JP2011079152A - 多層熱成形容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 特定のエチレン−プロピレン共重合体を含むプロピレン系樹脂組成物からなるポリプロピレン系シートを、プラグアシスト成形に従った、融点以下の温度で固相圧空成形すると、シートの折り曲げにより形成される容器の脚部は、隙間なく強固に融着した状態になっている、脚部を有する容器が収得できる。
【選択図】なし
Description
要件(i):メルトフローレート(MFR)(温度230℃、荷重2.16kg)が1〜20g/10分である。
要件(ii):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Q値)が1.5〜3.5である。
要件(iii):オルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下である。
本発明の第3の特徴点は、多層熱成形容器が少なくとも最内層と主層とより成り、主層には、下記の要件(iv〜v)を満たすプロピレン系重合体(B)が80重量%以上の割合で含まれるプロピレン系樹脂組成物(Y)が用いられていることを特徴とする前記の多層熱成形容器、にある。
要件(iv):メルトフローレート(MFR)(温度230℃、荷重2.16kg)が0.2〜5g/10分である。
要件(v):示差走査熱量計(DSC)で測定された融解ピーク温度(融点)が160℃以上である。
本発明の第5の特徴点は、ポリプロピレン系シートの最内層の厚みが20〜200μmであり、最内層と主層の厚み比(最内層/主層)が、0.2以下であることを特徴とする前記の多層熱成形容器、にある。
特に、本発明は、特定のポリプロピレン系シートを用いて、それにプラグアシスト成形における、固相圧空成形法を適用すれば、容器の大小、形状の違いがあるにもかかわらず、容器の底の脚部部分に剥離構造が無い状態で、容器状の成形品を、歩留まりがよく、比較的高速サイクルで、安定に容易に成形することができる。
要件(i):メルトフローレート(MFR)(温度230℃、荷重2.16kg)が1〜20g/10分である。
要件(ii):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Q値)が1.5〜3.5である。
要件(iii):オルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下である。
I.プロピレン系樹脂組成物(X)
本発明には、ポリプロピレン系シートの最内層に、エチレン−プロピレン共重合体(A)が50〜100重量%の割合で含まれるプロピレン系樹脂組成物(X)が用いられている。エチレン−プロピレン共重合体(A)の配合量が、この範囲未満であると足部の融着強度が低下する。
エチレン−プロピレン共重合体(A)を50〜100重量%の範囲で含むプロピレン系樹脂組成物(X)の残りの0〜50重量%の部分は、汎用の各種エチレン−プロピレン共重合体、E−P−R、ポリプロピレン(共)重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体等のような樹脂、充填剤、添加剤のような材料が任意に配合でき、これらの配合材料は、エチレン−プロピレン共重合体(A)の溶着性のような特性に悪影響を与えず、主層である基剤層と積層しても、層剥離せず、しかも容器内層としての役割を果たすので、安全、衛生的なものでなければならない。
係るエチレン−プロピレン共重合体(A)は、前記要件(i)〜(iii)に示す特性・性状を有するものである。
以下、項目毎に、順次説明する。
本発明に係るエチレン−プロピレン共重合体(A)は、前記要件(i)に示すとおり、温度230℃、2.16Kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が1〜20g/10分であることを必要とし、好ましくは2〜15g/10分、更に好ましくは3〜10g/10分である。
エチレン−プロピレン共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)が1g/10分未満では、溶融流動性が低下し容器表面荒れが発生する。一方、MFRが20g/10分を超えると、シート成形時のドローダウンが激しくなりシート成形が困難になる恐れがある。
エチレン−プロピレン共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、エチレン−プロピレン共重合体(A)の重合条件である温度や圧力を調節したり、重合時に添加する水素等の連鎖移動剤の添加量を制御することにより、容易に調整を行なうことができる。
本発明に用いられるエチレン−プロピレン共重合体(A)は、Q値が、1.5〜3.5、好ましくは2〜3.5、さらに好ましくは2.5〜3.3の範囲のものである。
Q値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC:Gel Permeation Chromatography)により、測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として求められる値であり、この値は、小さいほど分子量が均一で、分子量分布が狭いことを意味する。
本発明に用いられるエチレン−プロピレン共重合体(A)のQ値は、1.5未満では、シートの表面荒れが発生する。一方、Q値が3.5を超えると、容器成形時にプラグへのシート張り付きが発生する恐れがある。
GPC装置:ウォーターズ社製ISOC−ALC/GPC
溶媒:O−ジクロルベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1ml/min
標準材:東ソー社製単分散ポリスチレン
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図2のように行う。
また、GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
銘柄:F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式:[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
本発明に係るエチレン−プロピレン共重合体(A)は、前記要件(iii)に示すとおり、昇温溶出分別(TREF)測定によって得られる溶出曲線において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下であり、好ましくは2.0重量%以下であり、更に好ましくは1.0重量%以下あり、非常に好ましくは0.5重量%以下である。
る。
40℃以下の温度で溶出する成分は、低結晶性成分であり、この成分の量が多いと、製品全体の結晶性が低下し、製品の剛性といった機械的強度が低下してしまうと共に、容器成形時にプラグへのシート張り付きが発生する恐れがある。
エチレン−プロピレン共重合体(A)のオルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)は、共重合の際にメタロセン錯体を用いることにより、一般的に低く抑えることが可能であるが、触媒の純度を一定以上に保つことに加え、触媒の製造方法や重合時の反応条件を、極端に高温にしないことやメタロセン錯体に対する有機アルミの量比を上げすぎないことが必要である。
試料を140℃でオルトジクロロベンゼンに溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却後、10分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼンを1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒:オルトジクロロベンゼン
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
検出器:波長固定型赤外検出器、FOXBORO社製、MIRAN、1A
測定波長:3.42μm
本発明に用いられるエチレン−プロピレン共重合体(A)は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)により、測定された融解ピーク温度である融点が、プロピレン系重合体(B)より20℃以上低いものが好ましく、30℃以上低いものがより好ましい。エチレン−プロピレン共重合体(A)とプロピレン系重合体(B)との融点差が20℃未満であると、足部の融着強度が低下する恐れがある。
融点を調整するには、重合反応系へ供給するエチレンの量を制御することにより、容易に調整することができる。
なお、融点の具体的測定は、セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度を融点とした(単位:℃)。
本発明のエチレン−プロピレン共重合体(A)単独、またはその共重合体(A)を約50〜100重量%程度含むプロピレン系樹脂組成物(X)の融点は、一般には約95〜160℃程度であるが、容器の内層であり、熱湯を注ぐと溶融することも有り得るから、融解が100℃以上、好ましくは110〜130℃の範囲のものが任意に使用されるが、実際のポリプロピレン系シートの内層である被覆層に使用する場合には、主層である基材層より融点が低く、しかも20℃以上の較差を有すること、好ましくは、25〜50℃程度の較差を有する材料を選択することが好ましい。
本発明に用いられるエチレン−プロピレン共重合体(A)は、メタロセン触媒を使用し、前記製造条件に留意しながら共重合することにより得ることができる。この際、用いられるメタロセン触媒は、一種類でも、二種類以上の混合物であってもよい。
メタロセン触媒は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の周期律表第4〜6族遷移金属と、シクロペンタジエニル基あるいはシクロペンタジエニル誘導体基との錯体を使用した触媒である。
メタロセン触媒において、シクロペンタジエニル誘導体基としては、ペンタメチルシクロペンタジエニル等のアルキル置換体基、あるいは2以上の置換基が結合して飽和もしくは不飽和の環状置換基を構成した基を使用することができ、代表的にはインデニル基、フルオレニル基、アズレニル基、あるいはこれらの部分水素添加物を挙げることができる。また、複数のシクロペンタジエニル基がアルキレン基、シリレン基、ゲルミレン基等で結合したものも好ましく用いられる。
(1)メチレンビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(2)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(3)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(5)メチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、(6)エチレンビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジクロリド、(7)エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、(11)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ハフニウムジクロリド、(14)メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル)]ハフニウムジクロリド、(15)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ハフニウムジクロリド、(16)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド、(17)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド、(18)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド、(19)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド、(20)ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド、(21)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ハフニウムジクロリド、(22)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ハフニウムジクロリド、(23)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド、(24)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、(25)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド。
また、これらの化合物のクロリドの一方あるいは両方が臭素、ヨウ素、水素、メチルフェニル、ベンジル、アルコキシ、ジメチルアミド、ジエチルアミド、アルキル基等に代わった化合物も例示することができる。
さらに、上記のハフニウムの代わりに、チタン、ジルコニウム等に代わった化合物も、例示することができる。
その中でも溶融張力、透明性、成形性に優れたエチレン−プロピレンランダム共重合体が得られ、シートの肌荒れがおきにくい、ハフニウムを使用した触媒が本発明には好適である。
また、必要に応じて、これら化合物と共に、有機アルミニウム化合物を添加することができる。
アルミニウムオキシ化合物としては、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、プロピルアルモキサン、ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルエチルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン等が例示される。また、トリアルキルアルミニウムとアルキルボロン酸との反応物を使用することもできる。例えば、トリメチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1の反応物、トリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1反応物、トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の1:1:1反応物、トリエチルアルミニウムとブチルボロン酸の2:1反応物などである。
これらの珪酸塩は、化学処理を施したものであることが好ましい。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状珪酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。
具体的には、(イ)酸処理、(ロ)アルカリ処理、(ハ)塩類処理、(ニ)有機物処理等が挙げられる。これらの処理は、表面の不純物を取り除く、層間の陽イオンを交換する、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させ、その結果、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離、固体酸性度等を変えることができる。これらの処理は単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
また、必要に応じてこれら化合物と共にトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等の有機アルミニウム化合物を使用してもよい。
また、本発明に用いられるエチレン−プロピレン共重合体(A)は、プロピレンから誘導される構成単位(以下、「プロピレン単位」という)の好ましい割合は、全構成単位中90〜99.9重量%であり、エチレンから誘導される構成単位(以下、「エチレン単位」という)は、0.1〜10重量%であることが望ましい。
なかでも、ブテン−1は好適であり、エチレン−プロピレン共重合体(A)において、プロピレン単位は、全構成単位中90〜99.9重量%であり、エチレンおよびα−オレフィンから誘導される構成単位(以下、「コモノマー単位」という)は0.1〜10重量%であるエチレン−ブテン−1−プロピレン3元ランダム共重合体が好ましい。
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(X)には、通常ポリオレフィンに使用する公知の他の重合体を0〜50重量%の割合で配合することができる。
他の重合体としては、プロピレン単独あるいはプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の重合体、各種熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤およびチオ系酸化防止剤などが例示でき、中和剤としては、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩類が例示でき、光安定剤および紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン類、ニッケル錯化合物、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類などが例示できる。
本発明には、ポリプロピレン系シートの主層に、プロピレン系重合体(B)が80重量%以上の割合で含まれるプロピレン系樹脂組成物(Y)が用いられている。プロピレン系重合体(B)の配合量が、80重量%未満であると容器成形時のシート温度が低下し、足部の融着強度が低下する恐れがある。
係るプロピレン系重合体(B)は、前記要件(iv)〜(v)に示す特性・性状を有するものである。
要件(iv)メルトフローレート(MFR):
本発明に係るプロピレン系重合体(B)は、前記要件(iv)に示すとおり、温度230℃、2.16Kg荷重で測定するメルトフローレート(MFR)が0.2〜5g/10分であることが好ましく、0.5〜2g/10分がより好ましく、0.5〜1g/10分がさらに好ましい。
MFRが0.2g/10分未満では、溶融流動性が低下する上に、剛性も低下する恐れがある。一方、MFRが5g/10分を超えると、シート成形時のドローダウンが激しくなりシート成形が困難になると共に容器成形時の成形温度が低下し、足部の融着強度が低下する恐れがある。
尚、メルトフローレート(MFR)は、JIS K6921−2の「プラスチック−ポリプロピレン(PP)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び性質の求め方」に準拠して、試験条件:230℃、荷重2.16kgfで測定した値である。
プロピレン系重合体(B)のメルトフローレート(MFR)は、プロピレン系重合体(B)の重合条件である温度や圧力を調節したり、重合時に添加する水素等の連鎖移動剤の添加量を制御することにより、容易に調整を行なうことができる。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)により、測定された融解ピーク温度である融点が160℃以上が好ましく、163℃以上がさらに好ましい。融点が160℃未満の場合は、容器の剛性および耐熱性が低下するとともに、容器成形時の成形温度が低下することで、足部融着がし難くなる恐れがある。
融点を調整するには、重合反応系へ供給するα−オレフィン等の共重合モノマーの量を制御することにより、容易に調整することができる。
なお、融点の具体的測定は、セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度を融点とした(単位:℃)。
本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)の重合用触媒としては、チーグラーナッタ型触媒、メタロセン触媒等が挙げられ、特に限定はされないが、160℃以上の融点の重合体を得るためには、塩化マグネシウム担持チーグラーナッタ触媒が好ましい。
本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)の重合方法としては、スラリー法、バルク法、溶液法、気相法等の汎用プロセスが適用できる。これら重合反応は、単独反応器だけでなく、複数用いることができ、重合方法も、複数組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)としては、プロピレンの単独ホモ重合体、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとα−オレフィンとの共重合ゴム成分を含むブロック共重合体等が挙げられ、一種類でも、二種類以上の混合物としても、用いることができる。
具体的には、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテン−1共重合体、プロピレン−ペンテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−4−メチル−ペンテン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体のような、各種二元、三元共重合体が挙げられる。α−オレフィンの割合は、0.5〜20モル%程度あれば十分である。
本発明に係る触媒は、これにオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付される。予備重合処理を行うことにより、本重合を行った際に、ゲルの生成を防止できる。その理由としては、本重合を行った際の重合体粒子間で長鎖分岐が均一に分布させることができるためと考えられ、また、そのことにより溶融物性を向上することができる。
ポリプロピレン系重合体(B)、またはそれを80重量%以上含むプロピレン系樹脂組成物(Y)の融点は、130〜180℃、と広範囲のものが想定できるが、典型的な市販のポリプロピレンの融点約165℃の上下を範囲とした、130〜170℃のポリプロピレンが適している。これは、主層である基材層を構成するものであるから、内層である被覆層の融点より、少なくとも融点が20℃高いものを選定することが要求される。
また、上記の各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
重合様式は、前記触媒成分を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
さらに、気相重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
重合圧力は、1.0MPa以上、5.0MPa以下である。特に、バルク重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は2.5MPa以下が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以下である。
水素は、プロピレンに対してフィード比で、0〜1mol%の範囲で用いるのがよく、好ましくは0.0001mol%以上であり、さらに好ましくは0.001mol%以上用いるのがよい。
使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
この中では、本発明に係るプロピレン系重合体(X)を溶融物性と触媒活性をバランスよく得るためには、エチレンを5モル%以下で用いるのが好ましい。特に剛性の高い重合体を得るためには、重合体中に含まれるエチレンを1モル%以下になるように、エチレンを用いるのがよく、更に好ましくはプロピレン単独重合である。
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物(Y)には、通常ポリオレフィンに使用する公知の他の重合体を0〜20重量%の割合で配合することができる。
他の重合体としては、プロピレン単独あるいはプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の重合体、各種熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
詳細には、プロピレン系重合体(B)を80重量%以上含むプロピレン系樹脂組成物(Y)の残りの0〜20重量%の部分は、汎用の各種プロピレン(共)重合体、E−P−R、低密度または高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、各種エラストマー等のような樹脂、エラストマー、充填剤、添加剤のような材料が任意に配合できる。これらの配合材料は、プロピレン共重合体(B)の主層である基材層としての役割を果たす特性を備えたものである。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤およびチオ系酸化防止剤などが例示でき、中和剤としては、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩類が例示でき、光安定剤および紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン類、ニッケル錯化合物、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類などが例示できる。
本発明で使用されるポリプロピレン系シートは、少なくともプロピレン系樹脂組成物(X)を用いた最内層とプロピレン系樹脂組成物(Y)を用いた主層とからなる多層シートであり、3層以上の多層構造であってもなんら差し支えない。例えば、主層と最内層との間に、EVOHやPAといったバリア性樹脂層および接着層を配置したバリアシートをも置けても、最外層に高光沢層や低光沢層といった意匠性を持たせた層を配置することも可能である。
このように、本発明のプロピレン系シートは、容器本体部分を構成する主層ともいえる基材層と、容器の内層部分を構成する最内層ともいえる被覆層からなる、少なくとも二層構造からなる積層体である。しかし、この二層の中間層として、または、基材層の外表面層として、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH),ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン(PVDC),無水マレイン酸変性PP、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、非結晶ポリエチレンテレフタレート、低発泡ポリスチレンなどからなる各種材料を積層した、ガスバリヤー性を考慮した、いわゆる3層構造、4層構造の積層体とすることもできる。
また、本発明で使用されるポリプロピレン系シートの最内層の厚みは、20〜200μmであることが好ましく、40〜150μmがより好ましく、50〜130μmがさらに好ましい。最内層の厚みが20μm未満であると容器成形時に最内面層の切れが発生し、200μ以上であると、容器の剛性低下を招く恐れがある。
さらに、本発明で使用されるポリプロピレン系シートの最内層と主層の厚み比(最内層/主層)は、0.2以下であることが好ましく、0.15以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましい。最内層と主層の厚み比が0.2を超えると、容器の剛性が低下する恐れがある。
ポリプロピレン系シートの具体的製造法としては、プロピレン系樹脂組成物(X)および(Y)を、公知の単軸又は二軸のスクリュー押出機に通して、コートハンダーダイからシート状に押出した後、(内部で冷却水や油が循環している)金属ロール表面に、エアーナイフ、エアーチャンバー、硬質ゴムロール、スチールベルト、金属ロールにて押さえつけ冷却固化されることによって得ることができる。又、シート両面をスチールベルトで挟んで冷却固化することもできる。
このようなシートの冷却方法の中では、シート両面に金属ロール及び/又はスチールベルトを使用する方法が表面凹凸の少ないシート表面、つまり透明性に優れたシートを得られることから最も好ましい方法である。
本発明の多層熱成形容器は、ポリプロピレン系シートを用い、固相圧空成形により得られる、内容物を収容する本体と本体底面部の外方に突き出した足部を有する多層熱成形容器であり、ポリプロピレン系シートの最内層同士が、折りたたまれ、引張試験機により測定される剥離強度において、70N以上に熱融着されており、本体は、深さ/口径の比が1以上の深絞り構造を有するものである。
本発明の容器の形状の概要を、図1に基づいて説明をすれば、容器の口の大きさともいえる内径に相当する寸法を口径(D)と表し、容器の口外周の水平面から容器の底までの寸法を深さ(H)とすれば、H/D>1以上ということであって、容器の口の大きさに比して、若干深めの容器の成形において、本発明のポリプロピレン系シート、固相圧空成形、およびプラグアシスト成形の組み合わせが優れた機能を発現して、足部(F)ともいえる脚部を構成するポリプロピレン系シートの折り曲げにより形成される重なり部分に剥離の無い完全な容器が成形される。
この構造を、図6に示す足部拡大図に基づいて説明をすれば、容器の足部(F)である脚部を示す図6(a)図は、ポリプロピレン系シート(L)を構成する最内層(L2)が、図示8を起点にして折り曲げられ、最内層面が、図示7の部分で、隙間無く完全に融着により接合した本発明の容器の状態を示すものである。一方、図6(b)に示すように、シートが完全に接合しなく、剥離状態のクラックである隙間7’を有する、図示9のような不完全な底部に隙間を有する容器が形成される例である。
本発明では、このような固相圧空成形は、ポリプロピレン系シート(L)を構成する内層(L2)を構成する主相のプロピレン系重合体(B)またはプロピレン系樹脂組成物(Y)の融点より低い温度でプラグアシスト成形をする。
次に、図5に示すように、脚部の内径の寸法を有する底部金型(B)を図示の2方向に押し上げて、ポリプロピレン系シート(L)の最内層(L2)同士が密着するように重ね図示の7のように折りたたむことにより、最内層(L2)同士を全周に渡って融着させ、容器足部を形成させる。この際、押し上げる底部金型とキャビ金型の隙間8を調整することで、折りたたみ部を完全に融着することができる。図示の隙間が大きすぎると折りたたみ部に隙間ができるし、隙間が小さいと、折り畳みがうまくいかないので、隙間の調整が温度制御同様に重要である。足部(F)である脚部の高さは、ポリプロピレン系シート(L)の折りたたみの大きさにより決まる。
本発明の多層熱成形容器は、図6に示すとおり、特に図6(a)には、ポリプロピレン系シートが折り返された、足部(F)に相当する脚部に7に示すような剥離の部分が無い内層(L2)が、理想的に全面が融着により接合されている状態の足部(F)に相当する脚部が形成されている。一方、図6(b)は、ポリプロピレン系シートが折り返されるが、不完全な融着により内層間に7’のような剥離の部分が有る足部(F)に相当する脚部が形成されている状態の容器である。
本発明の多層熱成形容器は、意匠性および内容物が高温の場合の使用に優れたものであるため、食品容器、洗剤容器、医療用容器等の各種分野の容器に用いることができ、特に、飲料食品分野などにおいて、広く用いることができる。
(1)メルトフローレート(MFR)[単位:g/10分]:
エチレン−プロピレン共重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)は、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を使用し、シート状にしたエチレン−プロピレン共重合体(A)もしくはプロピレン系重合体(B)を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して、結晶化させた時の結晶最大ピーク温度(℃)として結晶化温度(Tc)を求め、その後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度(℃)として融点(Tm)を求めた。
(3)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、上記本明細書記載の方法で、測定した。
40℃可溶分は、下記の装置を用い、上記本明細書記載した通りである。
(i)TREF部
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(ii)試料注入部
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(iv)ポンプ部
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
(v)測定条件
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速 :1mL/分
実施各例によって得られたポリプロピレン系シートを用いて30分間連続して容器成形を行い、プラグへの融着物が発生するかを確認した。
○:付着なし
△:若干発生するが、成形は可能
×:付着発生し、成形不能
実施各例によって得られたポリプロピレン系シートを用いて多層熱成形容器を成形する際に、最内面層での切れ(周方向の割れ)の発生を目視で確認した。
○:切れなし
△:時々、切れ発生
×:ほぼ全てで、切れ発生
得られた多層熱成形容器の足部を融着方向と垂直に幅1cmの短冊状に切り出し、引張試験機で剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
(1)プロピレン系重合体
WFX4:エチレン−プロピレン共重合体(A)
日本ポリプロ社製のプロピレン・エチレンランダム共重合体(メタロセン触媒使用、MFR=7g/10min、Q値=2.8、TREFによる40℃以下可溶分=1.8重量%)
WFX6:エチレン−プロピレン共重合体(A)
日本ポリプロ社製のプロピレン・エチレンランダム共重合体(メタロセン触媒使用、MFR=2g/10min、Q値=2.8、TREFによる40℃以下可溶分=1.6重量%)
WSX02:
日本ポリプロ社製のプロピレン・エチレンランダム共重合体(メタロセン触媒使用、MFR=25g/10min、Q値=2.6、TREFによる40℃以下可溶分=1.7重量%)
FX4G:
日本ポリプロ社製のプロピレン・エチレンランダム共重合体(チグラー触媒使用、MFR=5g/10min、Q値=4.5、TREFによる40℃以下可溶分=17.1重量%)
FW4B:
日本ポリプロ社製のプロピレン・エチレンランダム共重合体(チグラー触媒使用、MFR=7g/10min、Q値=4.5、TREFによる40℃以下可溶分=5.4重量%)
PP−1(下記製造例1に得られたプロピレン系樹脂):
(メタロセン触媒使用、MFR=2g/10min、Q値=4.0、TREFによる40℃以下可溶分=2.2重量%)
(i)メタロセン化合物の合成
(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11−240909号公報に記載の方法に準じて行った。
10リットルの攪拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、ろ過した。この洗浄操作を、洗浄液(ろ液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は、705gの化学処理珪酸塩を得た。
先に化学処理した珪酸塩を、キルン乾燥機によりさらに乾燥した。乾燥機の仕様、条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状、内径50mm、加湿帯550mm(電気炉)、かき上げ翼付き回転数:2rpm、傾斜角;20/520、珪酸塩の供給速度;2.5g/分、ガス流速;窒素、96リットル/時間、向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
内容積13リットルの攪拌機の付いた金属製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩0.20kgと日石三菱社製ヘプタン(以下、ヘプタンという。)0.74リットルの混合物を導入し、さらにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.04M)1.26リットルを加え、系内温度を25℃に維持した。1時間の反応後、ヘプタンにて十分に洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調製した。
(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム2.44g(3.30mmol)にヘプタンを0.80リットル加え、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ミリリットル加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、ヘプタンを追加して5.0リットルに調整した。
続いて、温度40℃にて、プロピレンを100g/時間の速度で供給し、4時間予備重合を行った。さらに1時間、後重合した。
予備重合終了後、残モノマーをパージした後、触媒をヘプタンにて十分に洗浄した。続いて、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.17L添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により、乾燥した予備重合触媒0.60kgを得た。
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘキサン溶液を500ml(0.12mol)、水素を2.3NLを加え、エチレンを1.94kg加え、これに十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。40℃に昇温し、製造例1で調製した予備重合触媒2.2gをアルゴンで圧入した。40分間かけて62℃まで昇温し、本条件で2時間重合を行った。その後エタノール100mlを圧入して反応を停止し、残ガスをパージし、生成物を乾燥し、プロピレン・エチレンランダム共重合体(PP1パウダー)を得た。
(v)プロピレン系樹脂
得られたプロピレン単独重合体(PP1パウダー)100重量部に対し、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガノックス1010)を0.05重量部、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガフォス168)を0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーにて750rpm、1分間混合後、50mmφ単軸押出機を用い、押出温度230℃にてペレット化し、プロピレン系樹脂(PP−1)を得た。
EA9FT: プロピレン系重合体(B)
日本ポリプロ社製のプロピレン重合体(MFR=0.5g/10min、融点165℃)
EA6A:プロピレン系重合体(B)
日本ポリプロ社製のプロピレン重合体(MFR=1.9g/10min、融点165℃)
FY6:
日本ポリプロ社製のプロピレン重合体(MFR=2.5g/10min、融点162℃)
WEG7T:
日本ポリプロ社製のプロピレン・エチレンランダム共重合体(MFR=1.5g/10min、融点152℃)
MA3:
日本ポリプロ社製のプロピレン重合体(MFR=1.9g/10min、融点165℃)
FX4G:
日本ポリプロ社製のプロピレン・エチレンランダム共重合体(MFR=5g/10min、融点128℃)
スクリュウ口径50mmの押出機に前記EA9FTペレットを投入し、スクリュウ口径40mmの押出機に前記WFX4ペレットを投入し、樹脂温度230℃にて加熱溶融可塑化してT型ダイスより押出して得たポリプロピレン系シートを、表面温度が60℃に制御された鏡面仕上げの金属製キャストロ−ルにて挟み冷却固化させながら1m/minの速度で連続的に引き取り、幅500mm、WFX4の層厚み0.1mm、全体厚み1.6mmの2種2層シートを得た。
次いで、このシートを、WFX4層が内面となるように熱成形用キャビ型ユニットとプラグユニットとの間にセットし、過熱温度155℃でシートを軟化させた後、底部金型とキャビ金型の隙間を0.7mmに調整した金型を用い、固相圧空成形機RDM50K(イーリッヒ社製)で、口径75mmφ、深さが80mm、足の高さ5mmの足付き多層熱成形容器を成形した。
この多層熱成形容器について、前述の各種評価を行った。その結果を表1に示す。
WFX4の代わりに、WFX6を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[実施例3]
WFX4の代わりに、WFW4を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[実施例4]
WFX4の代わりに、WFX4を60重量%とEA6Aを40重量%とブレンドした重合体混合物を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
EA9FTの代わりに、EA6Aを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[実施例6]
EA9FTの代わりに、FY6を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
EA9FTの代わりに、WEG7Tを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[実施例8]
EA9FTの代わりに、EA9FTを80重量%とWEG7Tを20重量%とブレンドした重合体混合物を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[実施例9]
EA9FTの代わりに、EA9FTを60重量%とWEG7Tを40重量%とブレンドした重合体混合物を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
WFX4層の厚みを0.02mmにした以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[実施例11]
WFX4層の厚みを0.2mmにした以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[実施例12]
WFX4層の厚みを0.4mmにした以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
WFX4の代わりに、WSX02を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[比較例2]
WFX4の代わりに、PP−1を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[比較例3]
WFX4の代わりに、WFX4を40重量%とEA6Aを60重量%とブレンドした重合体混合物を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[比較例4]
WFX4の代わりに、FX4Gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。プラグ付着が激しく、成形不能であった。その評価結果を表1に示す。
WFX4の代わりに、FW4Bを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。プラグ付着が激しく、成形不能であった。その評価結果を表1に示す。
[比較例6]
EA9FTの代わりに、MA3を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。シート成形時のドローダウンが激しく、シート成形不能であった。その評価結果を表1に示す。
[比較例7]
EA9FTの代わりに、FX4Gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
EA9FTの代わりに、EA9FTを30重量%とWEG7Tを70重量%とブレンドした重合体混合物を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
[比較例9]
底部金型とキャビ型の隙間を1.0mmに調整した金型を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。その評価結果を表1に示す。
H;深さ
F;足部
P;アシストプラグ
U;上型ユニット
M;キャビ型
B;底部金型
L;ポリプロピレン系シート
L1;主層
L2;内層
1;アシストプラグ(P)の移動方向
2;底部金型の移動方向
3;ポリプロピレン系シートの供給方向
4;上型(U)の移動方向
5;キャビ型(M)と上型(U)の密封部分
6;高圧エアー吹き込み部
6’;キャビ型内面に沿って賦形された状態の部分
7;折りたたみ部
7’;剥離により隙間が形成されている部分
8;底部金型と雌金型の隙間
9;隙間
Claims (6)
- ポリプロピレン系シートを用い、固相圧空成形により得られる、内容物を収容する本体と本体底面部の外方に突き出した足部を有する多層熱成形容器において、多層熱成形容器の最内層には、下記の要件(i)〜(iii)を満たすエチレン−プロピレン共重合体(A)が50〜100重量%の割合で含まれるプロピレン系樹脂組成物(X)が用いられ、また、多層熱成形容器の足部は、ポリプロピレン系シートの最内層同士が折りたたまれ、引張試験機により測定される剥離強度において、70N以上に熱融着されており、本体は、深さ/口径の比が1以上の深絞り構造を有することを特徴とする多層熱成形容器。
要件(i):メルトフローレート(MFR)(温度230℃、荷重2.16kg)が1〜20g/10分である。
要件(ii):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Q値)が1.5〜3.5である。
要件(iii):オルトジクロロベンゼン(ODCB)による昇温溶出分別(TREF)において、40℃以下の温度で溶出する成分が3.0重量%以下である。 - 前記エチレン−プロピレン共重合体(A)は、メタロセン触媒を用いて重合されているものであることを特徴とする請求項1に記載の多層熱成形容器。
- 多層熱成形容器が少なくとも最内層と主層とより成り、主層には、下記の要件(iv〜v)を満たすプロピレン系重合体(B)が80重量%以上の割合で含まれるプロピレン系樹脂組成物(Y)が用いられていることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の多層熱成形容器。
要件(iv):メルトフローレート(MFR)(温度230℃、荷重2.16kg)が0.2〜5g/10分である。
要件(v):示差走査熱量計(DSC)で測定された融解ピーク温度(融点)が160℃以上である。 - エチレン−プロピレン共重合体(A)とプロピレン系重合体(B)との融点差が20℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層熱成形容器。
- ポリプロピレン系シートの最内層の厚みが20〜200μmであり、最内層と主層の厚み比(最内層/主層)が、0.2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層熱成形容器。
- プロピレン系重合体を主体とする主層と、エチレン−プロピレン共重合体を主体とする内層から構成され、その層の融点較差が20〜60℃である積層構造のポリプロピレン系シートを、主層がキャビ型側となるように、熱成形用キャビ型ユニットとプラグユニットとの間に介在させ、主層の融点以下であり、且つ融点較差20〜60℃の範囲になるような温度で加熱をすることにより軟化させ、次に、アシストプラグを押し下げることにより、該ポリプロピレン系シートを容器状に固相圧空成形により容器状に予備賦形をして、引き続き、該予備賦形部分に対し、空気圧を付加して該ポリプロピレン系シートをキャビ型に密着させてから、底部金型を押し上げて該ポリプロピレン系シートの最内層同士が密着するような状態に折りたたみ、最内層同士を全周に渡って、引張試験機により測定される剥離強度において70N以上に熱融着させることにより容器脚部を形成させることを特徴とする請求項1に記載の脚部付多層熱成形容器の固相圧空プラグアシスト成形方法。
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