量を増加させることで、触媒活性を回復させる燃料電池システムが開示されている。そして、特許文献2では、酸化剤ガスに含まれる硫黄化合物の濃度を検知して、燃料電池に流入した硫黄化合物の積算量が所定量以上となった場合や燃料電池の単位セルの電圧降下量が所定量以上になると触媒活性を回復させる。
さらに、燃料水素中及び酸化剤ガス中の各種不純物の全てを一つのセンサにより監視して燃料電池を保護する燃料電池の保護システムが知られている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3では、燃料電池本体の上流側に、不純物監視センサを配置して、該不純物監視センサの電位を検知することにより、燃料水素中及び酸化剤ガス中の各種不純物を監視する燃料電池の保護システムが開示されている。
特開2006−19279号公報 特開2008−77911号公報 特開2008−243430号公報
ところで、PEFCの運転中における電池性能低下には、不純物の混入によるガス拡散電極を構成する触媒の材料劣化、ガス流路におけるフラッディングの進行による反応ガスのガス拡散電極への透過の妨げ、反応ガスのクロスリークが発生すること等によるセルの破損等が挙げられる。
しかしながら、上記特許文献2に開示されている燃料電池システムでは、単位セルの電圧降下量を検知するだけでは、電池性能の低下の原因を特定できないという課題があった。また、酸化剤ガスに含まれる硫黄化合物の濃度を検知する硫黄化合物検知手段を設けることにより、硫黄化合物の燃料電池への流入による電池性能の原因を特定することができるが、高価なセンサを設けなければならず、コストの増加という課題がある。
また、上記特許文献3に開示されている燃料電池の保護システムでは、単に、不純物監視センサである燃料電池の電位を検知するだけであるため、電池性能の低下の原因を特定することができない。
そして、上記特許文献1燃料電池システムでは、周期的に回復処理を行っているため、燃料電池の電極の触媒に不純物が付着して、電池性能が低下していない場合でも回復処理を行なうおそれがあり、このような場合、余分なエネルギー消費するばかりでなく、触媒層を構成するカーボンの劣化が生じるおそれがある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、かつ、低コストで、硫黄化合物による燃料電池の触媒被毒による電池性能の低下を検知することができる、燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法を提供することを目的とする。
ところで、高分子電解質形燃料電池(以下、PEFCという)の電池性能の低下の原因(劣化メカニズム)は、白金触媒の硫黄化合物による被毒、白金触媒の肥大化、高分子電解質膜の劣化、カーボン担体の腐食、及び微小ショート(例えば、ガス拡散層を構成する炭素繊維が、一方の電極から他方の電極に突き刺したような場合に生じるショート)の増加に大別することができる。そこで、本発明者等は、後述するように、それぞれの劣化が進行したPEFCについて、不活性ガス雰囲気下における電気化学挙動(電流値又は電気量)を調べた試験を行った結果、以下のような知見を得た。
図11は、様々な要因で劣化が進行したPEFCについて、不活性ガス雰囲気下におけるボルタンメタリー試験を行った結果を示す表である。
図11に示すように、硫黄化合物による白金触媒の被毒が進行した場合、PEFCの電流値又は電気量は、PEFCの一方の電極を0.3V〜0.6Vで掃引すると、劣化していないPEFCの電流値又は電気量とほぼ同じであった。また、PEFCの一方の電極を0.6V〜0.9Vで掃引すると、劣化していないPEFCの電流値又は電気量に比べて著しく減少した。さらに、PEFCの一方の電極を0.9V〜1.2Vで掃引すると、劣化していないPEFCの電流値又は電気量に比べて著しく増加した。
また、白金触媒の肥大化が進行した場合、PEFCの電流値又は電気量は、PEFCの一方の電極を0V〜0.4Vで掃引すると、劣化していないPEFCの電流値又は電気量に比べて減少した。また、PEFCの一方の電極を0.4V〜0.6Vで掃引すると、劣化していないPEFCの電流値又は電気量とほぼ同じであった。さらに、PEFCの一方の電極を0.6V〜1.2Vで掃引すると、劣化していないPEFCの電流値又は電気量に比べて減少した。
また、高分子電解質膜の劣化が進行した場合、PEFCの電流値又は電気量は、PEFCの一方の電極を0V〜1.2Vで掃引すると、劣化していないPEFCの電流値又は電気量に比べて増加した。
また、カーボン担体の腐食が進行した場合、PEFCの電流値又は電気量は、PEFCの一方の電極を0V〜1.2Vで掃引すると、劣化していないPEFCの電流値又は電気量に比べて減少した。
さらに、微小ショートが増加した場合、PEFCの電流値又は電気量は、PEFCの一方の電極を0V〜1.2Vで掃引すると、劣化していないPEFCの電流値又は電気量に比べて漸次増加した。
そして、上記知見から、本発明者等は以下に記載する構成を採用することが、上記本発明の目的を達成する上で極めて有効であるということを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明に係る燃料電池システムは、少なくとも白金触媒を含む触媒層とガス拡散層からなる一対の電極及び電解質層を有する高分子電解質形燃料電池(以下、燃料電池)を複数有する燃料電池スタックと、一方の前記電極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、他方の前記電極に不活性ガスを供給する不活性ガス供給路と、前記燃料電池の電圧を制御する電圧印加器と、前記燃料電池の電流値を検知する電流検知器と、制御器と、被毒判定器と、を備え、前記制御器は、前記燃料電池の被毒判定をする際に、前記一方の電極に前記燃料ガスが供給され、前記他方の電極(検知極)に不活性ガスが供給された状態で、前記検知極の電位が白金触媒の表面で、水素の吸脱着反応が起こる電位より高く、酸化物が生成する電位より低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、前記電流検知器は、前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知し、その後、前記制御器は、前記検知極の電位が、前記白金触媒の表面に酸化物が生成する電位となる電圧(以下、第2の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、前記電流検知器は、前記第2の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知し、前記被毒判定器は、前記燃料電池の被毒判定をする際における前記第2の電圧が印加されたときの電流値(以下、第2電流値)と前記燃料電池の被毒判定をする際における前記第1の電圧が印加されたときの電流値(以下、第1電流値)との差が、前記燃料電池初期における第2電流値と前記燃料電池初期における第1電流値との差よりも小さい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定する。
これにより、簡易な構成で、かつ、低コストで、硫黄化合物による燃料電池の触媒被毒による電池性能の低下を検知することができる。
また、本発明に係る燃料電池システムは、少なくとも白金触媒を含む触媒層とガス拡散層からなる一対の電極及び電解質層を有する高分子電解質形燃料電池を複数有する燃料電池スタックと、一方の前記電極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、他方の前記電極に不活性ガスを供給する不活性ガス供給路と、前記高分子電解質形燃料電池に電圧を印加する電圧印加器と、前記高分子電解質形燃料電池の電流値を検知する電流検知器と、制御器と、被毒判定器と、を備え、前記制御器は、前記燃料電池の被毒判定をする際に、前記一方の電極に前記燃料ガスが供給され、前記他方の電極(検知極)に不活性ガスが供給された状態で、前記検知極の電位が白金触媒の表面で、水素の吸脱着反応が起こる電位より高く、酸化物が生成する電位より低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、前記電流検知器は、前記第1の電圧が印加されたときの前記高分子電解質形燃料電池の電流値を検知し、その後、前記制御器は、前記検知極の電位が、前記白金触媒に吸着した硫黄化合物が酸化される電位となる電圧(以下、第3の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、前記電流検知器は、前記第3の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知し、前記被毒判定器は、前記燃料電池の被毒判定をする際における前記第3の電圧が印加されたときの電流値(以下、第3電流値)と前記燃料電池の被毒判定をする際における前記第1の電圧が印加されたときの電流値(以下、第1電流値)との差が、前記燃料電池初期における第1電流値と前記燃料電池初期における第3電流値との差よりも大きい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定する。
これにより、簡易な構成で、かつ、低コストで、硫黄化合物による燃料電池の触媒被毒による電池性能の低下を検知することができる。
また、本発明に係る燃料電池システムでは、前記制御器は、前記燃料電池の被毒判定をする際に、前記検知極の電位が、前記白金触媒に吸着した硫黄化合物が酸化される電位となる電圧(以下、第3の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、前記電流検知器は、前記第3の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知し、前記被毒判定器は、前記燃料電池の被毒判定をする際における第2電流値と前記燃料電池の被毒判定をする際における第1電流値との差が、前記燃料電池初期における第2電流値と前記燃料電池初期における第1電流値との差よりも小さく、かつ、前記燃料電池の被毒判定をする際における第3電流値と前記燃料電池の被毒判定をする際における第1電流値との差が、前記燃料電池初期における第3電流値と前記燃料電池初期における第1電流値との差よりも大きい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定してもよい。
また、本発明に係る燃料電池システムでは、前記第1の電圧が0.3V以上かつ0.6V以下であり、前記第2の電圧が0.6Vより大きくかつ0.9V以下であってもよい。
また、本発明に係る燃料電池システムでは、前記第1の電圧が0.3V以上かつ0.6V以下であり、前記第3の電圧が0.9Vより大きくかつ1.2V以下であってもよい。
また、本発明に係る燃料電池システムでは、前記制御器は、前記第1の電圧、前記第2の電圧、及び前記第3の電圧の順で電圧を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御してもよい。
また、本発明に係る燃料電池システムでは、前記不活性ガスは、窒素ガス、メタンガス、及び二酸化炭素ガスからなるガス群から選ばれる1以上のガスであってもよい。
また、本発明に係る燃料電池システムは、被毒回復処理器をさらに備え、前記制御器は、前記被毒判定器が前記燃料電池スタックの前記燃料電池が被毒されていると判定すると、前記被毒回復処理器が被毒された前記燃料電池の被毒除去を行うように制御してもよい。
また、本発明に係る燃料電池システムでは、前記被毒回復処理器は、前記検知極に所定の電圧を印加して、前記燃料電池の被毒除去を行ってもよい。
さらに、本発明に係る燃料電池システムでは、前記被毒回復処理器は、前記燃料電池の前記触媒層から排出される水の量を前記燃料電池スタックの発電運転時における前記触媒層から排出される水の量よりも増加させて、前記燃料電池の被毒除去を行ってもよい。
さらに、本発明に係る燃料電池システムでは、前記燃料電池スタックの発電運転時の電圧を検知する電圧検知器をさらに備え、前記制御器は、前記電圧検知器が検知する電圧が、所定値以上低下すると、前記燃料電池の被毒検知を行うように構成されていてもよい。
また、本発明に係る燃料電池システムの運転方法では、少なくとも白金触媒を含む触媒層とガス拡散層からなる一対の電極及び電解質層を有する高分子電解質形燃料電池(以下、燃料電池)を複数有する燃料電池スタックを備える燃料電池システムの運転方法であって、前記一方の電極に前記燃料ガスを供給し、前記他方の電極(検知極)に不活性ガスが供給するステップ(A)と、前記検知極の電位が白金触媒の表面で、水素の吸脱着反応が起こる電位より高く、酸化物が生成する電位より低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を前記燃料電池に印加するステップ(B)と、前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知するステップ(C)と、その後、前記検知極の電位が、前記白金触媒の表面に酸化物が生成する電位となる電圧(以下、第2の電圧)を前記燃料電池に印加するステップ(D)と、前記第2の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知するステップ(E)と、前記ステップ(E)で検知された電流値と、前記ステップ(C)で検知された電流値との差が、前記燃料電池初期における前記第2の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値と前記燃料電池初期における前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値との差よりも小さい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定するステップ(F)と、を備える。
これにより、硫黄化合物による燃料電池の触媒被毒による電池性能の低下を検知することができる。
さらに、本発明に係る燃料電池システムの運転方法は、少なくとも白金触媒を含む触媒層とガス拡散層からなる一対の電極及び電解質層を有する高分子電解質形燃料電池(以下、燃料電池)を複数有する燃料電池スタックを備える燃料電池システムの運転方法であって、前記一方の電極に前記燃料ガスを供給し、前記他方の電極(検知極)に不活性ガスが供給するステップ(G)と、前記検知極の電位が水素酸化還元電位よりも低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を前記燃料電池に印加するステップ(H)と、前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知するステップ(I)と、その後、前記検知極の電位が、前記白金触媒に吸着した硫黄化合物が酸化される電位となる電圧(以下、第3の電圧)を前記燃料電池に印加するステップ(J)と、前記第3の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知するステップ(K)と、前記ステップ(K)で検知された電流値と、前記ステップ(I)で検知された電流値との差が、前記燃料電池初期における前記第3の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値と前記燃料電池初期における前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値との差よりも大きい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定するステップ(L)と、を備える。
これにより、硫黄化合物による燃料電池の触媒被毒による電池性能の低下を検知することができる。
本発明の燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法によれば、簡易な構成で、かつ、低コストで、硫黄化合物による燃料電池の触媒被毒による電池性能の低下を検知することが可能となる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。 図2は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。 図3は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。 図4は、図1乃至図3に示す燃料電池システムにおける燃料電池スタックの概略構成を模式的に示す断面図である。 図5は、本実施の形態1に係る燃料電池システムにおける制御器の記憶部に格納されたカソード被毒判定プログラムを概略的に示すフローチャートである。 図6は、本実施の形態1に係る燃料電池システムにおける制御器の記憶部に格納されたアノード被毒判定プログラムを概略的に示すフローチャートである。 図7は、本発明の実施の形態2に係る燃料電池システムにおける制御器の記憶部に格納されたカソード被毒判定プログラムを概略的に示すフローチャートである。 図8は、本発明の実施の形態3に係る燃料電池システムにおける制御器の記憶部に格納されたカソード被毒判定プログラムを概略的に示すフローチャートである。 図9は、本発明の実施の形態4に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。 図10は、本発明の実施の形態5に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。 図11は、様々な要因で劣化が進行したPEFCについて、不活性ガス雰囲気下におけるボルタンメトリー試験を行った結果を示す表である。 図12は、試験例1におけるカソードの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。 図13は、試験例2におけるカソードの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。 図14は、試験例3におけるカソードの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。 図15は、試験例4におけるカソードの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。 図16は、試験例5におけるカソードの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
[燃料電池システムの構成]
図1乃至図3は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。なお、図1は、燃料電池スタックの発電運転中の模式図であり、図2は、燃料電池スタックのカソードの被毒判定をする際の模式図であり、図3は、燃料電池スタックのアノードの被毒判定をする際の模式図である。
図1乃至図3に示すように、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム100は、高分子電解質形燃料電池(以下、燃料電池という)50が複数有した燃料電池スタック101、燃料ガス供給路201、不活性ガス供給路205、電気化学測定器(電圧印加器)102、電流検知器103、制御器120、及び被毒判定器120aを備えていて、制御器120は、燃料電池50の被毒判定をする際に、一方の電極に燃料ガスが供給され、他方の電極(検知極)に不活性ガスが供給された状態で、検知極の電位が白金触媒の表面で、水素の吸脱着反応が起こる電位より高く、酸化物が生成する電位より低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を燃料電池50に印加するように電気化学測定器102を制御し、電流検知器103は、第1の電圧が印加されたときの燃料電池50の電流値を検知し、その後、制御器120は、検知極の電位が、白金触媒の表面に酸化物が生成する電位となる電圧(以下、第2の電圧)を燃料電池50に印加するように電気化学測定器102を制御し、電流検知器103は、第2の電圧が印加されたときの燃料電池50の電流値を検知し、被毒判定器120aは、燃料電池50の被毒判定をする際における第2の電圧が印加されたときの電流値(以下、第2電流値)と燃料電池50の被毒判定をする際における第1の電圧が印加されたときの電流値(以下、第1電流値)との差が、燃料電池50初期における第2電流値と燃料電池50初期における第1電流値との差よりも小さい場合に、燃料電池50の触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定する。
また、燃料電池システム100は、燃料ガス供給器104、酸化剤ガス供給器105、及び不活性ガス供給器106を備えている。燃料ガス供給器104及び酸化剤ガス供給器105は、それぞれ、燃料電池スタック101に燃料ガス及び酸化剤ガス(反応ガス)を供給する。また、不活性ガス供給器106は、例えば、窒素ガス等の不活性ガスを燃料電池スタック101に供給する。
なお、不活性ガスとしては、燃料電池スタック101の燃料電池50内で、反応しないガスであれば、特に限定されないが、例えば、窒素ガス、メタンガス、及び二酸化炭素ガスからなるガス群から選ばれる1以上のガスであってもよい。また、本実施の形態1においては、燃料電池システム100が燃料ガス供給器104、酸化剤ガス供給器105、及び不活性ガス供給器106を備える構成を例示するが、燃料電池システム100はこれらを必ずしも備える必要はない。燃料ガス供給器104としては、例えば、原料ガスと水から燃料ガス(水素ガス)を生成する水素生成装置を用いてもよく、また、例えば、水素ボンベ、水素吸蔵合金等を用いてもよい。また、酸化剤ガス供給器105としては、例えば、ファンやブロワ等のファン類を使用することができる。さらに、不活性ガス供給器106としては、例えば、不活性ガスが貯えられたタンクと流量調整可能なポンプ、不活性ガスが貯えられたタンクとポンプと流量調整弁等が挙げられる。
燃料ガス供給器104には、燃料ガス供給路201を介して燃料電池スタック101の燃料ガス入口101Aが接続されていて、燃料ガス供給路201の途中には、第1切替器107が設けられている。また、燃料ガス供給路201の第1切替器107より上流側には、燃料ガスの通流を許可/遮断する第1開閉弁108が設けられている。第1切替器107には、第2燃料ガス供給路206の上流端が接続されていて、その下流端は、酸化剤ガス供給路203に接続されている。
第1切替器107は、三方弁で構成されていて、燃料電池スタック101の発電運転中には、燃料ガスが第2燃料ガス供給路206を通流しないように(酸化剤ガス供給路203に燃料ガスが供給されないように)、そのポートを切り替え、燃料電池スタック101の被毒判定する際であって、燃料電池50のアノード4A(図4参照)の被毒を判定する際には、第2燃料ガス供給路206から酸化剤ガス供給路203を経由して、燃料電池50のカソード4B(図4参照)に燃料ガスが供給されるように、そのポートを切り替える。
なお、本実施の形態1においては、第1切替器107は、三方弁で構成したが、これに限定されず、燃料ガス供給路201の第2燃料ガス供給路206との接続部よりも下流側の部分と第2燃料ガス供給路206のそれぞれに開閉弁を設けて、これらの開閉弁から第1切替器107を構成してもよい。また、第1開閉弁108は、例えば、電磁弁等の各種の弁を使用することができる。
また、酸化剤ガス供給器105には、酸化剤ガス供給路203を介して燃料電池スタック101の酸化剤ガス入口101Cが接続されている。また、酸化剤ガス供給路203の途中には、酸化剤ガスの通流を許可/遮断する第2開閉弁109が設けられている。さらに、酸化剤ガス供給路203の第2開閉弁109よりも下流側には、第2燃料ガス供給路206の下流端が接続されている。なお、第2開閉弁109は、例えば、電磁弁等の各種の弁を使用することができる。
さらに、不活性ガス供給器106には、不活性ガス供給路205の上流端が接続されていて、その下流端は、酸化剤ガス供給路203の第2開閉弁109よりも下流側の部分に接続されている。不活性ガス供給路205の途中には、第2切替器110が設けられていて、不活性ガス供給路205の第2切替器110よりも上流側には、第3開閉弁111が設けられている。また、第2切替器110には、第2不活性ガス供給路207の上流端が接続されていて、その下流端は、燃料ガス供給路201の第1切替器107の下流側の部分に接続されている。
第2切替器110は、三方弁で構成されていて、燃料電池50のカソード4B(図4参照)の被毒を判定する際には、不活性ガス供給路205から酸化剤ガス供給路203を経由して、燃料電池50のカソード4Bに不活性ガスが供給されるように(第2不活性ガス供給路207に不活性ガスが供給されないように)、そのポートを切り替える。また、第2切替器110は、燃料電池50のアノード4A(図4参照)の被毒を判定する際には、第2不活性ガス供給路207から燃料ガス供給路201を経由して、燃料電池50のアノード4Aに不活性ガスが供給されるように、そのポートを切り替える。
なお、本実施の形態1においては、第2切替器110は、三方弁で構成したが、これに限定されず、不活性ガス供給路205の第2不活性ガス供給路207との接続部よりも下流側の部分と第2不活性ガス供給路207とのそれぞれに開閉弁を設けて、これらの開閉弁から第2切替器110を構成してもよい。また、第3開閉弁111は、例えば、電磁弁等の各種の弁を使用することができる。
燃料電池スタック101の燃料ガス出口101Bには、該燃料電池スタック101内で未使用の燃料ガスが排出される燃料ガス排出路202が接続されている。また、燃料電池スタック101の酸化剤ガス出口101Dには、該燃料電池スタック101内で未使用の酸化剤ガスが排出される酸化剤ガス排出路204が接続されている。なお、未使用の燃料ガスは、例えば、未使用の酸化剤ガスで充分に希釈してから大気中に排出してもよく、燃料ガス供給器104が、水素生成装置で構成されている場合には、該水素生成装置の燃焼器に供給されてもよい。
また、燃料電池スタック101には、電気配線301を介して、電気化学測定器102、電流検知器103、及び電圧検知器112が接続されていて、電気配線301には、スイッチ113が設けられている。電流検知器103は、スイッチ113を電気的に接続することにより、燃料電池スタック101を流れる電流値を検知し、検知した電流値を電気化学測定器102及び制御器120に出力する。また、電圧検知器112は、燃料電池スタック101の電圧を検知し、検知した電圧値を電気化学測定器102及び制御器120に出力する。
電気化学測定器102は、公知のポテンショスタット/ガルバノスタットを使用することができ、電流検知器103で検知された電流値及び電圧検知器112で検知された電圧値を基にして、電気配線301を介して燃料電池スタック101に流れる電流や燃料電池スタック101に印加する電圧値を制御する。また、電気化学測定器102には、該電気化学測定器102に電力を供給するための電源114が接続されている。電源114としては、例えば、系統電源や二次電池等が挙げられる。
なお、本実施の形態1においては、電気化学測定器102が、電流検知器103で検知された電流値及び電圧検知器112で検知された電圧値を基にして、燃料電池スタック101に印加する電圧値等を制御するように構成したが、これに限定されず、制御器120が、電流検知器103で検知された電流値及び電圧検知器112で検知された電圧値を基にして、電気化学測定器102を介して、燃料電池スタック101に印加する電圧値等を制御するように構成してもよい。また、本実施の形態1においては、燃料電池スタック101全体を流れる電流値を電流検知器103が検知し、燃料電池スタック101全体の電圧値を電圧検知器112が検知するように構成したが、これに限定されず、電流検知器103は燃料電池50毎に電流値を検知し、電圧検知器112は、燃料電池50毎に電圧を検知するように構成されていてもよく、また、電流検知器103は燃料電池スタック101を構成する複数の燃料電池50の中から選択された燃料電池50の電流値を検知し、電圧検知器112は、燃料電池スタック101を構成する複数の燃料電池50の中から選択された燃料電池50の電圧値を検知するように構成されていてもよい。
また、制御器120は、被毒判定器120a及び被毒回復処理器120bを有している。制御器120は、マイコン等のコンピュータによって構成されており、CPU、半導体メモリから構成された内部メモリ、通信部、及びカレンダー機能を有する時計部(いずれも図示せず)を有している。そして、内部メモリに格納された所定のソフトウェアによって、被毒判定器120a及び被毒回復処理器120bが実現されている。ここで、本発明において、制御器は、単独の制御器だけでなく、複数の制御器が協働して燃料電池システム100の制御を実行する制御器群をも意味する。このため、制御器120は、単独の制御器から構成される必要はなく、複数の制御器が分散配置され、それらが協働して燃料電池システム100を制御するように構成されていてもよい。
そして、制御器120の被毒回復処理器120bは、例えば、電気化学測定器102に電圧印加指令を出力し、燃料電池スタック101に所定の電圧を印加することで、燃料電池50のアノード4A又はカソード4Bの電位を上げ、アノード4A又はカソード4Bの被毒回復処理を行なってもよい。また、被毒回復処理器120bは、例えば、図示されない加湿器に加湿量増大の指令を出力し、燃料電池スタック101の燃料電池50のアノード4Aに供給される燃料ガスの加湿量、又はカソード4Bに供給される酸化剤ガスの加湿量を、燃料電池スタック101(燃料電池システム100)の発電運転時よりも増加することで、燃料電池50のアノード4A又はカソード4Bから排出される水の量を増加させることで、燃料電池50のアノード4A又はカソード4Bの被毒回復処理を行ってもよい。
[燃料電池スタックの構成]
次に、本実施の形態1に係る燃料電池システム100の燃料電池スタック101の構成について、図4を参照しながら詳細に説明する。
図4は、図1乃至図3に示す燃料電池システム100における燃料電池スタック101の概略構成を模式的に示す断面図である。
図4に示すように、燃料電池スタック101は、例えば、セル積層体70と、該セル積層体70の両端に配置された端板71A、71Bと、セル積層体70と端板71A、71Bを燃料電池50の積層方向において締結する締結具(図示せず)と、を有する。また、端板71Aとセル積層体70の間には、絶縁板72A及び集電板73Aが配置されている。同様に、端板71Bとセル積層体70との間には、絶縁板72B及び集電板73Bが配置されている。セル積層体70は、複数の燃料電池50を有していて、該複数の燃料電池50がその厚み方向に積層されて形成されている。
セル積層体70には、燃料ガス供給マニホールド、酸化剤ガス供給マニホールド、冷却媒体供給マニホールド、燃料ガス排出マニホールド、酸化剤ガス排出マニホールド、及び冷却媒体排出マニホールドが設けられている(いずれも図示せず)。また、端板71A、絶縁板72A、及び集電板73Aには、燃料ガス供給マニホールド等の各マニホールドに対応する(連通する)貫通孔が設けられている。そして、端板71Aの燃料ガス供給マニホールド等の各マニホールドに対応する貫通孔には、それぞれ、燃料ガス供給路201、冷却媒体供給路(図示せず)、酸化剤ガス供給路203、燃料ガス排出路202、冷却媒体排出路(図示せず)、及び酸化剤ガス排出路204が接続されている。これにより、燃料ガス等が燃料電池スタック101に供給され、使用されなかった燃料ガス等が燃料電池スタック101から排出される。
また、図4に示すように、燃料電池50は、MEA(Membrane−Electrode−Assembly:電解質層−電極接合体)5と、一対のセパレータ6A、6Bと、一対のガスケット7A、7Bと、を備えている。
MEA5は、一対の電極4A、4Bと、一対の電極4A、4Bの間に配置された電解質層1と、を有している。本実施の形態1においては、電極4Aがアノード4Aを構成し、電極4Bがカソード4Bを構成している。電解質層1としては、例えば、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜(例えば、米国デュポン(株)製のNafion(商品名))を用いることができる。
電解質層1は、本実施の形態1においては、略4角形(ここでは、矩形)の形状を有している。電解質層1の両面には、その周縁部より内方に位置するように、アノード4A及びカソード4Bが、それぞれ配設されている。なお、電解質層1の周縁部には、燃料ガス供給マニホールド孔、冷却媒体供給マニホールド孔、酸化剤ガス供給マニホールド孔、燃料ガス排出マニホールド孔、冷却媒体排出マニホールド孔、及び酸化剤ガス排出マニホールド孔が厚み方向に貫通するように設けられている(図示せず)。
アノード4Aは、電解質層1の一方の主面上に設けられ、電極触媒(白金及び白金を含む合金(以下、白金触媒ともいう))を担持した導電性炭素粒子と、水素イオン伝導性を有する高分子電解質との混合物からなるアノード触媒層2Aと、アノード触媒層2Aの主面上に設けられ、ガス通気性と導電性を兼ね備えたアノードガス拡散層3Aと、を有している。同様に、カソード4Bは、電解質層1の他方の主面上に設けられ、電極触媒(白金及び白金を含む合金(以下、白金触媒ともいう))を担持した導電性炭素粒子と、水素イオン伝導性を有する高分子電解質との混合物からなるカソード触媒層2Bと、カソード触媒層2Bの主面上に設けられ、ガス通気性と導電性を兼ね備えたカソードガス拡散層3Bと、を有している。
なお、アノード触媒層2A及びカソード触媒層2Bは、白金及び白金を含む合金からなる電極触媒を担持した導電性炭素粒子と、高分子電解質と、分散媒と、を含む触媒層形成用インクを用いて、当該分野で公知の方法により形成することができる。また、アノードガス拡散層3A及びカソードガス拡散層3Bを構成する材料としては、特に限定されることなく、当該分野で公知のものを使用することができ、例えば、カーボンクロスやカーボンペーパーなどの導電性多孔質基材を用いることができる。また、この導電性多孔質基材には、従来公知の方法で撥水処理を施しても構わない。
また、MEA5のアノード4A及びカソード4Bの周囲(正確には、アノードガス拡散層3A(カソードガス拡散層3B)の外方)には、電解質層1を挟んで一対の環状のガスケット7A、7Bが配設されている。これにより、燃料ガスや酸化剤ガスが燃料電池50外にリークされることが抑制され、また、燃料電池50内でこれらのガスが互いに混合されることが抑制される。なお、ガスケット7A、7Bの周縁部には、厚み方向の貫通孔からなる燃料ガス供給マニホールド孔等の各マニホールド孔(図示せず)が設けられている。
また、MEA5とガスケット7A、7Bを挟むように、導電性を有する板状の一対のセパレータ6A、6Bが配設されている。これにより、MEA5が機械的に固定され、複数の燃料電池50をその厚み方向に積層したときには、MEA5が電気的に接続される。なお、これらのセパレータ6A、6Bは、熱伝導性及び導電性に優れた金属、黒鉛、または、黒鉛と樹脂を混合したものを使用することができ、例えば、カーボン粉末とバインダー(溶剤)との混合物を射出成形により作製したものやチタンやステンレス鋼製の板の表面に金メッキを施したものを使用することができる。
セパレータ6Aのアノード4Aと接触する一方の主面には、燃料ガスが通流するための溝状の燃料ガス流路8が設けられており、また、他方の主面には、冷却媒体が通流するための溝状の冷却媒体流路10が設けられている。同様に、セパレータ6Bのカソード4Bと接触する一方の主面には、酸化剤ガスが通流するための溝状の酸化剤ガス流路9が設けられており、また、他方の主面には、冷却媒体が通流するための溝状の冷却媒体流路10が設けられている。なお、セパレータ6A、6Bの主面の周縁部には、燃料ガス供給マニホールド孔等の各マニホールド孔が設けられている(図示せず)。
これにより、燃料電池50では、アノード4A及びカソード4Bに、それぞれ、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給され、これらのガスが反応して電気と熱が発生する。また、冷却水等の冷却媒体を冷却媒体流路10に通流させることにより、発生した熱の回収が行われる。
[燃料電池システムの動作]
次に、本実施の形態1に係る燃料電池システムの一般的動作及び被毒判定動作(運転方法)について、図1乃至図5を参照しながら説明する。なお、以下の諸動作は、制御器120が燃料電池システム100を制御することにより遂行される。
まず、実施の形態1に係る燃料電池システムの一般的動作(発電運転)について、図1及び図4を参照しながら説明する。
制御器120は、燃料ガスが、第2燃料ガス供給路206を通流しないように(酸化剤ガス供給路203に燃料ガスが供給されないように)、第1切替器107のポートを切り替えさせる。ついで、制御器120は、第1開閉弁108及び第2開閉弁109に弁の開放指令を出力して、燃料ガス供給器104及び酸化剤ガス供給器105に運転開始指令を出力する。
これにより、燃料ガス供給器104から燃料ガス供給路201に燃料ガスが供給され、酸化剤ガス供給器105から酸化剤ガス供給路203に酸化剤ガスが供給される。燃料ガス供給路201に供給された燃料ガス及び酸化剤ガス供給路203に供給された酸化剤ガスは、それぞれ、燃料電池スタック101に供給される。燃料電池スタック101では、アノード4Aに供給された燃料ガスと、カソード4Bに供給された酸化剤ガスとが電気化学的に反応して、電気と熱が生成され、図示されない電力調整器により生成された電気が取り出される。そして、燃料電池スタック101で使用されなかった燃料ガスは、燃料ガス排出路202に排出される。同様に、燃料電池スタック101で使用されなかった酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出路204に排出される。また、燃料電池スタック101には、冷却水等の冷却媒体が供給され、冷却媒体は各燃料電池50の冷却媒体流路10に通流され、発生した熱の回収が行われる。
ところで、酸化剤ガス供給器105から供給される酸化剤ガスが空気である場合、空気中には、硫黄酸化物や二酸化硫黄等の大気汚染物質が含まれているため、空気とともに、これらの硫黄酸化物等の硫黄化合物が酸化剤ガス供給器105から酸化剤ガス供給路203に混入して、燃料電池スタック101(燃料電池50)のカソード触媒層2Bを構成する白金触媒を被毒する場合がある。また、燃料電池スタック101(燃料電池50)のカソード4Bに混入した硫黄化合物は、高分子電解質膜1を透過して、アノード触媒層2Aを構成する白金触媒を被毒する場合がある。さらに、燃料ガス供給器104が水素生成装置で構成されているような場合に、都市ガス中に含まれるメチルメルカプタンが燃料ガス中に混入して、アノード触媒層2Aを構成する白金触媒を被毒する場合がある。
しかしながら、本実施の形態1に係る燃料電池システム100では、燃料電池スタック101(燃料電池システム100)の発電停止中に、燃料電池スタック101の燃料電池50の被毒判定動作、すなわち、触媒層を構成する白金触媒が硫黄化合物による被毒されているか否かの判定を行う。これにより、燃料電池スタック101(燃料電池50)の電池性能の低下の原因を特定して、適切な処理を行うことができる。
ここで、燃料電池スタック101の発電停止中とは、燃料電池システム100(正確には、燃料電池システム100の制御器120)の運転停止指令が入力されたときから燃料電池システム100(正確には、燃料電池システム100の制御器120)に外部から運転起動指令が入力されるまでの間をいう。また、燃料電池スタック101の発電運転中とは、燃料電池システム100(正確には、燃料電池システム100の制御器120)に外部から運転起動指令が入力されたときから、外部から燃料電池システム100(正確には、燃料電池システム100の制御器120)の運転停止指令が入力されるまでの間をいう。
次に、本実施の形態1に係る燃料電池システム100の被毒判定動作について、図2乃至図6を参照しながら説明する。
まず、燃料電池スタック101(燃料電池50)のカソード触媒層2Bの被毒判定動作について説明する。
図5は、本実施の形態1に係る燃料電池システム100における制御器120の記憶部に格納されたカソード被毒判定プログラムを概略的に示すフローチャートである。
図5に示すように、まず、燃料電池システム100外部から燃料電池システム100の制御器120に運転停止指令が入力される(ステップS101)。すると、制御器120は、燃料電池システム100の各機器に運転停止指令を出力し、本プログラムと同時に、燃料電池システム100の運転停止処理が行われる。
次に、制御器120は、燃料ガス供給器104及び酸化剤ガス供給器105に停止指令を出力する(ステップS102)。これにより、燃料ガス供給器104から燃料ガス供給路201を介して燃料電池スタック101に燃料ガスの供給が停止する。同様に、酸化剤ガス供給器105から酸化剤ガス供給路203を介して燃料電池スタック101に酸化剤ガスの供給が停止する。
次に、制御器120は、第2開閉弁109に弁の閉止指令を出力し、第3開閉弁111に弁の開放指令を出力し、第2切替器110にポートの切り替え指令を出力する(ステップS103)。ついで、制御器120は、不活性ガス供給器106に運転開始指令を出力する(ステップS104)。これにより、不活性ガス供給器106から不活性ガス供給路205に供給された不活性ガスは、酸化剤ガス供給路203を通流して、燃料電池50のカソード4Bに供給される。
次に、制御器120は、電圧検知器112で検知された燃料電池スタック101の電圧値Vを取得し(ステップS105)、ステップS105で取得した電圧値Vが所定の電圧値V1(例えば、100mV)よりも小さいかを判断する(ステップS106)。ここで、所定の電圧値V1は、燃料電池スタック101の各燃料電池50のカソード4Bに不活性ガスが充分に供給されたときの燃料電池スタック101の電圧値をいう。
ステップS106で、ステップS105で取得した電圧値Vが所定の電圧値V1以上である場合には、ステップS105に戻り、ステップS105で取得した電圧値Vが所定の電圧値V1よりも小さくなるまで、ステップS105及びステップS106を繰り返す。一方、ステップS105で取得した電圧値Vが所定の電圧値V1よりも小さい場合には、ステップS107に進む。なお、本実施の形態1においては、燃料電池スタック101(燃料電池50)の電圧値Vを取得して、燃料電池スタック101の各燃料電池50のカソード4Bに不活性ガスが充分に供給されたか否かの判断を行ったが、これに限定されない。例えば、燃料電池スタック101の各燃料電池50のカソード4Bに不活性ガスが充分に供給される時間T1を予め実験等で求めておき、不活性ガス供給器106を運転開始させてからの時間Tを検知して、当該時間Tが時間T1以上になったか否かにより、燃料電池スタック101の各燃料電池50のカソード4Bに不活性ガスが充分に供給されたか否かの判断を行ってもよい。
ステップS107では、制御器120は、電気化学測定器102に燃料電池スタック101に第1の電圧を印加させ、第1の電圧が印加された燃料電池スタック101の電流値A1(以下、第1電流値A1)を電流検知器103から取得する(ステップS108)。ここで、第1の電圧とは、燃料電池スタック101(燃料電池50)の一方の電極(ここでは、アノード4A)に燃料ガスが供給され、他方の電極(検知極)(ここでは、カソード4B)に、不活性ガスが供給された状態で、検知極の白金触媒の表面で、水素の吸脱着反応が起こる電位より高く、酸化物が生成する電位より低い電位となる電圧をいう。換言すると、第1の電圧とは、燃料電池スタック101(燃料電池50)の一方の電極(ここでは、アノード4A)に燃料ガスが供給され、検知極(ここでは、カソード4B)に、不活性ガスが供給された状態で、検知極の白金触媒の表面で、水素の吸脱着反応および酸化物の生成反応が起こらない電圧をいう。第1の電圧としては、例えば、0.3V以上、かつ、0.6Vよりも小さい電圧であってもよい。
次に、制御器120は、電気化学測定器102に燃料電池スタック101に第2の電圧を印加させ(ステップS109)、第2の電圧が印加された燃料電池スタック101の電流値A2(以下、第2電流値A2)を電流検知器103から取得する(ステップS110)。ここで、第2の電圧とは、燃料電池スタック101(燃料電池50)の一方の電極(ここでは、アノード4A)に燃料ガスが供給され、検知極(ここでは、カソード4B)に、不活性ガスが供給された状態で、検知極の電位が白金触媒の表面に酸化物が生成する電位となる電圧をいう。第2の電圧としては、例えば、0.6V以上、かつ、0.9Vよりも小さい電圧であってもよい。
次に、制御器120(被毒判定器120a)は、ステップS110で取得した第2電流値A2と、ステップS108で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第2電流値a2と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差よりも小さいかを判断する(ステップS111)。ここで、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1及び第2電流値a2とは、燃料電池システム100の発電運転を初めて行う前(燃料電池スタック101(燃料電池50)に初めて反応ガスを供給する前)、すなわち、燃料電池スタック101(燃料電池50)が被毒されていない状態で検知された第1電流値及び第2電流値をいう。なお、燃料電池スタック101(燃料電池50)の第1電流値a1及び第2電流値a2は、燃料電池システム100を設置して、燃料電池スタック101(燃料電池50)に反応ガスを供給する前に、燃料ガスと不活性ガスを供給して、検知した電流値を制御器120の内部メモリ等の記憶媒体に記憶させてもよく、予め実験等で求めた第1電流値a1及び第2電流値a2を内部メモリ等の記憶媒体に記憶させてもよい。
ステップS111で、ステップS110で取得した第2電流値A2と、ステップS108で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第2電流値a2と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差よりも小さい場合には、ステップS112に進み、ステップS110で取得した第2電流値A2と、ステップS108で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第2電流値a2と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差以上である場合には、ステップS114に進む。
ステップS112では、制御器120(被毒判定器120a)は、燃料電池スタック101(燃料電池50)の触媒層(ここでは、カソード触媒層2B)が硫黄化合物で被毒されていると判定する。そして、制御器120は、被毒回復処理器120bに、燃料電池スタック101(燃料電池50)の回復処理指令を出力して(ステップS113)、本プログラムを終了する。ここで、硫黄化合物とは、二酸化硫黄等の硫黄酸化物、硫化水素、及びメチルメルカプタン等のメルカプタン(チオール)からなる化合物群から選ばれる1以上の化合物をいう。
なお、燃料電池スタック101(燃料電池50)の被毒回復処理器120bによる回復処理は、例えば、特開2006−19279号公報や特開2008−77911号公報等に開示されているような方法で、燃料電池スタック101(燃料電池50)のカソード触媒層2Bに付着した硫黄化合物を酸化等して除去する。
一方、ステップS114では、制御器120(被毒判定器120a)は、燃料電池50は被毒されていないと判定し、本プログラムを終了する。
次に、燃料電池スタック101(燃料電池50)のアノード触媒層2Aの被毒判定動作について説明する。
図6は、本実施の形態1に係る燃料電池システム100における制御器120の記憶部に格納されたアノード被毒判定プログラムを概略的に示すフローチャートである。
図6に示すように、燃料電池スタック101(燃料電池50)のアノード触媒層2Aの被毒判定動作(アノード被毒判定プログラム)は、ステップS102−1及びステップS103−1以外は、図5に示すカソード被毒判定プログラムの各ステップと同じように行われる。このため、以下では、ステップS102−1、ステップS103−1及びステップS104について説明する。
ステップS102−1では、制御器120は、酸化剤ガス供給器105に停止指令を出力し、ステップS103−1では、制御器120は、第2開閉弁109に弁の閉止指令を出力し、第3開閉弁111に弁の開放指令を出力し、第1切替器107及び第2切替器110にポートの切り替え指令を出力する。これにより、燃料ガス供給器104から燃料ガス供給路201に供給された燃料ガスは、第1切替器107で、第2燃料ガス供給路206を通流して、酸化剤ガス供給路203に供給される。酸化剤ガス供給路203に供給された燃料ガスは、酸化剤ガス供給路203を通流して、燃料電池スタック101(燃料電池50)のカソード4Bに供給される。
ついで、制御器120は、不活性ガス供給器106に運転開始指令を出力する(ステップS104)。これにより、不活性ガス供給器106から不活性ガス供給路205に供給された不活性ガスは、第2不活性ガス供給路207を通流して、燃料ガス供給路201の第1切替器107より下流側の部分に供給される。燃料ガス供給路201に供給された不活性ガスは、燃料ガス供給路201を通流して、燃料電池スタック101(燃料電池50)のアノード4Aに供給される。
このように、燃料電池スタック101(燃料電池50)のアノード4Aに不活性ガスを供給して、カソード4Bに燃料ガスを供給することで、アノード触媒層2Aを構成する白金触媒が硫黄化合物によって被毒されたか否かを判定することができる。
そして、本実施の形態1に係る燃料電池システム100では、燃料電池スタック101(燃料電池50)の被毒判定する際の第2電流値A2と第1電流値A1の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第2電流値a2と第1電流値a1の差よりも小さい場合には、燃料電池スタック101(燃料電池50)の触媒層(白金触媒)が被毒されていると判定し、燃料電池スタック101の被毒回復処理を行うタイミングを適切に判断することができる。さらに、不必要なカソード触媒層2B/又はアノード触媒層2Aの回復処理を抑制することにより、カソード触媒層2B及び/又はアノード触媒層2Aを構成するカーボンの劣化を抑制することができる。
なお、本実施の形態1において、燃料電池スタック101(燃料電池50)の被毒判定を行う前、すなわち、ステップS107を行う前に、所定の電圧(例えば、0〜1V)を燃料電池スタック101(燃料電池50)の検知極に印加して、検知極をクリーニングする、すなわち、検知極に吸着した物質のうち、容易に酸化除去しうる物質を除去する、ことで、硫黄化合物による触媒被毒をより正確に検知(判定)することができる。
また、本実施の形態1において、燃料電池スタック101(燃料電池50)の発電停止中(燃料電池システム100の運転停止毎)に、燃料電池スタック101の燃料電池50の被毒判定動作を行ったが、これに限定されない。例えば、燃料電池スタック101(燃料電池50)の発電運転中に、燃料電池スタック101(燃料電池50)の電圧値を検知しておき、該検知した電圧値が所定値以上低下した場合に、燃料電池システム100の運転を強制的に停止する、又は外部から運転停止指令が入力された後の燃料電池システム100の運転停止動作を行う際に、燃料電池スタック101の燃料電池50の被毒判定動作を行ってもよい。ここで、電圧値が所定値以上低下とは、例えば、通常の経時劣化による電池電圧の低下よりも大きい低下量をいい、電圧値が、10μV/h以上の速度で低下したような場合が挙げられる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る燃料電池システム100は、実施の形態1に係る燃料電池システム100と基本的構成は同じであるが、燃料電池スタック101(燃料電池50)の被毒判定動作が異なる。
図7は、本発明の実施の形態2に係る燃料電池システム100における制御器120の記憶部に格納されたカソード被毒判定プログラムを概略的に示すフローチャートである。
図7に示すように、ステップS201〜ステップS208までは、実施の形態1に係る燃料電池システム100における燃料電池スタック101(燃料電池50)のカソード被毒判定動作のステップS101〜ステップS108(図5参照)と同じである。このため、ステップS201〜ステップS208までの説明を省略する。
ステップS209では、制御器120は、電気化学測定器102に燃料電池スタック101に第3の電圧を印加させ、第3の電圧が印加された燃料電池スタック101の電流値A3(以下、第3電流値A3)を電流検知器103から取得する(ステップS210)。ここで、第3の電圧とは、燃料電池スタック101(燃料電池50)の一方の電極(ここでは、アノード4A)に燃料ガスが供給され、検知極(ここでは、カソード4B)に、不活性ガスが供給された状態で、検知極の電位が白金触媒に吸着した硫黄化合物が酸化される電位となる電圧をいう。第3の電圧としては、例えば、0.9V以上、かつ、1.2V以下の電圧であってもよい。
次に、制御器120(被毒判定器120a)は、ステップS210で取得した第3電流値A3と、ステップS208で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第3電流値a3と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差よりも大きいかを判断する(ステップS211)。ここで、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1及び第3電流値a3とは、燃料電池システム100の発電運転を初めて行う前(燃料電池スタック101(燃料電池50)に初めて反応ガスを供給する前)、すなわち、燃料電池スタック101(燃料電池50)が被毒されていない状態で検知された第1電流値及び第3電流値をいう。なお、燃料電池スタック101(燃料電池50)の第1電流値a1及び第3電流値a3は、燃料電池システム100を設置して、燃料電池スタック101(燃料電池50)に反応ガスを供給する前に、燃料ガスと不活性ガスを供給して、検知した電流値を制御器120の内部メモリ等の記憶媒体に記憶させてもよく、予め実験等で求めた第1電流値a1及び第3電流値a3を内部メモリ等の記憶媒体に記憶させてもよい。
ステップS211で、ステップS210で取得した第3電流値A3と、ステップS208で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第3電流値a3と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差よりも大きい場合には、ステップS212に進み、ステップS210で取得した第3電流値A3と、ステップS208で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第3電流値a3と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差以下である場合には、ステップS214に進む。
ステップS212では、制御器120(被毒判定器120a)は、燃料電池スタック101(燃料電池50)の触媒層(ここでは、カソード触媒層2B)が硫黄化合物で被毒されていると判定する。そして、制御器120は、被毒回復処理器120bに、燃料電池スタック101(燃料電池50)の回復処理指令を出力して(ステップS213)、本プログラムを終了する。
なお、燃料電池スタック101(燃料電池50)の被毒回復処理器120bによる回復処理は、例えば、特開2006−19279号公報や特開2008−77911号公報等に開示されているような方法で、燃料電池スタック101(燃料電池50)のカソード触媒層2Bに付着した硫黄化合物を酸化等して除去する。
一方、ステップS214では、制御器120(被毒判定器120a)は、燃料電池50は被毒されていないと判定し、本プログラムを終了する。
なお、燃料電池スタック101(燃料電池50)のアノード触媒層2Aの被毒判定動作(アノード被毒判定プログラム)は、ステップS202及びステップS203以外は、図7に示すカソード被毒判定プログラムの各ステップと同じように行われ、また、ステップS202及びステップS203は、図6に示すステップS102−1及びステップS103−1と同様に行われる。
このように構成された本実施の形態2に係る燃料電池システム100であっても、実施の形態1に係る燃料電池システム100と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る燃料電池システム100は、実施の形態1に係る燃料電池システム100と基本的構成は同じであるが、燃料電池スタック101(燃料電池50)の被毒判定動作が異なる。
図8は、本発明の実施の形態3に係る燃料電池システム100における制御器120の記憶部に格納されたカソード被毒判定プログラムを概略的に示すフローチャートである。
図8に示すように、ステップS301〜ステップS310までは、実施の形態1に係る燃料電池システム100における燃料電池スタック101(燃料電池50)のカソード被毒判定動作のステップS101〜ステップS110(図5参照)と同じである。このため、ステップS301〜ステップS310までの説明を省略する。
ステップS311では、制御器120は、電気化学測定器102に燃料電池スタック101に第3の電圧を印加させ、第3の電圧が印加された燃料電池スタック101の電流値A3(以下、第3電流値A3)を電流検知器103から取得する(ステップS312)。ここで、第3の電圧とは、燃料電池スタック101(燃料電池50)の一方の電極(ここでは、アノード4A)に燃料ガスが供給され、検知極(ここでは、カソード4B)に、不活性ガスが供給された状態で、検知極の電位が白金触媒に吸着した硫黄化合物が酸化される電位となる電圧をいう。第3の電圧としては、例えば、0.9V以上、かつ、1.2V以下の電圧であってもよい。
次に、制御器120(被毒判定器120a)は、ステップS310で取得した第2電流値A2と、ステップS308で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第2電流値a2と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差よりも小さく、かつ、ステップS312で取得した第3電流値A3と、ステップS308で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第3電流値a3と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差よりも大きいかを判断する(ステップS313)。ここで、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1及び第3電流値a3とは、燃料電池システム100の発電運転を初めて行う前(燃料電池スタック101(燃料電池50)に初めて反応ガスを供給する前)、すなわち、燃料電池スタック101(燃料電池50)が被毒されていない状態で検知された第1電流値及び第3電流値をいう。なお、燃料電池スタック101(燃料電池50)の第1電流値a1及び第3電流値a3は、燃料電池システム100を設置して、燃料電池スタック101(燃料電池50)に反応ガスを供給する前に、燃料ガスと不活性ガスを供給して、検知した電流値を制御器120の内部メモリ等の記憶媒体に記憶させてもよく、予め実験等で求めた第1電流値a1及び第3電流値a3を内部メモリ等の記憶媒体に記憶させてもよい。
ステップS313で、ステップS310で取得した第2電流値A2と、ステップS308で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第2電流値a2と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差よりも小さく、かつ、ステップS310で取得した第3電流値A3と、ステップS308で取得した第1電流値A1と、の差が、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第3電流値a3と、燃料電池スタック101(燃料電池50)初期の第1電流値a1と、の差よりも大きい場合には、ステップS314に進み、それ以外の場合には、ステップS315に進む。
ステップS314では、制御器120(被毒判定器120a)は、燃料電池スタック101(燃料電池50)の触媒層(ここでは、カソード触媒層2B)が硫黄化合物で被毒されていると判定する。そして、制御器120は、被毒回復処理器120bに、燃料電池スタック101(燃料電池50)の回復処理指令を出力して(ステップS315)、本プログラムを終了する。
なお、燃料電池スタック101(燃料電池50)の被毒回復処理器120bによる回復処理は、例えば、特開2006−19279号公報や特開2008−77911号公報等に開示されているような方法で、燃料電池スタック101(燃料電池50)のカソード触媒層2Bに付着した硫黄化合物を酸化等して除去する。
一方、ステップS316では、制御器120(被毒判定器120a)は、燃料電池50は被毒されていないと判定し、本プログラムを終了する。
なお、燃料電池スタック101(燃料電池50)のアノード触媒層2Aの被毒判定動作(アノード被毒判定プログラム)は、ステップS302及びステップS303以外は、図8に示すカソード被毒判定プログラムの各ステップと同じように行われ、また、ステップS302及びステップS303は、図6に示すステップS102−1及びステップS103−1と同様に行われる。
このように構成された本実施の形態3に係る燃料電池システム100であっても、実施の形態1に係る燃料電池システム100と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図であり、燃料電池スタックの発電運転中の模式図である。
図9に示すように、本発明の実施の形態4に係る燃料電池システム100は、実施の形態1に係る燃料電池システム100と基本的構成は同じであるが、反応ガスの流れにおいて、燃料電池スタック101と並列に基準セル116が設けられている点が異なる。
具体的には、燃料ガス供給路201の第2不活性ガス供給路207の下流端が接続された部分よりも下流側の部分に、燃料ガス分岐路208の上流端が接続されていて、その下流端には、基準セル116の燃料ガス入口116Aが接続されている。また、酸化剤ガス供給路203の不活性ガス供給路205の下流端が接続された部分よりも下流側の部分に、酸化剤ガス分岐路209の上流端が接続されていて、その下流端には、基準セル116の酸化剤ガス入口116Cが接続されている。これにより、燃料ガス供給器104から燃料ガス供給路201に供給された燃料ガスは、燃料ガス供給路201及び燃料ガス分岐路208をそれぞれ通流して、燃料電池スタック101及び基準セル116に供給される。同様に、酸化剤ガス供給器105から酸化剤ガス供給路203に供給された酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給路203及び酸化剤ガス分岐路209をそれぞれ通流して、燃料電池スタック101及び基準セル116に供給される。すなわち、基準セル116は、反応ガスの流れにおいて、燃料電池スタック101と並列に設けられている。
基準セル116は、電解質層と該電解質層を挟むアノード及びカソードを有していて、燃料電池スタック101の燃料電池50と同様に構成されている。このため、基準セル116の構成については、その詳細な説明は省略する。そして、基準セル116では、基準セル116のアノード4Aに供給された燃料ガスと、カソード4Bに供給された酸化剤ガスとが電気化学的に反応して、電気と熱が生成され、図示されない電力調整器により生成された電気が、燃料電池スタック101で生成された電気とともに取り出される。 なお、本実施の形態2においては、燃料電池スタック101の発電運転中に、基準セル116からも電力を取り出す構成としたが、これに限定されず、基準セル116から電力を取り出さない構成としてもよい。また、基準セル116から電力を取り出す場合、燃料電池スタック101の燃料電池50から取り出す電力と同程度の電力を取り出してもよい。
基準セル116の燃料ガス出口116Bには、基準セル116内で未使用の燃料ガスが排出される第2燃料ガス排出路210が接続されている。また、基準セル116の酸化剤ガス出口116Dには、基準セル116内で未使用の酸化剤ガスが排出される第2酸化剤ガス排出路211が接続されている。なお、未使用の燃料ガスは、例えば、未使用の酸化剤ガスで充分に希釈してから大気中に排出してもよく、燃料ガス供給器104が、水素生成装置で構成されている場合には、該水素生成装置の燃焼器に供給されてもよい。
また、基準セル116には、電気配線301を介して、電気化学測定器102、電流検知器103、及び電圧検知器112が並列に接続されていて、電気配線301には、スイッチ113が設けられている。また、電気化学測定器102には、該電気化学測定器102に電力を供給するための電源114が接続されている。電源114としては、例えば、系統電源や二次電池等が挙げられ、燃料電池スタック101を電源114として使用してもよい。
また、このように構成された本実施の形態4に係る燃料電池システム100の燃料電池スタック101(燃料電池50)の被毒判定動作は、実施の形態1に係る燃料電池システム100の燃料電池スタック101(燃料電池50)の被毒判定動作と基本的動作は同じであり、燃料電池スタック101の電流値及び電圧値を検知するのではなく、基準セル116の電流値及び電圧値を検知する点が異なるだけである。そして、本実施の形態4に係る燃料電池システム100では、基準セル116が燃料電池スタック101と反応ガスの流れにおいて、並列に設けられているので、基準セル116の白金触媒が硫黄化合物で被毒されていると判定されると、燃料電池スタック101(燃料電池50)も同様に、その白金触媒が硫黄化合物で被毒されていると判断することができる。なお、本実施の形態4においては、基準セル116の白金触媒が硫黄化合物で被毒されていると判定されると、被毒回復処理器120bが、燃料電池スタック101と同様に基準セル116の回復処理を行う。
このように構成された本実施の形態4に係る燃料電池システム100であっても、実施の形態1に係る燃料電池システム100と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の形態5に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図であり、燃料電池スタックの発電運転中の模式図である。
図10に示すように、本発明の実施の形態5に係る燃料電池システム100は、実施の形態4に係る燃料電池システム100と基本的構成は同じであるが、反応ガスの流れにおいて、燃料電池スタック101と直列に基準セル116が設けられている点が異なる。
具体的には、燃料ガス供給路201及び酸化剤ガス供給路203において、燃料電池スタック101の上流側に、基準セル116が設けられている。より詳しくは、燃料ガス供給路201の第2不活性ガス供給路207の下流端が接続された部分よりも下流側の部分に、基準セル116の燃料ガス入口116Aが接続されている。また、酸化剤ガス供給路203の不活性ガス供給路205の下流端が接続された部分よりも下流側の部分に、基準セル116の酸化剤ガス入口116Cが接続されている。そして、基準セル116の燃料ガス出口116Bと燃料電池スタック101の燃料ガス入口101Aとを接続するように燃料ガス供給路201が設けられている。また、基準セル116の酸化剤ガス出口116Dと燃料電池スタック101の酸化剤ガス入口101Cとを接続するように酸化剤ガス供給路203が設けられている。すなわち、基準セル116は、反応ガスの流れにおいて、燃料電池スタック101と直列に設けられている。
このように構成された本実施の形態5に係る燃料電池システム100は、実施の形態4に係る燃料電池システム100と同様の作用効果を奏する。
また、上述したように、酸化剤ガス供給器105から供給される酸化剤ガスが空気である場合、空気中には、硫黄酸化物や二酸化硫黄等の大気汚染物質が含まれているため、空気とともに、これらの硫黄酸化物等の硫黄化合物が酸化剤ガス供給器105から酸化剤ガス供給路203に混入する。
しかしながら、本実施の形態5に係る燃料電池システム100では、酸化剤ガス供給路203において、燃料電池スタック101の上流側に基準セル116が設けられている。このため、酸化剤ガス供給器105から酸化剤ガス供給路203に混入した硫黄化合物は、基準セル116のカソード触媒層で吸着される。これにより、燃料電池スタック101に混入する硫黄化合物が減少し、燃料電池スタック101の燃料電池50のカソード4B(正確には、カソード触媒層2B)の被毒化が抑制され、燃料電池スタック101の電池性能の低下を抑制することができる。
[試験例]
以下、本発明を想到するに至った試験例について、説明する。
まず、図4に示す燃料電池50を作成し、1つの燃料電池50を端板71A、71B等で締結した。そして、この燃料電池50を以下の試験に用いた。
[試験例1]
試験例1では、硫黄化合物による白金触媒の被毒試験を行った。具体的には、アノード4Aに53%RHの水素ガスを供給し、カソード4Bに0.5ppmの二酸化硫黄を含む53%RHの空気を供給して、燃料電池50の温度を80℃に保って、発電試験を行ない、白金触媒被毒による燃料電池50の劣化を進行させた。
そして、白金触媒の被毒試験前後に、ボルタンメトリー測定を実施した。測定方法としては、アノード4Aに100%RHの水素ガスをカソード4Bに100%RHの窒素ガスをそれぞれ供給し、アノード4Aを参照電極(仮想の標準水素電極)とし、カソード4Bを作用極とし、アノード4Aを基準としてカソード4Bの電位を0Vから+1.2Vの範囲で電位掃引した。具体的には、電位掃引速度を10mV/sec.として、カソード4Bの電位を0Vから+1.2Vに掃引して、カソード4Bの酸化還元反応による電流値(酸化電流値、還元電流値)を測定した。
図12は、試験例1におけるカソード4Bの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。細線は、劣化前(被毒試験前)のボルタモグラムの結果であり、太線は、劣化後(被毒試験後)のボルタモグラムの結果である。
図11及び図12に示すように、0.3〜0.6V(第1の電圧)においては、被毒試験後の燃料電池50の電流値は、被毒試験前の燃料電池50の電流値とほぼ同じとなった。これは、0.3〜0.6Vの間では、被毒試験前後ともに、燃料電池50のカソード触媒層2Bにおける白金表面上では、アノード4A側からクロスリークした水素の酸化反応以外の酸化還元反応がほとんど生じないためであると考えられる。
また、0.6〜0.9V(第2の電圧)においては、被毒試験後の燃料電池50の電流値は、被毒試験前の燃料電池50の電流値に比べて著しく減少した。これは、0.6〜0.9Vの間では、被毒試験前の燃料電池50のように、清浄な白金表面では白金の酸化反応が進行するが、被毒試験後の燃料電池50のように、被毒種(硫黄化合物)が白金表面に吸着すると、白金の酸化反応は著しく阻害されるためであると考えられる。
さらに、0.9〜1.2V(第3の電圧)においては、被毒試験後の燃料電池50の電流値は、被毒試験前の燃料電池50の電流値に比べて著しく増加した。これは、0.9〜1.2Vの間では、被毒試験後の燃料電池50では、硫黄化合物が吸着した白金触媒表面において、硫黄化合物の酸化反応が進行するためであると考えられる。
[試験例2]
試験例2では、白金触媒の肥大化試験を行った。具体的には、アノード4Aに100%RHの水素ガスを供給し、カソード4Bに100%RHの窒素ガスを供給して、カソード4Bの電位を+0.6Vから+0.9Vに掃引した後、電位掃引方向を反転し、同じ掃引速度でカソード4Bの電位を+0.9Vから+0.6Vに掃引する工程を1cycleとし、30000cycle行って、白金触媒肥大化による燃料電池50の劣化を進行させた。
そして、試験例1と同様に、白金触媒の肥大化試験前後に、ボルタンメトリー測定を実施した。その結果を示したのが、図13である。
図13は、試験例2におけるカソード4Bの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。細線は、劣化前(被毒試験前)のボルタモグラムの結果であり、太線は、劣化後(被毒試験後)のボルタモグラムの結果である。なお、図13においては、0〜1.0Vまでしか示していないが、1.0〜1.2Vも0.6〜1.0Vと同様の傾向を示すことを別の実験で確認している。
図11及び図13に示すように、0〜0.4V及び0.6〜1.2Vにおいて、被毒試験後の燃料電池50の電流値は、被毒試験前の燃料電池50の電流値と比べて減少した。これは、白金触媒の肥大化による劣化が進行すると、白金の表面積が減少するため、白金表面からの水素脱着及び白金表面の酸化反応が減少したためであると考えられる。
[試験例3]
試験例3では、高分子電解質膜の劣化試験を行った。具体的には、アノード4Aに35%RHの水素ガスを供給し、カソード4Bに35%RHの空気を供給して、燃料電池50の温度を90℃に保って、発電試験を行ない、高分子電解質膜の劣化による燃料電池50の劣化を進行させた。
そして、高分子電解質膜の劣化試験前後に、ボルタンメトリー測定を実施した。その結果を示したのが、図14である。
図14は、試験例3におけるカソード4Bの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。細線は、劣化前(被毒試験前)のボルタモグラムの結果であり、太線は、劣化後(被毒試験後)のボルタモグラムの結果である。なお、図13においては、0〜1.0Vまでしか示していないが、1.0〜1.2Vも0〜1.0Vと同様の傾向を示すことを別の実験で確認している。
図11及び図14に示すように、0〜1.2Vにおいて、被毒試験後の燃料電池50の電流値は、被毒試験前の燃料電池50の電流値と比べて増加した。これは、高分子電解質膜1の劣化が進行すると、クロスリーク水素の量が増加するためであると考えられる。
[試験例4]
試験例4では、カーボン担体の腐食試験を行った。具体的には、アノード4Aに100%RHの水素ガスを供給し、カソード4Bに100%RHの空気の供給と100%の窒素ガスの供給を周期的に切り替えて、燃料電池50の温度を65℃に保って、発電試験を行ない、カーボン担体の腐食による燃料電池50の劣化を進行させた。なお、当該試験例4においては、カーボンの腐食に伴って、白金触媒の肥大化も生じる。
そして、カーボン担体の腐食試験前後に、ボルタンメトリー測定を実施した。その結果を示したのが、図15である。
図15は、試験例4におけるカソード4Bの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。細線は、劣化前(被毒試験前)のボルタモグラムの結果であり、太線は、劣化後(被毒試験後)のボルタモグラムの結果である。なお、図15においては、0〜1.0Vまでしか示していないが、1.0〜1.2Vも0〜1.0Vと同様の傾向を示すことを別の実験で確認している。
図11及び図15に示すように、0〜1.2Vにおいて、被毒試験後の燃料電池50の電流値は、被毒試験前の燃料電池50の電流値と比べて減少した。これは、カーボン担体の腐食が進行すると、二重層容量が減少するためであると考えられる。
[試験例5]
試験例5では、微小ショートの増加試験を行った。具体的には、試験前の燃料電池50の締結圧を通常の2倍にすることで、微小ショートを増加させて、燃料電池50の劣化を進行させた。
そして、微小ショートの増加試験前後に、ボルタンメトリー測定を実施した。その結果を示したのが、図16である。
図16は、試験例5におけるカソード4Bの酸化還元反応による電流値をプロットしたグラフである。細線は、劣化前(被毒試験前)のボルタモグラムの結果であり、太線は、劣化後(被毒試験後)のボルタモグラムの結果である。なお、図16においては、0〜1.0Vまでしか示していないが、1.0〜1.2Vも0〜1.0Vと同様の傾向を示すことを別の実験で確認している。
図11及び図16に示すように、0〜1.2Vにおいて、被毒試験後の燃料電池50の電流値は、被毒試験前の燃料電池50の電流値と比べて漸次増加した。
本発明の燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法は、硫黄化合物による燃料電池の触媒被毒による電池性能の低下を検知することができるため、燃料電池の技術分野で有用である。
1 電解質層
2A アノード触媒層
2B カソード触媒層
3A アノードガス拡散層
3B カソードガス拡散層
4A アノード(電極)
4B カソード(電極)
5 MEA(Membrane−Electrode−Assembly:電解質層−電極接合体)
6A セパレータ
6B セパレータ
7A ガスケット
7B ガスケット
8 燃料ガス流路
9 酸化剤ガス流路
10 冷却媒体流路
50 高分子電解質形燃料電池(燃料電池)
70 セル積層体
71A 端板
71B 端板
72A 絶縁板
72B 絶縁板
73A 集電板
73B 集電板
100 燃料電池システム
101 燃料電池スタック
101A 燃料ガス入口
101B 燃料ガス出口
101C 酸化剤ガス入口
101D 酸化剤ガス出口
102 電気化学測定器(電圧印加器)
103 電流検知器
104 燃料ガス供給器
105 酸化剤ガス供給器
106 不活性ガス供給器
107 第1切替器
108 第1開閉弁
109 第2開閉弁
110 第2切替器
111 第3開閉弁
112 電圧検知器
113 スイッチ
114 電源
116 基準セル
116A 燃料ガス入口
116B 燃料ガス出口
116C 酸化剤ガス入口
116D 酸化剤ガス出口
120 制御器
120a 被毒判定器
120b 被毒回復処理器
201 燃料ガス供給路
202 燃料ガス排出路
203 酸化剤ガス供給路
204 酸化剤ガス排出路
205 不活性ガス供給路
206 第2燃料ガス供給路
207 第2不活性ガス供給路
208 燃料ガス分岐路
209 酸化剤ガス分岐路
210 第2燃料ガス排出路
211 第2酸化剤ガス排出路
301 電気配線

Claims (13)

  1. 少なくとも白金触媒を含む触媒層とガス拡散層からなる一対の電極及び電解質層を有する高分子電解質形燃料電池(以下、燃料電池)を複数有する燃料電池スタックと、
    一方の前記電極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、
    他方の前記電極に不活性ガスを供給する不活性ガス供給路と、
    前記燃料電池に所定の電圧を印加する電圧印加器と、
    前記燃料電池の電流値を検知する電流検知器と、
    制御器と、
    被毒判定器と、を備え、
    前記制御器は、前記燃料電池の被毒判定をする際に、前記一方の電極に前記燃料ガスが供給され、前記他方の電極(検知極)に不活性ガスが供給された状態で、前記検知極の電位が白金触媒の表面で、水素の吸脱着反応が起こる電位より高く、酸化物が生成する電位より低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、
    前記電流検知器は、前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知し、
    その後、前記制御器は、前記検知極の電位が、前記白金触媒の表面に酸化物が生成する電位となる電圧(以下、第2の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、
    前記電流検知器は、前記第2の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知し、
    前記被毒判定器は、前記燃料電池の被毒判定をする際における前記第2の電圧が印加されたときの電流値(以下、第2電流値)と前記燃料電池の被毒判定をする際における前記第1の電圧が印加されたときの電流値(以下、第1電流値)との差が、前記燃料電池初期における第2電流値と前記燃料電池初期における第1電流値との差よりも小さい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定する、燃料電池システム。
  2. 少なくとも白金触媒を含む触媒層とガス拡散層からなる一対の電極及び電解質層を有する高分子電解質形燃料電池を複数有する燃料電池スタックと、
    一方の前記電極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、
    他方の前記電極に不活性ガスを供給する不活性ガス供給路と、
    前記高分子電解質形燃料電池の電圧を制御する電圧印加器と、
    前記高分子電解質形燃料電池の電流値を検知する電流検知器と、
    制御器と、
    被毒判定器と、を備え、
    前記制御器は、前記燃料電池の被毒判定をする際に、前記一方の電極に前記燃料ガスが供給され、前記他方の電極(検知極)に不活性ガスが供給された状態で、前記検知極の電位が水素酸化還元電位よりも低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、
    前記電流検知器は、前記第1の電圧が印加されたときの前記高分子電解質形燃料電池の電流値を検知し、
    その後、前記制御器は、前記検知極の電位が、前記白金触媒に吸着した硫黄化合物が酸化される電位となる電圧(以下、第3の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、
    前記電流検知器は、前記第3の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知し、
    前記被毒判定器は、前記燃料電池の被毒判定をする際における前記第3の電圧が印加されたときの電流値(以下、第3電流値)と前記燃料電池の被毒判定をする際における前記第1の電圧が印加されたときの電流値(以下、第1電流値)との差が、前記燃料電池初期における第1電流値と前記燃料電池初期における第3電流値との差よりも大きい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定する、燃料電池システム。
  3. 前記制御器は、前記燃料電池の被毒判定をする際に、前記検知極の電位が、前記白金触媒に付着した硫黄化合物が酸化される電位となる電圧(以下、第3の電圧)を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御し、
    前記電流検知器は、前記第3の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知し、
    前記被毒判定器は、前記燃料電池の被毒判定をする際における第2電流値と前記燃料電池の被毒判定をする際における第1電流値との差が、前記燃料電池初期における第2電流値と前記燃料電池初期における第1電流値との差よりも小さく、かつ、前記燃料電池の被毒判定をする際における第3電流値と前記燃料電池の被毒判定をする際における第1電流値との差が、前記燃料電池初期における第3電流値と前記燃料電池初期における第1電流値との差よりも大きい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定する、請求項1に記載の燃料電池システム。
  4. 前記第1の電圧が0.3V以上かつ0.6V以下であり、前記第2の電圧が0.6Vより大きくかつ0.9V以下である、請求項1に記載の燃料電池システム。
  5. 前記第1の電圧が0.3V以上かつ0.6V以下であり、前記第3の電圧が0.9Vより大きくかつ1.2V以下である、請求項2に記載の燃料電池システム。
  6. 前記制御器は、前記第1の電圧、前記第2の電圧、及び前記第3の電圧の順で電圧を前記燃料電池に印加するように前記電圧印加器を制御する、請求項1に記載の燃料電池システム。
  7. 前記不活性ガスは、窒素ガス、メタンガス、及び二酸化炭素ガスからなるガス群から選ばれる1以上のガスである、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
  8. 被毒回復処理器をさらに備え、
    前記制御器は、前記被毒判定器が前記燃料電池スタックの前記燃料電池が被毒されていると判定すると、前記被毒回復処理器が被毒された前記燃料電池の被毒除去を行うように制御する、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
  9. 前記被毒回復処理器は、前記検知極に所定の電圧を印加して、前記燃料電池の被毒除去操作を行う、請求項8に記載の燃料電池システム。
  10. 前記被毒回復処理器は、前記燃料電池の前記触媒層から排出される水の量を前記燃料電池スタックの発電運転時における前記触媒層から排出される水の量よりも増加させて、前記燃料電池の被毒除去を行う、請求項8に記載の燃料電池システム。
  11. 前記燃料電池スタックの発電運転時の電圧を検知する電圧検知器をさらに備え、
    前記制御器は、前記電圧検知器が検知する電圧が、所定値以上低下すると、前記燃料電池の被毒検知を行うように構成されている、請求項1に記載の燃料電池システム。
  12. 少なくとも白金触媒を含む触媒層とガス拡散層からなる一対の電極及び電解質層を有する高分子電解質形燃料電池(以下、燃料電池)を複数有する燃料電池スタックを備える燃料電池システムの運転方法であって、
    前記一方の電極に前記燃料ガスを供給し、前記他方の電極(検知極)に不活性ガスが供給するステップ(A)と、
    前記検知極の電位が水素酸化還元電位よりも低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を前記燃料電池に印加するステップ(B)と、
    前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知するステップ(C)と、
    その後、前記検知極の電位が、前記白金触媒の表面に酸化物が生成する電位となる電圧(以下、第2の電圧)を前記燃料電池に印加するステップ(D)と、
    前記第2の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知するステップ(E)と、
    前記ステップ(E)で検知された電流値と、前記ステップ(C)で検知された電流値との差が、前記燃料電池初期における前記第2の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値と前記燃料電池初期における前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値との差よりも小さい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定するステップ(F)と、を備える、燃料電池システムの運転方法。
  13. 少なくとも白金触媒を含む触媒層とガス拡散層からなる一対の電極及び電解質層を有する高分子電解質形燃料電池(以下、燃料電池)を複数有する燃料電池スタックを備える燃料電池システムの運転方法であって、
    前記一方の電極に前記燃料ガスを供給し、前記他方の電極(検知極)に不活性ガスが供給するステップ(G)と、
    前記検知極の電位が水素酸化還元電位よりも低い電位となる電圧(以下、第1の電圧)を前記燃料電池に印加するステップ(H)と、
    前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知するステップ(I)と、
    その後、前記検知極の電位が、前記白金触媒に吸着した硫黄化合物が酸化される電位となる電圧(以下、第3の電圧)を前記燃料電池に印加するステップ(J)と、
    前記第3の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値を検知するステップ(K)と、
    前記ステップ(K)で検知された電流値と、前記ステップ(I)で検知された電流値との差が、前記燃料電池初期における前記第3の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値と前記燃料電池初期における前記第1の電圧が印加されたときの前記燃料電池の電流値との差よりも大きい場合に、前記燃料電池の前記触媒層が硫黄化合物で被毒されていると判定するステップ(L)と、を備える、燃料電池システムの運転方法。
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JP2012089448A (ja) * 2010-10-22 2012-05-10 Toyota Motor Corp 燃料電池の劣化判定システム
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