以下に、本発明にかかる操舵装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
(第1実施形態)
図1から図7を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、前輪側のロール剛性と後輪側のロール剛性とのロール剛性の比を可変に設定可能なロール剛性制御手段を備えた車両に設けられ、運転者により入力される操舵力と操舵力を補助する補助力とにより前輪を転舵する操舵装置に関する。図1は、本発明にかかる操舵装置の第1実施形態が適用された車両の概略構成を示す図である。
本実施形態にかかる操舵装置2を備える車両1は、進行方向における前側部分にエンジン(内燃機関)5が設けられている。エンジン5は、燃料の燃焼エネルギーを回転エネルギーに変換して出力する公知の内燃機関である。なお、以下の説明において、車両1の前進時における進行方向を前方、進行方向と反対方向を後方と称する。エンジン5が発生したトルク(動力)は、自動変速機6およびドライブシャフト8を介して前輪11へ伝達される。前輪11は、車両1が有する車輪10のうちの駆動輪であり、ドライブシャフト8の左右の両端部にそれぞれ連結されている。エンジン5から伝達された動力により前輪11が車両1を駆動することにより、車両1が走行する。
なお、本実施形態では、車両1の駆動形式は、エンジン5が車両1の前側部分に搭載され、かつ、前輪11が駆動輪として機能するFFの駆動形式であるが、車両1の駆動形式はこれには限定されない。
前輪11は、上記のように駆動輪として設けられていると共に、車両1の操舵輪としても設けられている。前輪11は、車両1の運転席に設けられたハンドル15によって操舵可能となっている。ハンドル15は、車両1の旋回時等にハンドル操作をする際の回転軸であるステアリングシャフト22の一端に接続されている。ステアリングシャフト22の他端は、ギヤ機構によりタイロッド25と機械的に接続されており、ステアリングシャフト22の回転は、タイロッド25の左右方向の運動に変換される。ステアリングシャフト22とタイロッド25との接続部には、EPS(Electric Power Steering)装置21が設けられている。
EPS装置21は、運転者によりハンドル(操作部材)15に入力される操舵力を補助する補助力を出力するものである。具体的には、EPS装置21は、運転者によりハンドル15に入力される操舵トルクを補助する補助トルク(アシストトルク)をステアリングシャフト22に作用させることで操舵操作をアシストする。EPS装置21は、任意のトルクを出力可能なモータ等のトルク発生手段を有しており、ステアリングシャフト22に任意のアシストトルクを作用させることができる。ステアリングシャフト22に入力された運転者の操舵トルクと補助トルクとによりタイロッド25が左右方向に運動する。タイロッド25の左側の端部は、ナックルアーム26を介して左前輪11Lに接続されており、タイロッド25の右側の端部は、ナックルアーム26を介して右前輪11Rに接続されている。
これにより、タイロッド25が左右方向に運動することで、前輪11が転舵される。EPS装置21には、ハンドル15の回転角度である操舵角を検出する舵角センサ46と、操舵時に運転者によりハンドル15に入力されるトルクである操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ47が設けられている。本実施形態の操舵装置2は、EPS装置21、ステアリングシャフト22、舵角センサ46および操舵トルクセンサ47を含んで構成される。
車両1には、車両1の走行時の旋回状態量であるヨーレートを検出するヨーレートセンサ43と、少なくとも車両1の幅方向(横方向)の加速度を検出する加速度センサ44が設けられている。また、自動変速機6の出力軸(図示せず)の近傍には、その出力軸の回転速度を検出することにより車速を検出する車速センサ45が設けられている。ヨーレートセンサ43、加速度センサ44、車速センサ45、舵角センサ46、操舵トルクセンサ47、EPS装置21、エンジン5および自動変速機6のそれぞれは、ECU50に接続されている。ECU50は、周知のマイクロコンピュータを含んで構成されており、処理部、記憶部、入出力部等を有し、車両1の各部を制御する。ECU50は、入出力部において上記センサ等との間で信号の入出力を行う。ECU50の記憶部には、操舵装置2を制御するプログラムが格納されており、ECU50は、上記プログラムに基づいて操舵装置2を制御する。
また、車両1には、前輪11側および後輪12側のロール剛性を可変に制御するアクティブスタビライザ(ロール剛性制御手段)が設けられている。図2は、車両1に設けられたアクティブスタビライザについて説明するための図である。左右の前輪11L,11Rの間には前輪側アクティブスタビライザ16が設けられており、左右の後輪12L,12Rの間には後輪側アクティブスタビライザ30が設けられている。前輪側アクティブスタビライザ16は、車両1の横方向に沿って延在する一対のトーションバー部17L,17Rと、各トーションバー部17L,17Rに連続する一対のアーム部18L,18Rを有している。各トーションバー部17L,17Rは、その軸線周りに回動自在に支持されている。また、各アーム部18L,18Rは、先端部が車両の前方に向けて屈曲して前輪11の図示しないサスペンションに連結されている。
前輪側アクティブスタビライザ16における一対のトーションバー部17L,17Rの間には、アクチュエータ19が設けられている。アクチュエータ19は、トーションバー部17L,17Rを互いに逆方向に回転駆動することができる。アクチュエータ19によるトーションバー部17L,17Rに対する回転駆動力を調整することで、発生する捩り応力により前輪11L,11Rのバウンドおよびリバウンドを抑制する力を調整し、前輪11L,11Rが位置する部位での車両1に付与するアンチロールモーメントを増減し、前輪11側のロール剛性を可変に設定することができる。
後輪側アクティブスタビライザ30は、前輪側アクティブスタビライザ16と同様に、一対のトーションバー部31L,31Rと、一対のアーム部32L,32Rと、アクチュエータ33を有している。アクチュエータ33の回転駆動力を調整することで、後輪12側のロール剛性を可変に設定することができる。
前輪側アクティブスタビライザ16のアクチュエータ19および後輪側アクティブスタビライザ30のアクチュエータ33は、それぞれECU50に接続されており、ECU50により制御される。前輪側アクティブスタビライザ16の制御量および後輪側アクティブスタビライザ30の制御量は、互いに独立して設定されることができ、前輪側アクティブスタビライザ16および後輪側アクティブスタビライザ30により前輪11側のロール剛性と後輪12側のロール剛性の比が可変に設定可能となっている。ECU50は、例えば、車両1の走行環境に基づき前輪11側と後輪12側のロール剛性の比を決定する。具体的には、車両1がレーンチェンジをするときや、連続コーナー(ワインディング路)を走行するときに前輪11側のロール剛性と後輪12側のロール剛性との比を変更する。また、ECU50は、車両1の走行状態に基づいて前輪11側のロール剛性と後輪12側のロール剛性の大きさを変化させる。
図3−1および図3−2は、前輪側アクティブスタビライザ16および後輪側アクティブスタビライザ30による、車両1の横加速度LA(Lateral Acceleration)とロール角度との関係の変更の一例を示す図である。図3−1は、横加速度LAに対する前輪11側のロール角度の特性の変更を示す図、図3−2は、横加速度LAに対する後輪12側のロール角度の特性の変更を示す図である。図3−1および図3−2に示すように、前輪側アクティブスタビライザ16および後輪側アクティブスタビライザ30により、前輪11および後輪12のそれぞれにおいて、ベース状態に対して横加速度LAに対するロール角度を低下させることができる。横加速度LAに対するロール角度を低下させることで、旋回性能の向上やドライバビリティの向上を図ることができる。ここで、ベース状態とは、例えば、車両1において前輪側アクティブスタビライザ16および後輪側アクティブスタビライザ30のいずれも作動させない状態とすることができる。なお、前輪側アクティブスタビライザ16および後輪側アクティブスタビライザ30においてそれぞれ予め定められた所定の回転駆動力を発生させた状態をベース状態としてもよい。横加速度LAに対するロール角度を低下させる場合、前輪11側のロール剛性RSfおよび後輪12側のロール剛性RSrは、それぞれ図4−1および図4−2に示すようにベース状態と比較して大きな値に調整される。図4−1は、横加速度LAに対する前輪側のロール剛性を示す図、図4−2は、横加速度LAに対する後輪側のロール剛性を示す図である。
車両1の旋回時には、旋回外側の車輪10における垂直荷重が増加し、旋回内側の車輪10における垂直荷重が減少する荷重移動が生じる。ここで、前輪11のロール剛性(以下、「frontロール剛性」とする)RSfと後輪12のロール剛性(以下、「rearロール剛性」とする)RSrとの比(相対関係)が変化すると、以下に説明するように、ハンドル15の操舵特性が変化し、操舵フィーリングに対する違和感を運転者に与えてしまうという問題がある。
まず、図5を参照して、荷重移動量とコーナリングスティフネスCpとの関係について説明する。図5は、車輪10の支持する荷重とコーナリングスティフネスとの関係の一例を示す図である。図5において、横軸は一つの車輪10が支持する荷重X、縦軸は車輪10のコーナリングスティフネス(Cornering stiffness)Cpを示す。コーナリングスティフネスCpは、単位横すべり角あたりの車輪10の発生するコーナリングフォースである。旋回に必要なコーナリングフォースを得るときに、コーナリングスティフネスCpが小さいと、その分ハンドル15の操舵角を大きくする必要がある。
図5に示すように、荷重XとコーナリングスティフネスCpとの関係は、上に凸の曲線となっている。したがって、旋回時に左右輪間の荷重移動が生じると、左右輪のコーナリングスティフネスCpの合計が低下することとなる。例えば、直進時の左右輪の荷重がそれぞれX0であったとすると、左右輪のコーナリングスティフネスCpの合計は2Cp0となる。一方、旋回時に左右輪間でΔXの荷重移動が生じたとすると、旋回外側の車輪10の荷重はX0+ΔXとなり、旋回内側の車輪10の荷重はX0−ΔXとなる。左右輪のコーナリングスティフネスCpの合計は、Cp1+Cp2=2Cp3であり、直進時の合計2Cp0と比較して小さな値となる。直進時と旋回時のコーナリングスティフネスCpの合計の差は、左右輪間の荷重移動量が大きくなるほど広がることとなる。
ここで、左右輪間の荷重移動量、前後輪の荷重移動量比Z、ロール剛性の変更前後での荷重移動量比の変更割合Wについて説明する。前後輪の荷重移動量比Zは、前輪11における左右輪間の荷重移動量と後輪12における左右輪間の荷重移動量との比である。この前後輪の荷重移動量比Zが変動すると、コーナリングスティフネスCpの変動が生じる。また、荷重移動量比の変更割合Wは、前後輪の荷重移動量比Zにおけるベース状態からロール剛性を変更した後とベース状態との比である。ロール剛性を変更することで前輪11側のロール剛性と後輪12側のロール剛性との相対関係が変化すると、荷重移動量比の変更割合Wが変化する。
ベース状態のFront左右荷重移動量ΔFf”は下記[数1]、ベース状態のRear左右荷重移動量ΔFr”は下記[数2]で求められる。なお、
RSf”;ベース状態のfrontロール剛性
RSr”;ベース状態のrearロール剛性
RSf;ロール剛性変更後のfrontロール剛性
RSr;ロール剛性変更後のrearロール剛性
g;重力加速度(gravity acceleration)
M;車両質量(vehicle mass)
L;ホイールベース(wheel base)
Lf;車両1の重心から前軸までの前後方向の距離
Lr;車両1の重心から後軸までの前後方向の距離
Tf;前輪トレッド(front tread)
Tr;後輪トレッド(rear tread)
Hf;前輪ロールセンタ高さ(front roll center height)
Hr;後輪ロールセンタ高さ(real roll center height)
LA;横加速度(Lateral Acceleration)
である。また、車両1の重心位置高さ(gravity center height)をHgとして、
Hs = Hg−(Hf+Hr)/2
である。
ベース状態におけるFront左右荷重移動量ΔFf”とRear左右荷重移動量ΔFr”との比であるベース状態での荷重移動量比Z”は、下記式(1)となる。
Z” = ΔFf”/ΔFr” (1)
ベース状態からロール剛性を変更した後のFront左右荷重移動量ΔFfは下記[数3]、ロール剛性変更後のRear左右荷重移動量ΔFrは下記[数4]で求められる。
ロール剛性変更後のFront左右荷重移動量ΔFfとRear左右荷重移動量ΔFrとの比であるロール剛性変更後の荷重移動量比Zは、下記式(2)となる。
Z = ΔFf/ΔFr (2)
ここで、ベース状態からロール剛性を変更したときの荷重移動量比の変更割合について考える。荷重移動量比の変更割合Wは、下記式(3)である。
W = Z/Z” (3)
荷重移動量比の変更割合Wは、左右荷重移動量の前後バランスの変化を示しており、荷重移動量比の変更割合Wの値が1と異なる値であると、操舵特性が変化したことを示す。
(W>1の場合)
この荷重移動量比の変更割合Wが1よりも大きい(荷重移動量比の変更割合Wが増加する)場合、ロール剛性を変更しない場合と比較して、前輪11における左右荷重移動量が大きくなる。つまり、車両1全体の左右荷重移動量において、前輪11における左右荷重移動量の割合が高くなる。これにより、前輪11のコーナリングスティフネスCpが減少することとなる。
(W<1の場合)
荷重移動量比の変更割合Wが1よりも小さい(荷重移動量比の変更割合Wが減少する)場合、ロール剛性を変更しない場合と比較して、前輪11における左右荷重移動量が小さくなる。つまり、車両1全体の左右荷重移動量において、前輪11における左右荷重移動量の割合が低くなる。これにより、前輪11のコーナリングスティフネスCpが増加することとなる。
(W=1の場合)
荷重移動量比の変更割合が1である場合、ロール剛性の変更前後で、前輪11側の左右荷重移動量と後輪12側の左右荷重移動量との比が変化していない。この場合、ロール剛性を変更した場合と変更しないベース状態とで前輪11のコーナリングスティフネスCpは変化しない。
車両1の全体としての左右荷重移動量が同じであったとしても、前輪11側のロール剛性と後輪12側のロール剛性との相対関係が変化すると、以下に図6を参照して説明するように、操舵輪としての前輪11のコーナリングスティフネスCpが変動し、操舵特性が変化してしまう。図6は、操舵特性について説明するための図である。
図6において、右向きの横軸はハンドル15の操舵角MA、上向きの縦軸はステアリングシャフト22によりタイロッド25を左右方向に運動させる力(操舵力と補助力とを合わせた力)であるラック軸力F、左向きの横軸および下向きの縦軸は操舵トルクMTをそれぞれ示す。
右向きの横軸(操舵角MA)と上向きの縦軸(ラック軸力F)とで区切られた第一象限は、運転者がハンドル15を操作するときの操舵角MAとラック軸力Fとの関係を示す。ラック軸力Fは、操舵輪である前輪11で発生するコーナリングフォースと対応している。つまり、操舵角MAとラック軸力Fとの関係(特性)が、直線A0で示す特性である場合よりも、直線A1で示す特性である場合の方が、同じ操舵角MAに対して前輪11で発生するコーナリングフォースが小さい。言い換えると、同じコーナリングフォースを発生させようとする場合、操舵角MAとラック軸力Fとの関係(特性)が、直線A0で示す特性である場合よりも、直線A1で示す特性である場合の方が、より大きな操舵角MAを必要とする。
上向きの縦軸(ラック軸力F)と左向きの横軸(操舵トルクMT)とで区切られた第二象限は、運転者がハンドル15を操作するときの操舵トルクMTとラック軸力Fとの関係を示す。操舵トルクMTは、運転者の入力する操舵力に対応しており、ラック軸力Fは、操舵力と補助力を合わせた力に対応している。したがって、B0,B1,B2に示す直線は、入力される操舵トルクMTに対してどれだけのアシストトルクを出力してラック軸力Fを作用させるかというEPS装置21のアシスト特性を示す。
下向きの縦軸(操舵トルクMT)と右向きの横軸(操舵角MA)とで区切られた第四象限は、操舵角MAと操舵トルクMTとの関係(操舵特性)を示す。この操舵角MAと操舵トルクMTとの関係は、操舵角MAとラック軸力Fとの関係(A0,A1,A2等)と操舵トルクMTとラック軸力Fとの関係(B0,B1,B2等)により決まる。例えば、ベース状態における操舵角MAと操舵トルクMTとの関係がA0、操舵トルクMTとラック軸力Fとの関係(アシスト特性)がB0である場合、操舵角MAと操舵トルクMTとの関係(操舵特性)は、C0で示すようになる。
前輪側アクティブスタビライザ16や後輪側アクティブスタビライザ30によりロール剛性が変更され、荷重移動量比の変更割合Wが1よりも大となると、ベース状態と比較して、後輪12の荷重移動量に対する前輪11の荷重移動量の割合が大きくなる。すなわち、見かけ上、前輪11のタイアCp(コーナリングスティフネス)が減少する。これにより、操舵角MAとラック軸力Fとの関係は、ベース状態の特性A0からロール剛性変更後の特性A1に変化する。このときに、EPS装置21のアシスト特性が、ベース状態のB0のままであると、操舵角MAと操舵トルクMTとの関係(操舵特性)は、C1で示すようにベース状態の操舵特性C0とは異なる特性となってしまう。これにより、ベース状態と比較して、ロール剛性変更後は手応え(MT/MA)が小さくなってしまう。手応えが変化することで運転者が操舵フィーリングに対して違和感を覚えてしまう。
本実施形態では、これに対して、操舵特性の変化を抑制するように、EPS装置21のアシスト特性が補正される。具体的には、上記のようにロール剛性の変更(前輪11側と後輪12側のロール剛性の比の変化)により荷重移動量比の変更割合Wが増加する場合には、荷重移動量比の変更割合Wに応じて、EPS装置21のアシスト特性が、アシストトルクを小さくするように変更される。言い換えると、ロール剛性の変更により荷重移動量比の変更割合Wが増加する場合には、操舵トルクMTに対するラック軸力Fの大きさがロール剛性を変更しない場合と比較して小さくなるように、アシストトルクが補正される。つまり、ロール剛性の比が変化する場合、ロール剛性の比が変化した後のアシストトルクは、ロール剛性の比が変化する前のアシストトルクと比較して、ロール剛性の比の変化による車両の旋回時の操舵力とハンドル15に対する操作量との対応関係の変動を抑制する側の値となる。
このときのアシストトルクの補正量は、ロール剛性変更後の操舵特性が、ベース状態(ロール剛性を変更しない場合)の操舵特性C0から乖離することを抑制する値に設定される。B1で示すアシスト特性は、このようにアシストトルクの補正がなされたアシスト特性を示す。ロール剛性変更後の操舵角MAとラック軸力Fとの関係がA1である場合に、アシスト特性をB1に変更すると、操舵特性は、ベース状態の(ロール剛性を変更しない場合の)操舵特性C0と同様の特性を維持することができる。
一方、ロール剛性の変更により荷重移動量比の変更割合Wが1よりも小となると、ベース状態と比較して後輪12の荷重移動量に対する前輪11の荷重移動量の割合が小さくなる。すなわち、見かけ上、前輪12のタイアCpが増加する。これにより、操舵角MAとラック軸力Fとの関係は、ベース状態の特性A0からロール剛性変更後の特性A2に変化する。このとき、EPS装置21のアシスト特性が、ベース状態のB0のままであると、操舵特性はC2のようになり、ベース状態(ロール剛性を変更しない場合の操舵特性C0)と比較して手応え(MT/MA)が大きくなってしまう。
本実施形態では、ロール剛性の変更により荷重移動量比の変更割合Wが減少する場合には、荷重移動量比の変更割合Wに応じて、EPS装置21のアシスト特性が、アシストトルクを大きくするように変更される。言い換えると、ロール剛性の変更により荷重移動量比の変更割合Wが減少する場合には、操舵トルクMTに対するラック軸力Fの大きさがロール剛性を変更しない場合と比較して大きくなるように、アシストトルクが補正される。このときのアシストトルクの補正量は、ロール剛性変更後の操舵特性が、ベース状態(ロール剛性を変更しない場合)の操舵特性C0から乖離することを抑制する値に設定される。B2で示すアシスト特性は、このようにアシストトルクの補正がなされたアシスト特性を示す。ロール剛性変更後の操舵角MAとラック軸力Fとの関係がA2である場合に、アシスト特性をB2に変更すると、操舵特性は、ベース状態の(ロール剛性を変更しない場合の)操舵特性C0と同様の特性を維持することができる。
図7を参照して本実施形態の操舵装置2の動作について説明する。図7は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS10では、ECU50により、前輪11側のロール剛性RSfあるいは後輪12側のロール剛性RSrの少なくともいずれか一方を変化させるか否かが判定される。その判定の結果、ステップS10で肯定判定がなされた場合(ステップS10−Y)にはステップS20に進み、そうでない場合(ステップS10−N)には本制御フローは終了する。
ステップS20では、ECU50により、ベース状態およびロール剛性変更後のそれぞれについて、前輪11の左右荷重移動量および後輪12の左右荷重移動量が算出される。ECU50は、上記[数1]に基づいてベース状態のFront左右荷重移動量ΔFf”、上記[数2]に基づいてベース状態のRear左右荷重移動量ΔFr”を算出する。また、ECU50は、上記[数3]に基づいてロール剛性変更後のFront左右荷重移動量ΔFf、上記[数4]に基づいてロール剛性変更後のRear左右荷重移動量ΔFrを算出する。なお、ロール剛性変更後のFront左右荷重移動量ΔFfおよびRear左右荷重移動量ΔFrは、ロール剛性を変更する前に算出しておくことが好ましい。このようにすれば、ロール剛性の変更前あるいはロール剛性の変更と同時にEPS装置21のアシスト特性を変更し、操舵特性の変化をより効果的に抑制することができる。
次に、ステップS30では、ECU50によりEPS装置21のアシスト特性が変更される。ECU50は、ステップS20で算出した結果から、荷重移動量比の変更割合Wを算出する。そして、ECU50は、図6を参照して説明したように、ロール剛性変更後の操舵特性が、ベース状態(ロール剛性を変更しない場合)の操舵特性から乖離することを抑制するように、荷重移動量比の変更割合Wに応じてEPS装置21のアシスト特性を変更する。これにより、ロール剛性の変更による操舵フィーリングに対する違和感が抑制される。ステップS30が実行されると、本制御フローは終了する。
なお、本実施形態では、ロール剛性を可変に制御するロール剛性制御手段がアクティブスタビライザ16,30である場合を例に説明したが、ロール剛性制御手段は、公知のアクティブサスペンション等であってもよい。
(第2実施形態)
図8から図11を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
上記第1実施形態では、前輪側アクティブスタビライザ16および後輪側アクティブスタビライザ30によりロール剛性を変化させる場合に、操舵特性の変化を抑制するようにEPS装置21のアシスト特性が変更された。これに加えて、あるいはこれに代えて、本実施形態では、前輪側アクティブスタビライザ16や後輪側アクティブスタビライザ30のアクチュエータ19,33の出力に制限がかかることで前輪側と後輪側とのロール剛性の相対関係が変化し、荷重移動量比の変更割合が変動した場合に、操舵特性の変化を抑制するようにEPS装置21のアシスト特性が変更される。アクチュエータ19,33の出力の制限は、例えば、アクチュエータ19,33の設置スペース(アクチュエータ19,33のサイズ)の制約等による。
図8は、前輪側アクティブスタビライザ16のアクチュエータ19の出力と、車両1のロール角度と、前輪11側のロール剛性RSfとの関係の一例を示す図、図9は、後輪側アクティブスタビライザ30のアクチュエータ33の出力と、車両1のロール角度と、後輪12側のロール剛性RSrとの関係の一例を示す図である。
図8において、横軸は横加速度LAであり、(a)縦軸はアクチュエータ19の出力、(b)縦軸はロール角度、(c)縦軸は前輪11側のロール剛性RSfをそれぞれ示す。符号101に示すように、横加速度LAの増加に応じてアクチュエータ19の出力は増加され、これにより、符号111に示すように前輪11側のロール剛性が一定(要求値)に保たれる。ここで、アクチュエータ19の出力(制御量)には、制御量限界値(以下、単に「限界値」と称する)が存在し、横加速度LAがLA1に達すると、アクチュエータ19の出力は限界値となる。横加速度LAがLA1よりも大きい領域では、符号102に示すように、アクチュエータ19の出力は限界値に固定される。
Frontロール剛性RSfは、アクチュエータ19による剛性(前輪側アクティブスタビライザ16の剛性)と、ばね(前輪11のサスペンション)による剛性とを含んでいる。符号112に示すように、横加速度LAが、アクチュエータ19の出力が制限にかかる横加速度LA1を超えると、前輪側アクティブスタビライザ16の剛性をそれ以上に高めることができないため、前輪11側のロール剛性が大きく低下する。
図9において、横軸は横加速度LAであり、(a)縦軸はアクチュエータ33の出力、(b)縦軸はロール角度、(c)縦軸は後輪12側のロール剛性をそれぞれ示す。前輪11側と同様に、後輪12側においても横加速度LAの増加に応じてアクチュエータ33の出力は増加され(符号201参照)、後輪12側のロール剛性が一定(要求値)に保たれる(符号211参照)。アクチュエータ33の出力には、限界値が存在し、横加速度LAがLA2に達すると、アクチュエータ33の出力は限界値となる。横加速度LAがLA2よりも大きい領域では、符号202に示すように、アクチュエータ33の出力は限界値に固定される。横加速度LAが、アクチュエータ33の出力が制限にかかる横加速度LA2を超えると、後輪12側のロール剛性は大きく低下する(符号212参照)。
前輪側アクティブスタビライザ16のアクチュエータ19、あるいは後輪側アクティブスタビライザ30のアクチュエータ33の少なくともいずれか一方において、ロール剛性の要求値に基づく制御量が、制御量限界値を超えた状態では、前輪11側のロール剛性と後輪12側のロール剛性との比に変化が生じる。これにより、操舵フィーリングに対する違和感を運転者に与えてしまう。
本実施形態では、アクチュエータ19,33の出力が制限にかかる前(横加速度LAが、アクチュエータ19,33の限界値に対応する横加速度LAに達する前)の状態の左右荷重移動量比をY”、アクチュエータ19,33の少なくともいずれか一方の出力が制限されて前後のロール剛性の比が変化している途中の左右荷重移動量比をYとして、荷重移動量比の変更割合V=Y/Y”を考える。
図10は、アクティブスタビライザのアクチュエータの出力に限界値がある場合の操舵特性について説明するための図である。図10において、符号A0は、アクティブスタビライザ16,30のアクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵角MAとラック軸力Fとの関係を示す。アクティブスタビライザ16,30のアクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合、横加速度LAが小さく、要求される操舵角MAが小さい場合と、横加速度LAが大きく、要求される操舵角MAが大きい場合とで、操舵角MAとラック軸力Fとの関係(比)は変化しない。つまり、操舵角MAとラック軸力Fとの関係は、例えば、1本の直線で示される。符号B0およびC0は、アクティブスタビライザ16,30のアクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵トルクMTとラック軸力Fとの関係(アシスト特性)および操舵角MAと操舵トルクMTとの関係(操舵特性)をそれぞれ示す。
横加速度LAが増加し、前輪側アクティブスタビライザ16のアクチュエータ19あるいは後輪側アクティブスタビライザ30のアクチュエータ33の少なくともいずれか一方において出力制限がかかると、さらに横加速度LAが増加したときに、制限がかかったアクチュエータの出力は固定され、制限がかかっていないアクチュエータがあればその出力が増加される。これにより、前輪11側と後輪12側のロール剛性の比が変化すると、荷重移動量比の変更割合Vが変動する。出力制限がかかり、荷重移動量比の変更割合Vが1よりも大となると、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合と比較して、後輪12の荷重移動量に対する前輪11の荷重移動量の割合が大きくなる。これにより、見かけ上前輪11のタイアCpが減少するので、操舵角MAとラック軸力Fとの関係はA3で示す特性となり、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合と比較して、同じ操舵角MAに対するラック軸力Fが減少する。これに対して、EPS装置21のアシスト特性が、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合のアシスト特性B0のままであると、操舵角MAと操舵トルクMTとの関係(操舵特性)は、C3のようになり、同じ操舵角MAに対する操舵トルクMTが減少する。その結果、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵特性C0と比較して手応え(MT/MA)が小さくなってしまう。
これに対して、本実施形態では、アクチュエータ19,33の出力に制限がかかったことによる前輪11側のロール剛性と後輪12側のロール剛性の比の変化により荷重移動量比の変更割合Vが増加する場合には、荷重移動量比の変更割合Vに応じて、EPS装置21のアシスト特性が、アシストトルクを小さくするように変更される。言い換えると、アクチュエータ19,33の出力制限に起因して前後のロール剛性の相対関係が変化することにより荷重移動量比の変更割合Vが増加する場合には、アクチュエータ19,33の出力が制限されていないときと比較して操舵トルクMTに対するラック軸力Fの大きさ(の比)を小さくするように、アシストトルクが補正される。このときのアシストトルクの補正量は、ロール剛性の比の変化後の操舵特性が、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵特性C0から乖離することを抑制する値に設定される。B3で示すアシスト特性は、このようにアシストトルクの補正がなされたアシスト特性を示す。アクチュエータ19,33の出力に制限がかかった後の操舵角MAとラック軸力Fとの関係がA3である場合に、アシスト特性がB3に設定されると、操舵特性は、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵特性C0と同様の特性を維持することができる。
一方、前輪側アクティブスタビライザ16のアクチュエータ19あるいは後輪側アクティブスタビライザ30のアクチュエータ33の少なくとも一方において出力制限がかかって、前輪11側と後輪12側のロール剛性の比が変化し、荷重移動量比の変更割合Vが1よりも小となると、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合と比較して後輪12の荷重移動量に対する前輪11の荷重移動量の割合が小さくなる。すなわち、見かけ上、前輪12のタイアCpが増加する。これにより、操舵角MAとラック軸力Fとの関係は、A4で示す特性となり、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合と比較して、同じ操舵角MAに対するラック軸力Fが増加する。これに対して、EPS装置21のアシスト特性が、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合のアシスト特性B0のままであると、操舵角MAと操舵トルクMTとの関係(操舵特性)は、C4のようになり、同じ操舵角MAに対する操舵トルクMTが増加する。その結果、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵特性C0と比較して手応え(MT/MA)が大きくなってしまう。
これに対して、本実施形態では、アクチュエータ19,33の出力に制限がかかったことによる前輪11側のロール剛性と後輪12側のロール剛性の比の変化により加重移動量比の変更割合Vが減少する場合には、荷重移動量比の変更割合Vに応じて、EPS装置21のアシスト特性が、アシストトルクを大きくするように変更される。つまり、アクチュエータ19,33の出力が制限されていないときと比較して操舵トルクMTに対するラック軸力Fの大きさ(比)を大きくするように、アシストトルクが補正される。このときのアシストトルクの補正量は、ロール剛性の相対関係の変化後の操舵特性が、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵特性C0から乖離することを抑制する値に設定される。B4で示すアシスト特性は、このようにアシストトルクの補正がなされたアシスト特性を示す。アクチュエータ19,33の出力に制限がかかった後の操舵角MAとラック軸力Fとの関係がA4である場合に、アシスト特性がB4に設定されると、操舵特性は、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵特性C0と同様の特性を維持することができる。
また、前輪側アクティブスタビライザ16のアクチュエータ19、後輪側アクティブスタビライザ30のアクチュエータ33の出力制限およびそのタイミングによっては、図11に示すように、操舵角MAと操舵トルクMTとの関係が3以上の異なる特性に変化することが考えられる。図11は、アクティブスタビライザのアクチュエータの出力に限界値がある場合の操舵特性について説明するための他の図である。
図11において、符号A0は、アクティブスタビライザ16,30のアクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵角MAとラック軸力Fとの関係を示す。また、符号B0およびC0は、アクティブスタビライザ16,30のアクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵トルクMTとラック軸力Fとの関係(アシスト特性)および操舵角MAと操舵トルクMTとの関係(操舵特性)をそれぞれ示す。
例えば、前輪側アクティブスタビライザ16のアクチュエータ19と、後輪側アクティブスタビライザ30のアクチュエータ33とで、異なる横加速度LAにおいて出力に制限がかかる場合など、操舵角MAとラック軸力Fとの関係(特性)が横加速度LAの増加につれて複数回変化することがある。図11には、横加速度LAの最も小さい領域R1ではアクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合(A0)と同様であった操舵角MAとラック軸力Fとの関係が、それよりも横加速度LAが大きい領域において、符号A5に示すように、出力に限界値がない場合と比較して操舵角MAに対するラック軸力Fが減少するように特性が変化し、さらに横加速度LAが大きな領域では、符号A6に示すように、出力に限界値がない場合と比較して操舵角MAに対するラック軸力Fが増加するように特性が変化する例が示されている。このように横加速度LAの大きさによって操舵角MAとラック軸力Fとの関係が変化していく場合に、EPS装置21のアシスト特性が、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合のアシスト特性B0のままであると、操舵角MAと操舵トルクMTとの関係(操舵特性)は、符号C5,C6に示すように操舵角MAによって手応え(MT/MA)が小さくなったり(C5)大きくなったり(C6)してしまい、操舵フィーリングに対する違和感を運転者に与える。
このような操舵角MAとラック軸力Fとの関係の変化に対しても、荷重移動量比の変更割合Vに応じてEPS装置21のアシスト特性を変化させることで、操舵フィーリングの低下を抑制することができる。アクチュエータ19,33の出力に制限がかかっていない領域R1をベース状態の領域として、ベース状態の領域R1と比較して荷重移動量比の変更割合Vが大きい(V>1)領域R2では、EPS装置21のアシスト特性が、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合と比較してアシスト力を小さくするように変更される。符号B5に示すように、操舵トルクMTに対するラック軸力Fの大きさ(比)を小さくするようにアシストトルクが補正される。また、ベース領域R1と比較して荷重移動量比の変更割合Vが小さい(V<1)領域R3では、EPS装置21のアシスト特性が、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合と比較してアシスト力を大きくするように変更される。符号B6に示すように、操舵トルクMTに対するラック軸力Fの大きさ(比)を大きくするようにアシストトルクが補正される。符号B5,B6に示すようにEPS装置21のアシスト特性が補正されることで、アクチュエータ19,33の出力に制限がかかる横加速度LAよりも大きな横加速度LAが作用する旋回時においても、アクチュエータ19,33の出力に限界値がない場合の操舵特性C0に実際の操舵特性を近づけることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記各実施形態と異なる点についてのみ説明する。
上記第2実施形態では、アクチュエータ19,33の出力が限界値に達する横加速度よりも大きな横加速度LAが車両1に作用する場合に、EPS装置21のアシスト特性を変更することで操舵フィーリングに対する違和感を運転者に与えることが抑制された。本実施形態では、これに代えて、アクチュエータ19,33のいずれかの出力が限界値に達した場合、両方のアクチュエータ19,33の出力をそのときの出力で固定する。これにより、左右荷重移動量の前後比の変動を抑制し、操舵特性の変動を抑制することができる。
例えば、前輪側アクティブスタビライザ16のアクチュエータ19の出力が限界値に達した場合、後輪側アクティブスタビライザ30のアクチュエータ33の出力が限界値に達していなくても、アクチュエータ33の出力をそれ以上増加させることを禁止する。これにより、車両1に作用する横加速度LAが、アクチュエータ19の出力が限界値に達する横加速度LAよりも大きくなった場合にアクチュエータ33の出力を増加させ続ける場合と比較して、前輪11と後輪12の左右荷重移動量の比の変動を抑制することが可能となる。よって、アクチュエータ19,33の出力に制限がかかったことにより操舵フィーリングに対する違和感を運転者に与えることを抑制することができる。
このようにすれば、アクチュエータ19,33の出力が限界値に達していない間は、荷重移動量比の変更割合Wに応じてEPS装置21のアシスト特性を補正することで操舵特性の変動を抑制することができ、アクチュエータ19,33の出力に制限がかかったときにはアクチュエータ19,33の出力を固定することで、操舵特性の変動を抑制することができる。
なお、上記各実施形態では、荷重移動量比の変更割合Wや荷重移動量比の変更割合Vの値に応じてEPS装置21のアシスト特性が補正されたが、他の係数に基づいてアシスト特性が補正されてもよい。
例えば、下記[数5]に示すロール剛性比の変更割合W1、下記[数6]に示すフロントロール剛性配分の変更割合W2、下記[数7]に示すリアロール剛性配分の変更割合の逆数W3に応じてEPS装置21のアシスト特性が補正されてもよい。
図12は、ベース状態に対して前輪11側のロール剛性および後輪12側のロール剛性をそれぞれ変化させたときの荷重移動量比の変更割合Wと、ロール剛性比の変更割合W1、フロントロール剛性配分の変更割合W2およびリアロール剛性配分の変更割合の逆数W3との関係を示す図である。図12では、ベース状態に対して、前輪11側のロール剛性を0.8〜1.0倍まで、後輪12側のロール剛性を0.6〜1.0倍まで変化させたときのそれぞれの推移が示されている。
図13は、ベース状態に対して前輪11側のロール剛性および後輪12側のロール剛性をそれぞれ変化させたときの荷重移動量比の変更割合Wと、ロール剛性比の変更割合W1、フロントロール剛性配分の変更割合W2およびリアロール剛性配分の変更割合の逆数W3との関係を示す他の図である。図13では、ベース状態に対して、前輪11側のロール剛性を0.6〜1.0倍まで、後輪12側のロール剛性を0.8〜1.0倍まで変化させたときのそれぞれの推移が示されている。
図12および図13において、横軸は、荷重移動量比の変更割合Wを示し、縦軸は、荷重移動量比の変更割合Wを与えるものと同じロール剛性を代入して算出された各係数(W1,W2,W3)の大きさを示す。
図12および図13に示すように、ロール剛性比の変更割合W1、フロントロール剛性配分の変更割合W2およびリアロール剛性配分の変更割合の逆数W3は、荷重移動量比の変更割合Wと値は一致しないものの、荷重移動量比の変更割合Wに対してほぼ線形に近い関係にある。したがって、ロール剛性比の変更割合W1、フロントロール剛性配分の変更割合W2またはリアロール剛性配分の変更割合の逆数W3に応じてアシスト特性を補正した場合、荷重移動量比の変更割合Wに応じてEPS装置21のアシスト特性を補正する場合と比較すると、精度は同一ではないものの、同様な効果を奏することができる。つまり、ロール剛性の変更に対応して値が変化する係数であれば、EPS装置21のアシスト特性を補正する係数として用いることが可能である。
また、上記各実施形態では、前輪側のロール剛性を制御するアクチュエータ19の制御量と後輪側のロール剛性を制御するアクチュエータ33の制御量とが独立に設定可能であったが、これに代えて、両アクチュエータ19,33の制御量が同一とされる構成であってもよい。また、前輪側のロール剛性あるいは後輪側のロール剛性のいずれか一方のみのロール剛性を制御可能に構成された車両に対しても上記各実施形態を適用可能である。