本発明の第一は、熱硬化シリコーン層(I)、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(I)、目止め層(I)、紙基材、目止め層(II)、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(II)がこの順に積層され、離解時残渣率が0〜1.0%であることを特徴とする、プリプレグ用工程剥離紙である。また、紙基材に目止め層を形成することで熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層との接着性を付与し、かつ熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層の積層によって寸法安定性および剛性を付与し、更に熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂の酸価を150〜400に調整することで極めて低値の離解時残渣率を確保することができる。なお、本発明における離解時残渣率は、実施例に記載する方法で評価した値とする。本発明の好適な態様の一例を示す図1を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
(1)プリプレグ用工程剥離紙
本発明のプリプレグ用工程剥離紙は、図1に示すように、熱硬化シリコーン層(I)(140)、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(I)(130)、目止め層(I)(120)、紙基材(110)、目止め層(II)(120')、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(II)(130')がこの順に積層されたものである。熱硬化シリコーン層(I)(140)にエポキシ樹脂層を積層することで、寸法安定性を確保することができ、エポキシ樹脂積層剥離紙として好適に使用することができる。
一方、図2に示すように、前記熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(II)(130')に次いで熱硬化シリコーン層(II)(140')が積層されていてもよい。プリプレグ用工程剥離紙は、片面にエポキシ樹脂が積層されてエポキシ樹脂積層剥離紙となり、長尺のエポキシ樹脂積層剥離紙を保存する際にロール状に巻き取られる。したがって、巻取り後のエポキシ樹脂積層剥離紙の円滑な引き出しを確保するため、紙基材の最外層の両面に、それぞれ熱硬化シリコーン層(I)(140)、熱硬化シリコーン層(II)(140')が積層された両面剥離紙であることが好ましい。この際、熱硬化シリコーン層(I)と熱硬化シリコーン層(II)との剥離強度は、異なっていることが好ましい。剥離強度の低い面にエポキシ樹脂層を積層させロール状に巻き取ると、剥離紙とエポキシ樹脂層との密着性を確保しつつ容易にエポキシ樹脂積層剥離紙をロールからを引き出すことができる。
本発明では、紙基材の双方に積層される目止め層(I)(120)、目止め層(II)(120')は、熱可塑性樹脂層または造膜性を有する樹脂と無機顔料との混合物層から構成されることが好ましい。目止め層(120)は、単層に限定されず多層であってもよく、例えば、熱可塑性樹脂層(120A)が、異なる2種以上の熱可塑性樹脂からなる2層以上で構成されていてもよい。また、本発明では、目止め層(I)、目止め層(II)は、同一であっても異なっていてもよい。したがって、紙基材の片面に熱可塑性樹脂層からなる目止め層を形成し、他面に熱可塑性樹脂層または造膜性を有する樹脂と無機顔料との混合物層から構成される目止め層を形成するものであってもよい。
また、本発明のプリプレグ用工程剥離紙を構成する熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(I)(130)、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(II)(130')は、無機顔料を含有するものであってもよい。熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(130,130')も、単層でもよく2層以上の多層であってもよく、例えば、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(130)が、無機顔料の含有量の異なる2層以上の熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層であってもよい。なお、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(I)(130)と熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(II)(130')も、同一であっても異なっていてもよい。
本発明のプリプレグ用工程剥離紙は、離解時残渣率が0〜1.0%、より好ましくは0〜0.5%、特に好ましくは0〜0.3%であることを特徴とする。従来のプリプレグ用工程剥離紙は、寸法安定性を確保するために内添サイズ剤や乾燥紙力剤、湿潤紙力剤などの添加剤を大量に配合して紙基材を調製したため、使用後のプリプレグ用工程剥離紙を紙資源として再利用する際に離解性に劣り、リサイクルが困難であった。しかしながら本発明では、熱硬化シリコーン層(I)、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(I)、目止め層(I)、紙基材、目止め層(II)、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(II)をこの順に積層することで、紙基材の寸法安定性が十分でない場合でも、プリプレグ用工程剥離紙の高い寸法安定性を確保しうることが判明した。このため、紙基材に配合する内添サイズ剤を使用せず、また乾燥紙力剤の配合量を低減した場合でも強度や寸法安定性に優れるプリプレグ用工程剥離紙を調製できる。本発明において、「離解時残渣率」とは、後記する実施例記載の方法による評価とする。
(2)紙基材
本発明で使用する紙基材は、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(130)および熱硬化シリコーン層(140)を積層する工程に耐え、炭素繊維をエポキシ樹脂に含浸させるための加熱温度に耐えるものであれば、広く使用することができる。例えば、クラフト紙、上質紙、片艶クラフト紙、純白ロール紙、グラシン紙、カップ原紙などの非塗工紙の他、天然パルプを用いない合成紙なども用いることができる。前記したように、紙基材の上に、目止め層と熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層を積層することで脱水や吸水を防止して寸法安定性を確保できるため、従来からプリプレグ用工程剥離紙の紙基材として使用されない上記紙基材を使用して寸法安定性を確保でき、かつ内添サイズ剤の含有量を上記に限定することで離解性を確保し、上記紙基材を使用することで寸法安定性および離解性に優れるプリプレグ用工程剥離紙を製造することができる。
なお、紙とは、植物繊維その他の繊維を水の中でバラバラにほぐして漉き上げ薄く平らにしたものであり、JIS(日本工業規格)には、「紙とは植物繊維その他の繊維をこう着させて製造したもの」と定義され、繊維を取り出してこう着させものであることが要求され、古紙のリサイクルでも同様である。
紙基材には、パルプに調合する内添サイズ剤と紙の表面に塗布する外添サイズ剤とを含むものであってもよい。このような内添サイズ剤としては、中性ロジンやアルキルケテンダイマー(alkyl ketene dymer)、アルケニル無水コハク酸(alkenyl succinic anhydride)などがある。これらは、溶液、エマルジョンなどとして添加することができる。内添サイズ剤の含有量は0〜0.4質量%と低量に制限することができる。従来のプリプレグ用工程剥離紙に使用される紙基材には、寸法安定性を確保するために多量の内添サイズ剤が配合されているが、本発明のプリプレグ用工程剥離紙は、熱硬化シリコーン層(I)、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(I)、目止め層(I)、紙基材、目止め層(II)、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(II)をこの順に積層することで寸法安定性を確保することができるため、紙基材自体の寸法安定性を高度に維持する必要はなく、このため内添サイズ剤の配合量を低減し、これによって紙基材としてのリサイクル時の離解性を向上させることができるからである。
また、本発明で使用する紙基材は、乾燥紙力剤の含有量を0〜0.5質量%、好ましくは0〜0.3質量%、特に好ましくは0.1〜0.3質量%に制限することができる。内添サイズ剤と同様に、紙基材に配合する乾燥紙力剤の配合量を低減してもプリプレグ用工程剥離紙の寸法安定性を確保できるからである。なお、このような乾燥紙力剤としては、ポリアクリルアミド系化合物があり、変性ポリアクリルアミド、逆カチオンポリアクリルアミド、ノニオン系ポリアクリルアミドなど各種市販の乾燥紙力剤を使用することができる。
本発明の紙基材には、上記内添サイズ剤や乾燥紙力剤のほかに、サイズ剤の定着剤、填料、紙力増強剤などを含むものであってもよい。このような配合剤として、カチオン性のポリアクリルアミドやカチオン性デンプン、酸化デンプン、カチオニックスターチ、ポリアクリルアミド等があり、例えばカチオンデンプンの場合の含有量は、紙基材に対して0.4〜0.6質量である。また、填料は、繊維間の隙間を埋め、不透明度・白色度・平滑度・インク吸収性を向上させるものであり、カオリンなどのクレー、タルク(滑石)、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ホワイトカーボンなどがある。填料の含有量は、紙基材の5〜25質量%である。
本発明において、紙基材として使用する紙としては、秤量50〜300g/m2、好ましくは100〜200g/m2である。この範囲であれば、目止め層、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層および熱硬化シリコーン層を積層することができ、かつ再使用に適する強度を有する剥離紙を製造することができる。また、紙は、中性紙であることが好ましい。硫酸バンドなどを含む酸性紙は、繰り返し使用されると熱劣化が発生し、このため早期に再使用が困難となる場合がある。中性紙であれば、このような熱劣化を防止することができる。
また、硫酸バンドを使用しない中性紙であることが最も好ましいが、硫酸バンドを使用してpH6〜9の中性領域で抄紙することも可能である。その他、必要に応じて上記の他、製紙用各種填料、歩留向上剤、結合剤、分散剤、凝集剤、可塑剤、接着剤を適宜含有していてもよい。
更に、本発明で使用する紙基材としては、例えば一般的な、クレイコート紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙、樹脂コート紙、加工原紙、剥離原紙、両面コート剥離原紙などの、予め後記する目止め層が形成された市販品を使用することもできる。
なお、本発明のプリプレグ用工程剥離紙を構成する紙基材は、紙基材自体の離解時残渣率が0〜1.0%であることが好ましい。紙基材の離解時残渣率が上記範囲であれば、この紙基材を使用して製造したプリプレグ用工程剥離紙の離解時残渣率を0〜1.0%に調整することができ、プリプレグ用工程剥離紙の紙資源としてのリサイクルを可能とすることができる。なお、本発明において、紙基材の離解時残渣率とは、後記する実施例の離解時残渣率の評価方法において、プリプレグ用工程剥離紙に代えて紙基材を試料として算出したものとする。
(3)目止め層
目止め層は、紙基材と熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層との間に形成される層であり、単層に限らず2層以上の多層であってもよく、耐熱性、平滑性、耐溶剤性、目止め効果を確保するために配設される。本発明では、目止め層は、熱可塑性樹脂層または造膜性を有する樹脂と無機顔料との混合物層から構成されることが好ましい。更に、熱可塑性樹脂は、2種以上の熱可塑性樹脂を使用して、2層以上の多層としてもよい。
(i)熱可塑性樹脂層
使用しうる熱可塑性樹脂としては、ラテックス、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、その他、シリコーン系樹脂、アミノアルキッドを含むアルキッド系樹脂などが例示される。この中でも、ラテックス、ポリプロピレン系樹脂やポリメチルペンテン系樹脂は、耐熱性、加工性に優れる点で好ましい。
ラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ラテックスなどを好適に使用することができる。柔軟性、接着性に優れるからである。
また、本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、プリプレグ用工程剥離紙としての耐熱性を損なわない限り、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンなどの単独重合体などに限らず、エチレンやプロピレンなどのオレフィン系単量体を主体とし、これに例えば、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−ポリメチルペンテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。また、ポリメチルペンテン系樹脂は、4−メチル−1−ペンテンを主成分とするポリマーであり、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体の他、4−メチル−1−ペンテンと他のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜20のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
前記したように、熱可塑性樹脂層は、単層に限定されない。例えば、ポリプロピレン系樹脂およびポリメチルペンテン系樹脂から選ばれる第一ポリオレフィン系樹脂層(120A1)と、前記第一ポリオレフィン系樹脂層を構成する樹脂とポリエチレン系樹脂との組成物からなる第二ポリオレフィン系樹脂層(120A2)とからなる2層としてもよい。この際、第二ポリオレフィン系樹脂層において、ポリエチレン系樹脂の配合量は、5〜80質量%、より好ましくは10〜50質量%である。ポリエチレンはポリプロピレン系樹脂やポリメチルペンテン系樹脂などよりも融点が低いが、上記範囲であれば、第一ポリオレフィン系樹脂層(120A1)と紙基材(110)とを好適に接着することができ、かつエポキシ樹脂含浸時の耐熱性を確保することができるからである。なお、使用するポリエチレン系樹脂としては特に制限はなく、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれでもよい。ただし、密度によって融点が相違するため、好ましくは融点が90〜130℃、より好ましくは110〜120℃のものである。
上記熱可塑性樹脂層は、前記ポリオレフィン系樹脂または組成物樹脂を、ロールコート、グラビアコート、押出しコート、ナイフコート、ミヤバーコート、ディップコートなどで紙基材に積層することで調製することができる。なお、熱可塑性樹脂層が多層である場合には、共押出しなどに紙基材に積層してもよい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、3〜40μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。3μmより薄いと紙基材との接着性が低下する場合があり、一方、40μmを超えると剥離紙のカールが大きくなる場合がある。
本発明では、目止め層に表面処理がなされていてもよい。このような表面処理によって熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層との密着性を向上させることができる。このような表面処理としては、フレーム処理、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。また、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、接着剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理することもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。また、プラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、上記のほかに、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。すなわち、後記する物理的気相成長法または化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。更に、本発明では、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
(ii)無機顔料
本発明では、目止め層として無機顔料や無機顔料と他の成分との混合物を積層することができる。このような混合物層としては、無機顔料100質量部に対して、前記造膜性を有する樹脂を5〜30質量部含有したものを好適に使用することができる。造膜性を有する樹脂としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、SBRなどの合成ラテックス、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、酢ビ−エチレン系共重合体、ポリエチレン、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、エポキシ含有樹脂などを好適に使用することができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
無機顔料としては、タルク、カオリンクレイ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などがあり、その他、分散剤や滑剤を添加したものであってもよい。混合物層としては、無機顔料100質量部に対して、前記造膜性を有する樹脂を5〜30質量部を配合したものを好適に使用することができる。造膜性を有する樹脂が30質量部を上回ると目止め効果が低減する場合があり、一方、5質量部を下回ると平滑性を阻害する場合がある。この目止め層は、好ましくは0.5〜20g/m2で十分である。目止め材料の塗工は、前記した熱可塑性樹脂層と同様の方法で行うことができる。目止め材料のコーティングは、固形分100質量部に対して通常10〜1000質量部の溶剤で希釈して塗工される。溶剤の希釈により塗工に適正な粘度、例えば25℃において10〜3000mPa・秒の粘度を付与することができる。
なお、紙基材に目止め層を形成した後、カレンダー処理などを行って平滑化を行ってもよい。
(4)熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層
本発明で使用する熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層を構成する樹脂は、目止め層およびシリコーン樹脂層との接着性に優れ、熱硬化し、かつ熱硬化後にアルカリ加水分解しうる(メタ)アクリル系樹脂である。
本発明で使用する熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂は、酸価が150〜400mgKOH/g、より好ましくは150〜300mgKOH/g、特に好ましくは150〜250mgKOH/gである。上記範囲であれば使用後に古紙としてアルカリ水溶液で容易に離解することができる。
本発明で使用する熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂としては、
(i)(メタ)アクリル酸エステルモノマー20〜90質量部、
(ii)水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー1〜80質量部、
(iii)(メタ)アクリル酸モノマー0〜50質量部、
(iii)エポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマー0〜60質量部、
(iv)不飽和ウレタンモノマー0〜30質量部、
(v)硬化剤0.1〜30質量部からなる。
上記(i)〜(iv)のモノマーを共重合してポリマーを得て、これに(v)の硬化剤を配合して熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂としたものを使用することができる。また、予め上記(i)〜(iv)のいずれかのモノマーと(v)の硬化剤とを反応させ、ついで他の(i)〜(iv)のモノマーと反応させてなる熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂を使用することもできる。
本発明で使用する熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分とし、酸価を150〜400mgKOH/gに限定することでアルカリ水溶液に対する離解率を向上させることができる。(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、アルカリ水溶液によってエステル結合が加水分解するため水溶性が向上し、残渣量を低減することができる。同様に、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーにメラミンなどの硬化剤を反応させてなる熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂や、不飽和ウレタンモノマーを含む熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂、含まれるアミド結合やウレタン結合がアルカリ水溶液で加水分解するためエステル結合と同様に、残渣量を低減することができる。更に、(メタ)アクリル酸を重合させることでフリーのカルボキシル基によって、剥離層を構成するシリコーン樹脂層との接着性を確保することができる。
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルアクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチル−2'−(アクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチル−2'−(メタクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−{2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、2−{2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルアクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチル−2'−(アクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチル−2'−(メタクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−{2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、2−{2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどがある。これらの中でも、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレートなどを好適に使用することができる。熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量は、20〜90質量部、好ましくは30〜90質量部、より好ましくは40〜90質量部である。
また、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、またはグリシジル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸付加物、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなど各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、上記の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とε−カプロラクトンとの開環反応物などが挙げられる。これらにエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドを付加したものを用いても良い。またこれらの水酸基含有アクリレートは単独あるいは2種類以上混合して用いることもできる。熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂を構成する水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの配合量は、1〜80質量部、好ましくは10〜80質量部、より好ましくは20〜80質量部である。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレートなどがある。熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂に含まれるエポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの配合量は、0〜50質量部、好ましくは10〜50質量部、より好ましくは20〜50質量部である。
不飽和ウレタンモノマーしては、ジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートとの化合物がある。
ジイソシアネート化合物としては、例えば脂肪族、脂環族、芳香脂肪族、芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネー卜化合物としては、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネー卜、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネート化合物としては、例えば1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート、もしくはその混合物、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼンもしくはその混合物等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えばm−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'ジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば脂肪族、脂環族、芳香脂肪族、芳香族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えばリジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えばトリフェニルメタン−4,4',4'−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、4,4−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネート等が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物は単独あるいは2種類以上混合して用いることもできる。また、こうしたイソシアネート化合物の1種類以上からの変性形態であるビュレット体、イソシアヌレート体、各種ポリヒドロキシ化合物とのウレタン化反応によって得られるアダクト体、その他アロファネート体、オキサジアジントリオン体、ウレチジオン体もイソシアネート化合物として使用できる。
また、上記ジイソシアネート化合物と反応させる水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、前記した水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーを好適に使用することができる。前記ジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させることで、ウレタン結合と二重結合とを有する不飽和ウレタンモノマーを得ることができる。
なお、ジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとをウレタン化反応させる際に、上記不飽和ウレタンモノマーとしての特性を阻害しない範囲で、各種ポリヒドロキシル基含有化合物を併用してもよい。ポリヒドロキシル化合物は、イソシアネート化合物過剰の条件下で予めイソシアネート化合物と反応させ、イソシアネー卜末端のプレポリマーを合成してから、ヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させても一段で反応させても良い。
このようなポリヒドロキシル化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジクロロネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリヒドロキシル化合物としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセロール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジベンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、2,2,6,6−テトラメチロールシクロヘキサノール−1、トリス2ヒドロキシエチルイソシアヌレート、マンニット、ソルビトール、イノシトール、グルコース類などが挙げられる。本発明に用いられる2官能以上のポリオール化合物としては、ジペンタエリスリトールが、特に好ましく用いられる。
また、ポリヒドロキシル化合物として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等も挙げられ、これらの単独又は2種以上を上記ポリオールに併用することができる。
不飽和ウレタン化合物は、イソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基とヒドロキシル基を含む化合物をウレタン化反応させることによって得ることができる。その際ヒドロキシル基の化学当量に対してイソシアネート化合物のイソシアネート基化学当量が0.9〜1.1、好ましくは1.0〜1.05の比率で反応させることが必要である。このウレタン化反応は、無溶剤あるいはイソシアネート基、ヒドロキシル基に不活性な溶剤中で行われる。かかる不活性な溶剤としては酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
このウレタン化反応は0〜120℃の温度範囲で行うことができる。0℃未満の場合にはウレタン化反応が進まなかったり、副生成物の比率が増えたりするおそれがある。120℃を超える場合には、官能基の重合が始まり目的とする組成物が得られないおそれがある。好ましくは、ウレタン化反応は30〜90℃の温度範囲で行う。これにより、本樹脂組成物を高効率で合成することができる。
ウレタン化反応が反応原料の性質により十分進まない場合には反応を促進するための触媒を使用しても良い。ウレタン化反応触媒の一部を挙げると、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オクテート、ジブチル錫ジメトキシド等の有機錫化合物、またはトリエチルアミン、ジエタノールアミン、ジメチルブチルエタノールアミン等のアミン化合物が適切である。その他にはチタン化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物等がある。
これらウレタン化反応促進触媒は反応原料に対して0.01〜2.5質量%の範囲、好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲で、反応原料に応じて適宜調整すると良い。反応原料のウレタン化反応中の熱による官能基の重合を防止するために重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤としてはハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジ−第3ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる。これら重合禁止剤は反応原料に対して0.0001〜1.0質量%、好ましくは0.001〜0.1質量%の範囲で、反応原料に応じて適宜調整すると良い。熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂を構成する不飽和ウレタンモノマーの配合量は、0〜30質量部、好ましくは5〜30質量部、より好ましくは5〜10質量部である。
硬化剤としては、S−トリアジン化合物、例えばメラミン、エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−トリル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジンおよびそれらの類似品がある。グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、3,9−ビス〔2−(3,5ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル〕2,4,8,10テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンなどのグアナミン類が挙げられる。
また、加熱により含まれるカルボキシル基と反応し、3次元構造を形成する硬化剤としては、ブロックイソシアネート化合物が挙げられる。ブロックイソシアネート化合物としては、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。ブロック化されたポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジシソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられ、耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。更に、エポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを配合する場合には、ロジンを好適に使用することができる。ロジンの配合量は、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して0.5〜20質量部含まれることが好ましい。この範囲で、十分に硬化し、かつゲル化を防止しうるからである。熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂を構成する硬化剤の配合量は、0.1〜30質量部、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部である。
本発明の熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂は、上記範囲で十分な二重結合当量を確保することができず、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層の硬化後の耐溶剤性、耐擦過性を確保することができ、かつ未硬化膜のタック感がなく賦型性に優れる。特に、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーを共重合させることで酸化を150〜400mgKOH/gに制御でき、これによって熱硬化シリコーン層との接着性を確保することができる。
反応は、上記モノマーを開始剤の存在下で共重合して得られる。開始剤としては特に制限されるものではないが、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物;過酸化水素;ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチル−ジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのパーオキサイド;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、塩素酸ソーダ等の過酸化物、あるいはこれら過酸化物と還元剤との組合せによるレドツクス系開始剤等一般的な開始剤、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系を重合方法に合わせて適宜採択し得る。上記重合開始剤の使用量は、その種類や重合条件で異なるが、上記単量体100質量部に対して通常、0.1〜10質量部である。
重合温度は、使用するモノマーによって適宜選択することができ、重合開始剤の種類によるが、通常40〜180℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜130℃である。また、反応圧は、大気圧でもよく、加圧条件でもよく、通常0.15〜0.5MPである。なお、重合時間は、3〜15時間である。
熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂は、上記モノマーや硬化剤を適宜組み合わせて使用し、溶液重合により重合することができる。溶液重合に使用しうる溶媒としては、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素化合物;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族炭化水素化合物;テトラヒドロフラン、ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル化合物などの有機溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル等の公知の溶剤が使用できる。中でも、メチルエチルケトン、メタノール、トルエン、エチルベンゼン、酢酸ブチル等を用いることが好ましい。このような溶媒は1種を用いても2種以上を併用してもよい。
反応溶媒中の単量体濃度は10〜80質量%が好ましい。単量体濃度が10質量%より小さいと十分な反応速度が得られないことがあり、80質量%より高いと反応中にゲル化物が生じる恐れがある。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを配合する場合、十分な反応速度を得るために、本反応は触媒を用いて行うのが好ましい。触媒としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどのスルフィド類などを用いることができるが、反応速度の面からホスフィン類が好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。触媒量は、エポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーに対して、通常、0.1〜10質量%である。触媒量がエポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーに対して0.1質量%より少ない場合には十分な反応速度が得られないことがあり、10質量%より多く加えると生成した樹脂の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
反応中のゲル化物の生成を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシラジカル系化合物;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−N,N−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルカテコール、4,4'−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのフェノール系化合物;フェノチアジン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N'−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミン化合物;1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒドロキシルアミン系化合物;ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンなどのキノン系化合物;塩化第一鉄、ジメチルジチオカルバミン酸銅などの銅化合物などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの重合禁止剤の量は反応液全体に対して1〜10000ppmであるのが好ましい。
本発明で使用する熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂は、上記モノマー類を混合して重合してもよく、例えば(i)(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(iii)エポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマー、および/または(iv)不飽和ウレタンモノマーとを重合した後に(iii)(メタ)アクリル酸モノマーや(ii)水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーを重合させ、更にその後に(v)硬化剤を反応させてもよい。
なお、(メタ)アクリル酸モノマーとの反応には、溶液中で3級アミン触媒、4級アンモニウム塩触媒、3級ホスフィン触媒、4級ホフフィン塩触媒、有機錫化合物触媒の存在下で行うことが好ましい。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどのスルフィド類などを用いることができる。
上記反応時間、反応温度は、選択した溶媒や反応圧力などによって異なるが、圧力が大気圧〜0.2MPaで、通常、温度50〜160℃、反応時間は3〜50時間である。
本発明の熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000であることが好ましい。また、ガラス転移点温度(Tg)は40〜150℃、より好ましくは65〜120℃である。熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層のTgが40℃より低いと、未硬化の膜にタックが発生し、シートの巻き取りが損なわれる場合がある。一方、150℃を超えると、硬化後の可撓性が損なわれる場合がある。
この範囲であれば、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層を硬化させた後に、耐溶剤性、耐擦過性に優れ、かつ未硬化膜のタック感がなく、優れるからである。
本発明のプリプレグ用工程剥離紙に使用される熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂は、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(I)と熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(II)と称されるが、これらは同じものであっても異なっていてもよい。
本発明で使用される熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂は、更に無機顔料、その他を配合してもよい。無機顔料の配合により、目止め層との密着性を向上させることができる。このような無機顔料として、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などが例示できる。無機顔料は、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂に0.5〜50質量%、より好ましくは1〜10質量%となるように配合することが好ましい。熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層が2層以上の多層で構成される場合には、各層における無機顔料の配合量が上記範囲となる。なお、また、ポリビニルアルコールを熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜8質量部含有することが好ましい。
更に、該熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂の硬化特性を改質するために、任意成分として他の樹脂、シリコーン化合物、反応性モノマーなどをその特性を害しない範囲で含有させてもよい。
他の樹脂としては、メタクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなどがあり、反応性モノマーとしては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートモノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、シアノ基含有モノマー、アミド基含有モノマーなどなどがある。なお、ポリビニルアルコールを熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜8質量部含有することが好ましい。
この熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂は、100質量部に対して10〜1000質量部の溶剤で希釈して塗工してもよい。溶剤の希釈により塗工に適正な粘度、例えば、25℃において50〜200mPa・秒、より好ましくは80〜150mPa・秒、特には、80〜120mPa・秒である。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。
塗工方式としては、ダイレクトグラビアコート、リバースグラビアコート、グラビアオフセットコート、マイクログラビアコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、カーテンコート、ナイフコート、エアナイフコート、バーコート、ダイコート、スプレーコートなどの公知の方法が用いられ、塗工後、温度100〜130℃で乾燥および加熱して、乾燥炉で溶剤を蒸発させて熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂を熱硬化させる。この温度は、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂の軟化点より高く、かつ熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂が溶融する温度より低い範囲である。
熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは3〜20μmである。1μmより薄いと寸法安定性に劣る場合があり、一方、50μmを超えると樹脂の硬化性が悪くなる場合がある。前記したように、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層が2層以上の多層で構成される場合には、全層の厚さを上記範囲とする。
プリプレグ用工程剥離紙は、寸法安定性と共に、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸する工程に耐えうる耐熱性が要求される。本発明によれば、上記熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層は、寸法安定性に優れると共に、エポキシ樹脂含浸時にも過度に軟化せず賦型性に優れ、しかも熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層形成時にタックフリーであるため原反の巻き取りが容易で、極めて操作性に優れる。
(5)熱硬化シリコーン層
本発明で用いる熱硬化シリコーン層は、(i)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(ii)オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび(iii)白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物を熱硬化して形成したものを好適に使用することができる。
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの一例としては下記の如き化合物が挙げられる。
(上記式中におけるRは主としてメチル基であるが、その他のアルキル基またはフェニル基等のアリール基或はそれらの組み合わせで有り、l+m+nは1以上の整数であり、各シロキサン単位はランダムに配置されていてもよい。X、YおよびZのうち少なくとも1個はビニル基、アリル(−CH
2−CH=CH
2)基または(メタ)アクリロイル基等に付加重合性基であり、R
1〜R
3は単結合或はアルキレン基である。)
以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、一般的には3,500〜20,000の範囲が好適である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
本発明で使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、上記一般式において−R1−X、−R2−Z、および−R3−Yのうち少なくとも1個が水素原子であるものであり、他の置換基、シロキサン単位の配列、分子量等については前記一般式と同様である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの使用割合は、両者の有する反応性基のモル比で決まり、前者と後者の比が4:1〜1:4、特に1:1〜1:3の範囲が好ましく、この範囲を外れると離型性の低下、塗膜強度の低下、未反応の反応性基による保存性の劣化等の点で満足した性能が得られない。
本発明では、更に白金系硬化触媒を使用する。該触媒は前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサン100質量部当たり約5〜200質量部程度が好ましい使用量である。
上記のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物は、常温でも反応が進行し、塗工液中での反応の進行は離型性低下の原因となり、また、塗工液の保存性や取り扱い性に問題が生じる。本発明ではこの様な問題を解消する為に、常温では熱硬化性シリコーン組成物に対して反応抑制効果を有し、加熱処理時にはその抑制効果が解消する反応抑制剤を使用してもよい。具体的には、本発明で使用する反応抑制剤は、溶媒の溶液の状態では、上記の熱硬化性シリコーン組成物に対する硬化触媒の作用を抑制し、加熱された状態や溶剤が揮散した状態、即ち加熱または乾燥状態では上記硬化触媒の作用を抑制せず、むしろ促進する材料である。この様な硬化抑制剤としては、例えば、アセチレンアルコールのシリル化物等が挙げられる。これらの反応抑制剤は市場から入手して使用することができる。かかる反応抑制剤は前記熱硬化性シリコーン組成物100質量部当たり約5〜100質量部の割合で使用することが好ましい。更に、比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカ、硬化触媒として汎用されている有機錫化合物、有機チタン化合物及びイミダゾール誘導体から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
また、上記に代えて、(i)ケイ素原子に結合する水酸基量が500〜2000ppmであるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよび片末端に2官能もしくは3官能の加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン、(ii)1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(iii)白金触媒を使用することもできる。これらの配合比は、(i)のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対して加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンを2〜100質量部、白金触媒を有効量とし、前記(ii)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、前記(i)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分のケイ素原子に結合した水素原子が0.1〜1.5モルとなる量を配合することが好ましい。
更に、(i)アルケニル基含有量が1.0〜5.0質量%であり、25℃における粘度が50〜300mPa・sであるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(ii)重合度1000〜10000の直鎖状または分岐状の、分子鎖末端にアルケニル基を有しまたはアルケニル基を有さない、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)等のオルガノポリシロキサン、(iii)塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコール溶液との反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサン化合物との反応物、白金−オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体、白金−リン錯体等の白金系硬化触媒を使用することもできる。白金系硬化触媒の配合量は、シロキサン化合物の合計量に対して、質量基準で通常、5〜2000ppm、好ましくは、10〜500ppmである。なお、オルガノポリシロキサンは前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のアルケニル基1個に対して、通常ケイ素原子に結合した水素原子0.8〜5個、好ましくは、1〜2.5個になるように配合する。
このような熱硬化性シリコーン組成物としては、市販品を使用してもよく、例えば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物からなる付加重合型シリコーン材料の主剤(信越化学工業株式会社製、KS−3603)に剥離コントロール剤(信越化学工業株式会社製、KS-3800)を混合して調製したもの、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名「TPR6722」と硬化触媒としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名「CM670」とを混合したものなどを使用することができる。上記熱硬化性シリコーン組成物は、常温では固体状態であるが、加工時には加熱により液体状態に変化する材料である。
本発明の熱硬化性シリコーン組成物は、強度等の充分な皮膜物性を得るために硬化性を必要とする。
本発明の熱硬化性シリコーン層の形成方法自体は、前記熱硬化性シリコーン組成物の塗布、乾燥加熱、熟成等染料受容層の形成と同様でよく、形成される前記熱硬化シリコーン層の厚みは0.01〜10μmの範囲が好ましい。
前記したように、本発明のプリプレグ用工程剥離紙が、熱硬化シリコーン層(I)と熱硬化シリコーン層(II)とを有する場合には、これらの剥離強度は異なることがこのましい。アルケニル基含有オルガノポリシロキサンやオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量、置換基の種類、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの使用割合などを変えて熱硬化シリコーン樹脂を製造し、予めこれらの剥離強度を求めることで、異なる剥離強度の熱硬化シリコーン層を積層させることができる。また、公知の剥離コントロール剤を配合して剥離強度を調整することもできる。
(6)プリプレグ用工程剥離紙の製造方法
本発明のプリプレグ用工程剥離紙は、離解時残渣率が0〜1.0%となるものであればその製造方法に限定はないが、例えば、前記紙基材上に目止め層、熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層および熱硬化シリコーン層を積層し、加熱により熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層およびシリコーン層を硬化させて製造することができる。このような紙基材としては、市販品であってもよい。
例えば、前記した、紙基材(110)の両面にそれぞれ、目止め層(120)として第二ポリオレフィン系樹脂層(120A2)、第一ポリオレフィン系樹脂層(120A1)、および表面処理層(120C)とを積層し、ついで熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層(130)、および熱硬化シリコーン層(140)とが積層される場合には、押出機Aに、目止め層(120)を構成する第二ポリオレフィン系樹脂と、押出機Bに第一ポリオレフィン系樹脂とを仕込み、Tダイを介してこれらを紙基材の片面に共押出しし、バックアップロールと冷却ロールとで積層および接着し、ついで前記第一ポリオレフィン系樹脂層(120A1)の上に、例えば、コロナ処理などの表面処理を行って表面処理層(120C)を形成する。なお、押出機Aや押出機Bの加熱温度は、使用する樹脂の融点やメルトフローレート、配合するマット剤の種類や配合量などに応じて適宜選択すればよい。
次いで、双方の表面処理層(120C)の上に(メタ)アクリル系樹脂を塗工し、乾燥および熱硬化して熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層を熱硬化させる。次いで、少なくとも一方の熱硬化した電離放射線性組成物膜上に熱硬化性シリコーン組成物を塗工し、加熱乾燥して熱硬化シリコーン膜を形成する。
なお、本発明のプリプレグ用工程剥離紙の厚さは、50〜300μmであることが好ましく、より好ましくは70〜150μmである。厚さが50μmを下回ると強度が低下し、製造工程で巻き取りの際に切断しやすくなるなどのライン適性が低下する場合がある。一方、300μmを超えると、プリプレグ用工程剥離紙の幅カールが大きくなり、加工性が低下する場合がある。
(7)炭素繊維プリプレグ
本発明のプリプレグ用工程剥離紙を用いて、前記図3に例示する方法で炭素繊維プリプレグを製造することができる。本発明のプリプレグ用工程剥離紙を用いた炭素繊維プリプレグは、寸法安定性に優れ、エポキシ樹脂を未架橋に維持するため低温に保存しても、炭素繊維含浸エポキシ樹脂層と剥離紙との間に剥離を生ずることがない。また、炭素繊維含浸エポキシ樹脂層の積層時に炭素繊維含浸エポキシ樹脂層がたるまず、炭素繊維含浸エポキシ樹脂層の部分的な重複による凹凸や空隙の発生がなく、高い耐衝撃性を有する炭素製品を製造することができる。
また、紙基材と目止め層との間における層間剥離が防止され、耐熱性にも優れかつ寸法安定性および機械的強度の高い熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂層の存在および剥離性に優れる熱硬化シリコーン層の存在により安定した剥離性が維持される。
しかも、炭素繊維プリプレグ製造の際に除去される使用済み工程剥離紙は、後記する実施例に示すように離解時残渣率に優れ、古紙の再生を行う際のパルプ回収率に優れると共に廃棄物量を低減することができる。このように、使用後の離解処理によって容易に離解することができ、古紙としてのリサイクル性に優れる。
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
上質紙(坪量104.5g/cm2)の両面にコート層(カオリンクレイ60質量部、酸化チタン10質量部、炭酸カルシウム30質量部、SBRラテックス17質量部、その他分散剤0.5質量部、渇剤1質量部の混合物のスラリー)をブレードコーターにて16g/cm2コーティングし、その後、ドライヤー乾燥の後、スーパーカレンダーに通紙した両面コート紙に、造膜性のあるアクリル樹脂(新中村化学工業社製、商品名「バナレジンSRC500N」:酸価208mgKOH/g)をグラビアコーターにて4g/cm2コーティングし、引き続き片面に付加重合タイプのシリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名「KS−3603」)100質量部、剥離コントロール剤(信越化学工業社製、商品名「KS−3800」)40質量部の混合物)を0.3g/cm2、もう片面にも付加重合タイプのシリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名「KS−3603」)を0.3g/cm2コーティングし、両面に、剥離層を有するプリプレグ用工程剥離紙を製造した。
このプリプレグ用工程剥離紙の吸湿寸法変化率、剥離強度および離解時残渣率を下記方法で評価した。結果を表1に示す。
(測定方法)
(1) 吸湿寸法変化率
(i)プリプレグ用工程剥離紙を10cm×10cmの試験片とする。
(ii)この試験片を23℃、50%RH条件下で24時間調湿し、調湿した試験片の長さを測定した(LA)。
(iii)23℃、80%RH環境下で24時間放置し、24時間放置後の幅方向の長さを測定した(LB)。
(iv)これにより下記式に基づいて吸湿寸法変化率を算出した。なお、1つの水準につき3サンプル測定し、その平均を吸湿伸び率とした。
(2)剥離強度
(i)炭素繊維プリプレグ(三菱レイヨン株式会社製、商品名「パイロフィル TR380G−250SM」)を付属離型紙から、離型紙評価サンプルに乗せかえる。
(ii)750kPa、120〜130℃、3m/min、1回通しにて剥離強度を測定する。
(iii)25mm幅、100mm/min、165°ピールにて剥離強度を測定する。
(iv)値は、チャート上の山の高い点5点と低い点5点を読み取り、その平均を剥離強度とした。ただし、山にならず滑らかなチャートになった場合には、その値をそのまま剥離強度とした。
(3)離解時残渣率
(i)30±2℃の用水2,000ml±10mlにNaOH(50g/l)10ml±1mlを加え、標準パルプ離解機(熊谷理機工業(株)社製)(JIS P8220附属書Aに規定)の離解槽に入れる。
(ii)プリプレグ用剥離紙を30mm×30mm±3mmに切断し、切断したプリプレグ用剥離紙5.00±0.05gを秤量し、上質紙(王子製紙株式会社製OKプリンス:坪量64g)を30mm×30mm±3mmに切断したもの45.00±0.05gと合せて試験試料とし、この試験試料を前記離解槽に加えて蓋をし、3,000rpmで離解機を回転させる。
(iii)離解機を20分間±5秒間回転させた後に、回転を止める。
(iv)標準型フラットスクリーン(熊谷理機工業(株)社製)に6カットスクリーンプレート(スリット幅0.15mm×45mm)をセットし、100mmの水位となし、通水量が10リットル毎分となるように調整する。
(v)毎分690〜700回、3.2mm上下に振動させてスクリーンを起動し、前記(iii)で離解した試料スラリーをスクリーン内に投入する。なお、離解槽の洗液を前記スクリーンに加える。
(vi)スクリーンの振動及び通水を、試料スラリーの投入から7分間±10秒間継続した後、通水及び振動を停止する。
(vii)スクリーンプレート上の残渣を安全カミソリの刃を利用して集め、予め乾燥、秤量したアルミホイール製カップに回収する。
(viii)アルミホイール製カップを105℃±5℃に調整した乾燥器中で4時間乾燥させて恒量とする。
(ix)乾燥後、秤量する。
(x)以上の操作を3組の試料について繰り返し、平均値をとって残渣量とした。
(Xi)上記残渣量についてプリプレグ用工程剥離紙の単位重量あたりの残渣の百分率を下記式により算出し離解時残渣率とする。
(実施例2)
実施例1と同様に、両面コート紙にアクリル樹脂(新中村化学工業社製、商品名「バナレジンSRC500N」:酸価208mgKOH/g)をグラビアコーターにて4g/cm
2コーティングし、引き続きシリコーン樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製、商品名「TPR6722」)100質量部、硬化触媒(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製、商品名「CM670」1質量部の混合物)を0.3g/cm
2、もう片面にもシリコーン樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製、商品名「TPR6722」100質量部、剥離調整剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ会社製、商品名「XSR7029」100質量部、硬化触媒(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ会社製、商品名「CM670」2質量部の混合物)を0.3g/cm
2コーティングし、両面に、剥離層を有するプリプレグ用工程剥離紙を製造した。
このプリプレグ用工程剥離紙を使用して、実施例1と同様に操作して、吸湿寸法変化率、剥離強度および離解時残渣率を評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
両面コート紙の代わりに、内添乾燥紙力剤としてポリアクリルアミド(星光PMC社製、商品名「XP−106」)を35質量%含浸させた紙を用いた以外は、実施例1と同様に操作してプリプレグ用工程剥離紙を製造した。
この比較プリプレグ用工程剥離紙を使用して、実施例1と同様に操作して、吸湿寸法変化率、剥離強度および離解時残渣率を評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
造膜性のあるアクリル樹脂に代えて、紙基材にポリエチレンフィルムを両面ラミネートした以外は、実施例1と同様に操作して比較プリプレグ用工程剥離紙を製造した。
この比較プリプレグ用工程剥離紙を使用して、実施例1と同様に操作して、吸湿寸法変化率、剥離強度および離解時残渣率を評価した。結果を表1に示す。
(結果)
(1)表1の比較例1に示すように、内添乾燥紙力剤としてポリアクリルアミドを35質量%含浸させた紙を使用すると、吸湿寸法変化率は0.22(%)と極めて低値を示した。この比較プリプレグ用工程剥離紙は、複数回の剥離においても剥離強度が変化せず、複数回の使用が可能であることが判明した。
しかしながら、離解時残渣量は、11.40(%)と極めて高値となり、使用済みプリプレグ用工程剥離紙をリサイクルするとパルプ回収量が少なく、かつ廃棄物量が多いことが判明した。
(2)実施例1では、通常の上質紙を使用したにもかかわらず吸湿寸法変化率が0.35(%)と低値であり、しかもプリプレグ用工程剥離紙は、複数回の剥離においても剥離強度が変化せず、複数回の使用が可能であった。これらにより、実施例1のプリプレグ用工程剥離紙は、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスラケット、スキーストック、車の部品、自転車のボディ等のレジャースポーツ用品、その他を製造する際に使用するプリプレグ用工程剥離紙として十分に使用しうるものであることが判明した。
更に、離解時残渣率は、残渣がほとんどでない0.02(%)であり、極めてリサイクル性に優れることが判明した。
(3)実施例2のプリプレグ用工程剥離紙は、実施例1と同様の無機顔料を含む目止め層を積層し、上記目止め層の上に所定のアクリル樹脂を積層したものであり、シリコーン樹脂のみが異なるものである。しかしながら、いずれも吸湿寸法変化率が低く、複数回の剥離によっても剥離強度が変化せず、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスラケット、スキーストック、車の部品、自転車のボディ等のレジャースポーツ用品、その他を製造する際に使用するプリプレグ用工程剥離紙として十分に使用しうるものであることが判明した。
また、離解時残渣率は、残渣がほとんどでない0.02(%)であり、極めてリサイクル性に優れることが判明した。
(4)比較例2の比較プリプレグ用工程剥離紙は、紙基材にポリエチレンフィルムを両面ラミネートしたものであり、複数回の使用においても剥離強度が増加しなかったが、アルカリ溶液によっても離解せず、古紙としてリサイクルすることが困難であった。