JP2011077919A - 超音波トランスデューサ - Google Patents

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Abstract

【課題】圧電素子の振動板部への接合に接着剤等を用いず、従来よりも小型化、低製造コスト化でき、周波数調整の自由度を広げることが可能な空中用途の超音波トランスデューサ、およびその製造方法の提供を図る。
【解決手段】超音波トランスデューサ1は硬化樹脂4、圧電素子3、素子ベース2、を備える。素子ベース2は、圧電素子3の主面法線方向に沿う孔軸を有する。硬化樹脂4および圧電素子3は、主面法線方向に沿って振動する振動板部を構成する。圧電素子3は、素子ベース2における主面法線方向の端部から離間する位置で、素子ベース2の筒内を閉塞し、主面内での広がり振動モードで駆動される。硬化樹脂3は、素子ベース2における圧電素子3よりも主面法線方向の筒内に注入硬化される。
【選択図】図2

Description

この発明は、圧電体を駆動することで超音波の送信または受信を行う超音波トランスデューサに関する。
空中用途の超音波トランスデューサとして、有底筒状のケース底面に圧電素子を接合して振動板部を構成し、圧電素子を広がり振動モードで駆動することでケース底面をベンディング振動させ超音波を発振するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような超音波トランスデューサは、圧電素子をケース底面に接着剤で貼り付けて製造される。この場合、接着剤の量や接着位置にばらつきが生じると、超音波の送受精度もばらつく問題があった。接着剤のばらつきを抑えるためには、専用の加圧治具を用いて加圧条件を精緻に設定した上で接着工程を実施する必要があった。この際、接着剤に異物が挟まると圧電素子が割れたりするため部品の異物、平面度などの管理が必要であった。
また、空中用途の超音波トランスデューサとして、圧電素子と、圧電素子を収納するための凹部を設けた筒状のベースと、ベースの外側から圧電素子の外面及びベースの外面を覆うように形成された樹脂からなる外装材とを備えた超音波センサが知られている。この超音波トランスデューサは、圧電素子を広がり振動モードで駆動することで外装材をベンディング振動させ超音波を発振する。(例えば、特許文献2参照。)。
図1(A)は従来の超音波トランスデューサにおける外装材成形工程を説明する横断面図、図1(B)は平面断面図である。外装材成形工程では、圧電素子103−ベース104−ウェイト102−吸音材105を組み合わせた状態の超音波トランスデューサ101が金型111に入れられる。そして、金型111内の隙間に樹脂が注入硬化され外装材106を形成し、圧電素子103およびベース104の外側が外装材106でモールドされる。その後、金型111から抜き出して、超音波トランスデューサ101が製造される。
実開平09−284896号公報 WO2007/102460号公報
圧電素子103を外装材106で被覆する構成の超音波トランスデューサでは、接着剤を用いずに、外装材106となる樹脂で圧電素子103と外装材106とを接合できるので、接着剤による送受精度のばらつきの問題を回避できる。しかしながら、金型111を用いて外装材106の成型を行うため、新たな問題が生じてしまう。
例えば、外装材106を作成するためには、金型111が別途必要となり、工程が煩雑になる。また、外装材106は金型111との間に樹脂を充填して形成されることになるが、ベース104と金型111との隙間が狭すぎると樹脂が流動しにくくなるので、外装材106の厚みを薄くすることに限界があり、超音波トランスデューサとしての小型化に限界がある。
また、超音波トランスデューサでは、圧電素子103と外装材106とを所望の共振周波数でベンディング振動させることが効果的であるが、周波数調整を行うために、樹脂を硬化した後に外装材106を切削することがある。外装材106を切削して周波数調整を行う場合、周波数が下がる方向へしか調整できず、周波数を上げる調整を行うことができない。また、切削時間や、切削くずの除去に著しく時間を要する。
以上の問題に鑑みて本願は、圧電素子の振動板部への接合に接着剤等を用いず、従来よりも小型化、低製造コスト化でき、周波数調整の自由度を広げることが可能な空中用途の超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
この発明の超音波トランスデューサは振動板部と筒状支持部とを備える。振動板部は、主面法線方向に沿って振動する。筒状支持部は、振動板部の主面法線方向に沿う孔軸を有する。振動板部は圧電素子と硬化樹脂とを備え、圧電素子は、筒状支持部における主面法線方向の端部から離れた位置で筒状支持部の筒内を閉塞し、広がり振動モードで駆動される。硬化樹脂は、筒状支持部における圧電素子よりも主面法線方向の筒内に注入硬化される。
この構成では、圧電素子とともに硬化樹脂が振動板部を構成し、圧電素子が広がり振動することで振動板部全体がベンディング振動する。硬化樹脂は、筒状支持部を樹脂成型の型として成形され、金型が不要である。したがって製造コストを低減でき、従来よりも小型の超音波トランスデューサが得られる。また、樹脂成型時に注入する樹脂量を制御することにより、超音波の周波数を低下させる調整と周波数を高める調整とが実現でき、周波数調整の自由度を高めることができる。
この発明の筒状支持部は樹脂支持部材と空間形成部材とを備えると好適である。樹脂支持部材は硬化樹脂が注入硬化される。空間形成部材は振動板部の振動空間を形成する。この構成では、樹脂支持部材と空間形成部材とを別体に備えるので、それぞれの成形が容易であり、製造コストを低減できる。
この発明の空間形成部材を、硬化樹脂および樹脂支持部材よりも比重が重い材質とすると好適である。この構成では、樹脂支持部材の周縁を、それよりも比重が重い空間形成部材で保持することになるため、不要な振動が空間形成部材に伝わりにくく残響を抑制することができる。
この発明の筒状支持部は圧電素子との接続位置の近傍に薄肉部を備えると好適である。筒状支持部が圧電素子を強固に固定していると振動部の振幅が低減する恐れがあるが、薄肉部を設けることにより、振動板部の振幅を増大させられる。
この発明によれば、振動板部全体がベンディング振動する超音波トランスデューサにおいて、接着剤や金型を用いずに、筒状支持部を樹脂成型の型として硬化樹脂を成形できる。したがって、圧電素子の振動板部への接合に接着剤等を用いないため、接着剤の塗布ばらつきによって生じていた送受信精度のばらつきが抑制できる。また、金型を用いないため、製造工程が容易となり、小型の超音波トランスデューサの作成も容易となる。
さらには、筒状支持部内に充填する樹脂量によって超音波の周波数を制御でき、周波数を下げる調整だけでなく、周波数を上げる調整を行うことが可能になり、周波数調整の自由度を高めることが可能となる。
従来例の超音波トランスデューサの製造過程を説明する図である。 本発明の第1の実施形態に係る超音波トランスデューサの構成例を説明する図である。 図2の超音波トランスデューサの製造工程を例示する図である。 超音波の周波数調整例を説明する図である。 本発明の他の実施形態に係る超音波トランスデューサの構成例を説明する図である。
以下、本願発明の実施形態に係る超音波トランスデューサについて説明する。
図2(A)は、本実施形態に係る超音波トランスデューサ1の概略の断面図であり、図2(B)は超音波トランスデューサ1の概略の平面図である。
超音波トランスデューサ1は、自動車のバックソナー、コーナーソナー、パーキングスポット等に利用され、物標に超音波を送信する送波器、または物標からの反射波を検出する受波器として、測距装置などに利用される。
この超音波トランスデューサ1は、素子ベース2、圧電素子3、硬化樹脂4、ウェイト5、実装ベース6、吸音材7、駆動端子8A,8B、および実装端子9A,9Bを備える。樹脂支持部としての素子ベース2は有底円筒状の底部に部分的に開口を設けた形状である。圧電素子3は主面法線方向を分極方向とする円板状であり、素子ベース2の筒内の底部開口を塞ぐ位置に設けられる。硬化樹脂4は、素子ベース2の筒内に充填される。圧電素子3および硬化樹脂4は振動板部として機能し、圧電素子3を広がり振動モードで駆動することで、主面法線方向にベンディング振動する。空間形成部材としてのウェイト5は有底円筒状であって圧電素子3の主面法線方向と逆方向側に、振動板部の振動空間を確保して素子ベース2を支持する。このウェイト5は、素子ベース2および硬化樹脂4よりも比重の重い金属等の材質からなり、不要な振動が空間形成部材を伝わりにくくして残響を抑制することができる。実装ベース6は易加工性材からなる円柱状であり、ウェイト5を支持する。素子ベース2、ウェイト5、および実装ベース6は全体として有底筒状であり、本発明の筒状支持部を構成する。吸音材7は、振動空間内に配置され、振動空間内での残響を抑制する。駆動端子8Aは、圧電素子3の上面に設けられる外部電極(図示せず)にハンダ接続される。駆動端子8Bは、圧電素子3の下面に設けられる外部電極(図示せず)にハンダ接続される。実装端子9Aは、実装ベース6の底面と面一になるように実装ベース6の側面から突出し、駆動端子8Aに接続される。実装端子9Bは、実装ベース6の底面と面一になるように実装ベース6の側面から突出し、駆動端子8Bに接続される。
この超音波トランスデューサ1は、送波器として利用する際には、実装端子9A,9Bがセット基板の駆動電極に接続されて駆動信号が印加される。これにより、圧電素子3の分極方向(主軸方向)に電界が印加され、圧電素子3が径方向に拡縮する広がり振動が生じる。すると、圧電素子3および硬化樹脂4が構成する振動板部がベンディング振動し、超音波が送波される。受波器として利用する際には、圧電素子3が超音波を受波して振動することで、駆動端子8A,8B間に受波信号が生じる。
この構成では、圧電素子3および駆動端子8A,8Bは、素子ベース2や硬化樹脂4によって覆われる防滴構造であり、水滴や湿気などに対する耐環境性が高い。また、圧電素子の主面法線方向に対して垂直な方向での寸法が、主にウェイト5の壁厚により定まり、商品に応じて、この寸法を変更することが可能である。
次に、超音波トランスデューサ1の製造工程について説明する。
図3は、超音波トランスデューサ1の製造過程での状態を説明する図である。
図3(A)は、実装端子装備工程での状態図である。この工程では、実装ベース6を用意し、実装ベース6内にインサートモールド成型により実装端子9A,9Bを装備させる。この工程に続いてウェイト装備工程を実施する。
図3(B)はウェイト装備工程での状態図である。この工程では、棒状配線を挿入する孔を設けたウェイト5を用意し、ウェイト5の孔内に棒状配線を挿入させながら、主面法線方向から実装ベース6にウェイト5をマウントする。この工程に続いて吸音材装備工程を実施する。
図3(C)は吸音材装備工程での状態図である。この工程では、吸音材7を用意し、ウェイト5の振動空間内となる位置に接着剤等で接着する。この工程に続いて素子ベース装備工程を実施する。
図3(D)は素子ベース装備工程での状態図である。この工程では、素子ベース2を用意し、主面法線方向から素子ベース2をウェイト5にマウントする。なお図2(B)に示すように素子ベース2の内形は2箇所に内溝を設けた略円筒状であり、内溝内に棒状配線を挿入させながらウェイト5にマウントする。この工程に続いて圧電素子装備工程を実施する。
図3(E)は圧電素子装備工程での状態図である。この工程では、まず、圧電素子3の両面それぞれに駆動端子8A,8Bをハンダ接続して、図中右手に平面視形状を示す構造体を構成する。そして、この構造体を、駆動端子8A,8Bに設けた孔内に棒状配線が進入するように、素子ベース2にマウントする。そして、駆動端子8A,8Bを、それぞれ棒状配線にハンダ接続する。この工程に続いて樹脂充填硬化工程を実施する。
図3(F)は樹脂充填硬化工程での状態図である。この工程では、素子ベース2および圧電素子3からなる皿状の空間内に液状樹脂を滴下し、素子ベース2の縁まで充填する。つぎに、加熱装置を用いて液状樹脂を加熱硬化して硬化樹脂4を作製する。
樹脂充填硬化工程ではポッティング設備を利用することができ、金型と充填設備とを利用するよりも製造コストを削減できる。また、注入する樹脂量を制御することにより、超音波の周波数を低下させる調整と周波数を高める調整とが実現できる。
次に、超音波の周波数調整例を説明する。
図4(A)は超音波トランスデューサ11の部分斜視図であり、図4(B)は断面図であり、図4(C)は解析結果を示すグラフである。なお、ここでは、上記実施形態とは異なる構成の超音波トランスデューサ11で解析を行う。なお、図2に示す超音波トランスデューサ1と同等な構成に同じ符号を付し、説明を省く。
本解析では、硬化樹脂4および圧電素子3からなる振動板部の主面法線方向の厚み(樹脂厚T)を変化させた場合の、超音波の周波数を検出した。樹脂厚Tを0.20mm,0.25mm,0.30mm,0.35mm,0.40mmとした場合、超音波の周波数はそれぞれ、約27kHz,30kHz,33kHz,37kHz,41kHzと変化した。このことから、樹脂厚Tの制御により、超音波数の周波数を任意に設定可能といえる。したがって、樹脂充填硬化工程で充填する樹脂量を増やして樹脂厚Tを増大させることで周波数を上げる調整を行うことが可能になり、樹脂量を減らして樹脂厚Tを減少させることで周波数を下げる調整を行うことが可能になる。例えば、樹脂充填硬化工程において想定していた樹脂量よりも少なめに充填しておき、周波数測定をおこなった後、不足分の樹脂を追加充填することによって周波数調整を行うことができる。
次に本発明の他の実施形態について説明する。
図5(A)は、超音波トランスデューサ21の断面図である。超音波トランスデューサ21は、上述の実施形態の超音波トランスデューサ1における実装ベース6を省いて、ウェイト25に一体化した構成である。
この構成では、比重の大きい金属等の材質からなるウェイト25に対して実装端子9A,9Bを付設するため、ウェイト25に追加加工が必要であるが、部品点数を削減することができる。
図5(B)は、超音波トランスデューサ31の断面図である。超音波トランスデューサ31は、上述の実施形態の超音波トランスデューサ21におけるウェイト25を省いて、素子ベース32に一体化した構成である。
この構成では、素子ベース32を比重の大きい金属等の材質で構成することでウェイトによる超音波を反射する機能を実現できる。ただし、その場合には、素子ベース32に対して実装端子9A,9Bを付設するための追加加工に加えて、振動板部の振動空間を構成するための追加加工をする必要があるが、部品点数を削減することができる。
図5(C)は、超音波トランスデューサ41の断面図である。超音波トランスデューサ41は、上述の実施形態の超音波トランスデューサ31における素子ベース32に替えて、圧電素子3との接続位置に近接して薄肉部40を形成した、素子ベース42を備える。薄肉部40は素子ベース42の外周を周回して設ける。
この構成では、金属製の素子ベース42によって圧電素子3が強固に固定されていても、薄肉部40によってその拘束を弱めて、圧電素子3および硬化樹脂4のベンディング振動の振幅を増大させることができる。
図5(D)は、測距装置51の構成例を説明する平面図である。この測距装置51は前述の超音波トランスデューサ1と略同一の形状の超音波トランスデューサ52,53を、送波器および受波器として利用するものであり、超音波トランスデューサ52,53を共通のウェイト55(および共通の実装ベース)を用いて一体化して構成したものである。
1,11,21…超音波トランスデューサ
2…素子ベース
3…圧電素子
4…硬化樹脂
5…ウェイト
6…実装ベース
7…吸音材
8A,8B…駆動端子
9A,9B…実装端子

Claims (4)

  1. 主面法線方向に沿って振動する振動板部と、前記主面法線方向に沿う孔軸を有する筒状支持部と、を備える超音波トランスデューサであって、
    前記振動板部は、
    前記筒状支持部における前記主面法線方向の端部から離れた位置で前記筒状支持部の筒内を閉塞し、広がり振動モードで駆動される圧電素子と、
    前記筒状支持部における前記圧電素子よりも前記主面法線方向の筒内に注入硬化された硬化樹脂と、
    を備える、超音波トランスデューサ。
  2. 前記筒状支持部は、前記硬化樹脂が注入硬化される樹脂支持部材と、前記振動板部の振動空間を形成する空間形成部材と、を備える、請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
  3. 前記空間形成部材を、前記硬化樹脂および前記樹脂支持部材よりも比重が重い材質とした、請求項2に記載の超音波トランスデューサ。
  4. 前記筒状支持部は、前記圧電素子との接続位置の近傍に薄肉部を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
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