JP2011073349A - 液体噴射装置、及び、その制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体流路内に存在する気泡の排出性を向上させることが可能な液体噴射装置、及び、その制御方法を提供する。
【解決手段】複数のインクカートリッジの中から一のインクカートリッジを選択するインクセレクターが選択したインクカートリッジに切り替える際に、圧電振動子に伝送される切替用駆動信号には、切り替え前のインクカートリッジから液体流路に供給されたインクをインクセレクターが選択したインクカートリッジから供給されるインクに置換するように圧電振動子を繰り返し駆動させる通常フラッシング用駆動信号と、通常フラッシング用駆動信号の後に発生されインクカートリッジから液体流路に供給されたインクに含まれる気泡を除去するように圧電振動子を駆動させるSフラッシング用駆動信号とを含み、通常フラッシング用駆動信号を用いた第1のフラッシング処理と、Sフラッシング用駆動信号を用いた第2のフラッシング処理と、を実行する。
【選択図】図9
【解決手段】複数のインクカートリッジの中から一のインクカートリッジを選択するインクセレクターが選択したインクカートリッジに切り替える際に、圧電振動子に伝送される切替用駆動信号には、切り替え前のインクカートリッジから液体流路に供給されたインクをインクセレクターが選択したインクカートリッジから供給されるインクに置換するように圧電振動子を繰り返し駆動させる通常フラッシング用駆動信号と、通常フラッシング用駆動信号の後に発生されインクカートリッジから液体流路に供給されたインクに含まれる気泡を除去するように圧電振動子を駆動させるSフラッシング用駆動信号とを含み、通常フラッシング用駆動信号を用いた第1のフラッシング処理と、Sフラッシング用駆動信号を用いた第2のフラッシング処理と、を実行する。
【選択図】図9
Description
本発明は、インクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置、及び、その制御方法に関するものであり、特に、ノズルに連通する圧力室に圧力変動を与えて、圧力室内の液体をノズルから噴射する液体噴射装置、及び、その制御方法に関する。
液体噴射装置は、液体を噴射(吐出)可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液滴状のインクを記録紙等の記録媒体(吐出対象物)に対して吐出・着弾させることで画像等の記録を行うインクジェット式プリンター(以下、単にプリンターという。)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、或いはFED(面発光ディスプレー)等のディスプレー製造装置においては、色材や電極等の液体状の各種材料を、画素形成領域や電極形成領域等に対して噴射するためのものとして、液体噴射装置が用いられている。
上記の記録ヘッドでは、液体状のインクを封入したインクカートリッジ(以下、単にカートリッジという)からのインクが導入されると共に、リザーバーから圧力室を経てノズル開口に至る一連の液体流路が形成された流路ユニットや圧力室の容積を変動可能な圧力発生素子を有するアクチュエーターユニットなど備えている。
近年では、異なる種類(異なる色)のインクを貯留したカートリッジを搭載し、これらのカートリッジを切替手段によって切り替えて、切り替えたカートリッジに貯留されているインクを記録ヘッド内の液体流路に導入して吐出させることが可能なプリンターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このプリンターでは、カートリッジを切り替えた際に、流速の異なる二つのフラッシング波形を停止時間を挟んで順次加えて、液体流路内に液体の流れを脈動させることによって、液体流路内に残る残存インク(切り替える前のインク)をフラッシング(捨て打ち)によって排出するように構成されている。このフラッシングで圧力発生素子を駆動するための駆動パルスは、より多くのインクを吐出することに重きが置かれたものが用いられる。
ところで、上記のように複数のカートリッジのインクを切り替えて用いる構成では、インクを切り替えた後、ノズルからインクが正常に吐出されない所謂ドット抜けが生じる場合があった。これは、インク内に残存する気泡により圧力損失が生じることに起因する。即ち、上記カートリッジ内のインクは、カートリッジを最初にプリンターに装着する際には、脱気した状態で充填されているが、記録ヘッドへ連通する液体供給路などの壁面を介して外部の空気が透過して液体供給路内に侵入することがある。これにより、カートリッジの装着時間に応じて、インクに気泡が混入して、インクが飽和状態に近づく。このような飽和したインクに気泡が溶け込めずに液体流路内に残った場合、この残存気泡により、ノズル開口からインク滴を吐出する際に吐出不良(ドット抜け)が生じる虞があった。
図10は、従来のプリンターにおけるインク切替後にインクが正常に吐出されるか否かを示した表であり、脱気したインクで行ったときの結果と、飽和インクで行ったときの結果を示している。この表において「繰り返し」は、インクの切替回数である。1回の切替毎に上記のフラッシングが行われる。1回のフラッシングにおける各ノズルの吐出回数は、数万から数十万回に設定される。同図に示すように、脱気したインク(脱気インク)の切替を1回から24回まで行ったときの吐出成功率は、100.0%であり、飽和したインク(飽和インク)の切替を1回から24回まで行ったときの吐出成功率は、75.0%であった。なお、脱気インクとは溶存N2量が比較的少ないインクであって、飽和インクとはそれよりも溶存N2量の多いインクである。また、カートリッジ内のインクの飽和濃度は、ノズル開口からインクを吐出する(使用)ことで低下する。
このように、従来の構成では、フラッシングによって圧力室内に与える圧力変動が小さい場合には、液体流路内に液体と共に存在する気泡を十分に排出することが困難となり、これにより、ノズル開口からインクが噴射されない、所謂ドット抜けが発生してしまう問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体流路内に存在する気泡の排出性を向上させることが可能な液体噴射装置、及び、その制御方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射装置は、複数の液体カートリッジのうち一の液体カートリッジ内の液体を、圧力室を含む液体流路を介してノズル群に供給し、
前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段の駆動によってノズル開口から液滴を噴射する液体噴射装置であって、
前記圧力発生手段を駆動させる駆動信号を発生させて、当該駆動信号を前記圧力発生手段に伝送する駆動手段と、
前記複数の液体カートリッジの中から前記一の液体カートリッジを選択する選択手段とを備え、
前記複数の液体カートリッジの中から前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジに切り替える際に、前記駆動手段は、前記圧力発生手段に切替用駆動信号を伝送し、
当該切替用駆動信号には、
切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を、前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジから供給される液体に置換するように、前記圧力発生手段を繰り返し駆動させる第1の駆動信号と、
前記第1の駆動信号の後に発生され、前記液体カートリッジから液体流路に供給された液体に含まれる気泡を除去するように、前記圧力発生手段を駆動させる第2の駆動信号とを含み、
前記第1の駆動信号を用いた第1のフラッシング処理と、前記第2の駆動信号を用いた第2のフラッシング処理と、を実行することを特徴とする。
なお、「気泡を除去する」とは、ノズル開口からの液体の噴射によって液体に残存する気泡を排出するために、気泡を液体内に溶解させる現象を含め、液体及び当該液体に残存する気泡をノズル開口から排出させる現象を意味する。
前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段の駆動によってノズル開口から液滴を噴射する液体噴射装置であって、
前記圧力発生手段を駆動させる駆動信号を発生させて、当該駆動信号を前記圧力発生手段に伝送する駆動手段と、
前記複数の液体カートリッジの中から前記一の液体カートリッジを選択する選択手段とを備え、
前記複数の液体カートリッジの中から前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジに切り替える際に、前記駆動手段は、前記圧力発生手段に切替用駆動信号を伝送し、
当該切替用駆動信号には、
切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を、前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジから供給される液体に置換するように、前記圧力発生手段を繰り返し駆動させる第1の駆動信号と、
前記第1の駆動信号の後に発生され、前記液体カートリッジから液体流路に供給された液体に含まれる気泡を除去するように、前記圧力発生手段を駆動させる第2の駆動信号とを含み、
前記第1の駆動信号を用いた第1のフラッシング処理と、前記第2の駆動信号を用いた第2のフラッシング処理と、を実行することを特徴とする。
なお、「気泡を除去する」とは、ノズル開口からの液体の噴射によって液体に残存する気泡を排出するために、気泡を液体内に溶解させる現象を含め、液体及び当該液体に残存する気泡をノズル開口から排出させる現象を意味する。
上記構成によれば、圧力発生手段を駆動させる駆動信号を発生させて、駆動信号を前記圧力発生手段に伝送する駆動手段と、複数の液体カートリッジの中から一の液体カートリッジを選択する選択手段とを備え、複数の液体カートリッジの中から選択手段が選択した一の液体カートリッジに切り替える際に、駆動手段は、圧力発生手段に切替用駆動信号を伝送し、切替用駆動信号には、切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を、選択手段が選択した一の液体カートリッジから供給される液体に置換するように、圧力発生手段を駆動させる第1の駆動信号と、第1の駆動信号の後に発生され、液体カートリッジから液体流路に供給された液体に含まれる気泡を除去するように、圧力発生手段を駆動させる第2の駆動信号とを含み、第1の駆動信号を用いた第1のフラッシング処理と、第2の駆動信号を用いた第2のフラッシング処理と、を実行するので、第1のフラッシング処理では、第1の駆動信号を圧力発生手段に供給することにより、切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を選択手段が選択した液体カートリッジから供給される液体に効率良く置換できる。また、第2のフラッシング処理では、第2の駆動信号を圧力発生手段に供給することにより、気泡の除去を確実に行なうことができる。この結果、液体流路内に混入した気泡の排出性を向上させることができる。
また、上記構成において、前記液体カートリッジを前記液体噴射装置に装着してからの装着時間を計時する計時部を備え、複数の液体カートリッジの中から前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジに切り替える際に、当該選択手段が選択した前記一の液体カートリッジに関する前記装着時間に基づいて切替用駆動信号を変更することが望ましい。
この構成によれば、液体カートリッジを液体噴射装置に装着してからの装着時間を計時する計時部を備え、複数の液体カートリッジの中から選択手段が選択した一の液体カートリッジに切り替える際に、選択手段が選択した一の液体カートリッジに関する装着時間に基づいて切替用駆動信号を変更するので、選択手段が選択した一の液体カートリッジ内の液体に溶存する気体の濃度に応じて適切な条件でフラッシング処理ができる。これにより、液体の無駄な消費を抑制することができる。
また、上記構成において、前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジに関する前記装着時間が短い程、前記第1の駆動信号に対する前記第2の駆動信号の発生割合を減らすように切替用駆動信号を変更することが望ましい。
上記構成によれば、選択手段が選択した一の液体カートリッジに関する装着時間が短い程、第1の駆動信号に対する第2の駆動信号の発生割合を減らすように切替用駆動信号を変更するので、選択した一の液体カートリッジ内の液体に溶存する気体の濃度が低いときには、第1の駆動信号を圧力発生手段に供給することによって、切り替え前の液体カートリッジから供給された液体を、無駄な消費を抑えつつ効率良く置換できる。
また、上記構成において、前記駆動手段は、前記第1のフラッシング処理及び前記第2のフラッシング処理を交互に繰り返し実行することが望ましい。
上記構成によれば、駆動手段は、第1のフラッシング処理及び第2のフラッシング処理を交互に繰り返し実行するので、第1のフラッシング処理において第1の駆動信号を圧力発生手段に供給することによって、液体流路内のインクに溶存する気泡を圧力室内に移送した後に、第2のフラッシング処理において第2の駆動信号を圧力発生手段に供給することによって、圧力室内に運ばれた気泡をノズル開口から排出させ易くなる。この結果、液体流路内に混入した気泡の排出性を向上させることができる。
また、本発明の液体噴射装置の制御方法は、複数の液体カートリッジのうち一の液体カートリッジ内の液体を、圧力室を含む液体流路を介してノズル群に供給し、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段の駆動によってノズル開口から液滴を噴射する液体噴射装置の制御方法であって、
前記複数の液体カートリッジの中から選択された前記一の液体カートリッジに切り替える際に、前記圧力発生手段を駆動させる切替用駆動信号を発生させて、当該切替用駆動信号を前記圧力発生手段に伝送し、
当該切替用駆動信号には、切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を、選択された前記一の液体カートリッジから供給される液体に置換するように、前記圧力発生手段を駆動させる第1の駆動信号と、前記第1の駆動信号の後に発生して、前記液体カートリッジから供給された液体に含まれる気泡を除去するように、前記圧力発生手段を駆動させる第2の駆動信号とを含み、
前記第1の駆動信号を用いた第1のフラッシング処理と、前記第2の駆動信号を用いた第2のフラッシング処理と、を実行することを特徴とする。
この制御方法によれば、第1のフラッシング処理では、第1の駆動信号を圧力発生手段に供給することにより、切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を選択手段が選択した液体カートリッジから供給される液体に効率良く置換できる。また、第2のフラッシング処理では、第2の駆動信号を圧力発生手段に供給することにより、気泡の除去を確実に行なうことができる。この結果、液体流路内に混入した気泡の排出性を向上させることができる。
前記複数の液体カートリッジの中から選択された前記一の液体カートリッジに切り替える際に、前記圧力発生手段を駆動させる切替用駆動信号を発生させて、当該切替用駆動信号を前記圧力発生手段に伝送し、
当該切替用駆動信号には、切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を、選択された前記一の液体カートリッジから供給される液体に置換するように、前記圧力発生手段を駆動させる第1の駆動信号と、前記第1の駆動信号の後に発生して、前記液体カートリッジから供給された液体に含まれる気泡を除去するように、前記圧力発生手段を駆動させる第2の駆動信号とを含み、
前記第1の駆動信号を用いた第1のフラッシング処理と、前記第2の駆動信号を用いた第2のフラッシング処理と、を実行することを特徴とする。
この制御方法によれば、第1のフラッシング処理では、第1の駆動信号を圧力発生手段に供給することにより、切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を選択手段が選択した液体カートリッジから供給される液体に効率良く置換できる。また、第2のフラッシング処理では、第2の駆動信号を圧力発生手段に供給することにより、気泡の除去を確実に行なうことができる。この結果、液体流路内に混入した気泡の排出性を向上させることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面等を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、本実施形態では、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置(以下、「プリンター」という)を、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」という)を例に挙げて説明する。
図1はプリンター1の構成を説明する斜視図である。このプリンター1は、筐体2の内部に、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド3が取り付けられると共に、インクカートリッジ4が着脱可能に取り付けられるキャリッジ5と、記録ヘッド3の下方に配設されたプラテン6と、キャリッジ5(記録ヘッド3)を記録紙(記録媒体)7の紙幅方向、即ち、主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動機構8と、主走査方向に直交する方向である副走査方向に記録紙7を搬送する紙送り機構9とを備えて概略構成されている。なお、プリンター1の筐体2側にインクカートリッジ4(本発明における液体カートリッジに相当)を装着してインク供給チューブを介して記録ヘッド3に供給する構成を採用することもできる。また、本実施形態におけるプリンター1は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、マッドブラック(MK)、フォトブラック(FK)の合計5種類のインク(本発明における液体に相当)を吐出可能に構成されており、各色に対応したインクカートリッジ4C,4M,4Y,4MK,4FKを備えている。
キャリッジ5は、主走査方向に架設されたガイドロッド10に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構8の作動により、ガイドロッド10に沿って主走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ5の主走査方向の位置は、リニアエンコーダー11によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダーパルスがプリンターコントローラーの制御部56(図4参照)に送信される。これにより、制御部56はこのリニアエンコーダー11からのエンコーダーパルスに基づいてキャリッジ5(記録ヘッド3)の走査位置を認識しながら、記録ヘッド3による記録動作(噴射動作)等を制御することができる。
キャリッジ5の移動範囲内における記録領域よりも外側(図1における右側)の端部領域には、走査の基点となるホームポジションが設定されている。本実施形態におけるホームポジションには、記録ヘッド3のノズル形成面(ノズルプレート32:図3参照)を封止するキャッピング部材12と、ノズル形成面を払拭するためのワイパー部材13とが配置されている。そして、プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ5(記録ヘッド3)が移動する往動時と、反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ5が戻る復動時との双方向で記録紙7上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録が可能に構成されている。なお、吸引キャップ部材12´は、インク滴(本発明における液滴)の空吐出(捨て打ち)を行うことで、増粘したインクやインクに残存した気泡を排除(除去)するための後述するフラッシング処理においてインク滴を受けるインク受け部として用いられる。
図2は、インクセレクター15の構成を説明する断面図である。また、上記したプリンター1は、各色のインクカートリッジ4の中から記録ヘッド3に供給するインクを選択するインクセレクター15(本発明における選択手段に相当)を備えている。本発明におけるインクセレクター15は、マットブラックMKのインクカートリッジ4MKと、フォトブラックFKのインクカートリッジ4FKの何れか一方を選択するように構成されている。より具体的には、インクセレクター15は、キャリッジ5に配置されており、一端部がマットブラックMKのインクカートリッジ4MKに接続されたインク供給流路16a(本発明における液体流路の一部に相当)と、一端部がフォトブラックFKのインクカートリッジ4FKに接続されたインク供給流路16b(本発明における液体流路の一部に相当)と、一端部が記録ヘッド3に接続されたインク供給流路16c(本発明における液体流路の一部に相当)と、筒状に形成されたセレクターハウジング17と、を備えている。
インク供給流路16aは、インクカートリッジ4MKとは反対側の他端部が、セレクターハウジング17の円筒軸方向の一側の端部に形成された連通孔18a(本発明における液体流路の一部に相当)に接続される。インク供給流路16bは、インクカートリッジ4FKとは反対側の端部が、セレクターハウジング17の円筒軸方向の他側の端部に形成された連通孔18b(本発明における液体流路の一部に相当)に接続される。また、インク供給流路16cは、記録ヘッド3とは反対側の他端部が、セレクターハウジング17の円筒軸方向の略中央に形成された連通孔18c(本発明における液体流路の一部に相当)に接続される。セレクターハウジング17は、筒状に形成され、その内部に空部19(本発明における液体流路の一部に相当)を有すると共に、この空部19内に切替弁本体20を配置している。切替弁本体20は、セレクターハウジング17の内径と略等しいからそれよりも若干小さい円柱形状に形成されており、ソレノイド21(図4参照)の駆動により、空部19内を円筒軸方向に摺動するように構成されている。
このように構成されたインクセレクター15は、ソレノイド21が、切替弁本体20を空部19内の円筒軸方向の一方側(図2中の左側)に摺動させると、摺動した切替弁本体20がインク供給流路16bとの連通孔18bを塞ぐと共にインク供給流路16aの連通孔18aを開放することで、インク供給流路16aとインク供給流路16cとを、空部19を介して連通し、これによりインクカートリッジ4MK内のマットブラックMKのインクを記録ヘッド3に供給する状態に切り替える。一方、切替弁本体20を空部19内の円筒軸方向の他方側(図2中の右側)に摺動させると、摺動した切替弁本体20がインク供給流路16aとの連通孔18aを塞ぐと共にインク供給流路16bの連通孔18bを開放することで、インク供給流路16bとインク供給流路16cとを空部19を介して連通し、これによりインクカートリッジ4FK内のフォトブラックFKのインクを記録ヘッド3に供給する状態に切り替える。なお、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを貯留する各インクカートリッジ4C,4M,4Yは、インクセレクター15を介さずに、記録ヘッド3に連通するインク供給流路16dを介して直接接続されている。また、本発明におけるインクセレクター15は、マットブラックMKのインクカートリッジ4MK及びフォトブラックFKのインクカートリッジ4FKの2つのインクカートリッジ4MK,4FKの何れか一方を選択する構成に限らずに、3つ以上のインクカートリッジ4の中から何れか一つのインクカートリッジ4を選択する構成を採用することができる。
図3は上記の記録ヘッド3の要部断面図である。本実施形態における記録ヘッド3は、圧電振動子群22、固定板23、及び、フレキシブルケーブル24等をユニット化した振動子ユニット25と、この振動子ユニット25を収納可能なヘッドケース26と、リザーバー(共通インク室)36から圧力室38を通りノズル開口35に至る一連のインク流路(本発明における液体流路の一部)を形成する流路ユニット27とを備えて構成される。
まず、振動子ユニット25について説明する。圧電振動子群22を構成する圧電振動子30(本発明における圧力発生手段の一種)は、縦方向に細長い櫛歯状に形成されており、数十μm程度の極めて細い幅に切り分けられている。そして、この圧電振動子30は縦方向に伸縮可能な縦振動型の圧電振動子として構成されている。各圧電振動子30は、固定端部を固定板23上に接合することにより、自由端部を固定板23の先端縁よりも外側に突出させて所謂片持ち梁の状態で固定されている。そして、各圧電振動子30における自由端部の先端は、後述するように、それぞれ流路ユニット27におけるダイヤフラム部42を構成する島部44に接合される。フレキシブルケーブル24は、固定板23とは反対側となる固定端部の側面で圧電振動子30と電気的に接続されている。また、各圧電振動子30を支持する固定板23は、圧電振動子30からの反力を受け止め得る剛性を備えた金属製の板材によって構成される。本実施形態では、厚さが1mm程度のステンレス鋼板によって作製されている。
ヘッドケース26は、例えば、エポキシ系樹脂により作製された中空箱体状部材であり、その先端面(下面)には流路ユニット27を固定し、ケース内部に形成された収容空部28内には、アクチュエータの一種である振動子ユニット25を収容している。また、ヘッドケース26の内部には、その高さ方向を貫通してケース流路29が形成されている。このケース流路29は、インクカートリッジ4側からのインクをリザーバー36に供給するための流路である。そして、ヘッドケース26の上面には、各ケース流路29の上流端として流入開口部(図示せず)が突設され、この流入開口部には、インクセレクター15のインク供給流路18cが接続される。
次に、流路ユニット27について説明する。流路ユニット27は、ノズルプレート32、流路形成基板33、及び振動板34から構成され、ノズルプレート32を流路形成基板33の一方の表面に、振動板34をノズルプレート32とは反対側となる流路形成基板33の他方の表面にそれぞれ配置して積層し、接着等により一体化することで構成されている。
ノズルプレート32は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口35を列状に開設したステンレス鋼製の薄いプレートである。本実施形態では、例えば、180個のノズル開口35を列状に開設し、これらのノズル開口35によってノズル列を構成している。そして、このノズル列を横並びに4列設けている。
流路形成基板33は、リザーバー36、インク供給口37、及び圧力室38からなる一連のインク流路(本発明における液体流路の一部に相当)を形成する板状部材である。具体的には、この流路形成基板33は、各ノズル開口35に対応させて圧力室38となる空部を隔壁で区画した状態で複数形成すると共に、インク供給口37およびリザーバー36となる空部を形成した板状の部材である。そして、本実施形態の流路形成基板33は、シリコンウェハーをエッチング処理することで作製されている。上記の圧力室38は、ノズル開口35の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成され、インク供給口37は、圧力室38とリザーバー36との間を連通する流路幅の狭い狭窄部として形成されている。また、リザーバー36は、インクカートリッジ4に貯留されたインクを各圧力室38に供給するための室であり、インク供給口37を通じて対応する各圧力室38に連通している。この様に、本実施形態では、インクカートリッジ4に接続されるインク供給流路16からノズル開口35に至るまでの一連のインク流路が、本発明における液体流路として機能する。
振動板34は、ステンレス鋼等の金属製の支持板40上にPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂フィルム41をラミネート加工した二重構造の複合板材であり、圧力室38の一方の開口面を封止してこの圧力室38の容積を変動させるためのダイヤフラム部42を有すると共に、リザーバー36の一方の開口面を封止するコンプライアンス部43が形成された部材である。そして、ダイヤフラム部42は、圧力室38に対応した部分の支持板40にエッチング加工を施し、当該部分を環状に除去して圧電振動子30の自由端部の先端を接合するための島部44を形成することで構成されている。この島部44は、圧力室38の平面形状と同様に、ノズル開口35の列設方向と直交する方向に細長いブロック状であり、この島部44の周りの樹脂フィルム41が弾性体膜として機能する。また、コンプライアンス部43として機能する部分、すなわちリザーバー36に対応する部分は、このリザーバー36の開口形状に倣って支持板40がエッチング加工で除去されて樹脂フィルム41のみとなっている。
そして、上記の島部44には圧電振動子30の先端面が接合されているので、この圧電振動子30の自由端部を伸縮させることで圧力室38の容積を変動させることができる。この容積変動に伴って圧力室38内のインクに圧力変動が生じる。そして、記録ヘッド3は、この圧力変動を利用してノズル開口35からインク滴を吐出させるようになっている。
次に、プリンター1の電気的な構成を説明する。
図4は、プリンター1の電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態におけるプリンター1は、プリンターコントローラー50(本発明における駆動手段に相当)とプリントエンジン51とで概略構成されている。プリンターコントローラー50は、ホストコンピューター等の外部装置からの印刷データ等が入力される外部インターフェース(外部I/F)52と、各種データ等を記憶するRAM53と、各種制御のための制御プログラム等を記憶したROM54と、ROM54に記憶されている制御プログラムに従って各部の統括的な制御を行う制御部56と、クロック信号を発生する発振回路57と、記録ヘッド3へ供給する駆動信号COMを発生する駆動信号発生回路58と、印刷データをドット毎に展開することで得られたドットパターンデータや駆動信号等を記録ヘッド3に出力するための内部インターフェース(内部I/F)59と、計時部として機能して計時動作を行うタイマー回路60とを備えている。また、プリントエンジン51は、記録ヘッド3と、キャリッジ移動機構8と、紙送り機構9と、ソレノイド21、インクカートリッジ4がキャリッジ5に装着されたことを検出するインクカートリッジ装着検出部61とから構成されている。インクカートリッジ装着検出部61は、インクカートリッジ4が初回に装着されたことを検出して、インクが記録ヘッド3に最初に充填されたことを判定し、これによりタイマー回路60は最初にインクが充填された時点からのインクカートリッジ4の装着時間の計時を行う。なお、インクカートリッジ装着検出部61は、電気的検出部やメカ的検出部など、インクカートリッジ4の装着が検出可能なものであればよい。
図4は、プリンター1の電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態におけるプリンター1は、プリンターコントローラー50(本発明における駆動手段に相当)とプリントエンジン51とで概略構成されている。プリンターコントローラー50は、ホストコンピューター等の外部装置からの印刷データ等が入力される外部インターフェース(外部I/F)52と、各種データ等を記憶するRAM53と、各種制御のための制御プログラム等を記憶したROM54と、ROM54に記憶されている制御プログラムに従って各部の統括的な制御を行う制御部56と、クロック信号を発生する発振回路57と、記録ヘッド3へ供給する駆動信号COMを発生する駆動信号発生回路58と、印刷データをドット毎に展開することで得られたドットパターンデータや駆動信号等を記録ヘッド3に出力するための内部インターフェース(内部I/F)59と、計時部として機能して計時動作を行うタイマー回路60とを備えている。また、プリントエンジン51は、記録ヘッド3と、キャリッジ移動機構8と、紙送り機構9と、ソレノイド21、インクカートリッジ4がキャリッジ5に装着されたことを検出するインクカートリッジ装着検出部61とから構成されている。インクカートリッジ装着検出部61は、インクカートリッジ4が初回に装着されたことを検出して、インクが記録ヘッド3に最初に充填されたことを判定し、これによりタイマー回路60は最初にインクが充填された時点からのインクカートリッジ4の装着時間の計時を行う。なお、インクカートリッジ装着検出部61は、電気的検出部やメカ的検出部など、インクカートリッジ4の装着が検出可能なものであればよい。
上記の制御部56は、ROM54に記憶された動作プログラム等に従って記録ヘッド3によるインク滴の吐出制御やその他のプリンター1の各部を制御する。この制御部56は、外部I/F52を介して外部装置から入力された印刷データを、記録ヘッド3においてインク滴の吐出に用いられる吐出データに変換する。変換後の吐出データは、内部I/F59を通じて記録ヘッド3に転送され、記録ヘッド3では、この吐出データに基づいて駆動信号COMの圧電振動子30への供給が制御されてインク滴の吐出、つまり、記録動作(吐出動作)が行われる。
続いて、インクカートリッジ4内のインクに残存する気泡について説明する。本発明では、脱気された状態でインクカートリッジ4がキャリッジ5に装着されると、時間の経過と共にインク供給流路16の壁面などからの空気が透過して液体流路内に侵入することにより、インクカートリッジ4内のインクは気泡が飽和する飽和状態に徐々に近づく。そのため、プリンター1は、インクカートリッジ4MK,4FKの何れか一方のインクカートリッジ4からインクセレクター15が選択した他方のインクカートリッジ4に切り替える際に、気泡が飽和したインクカートリッジ4を、インクセレクター15を介して記録ヘッド3に供給してしまう虞がある。そのため、本発明のプリンター1は、インクカートリッジ4MK,4FKのうち何れか一方のインクカートリッジ4からインクセレクター15が選択した他方のインクカートリッジ4に切り替える際に、切替用駆動信号COM1を圧電振動子30に伝送(供給)し、この切替用駆動信号COM1に含まれる通常フラッシング用駆動信号NFLを用いた第1のフラッシング処理と、同じく切替用駆動信号COM1に含まれるSフラッシング用駆動信号SFLを用いた第2のフラッシング処理を行う。
図5は、上記構成の駆動信号発生回路58が発生する駆動信号の一つである通常フラッシング用駆動信号(第1の駆動信号に相当)の構成を説明する波形図であり、図6は、Sフラッシング用駆動信号(第2の駆動信号に相当)の構成を説明する波形図である。上記した制御部56は、圧電振動子30の駆動を制御する駆動信号COMを発生可能であり、インクカートリッジ4を切り替える際に、通常フラッシング用駆動信号NFLと、Sフラッシング用駆動信号SFLとを含む切替用駆動信号COM1を発生する。通常フラッシング(ノーマルフラッシング)用駆動信号NFLは、切り替え前のインクカートリッジ4から供給されたインクを、インクセレクター15が選択したインクカートリッジ4から供給されるインクに置換するように、圧電振動子30を駆動させるフラッシング波形であり、Sフラッシング用駆動信号SFLは、通常フラッシング用駆動信号NFLの後に発生され、インクカートリッジ4から供給されたインクに含まれる気泡が除去されるように、圧電振動子30を駆動させるフラッシング波形である。
図7は、通常フラッシング用駆動信号NFLに含まれるドット駆動パルスの構成の例を説明する波形図であリ、(a)は第1駆動パルスDP1の構成を説明する波形図であリ、(b)は第2駆動パルスDP2の構成を説明する波形図である。切替用駆動信号COM1のうち通常フラッシング用駆動信号NFLは、1画素分の区間(1吐出周期又は1記録周期)において、第1駆動パルスDP1と、第2駆動パルスDP2との2種類の駆動パルス(第1駆動パルスDP1を5つ、第2駆動パルスDP2を3つ)を一連に含み、これらを繰り返し単位としている。具体的には、本発明の通常フラッシング用駆動信号NFLは、1吐出周期(例えば、185.2μs)T1内に、第1駆動パルスDP11と、第1駆動パルスDP12と、第1駆動パルスDP13と、第2駆動パルスDP21と、第1駆動パルスDP14と、第2駆動パルスDP22と、第1駆動パルスDP15と、第2駆動パルスDP23とを含み、この順に所定周波数(例えば、5.4kHZ)で圧電振動子30に供給される。なお、通常フラッシング用駆動信号NFLは、Sフラッシング用駆動信号SFLよりも単位時間当りのインクの吐出量が多くなるように設定されている。
第1駆動パルスDP1は、時間幅t11(例えば、2.4μs)の間に基準電位VBから最高電位VH1まで一定勾配で電位を上昇させる第1予備膨張要素p11と、第1予備膨張要素p11の後端電位である最高電位VH1を一定時間(時間幅t12であって、例えば、3.3μs)維持する第1膨張ホールド要素p12と、時間幅t13(例えば、2.7μs)の間に最高電位VH1から最低電位VL1まで比較的急峻な勾配の電位差Vh1で電位を降下させる第1吐出要素p13と、最低電位VL1を一定時間(時間幅t14であって、例えば、4.1μs)維持する第1収縮ホールド要素p14と、時間幅t15(例えば、2.3μs)の間に最低電位VL1から基準電位VBまで一定勾配の電位差Vh2で電位を復帰させる第1復帰膨張要素p15とから構成されている。なお、電位差Vh2は、電位差Vh1の38%の値に設定されている。
第2駆動パルスDP2は、時間幅t21(例えば、2.4μs)の間に基準電位VBから最高電位VH1よりも低い値である最高電位VH2まで一定勾配で電位を上昇させる第1予備膨張要素p21と、第1予備膨張要素p21の後端電位である最高電位VH2を一定時間(時間幅t22であって、例えば、3.3μs)維持する第1膨張ホールド要素p22と、時間幅t23(例えば、2.7μs)の間に最高電位VH2から最高電位VH1よりも高い値である最低電位VL2まで比較的急峻な勾配の電位差Vh3で電位を降下させる第1吐出要素p23と、最低電位VL2を一定時間(時間幅t24であって、例えば、4.1μs)維持する第1収縮ホールド要素p14と、時間幅t25(例えば、2.3μs)の間に最低電位VL2から基準電位VBまで一定勾配の電位差Vh4で電位を復帰させる第1復帰膨張要素p25とから構成されている。なお、電位差Vh4は、電位差Vh3の38%の値に設定されており、電位差Vh3は、電位差Vh1の80%の値に設定されている。
駆動パルスDP1,DP2が圧電振動子30に供給されると次のように作用する。まず、予備膨張要素p11,p21が圧電振動子30に供給されると、当該圧電振動子29が収縮し、これに伴って圧力室38が基準電位VBに対応する基準容積から最高電位VH1,VH2(VH1>VH2)に対応する最大容積まで膨張する。これにより、ノズル開口35に露出しているメニスカスが圧力室38側に引き込まれる。この圧力室38の膨張状態は、膨張ホールド要素p12,p22の供給期間中に亘って一定に維持される。
膨張ホールド要素p12,p22の後に続いて吐出要素p13,p23が圧電振動子30に供給されると当該圧電振動子30が伸長し、これにより、圧力室38が上記最大容積から最低電位VL1,VL2(VL1<VL2)に対応する最小容積まで急激に収縮する。この圧力室38の急激な収縮によって圧力室38内のインクが加圧され、これにより、ノズル開口35からは数pl〜数十plのインク(駆動パルスDPMによるインク量>駆動パルスDPSによるインク量)が吐出される。この圧力室38の収縮状態は、収縮ホールド要素p14,p24の供給期間に亘って短時間維持され、その後、復帰膨張要素p15,p25が圧電振動子30に供給されて、圧力室38が最低電位VL1,VL2に対応する容積から基準電位VBに対応する基準容積まで復帰する。
このように、1吐出周期T1内に5つの第1駆動パルスDP1及び3つの第2駆動パルスDP2を含んで構成された通常フラッシング用駆動信号NFLが圧電振動子30に供給されることで、第1駆動パルスDP1によって、ノズル開口35からインク滴が5回(ショット)噴射され、また、第2駆動パルスDP2によって、ノズル開口35からインク滴が3回噴射され、この結果、1吐出周期T1内に合計8ショット分のインク滴(合計約51g)が記録紙7上に吐出される。これにより、切り替え前のインクカートリッジ4から供給されたインクは、インクセレクター15が選択したインクカートリッジ4から供給されるインクに置換される。なお、本発明の通常フラッシング用駆動信号NFLでは、この1吐出周期T1内に所定周波数(例えば、5.4kHZ)の通常フラッシング用駆動信号NFLを印加するこうとによる合計8ショット分の噴射を、フラッシング単位[seg](フラッシングセグメント)としている。そして、第1のフラッシング処理では、所定のフラッシングセグメント数(例えば、合計数万〜数十万セグメント)だけ通常フラッシング用駆動信号NFLが圧電振動子30に繰り返し供給されることで、液体流路内に残存する切替前のインクがノズル開口35から排出され、これにより、インクの置換が行われる。
図8は、Sフラッシング用駆動信号の駆動パルスの構成を説明する波形図である。切替用駆動信号COM1のうちSフラッシング用駆動信号SFLは、1画素分の区間(1吐出周期又は1記録周期)において、第3駆動パルスDP3を1つ含んで構成されている。具体的には、本発明のSフラッシング用駆動信号SFLは、1吐出周期(例えば、500.0μs)T2内に、第3駆動パルスDP3を1つ含み、所定周波数(例えば、2.00kHZ)で圧電振動子30に供給される。なお、Sフラッシング用駆動信号SFLは、通常フラッシング用駆動信号SFLよりも圧力室38に生じる圧力変動が高くなるように設定されている。
第3駆動パルスDP3は、台形状のパルス信号であって、時間幅t31(例えば、1.5μs)の間に基準電位VBから最高電位VH3まで一定の勾配の電位差Vh5で電位を上昇させる第1パルス要素P31と、第1パルス要素P31の後端電位である最高電位VH3を一定時間(時間幅t32であって、例えば、5.0μs)維持する第2パルス要素P32と、時間幅t33(例えば、1.5μs)の間に最高電位VH3から一定の勾配の電位差Vh5で電位を降下させる第3パルス要素P33とから構成されている。なお、電位差Vh5は、第1駆動パルスDPMの電位差Vh1と同一の値に設定されており、最頻値は24.6Vであって、下限値(15.0V)と上限値(34.0V)の間で適宜最適な値に設定される値である。
上記第3駆動パルスDP第3が圧電振動子30に供給されると次のように作用する。まず、予備膨張要素p31が圧電振動子30に供給されると、当該圧電振動子29が収縮し、これに伴って圧力室38が基準電位VBに対応する基準容積から最高電位VH3に対応する最大容積まで膨張する。これにより、ノズル開口35に露出しているメニスカスが圧力室38側に引き込まれる。この圧力室38の膨張状態は、膨張ホールド要素p32の供給期間中に亘って一定に維持される。膨張ホールド要素p32の後に続いて吐出要素p33が圧電振動子30に供給されると当該圧電振動子30が伸長し、これにより、圧力室38が上記最大容積から最低電位VL3に対応する最小容積まで急激に収縮する。この圧力室38の急激な収縮によって圧力室38内のインクが加圧され、第1駆動パルスDP1及び第2駆動パルスDP2の吐出要素p13,p23が圧電振動子30に印加(供給)されたときよりも高い圧力変動が生じ、これにより、ノズル開口35からはインクと共にインクに残存した気泡が吐出される。この第3駆動パルスDP3によって圧電振動子30が駆動されることにより、圧力室38内には、通常フラッシング用駆動信号NFLに含まれるドット駆動パルスの場合よりも大きな圧力変動が生じ、この圧力変動が気泡に作用することによってインク中への気泡の溶解が促される。
このように、1吐出周期T2内に上記第3駆動パルスDP3を1つ含んで構成されたSフラッシング用駆動信号SFLが圧電振動子30に供給されることで、ノズル開口35からインク滴が1回噴射される。また、上記したように比較的高い圧力変動によりインク中への気泡の溶解が促進される。なお、本発明のSフラッシング用駆動信号SFLでは、この1吐出周期T1内に所定周波数(例えば、2.0kHZ)のSフラッシング用駆動信号SFLを印加することによる合計1ショット分の噴射を、フラッシング単位[seg](フラッシングセグメント)としている。そして、第2のフラッシング処理では、所定のフラッシングセグメント数(例えば、合計数万〜数十万セグメント)だけSフラッシング用駆動信号SFLが圧電振動子30に繰り返し供給されることで、液体流路内のインクに残存する気泡がインク中に溶解される。その結果、液体流路内のインクに含まれる気泡が、その後のインクの吐出により当該インクと共に除去されることになる。
図9は、本発明に係るプリンター1においてインクの切替を繰り返し行い、各切替毎にインクが正常に吐出されるか否かを示した表である。この表において「繰り返し」は、インクの切替回数である。また、表における「NFL」の列は、1回の切替毎に第1のフラッシング処理のみが行われた場合を示し、「+SFL」の列は、第1のフラッシング処理だけではインクが正常に吐出されなかった場合(×)において、さらに第2のフラッシング処理が行われた場合を示している。「NFL」では、通常フラッシング用駆動信号NFLを圧電振動子30に対し10万seg印加している。また、「+SFL」では、通常フラッシング用駆動信号NFL及びSフラッシング用駆動信号SFLを10万seg印加している。図9によれば、第1のフラッシング処理のみを行って飽和インクの切替を行った(NFL)場合(切替数合計16回)の各切替時の吐出成功率は、81.3%であった。これに対し、第1のフラッシング処理と第2のフラッシング処理を併用したときの吐出成功率は、100.0%であった(NO.1)。同様な条件でインク(飽和インク)を30回)切り替えたときの測定(NO.2)では、第1のフラッシング処理のみを行った場合の吐出成功率は、93.3%であり、第1のフラッシング処理と第2のフラッシング処理を併用した場合の吐出成功率は、100.0%であった。
このように、本実施形態のプリンター1は、圧電振動子30を駆動させる駆動信号COMを発生させて、駆動信号COMを圧電振動子30に伝送するプリンターコントローラー50と、インクカートリッジ4MK,4FKのうち何れか1つのインクカートリッジ4の中からインクセレクター15が選択するインクセレクター15とを備え、インクカートリッジ4MK,4FKのうち何れか一方からインクセレクター15が選択した他方のインクカートリッジ4に切り替える際に、プリンターコントローラー50は、圧電振動子30に切替用駆動信号COM1を伝送し、切替用駆動信号COM1には、切り替え前のインクカートリッジ4から液体流路に供給されたインクを、インクセレクター15が選択したインクカートリッジ4から供給されるインクに置換するように、圧電振動子30を繰り返し駆動させる通常フラッシング用駆動信号NFLと、通常フラッシング用駆動信号NFLの後に発生され、インクカートリッジ4から供給されたインクに含まれる気泡を除去するように、圧電振動子30を駆動させるSフラッシング用駆動信号SFLとを含み、通常フラッシング用駆動信号NFLを用いた第1のフラッシング処理と、Sフラッシング用駆動信号SFLを用いた第2のフラッシング処理と、を実行するので、第1のフラッシング処理では、通常フラッシング用駆動信号NFLを圧電振動子30に供給することにより、切り替え前のインクカートリッジから液体流路に供給されたインクをインクセレクター15が選択したインクカートリッジから供給されるインクに効率良く置換できる。また、第2のフラッシング処理では、Sフラッシング用駆動信号SFLを圧電振動子30に供給することにより、気泡の除去を確実に行なうことができる。この結果、液体流路内に混入した気泡の排出性を向上させることができる。
また、本発明のプリンター1は、タイマー回路60をプリンターコントローラー50に備えており、例えば、インクカートリッジ4がキャリッジ5に取り付けられると、インクカートリッジ装着検出部61が検出した検出信号に基づいて、タイマー回路60は、このときの時間をインクカートリッジ4が装着された装着時間として計時を始める。このタイマー回路60は、インクカートリッジ4内のインクが圧力室38内に充填された状態で一定の温度で放置されると、インクが圧力室38内に充填されてから経過している日数(時間)を累積(算出)する。そして、制御部56は、その累積した経過時間を予め算出されたルックアップテーブルと照合して、切替用駆動信号COM1を変更(補正)するように構成されている。
具体的には、制御部56は、インクセレクター15が選択したインクカートリッジ4に関する装着時間が短い程、通常フラッシング用駆動信号NFLに対するSフラッシング用駆動信号SFLの発生割合(合計セグメント数を維持したまま)を減らすように切替用駆動信号COM1を変更する。これに応じて、第1のフラッシング処理に対する第2のフラッシング処理の実行割合が低減される。これにより、インクセレクター15により選択されたインクカートリッジ4内のインクに溶存する気泡の濃度に応じて適切な条件でフラッシング処理を行うことができる。即ち、選択したインクカートリッジ4内のインクに溶存する気泡の濃度が高いときには、Sフラッシング用駆動信号SFLに対する通常フラッシング用駆動信号NFLの発生割合を高めた切替用駆動信号COM1を圧電振動子30に供給することによって、切り替え前のインクカートリッジ4から供給されたインクを効率良く置換できると共に、選択したインクカートリッジ4内のインクに溶存する気泡の濃度が低いときには、通常フラッシング用駆動信号NFLに対するSフラッシング用駆動信号SFLの発生割合を高めた切替用駆動信号COM1を圧電振動子30に供給することによって、インクの無駄な消費を抑制することができる。
また、本発明のプリンター1においては、プリンターコントローラー50は、通常フラッシング用駆動信号NFL及びSフラッシング用駆動信号SFLを繰り返し発生する、つまり、第1のフラッシング処理と第2のフラッシング処理とを交互に行うので、通常フラッシング用駆動信号NFLを圧電振動子30に供給することによって、液体流路内のインクに残存する気泡を圧力室38内に移送した後に、Sフラッシング用駆動信号SFLを圧電振動子30に供給することによって、圧力室38内に運ばれた気泡をノズル開口35から排出させ易くなる。この結果、液体流路内に混入した気泡の排出性を向上させることができる。
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
上記実施形態では、本発明における通常フラッシング用駆動信号NFLの一例として、図5,7に示す通常フラッシング用駆動信号NFLを挙げたが、パルスの形状は例示したものに限られず、また、本発明におけるSフラッシング用駆動信号SFLの一例として、図6,8に示すSフラッシング用駆動信号SFLを挙げたが、パルスの形状は例示したものに限られず、任意の波形のものを用いることができる。
また、第1のフラッシング処理のセグメント数、及び、第2のフラッシング処理のセグメント数については、任意の値に設定することができる。
上記実施形態では、本発明における通常フラッシング用駆動信号NFLの一例として、図5,7に示す通常フラッシング用駆動信号NFLを挙げたが、パルスの形状は例示したものに限られず、また、本発明におけるSフラッシング用駆動信号SFLの一例として、図6,8に示すSフラッシング用駆動信号SFLを挙げたが、パルスの形状は例示したものに限られず、任意の波形のものを用いることができる。
また、第1のフラッシング処理のセグメント数、及び、第2のフラッシング処理のセグメント数については、任意の値に設定することができる。
また、上記実施形態においては、圧力振動子30として、所謂縦振動型圧電素子を用いる例を示したが、本発明の圧電素子は、これに限らず、例えば、撓み振動モードの圧電素子などを採用することもできる。また、圧力振動子30は、磁歪素子などでもよいし、気泡を発生させるインクを使用する場合の発熱素子でもよい。
以上は、液体噴射装置の一種であるプリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルターを製造するディスプレー製造装置、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーやFED(面発光ディスプレー)等の電極を形成する電極製造装置、バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置等にも適用することができる。
1…プリンター、3…記録ヘッド、4…インクカートリッジ、15…インクセレクター、16…インク供給流路、18…連通孔、19…空部、30…圧電振動子、35…ノズル開口、36…リザーバー、37…インク供給口、38…圧力室、50…プリンターコントローラー、60…タイマー回路、COM1…切替用駆動信号、NFL…通常フラッシング用駆動信号、SFL…Sフラッシング用駆動信号
Claims (5)
- 複数の液体カートリッジのうち一の液体カートリッジ内の液体を、圧力室を含む液体流路を介してノズル群に供給し、
前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段の駆動によってノズル開口から液滴を噴射する液体噴射装置であって、
前記圧力発生手段を駆動させる駆動信号を発生させて、当該駆動信号を前記圧力発生手段に伝送する駆動手段と、
前記複数の液体カートリッジの中から前記一の液体カートリッジを選択する選択手段とを備え、
前記複数の液体カートリッジの中から前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジに切り替える際に、前記駆動手段は、前記圧力発生手段に切替用駆動信号を伝送し、
当該切替用駆動信号には、
切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を、前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジから供給される液体に置換するように、前記圧力発生手段を繰り返し駆動させる第1の駆動信号と、
前記第1の駆動信号の後に発生され、前記液体カートリッジから液体流路に供給された液体に含まれる気泡を除去するように、前記圧力発生手段を駆動させる第2の駆動信号とを含み、
前記第1の駆動信号を用いた第1のフラッシング処理と、前記第2の駆動信号を用いた第2のフラッシング処理と、を実行することを特徴とする液体噴射装置。 - 前記液体カートリッジを前記液体噴射装置に装着してからの装着時間を計時する計時部を備え、複数の液体カートリッジの中から前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジに切り替える際に、当該選択手段が選択した前記一の液体カートリッジに関する前記装着時間に基づいて切替用駆動信号を変更することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
- 前記選択手段が選択した前記一の液体カートリッジに関する前記装着時間が短い程、前記第1の駆動信号に対する前記第2の駆動信号の発生割合を減らすように切替用駆動信号を変更することを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
- 前記駆動手段は、前記第1のフラッシング処理及び前記第2のフラッシング処理を交互に繰り返し実行することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
- 複数の液体カートリッジのうち一の液体カートリッジ内の液体を、圧力室を含む液体流路を介してノズル群に供給し、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段の駆動によってノズル開口から液滴を噴射する液体噴射装置の制御方法であって、
前記複数の液体カートリッジの中から選択された前記一の液体カートリッジに切り替える際に、前記圧力発生手段を駆動させる切替用駆動信号を発生させて、当該切替用駆動信号を前記圧力発生手段に伝送し、
当該切替用駆動信号には、切り替え前の液体カートリッジから液体流路に供給された液体を、選択された前記一の液体カートリッジから供給される液体に置換するように、前記圧力発生手段を駆動させる第1の駆動信号と、前記第1の駆動信号の後に発生して、前記液体カートリッジから供給された液体に含まれる気泡を除去するように、前記圧力発生手段を駆動させる第2の駆動信号とを含み、
前記第1の駆動信号を用いた第1のフラッシング処理と、前記第2の駆動信号を用いた第2のフラッシング処理と、を実行することを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US9039115B2 (en) | 2013-10-30 | 2015-05-26 | Seiko Epson Corporation | Liquid ejecting apparatus |
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