JP2011079785A - 歯科用組成物およびそれを用いたコンポジットレジン - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的強度、表面滑沢性および滑沢耐久性のすべてに優れる硬化物を与え得る歯科用組成物を提供する。
【解決手段】重合性単量体(A)と、無機充填材(B)と、重合開始剤(C)とを含有する歯科用組成物であって、前記無機充填材(B)の粒子は、複数の凸部を有する平均粒子径が40〜400nmの粒子であり、当該凸部の60%以上が、平均粒子径の5〜200%の長さに相当する曲率半径を有する歯科用組成物とする。当該歯科用組成物は、コンポジットレジンに好適である。
【選択図】図1
【解決手段】重合性単量体(A)と、無機充填材(B)と、重合開始剤(C)とを含有する歯科用組成物であって、前記無機充填材(B)の粒子は、複数の凸部を有する平均粒子径が40〜400nmの粒子であり、当該凸部の60%以上が、平均粒子径の5〜200%の長さに相当する曲率半径を有する歯科用組成物とする。当該歯科用組成物は、コンポジットレジンに好適である。
【選択図】図1
Description
本発明は、歯科医療の分野において、天然歯の一部分又は全体を代替し得る歯科材料、特に歯科用コンポジットレジンとして好適に使用できる歯科用組成物に関する。
重合性単量体、充填材及び重合開始剤から構成される歯科用組成物は、コンポジットレジンと呼ばれ、歯の欠損部や虫歯を修復するための材料として今日最も多用される歯科材料となっている。このような歯科用組成物においては、硬化後の硬化物が天然歯と置換可能な十分な機械的強度を有すること、高い表面滑沢性および滑沢耐久性を有すること等が要求されている。
近年、歯科用組成物の開発は、球状無機充填材を主要構成成分として研磨滑沢性を確保した上で、従来の問題とされる機械的強度の不足を改良する方法が検討されてきた。例えば、特許文献1には、平均粒子径が0.1μmより大きく1μm以下の範囲にある球形状無機酸化物粒子60〜99重量%と、平均粒子径が0.1μm以下の範囲にある無機酸化物微粒子40〜1重量%とを混合してなる無機組成物において、0.08μm以上の細孔径を有する強凝集細孔の容積が無機組成物に対して0.1cc/g以下である無機組成物を無機充填材として、歯科用複合修復材に用いることが開示されている。この歯科用複合修復材によれば、機械的強度、表面滑沢性および滑沢耐久性のすべてが完全に満足される硬化物が得られるとされている。しかし、近年、機械的強度、表面滑沢性および滑沢耐久性についての要求は高まっており、特許文献1に記載の歯科用修復材では、現在の要求レベルの機械的強度、表面滑沢性および滑沢耐久性のすべてを完全に満足することができなくなってきている。
上記事情を鑑み、本発明は、機械的強度、表面滑沢性および滑沢耐久性のすべてに優れる硬化物を与え得る歯科用組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、機械的強度、表面滑沢性および滑沢耐久性のすべてに優れる硬化物を与え得るコンポジットレジンを提供することを目的とする。
本発明は、重合性単量体(A)と、無機充填材(B)と、重合開始剤(C)とを含有する歯科用組成物であって、
前記無機充填材(B)の粒子は、複数の凸部を有する平均粒子径が40〜400nmの粒子であり、当該凸部の60%以上が、平均粒子径の5〜200%の長さに相当する曲率半径を有する歯科用組成物である。
前記無機充填材(B)の粒子は、複数の凸部を有する平均粒子径が40〜400nmの粒子であり、当該凸部の60%以上が、平均粒子径の5〜200%の長さに相当する曲率半径を有する歯科用組成物である。
本発明の歯科用組成物は、前記重合性単量体(A)100重量部に対して、前記無機充填材(B)を1〜950重量部含むことが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、さらに重合促進剤(D)を含むことが好ましい。
本発明はまた、上記の歯科用組成物を用いたコンポジットレジンである。
本発明の歯科用組成物によれば、機械的強度、表面滑沢性および滑沢耐久性のすべてに優れる硬化物が得られる。従って、本発明の歯科用組成物は、歯科用修復材として好適であり、特に歯科用コンポジットレジンとして好適である。当該コンポジットレジンは、その硬化物が、機械的強度、表面滑沢性および滑沢耐久性のすべてに優れるものとなる。
重合性単量体(A)
本発明で用いられる重合性単量体(A)は、歯科用組成物に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。重合性単量体(A)におけるラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸などのエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体などが挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。なお、本発明において(メタ)アクリルの表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
本発明で用いられる重合性単量体(A)は、歯科用組成物に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。重合性単量体(A)におけるラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸などのエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体などが挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。なお、本発明において(メタ)アクリルの表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
(メタ)アクリル酸エステル系の重合性単量体の例を以下に示す。
(I)一官能性(メタ)アクリレート
メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
(I)一官能性(メタ)アクリレート
メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
(II)二官能性(メタ)アクリレート
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート(2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、通称BisGMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−((メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)などが挙げられる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート(2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、通称BisGMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−((メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)などが挙げられる。
(III)三官能性以上の(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。
前記重合性単量体は、いずれも、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、歯質、金属、セラミックスなどに対する接着性を向上させる場合、本発明の歯科用組成物には、これらの被着体に対する接着性を付与する機能性モノマーを重合性単量体として含有させることが好ましい場合がある。
機能性モノマーとして、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー、及び11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸などのカルボン酸基を有するモノマーは、歯質や卑金属に対して優れた接着性を呈するので好ましい。
また、機能性モノマーとして、例えば、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレート、6−(4−ビニルベンジル−n−プロピル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオン、特開平10−1473号公報に記載のチオウラシル誘導体や特開平11−92461号公報に記載の硫黄元素を有する化合物は、貴金属に対して優れた接着性を呈するので、好ましい。
さらに、機能性モノマーとして、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤は、セラミックス、陶材、歯科用コンポジットレジンへの接着に効果的である。
無機充填材(B)
本発明で用いられる無機充填材(B)に関し、その粒子は、複数の凸部を有する平均粒子径が40〜400nmの粒子であり、当該凸部の60%以上が、平均粒子径の5〜200%の長さに相当する曲率半径を有する。平均粒子径が40nm未満だと、組成物の硬化物の機械的強度が不十分となり、平均粒子径が400nmを超えると、組成物の硬化物の研磨滑沢性および滑沢耐久性が不十分となる。平均粒子径としては、好ましくは40〜200nmである。また、複数の凸部の60%以上が、平均粒子径の5〜200%の長さに相当する曲率半径を有する場合に、歯科用組成物の硬化物の研摩滑沢性および滑沢耐久性が高くなり、かつ機械的強度も高くなる。機械的強度、研磨滑沢性および滑沢耐久性のバランスの観点から、好ましくは、粒子は、凸部の80%以上が平均粒子径の10〜80%の長さに相当する曲率半径を有する。
本発明で用いられる無機充填材(B)に関し、その粒子は、複数の凸部を有する平均粒子径が40〜400nmの粒子であり、当該凸部の60%以上が、平均粒子径の5〜200%の長さに相当する曲率半径を有する。平均粒子径が40nm未満だと、組成物の硬化物の機械的強度が不十分となり、平均粒子径が400nmを超えると、組成物の硬化物の研磨滑沢性および滑沢耐久性が不十分となる。平均粒子径としては、好ましくは40〜200nmである。また、複数の凸部の60%以上が、平均粒子径の5〜200%の長さに相当する曲率半径を有する場合に、歯科用組成物の硬化物の研摩滑沢性および滑沢耐久性が高くなり、かつ機械的強度も高くなる。機械的強度、研磨滑沢性および滑沢耐久性のバランスの観点から、好ましくは、粒子は、凸部の80%以上が平均粒子径の10〜80%の長さに相当する曲率半径を有する。
本発明において、粒子の平均粒子径は、例えば、粒子の透過電子顕微鏡写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の数、および粒子径を測定して得ることができる。観察される粒子の数としては、200個以上であれば十分である。粒子の粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値とする。
凸部の曲率半径と、特定の曲率半径の凸部の割合は、以下の方法によって算出することができる。粒子の透過電子顕微鏡写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子をランダムに200個選択する。選択した粒子について、凸部の総数を求める。ここで凸部は、写真において見られる粒子の輪郭の微分値を見た場合に、符号が3回変わる部分をいう。よって、写真において見られる粒子の輪郭において、粒子の外側方向に突き出た部分であって、凹部と凹部に挟まれた部分が凸部となる。凸部の曲率半径は、以下の方法により算出する。凸部の曲線部の任意の2点に対して接線を引き、その接点から垂線を引く。2つの垂線の交点から接点までの距離を曲率半径とする。凸部の総数に対して、凸部の曲率半径が平均粒子径の5〜200%の長さに相当する凸部の割合を算出する。なお、200個の粒子について測定を行うため、各粒子上に存在するすべての凸部について測定しなくてもよく、透過電子顕微鏡の二次元像において見られる凸部について測定を行うので十分である。
本発明において、無機充填材(B)の素材は、歯科用途に用いられる公知の無機充填材に採用される素材を何ら制限なく使用できる。その例としては、各種ガラス類〔シリカを主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素、アルミニウム等の酸化物を含有する。例えば、溶融シリカ、石英、ソーダライムシリカガラス、Eガラス、Cガラス、ボロシリケートガラス(パイレックス(登録商標)ガラス)等の一般的な組成のガラス粉末;バリウムガラス(GM27884、8235、ショット社製;Ray−SorbE2000、Ray−SorbE3000、SpecialtyGlass社製)、ストロンチウム・ボロシリケートガラス(Ray−SorbE4000、SpecialtyGlass社製)、ランタンガラスセラミックス(GM31684、ショット社製)、フルオロアルミノシリケートガラス(GM35429、G018−091、G018−117、ショット社製)などの歯科用ガラス粉末〕、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物粒子、又はこれらからなる複合酸化物粒子、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。素材は、これらより1種を選択してもよいし、2種以上を選択してもよい。
無機充填材(B)は、例えば、破砕フィラーなどの多数の角部を有する不定形フィラーを、回転ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル等の粉砕機を用いて、丸みを帯びた凸形状になるまで角部を磨耗させることによって作製することができる。
無機充填材(B)は、重合性単量体と組み合わせて歯科用組成物に用いることから、該無機充填材と重合性単量体との親和性を改善したり、該無機充填材と重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが望ましい。
かかる表面処理剤としては、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物を用いることができる。有機金属化合物を2種以上使用する場合は、2種以上の金属化合物の混合物の表面処理層としてもよいし、複数の有機金属化合物層が積層した複層構造の表面処理層としてもよい。
有機ケイ素化合物としては、R1 nSiX4-nで表される化合物が挙げられる(式中、R1は、炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは、0〜3の整数である。R1及びXが複数ある場合にはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン((メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン((メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。
この中でも、重合性単量体(A)と共重合し得る官能基を有するカップリング剤、例えばω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン((メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12)、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン((メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が特に好ましく用いられる。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニルアセテート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
無機充填材(B)の配合量としては、組成物のハンドリング性および硬化物の機械的強度の観点から、重合性単量体(A)100重量部に対して、1〜950重量部が好ましく、5〜800重量部がより好ましい。
重合開始剤(C)
本発明に用いられる重合開始剤(C)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合及び化学重合の重合開始剤が、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用される。
本発明に用いられる重合開始剤(C)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合及び化学重合の重合開始剤が、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用される。
光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、水溶性アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルフォスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられる水溶性アシルフォスフィンオキサイド類は、アシルフォスフィンオキサイド分子内にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ピリジニウムイオン又はアンモニウムイオンを有することが好ましい。例えば、水溶性アシルフォスフィンオキサイド類は、欧州特許第0009348号明細書又は特開昭57−197289号公報に開示されている方法により合成することができる。
上記水溶性アシルフォスフィンオキサイド類の具体例としては、モノメチルアセチルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソプロピル)フォスフォネート・ナトリウム、モノメチルベンゾイルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソブチル)フォスフォネート・ナトリウム、モノメチル(2−メチル−1−オキソプロピル)フォスフォネート・ナトリウム、アセチルフォスフォネート・ナトリウム、モノメチルアセチルフォスフォネート・ナトリウム、アセチルメチルフォスフォネート・ナトリウム、メチル4−(ヒドロキシメトキシフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、メチル−4−オキソフォスフォノブタノエート・モノナトリウ厶塩、アセチルフェニールフォスフィネート・ナトリウム塩、(1−オキソプロピル)ペンチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシペンチルフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、アセチルペンチルフォスフィネート・ナトリウム、アセチルエチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル(1,1−ジメチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシメチルフォスフィニル)−4−オキソブタノエート・リチウム塩、4−(ヒドロキシメチルフォスフィニル)−4−オキソブタノイックアシッド・ジリチウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリディン−2−イル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、(2−メチルパーヒドロ−1,3−ディアジン−2−イル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、アセチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)フォスフォナイト・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)メチルフォスフォナイト・ナトリウム塩、メチル(2−メチルオキサチオラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2,4,5−トリメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1,1−プロポキシエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(1−メトキシビニル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1−エチルチオビニル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−ジアジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−チアジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジアゾリジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(2,2−ジシアノ−1−メチルエチニル)フォスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルフォスフィネートオキシム・ナトリウ厶塩、アセチルメチルフォスフィネート−O−ベンジルオキシム・ナトリウム塩、1−[(N−エトキシイミノ)エチル]メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルイミノエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルヒドラゾンエチル)フォスフィネート・ナトリウム塩、[1−(2,4−ジニトロフェニルヒドラゾノ)エチル]メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルフォスフィネートセミカルバゾン・ナトリウム塩、(1−シアノ−1−ヒドロキシエチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(ジメトキシメチル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、フォーミルメチルフォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−オキソプロピル)フォスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・ドデシルグアニジン塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルフォスフィネート・イソプロピルアミン塩、アセチルメチルフォスフィネートチオセミカルバゾン・ナトリウム塩、1,3,5−トリブチル−4−メチルアミノ−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルフォスフィネート、1−ブチル−4−ブチルアミノメチルアミノ−3,5−ジプロピル−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルフォスフィネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドカリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドのアンモニウム塩などが挙げられる。さらに、特開2000−159621号公報に記載されている化合物も挙げられる。
これら(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類及び水溶性アシルフォスフィンオキサイド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイドナトリウム塩が特に好ましい。
上記光重合開始剤として用いられるチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩としては、例えば、チオキサントン、2−クロルチオキサンセン−9−オン、2−ヒドロキシ−3−(9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1−メチル−9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1,3,4−トリメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドなどが使用できる。
これらチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩の中でも、特に好適なチオキサントン類は、2−クロルチオキサンセン−9−オンであり、特に好適なチオキサントン類の第4級アンモニウ厶塩は、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドである。
上記光重合開始剤として用いられるケタール類の例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられるα−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、カンファーキノンが特に好ましい。
上記光重合開始剤として用いられるクマリン化合物の例としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チェノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6、7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等の特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
上述のクマリン化合物の中でも、特に、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。
上記光重合開始剤として用いられるアントラキノン類の例としては、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられるベンゾインアルキルエーテル類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられるα−アミノケトン類の例としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類及びその塩、α−ジケトン類、及びクマリン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す組成物が得られる。
本発明に用いられる重合開始剤(C)のうち化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドが特に好ましく用いられる。
本発明に用いられる重合開始剤(C)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体(A)100重量部に対して、重合開始剤(C)が0.001〜30重量部含有されることが好ましい。重合開始剤(C)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがあり、より好適には0.05重量部以上、さらに好適には0.1重量部以上である。一方、重合開始剤(C)の配合量が30重量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強さが得られなくなるおそれがあり、さらには組成物からの析出を招くおそれがあるため、より好適には20重量部以下、さらに好適には15重量部以下、最も好適には10重量部以下である。
重合促進剤(D)
本発明の組成物は、重合促進剤(D)を含むことが好ましい。本発明に用いられる重合促進剤(D)としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物などが挙げられる。
本発明の組成物は、重合促進剤(D)を含むことが好ましい。本発明に用いられる重合促進剤(D)としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物などが挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル及び4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
重合促進剤(D)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
重合促進剤(D)として用いられるボレート化合物は、好ましくはアリールボレート化合物である。好適に使用されるアリールボレート化合物を具体的に例示すると、1分子中に1個のアリール基を有するボレート化合物として、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、トリアルキル[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、トリアルキル(p−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びトリアルキル(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
また、1分子中に2個のアリール基を有するボレート化合物としては、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−フロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、ジアルキルジ(p−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びジアルキルジ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
さらに、1分子中に3個のアリール基を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−フロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリ(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びモノアルキルトリ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基又はn−ドデシル基等から選択される1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
さらに1分子中に4個のアリール基を有するボレート化合物としては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フロロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素、(p−フロロフェニル)トリフェニルホウ素、(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルトリフェニルホウ素、(p−ニトロフェニル)トリフェニルホウ素、(m−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(p−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(m−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素及び(p−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
これらアリールボレート化合物の中でも、保存安定性の観点から、1分子中に3個又は4個のアリール基を有するボレート化合物を用いることがより好ましい。また、これらアリールボレート化合物は1種又は2種以上を混合して用いることも可能である。
重合促進剤(D)として用いられるバルビツール酸誘導体としては、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−1−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、5−メチルバルビツール酸、5−プロピルバルビツール酸、1,5−ジエチルバルビツール酸、1−エチル−5−メチルバルビツール酸、1−エチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジエチル−5−ブチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−メチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−オクチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−ヘキシルバルビツール酸、5−ブチル−1−シクロヘキシルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属類が好ましい)が挙げられ、これらバルビツール酸類の塩としては、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム及び1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウム等が例示される。
特に好適なバルビツール酸誘導体としては、5−ブチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、及びこれらバルビツール酸類のナトリウム塩が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるトリアジン化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(o−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−ブトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が例示される。
上記で例示したトリアジン化合物の中で特に好ましいものは、重合活性の点で2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンであり、また保存安定性の点で、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。上記トリアジン化合物は1種又は2種以上を混合して用いても構わない。
重合促進剤(D)として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に用いられる。
重合促進剤(D)として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートである。
重合促進剤(D)として用いられるバナジウム化合物は、好ましくはIV価及び/又はV価のバナジウム化合物類である。IV価及び/又はV価のバナジウム化合物類としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)等の特開2003−96122号公報に記載されている化合物が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるハロゲン化合物としては、例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド等が好適に用いられる。
重合促進剤(D)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体などが挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましく用いられる。
重合促進剤(D)として用いられるチオール化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸等が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられる亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられる亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等が挙げられる。
重合促進剤(D)として用いられるチオ尿素化合物としては、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素等が挙げられる。
本発明に用いられる重合促進剤(D)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体(A)100重量部に対して、重合促進剤(D)を0.001〜30重量部含有してなることが好ましい。重合促進剤(D)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがあり、より好適には0.05重量部以上、さらに好適には0.1重量部以上である。一方、重合促進剤(D)の配合量が30重量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強さが得られなくなるおそれがあり、さらには組成物からの析出を招くおそれがあるため、より好適には20重量部以下、さらに好適には10重量部以下である。
本発明の歯科用組成物には、さらなる高性能化を目的とし、本発明の効果を阻害しない範囲内で、無機充填材(B)以外の充填材を含有させてもよい。例えば、球状や破砕状の形状のフィラーを使用してもよい。
本発明の歯科用組成物には、目的に応じて、溶媒、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤などをさらに添加することも可能である。
例えば、硬化後の表面からフッ素イオン徐放性を期待する場合、フルオロアルミノシリケートガラス、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ素イオン徐放性フィラーを添加することもできる。
抗菌性を期待する場合は、例えば、セチルピリジニウムクロライド、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイドなどの抗菌活性を有する界面活性剤や光触媒性酸化チタンを添加することができる。
本発明の歯科用組成物は、硬化物が高い研磨滑沢性と滑沢耐久性を有するため、本発明の歯科用組成物を用いた歯科材料は、審美性に優れたものとなる。また、本発明の歯科用組成物は、硬化物が高い機械的強度を有する。
従って、本発明の歯科用組成物は、歯科用コンポジットレジンとして好適である。また、硬化物が高い機械的強度を有することから、ボンディング材、合着材、小窩裂溝填塞材、人工歯、歯冠修復材料、義歯床、表面滑沢剤等の歯科材料に用いることもできる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
〔重合性単量体A−1〕
2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(Bis−GMA)60重量部と、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)40重量部を混合し、重合性単量体A−1を調製した。
2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(Bis−GMA)60重量部と、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)40重量部を混合し、重合性単量体A−1を調製した。
〔無機充填材(B)〕
平均粒子径200nmのフッ化イッテルビウム(TREIBACHER社製)を回転ボールミルで48時間粉砕した後、水に均一に分散させ、静置による沈降法を用いて分級を行い、平均粒子径が110nmであり、凸部の88%が平均粒子径の5〜200%に相当する曲率半径を有し、凸部の80%以上が平均粒子径の25〜75%に相当する曲率半径を有する無機充填材を得た。得られた無機充填材を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材B−1を得た。この無機充填材B−1の透過電子顕微鏡写真を図1に示す。
平均粒子径200nmのフッ化イッテルビウム(TREIBACHER社製)を回転ボールミルで48時間粉砕した後、水に均一に分散させ、静置による沈降法を用いて分級を行い、平均粒子径が110nmであり、凸部の88%が平均粒子径の5〜200%に相当する曲率半径を有し、凸部の80%以上が平均粒子径の25〜75%に相当する曲率半径を有する無機充填材を得た。得られた無機充填材を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材B−1を得た。この無機充填材B−1の透過電子顕微鏡写真を図1に示す。
平均粒子径200nmのフッ化イッテルビウム(TREIBACHER社製)を回転ボールミルで24時間粉砕した後、水に均一に分散させ、静置による沈降法を用いて分級を行い、平均粒子径が110nmであり、凸部の68%が平均粒子径の5〜200%に相当する曲率半径を有し、凸部の60%以上が平均粒子径の10〜60%に相当する曲率半径を有する無機充填材を得た。得られた無機充填材を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材B−2を得た。
平均粒子径200nmのフッ化イッテルビウム(TREIBACHER社製)を回転ボールミルで96時間粉砕した後、水に均一に分散させ、静置による沈降法を用いて分級を行い、平均粒子径が110nmであり、凸部の95%が平均粒子径の5〜200%に相当する曲率半径を有し、凸部の90%以上が平均粒子径の100〜150%に相当する曲率半径を有する無機充填材を得た。得られた無機充填材を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材B−3を得た。
平均粒子径200nmのフッ化イッテルビウム(TREIBACHER社製)を回転ボールミルで48時間粉砕した後、水に均一に分散させ、静置による沈降法を用いて分級を行い、平均粒子径が80nmであり、凸部の85%が平均粒子径の5〜200%に相当する曲率半径を有し、凸部の80%以上が平均粒子径の25〜75%に相当する曲率半径を有する無機充填材を得た。得られた無機充填材を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材B−4を得た。
平均粒子径700nmのバリウムガラス(ショット社製)を回転ボールミルで48時間粉砕した後、水に均一に分散させ、静置による沈降法を用いて分級を行い、平均粒子径が350nmであり、凸部の86%が平均粒子径の5〜200%に相当する曲率半径を有し、凸部の80%以上が平均粒子径の25〜75%に相当する曲率半径を有する無機充填材を得た。得られた無機充填材を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材B−5を得た。
平均粒子径200nmのフッ化イッテルビウム(TREIBACHER社製)を回転ボールミルで48時間粉砕した後、水に均一に分散させ、静置による沈降法を用いて分級を行い、平均粒子径が20nmであり、凸部の84%が平均粒子径の5〜200%に相当する曲率半径を有し、凸部の80%以上が平均粒子径の25〜75%に相当する曲率半径を有する無機充填材を得た。得られた無機充填材を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材B−6を得た。
平均粒子径1500nmのバリウムガラス(ショット社製)を回転ボールミルで32時間粉砕した後、水に均一に分散させ、静置による沈降法を用いて分級を行い、平均粒子径が1000nmであり、凸部の90%が平均粒子径の5〜200%に相当する曲率半径を有し、凸部の80%以上が平均粒子径の25〜75%に相当する曲率半径を有する無機充填材を得た。得られた無機充填材を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材B−7を得た。
平均粒子径200nmのフッ化イッテルビウム(TREIBACHER社製)を回転ボールミルで8時間粉砕した後、水に均一に分散させ、静置による沈降法を用いて分級を行い、平均粒子径が110nmであり、凸部の50%が平均粒子径の5〜200%に相当する曲率半径を有し、凸部の40%以上が平均粒子径の2〜30%に相当する曲率半径を有する無機充填材を得た。得られた無機充填材を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材B−8を得た。
〔その他の無機充填材〕
平均粒子径200nmのシリカ球状フィラー(日本触媒社製)を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材C−1を得た。
平均粒子径200nmのシリカ球状フィラー(日本触媒社製)を、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機充填材C−1を得た。
〔実施例1〜5及び比較例1〜4〕
重合性単量体A−1 100重量部に、光重合開始剤としてdl−カンファーキノン0.5重量部、および重合促進剤として4−ジメチルアミノ安息香酸エチル1.0重量部を均一に溶解し、光重合性組成物とした。表1および2に示す割合で、光重合性組成物、および無機充填材(B)または無機充填材(C)を混合練和して、均一にしたものを真空脱泡し、表1および2に示す歯科用組成物を得た。
重合性単量体A−1 100重量部に、光重合開始剤としてdl−カンファーキノン0.5重量部、および重合促進剤として4−ジメチルアミノ安息香酸エチル1.0重量部を均一に溶解し、光重合性組成物とした。表1および2に示す割合で、光重合性組成物、および無機充填材(B)または無機充填材(C)を混合練和して、均一にしたものを真空脱泡し、表1および2に示す歯科用組成物を得た。
〔実施例6〜8〕
重合性単量体A−1 100重量部に、光重合開始剤としてdl−カンファーキノン0.5重量部、および重合促進剤として4−ジメチルアミノ安息香酸エチル1.0重量部を均一に溶解し、光重合性組成物とした。表1に示す割合で、光重合性組成物、無機充填材(B)および無機充填材(C)を混合練和して、均一にしたものを真空脱泡し、表1に示す歯科用組成物を得た。
重合性単量体A−1 100重量部に、光重合開始剤としてdl−カンファーキノン0.5重量部、および重合促進剤として4−ジメチルアミノ安息香酸エチル1.0重量部を均一に溶解し、光重合性組成物とした。表1に示す割合で、光重合性組成物、無機充填材(B)および無機充填材(C)を混合練和して、均一にしたものを真空脱泡し、表1に示す歯科用組成物を得た。
無機充填材(C)、および得られた歯科用組成物の特性を以下の方法に従って評価した。結果を表1および表2に示す。
〔無機充填材粒子の平均粒子径の測定〕
無機充填材の粒子の透過電子顕微鏡(日立製作所製、H−800NA型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の平均粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))を用いて求めた。このとき、粒子の粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均粒子径が算出される。
無機充填材の粒子の透過電子顕微鏡(日立製作所製、H−800NA型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の平均粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))を用いて求めた。このとき、粒子の粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均粒子径が算出される。
〔無機充填材粒子の凸部の曲率半径、および特定の曲率半径の凸部の割合〕
無機充填材の粒子の透過電子顕微鏡(日立製作所製、H−800NA型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子をランダムに200個選択した。選択した粒子について、凸部の総数を求めた。本実施例および比較例においては、粒子の外側に膨らむように弧を描く曲線部分の数を数えることによって凸部の総数を求めた。凸部の曲率半径は、以下の方法により算出した。凸部の曲線部の任意の2点に対して接線を引き、その接点から垂線を引く。2つの垂線の交点から接点までの距離を曲率半径とする。凸部の総数に対して、凸部の曲率半径が平均粒子径の5〜200%の長さに相当する凸部の割合を算出した。
無機充填材の粒子の透過電子顕微鏡(日立製作所製、H−800NA型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子をランダムに200個選択した。選択した粒子について、凸部の総数を求めた。本実施例および比較例においては、粒子の外側に膨らむように弧を描く曲線部分の数を数えることによって凸部の総数を求めた。凸部の曲率半径は、以下の方法により算出した。凸部の曲線部の任意の2点に対して接線を引き、その接点から垂線を引く。2つの垂線の交点から接点までの距離を曲率半径とする。凸部の総数に対して、凸部の曲率半径が平均粒子径の5〜200%の長さに相当する凸部の割合を算出した。
〔研磨滑沢性〕
製造した歯科用組成物をステンレス製の金型(厚さ2mm、縦30mm、横20mm)に充填した。上下面をスライドガラスで圧接し、両面から歯科技工用可視光線照射器(モリタ社製、アルファライトII)で、各2分間光照射して硬化させた。硬化物を金型から取り出した後、1500番の耐水研磨紙で研磨し、この研磨面を、技工用ポリッシングボックス(KAVO社製、EWL80)を用いて3000rpmでバフ研磨を20秒行った。研磨材にはポーセニーハイドン(東京歯材社製)を用いた。この面の光沢を光沢度計(日本電色(株)製VG−107)を用い、鏡を100%としたときの割合で示した。測定の角度は、60度とした。光沢度60以上が好適とされる。
製造した歯科用組成物をステンレス製の金型(厚さ2mm、縦30mm、横20mm)に充填した。上下面をスライドガラスで圧接し、両面から歯科技工用可視光線照射器(モリタ社製、アルファライトII)で、各2分間光照射して硬化させた。硬化物を金型から取り出した後、1500番の耐水研磨紙で研磨し、この研磨面を、技工用ポリッシングボックス(KAVO社製、EWL80)を用いて3000rpmでバフ研磨を20秒行った。研磨材にはポーセニーハイドン(東京歯材社製)を用いた。この面の光沢を光沢度計(日本電色(株)製VG−107)を用い、鏡を100%としたときの割合で示した。測定の角度は、60度とした。光沢度60以上が好適とされる。
〔滑沢耐久性〕
製造した歯科用組成物をステンレス製の金型(厚さ2mm、縦30mm、横20mm)に充填した。上下面をスライドガラスで圧接し、両面から歯科技工用可視光線照射器(モリタ社製、アルファライトII)で、各2分間光照射して硬化させた。硬化物を金型から取り出した後、1500番の耐水研磨紙で研磨し、この研磨面を、技工用ポリッシングボックス(KAVO社製、EWL80)を用いて3000rpmでバフ研磨を20秒行って試験片を作製した。研磨材にはポーセニーハイドン(東京歯材社製)を用いた。磨耗試験前の試験片表面の光沢度(G1)を光沢度計(日本電色(株)製VG−107)を用い、鏡を100%としたときの割合で示した。測定の角度は、60度とした。同試験片を歯ブラシ磨耗試験機(大栄科学精器(株)製)により、市販の歯磨材/蒸留水=60/40重量部の懸濁液、及び市販の歯ブラシを用いて、荷重250g下、40000サイクルの磨耗試験を行なった。磨耗試験後の試験片表面の光沢度(G2)を磨耗試験前と同様の方法で示した。磨耗試験前後の試験片表面の光沢度から、滑沢耐久性を(G2)×100/(G1)%として表した。滑沢耐久性70%以上が、好適とされる。
製造した歯科用組成物をステンレス製の金型(厚さ2mm、縦30mm、横20mm)に充填した。上下面をスライドガラスで圧接し、両面から歯科技工用可視光線照射器(モリタ社製、アルファライトII)で、各2分間光照射して硬化させた。硬化物を金型から取り出した後、1500番の耐水研磨紙で研磨し、この研磨面を、技工用ポリッシングボックス(KAVO社製、EWL80)を用いて3000rpmでバフ研磨を20秒行って試験片を作製した。研磨材にはポーセニーハイドン(東京歯材社製)を用いた。磨耗試験前の試験片表面の光沢度(G1)を光沢度計(日本電色(株)製VG−107)を用い、鏡を100%としたときの割合で示した。測定の角度は、60度とした。同試験片を歯ブラシ磨耗試験機(大栄科学精器(株)製)により、市販の歯磨材/蒸留水=60/40重量部の懸濁液、及び市販の歯ブラシを用いて、荷重250g下、40000サイクルの磨耗試験を行なった。磨耗試験後の試験片表面の光沢度(G2)を磨耗試験前と同様の方法で示した。磨耗試験前後の試験片表面の光沢度から、滑沢耐久性を(G2)×100/(G1)%として表した。滑沢耐久性70%以上が、好適とされる。
〔硬化物の曲げ強さ〕
製造した歯科用組成物の硬化物からなる試験片(2mm×2mm×30mm)を作製した。試験片は、37℃の水中に24時間浸漬し、万能試験機(インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピードを1mm/分に設定して、支点間距離20mmで3点曲げ試験法により曲げ強さを測定した。曲げ強さ80MPa以上が好適とされる。
製造した歯科用組成物の硬化物からなる試験片(2mm×2mm×30mm)を作製した。試験片は、37℃の水中に24時間浸漬し、万能試験機(インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピードを1mm/分に設定して、支点間距離20mmで3点曲げ試験法により曲げ強さを測定した。曲げ強さ80MPa以上が好適とされる。
表1および表2の結果より、本発明の範囲に入る実施例の歯科用組成物は、機械的強度、表面滑沢性および滑沢耐久性のすべてに優れる硬化物を与えることがわかる。
本発明の歯科用組成物は、コンポジットレジンに好適であり、その他機械的強度が要求される歯科材料に使用することができる。
Claims (4)
- 重合性単量体(A)と、無機充填材(B)と、重合開始剤(C)とを含有する歯科用組成物であって、
前記無機充填材(B)の粒子は、複数の凸部を有する平均粒子径が40〜400nmの粒子であり、当該凸部の60%以上が、平均粒子径の5〜200%の長さに相当する曲率半径を有する歯科用組成物。 - 前記重合性単量体(A)100重量部に対して、前記無機充填材(B)を1〜950重量部含む請求項1に記載の歯科用組成物。
- さらに重合促進剤(D)を含む請求項1または2に記載の歯科用組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科用組成物を用いたコンポジットレジン。
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JP2009234309A JP2011079785A (ja) | 2009-10-08 | 2009-10-08 | 歯科用組成物およびそれを用いたコンポジットレジン |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013100242A (ja) * | 2011-11-08 | 2013-05-23 | Tokuyama Dental Corp | 歯科用硬化性組成物 |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000327514A (ja) * | 1999-05-06 | 2000-11-28 | Kerr Corp | 歯科修復用複合体 |
-
2009
- 2009-10-08 JP JP2009234309A patent/JP2011079785A/ja active Pending
Patent Citations (1)
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Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
JPN6013043767; '甲第二号証(実験成績証明書)' 平成25年5月27日付刊行物提出書(特願2009-234309号) * |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013100242A (ja) * | 2011-11-08 | 2013-05-23 | Tokuyama Dental Corp | 歯科用硬化性組成物 |
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