以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の人体局部の洗浄を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えば図示しないリモコンなどの操作部を操作すると、ノズル410を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル410がボウル801内に進出した状態を表している。
ノズル410の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水孔411が設けられている。そして、ノズル410は、その先端部に設けられた吐水孔411から水を噴射して、便座200に座った使用者の人体局部を洗浄することができる。例えば、図1に表したノズル410では、ふたつの吐水孔411のうちの一方の吐水孔411は、ビデ洗浄用の吐水孔であり、他方の吐水孔411は、おしり洗浄用の吐水孔である。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
次に、本実施形態のノズルから吐水される洗浄水の吐水形態について、図面を参照しつつ例示し概略を説明する。
図2は、本実施形態のノズルから吐水される洗浄水の吐水形態を例示する概念模式図である。
また、図3は、本実施形態のノズルから吐水される洗浄水の他の吐水形態を例示する概念模式図である。
また、図4は、本実施形態のノズルから吐水される洗浄水のさらに他の吐水形態を例示する概念模式図である。
本実施形態のノズル410は、図1に関して前述したように、便座200に座った使用者の人体局部に向けて吐水孔411から洗浄水500を噴射することができる。このとき、洗浄水500は、図2〜図4に表したように、吐水孔411から拡散するように吐水される。そして、洗浄水500が拡散する領域の内側には、その洗浄水500が万遍なく行き渡る。つまり、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、ノズル410の吐水孔411から拡散するように洗浄水500を吐水し、その拡散する領域の内側に洗浄水500を万遍なく行き渡らせる吐水手段を備える。
また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、吐水臨界域形成手段を備える。この吐水臨界域形成手段は、吐水孔411から吐水される洗浄水500が拡散される予め定められた領域の外周縁において、その領域から外方へ洗浄水500が飛散することを防止する吐水臨界域を吐水孔411から吐水される洗浄水500により形成する。そして、吐水臨界域形成手段は、吐水孔411から吐水された洗浄水500が人体局部に着水するまで、洗浄水500が拡散する領域の外周縁において、その領域から外方へ洗浄水500が飛散することを防止する吐水臨界域を確保することができる。
図2〜図4に表した吐水形態では、洗浄水500が中央部に中空部分を有する液膜として中空円錐状に吐水孔411から吐水された場合を例示している。以下、説明の便宜上、このように中空円錐状に吐水された洗浄水を「中空円錐状吐水」と称する。そして、中空円錐状吐水510が拡散する領域の内側には、粒化された水流(以下、説明の便宜上、「粒化水流」と称する)520が万遍なく行き渡る。また、中空円錐状吐水510は、吐水孔411から吐水される洗浄水500が拡散する領域の外周縁において、その領域から外方へ洗浄水500が飛散することを防止する吐水臨界域の一具体例である。
なお、中空円錐状吐水510の中空部分では、液膜の流れに追随して中空円錐状吐水510の中空部分から外側へ排出される空気量が多くなる。一方で、中空円錐状吐水510の中空部分に入る空気の通り道は、中空円錐状吐水510の液膜によって遮られるため、中空円錐状吐水510の中空部分から外側へ排出される空気の中央部に限られることになる。そのため、中空円錐状吐水510の中空部分に入ってくる空気量が少なくなり、中空円錐状吐水510の中空部分では、外気と比べて圧力が低くなった負圧状態が発生している。そして、液膜の進行方向に進行する粒化水流520の一部は、中空円錐状吐水510の中空部分に発生した負圧によって、その中空部分に引き込まれる。これにより、中空円錐状吐水510が拡散する領域の内側において、粒化水流520は万遍なく行き渡ることができる。
但し、本実施形態のノズル410から吐水される洗浄水500の吐水形態は、これだけに限定されるわけではない。例えば、洗浄水500は、ノズル410の吐水孔411から液膜の中空円錐状吐水510としてではなく粒化水流520として吐水されてもよい。この場合であっても、粒化水流520は、吐水孔411から拡散するように吐水され、拡散する領域の内側に万遍なく行き渡る。これについては、後に詳述する。
図2〜図4に例示した吐水形態の概略についてより具体的に説明すると、図2に表した吐水形態では、中空円錐状吐水510は、人体局部に着水する前に破砕され、粒化水流520へ遷移する。そして、粒化水流520は、人体局部のより広い範囲に着水する。つまり、ノズル410から噴射された洗浄水500は、中空円錐状吐水510自身が破砕されて遷移した粒化水流520により中空部分を充填され、人体局部に着水する。
また、図3に表した吐水形態では、中空円錐状吐水510の中央部、すなわち中空部分に直進流530が吐水される。そして、直進流530は、人体局部に着水する前に破砕され、粒化水流520へ遷移する。つまり、ノズル410から噴射された洗浄水500は、直進流530が破砕されて遷移した粒化水流520により中空円錐状吐水510の中空部分を充填され、人体局部に着水する。
なお、中空円錐状吐水510の中空部分に吐水される形態は、直進流530に限定されるわけではなく旋回流であってもよい。つまり、中空円錐状吐水510の中空部分に旋回流が吐水され、その旋回流が人体局部に着水する前に破砕され、粒化水流520へ遷移してもよい。
また、図4に表した吐水形態では、中空円錐状吐水510の中央部、すなわち中空部分に粒化水流520が吐水される。すなわち、図2に表した吐水形態では、中空円錐状吐水510自身が粒化水流520へ遷移し、図3に表した吐水形態では、直進流530が粒化水流520へ遷移したのに対して、図4に表した吐水形態では、中空円錐状吐水510の中空部分において粒化水流520がノズル410から吐水される。これにより、ノズル410から噴射された洗浄水500は、ノズル410から吐水された粒化水流520により中空円錐状吐水510の中空部分を充填され、人体局部に着水する。
なお、図2〜図4に表した吐水形態において、中空円錐状吐水510は、液膜が破砕して粒化した状態で人体局部に着水してもよいし、液膜の状態のままで人体局部に着水してもよい。また、前述したように、洗浄水500は、ノズル410の吐水孔411から液膜の中空円錐状吐水510としてではなく粒化水流520として吐水されてもよい。
図5は、洗浄水の着水部における着水圧力および着水水量を表すグラフ図である。
また、図6は、洗浄水の着水部における他の着水圧力および着水水量を表すグラフ図である。
また、図7は、洗浄水の着水部におけるさらに他の着水圧力および着水水量を表すグラフ図である。
図2〜図4に関して前述したように、洗浄水500が拡散する領域の内側には、その洗浄水500が万遍なく行き渡る。より具体的には、例えば、中空円錐状吐水510が拡散する領域の内側には、粒化水流520が万遍なく行き渡る。あるいは、例えば、粒化水流520が拡散する領域の内側には、その粒化水流520が万遍なく行き渡る。ここで、粒化水流520の径は、例えば約1mm(ミリメートル)程度であり、径が例えば約10〜100μm(ミクロン)程度の霧と比較すると大きい。
すなわち、ノズル410から噴射された洗浄水500は、吐水孔411から拡散するように吐水され、洗浄水500が拡散する領域の内側には、その洗浄水500が万遍なく行き渡る。これにより、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、人体局部の周囲の広い範囲に直接的に万遍なく洗浄水500を着水させることができる。
その結果、吐水孔411から吐水された洗浄水500が人体局部に着水すると、洗浄水500の着水部における着水圧力および着水水量は、図5に表したように、着水部の中心部と外周部とで略同じ、あるいは、図6に表したように、着水部の中心部よりも外周部で大きい、あるいは、図7に表したように、着水部の外周部よりも中心部で大きくなる。
ここで、本願明細書において、「着水圧力」とは、単位面積あたりの運動量であり、汚れを落としたり、剥いだり、浮かせたりする力をいう。
また、本願明細書において、「着水水量」とは、単位時間あたりに着水する水量であり、汚れを洗い流す力をいう。
洗浄水500の洗浄範囲(着水時の洗浄面積)は、例えば約φ35〜45mm程度である。すなわち、図5、図6、および図7に表した立ち上がり部の幅は、例えば約35〜45mm程度に相当する。
そのため、例えば女性の生理時には、経血汚れが女性局部の周囲の広い範囲に亘って付着する場合があるが、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、その広い範囲を一度にさっと洗浄したいという要望に応えることができる。また、洗浄水500は、女性局部の周囲の広い範囲に直接的に万遍なく着水するため、洗浄エリアの中心部における洗浄圧力は従来の直進流が着水した場合よりも低く、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わるおそれは少ない。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、従来のビデ洗浄よりも広い範囲に一度に着水させることができるため、ノズル410を前後方向および左右方向(図1に表した矢印を参照)に移動させることにより着水位置を移動させたり、便座200に座った使用者自身が着座位置を移動することにより着水位置を移動させたりする必要はない。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、女性局部を広い範囲で洗浄する際になぞられたような感覚を与えるおそれは少ない。これによっても、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
また、本実施形態の吐水臨界域形成手段は、吐水孔411から吐水された洗浄水500が女性局部の周囲の広い範囲に着水するまで、洗浄水500が拡散する領域の外周縁において、その領域から外方へ洗浄水500が飛散することを防止する吐水臨界域を確保する。そのため、洗浄水500が洗浄エリア外に着水することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分(例えば、大腿部)が不必要に濡れることを抑制することができる。これにより、便座200に座った使用者が、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることで不快感を感ずることを抑制することができる。
また、洗浄水500が拡散する領域の内側において、粒化水流520が万遍なく行き渡る場合、その粒化水流520の径は、前述したように、例えば約1mm(ミリメートル)程度であり、径が例えば約10〜100μm(ミクロン)程度の霧と比較すると大きい。これによれば、粒化水流520は、空気中を漂うおそれは少なく、所望の洗浄エリアの外部にまで飛散するおそれは少ない。つまり、粒化水流520が洗浄エリア外に着水することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることを抑制することができる。また、粒化水流520の径は、より大きいため、着水部における着水圧力および着水水量をより高めることができる。そのため、例えば女性の生理時における経血汚れなどを、より短時間の間に落としたり浮かせたりすることができ、また、より短時間の間に洗い流すことができる。
また、本実施形態によれば、洗浄水500の着水部における着水圧力は、図5に表したように、着水部の中心部と外周部とで略同じである。あるいは、洗浄水500の着水部における着水圧力は、図6に表したように、着水部の中心部よりも外周部で高い。ここで、所望の洗浄エリアのうちの外周部は、女性の生理時の経血汚れが付着している場合には積極的に洗浄したいエリアである。そのため、外周部の着水圧力が中心部の着水圧力と略同じ、あるいは中心部の着水圧力よりも高いことにより、洗浄力の高い洗浄水500が経血汚れを除去したいエリアに着水する。一方、女性のデリケートエリアには着水圧力の低い洗浄水が着水するため、必要以上に強い刺激感が加わることはない。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、より短時間の間に経血汚れを落としたり浮かせたりすることができ、なおかつ、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、女性が生理時に使用する装置として好適である。特に、女性局部の周辺部では、経血汚れが乾燥して固着する傾向にあるが、外周部の着水力が中心部の着水力よりも大きい本実施形態にかかる衛生洗浄装置は、固着した経血汚れを洗い落とすのに好適である。
また、本実施形態によれば、洗浄水500の着水部における着水水量は、図5に表したように、着水部の中心部と外周部とで略同じである。あるいは、洗浄水500の着水部における着水水量は、図6に表したように、着水部の中心部よりも外周部で多い。ここで、前述したように、所望の洗浄エリアのうちの外周部は、女性の生理時の経血汚れが付着している場合には積極的に洗浄したいエリアである。そのため、外周部の着水水量が中心部の着水水量と略同じ、あるいは中心部の着水水量よりも多いことにより、十分な量の洗浄水500が経血汚れを除去したいエリアに着水する。一方、女性のデリケートエリアには着水水量の少ない洗浄水が着水するため、必要以上に大水量で洗浄されることによる不快感を抑制することができる。そのため、経血汚れは、着水した洗浄水500により確実に取り込まれ、より短時間の間に洗い流され、なおかつ、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。そのため、前述したように、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、女性が生理時に使用する装置として好適である。
次に、本実施形態の具体例について図面を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態の具体例にかかるノズルを表す断面模式図である。
本具体例のノズル410は、図8に表したように、ノズル本体440と、スロート430と、を有する。ノズル本体440には、図示しない水源から供給された洗浄水がノズル本体440に流入する流入口441と、ノズル本体440の内部の洗浄水が外部へ流出口444と、が設けられている。また、ノズル本体440の内部には、流入口441から流入した水を旋回させる旋回部442と、旋回部442において生成された旋回流を流出口へ導く旋回室443と、が設けられている。
スロート430は、筒状に形成されている。そして、スロート430の内部には、ノズル本体440から吐水された洗浄水が通過するスロート流路431が設けられている。そして、スロート流路431の一端には、スロート流路431を通過した洗浄水をスロート430の外部へ吐水する吐水孔433が形成されている。
なお、本具体例のノズル410では、ノズル本体440とスロート430との間に隙間が設けられているが、この隙間は必ずしも設けられていなくともよい。すなわち、ノズル本体440とスロート430とが一体的に形成され、ノズル本体440の流出口444とスロート430のスロート流路431とが接続されていてもよい。
図示しない水源から洗浄水がノズル410へ供給されると、ノズル本体440は、流入口441から流入した水を旋回部442で旋回させた後、旋回室443を介して流出口444からミストをスプレー噴霧する。このとき、スプレー噴霧されたミストの径は、例えば約10〜100μm(ミクロン)程度の霧の径と同等である。
続いて、流出口444からスプレー噴霧されたミストは、拡散しつつスロート430の内部すなわちスロート流路431に流入する。そうすると、そのミストは、旋回力を維持しつつスロート流路431の内壁に沿って流れ、吐水孔433へ導かれる。すなわち、スロート流路431を通過するミストの一部は、スロート流路431の内壁に付着するように流れる。そのため、スロート流路431の内壁に付着するように流れたミストは、互いに集合し、より大きな径を有するようになる。これにより、吐水孔433から吐水された洗浄水の外周部における径は、その中心部における径よりも大きくなる。
これによれば、洗浄水500は、吐水孔433から拡散するように吐水される。そして、洗浄水500が拡散する領域の内側には、その洗浄水500が万遍なく行き渡る。そのため、洗浄水500は、人体局部の周囲の広い範囲に直接的に万遍なく着水する。これにより、本具体例にかかる衛生洗浄装置100は、例えば経血汚れが女性局部の周囲の広い範囲に亘って付着した場合において、その広い範囲を一度にさっと洗浄したいという要望に応えることができる。
さらに、洗浄水500の着水部における着水圧力は、着水部の中心部よりも外周部で高くなる。あるいは、洗浄水500の着水部における着水水量は、着水部の中心部よりも外周部で多い。そのため、例えば女性の生理時における経血汚れなどを、より短時間の間に落としたり浮かせたりすることができ、また、より短時間の間に洗い流すことができる。
図9は、本実施形態の他の具体例にかかるノズルを表す断面模式図である。
また、図10は、比較例にかかるノズルを表す断面模式図である。
また、図11は、スロートの変形例を例示する断面模式図である。
本具体例のノズル410は、図9に表したように、ノズル本体420と、スロート430と、を有する。ノズル本体420の内部には、図示しない水源から供給された洗浄水が通過するノズル本体流路421と、旋回流を生成可能な旋回室423と、旋回室423からの洗浄水をスロート430へ導く連通路425と、が設けられている。また、旋回室423の中央部には、より安定した旋回力の旋回流を生成する突設部424が設けられている。
旋回室423は、底部においてより大きな径を有する大径部内周壁423eと、連通路425へ向かうにつれて収縮した径を有する傾斜内周壁423fと、により形成され、中空室とされている。そして、傾斜内周壁423fは、その一端において連通路425に接続されている。一方、ノズル本体流路421は、旋回室423に偏心して接続されている。より具体的には、ノズル本体流路421は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。
スロート430の内部には、ノズル本体420の連通路425から吐水された洗浄水が通過するスロート流路431が設けられている。そして、スロート流路431の一端には、スロート流路431を通過した洗浄水をスロート430の外部へ吐水する吐水孔433が形成されている。吐水孔433の近傍のスロート流路431には、吐水孔433へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されている。
なお、本具体例のノズル410では、ノズル本体420とスロート430との間に隙間が設けられているが、この隙間は必ずしも設けられていなくともよい。すなわち、ノズル本体420とスロート430とが一体的に形成され、連通路425とスロート流路431とが接続されていてもよい。
図示しない水源から洗浄水がノズル410へ供給されると、その洗浄水は、ノズル本体流路421を通過して旋回室423へ流入する。ここで、ノズル本体流路421は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、旋回室423へ流入した洗浄水は、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って旋回する。そして、旋回室423において旋回した洗浄水は、旋回力を維持しつつ連通路425を通過し、スロート430のスロート流路431内へ吐水される。このとき、ノズル本体420から吐水された洗浄水は、旋回力を維持しているため、中央部に中空部分を有する液膜として中空円錐状に吐水される。
そして、スロート流路431に流入した洗浄水は、旋回力を維持しつつスロート流路431の内壁に沿って流れ、吐水孔433へ導かれる。すなわち、スロート流路431を通過する洗浄水は、スロート流路431の内壁に付着するように流れる。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水は、スロート流路431の内壁から摩擦力による抵抗を受け、その洗浄水の流速は、吐水孔433へ向かうにつれて遅くなる。これにより、図9に表したように、吐水孔433の近傍の液膜の厚さは、ノズル本体420から吐水されたときの液膜の厚さ、あるいはスロート流路431に流入した直後の液膜の厚さよりも厚い。
さらに、スロート流路431を流れる洗浄水の流速は、スロート流路431の内壁の近傍すなわち境界層よりもスロート流路431の中心部の方が速い。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水の内部には、図9に表した矢印A1のように、液膜を横断する方向に渦流が発生する。また、吐水孔433の近傍におけるスロート流路431には、吐水孔433へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されているため、吐水孔433から吐水される洗浄水は、テーパ部432に沿って流れる。そのため、吐水孔433から吐水される洗浄水の内部には、液膜を横断する方向に渦流がより発生しやすい。
そうすると、吐水孔433から吐水された洗浄水は、中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水510として吐水されるが、吐水孔433からある程度離間した位置において粒化水流520へ遷移する。より具体的には、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510の内部には、液膜を横断する方向に渦流が発生しているため、吐水孔433からある程度離間した位置において、隣接する渦流同士の間に亀裂が生ずる。そうすると、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、図9に表したように、吐水孔433からある程度離間した位置において破砕される。このようにして、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、粒化水流520へ遷移する。
また、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力は、中空円錐状吐水510の外側の圧力よりも小さい。これは、中空円錐状吐水510の中空部分には外部から空気が入りにくく、また、その中空部分の空気は中空円錐状吐水510の流れにより引き出されるためである。このようにして中空円錐状吐水510の中空部分の圧力が中空円錐状吐水510の外側の圧力よりも小さいことにより、中空円錐状吐水510は、吐水径(円錐径)が拡大することを抑制される。
そのため、本具体例のノズル410によれば、粒化水流520が洗浄エリア外に着水することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分(例えば、大腿部)が不必要に濡れることを抑制することができる。これにより、便座200に座った使用者が、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることで不快感を感ずることを抑制することができる。
さらに、粒化水流520の径は、図5〜図7に関して前述したように、例えば約1mm程度であり、径が例えば約10〜100μm程度の霧と比較すると大きい。これは、前述したように、スロート流路431を流れる洗浄水の流速は、吐水孔433へ向かうにつれて遅くなり、吐水孔433の近傍の液膜の厚さは、より厚くなるためである。つまり、液膜の厚さがより厚い状態で吐水された中空円錐状吐水510を、スロート430の内部において発生した渦流により強制的に粒化するため、粒化水流520の径は、霧などと比較すると大きい。
これによれば、粒化水流520は、空気中を漂うおそれは少なく、所望の洗浄エリアの外部にまで飛散するおそれは少ない。つまり、本具体例のノズル410によれば、粒化水流520が洗浄エリア外に着水することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることを抑制することができる。また、粒化水流520の径は、より大きいため、着水部における着水圧力および着水水量をより高めることができる。そのため、例えば女性の生理時における経血汚れなどを、より短時間の間に落としたり浮かせたりすることができ、また、より短時間の間に洗い流すことができる。
また、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力が中空円錐状吐水510の外側の圧力よりも小さいことに関して前述したが、この中空円錐状吐水510の中空部分の圧力は、中空円錐状吐水510が破砕されない場合の中空円錐状吐水510の中空部分の圧力よりも大きい。これは、図9に表した矢印A2のように、中空円錐状吐水510の中空部分の外部の空気が、隣接する渦流同士の間に生じた亀裂、あるいは破砕された中空円錐状吐水510の間から中空部分に入り込むためである。これによれば、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力が小さくなりすぎることにより十分な広さの洗浄範囲を確保することができないおそれを抑制することができる。また、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力は、中空円錐状吐水510が破砕されない場合の中空円錐状吐水510の中空部分の圧力よりも大きいため、液膜波動が生ずることを抑制することができる。
ここで、液膜波動について、図10に表した比較例を参照しつつ説明する。
図10に表した比較例のノズルは、スロートを有していない。そのため、旋回室423へ流入した洗浄水は、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って旋回し、連通路425を通過して中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水510として吐水される。つまり、本比較例のノズルでは、連通路425の一端が吐水孔426として機能する。
このとき、本比較例の連通路425を通過する洗浄水の流速は、図9に表した具体例のスロート流路431を流れる洗浄水の流速ほどには遅くならない。そのため、本比較例の連通路425を通過する洗浄水の液膜の厚さは、図9に表した具体例のスロート流路431を流れる洗浄水の液膜の厚さよりも薄い。また、本比較例の連通路425を通過する洗浄水の液膜の厚さはより薄いため、その洗浄水の内部には、液膜を横断する方向に渦流が発生しにくい。そのため、本比較例の吐水孔426から吐水された中空円錐状吐水510は、図9に表した具体例よりも破砕されにくい。
そうすると、中空円錐状吐水510は、破砕されることなく液膜のままで拡大し続け、中空円錐状吐水510の吐水径の拡大に伴って液膜の厚さはより薄くなる。これにより、中空円錐状吐水510の液膜は、中空円錐状吐水510の中空部分と、中空円錐状吐水510の外側の部分と、の間の圧力差の影響を受けやすくなる。
そのため、図10に表したように、中空円錐状吐水510の中空部分と、中空円錐状吐水510の外側の部分と、の間の圧力差により、吐水孔426からある程度離間した位置における中空円錐状吐水510では、液膜の状態が保持されつつ波を打つような現象が生ずる。本願明細書においては、このような現象を「液膜波動」と称する。
液膜波動が発生した後に中空円錐状吐水510の液膜が破砕されると、破砕された後の粒化された水流は、波動の影響により不規則な方向に飛散することになり、所望の洗浄エリアの外部にまで飛散しやすくなる。そうすると、その飛散した洗浄水は、便座200に着座した使用者の大腿部などに付着し、使用者は不快感を感ずるおそれがある。
また、液膜波動は、液膜の厚さが薄くなったところで発生し、さらに、波動が発生することで液膜の軌跡がさらに長くなるため、液膜の厚さはより薄くなっている。すなわち、液膜波動が中空円錐状吐水510において発生すると、その中空円錐状吐水510は、図9に表した粒化水流520よりも小さな径を有する粒に破砕される。この破砕された粒の径および質量が小さいため、その小さな粒は空気中を漂い、所望の洗浄エリアの外部にまで飛散しやすくなる。そうすると、その飛散した洗浄水は、便座200に着座した使用者の大腿部などに付着し、使用者は不快感を感ずるおそれがある。
これに対して、本具体例にかかるノズル410では、吐水孔433の近傍の液膜の厚さは、ノズル本体420から吐水されたときの液膜の厚さ、あるいはスロート流路431に流入した直後の液膜の厚さよりも大きい。そのため、吐水孔433から吐水される洗浄水の内部には、液膜を横断する方向に渦流がより発生しやすい。これによれば、中空円錐状吐水510は破砕されやすく、その中空部分に空気が入り込みやすいため、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力がより小さくなることを防止することができる。そのため、中空円錐状吐水510において液膜波動が発生することを抑制することができる。
これによれば、波動の影響によって粒化された水流が不規則な方向に飛散し、洗浄水が所望の洗浄エリアの外部にまで飛散することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることを抑制することができる。また、中空円錐状吐水510がより小さな径を有する粒に破砕されることを抑制することができる。つまり、液膜波動が発生することを防止するため、あるいは液膜波動が発生する前に、スロート430の内部において発生した渦流により強制的に中空円錐状吐水510を粒化するため、粒化水流520の径をより大きくすることができる。そのため、洗浄水が所望の洗浄エリアの外部にまで飛散することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることを抑制することができる。したがって、便座200に座った使用者が、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることで不快感を感ずることを抑制することができる。
また、中空円錐状吐水510において液膜波動が発生することを抑制することができるため、中空円錐状吐水510の中空部分において発生する負圧の程度が大きくなりすぎることを抑制することができる。そのため、中空円錐状吐水510の中空部分(洗浄水500が拡散する領域の内側)に粒化水流520を万遍なく行き渡らせた状態で、便座200に座った使用者の人体局部のより広い範囲に洗浄水を着水させることができる。そのため、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
なお、図11に表した変形例のように、スロート流路の内壁に螺旋状溝部435が形成されている場合には、スロート流路を流れる洗浄水は、その螺旋状溝部435からより大きな抵抗を受ける。より具体的には、スロート流路を流れる洗浄水の旋回成分の速度は維持され、その直進成分の速度は減速される。
また、スロート流路を流れる洗浄水と、螺旋状溝部435と、の接触時間は、螺旋状溝部435が設けられていない場合よりも長い。そのため、本変形例では、スロート流路を流れる洗浄水は、螺旋状溝部435が設けられていない場合よりも長い時間に亘って螺旋状溝部435から摩擦力を受ける。
そのため、本変形例のスロート流路を流れる洗浄水の液膜の厚さは、図9に表した具体例のスロート流路431を流れる洗浄水の液膜の厚さよりも厚い。つまり、スロート流路の内壁に螺旋状溝部435を形成することにより、吐水孔433の近傍の液膜の厚さをより厚くすることができる。これにより、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、吐水孔433からある程度離間した位置においてより確実に破砕される。
図12は、本実施形態のさらに他の具体例にかかるノズルを表す断面模式図である。
本具体例にかかるノズル410は、スロートを有しておらず、ノズル本体420を有する。また、旋回室423へ流入した洗浄水は、旋回室423において旋回し、連通路425を通過して中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水510として吐水される。つまり、本具体例のノズル410では、連通路425の一端が吐水孔426として機能する。
また、本具体例にかかるノズル410を備える衛生洗浄装置100は、ノズル410の上流側において、吐水孔426から吐水された中空円錐状吐水510を破砕する流体噴射装置460を備える。流体噴射装置460は、例えば、液流や気流などを生成可能なポンプなどである。そして、ノズル本体420の内部には、流体噴射装置460から供給された液流や気流などが通過する噴射流路461が設けられている。噴射流路461の一端は、流体噴射装置460に接続され、その他端は、流体噴射装置460から供給された液流や気流などを噴射する噴射孔463として機能する。その他の構造は、図9に関して前述した具体例にかかるノズル410の構造と同様である。
本具体例にかかるノズル410は、図12に表したように、流体噴射装置460から噴射流路461を介して供給された液流や気流を噴射孔463から噴射し、吐水孔426から吐水された中空円錐状吐水510に衝突させることができる。これによれば、吐水孔426から吐水された中空円錐状吐水510は、噴射孔463から噴射された液流や気流により破砕され、粒化水流520へ遷移する。そして、本具体例にかかるノズル410は、中空円錐状吐水510の中空部分(洗浄水500が拡散する領域の内側)に粒化水流520を万遍なく行き渡らせることができる。
本具体例によれば、液流や気流を中空円錐状吐水510に衝突させることにより、その中空円錐状吐水510を破砕するため、破砕する位置をより確実に制御することができる。これにより、所望の洗浄範囲に洗浄水をより精度良く着水させることができる。また、その他の効果についても、図9〜図11に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図13は、本実施形態のさらに他の具体例にかかるノズルを表す断面模式図である。
また、図14は、本具体例の圧力変調装置の内部構造を例示する断面模式図である。
また、図15は、本具体例の圧力変調装置の他の内部構造を例示する断面模式図である。
本具体例にかかるノズル410は、図12に関して前述した具体例のノズル410と同様に、スロートを有しておらず、ノズル本体420を有する。また、旋回室423へ流入した洗浄水は、旋回室423において旋回し、連通路425を通過して中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水510として吐水される。つまり、本具体例のノズル410では、連通路425の一端が吐水孔426として機能する。
また、本具体例にかかるノズル410を備える衛生洗浄装置100は、ノズル本体流路421の途中において圧力変調装置470を備える。この圧力変調装置470は、ノズル本体流路421内の水の流れに脈動を与え、吐水孔426から吐水される洗浄水に脈動を与えることができる。その他の構造は、図9に関して前述した具体例にかかるノズル410の構造と同様である。
ここで、圧力変調装置470の内部構造の一例について、図14に例示した内部構造を参照しつつ説明する。
図14に表した圧力変調装置470は、前述したように、ノズル本体流路421内の水の流れに脈動を与えることができる。ここで、本願明細書において「脈動」とは、圧力変調装置470により生ずる圧力の変動のことである。そのため、圧力変調装置470は、ノズル本体流路421内の水の圧力を変動させる装置である。
圧力変調装置470は、図14に表したように、ノズル本体流路421に接続されるシリンダ471と、シリンダ471の内部に進退自在に設けられたプランジャ472と、プランジャ472の内部に設けられた逆止弁473と、励磁電圧を制御することでプランジャ472を進退させる脈動発生コイル474と、を有する。
そして、プランジャ472の位置が、ノズル410の側(下流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも下流側の水の圧力が増加し、ノズル410とは反対の側(上流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも下流側の水の圧力が減少するように逆止弁が配設されている。言い換えれば、プランジャ472の位置が、ノズル410の側(下流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも上流側の水の圧力は減少し、ノズル410とは反対の側(上流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも上流側の水の圧力は増加する。
そして、脈動発生コイル474の励磁を制御することにより、プランジャ472を上流側・下流側に進退させる。すなわち、ノズル本体流路421内の水に脈動を付加する場合(ノズル本体流路421内の水の圧力を変動させる場合)には、脈動発生コイル474に流す励磁電圧を制御することにより、プランジャ472をシリンダ471の軸方向(上流方向・下流方向)に進退させる。
この場合、プランジャ472は、脈動発生コイル474の励磁により図示する原位置(プランジャ原位置)から下流側475に移動する。そして、脈動発生コイル474の励磁が消えると、復帰スプリング476の付勢力によって、原位置に復帰する。この際、緩衝スプリング477によってプランジャ472の復帰の動作が緩衝される。プランジャ472は、その内部にダックピル式の逆止弁473を有し、上流側への逆流を防止している。
したがって、プランジャ472は、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、シリンダ471内の水を加圧して下流側のノズル本体流路421に押し流せるようになっている。言い換えれば、プランジャ472は、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、上流側のノズル本体流路421内の水を減圧してシリンダ471内に吸引することができる。この際、プランジャ原位置と、下流側に移動した位置とは常に一定であることから、プランジャ472が動作する際に下流側のノズル本体流路421に送られる洗浄水の量は一定となる。
その後、原位置に復帰する際には、逆止弁473を経てシリンダ471内に洗浄水が流れ込む。そのため、次回のプランジャ472の下流側移動の際には、改めて、一定量の洗浄水が下流側のノズル本体流路421に送られることになる。このようにして、図14に表した圧力変調装置470は、ノズル本体流路421内の水の流れに脈動を与えることができる。
次に、圧力変調装置470の内部構造の他の一例について、図15に例示した内部構造を参照しつつ説明する。
図15に表した圧力変調装置470は、第一の圧力変調装置91と第二の圧力変調装置92とからなる2連構成とされている。第一の圧力変調装置91と第二の圧力変調装置92には、それぞれ円柱状の空間を有するシリンダ910a、920aが設けられている。シリンダ910a、920a内には、ピストン910b、920bが設けられている。ピストン910b、920bには、Oリング910c、920cが装着されている。ピストン910b、920bとシリンダ910a、920aとで画されたそれぞれの空間が加圧室910d、920dとなる。
加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eがノズル本体流路421から分岐されて洗浄水が流入するようになっている。そして、ノズル本体流路421から分岐された図示しない管路が洗浄水入り口910e、920eに接続され、ノズル本体流路421から加圧室910d、920dに洗浄水を流入させることができるようになっている。
その際、アンブレラパッキン910f、920fによって、逆流しないようになっている。すなわち、洗浄水入り口910e、920eが加圧室910d、920dに開口する部分にはアンブレラパッキン910f、920fが設けられ、加圧室910d、920d内に流入した洗浄水がノズル本体流路421の上流側へ逆流しないようになっている。
また、洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられ、途中で合流して、加圧された洗浄水が出水する。すなわち、加圧室910d、920dの天井部分には洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられている。洗浄水出口910g、920gには配管がそれぞれ接続されており、接続されたそれぞれの配管が分岐部を介して下流側のノズル本体流路421と接続されている。そのため、加圧室910d、920dから流出した洗浄水は、途中で合流して、加圧された洗浄水としてノズル本体流路421の下流側に出水する。
モータ911の回転軸にはギア912が取り付けられ、ギア912とギア913とがかみ合っている。また、ギア913には、第一の圧力変調装置91のピストン910bを動作させるクランクシャフト914と、第二の圧力変調装置92のピストン920bを動作させるクランクシャフト924とが、異なる位置に取り付けられている。また、クランクシャフト914、924は、ピストン保持部915、925を介してピストン910b、920bに取り付けられる。なお、ギア913に取り付けられるクランクシャフトの位置は、ピストン910bとピストン920bのストローク量が異なるように、取り付け半径が異なっており、かつ、90°位相の異なる位置に取り付けられている。また、第二の圧力変調装置92のピストン920bのストロークが、第一の圧力変調装置91のピストン910bのストロークよりも短くかつ、位相が90°ずれて動作するように設定されている。このように、ギア913とクランクシャフト914、924の取付位置により、あらかじめピストン910b、920bの動作が設定されているので、モータの通電スイッチをON/OFFするだけの簡単な制御で圧力変調装置470に所定の動作をさせることができる。
モータ911に通電されると、回転軸が回転するので、ギア912、913、クランクシャフト914、924、ピストン保持部915、925を介して、ピストン910b、920bが上下に往復動する。加圧室内が洗浄水で満たされている際に、ピストン910b(920b)が、下死点(原位置)から上死点に移動すると加圧室の容積が縮小するので、洗浄水が加圧されて、ノズル本体流路421の下流側に向けて押し流される。
そして、その後、上死点から下死点(原位置)に復帰する際に、加圧室内の圧力が低下するとともに、アンブレラパッキン910f、920fが開き、洗浄水が加圧室内に流入する。その後、次回のピストン移動の際に、洗浄水が再度加圧され、この工程を連続して行うことで、圧力変動すなわち脈動が発生する。このようにして、図15に表した圧力変調装置470は、ノズル本体流路421内の水の流れに脈動を与えることができる。
本具体例によれば、圧力変調装置470は、吐水孔426から吐水される洗浄水に脈動を与えることができるため、吐水孔426から吐水された中空円錐状吐水510は、その脈動により液膜を横断する方向に亀裂が生ずる。その結果、中空円錐状吐水510は、より大きな径を有する粒化水流520へ遷移する。そして、本具体例にかかるノズル410は、中空円錐状吐水510の中空部分(洗浄水500が拡散する領域の内側)に粒化水流520を万遍なく行き渡らせることができる。
これによれば、吐水孔426から吐水された中空円錐状吐水510は、圧力変調装置470により与えられた脈動により液膜を横断する方向に破砕されるため、粒化水流520の径は、より大きい。そのため、着水部における着水圧力および着水水量をより高めることができる。これにより、例えば女性の生理時における経血汚れなどを、より短時間の間に落としたり浮かせたりすることができ、また、より短時間の間に洗い流すことができる。また、その他の効果についても、図9〜図11に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
図16は、本実施形態の変形例にかかるノズルを表す斜視模式図である。
また、図17は、本変形例にかかるノズルを上方から眺めた上面模式図である。
また、図18は、図17に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
なお、図16に表した斜視模式図では、説明の便宜上、内部構造についても適宜実線で表している。
本変形例にかかるノズル410は、ノズル本体420を有する。ノズル本体420の内部には、旋回流流路427と、直進流流路428と、が設けられている。旋回流流路427は、図17に表したように、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。一方、直進流流路428は、図17に表したように、旋回室423の軸心へ向かうように大径部内周壁423eに接続されている。その他の構造は、図9に関して前述した具体例にかかるノズル410の構造と同様である。
旋回流流路427は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、旋回流流路427を通過して旋回室423へ流入した洗浄水は、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って旋回する。これは、図9に関して前述した如くである。一方、直進流流路428は、旋回室423の軸心へ向かうように大径部内周壁423eに接続されているため、直進流流路428を通過して旋回室423へ流入した洗浄水は、旋回することなく連通路425の一端、すなわち吐水孔426から吐水される。
そのため、本変形例によれば、旋回流流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させると、より大きな旋回力を有する中空円錐状吐水510を吐水孔426から吐水することができる。また、本変形例にかかるノズル410が、図9に表したスロート430を有する場合には、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、粒化水流520へ遷移する。そのため、この場合には、より広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
これに対して、旋回流流路427のみではなく、旋回流流路427と直進流流路428とを介して旋回室423へ洗浄水を流入させると、旋回室423において生ずる旋回流の旋回力は、旋回流流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合よりも低減する。これは、旋回流流路427から旋回室423へ流入した洗浄水による旋回流と、直進流流路428から旋回室423へ流入した洗浄水による直進流と、が干渉するためである。そのため、この場合には、旋回流流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合よりも小さな旋回力を有する中空円錐状吐水510が吐水孔426から吐水される。
これによれば、旋回流流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合よりも狭い範囲を洗浄することができる。つまり、使用者は、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
したがって、本変形例によれば、使用者は、旋回流流路427を通過する洗浄水の流量と、直進流流路428を通過する洗浄水の流量と、の比率を適宜設定変更することにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄する洗浄モードと、より狭い範囲を重点的に洗浄する洗浄モードと、を好みに応じて切り替えることができる。
なお、本変形例にかかるノズル410が、スロート430を有する場合には、図9に表したように、ノズル本体420とスロート430との間に隙間を設けることがより好ましい。これによれば、その隙間を介してスロート流路431に空気を取り込むことにより、より狭い範囲を重点的に洗浄する洗浄モードの吐水形態をより容易に形成することができる。
図19は、本実施形態のさらに他の具体例にかかるノズルを表す断面模式図である。
また、図20は、本変形例にかかるノズルを上方から眺めた上面模式図である。
また、図21は、図20に表した切断面B−Bにおける端面模式図である。
なお、図19に表した斜視模式図では、説明の便宜上、内部構造についても適宜実線で表している。
本具体例のノズル410は、図19に表したように、ノズル本体420を有する。ノズル本体420の内部には、図示しない水源から供給された洗浄水が通過する第1のノズル本体流路421aおよび第2のノズル本体流路421bと、旋回流を生成可能な第1の旋回室423aおよび第2の旋回室423bと、が設けられている。第1のノズル本体流路421aおよび第2のノズル本体流路421bは、図20に表したように、第1の旋回室423aおよび第2の旋回室423bに対して接線方向にそれぞれ接続されている。そして、第1のノズル本体流路421aおよび第1の旋回室423aは、第2のノズル本体流路421bおよび第2の旋回室423bの上方に設けられている。
第1の旋回室423aの中央部には、より安定した旋回力の旋回流を生成する突設部424aが設けられている。また、第1の旋回室423aの上方には、第1の旋回室423aに接続された第1の連通路425aが設けられている。そして、その第1の連通路425aの一端は、第1の連通路425aを通過した洗浄水をノズル本体420の外部へ吐水する第1の吐水孔426aとして機能する。一方、第2の旋回室423bの上方には、第2の連通路425bが設けられている。図21に表したように、第2の連通路425bの一端は、第2の旋回室423bに接続され、その他端は、突設部424aを貫通して設けられた第2の吐水孔426bとして機能する。
第1のノズル本体流路421aは、第1の旋回室423aに対して接線方向に接続されているため、第1のノズル本体流路421aを通過して第1の旋回室423aへ流入した洗浄水は、第1の旋回室423aにおいて旋回する。そして、第1の旋回室423aにおいて旋回した洗浄水は、旋回力を維持しつつ第1の連通路425aを通過し、第1の吐水孔426aから吐水される。このとき、第1の吐水孔426aから吐水された洗浄水は、旋回力を維持しているため、中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水510として吐水される。
一方、第2のノズル本体流路421bは、第2の旋回室423bに対して接線方向に接続されているため、第2のノズル本体流路421bを通過して第2の旋回室423bへ流入した洗浄水は、第2の旋回室423bにおいて旋回する。そして、第2の旋回室423bにおいて旋回した洗浄水は、旋回力を維持しつつ第2の連通路425bを通過し、第2の吐水孔426bから吐水される。
このとき、図19および図21に表したように、第2の連通路425bの長さは、第1の連通路425aの長さよりも長い。そのため、第2の連通路425bを通過する洗浄水が受ける抵抗は、第1の連通路425aを通過する洗浄水が受ける抵抗よりも大きい。したがって、第2の吐水孔426bから吐水された洗浄水の旋回力は、第1の吐水孔426aから吐水された中空円錐状吐水510の旋回力よりも弱い。
そのため、第2の吐水孔426bから吐水された洗浄水は、中空円錐状吐水510として吐水され、その吐水径は、第1の吐水孔426aから吐水された中空円錐状吐水510の吐水径よりも小さい。あるいは、第2の吐水孔426bから吐水された洗浄水は、旋回力を十分に低減された状態の吐水として、すなわち直進流として吐水される。これにより、いずれの場合でも、第2の吐水孔426bから吐水された洗浄水は、第1の吐水孔426aから吐水された中空円錐状吐水510の中空部分に吐水される。
そうすると、第2の吐水孔426bから吐水された洗浄水の旋回力は、第1の吐水孔426aから吐水された中空円錐状吐水510の旋回力よりも弱いため、第2の吐水孔426bから吐水された洗浄水は、人体局部に着水する前に破砕され、粒化水流520へ遷移する。つまり、第1の吐水孔426aから吐水された中空円錐状吐水510は、第2の吐水孔426bから吐水された洗浄水が破砕されて遷移した粒化水流520により中空円錐状吐水510の中空部分を充填され、人体局部に着水する。
あるいは、第2の吐水孔426bから吐水された洗浄水は、粒化水流520として吐水される。そして、第2の吐水孔426bから吐水された粒化水流520は、第1の吐水孔426aから吐水された中空円錐状吐水510の中空部分(洗浄水500が拡散する領域の内側)に行き渡る。つまり、第1の吐水孔426aから吐水された中空円錐状吐水510は、第2の吐水孔426bから吐水された粒化水流520により中空円錐状吐水510の中空部分を充填され、人体局部に着水する。
本具体例によれば、洗浄範囲を規定するための吐水とは別に、すなわち第1の吐水孔426aから吐水された中空円錐状吐水510とは別に、その中空円錐状吐水510の中空部分(洗浄水500が拡散する領域の内側)に粒化水流520を行き渡らせるための吐水を行う。そのため、洗浄エリア内における着水圧力および着水水量が均一となるように、より容易に制御することができる。また、例えば図9に表したスロート430を設ける必要がないため、ノズル410の構造を簡略化することができる。また、その他の効果についても、図9〜図11に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ノズル410やノズル本体420やスロート430などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやスロート430の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、女性局部を洗浄する場合について説明したが、「おしり」を洗浄する場合にも適用可能である。特に、下痢の際には、大腿部にまで水を飛び散らすことなく、より広い範囲を一度にさっと洗浄する本実施形態を好適に使用できる。また、痔持ちの人にとっては、肛門に強く着水させずに周辺部に強く着水させる本実施形態、より具体的には、肛門には径の小さな水粒を着水させ、周辺部には径の大きな水粒を着水させる本実施形態によって、より心地よい洗浄を実現できる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。