JP2011075251A - 弾頭部 - Google Patents

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Abstract

【課題】ミサイルに装着される弾頭や、弾薬の弾体等の弾頭部において、破壊効率の飛躍的な向上を図る弾頭部の構造を提供する。
【解決手段】弾頭部10は、内部に空間S1が形成された外殻11と、該外殻11の内部に充填された炸薬14と、該炸薬14を起爆する信管部15とを備えている。外殻11の少なくとも一部は、所定温度を超えると化学反応を生じて発熱する複数種のエネルギ物質を含むエネルギ材料によって形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ミサイルに装着される弾頭や弾薬の弾体等の弾頭部に関し、特に、破壊確率の向上策に係るものである。
一般に、ミサイルの弾頭や弾薬の榴弾は、筺状の弾殻と、弾殻内部に充填された炸薬等の爆薬と、該爆薬を起爆する起爆装置(信管)とを有する部分(弾頭部)を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。そして、起爆装置によって爆薬を起爆すると、爆風が生じると共に、弾殻が爆薬の爆轟によって発生した衝撃圧によって破裂して破片化して飛散する。この爆風と飛散した弾殻の破片によって目標物が破壊される(爆風効果及び破片効果)。
特開2007−225215号公報
ところで、上述のような爆風効果及び破片効果によって目標物を破壊する弾頭部による破壊確率は、弾頭部の弾殻の破片のエネルギ(運動エネルギ)と散布密度とに依存する。しかしながら、弾頭部の質量と寸法とは弾頭部が設けられるミサイルや榴弾によって制限されるため容易に変更できず、弾頭部の質量と寸法とを一定とした条件では、破片の運動エネルギと散布密度とが相反する関係にあるため、目標物の破壊確率を飛躍的に向上させることができなかった。つまり、爆薬量を増して破片の個々の運動エネルギを増大させても、全破片質量が少なくなって破片の散布密度が低下するため、破壊確率を向上させることができなかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、弾頭部の破壊効率の飛躍的な向上を図ることにある。
第1の発明は、内部に空間(S1,S2,S3,S4)が形成された外殻(11,21,31,41)と、該外殻(11,21,31,41)の内部に充填された爆薬(14,24,34,44)と、該爆薬(14,24,34,44)を起爆する起爆手段(15,25,35,45)とを備えた弾頭部であって、上記外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部は、所定温度を超えると化学反応を生じて発熱する複数種のエネルギ物質を含むエネルギ材料によって形成されている。
第2の発明は、内部に空間(S1,S2,S3,S4)が形成された外殻(11,21,31,41)と、該外殻(11,21,31,41)の内部に充填された爆薬(14,24,34,44)と、該爆薬(14,24,34,44)を起爆する起爆手段(15,25,35,45)とを備えた弾頭部であって、上記外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部は、所定温度を超えると空気中の酸素又は窒素と化学反応を生じて発熱する所定のエネルギ物質を含むエネルギ材料によって形成されている。
第3の発明は、内部に空間(S1,S2,S3,S4)が形成された外殻(11,21,31,41)と、該外殻(11,21,31,41)の内部に充填された爆薬(14,24,34,44)と、該爆薬(14,24,34,44)を起爆する起爆手段(15,25,35,45)とを備えた弾頭部であって、上記外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部は、所定のエネルギ物質と、所定温度を超えると該エネルギ物質と化学反応を生じて発熱する所定の反応物とを含むエネルギ材料によって形成されている。
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記外殻(11,21)は、上記爆薬(14,24)が充填された筺状の弾殻(12,22)と、上記弾殻(12,22)の外表面に取り付けられた複数の破片(13,23)とを有し、上記破片(13,23)は、上記エネルギ材料によって形成されている。
第5の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記外殻(11,41)は、上記爆薬(14,44)が充填されて上記エネルギ材料によって形成された筺状の弾殻(12,42)を有し、上記弾殻(12,42)には、上記爆薬(14,24)の爆轟に伴って所定形状の複数の破片(12b,42b)が形成されるように該破片(12b,42b)の外形を形作る溝(12a,42a)が形成されている。
第6の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記外殻(31)は、有底筒形状の弾殻(32)と、該弾殻(32)の開口側を閉塞するように設けられて上記内部空間(S3)を形成する一方、該内部空間(S3)に充填された上記爆薬(34)の爆轟によって加速されて飛翔体に成形されるライナ(36)とを備え、上記ライナ(36)は、上記エネルギ材料によって形成されている。
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、上記外殻(11,21,31,41)の上記エネルギ材料によって形成された部分は、該エネルギ材料の粉体を冷間等方圧加圧することによって形成されている。
第8の発明は、第1乃至7のいずれか1つの発明において、上記外殻(11,21,31,41)の上記エネルギ材料によって形成された部分は、被膜によって覆われている。
第1乃至第3の発明では、外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部が、所定温度を越えると発熱反応を生じるエネルギ物質を含むエネルギ材料によって形成されている。具体的には、第1の発明では、外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部が、所定温度を超えると発熱反応を生じる複数種のエネルギ物質を含むエネルギ材料によって形成されている。また、第2の発明では、外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部が、所定温度を超えると空気中の酸素又は窒素と発熱反応を生じる所定のエネルギ物質を含むエネルギ材料によって形成されている。さらに、第3の発明では、外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部が、所定のエネルギ物質と、所定温度を超えると該エネルギ物質と発熱反応を生じる所定の反応物とを含むエネルギ材料によって形成されている。
このようにエネルギ材料によって形成された外殻(11,21,31,41)は、爆薬(14,24,34,44)の爆轟によって発生した衝撃圧によって破裂し、破片化すると共に、爆轟時の変形による歪エネルギ又は弾着時の衝撃による運動エネルギから転換された熱エネルギや爆風の熱エネルギを受けて温度が上昇する。そして、外殻(11,21,31,41)の破片の温度が所定温度を超えると、外殻(11,21,31,41)の破片中のエネルギ材料が化学反応を生じて発熱する。具体的には、第1の発明では複数種のエネルギ物質が化学反応を生じ、第2の発明では所定のエネルギ物質と空気中の酸素又は窒素が化学反応を生じ、第3の発明では所定のエネルギ物質と所定の反応物とが化学反応を生じて発熱する。なお、外殻(11,21,31,41)は、爆轟時又は弾着時に受ける衝撃によって粒子化されて表面積が増大するため、上記化学反応が爆発的に生じる。これにより、瞬時に大きな熱エネルギが得られる。
具体的には、例えば、飛翔中に爆薬(14,24,34,44)が爆発して外殻(11,21,31,41)が破片化し、該破片の飛翔中に上記化学反応が生じた場合、該化学反応による熱エネルギが周囲の気体に供給されることによって周囲の気体が膨張し、爆風が昇圧される。これにより、爆風による衝撃量が増大する。
一方、目標物への弾着時の変形によって上記化学反応が生じた場合、外殻の破片には運動エネルギの他に上記化学反応による高い熱エネルギが加わり、破片による破壊効果が飛躍的に向上する。
第4の発明では、外殻(11,21)が爆薬(14,24)が充填された筺状の弾殻(12,22)と、該弾殻(12,22)の外表面に取り付けられて上記エネルギ材料によって形成された複数の破片(13,23)とを有している。そのため、爆薬(14,24)の爆轟に伴って外殻(11,21)が破片化する際に、エネルギ材料によって形成された複数の破片(13,23)を得ることができる。これにより、破片(13,23)が粒子化し易くなり、上記化学反応が生起され易くなる。
第5の発明では、外殻(11,41)が爆薬(14,44)が充填されてエネルギ材料によって形成された筺状の弾殻(12,42)を有し、該弾殻(12,42)に爆薬(14,24)の爆轟に伴って生じる所定形状の複数の破片(12b,42b)の外形を形作る溝(12a,42a)が形成されている。そのため、爆薬(14,44)の爆轟に伴って所定形状の複数の破片(12b,42b)を得ることができる。これにより、破片(12b,42b)が粒子化し易くなり、上記化学反応が生起され易くなる。
第6の発明では、外殻(31)が、有底筒形状の弾殻(32)と、エネルギ材料によって形成されて弾殻(32)の開口側を閉塞して爆薬(34)が充填される内部空間(S3)を形成するライナ(36)とを備えている。そのため、爆薬(34)の爆轟によって内部空間(S3)に接するライナ(36)が加速されて飛翔体に成形され、高速で飛翔して目標物を侵徹する。その際、ライナ(36)の変形による歪エネルギ及び侵徹時の変形による歪エネルギから転換された熱エネルギによってライナ(36)が昇温する。ライナ(36)の温度が所定温度を超えると、ライナ(36)を形成するエネルギ材料中のエネルギ物質が化学反応を生じて発熱する。この化学反応による熱エネルギが周囲の気体に供給されることによって爆風効果が増大され、また、上記熱エネルギによってライナ(36)の目標物への破壊力が増大する。
第7の発明では、外殻(11,21,31,41)のエネルギ材料によって形成された部分が、エネルギ材料の粉体を冷間等方圧加圧することによって形成されている。つまり、外殻(11,21,31,41)のエネルギ材料によって形成された部分は、高温状況下で加圧成形されていないため、成形過程においてエネルギ物質が溶融することがなく、粒子間結合が弱い。そのため、外殻(11,21,31,41)のエネルギ材料によって形成された部分が、爆薬(14,24,34,44)の爆轟又は弾着時の衝撃によって粒子化され易くなる。
第8の発明では、外殻(11,21,31,41)のエネルギ材料によって形成された部分が被膜されている。そのため、長期保管時に、経年変化等によってエネルギ物質が空気中の酸素又は窒素と化学反応を生じてしまう虞を低減することができる。
第1乃至第3の発明によれば、外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部を、所定温度を超えると発熱反応を生じるエネルギ物質を含むエネルギ材料によって形成することにより、該エネルギ材料によって形成された部分において生じる化学反応によって大きな化学エネルギ(熱エネルギ)を発生させて、爆風の衝撃量の増大又は破片効果の増大を図ることができる。従って、弾頭部による目標物の破壊確率を飛躍的に向上させることができる。
また、第4及び第5の発明によれば、爆薬(14,24)(11,41)の爆轟に伴って複数のエネルギ材料による破片(13,23)(12b,42b)が形成されるように外殻(11,21)(11,41)を構成することにより、エネルギ材料によって形成された部分における化学反応を促進して該化学反応による化学エネルギ(熱エネルギ)を得易くすることができる。
また、第6の発明によれば、EFP弾頭において、EFPのライナ(36)をエネルギ材料によって形成することにより、該ライナ(36)において生じる化学反応によって大きな化学エネルギ(熱エネルギ)を発生させて、爆風の衝撃量の増大又はEFPの破壊力の増大を図ることができる。従って、EFP弾頭における目標物の破壊確率を飛躍的に向上させることができる。
また、第7の発明によれば、外殻(11,21,31,41)のエネルギ材料によって形成された部分を、エネルギ材料の粉体を冷間等方圧加圧することによって形成することにより、当該部分が粒子化し易くなるため、化学反応を促進することができる。従って、効率よく化学エネルギ(熱エネルギ)を獲得することで、弾頭部による目標物の破壊確率のさらなる向上を図ることができる。
また、第8の発明によれば、外殻(11,21,31,41)のエネルギ材料によって形成された部分を被膜することにより、長期保管時に、経年変化等によってエネルギ物質が空気中の酸素又は窒素と化学反応を生じてしまう虞を低減することができる。従って、保管時の安定性をより向上させることができる。
図1は、実施形態1に係る弾頭の断面図である。 図2は、実施形態1に係る弾頭が装着されたミサイルの外形図である。 図3は、図1の外殻の一部を拡大して示す図である。 図4は、図3の矢視図である。 図5は、エネルギ物質の化学反応による化学エネルギと該化学エネルギを速度換算した際の速度との相関を示す図である。 図6は、実施形態2に係る弾頭の外殻の一部を示す図である。 図7は、実施形態3に係る弾頭の断面図である。 図8は、実施形態3に係る弾頭が装着されたミサイルの外形図であり、成形破片放出時の様子を示すものである。 図9は、実施形態4に係るEFP弾頭及び該EFP弾頭から生成される飛翔体の射出から侵徹までの過程を示す断面図である。 図10は、実施形態4の変形例1に係る弾頭の概略図である。 図11は、実施形態4の変形例2に係る弾頭の概略図である。 図12は、実施形態5に係る榴弾の断面図である。 図13は、図12の外殻の一部を拡大して示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について図を用いて説明する。図1は本発明に係る弾頭部を構成する弾頭(10)を示している。本弾頭(10)は、図2に示すようなミサイル(1)に搭載されている。
上記弾頭(10)は、内部に空間(S1)が形成された外殻(11)を備えている。外殻(11)は、筺状に形成されて内部に上記空間(S1)が形成された弾殻(12)によって構成されている。本実施形態1では、弾殻(12)は、両端部が閉塞された150〜300mm程度の外径の円筒によって構成され、厚さが5〜20mm程度に形成されている。
上記弾殻(12)の内部の空間(S1)には、炸薬(14)が充填されている。また、弾殻(12)の一端部には、炸薬(14)を起爆する起爆手段としての信管部(15)が設けられている。図1では、信管部(15)の内部の図示を省略しているが、該信管部(15)には、爆発を誘起する起爆薬と、該起爆薬の発火を炸薬(14)に伝える導爆薬(伝爆薬)とが充填されている。
上記弾殻(12)は、所定温度を超えると化学反応を生じて発熱するエネルギ物質としてのアルミニウム(Al)及びニッケル(Ni)の粉体(直径100nm〜100μm程度)を含むエネルギ材料によって形成されている。具体的には、エネルギ材料には、上記エネルギ物質(アルミニウム(Al)及びニッケル(Ni))の他に結合材としてのポリマーが混合されている。また、弾殻(12)は、冷間において、粉体状のエネルギ材料に等方的に流体圧をかける冷間等方圧加圧法によって成形されている。これにより、エネルギ物質(アルミニウム(Al)及びニッケル(Ni))の各粒子が、結合材としてのポリマーによって結合されて上記弾殻(12)が形成されている。
また、上記弾殻(12)には、図3及び図4に拡大して示すように、複数の格子状の溝(12a)が形成されている。これにより、弾殻(12)は、炸薬(14)の爆轟によって発生した衝撃圧によって破裂する際に、上記溝(12a)に従って破断し、複数の調整破片(12b)が形成されるように設計されている。なお、弾殻(12)は径方向に膨張して破裂するため、各溝(21a)は、弾殻(12)の径方向への膨張によって破断し易くなるように軸方向から傾斜した方向に延びている。本実施形態では、図4に示すように、各溝(21a)は、軸方向から45度傾いた方向に延びているが、各溝(21a)の傾斜角度は本実施形態のものに限られない。
−動作−
目標物に向かって飛翔中のミサイル(1)に設けられた弾頭(10)において、信管部(15)によって炸薬(14)を起爆すると、内部空間(S1)は爆轟の伝播によって圧力が急激に上昇し、該内圧によって弾殻(12)が破裂して複数の調整破片(12b)が形成される。複数の調整破片(12b)は、秒速1000m〜2000m程度の速度で飛散する。また、弾殻(12)の破裂と共に爆風が生じる。
上記複数の調整破片(12b)は、爆轟時の変形による歪エネルギ又は目標物への弾着時の衝撃による運動エネルギから転換された熱エネルギや爆風の熱エネルギを受けて昇温し、所定の閾値温度を超えると化学反応を生じて発熱する。
なお、複数の調整破片(12b)は、炸薬(14)の爆轟時又は弾着時の衝撃によって粒子化する。具体的には、複数の調整破片(12b)を構成する物質(アルミニウム(Al)及びニッケル(Ni))の音響インピーダンスの相違によって界面での衝撃波の反射と透過が生じ、界面剥離が生じ易くなる。また、上述のように、複数の調整破片(12b)は、粉体状のエネルギ材料を冷間等方圧加圧法によって成形しているため、粒子間結合が弱い。そのため、爆轟時又は弾着時の衝撃によって粒子化し易くなっている。
このように、複数の調整破片(12b)は、粒子化することによって表面積が増加し、上記化学反応が爆発的に生じることによって大きな熱エネルギ(反応熱)が発生する。
上記調整破片(12b)の飛翔中に上記化学反応が生じた場合、調整破片(12b)から周囲の気体に熱エネルギが供給され、周辺の気体が膨張することによって、爆風が昇圧される。通常、爆風は距離による減衰が大きく爆轟地点から離れる程、その爆風による衝撃量は減少するが、上述のように調整破片(12b)の化学反応による熱エネルギによって爆風が昇圧されることによって、爆風による衝撃量が増大する。これにより、例えば、飛来する誘導ミサイル等を迎撃する際に、迎撃地点付近に友軍が存在するような場合には、友軍に被害を及ぼさないよう、破片ではなく爆風によって目標物を破壊することが必須となるが、このような場合に上述のような爆風による衝撃量の増大効果が特に有効となる。
一方、調整破片(12b)が飛翔中に上記化学反応を生起せず、目標物への弾着時に上記化学反応が生じた場合、運動エネルギと調整破片(12b)において生じた熱エネルギによる相乗効果によって目標物に与える損傷が大きくなる。例えば、ミサイルの弾頭や榴弾の弾体を目標物とする場合には、これらが保有する炸薬を起爆する可能性を上げることができる。
−実施形態1の効果−
本弾頭(10)によれば、外殻(11)を、所定の閾値温度を超えると発熱反応を生じるエネルギ物質であるアルミニウムとニッケルとを含むエネルギ材料によって形成することによって、外殻(11)において生じる化学反応によって大きな化学エネルギ(熱エネルギ)を発生させて、爆風の衝撃量の増大又は破片効果の増大を図ることができる。従って、本弾頭(10)によれば、目標物の破壊確率を飛躍的に向上させることができる。
また、本弾頭(10)によれば、外殻(11)の弾殻(12)に溝(12a)を形成して炸薬(14)の爆轟によって複数のエネルギ材料による破片(12b)が形成されるように構成することにより、破片(12b)の粒子化を促進して上記化学反応を促進し、該化学反応による化学エネルギ(熱エネルギ)を得易くすることができる。
−変形例1−
上記実施形態1では、弾殻(12)を、本発明に係るエネルギ物質としてのアルミニウム(Al)及びニッケル(Ni)を含むエネルギ材料によって形成していた。しかしながら、本発明に係る弾殻(12)はこれに限られない。例えば、ニッケル(Ni)及びチタン(Ti)を含むエネルギ材料によって形成してもよい。このような場合であっても、上記弾殻(12)と同様に、爆轟時又は弾着時の衝撃によって粒子化されたニッケル(Ni)とチタン(Ti)とが所定の閾値温度まで昇温されて化学反応を生じることにより、大きな化学エネルギ(熱エネルギ)を獲得することができ、目標物の破壊確率を飛躍的に向上させることができる。
−変形例2−
また、上記実施形態1の弾殻(12)は、所定温度を超えると空気中の酸素又は窒素と化学反応を生じて発熱する所定のエネルギ物質を含むエネルギ材料によって構成してもよい。その際のエネルギ物質の例としては、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等が挙げられ、これらのエネルギ物質を含むエネルギ材料によって上記弾殻(12)を形成することとしてもよい。このような場合であっても、実施形態1と同様に、爆轟時又は弾着時の衝撃によって粒子化されたエネルギ物質が所定の閾値温度まで昇温されて空気中の酸素(又は窒素)と化学反応を生じることにより、新たな化学エネルギ(熱エネルギ)を獲得することができ、目標物の破壊効率を飛躍的に向上させることができる。
なお、化学反応によって生じる化学エネルギ(熱エネルギ)は、炸薬の爆轟による破片の運動エネルギに比べて非常に大きなものとなる。以下、図5を用いて詳述する。なお、図5には、運動エネルギと化学エネルギ(熱エネルギ)とを対比するため、エネルギ物質の化学反応によって生じる化学エネルギ(熱エネルギ)と、該化学エネルギを速度換算した際の速度との相関を示している。図5では、炸薬(トリニトロトルエン(TNT))の爆発による化学エネルギと速度の相関と、エネルギ物質としてのアルミニウム(Al)及びボロン(B)の酸化による化学エネルギと速度の相関を示している。
図5より、炸薬による化学エネルギに比べて、エネルギ物質による化学エネルギは非常に大きくなることがわかる。また、これらの化学エネルギを速度換算した場合に、炸薬に比べてアルミニウム(Al)及びボロン(B)は高い速度を得られることがわかる。つまり、エネルギ物質の化学反応が高速の破片の運動エネルギに相当することがわかる。このことから、炸薬量を増大させて破片を高速で飛翔させて破片の運動エネルギを増大させるよりも、外殻をエネルギ物質で構成して爆轟時又は弾着時の衝撃を利用して化学反応を生起する方が大きなエネルギを得ることができ、目標の破壊力を獲得することができることがわかる。
−変形例3−
上記実施形態1の弾殻(12)は、所定のエネルギ物質と、所定温度を超えると該エネルギ物質と化学反応を生じて発熱する所定の反応物とを含むエネルギ材料によって構成されていてもよい。例えば、化学反応として酸化反応が挙げられ、エネルギ物質としてボロン(B)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)が挙げられる。これらのエネルギ物質の粉体と、例えば、樹脂等の酸化剤とが混合されたエネルギ材料によって上記弾殻(12)を形成することとしてもよい。このような場合であっても、実施形態1と同様に、爆轟時又は弾着時の衝撃によって粒子化されたエネルギ物質が所定の閾値温度まで昇温されて反応物(酸化剤等)と化学反応を生じることにより、新たな化学エネルギ(熱エネルギ)を獲得することができ、目標物の破壊効率を飛躍的に向上させることができる。
なお、化学反応の例として、上述の酸化の他に、窒化、炭化、弗化、珪化等が挙げられ、反応物の例として、上記化学反応に対応する窒化剤、炭化剤、弗化剤、珪化剤等が挙げられる。
《発明の実施形態2》
実施形態2は、実施形態1に係る弾頭(10)の外殻(11)の構造を変更したものである。
具体的には、図6に示すように、外殻(11)は、実施形態1と略同様の筺状の弾殻(12)と、弾殻(12)の外表面に取り付けられた複数の成形破片(13)とを備えている。なお、本実施形態2では、弾殻(12)には、調整破片(12b)を形成するための溝(12a)が形成されていない。
上記複数の成形破片(13)は、同一の立方体形状に形成されている。また、複数の成形破片(13)は、実施形態1(各変形例を含む)の弾殻(12)と同様に、本発明に係るエネルギ材料によって形成され、冷間等方圧加圧法によって成形されている。
本弾頭(10)の動作は、実施形態1において、炸薬(14)の爆轟によって弾殻(12)が破裂して複数の調整破片(12b)が形成されていたところ、実施形態2では、炸薬(14)の爆轟によって弾殻(12)が破裂して破片化すると共に、弾殻(12)に取り付けられていた複数の成形破片(13)が弾殻(12)から分離して破片化する点において実施形態1と異なる。しかし、その後の成形破片(13)の動作については実施形態1の調整破片(12b)と略同様であるため、説明を省略する。
このように外殻(11)を、それぞれエネルギ材料によって形成された弾殻(12)と複数の成形破片(13)とによって構成することとしても、実施形態1と同様の効果が得られる。
《発明の実施形態3》
実施形態3に係る弾頭(20)は、弾道ミサイルを迎撃する迎撃ミサイルに装着され、弾道ミサイルに接近した際に、実施形態2よりも質量の大きな成形破片を放出するエンハンサ弾頭である。該弾頭(20)は、迎撃する弾道ミサイルとの会合速度(運動エネルギ)を利用して迎撃対象を破壊するように構成されている。
図7に示すように、弾頭(20)は、内部に空間(S2)が形成された外殻(21)を備えている。外殻(21)は、筺体に形成されて内部に上記空間(S2)が形成された弾殻(22)と、該弾殻(22)の外周面に取り付けられた複数の成形破片(23)とを備えている。
上記弾殻(22)は、内部に円柱形状の大小2つの連通した空間からなる内部空間(S2)を形成するように構成されている。なお、内部空間(S2)は、実施形態1の弾殻(12)の内部空間(S1)よりも小さくなるように形成されている。一方、複数の成形破片(23)は、本実施形態では、ロッド状に形成され、質量が50〜200g程度となるように形成されている。これら弾殻(12)及び複数の成形破片(23)は、共に実施形態1(各変形例を含む)の弾殻(12)と同様に、本発明に係るエネルギ材料によって形成され、冷間等方圧加圧法によって成形されている。
また、上記弾殻(22)の内部空間(S2)には、実施形態1よりも少量の爆薬(24)が充填されている。そして、弾殻(22)の底部には、爆薬(24)を起爆する起爆手段としての信管部(25)が設けられている。図7では、信管部(25)の内部の図示を省略しているが、該信管部(25)には、爆発を誘起する起爆薬と、該起爆薬の発火を爆薬(24)に伝える導爆薬(伝爆薬)とが充填されている。
なお、詳細については後述するが、本実施形態の弾頭(20)は、目標物となる弾道ミサイルとの会合速度を利用して弾道ミサイルを破壊するものであるため、成形破片(23)を高速で飛翔させる必要がない。そのため、爆薬(24)として、実施形態1と同様に炸薬を用いてもよいが、炸薬よりも反応速度の遅い放出薬を用いてもよい。このような放出薬を用いた場合であっても、放出薬の燃焼によって内部空間(S2)が昇圧されて弾殻(22)が破裂し、成形破片(23)がミサイル(1)の外周側に放出されることとなる。以下では、爆薬(24)として放出薬を用いた場合について説明する。
−動作−
目標物である弾道ミサイルに向かって飛翔中のミサイル(1)に設けられた弾頭(20)において、信管部(25)によって爆薬(24)である放出薬が起爆されると、外殻(21)を構成する弾殻(12)の信管部(15)側から放出薬が緩やかに燃焼していく。これにより、内部空間(S2)の圧力が上昇し、該内圧によって弾殻(22)が破裂して破片化する。このとき、弾殻(22)に取り付けられていた複数の成形破片(23)が弾殻(22)から分離して径方向外側に放出される(図8参照)。なお、放出薬を用いた場合、燃焼が緩やかに進行するため、成形破片(23)及び弾殻(22)の破片が放出される際の速度は遅く、秒速100m〜300m程度となる。
このようなエンハンサ弾頭(20)を備えたミサイル(1)では、成形破片(23)及び弾殻(22)の破片が放出されることにより、直撃を基本とするシステムの迎撃可能範囲が拡大される(迎撃可能範囲がミサイル(1)本体の径よりも大きくなる)。これにより、目標物である弾道ミサイルの破壊確率を向上させている。また、複数の成形破片(23)及び弾殻(22)の破片は、目標物である弾道ミサイルとの会合速度(運動エネルギ)を利用して弾着時の衝撃を増大させている。
そして、複数の成形破片(23)及び弾殻(22)の破片が目標物に弾着すると、その際の衝撃によるエネルギ(会合速度によって生じる運動エネルギ)によって成形破片(23)及び弾殻(22)の破片が粒子化される。また、粒子化された成形破片(23)及び弾殻(22)の破片は、弾着時の変形による歪エネルギから転換された熱エネルギによって昇温し、所定の閾値温度を越えると化学反応を生じて発熱する。
なお、成形破片(23)及び弾殻(22)の破片は、粒子化によって表面積が増加し、上記化学反応が爆発的に生じることによって大きな熱エネルギ(反応熱)が生起される。そして、該熱エネルギによって目標物である弾道ミサイルに与える損傷が大きくなる。具体的には、上記成形破片(23)及び弾殻(22)の破片の弾道ミサイルへの破壊力が増大すると共に、弾道ミサイルの弾頭に侵徹した際には、弾道ミサイルの炸薬に多量の熱エネルギを供給して該炸薬を起爆させることによって弾道ミサイルを破壊することができる。
このように、実施形態3の弾頭(20)によれば、エンハンサ弾頭(20)の外殻(21)の少なくとも一部をエネルギ材料によって形成することにより、弾道ミサイルに対する破壊確率を向上させることができる。
また、このようにエンハンサ弾頭(20)の成形破片(23)をエネルギ材料によって構成することにより、1つ1つの成形破片(23)の質量を小さくしても、通常要求される破壊力を確保することができる。これにより、成形破片(23)の散布密度を上げて該成形破片(23)による弾道ミサイルの破壊確率のさらなる向上を図ることができる。
なお、本実施形態においても、弾殻(22)に溝を形成して、弾殻(22)が破裂する際に複数の所定の形状の調整破片が形成されるように構成してもよい。
《発明の実施形態4》
実施形態4に係る弾頭(30)は、ライナを有し、炸薬の爆轟エネルギーによってライナを変形させて成形弾と称される本発明に係る飛翔体としてのEFP(Explosively Formed Projectile, or Explosively Formed Penetrator)を生成して該EFPを高速度で前方に射出するEFP弾頭である。該弾頭(30)は、高速度で前方に射出したEFPを目標物に衝突させて該目標物を破壊するように構成されている。
図9に示すように、弾頭(30)は、内部に空間(S3)が形成された外殻(31)を備えている。外殻(31)は、有底の円筒容器状に形成された弾殻(32)と、該弾殻(32)の開口を閉塞する板状に形成されたライナ(36)とを備えている。弾殻(32)は、円筒部と該円筒部に連続してテーパ状に形成された底部とによって構成されている。一方、ライナ(36)は、円板形状に形成され、弾殻(32)の円筒部の開口付近に該弾殻(32)の底部側に窪むように撓んだ形状で嵌め込まれている。また、ライナ(36)は、実施形態1(各変形例を含む)の弾殻(12)と同様に、本発明に係るエネルギ材料によって形成され、冷間等方圧加圧法によって成形されている。
上記外殻(31)を構成する弾殻(32)とライナ(36)とによって内部空間(S3)が形成されている。該内部空間(S3)には、炸薬(34)が充填されている。また、弾殻(32)の底部の中央部には、炸薬(34)を起爆する起爆手段としての信管部(35)が設けられている。図9では、信管部(35)の内部の図示を省略しているが、該信管部(35)には、爆発を誘起する起爆薬と、該起爆薬の発火を炸薬(34)に伝える導爆薬(伝爆薬)とが充填されている。
−動作−
目標物を検知すると、信管部(35)による炸薬(34)の爆轟によってライナ(36)が加速されてEFP(飛翔体)に成形され、高速で飛翔する。
具体的には、炸薬(34)を起爆すると、爆轟によって発生した衝撃圧がライナ(36)に作用して、ライナ(36)が加速されて成形されてEFPとなって高速で飛翔する。より具体的には、ライナ(36)は、中央部分が前方へ押し出される一方、外縁部が後方へ倒れ込むように変形していき、EFPに成形されて目標物を侵徹する。
上記ライナ(36)は、炸薬(34)の爆轟時の変形による歪エネルギ又は目標物への弾着時(侵徹時)の衝撃による運動エネルギから転換された熱エネルギや爆風の熱エネルギによって昇温し、所定の閾値温度を超えると化学反応を生じて発熱する。
なお、ライナ(36)は、変形時又は弾着時の衝撃によって粒子化される。これにより、ライナ(36)の表面積が増加し、上記化学反応が爆発的に生じることによって大きな熱エネルギ(反応熱)が発生する。
上記ライナ(36)の飛翔中に上記化学反応が生じた場合、ライナ(36)から周囲の気体に熱エネルギが供給され、周辺の気体が膨張することによって、爆風が昇圧される。これにより、爆風による衝撃量が増大する。
一方、ライナ(36)が飛翔中に上記化学反応を生起せず、目標物への弾着時(侵徹時)に上記化学反応が生じた場合、ライナ(36)において生じた熱エネルギによって目標物に与える損傷が大きくなる。例えば、戦車等を目標物とする場合には、侵徹後の戦車等の内部の空気に熱エネルギが付与されることによって、内部の破壊を拡大することができる。
このように、実施形態4の弾頭(30)によれば、外殻(31)の一部であるライナ(36)をエネルギ材料によって形成することにより、爆風効果又は破片効果を増大させて破壊確率を向上させることができる。
なお、本実施形態では、ライナ(36)のみをエネルギ材料によって構成していたが、実施形態1と同様に、弾殻(32)全体又は一部をエネルギ材料によって構成してもよい。
また、本実施形態においても、実施形態1のように外殻(31)をエネルギ材料で形成された溝付きの弾殻(32)によって構成して炸薬(34)の爆轟時に調整破片が形成されるようにしてもよく、実施形態2のように外殻(31)を弾殻(32)と、該弾殻(32)に取り付けられてエネルギ材料からなる複数の成形破片とによって構成することとしてもよい。
−変形例1−
図10に示すように、弾頭(30)は、上記実施形態4のように単一のEFPを生成するのではなく、多数のEFPを生成するマルチEFP弾頭であってもよい。
具体的には、弾頭(30)は、上記構成要素に加え、ライナ(36)と同様の形状に形成された網状のライナ分割具(38)を備えている。該ライナ分割具(38)は、ライナ(36)の前方に設けられて、炸薬(34)の爆轟時に前方に加速されるライナ(36)を複数の破片(36a)に分割して、複数のEFP(飛翔体)を形成する。
このような弾頭(30)によっても、上記実施形態4と同様の効果を奏することができる。
また、このような弾頭(30)によれば、ライナ(36)が複数の破片(36a)に分割されることでライナ(36)が粒子化され易くなるため、上記化学反応が促進されて大きな化学エネルギ(熱エネルギ)を瞬時に効率よく獲得することができる。
−変形例2−
また、図11に示すように、弾頭(30)は、多数のEFPを生成すると共に、該多数のEFPを前方ではなく側方(径方向外側)に散布する側方散布型のマルチEFP弾頭であってもよい。
具体的には、弾頭(30)は、外殻(31)が、上記実施形態4と同様に内部空間(S3)を形成する筺状の弾殻(32)と、複数のライナ(36)とによって構成されている。弾殻(32)は、両端が閉塞された円筒形状に形成され、外周部に複数の円形状の孔が形成されている。一方、複数のライナ(36)は、円板形状に形成され、上記弾殻(32)の孔に嵌め込まれている。内部空間(S3)には炸薬(34)が充填されている。
上記弾頭(30)では、炸薬(34)を起爆すると、爆轟によって発生した衝撃圧が複数のライナ(36)に作用して、ライナ(36)が弾殻(32)の径方向外側に加速されて成形されてEFPとなって高速で飛翔する。各ライナ(36)は、中央部分が進行方向に押し出される一方、外縁部が後方へ倒れ込むように変形していき、EFP(飛翔体)に形成される。このようにして、上記弾頭(30)では、多数のEFPが生成されると共に、該多数のEFPが側方に散布される。
このような弾頭(30)によっても、上記実施形態4及び上記変形例1と同様の効果を奏することができる。
《発明の実施形態5》
図12は本発明に係る弾頭部を構成する弾体(40)を備えた弾薬の一例として榴弾(50)を示している。
榴弾(50)は、上記弾体(40)と、該弾体(40)を発射するための発射薬(48)とを備えている。
上記発射薬(48)は、弾体(40)の後部が嵌め込まれる開口を有する有底筒状体からなる薬莢(46)の内部に充填されている。薬莢(46)の底部の中心部から前方に向かって火管(47)が設けられている。なお、図12では、内部の図示を省略しているが、火管(47)は、細長い管状に形成され、雷管と点火薬とが内蔵されている。
上記弾体(40)は、内部に空間(S4)が形成された外殻(41)を備えている。外殻(41)は、上記内部空間(S4)を形成する筺状の弾殻(42)を備えている。弾殻(42)は、先細り形状に形成され、後部は上記発射薬(48)に埋め込まれている。また、弾殻(42)の後部の外周部には、リング状の弾帯(49)が設けられている。該弾帯(49)は、弾体(40)の発射時に砲内に設けられた螺旋溝と噛み合って弾殻(42)に回転を与えて弾体(40)の弾道特性を向上(飛翔時の姿勢を安定化)させる。
上記弾殻(42)の内部空間(S4)には、炸薬(44)が充填されている。また、弾殻(42)の先端部には、炸薬(44)を起爆する起爆手段としての信管部(45)が設けられている。図12では、信管部(45)の内部の図示を省略しているが、該信管部(45)には、爆発を誘起する起爆薬と、該起爆薬の発火を炸薬(44)に伝える導爆薬(伝爆薬)とが充填されている。
なお、上記弾殻(42)は、実施形態1(各変形例を含む)の弾殻(12)と同様に、本発明に係るエネルギ材料によって形成され、冷間等方圧加圧法によって成形されている。また、図13に拡大して示すように、弾殻(42)には、格子状の溝(42a)が形成されている。これにより、弾殻(42)は、炸薬(44)の爆轟によって破裂する際に、上記溝(42a)に従って破断して破片化し、多数の調整破片(42b)が形成される。
−動作−
目標物に向かって発射された榴弾(50)の弾体(40)において、信管部(45)によって炸薬(44)を起爆すると、内部空間(S4)は爆轟の伝播によって圧力が急激に上昇し、該内圧によって弾殻(42)が破裂して複数の調整破片(42b)が形成される。複数の調整破片(42b)は、秒速1000m〜2000m程度の速度で飛散する。また、弾殻(42)の破裂と共に爆風が生じる。
上記複数の調整破片(42b)は、炸薬(44)の爆轟時の変形による歪エネルギ又は目標物への弾着時の衝撃による運動エネルギから転換された熱エネルギや爆風の熱エネルギを受けて昇温し、所定の閾値温度を超えると化学反応を生じて発熱する。
なお、複数の調整破片(42b)は、炸薬(44)の爆轟時又は弾着時の衝撃によって粒子化されて表面積が増加し、上記化学反応が爆発的に生じることによって大きな熱エネルギ(反応熱)が発生する。
上記調整破片(42b)の飛翔中に上記化学反応が生じた場合、調整破片(42b)から周囲の気体に熱エネルギが供給され、周辺の気体が膨張することによって、爆風が昇圧される。これにより、衝撃量が増大する。
一方、調整破片(42b)が飛翔中に上記化学反応を生起せず、目標物への弾着時に上記化学反応が生じた場合、調整破片(42b)において生じた熱エネルギによって目標物に与える損傷が大きくなる。例えば、ミサイルの弾頭や榴弾の弾体を目標物とする場合には、これらが保有する炸薬を起爆する可能性を上げることができる。
また、炸薬(44)の爆轟が目標物への弾着時に生じる場合には、その弾着時の衝撃及び炸薬(44)の爆轟によって弾殻(42)が粒子化して複数の調整破片(42b)が形成されると共に、上述の反応と同様の化学反応を生じて大きな熱エネルギを生じる。目標物によっては上記熱エネルギによって発火又は保有する炸薬を起爆させて破壊することができる。
このように、弾薬の弾頭部を構成する弾体(40)の外殻(41)の少なくとも一部を本発明に係るエネルギ材料によって形成することにより、実施形態1のミサイル(1)の弾頭(10)と同様に、榴弾(50)の弾体(40)の破壊確率を向上させることができる。
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、外殻(11,21,31,41)全体をエネルギ材料で構成していたが、外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部をエネルギ材料によって構成することとしてもよい。このような場合であっても本発明による効果を奏することができる。
また、上記各実施形態において、外殻(11,21,31,41)のエネルギ材料によって構成された部分を、例えば、酸化膜や窒化膜で被膜されたエネルギ物質の粒子を用いて形成することとしてもよく、若しくは、外殻(11,21,31,41)のエネルギ材料によって構成された部分全体の表層を樹脂等で被膜することとしてもよい。このように形成することで、長期保管時に、経年変化等によってエネルギ物質が空気中の酸素又は窒素と化学反応を生じてしまう虞を低減することができ、保管時の安定性をより向上させることができる。
また、上記実施形態2において成形破片(13)は立方体形状に形成され、上記実施形態3において成形破片(23)はロッド状に形成されていたが、本発明に係る成形破片はこのような形状に限られず、例えば、球形状に形成されていてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、ミサイルに装着される弾頭や弾薬の弾体等の弾頭部について有用である。
1 ミサイル
10、20、30 弾頭(弾頭部)
11、21、31、41 外殻
12、22、32、42 弾殻
12a、42a 溝
12b、42b 調整破片
13、23 成形破片
14、34、44 炸薬(爆薬)
15、25、35、45 信管部(起爆手段)
24 爆薬
36 ライナ
36a 破片
38 ライナ分割具
40 弾体(弾頭部)
50 榴弾

Claims (8)

  1. 内部に空間(S1,S2,S3,S4)が形成された外殻(11,21,31,41)と、該外殻(11,21,31,41)の内部に充填された爆薬(14,24,34,44)と、該爆薬(14,24,34,44)を起爆する起爆手段(15,25,35,45)とを備えた弾頭部であって、
    上記外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部は、所定温度を超えると化学反応を生じて発熱する複数種のエネルギ物質を含むエネルギ材料によって形成されている
    ことを特徴とする弾頭部。
  2. 内部に空間(S1,S2,S3,S4)が形成された外殻(11,21,31,41)と、該外殻(11,21,31,41)の内部に充填された爆薬(14,24,34,44)と、該爆薬(14,24,34,44)を起爆する起爆手段(15,25,35,45)とを備えた弾頭部であって、
    上記外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部は、所定温度を超えると空気中の酸素又は窒素と化学反応を生じて発熱する所定のエネルギ物質を含むエネルギ材料によって形成されている
    ことを特徴とする弾頭部。
  3. 内部に空間(S1,S2,S3,S4)が形成された外殻(11,21,31,41)と、該外殻(11,21,31,41)の内部に充填された爆薬(14,24,34,44)と、該爆薬(14,24,34,44)を起爆する起爆手段(15,25,35,45)とを備えた弾頭部であって、
    上記外殻(11,21,31,41)の少なくとも一部は、所定のエネルギ物質と、所定温度を超えると該エネルギ物質と化学反応を生じて発熱する所定の反応物とを含むエネルギ材料によって形成されている
    ことを特徴とする弾頭部。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
    上記外殻(11,21)は、上記爆薬(14,24)が充填された筺状の弾殻(12,22)と、上記弾殻(12,22)の外表面に取り付けられた複数の破片(13,23)とを有し、
    上記破片(13,23)は、上記エネルギ材料によって形成されている
    ことを特徴とする弾頭部。
  5. 請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
    上記外殻(11,41)は、上記爆薬(14,44)が充填されて上記エネルギ材料によって形成された筺状の弾殻(12,42)を有し、
    上記弾殻(12,42)には、上記爆薬(14,24)の爆轟に伴って所定形状の複数の破片(12b,42b)が形成されるように該破片(12b,42b)の外形を形作る溝(12a,42a)が形成されている
    ことを特徴とする弾頭部。
  6. 請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
    上記外殻(31)は、有底筒形状の弾殻(32)と、該弾殻(32)の開口側を閉塞するように設けられて上記内部空間(S3)を形成する一方、該内部空間(S3)に充填された上記爆薬(34)の爆轟によって加速されて飛翔体に成形されるライナ(36)とを備え、
    上記ライナ(36)は、上記エネルギ材料によって形成されている
    ことを特徴とする弾頭部。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1つにおいて、
    上記外殻(11,21,31,41)の上記エネルギ材料によって形成された部分は、該エネルギ材料の粉体を冷間等方圧加圧することによって形成されている
    ことを特徴とする弾頭部。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
    上記外殻(11,21,31,41)の上記エネルギ材料によって形成された部分は、被膜によって覆われている
    ことを特徴とする弾頭部。
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