以下、この発明の実施例について、図1〜図8−3に基づいて説明する。
図1に示すように、塗装用空調システム1は、塗装ブース用空調機2と、冷水発生装置3と、蒸気発生装置4と、塗装用空調システム1を構成している制御盤5等を備えている。冷水発生装置3は、外部から電気とガスの供給を受けて冷水を生成可能に構成されている。蒸気発生装置4は、外部から電気とガスの供給を受けて蒸気を生成可能に構成されている。
塗装ブース用空調機2は、ハウジング6と、送風ファン8と、外気取入口7a近傍に配置された加湿装置9と、加湿装置9の下流側に配置された冷却装置10と、冷却装置10の下流側に配置された加温装置11等を備えている。ハウジング6は、上流側に外気を導入可能な外気取入口7aを備え、調温調湿装置6の周囲を被う略立方体状に形成されている。
送風ファン8は、ハウジング6の下流側から調温調湿された空調空気を塗装ブース(図示略)に給気可能に構成されている。加湿装置9と冷却装置10と加温装置11は、取入口7aから送風ファン8に向かって略直線状に配置されている。取入口7aには、空調機2内のゴミ等の異物侵入を防止するため、取入口前面にフィルタ7bが設けられている。
次に、加湿装置9の構造について説明する。加湿装置9は、取入口7aから導入された外気に所定量の水分量を吸収させる装置である。
加湿装置9は、水分を散水可能な散水部9aと、貯留タンク9bと、循環通路9cと、循環ポンプ9dと、加熱ヒータ9e等を備えている。
散水部9aは、取入口7aに対向して立設され、導入外気に対向して霧化した水分を散水可能に構成されている。貯留タンク9bは、滴下した余剰水分を散水部9a下方で受けて貯留可能に構成されている。循環通路9cは、貯留タンク9bで貯留された水分を散水部9aまで循環可能に構成されている。循環ポンプ9dは、循環通路9cの途中部に設けられ、貯留タンク9bに貯留された水分を散水部9aへ圧送可能に構成されている。
加熱ヒータ9eは、散水部9aの下流側で循環通路9cの途中部に配置され、圧送途中の水を蒸気によって加熱可能に構成されている。加熱ヒータ9eは、導入外気の温度を下げることなく、霧化した水分を気化し、空気を加湿するための熱量(エンタルピ)を循環通路9cを循環する水に与えるよう構成されている。
加熱ヒータ9eは、周知のスチームコイルであり、所定長を有するスチーム管(図示略)が循環通路9cの回りに積層状に畳まれて形成されている。スチーム管に所定温度、例えば、140℃に調整された蒸気が蒸気発生装置4から供給され、加熱ヒータ9eが発熱する。循環通路9cを通過した水分は加熱霧化されるため、空気に吸収される水分量を増すことができ、加湿効率を高くすることができる。
次に、冷却装置10の構造について説明する。冷却装置10は、空気を所定温度まで冷却し、空気の相対湿度を上昇させる装置である。冷却装置10は、積層状に畳まれた冷却管(図示略)を内部に備え、この冷却管に所定温度、例えば、7℃に調整された冷却水が冷水発生装置3から供給される。この冷却管を冷却水が通過することにより、冷却装置10全体の温度が低下し、冷却装置10から放射された冷気が、冷却装置10に接触する空気を冷却するように構成されている。冷却装置10では、通過する冷却水の流量を調整することにより、空調空気の温度及び相対湿度を調整することができる。
この冷却装置10は、空気中に含まれる水分を除去する除湿機能も備えている。除湿を行う場合、冷却管を通過する冷却水の流量を調整して、空気中の水分を結露させ、空調空気の絶対湿度を低減可能に構成されている。尚、除湿と冷却を別々の装置で実行することも可能である。
次に、加温装置11の構造について説明する。加温装置11は、調温調湿装置6の最下流位置に配置され、調温調湿装置6内を流れる空気に対して対向するように配設されている。加温装置11は、加熱ヒータ9eと同様に、スチームコイル式のヒータで構成されている。また、加温装置11内を蒸気発生装置4から供給された蒸気が通過することによって、加温装置11全体が高温となり、加温装置11と接触する通過空気を加熱する。加温装置11では、通過する蒸気の流量を調整することにより、空調空気の温度及び相対湿度を調整することができる。
空調機2には、温湿度センサ12a,12bと、温度/湿度変換器13a,13bと、加湿装置9と冷却装置10の間に配置され空調機2内の空気温度を検出可能な温度センサ14が設けられている。温度/湿度変換器13a,13bは、温湿度センサ12a,12bからの信号を受けて空気の温度と相対湿度が変換可能に構成されている。
温湿度センサ12aは、外気取入口7aの上流側近傍に配置され、空調機2に導入された外気の温湿度を検出可能に構成されている。温湿度センサ12bは、送風ファン8の下流側近傍に配置され、空調機2から塗装ブースに送風される空調空気の温湿度を検出可能に構成されている。夫々のセンサで検出された温度と相対湿度は、温度/湿度変換器13a,13bから制御盤5へ送信される。
冷水発生装置3は、外部から供給された電力量を検出可能な電力計15aと、外部から供給された燃焼ガス流量を検出可能な流量計16aと、冷却水を冷却装置10に供給するための冷却水通路18等から構成されている。電力計15aと流量計16aから検出された電力量と燃焼ガス流量は、制御盤5へ送信される。
冷却水通路18の途中部には、冷却装置10に供給する冷却水流量を調節可能な調節弁17aが設けられ、制御盤5の指令信号によって開閉制御可能に構成されている。
循環ポンプ9dには、供給された電力量を検出可能な電力計15cと循環ポンプ9dの吐出流量を制御する電力調整器27へ供給された電力量を検出可能な電力計15dが設置され、検出された電力量は電力計15c,15dから制御盤5へ送信される。
蒸気発生装置4は、外部から供給された電力量を検出可能な電力計15bと、外部から供給された燃焼ガス流量を検出可能な流量計16bと、蒸気通路19と、蒸気通路19から分岐した蒸気通路20が設置されている。電力計15bと流量計16bから検出された電力量と燃焼ガス流量は、制御盤5へ送信される。
蒸気通路19は加熱ヒータ9eに接続され、蒸気通路19の途中部には加熱ヒータ9eに供給する蒸気流量を調節可能な調節弁17bが設けられ、制御盤5の指令信号に応じて開閉制御可能に構成されている。蒸気通路20は加熱装置11に接続され、蒸気通路20の途中部には加熱装置11に供給する蒸気流量を調節可能な調節弁17cが設けられ、制御盤5の指令信号に応じて開閉制御可能に構成されている。
次に、制御盤5について説明する。制御盤5は、前記複数のセンサ及び測定計の検出信号に基づき、空調機2と冷水発生装置3と蒸気発生装置4等を制御している。
制御盤5は、CPU、ROM、及びRAM等を備えた制御部21と、温度調節部22と、絶対湿度調節部23と、温度調節計24と、ハイセッタ設定器25と、電圧/電流変換器26と、電力調整器27と、表示灯28から構成されている。尚、ROMには、予め、Wexeler-Hylandの算出式や絶対湿度算出式、比エンタルピ算出式等温湿度調節に必要な関係式及び各定数が記憶され、RAMには、各種演算を行うためのプログラムが格納されている。
制御部21には、温度/湿度変換器13a,13bと、電力計15a,15b,15c,15dと、流量計16a,16bから各検出信号が入力されるように構成されている。制御部21は、温度/湿度変換器13aから得られた導入外気の温度t(℃)と相対湿度φ(%)とROMに記憶された各関係式に基づき、空調機2を作動し、導入外気の絶対湿度を維持した目標温湿度T1に制御する第1制御と導入外気の温度を維持した目標温湿度T2に制御する第2制御とを実行可能に構成されている。第1制御では、冷却制御モード、加温制御モードのうち一方の制御モードを実行し、第2制御では、加湿制御モード、除湿制御モードのうち一方の制御モードを実行するよう構成されている。
また、制御部21は、各制御モードの実行に必要となるエネルギー量Eを算出し、算出されたエネルギー量Eが最小となる制御モードを選択可能に構成されている。具体的には、制御部21は、各制御モードを実行したときの空気のエンタルピ変化量Pと、各制御モードにおける空調機2が実際の作動に使用するエネルギー原単位ΔEとを用いてエネルギー量Eを演算し、各制御モードの実行に必要となるエネルギー量Eが最小となる制御モードを選択している。
各制御モードの実行に必要となるエネルギー量Eとは、各制御モードで作動する調節装置(加湿装置9,冷却装置10,加温装置11)の動力源の使用エネルギー量として定義している。従って、冷却制御モードでは、冷却装置10の作動に必要な冷水発生装置3の電力及び燃焼ガスに関するエネルギー量Ecl、加温制御モードでは、加温装置11の作動に必要な蒸気発生装置4の電力及び燃焼ガスに関するエネルギー量Eht、加湿制御モードでは、加熱ヒータ9eの作動に必要な蒸気発生装置4の電力及び燃焼ガスに関するエネルギー量と循環ポンプ9dの作動に必要な循環ポンプ9dの電力に関するエネルギー量とが合計されたエネルギー量Ewt、除湿制御モードでは、冷却装置10の作動に必要な冷水発生装置3の電力及び燃焼ガスに関するエネルギー量Edyが、夫々の制御モードの実行に必要となるエネルギー量Eに相当している。
制御部21は、空気の絶対湿度と各制御目標値との偏差に基づいて、選択された制御モード以外の制御モードを実行する周辺装置の運転状態を制御するよう構成されている。選択された制御モードの制御余裕度Bを求め、この制御余裕度Bがその他周辺装置の停止可能レベルD以上のとき、周辺装置を停止状態とし、運動要求レベルC以下のとき、停止中の周辺装置を待機状態に制御している。尚、余裕度Bとは、制御目標値となる絶対湿度又は飽和絶対湿度と導入外気の絶対湿度又は飽和絶対湿度との差分によって算出している。
次に、制御部21の各調節処理について具体的に説明する。
制御部21が第1制御を行う場合、空調空気の目標温湿度は、導入外気の重量絶対湿度において、この重量絶対湿度を維持した状態で且つ制御対象となる任意な温度における飽和重量絶対湿度から所定偏差低い状態となる温度によって設定する。また、制御部21が第2制御を行う場合、目標温湿度は、導入外気の温度において、この温度を維持した状態で且つ制御対象となる任意な重量絶対湿度がこの温度における飽和重量絶対湿度から所定偏差低い状態となる重量絶対湿度によって設定する。
制御部21は、調節制御に先立ち、以下の前処理を実行する。
[前処理] 導入外気の温度t(℃)における重量絶対湿度Wt(kg/kg(DA))と、導入外気の温度t(℃)における飽和重量絶対湿度Wst(kg/kg(DA))と、導入外気の重量絶対湿度Wtを維持するときに制御目標値となる第1目標湿度W1(kg/kg(DA))と、外気温度t(℃)を維持するときに制御目標値となる第2目標湿度W2(kg/kg(DA))と、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度になる目標給気温度t1(℃)を演算する。
ここで、第1制御の目標温湿度T1は、温度t1と重量絶対湿度Wtであり、第2制御の目標温湿度T2は、温度tと第2目標湿度W2と同じ重量絶対湿度W2に設定されている。尚、「重量絶対湿度」とは、現在の湿り空気中に含まれる水蒸気の重量(kg)を、乾き空気(Dry Air)の重量の1kg中に含まれる水蒸気量に換算した値であり、空気中に含まれる水蒸気の重量(kg)を示すものである。
第1目標湿度W1と第2目標湿度W2は、重量絶対湿度Wtと飽和重量絶対湿度Wstに基づいて、下記式(1)及び式(2)で演算することができる。
W1=Wt+ΔW (1)
W2=Wst−ΔW (2)
尚、ΔW(kg/kg(DA))は、塗装ブースに給気される空調空気の飽和重量絶対湿度Wstに対する乾き偏差値であり、空調空気の飽和重量絶対湿度と重量絶対湿度との差分で示すことができる。それ故、水性塗料の乾燥速度を一定にする場合、例えば、ΔWを10g±1gに設定することができる。また、塗装環境や塗料の種類等に応じてΔWを任意に設定することができる。
[上下限値対応制御] 制御部21は、予め作業環境等の条件から設定された給気下限温度tL(℃)とこの下限温度tLに対応した乾き重量絶対湿度となる目標下限湿度WL(kg/kg(DA))を演算している。また、制御部21は、給気上限温度tU(℃)とこの上限温度tUに対応した乾き重量絶対湿度となる目標上限湿度WU(kg/kg(DA))を演算している。例えば、下限温度tLは15℃、上限温度tUは30℃に夫々設定されている。第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度になる目標給気温度、つまり、目標温湿度T1の温度t1が給気下限温度tLよりも低い場合、下限温度tLと目標下限湿度WLを目標温湿度に選択するように構成されている。また、目標温湿度T1の温度t1が上限温度tUよりも高い場合、上限温度tUと目標下限湿度WUを目標温湿度に選択するように構成されている。
制御部21は、前処理の結果に基づき、以下の演算処理を行うよう構成されている。
[冷却制御モード演算処理] 第1目標湿度W1<飽和重量絶対湿度Wstのとき、冷却制御モード演算処理を実行する。冷却制御モードでは、導入空気を温度t1と重量絶対湿度Wtの目標温湿度T1に調節する。そこで、冷却装置10を作動させて空気を目標温湿度T1に制御した場合のエンタルピ変化量Pcl(kJ/kg(DA))を算出する。
図2に空気線図(Psychrometric Chart: 湿り空気h−x線図)で示すように、空調機2は、温度t、重量絶対湿度Wtの外気S(t,Wt)を導入している。重量絶対湿度Wtを維持した状態で飽和重量絶対湿度WstをA1方向に移動すると、第1目標湿度W1を飽和重量絶対湿度Wstとした空気を生成することができる。この第1目標湿度W1を飽和重量絶対湿度Wstとした空気の温度は、温度t1に冷却される。つまり、導入外気を重量絶対湿度Wtを維持した状態でB1方向に冷却すると、飽和重量絶対湿度Wstから偏差値ΔW低い空調空気のT1(t1,Wt)を生成することができる。
また、図2に示すように、導入外気が冷却された場合、導入外気のエンタルピと冷却制御後の空気のエンタルピには差異が存在している。この導入外気のエンタルピと冷却制御後の空気のエンタルピの差分を求めることによって、エンタルピ変化量Pclを算出している。
更に、エンタルピ変化量Pclと冷却装置10が実際の作動に使用するエネルギー原単位ΔEclとを用いて、実際の装置作動に必要なエネルギーEcl(kJ/h)を算出する。そして、式(3)によって、制御余裕度Bclを演算し、この制御余裕度Bclが周辺装置の停止可能レベルDcl以上の場合、冷却制御モードで使用しない加湿装置9、加温装置11等の周辺装置を停止状態とし、運転要求レベルCcl以下では停止中の周辺装置を待機状態に起動している。
Bcl=Wst−W1 (3)
[加温制御モード演算処理] 第1目標湿度W1>飽和重量絶対湿度Wstのとき、加温制御モード演算処理を実行する。加温制御モードでは、導入空気を温度t1と重量絶対湿度Wtの目標温湿度T1に調節する。そこで、加温装置11を作動させて空気を目標温湿度T1に制御した場合のエンタルピ変化量Pht(kJ/kg(DA))を算出する。
図3に空気線図で示すように、空調機2は、温度t、重量絶対湿度Wtの外気S(t,Wt)を導入している。重量絶対湿度Wtを維持した状態で飽和重量絶対湿度WstをA2方向に移動すると、第1目標湿度W1を飽和重量絶対湿度Wstとした空気を生成することができる。この第1目標湿度W1を飽和重量絶対湿度Wstとした空気の温度は、温度t1に加温される。つまり、導入外気の重量絶対湿度Wtを維持した状態でB2方向に加温すると、飽和重量絶対湿度Wstから偏差値ΔW低い空調空気のT1(t1,Wt)を生成することができる。
また、図3に示すように、導入外気が加温された場合、導入外気のエンタルピと加温制御後の空気のエンタルピには差異が存在している。この導入外気のエンタルピと加温制御後の空気のエンタルピの差分を求めることによって、エンタルピ変化量Phtを算出している。
更に、エンタルピ変化量Phtと加温装置11が実際の作動に使用するエネルギー原単位ΔEhtとを用いて、実際の装置作動に必要なエネルギーEht(kJ/h)を算出する。そして、式(4)によって、制御余裕度Bhtを演算し、この制御余裕度Bhtが周辺装置の停止可能レベルDht以上の場合、加温制御モードで使用しない加湿装置9、冷却装置10等の周辺装置を停止状態とし、運転要求レベルCht以下では停止中の周辺装置を待機状態に起動している。
Bht=W1−Wst (4)
[加湿制御モード演算処理] 第2目標湿度W2>重量絶対湿度Wtのとき、加湿制御モード演算処理を実行する。加湿制御モードでは、導入空気を温度tと重量絶対湿度W2の目標温湿度T2に調節する。そこで、加湿装置9を作動させて空気を目標温湿度T2に制御した場合のエンタルピ変化量Pwt(kJ/kg(DA))を算出する。
図4に空気線図で示すように、空調機2は、温度t、重量絶対湿度Wtの外気S(t,Wt)を導入している。温度tを維持した状態で重量絶対湿度WtをA3方向に移動すると、重量絶対湿度Wtを第2目標湿度W2まで増加させた空気を生成することができる。つまり、導入外気を温度tを維持した状態でB3方向に加湿すると、飽和重量絶対湿度Wstから偏差値ΔW低い空調空気のT2(t,W2)を生成することができる。
また、図4に示すように、導入外気が加湿された場合、導入外気のエンタルピと加湿制御後の空気のエンタルピには差異が存在している。この導入外気のエンタルピと加湿制御後の空気のエンタルピの差分を求めることによって、エンタルピ変化量Pwtを算出している。
更に、エンタルピ変化量Pwtと加湿装置9が実際の作動に使用するエネルギー原単位ΔEwtとを用いて、実際の装置作動に必要なエネルギーEwt(kJ/h)を算出する。そして、式(5)によって、制御余裕度Bwtを演算し、この制御余裕度Bwtが周辺装置の停止可能レベルDwt以上の場合、加湿制御モードで使用しない除湿装置として兼用している冷却装置10等の周辺装置を停止状態とし、運転要求レベルCwt以下では停止中の周辺装置を待機状態に起動している。
Bwt=W2−Wt (5)
[除湿制御モード演算処理] 第2目標湿度W2<重量絶対湿度Wtのとき、除湿制御モード演算処理を実行する。除湿制御モードでは、導入空気を温度tと重量絶対湿度W2の目標温湿度T2に調節する。そこで、冷却装置10を作動させて空気を目標温湿度T2に制御した場合のエンタルピ変化量Pdy(kJ/kg(DA))を算出する。
図5に空気線図で示すように、空調機2は、温度t、重量絶対湿度Wtの外気を導入している。温度tを維持した状態で重量絶対湿度WtをA4方向に移動すると、重量絶対湿度Wtを第2目標湿度W2まで減少させた空気を生成することができる。つまり、導入外気を温度tを維持した状態でB4方向に除湿すると、飽和重量絶対湿度Wstから偏差値ΔW低い空調空気のT2(t,W2)を生成することができる。
また、図5に示すように、導入外気が除湿された場合、導入外気のエンタルピと除湿制御後の空気のエンタルピには差異が存在している。この導入外気のエンタルピと除湿制御後の空気のエンタルピの差分を求めることによって、エンタルピ変化量Pdyを算出している。
更に、エンタルピ変化量Pdyと除湿装置(冷却装置10)が実際の作動に使用するエネルギー原単位ΔEdyとを用いて、実際の装置作動に必要なエネルギーEdy(kJ/h)を算出する。そして、式(6)によって、制御余裕度Bdyを演算し、この制御余裕度Bdyが周辺装置の停止可能レベルDdy以上の場合、除湿制御モードで使用しない加湿装置9等の周辺装置を停止状態とし、運転要求レベルCdy以下では停止中の周辺装置を待機状態に起動している。
Bdy=Wt−W2 (6)
尚、各制御モードで使用されるエネルギー原単位ΔE(ΔEcl,ΔEht,ΔEwt,ΔEdy)は、予めROMに記憶されている。
制御部21は、前記演算処理の結果に基づいて、以下の制御モードを実行する。
[冷却制御モード] 冷却制御モードを実行する場合、制御目標となる温度t1の実行信号は、制御目標値として温度調節計22bに出力され、この温度調節計22bには温度/湿度変換器13bの温度信号が測定値として入力されており、この温度調節計22bの制御出力信号はハイセッタ設定器25に入力される。ハイセッタ設定器25は、絶対湿度調節計23bから同時に制御出力信号が入力された場合、高い方の入力信号を選択する。選択された高い方の入力の制御出力信号は、調節弁17aへ出力される。調節弁17aは、制御出力信号の量に対応した開度に開閉して操作量の冷水の流量を制御する。
[加温制御モード] 加温制御モードを実行する場合、制御目標となる温度t1の実行信号は、制御目標値として温度調節計22aに出力され、この温度調節計22aには温度/湿度変換器13bの温度信号が測定値として入力されており、この温度調節計22aの制御出力信号は、調節弁17cへ出力される。調節弁17cは、制御出力信号の量に対応した開度に開閉して操作量の加熱蒸気の流量を制御する。
[加湿制御モード] 加湿制御モードを実行する場合、制御目標となる重量絶対湿度W2の実行信号は、制御目標値として絶対湿度調節計23aに出力され、この絶対湿度調節計23aには温度/湿度変換器13bの温湿度信号から算出された絶対湿度信号が測定値として入力されており、この絶対湿度調節計23aの制御出力信号は、電力調節器27を経由して循環ポンプ9dの回転数を調節して操作量の吐出流量を制御する。尚、加湿制御モードでは、導入外気温度を変化させないため、加湿後の空気温度を温度センサ14によって検出し、加湿装置9の作動と加熱ヒータ9eの作動とを連動制御している。従って、加湿後の空気温度が導入外気温度よりも低下する場合、温度調節計24を介して調節弁17bが開閉制御され、霧化する水分の加熱を行っている。
尚、温度調節計22a,22b,24は、夫々予め設定されたPID定数を備えており、入力信号に基づき制御モードに応じた制御信号を出力するように構成されている。
また、温度調節計22a,22b,24の制御動作は、夫々予め逆動作モードへ設定されており、調節弁を全閉して調節動作を停止させる場合、調節動作を停止させる温度調節計の制御目標値には測定入力値の最小値に相当する0%の信号が出力されように構成させている。
[除湿制御モード] 除湿制御モードを実行する場合、制御目標となる重量絶対湿度W2の実行信号は、制御目標値として絶対湿度調節計23bに出力され、この絶対湿度調節計23bには温度/湿度変換器13bの温湿度信号から算出された絶対湿度信号が測定値として入力されており、この絶対湿度調節計23bの制御出力信号は、ハイセッタ設定器25に入力される。ハイセッタ設定器25は、温度調節計22bから同時に制御出力信号が入力された場合、高い方の入力信号を選択する。選択された高い方の入力の制御出力信号は、調節弁17aへ出力される。調節弁17aは、制御出力信号の量に対応した開度に閉して操作量の冷水の流量を制御する。尚、絶対湿度調節計23a,23bは、夫々予め設定されたPID定数を備えており、入力信号に基づき制御モードに応じた制御信号を出力するように構成されている。また、絶対湿度調節計23a,23bの制御動作は、夫々予め正動作モードへ設定されており、調節弁を全閉して調節動作を停止させる場合、調節動作を停止させる温度調節計の制御目標値には測定入力値の最大値に相当する100%の信号が出力されように構成させている。
表示灯28は、作業者に空調機2の作動状態を知らせるように構成されている。表示灯28は、マトリックス状に、例えば、4×4個の表示ランプが設置されている。夫々のランプには、立上げ異常予報、給気乾き湿度異常予報、制御相対湿度異常予告、制御温度異常予報等の異常予報に関する情報と、立上げ異常警報、給気乾き湿度異常警報、制御相対湿度異常警報、制御温度異常警報予報等の異常警報に関する情報と給気乾き湿度正常情報の表示が割当てられている。また、冷却制御、加温制御、加湿制御、除湿制御、冷水装置運転、蒸気装置高負荷運転、蒸気装置低負荷運転等の設備運転状態が表示されるように構成されている。
次に、図6−1,図6−2のフローチャートに基づき、本空調システム1のモード選択制御について説明する。尚、Si(i=1,2…)は各処理ステップを示す。
まず、作業者が塗装ブースを運転するため、制御盤5の運転起動プッシュボタンをオンしたか否か判定する(S1)。プッシュボタンをオンしない場合、判定を継続する。
プッシュボタンをオンした場合、予め作業環境等の条件から設定された給気下限温度tL、例えば、15℃を読込み、この下限温度tLに対応した目標下限湿度WLを算出する(S2)。次に、予め作業環境等の条件から設定された給気上限温度tU、例えば、30℃を読込み、この上限温度tUに対応した目標上限湿度WUを算出する(S3)。各制御モードで空調機2が実際に使用するエネルギー量の原単位ΔE(ΔEcl,ΔEht,ΔEwt,ΔEdy)をRAMから読込む(S4)。
温湿度センサ12aによって、空調機2に導入された導入外気の温度t(℃)と相対湿度φ(%)を計測する(S5)。相対湿度φと関係式に基づいて温度tにおける導入外気の重量絶対湿度Wtを算出し(S6)、温度tにおける導入外気の飽和重量絶対湿度Wstを算出する(S7)。
次に、塗装ブースに供給される空調空気の飽和重量絶対湿度に対する乾き偏差値ΔWと重量絶対湿度Wtを式(1)に代入して、第1目標湿度W1を算出する(S8)。また、偏差値ΔWと飽和重量絶対湿度Wstを式(2)に代入して、第2目標湿度W2を算出する(S9)。更に、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wstになる目標給気温度t1を関係式に基づいて算出する(S10)。
温度t1が下限温度tLよりも低いか否か判定する(S11)。S11の判定の結果、温度t1が下限温度tL以上の場合、S12に移行し、温度t1が上限温度tUよりも高いか否か判定する。S12の判定の結果、目標給気温度t1が給気上限温度tU以下の場合、S13に移行する。
S11の判定の結果、温度t1が下限温度tL未満の場合、目標温湿度を下限温度tLと目標下限湿度WLに設定し(S31)、S30に移行する。
S12の判定の結果、温度t1が上限温度tUよりも高い場合、目標温湿度を上限温度tUと目標上限湿度WUに設定し(S32)、S30に移行する。
S13では、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wstよりも低いか否か判定する。S13の判定の結果、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wstよりも低い場合(図2参照)、S14に移行し、冷却制御モードにおける目標温湿度T1(t1,Wt)を設定する。次に、導入外気の温度tと重量絶対湿度Wtから決定されるエンタルピと冷却制御後の目標温湿度T1から決定されるエンタルピとの変化量(Pcl)を算出する(S15)。次に、冷却制御モードにおいて、冷却装置10が、実際にエンタルピ変化量Pclを変化させるために必要なエネルギー量Eclを使用エネルギー原単位ΔEclから算出する(S16)。尚、S13の判定の結果、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wst以上の場合、S17に移行する。
S17では、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wst以上か否か判定する。S17の判定の結果、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wst以上の場合(図3参照)、S18に移行し、加温制御モードにおける目標温湿度T1(t1,Wt)を設定する。次に、導入外気の温度tと重量絶対湿度Wtから決定されるエンタルピと加温制御後の目標温湿度T1から決定さ出する(S19)。次に、加温制御モードにおいて、加温装置11が、実際にエンタルピPhtを変化させるために必要なエネルギー量Ehtを使用エネルギー原単位ΔEhtから算出する(S20)。尚、S17の判定の結果、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wstよりも低い場合、S21に移行する。
S21では、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wt以上か否か判定する。S21の判定の結果、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wt以上の場合(図4参照)、S22に移行し、加湿制御モードにおける目標温湿度T2(t,W2)を設定する。次に、導入外気の温度tと重量絶対湿度Wtから決定されるエンタルピと加湿制御後の目標温湿度T2から決定されるエンタルピとの変化量Pwtを算出する(S23)。次に、加湿制御モードにおいて、加湿装置9が、実際にエンタルピPwtを変化させるために必要なエネルギー量Ewtを使用エネルギー原単位ΔEwtから算出する(S24)。尚、S21の判定の結果、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wtよりも低い場合、S25に移行する。
S25では、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wtよりも低いか否か判定する。S25の判定の結果、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wtよりも低い場合(図5参照)、S26に移行し、除湿制御モードにおける目標温湿度T2(t,W2)を設定する。次に、導入外気の温度tと重量絶対湿度Wtから決定されるエンタルピと除湿制御後の目標温湿度T2から決定されるエンタルピとの変化量Pdyを算出する(S27)。次に、除湿制御モードにおいて、除湿装置10が、実際にエンタルピPdyを変化させるために必要なエネルギー量Edyを使用エネルギー原単位ΔEdyから算出する(S28)。尚、S25の判定の結果、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wt以上の場合、S29に移行する。
S29では、各制御モードを実行する場合に必要なエネルギー量(Ecl,Eht,Ewt,Edy)を比較して、エネルギー量Eが最小になる制御モードを決定する。決定された制御モードの目標温湿度T1又はT2に対応した制御信号を各調節計に送信する(S30)。制御盤5の運転停止プッシュボタンをオンしたか否か判定して(S31)、プッシュボタンをオンした場合、制御を停止し、プッシュボタンをオンしない場合、S5に移行する。
前記構成により、導入外気の状態点の構成要素である温度tと重量絶対湿度Wtのうち、一方の構成要素を維持して目標温湿度に調節することができ、温湿度調節の制御量を少なくでき、処理の高速化とエネルギーの低減を図れる。また、導入外気の状態点から目標温湿度の状態点までの温湿度調節に必要な制御モード毎のエネルギー量Eを比較して、エネルギー消費の低い制御モードを選択するため、最小のエネルギー消費によって空調空気の温湿度調節が実行できる
次に、図7−1〜図7−4のフローチャートに基づき、本空調システム1の空調機2が実際に使用するエネルギー量の原単位ΔE(ΔEcl,ΔEht,ΔEwt,ΔEdy)の自動算出制御について説明する。尚、Si(i=41,42…)は各処理ステップを示す。
まず、作業者が使用エネルギー原単位を算出するため、制御盤5の算出起動プッシュボタンをオンしたか否か判定する(S41)。プッシュボタンをオンしない場合、判定を継続する。プッシュボタンをオンした場合、各制御モードにおいて、空調機2が実際に使用するエネルギー量の原単位を算出するために変化を与える単位エンタルピ量ΔPをRAMから読込む(S42)。温湿度センサ12aによって導入外気の温度ta(℃)と相対湿度φa(%)を計測する(S43)。冷却制御モードにおいて、単位エンタルピΔPの変化を生じる制御目標値の温度tclと重量絶対湿度Wclを算出する(S44)。冷却制御モードにおける動力源を含む周辺装置の電力計15aと流量計16aの信号を積算蓄積する夫々の単位積算値メモリをリセットする(S45)。制御目標値である温度tclを温度調節計22bに出力し、制御目標値を設定する(S46)。
周辺装置の電力計15aと流量計16aの信号を積算し、夫々の単位積算値メモリに記憶する(S47)。S48において、温度調節計22bの計測値が制御目標値以上か否か判定する。計測値が制御目標値以上でない場合、計測を継続する。
S48の判定の結果、計測値が制御目標値以上の場合、外気の温度tb(℃)と相対湿度φb(%)を計測する(S49)。外気温度変化(ta−tb)と相対湿度変化(φa−φb)を算出し、外気のエンタルピ変化量ΔPatを算出する(S50)。外気のエンタルピ変化量ΔPatに基づき、周辺装置が実際に変化を与えたエンタルピ量ΔPxを算出する(S51)。
周辺装置の電力計15aと流量計16aの信号を積算する夫々の単位積算値メモリの積算値内容を読み出す(S52)。夫々の単位積算値メモリの内容から冷却装置10が使用したエネルギー量Eclを算出する(S53)。冷却装置10が使用したエネルギー量Eclと実際に変化を与えたエンタルピ量ΔPxから単位エンタルピ当りで冷却装置10が使用する使用エネルギー原単位ΔEclを算出する(S54)。冷却装置10が使用する使用エネルギー原単位ΔEclをRAMの原単位記憶メモリに保存する(S55)。
次に、温湿度センサ12aによって導入外気の温度tc(℃)と相対湿度φc(%)を計測する(S56)。加温制御モードにおいて、単位エンタルピΔPの変化を生じる制御目標値の温度thtと重量絶対湿度Whtを算出する(S57)。加温制御モードにおける動力源を含む周辺装置の電力計15bと流量計16bの信号を積算する夫々の単位積算値メモリをリセットする(S58)。制御目標値である温度thtを温度調節計22aに出力し、制御目標値を設定する(S59)。
周辺装置の電力計15bと流量計16bの信号を積算し、夫々の単位積算値メモリに記憶する(S60)。S61において、温度調節計22aの計測値が制御目標値以上か否か判定する。計測値が制御目標値以上でない場合、計測を継続する。
S61の判定の結果、計測値が制御目標値以上の場合、外気の温度td(℃)と相対湿度φd(%)を計測する(S62)。外気温度変化(tc−td)と相対湿度変化(φc−φd)を算出し、外気のエンタルピ変化量ΔPatを算出する(S63)。外気のエンタルピ変化量ΔPatに基づき、周辺装置が実際に変化を与えたエンタルピ量ΔPxを算出する(S64)。
周辺装置の電力計15bと流量計16bの信号を積算する夫々の単位積算値メモリの内容を読み出す(S65)。夫々の単位積算値メモリの内容から加温装置11が使用したエネルギー量Ehtを算出する(S66)。加温装置11が使用したエネルギー量Ehtと実際に変化を与えたエンタルピ量ΔPxから単位エンタルピ当りで加温装置11が使用エネルギー原単位ΔEhtを算出する(S67)。加温装置11が使用する使用エネルギー原単位ΔEhtをRAMの原単位記憶メモリに保存する(S68)。
次に、温湿度センサ12aによって導入外気の温度te(℃)と相対湿度φe(%)を計測する(S69)。加湿制御モードにおいて、単位エンタルピΔPの変化を生じる制御目標値の温度twt(℃)と重量絶対湿度Wwtを算出する(S70)。加湿制御モードにおける動力源を含む周辺装置の電力計15b,15c,15dと流量計16bの信号を積算する夫々の単位積算値メモリをリセットする(S71)。制御目標値である重量絶対湿度Wwtを絶対湿度調節計23aと温度調節計24とに出力し、制御目標値を設定する(S72)。
周辺装置の電力計15b,15c,15dと流量計16bの信号を積算し、夫々の単位積算値メモリに記憶する(S73)。S74において、絶対湿度調節計23aと温度調節計24の計測値が制御目標値以上か否か判定する。各計測値が制御目標値以上でない場合、計測を継続する。
S74の判定の結果、各計測値が制御目標値以上の場合、外気の温度tf(℃)と相対湿度φf(%)を計測する(S75)。外気温度変化(te−tf)と相対湿度変化(φe−φf)を算出し、外気のエンタルピ変化量ΔPatを算出する(S76)。外気のエンタルピ変化量ΔPatに基づき、周辺装置が実際に変化を与えたエンタルピ量ΔPxを算出する(S77)。
周辺装置の電力計15b,15c,15dと流量計16bの信号を積算する夫々の単位積算値メモリの内容を読み出す(S78)。夫々の単位積算値メモリの内容から加湿装置9が使用したエネルギー量Ewtを算出する(S79)。加湿装置9が使用したエネルギー量Ewtと実際に変化を与えたエンタルピ量ΔPxから単位エンタルピ当りで加湿装置9が使用する使用エネルギー原単位ΔEwtを算出する(S80)。加湿装置9が使用する使用エネルギー原単位ΔEwtをRAMの原単位記憶メモリに保存する(S81)。
次に、温湿度センサ12aによって導入外気の温度tg(℃)と相対湿度φg(%)を計測する(S82)。除湿制御モードにおいて、単位エンタルピΔPの変化を生じる制御目標値の温度tdy(℃)と重量絶対湿度Wdyを算出する(S83)。除湿制御モードにおける動力源を含む周辺装置の電力計15a,15bと流量計16a,16bの信号を積算する夫々の単位積算値メモリをリセットする(S84)。制御目標値である温度tdyと重量絶対湿度Wdyを温度調節計22aと絶対湿度調節計23bとに出力し、制御目標値を設定する(S85)。
周辺装置の電力計15a,15bと流量計16a,16bの信号を積算し、夫々の単位積算値メモリに記憶する(S86)。S87において、温度調節計22aと絶対湿度調節計23bの計測値が制御目標値以上か否か判定する。各計測値が制御目標値以上でない場合、計測を継続する。
S87の判定の結果、各計測値が制御目標値以上の場合、外気の温度th(℃)と相対湿度φh(%)を計測する(S88)。外気温度変化(tg−th)と相対湿度変化(φg−φh)を算出し、外気のエンタルピ変化量ΔPatを算出する(S89)。外気のエンタルピ変化量ΔPatに基づき、周辺装置が実際に変化を与えたエンタルピ量ΔPxを算出する(S90)。
周辺装置の電力計15a,15bと流量計16a,16bの信号を積算する夫々の単位積算値メモリの内容を読み出す(S91)。夫々の単位積算値メモリの内容から除湿装置(冷却装置10と加温装置11)が使用したエネルギー量Edyを算出する(S92)。除湿装置(冷却装置10と加温装置11)が使用したエネルギー量Edyと実際に変化を与えたエンタルピ量ΔPxから単位エンタルピ当りで除湿装置(冷却装置10と加温装置11)が使用する使用エネルギー原単位ΔEdyを算出する(S93)。除湿装置(冷却装置10)が使用する使用エネルギー原単位ΔEdyをRAMの原単位記憶メモリに保存して(S94)、終了する。
前記構成により、使用エネルギー原単位ΔE(ΔEcl,ΔEht,ΔEwt,ΔEdy)を自動算出することができ、制御モードの実現に必要なエネルギー量Eをエンタルピをパラメータとして容易に求めることができ、各制御モードの実現に必要なエネルギー量Eの比較を簡単に行うことができる。
次に、図8−1〜図8−3のフローチャートに基づき、本空調システム1の周辺装置の運転制御について説明する。尚、Si(i=101,102…)は各処理ステップを示す。
まず、作業者が塗装ブースを運転するため、制御盤5の運転起動プッシュボタンをオンしたか否か判定する(S101)。プッシュボタンをオンしない場合、判定を継続する。
プッシュボタンをオンした場合、加温装置11の運転要求判定値(運転要求レベル)Chtを読込む(S102)。この判定値Chtは、加温装置11以外の周辺装置を停止状態から待機状態に切替える判定レベルである。加温装置11の停止要求判定値(停止可能レベル)Dhtを読込む(S103)。この判定値Dhtは、加温装置11以外の周辺装置を停止状態に切替える判定レベルである。尚、判定値Cht,Dhtは予めRAMに記憶されており、判定値Dhtは判定値Chtよりも大きな値が設定されている。
冷却装置10の運転要求判定値Cclを読込む(S104)。この判定値Cclは、冷却装置10以外の周辺装置を停止状態から待機状態に切替える判定レベルである。冷却装置10の停止要求判定値Dclを読込む(S105)。この判定値Dclは、冷却装置10以外の周辺装置を停止状態に切替える判定レベルである。尚、判定値Ccl,Dclは予めRAMに記憶されており、判定値Dclは判定値Cclよりも大きな値が設定されている。
除湿装置(冷却装置10)の運転要求判定値Cdyを読込む(S106)。この判定値Cdyは、除湿装置10以外の周辺装置を停止状態から待機状態に切替える判定レベルである。除湿装置(冷却装置10)の停止要求判定値Ddyを読込む(S107)。この判定値Ddyは、除湿装置10以外の周辺装置を停止状態に切替える判定レベルである。尚、判定値Cdy,Ddyは予めRAMに記憶されており、判定値Ddyは判定値Cdyよりも大きな値が設定されている。
加湿装置9の運転要求判定値Cwtを読込む(S108)。この判定値Cwtは、加湿装置9以外の周辺装置を停止状態から待機状態に切替える判定レベルである。加湿装置9の停止要求判定値Dwtを読込む(S109)。この判定値Dwtは、加湿装置9以外の周辺装置を停止状態に切替える判定レベルである。尚、判定値Cwt,Dwtは予めRAMに記憶されており、判定値Dwtは判定値Cwtよりも大きな値が設定されている。
温湿度12aによって、空調機2内部に導入される導入外気の温度t(℃)と相対湿度φ(%)を検出する(S110)。相対湿度φと関係式に基づいて温度tにおける導入外気の重量絶対湿度Wtを算出し(S111)、温度tにおける導入外気の飽和重量絶対湿度Wstを算出する(S112)。次に、塗装ブースに供給される空調空気の飽和重量絶対湿度に対する乾き偏差値ΔWと重量絶対湿度Wtを式(1)に代入して、第1目標湿度W1を算出する(S113)。また、偏差値ΔWと飽和重量絶対湿度Wstを式(2)に代入して、第2目標湿度W2を算出する(S114)。
S115では、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wstよりも低いか否か判定する。S115の判定の結果、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wstよりも低い場合、S116に移行し、冷却制御モードにおける目標温湿度T1(t1、Wt)と式(3)より制御余裕度Bclを算出する。制御余裕度BCL次に、導入外気の温度tと重量絶対湿度Wtから決定されるエンタルピと冷却制御後の目標温湿度T1から決定されるエンタルピとの変化量Pclを算出する(S117)。尚、S115の判定の結果、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wst以上の場合、S118に移行する。
S118では、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wst以上か否か判定する。S118の判定の結果、第1目標湿度W1が飽和重量絶対湿度Wst以上の場合、S119に移行し、加温制御モードにおける目標温湿度T1(t1、Wt)と式(4)より制御余裕度Bhtを算出する。次に、導入外気の温度tと重量絶対湿度Wtから決定されるエンタルピと加温制御後の目標温湿度から決定されるエンタルピとの変化量Phtを算出する(S120)。尚、S118の判定の結果、Noの場合、S121に移行する。
S121では、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wt以上か否か判定する。S121の判定の結果、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wt以上の場合、S122に移行し、加湿制御モードにおける目標温湿度T2(t、W2)と式(5)より制御余裕度Bwtを算出する。次に、導入外気の温度tと重量絶対湿度Wtから決定されるエンタルピと加湿制御後の目標温湿度T2から決定されるエンタルピとの変化量Pwtを算出する(S123)。尚、S121の判定の結果、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wtよりも低い場合、S124に移行する。
S124では、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wtよりも低いか判定する。S124の判定の結果、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wtよりも低い場合、S125に移行し、除湿制御モードにおける目標温湿度T2(t、W2)と式(6)より制御余裕度Bdyを算出する。次に、導入外気の温度tと重量絶対湿度Wtから決定されるエンタルピと除湿制御後の目標温湿度から決定されるエンタルピとの変化量Pdyを算出する(S126)。尚、S124の判定の結果、第2目標湿度W2が重量絶対湿度Wt以上の場合、S127に移行する。
S127では、算出された各制御モードのエンタルピ変化量P(Pcl,Pht,Pwt,Pdy)を比較して、エンタルピの変化量 Pが最小になる制御モードを決定する。決定された制御モードの目標温湿度に対応した制御信号が各調節計に出力される(S128)。
次に、冷却制御モードを決定したか否か判定する(S129)。S129の判定の結果、冷却制御モードを決定しない場合、S137に移行する。S129の判定の結果、冷却制御モードを決定した場合、冷水発生装置3による冷却装置10の運転を開始する(S130)。式(3)により算出された制御余裕度Bclが判定値Dcl以上か否か判定する(S131)。S131の判定の結果、制御余裕度Bclが判定値Dcl以上の場合、蒸気発生装置4による加温装置11の作動を停止し(S132)、循環ポンプ9dによる加湿装置9の作動を停止する(S133)。
S131の判定の結果、制御余裕度Bclが判定値Dcl未満の場合、S134に移行する。
制御余裕度Bclが判定値Ccl未満か否か判定する(S134)。S134の判定の結果、制御余裕度Bclが判定値Ccl未満の場合、蒸気発生装置4による加温装置11の作動を停止状態から待機状態に運転を起動し(S135)、循環ポンプ9dによる加湿装置9の作動を停止状態から待機状態に運転を起動する(S136)。
S134の判定の結果、制御余裕度Bclが判定値Ccl以上の場合、S137に移行する。
次に、加温制御モードを決定したか否か判定する(S137)。S137の判定の結果、加温制御モードを決定しない場合、S145に移行する。S137の判定の結果、加温制御モードを決定した場合、蒸気発生装置4による加温装置11の運転を開始する(S138)。式(4)により算出された制御余裕度Bhtが判定値Dht以上か否か判定する(S139)。S139の判定の結果、制御余裕度Bhtが判定値Dht以上の場合、冷水発生装置3による冷却装置10の作動を停止し(S140)、循環ポンプ9dによる加湿装置9の作動を停止する(S141)。
S139の判定の結果、制御余裕度Bhtが判定値Dht未満の場合、S142に移行する。
制御余裕度Bhtが判定値Cht未満か否か判定する(S142)。S142の判定の結果、制御余裕度Bhtが判定値Cht未満の場合、冷水発生装置3による冷却装置10の作動を停止状態から待機状態に起動し(S143)、循環ポンプ9dによる加湿装置9の作動を停止状態から待機状態に起動する(S144)。
S142の判定の結果、制御余裕度Bhtが判定値Cht以上の場合、S145に移行する。
次に、加湿制御モードを決定したか否か判定する(S145)。S145の判定の結果、加湿制御モードを決定しない場合、S152に移行する。S145の判定の結果、加湿制御モードを決定した場合、循環ポンプ9dによる加湿装置9の運転(S146)と、蒸気発生装置4による加熱ヒータ9eの運転を開始する(S147)。式(5)により算出された制御余裕度Bwtが判定値Dwt以上か否か判定する(S148)。S148の判定の結果、制御余裕度Bwtが判定値Dwt以上の場合、除湿装置として兼用している冷水発生装置3を含む冷却装置10の作動を停止する(S149)。
S148の判定の結果、制御余裕度Bwtが判定値Dwt未満の場合、S150に移行する。
制御余裕度Bwtが判定値Cwt未満か否か判定する(S150)。S150の判定の結果、制御余裕度Bwtが判定値Cwt未満の場合、除湿装置として兼用している冷水発生装置3による冷却装置10の作動を停止状態から待機状態に起動する(S151)。
S150の判定の結果、制御余裕度Bwtが判定値Cwt以上の場合、S152に移行する。
次に、除湿制御モードを決定したか否か判定する(S152)。S152の判定の結果、除湿制御モードを決定した場合、除湿装置に相当する冷却装置10の運転を開始する(S153)。式(6)により算出された制御余裕度Bdyが判定値Ddy以上か否か判定する(S154)。S154の判定の結果、制御余裕度Bdyが判定値Ddy以上の場合、循環ポンプ9dによる加湿装置9の作動を停止し(S155)、蒸気発生装置4による加温装置11の作動を停止する(S156)。
S152の判定の結果、除湿制御モードを決定しない場合、S160に移行する。また、S154の判定の結果、制御余裕度Bdyが判定値Ddy未満の場合、S157に移行する。
制御余裕度Bdyが判定値Cdy未満か否か判定する(S157)。S157の判定の結果、制御余裕度Bdyが判定値Cdy未満の場合、循環ポンプ9dによる加湿装置9を停止状態から待機状態に起動し(S158)、蒸気発生装置4による加温装置11の作動を停止状態から待機状態に起動する(S159)。
S157の判定の結果、制御余裕度Bdyが判定値Cdy以上の場合、S160に移行する。制御盤5の運転停止プッシュボタンをオンしたか否か判定して(S160)、プッシュボタンをオンした場合、制御を停止し、プッシュボタンをオンしない場合、S110に移行する。
次に、本実施例に係る空調システム1の作用、効果について説明する。
前記空調システム1によれば、導入外気の重量絶対湿度Wtを維持した目標温湿度T1の空調空気を生成可能な第1制御に相当する冷却制御モードと加温制御モードが制御可能であり、導入外気の温度tを維持した目標温湿度T2の空調空気を生成可能な第2制御に相当する加湿制御モードと除湿制御モードも制御可能なため、導入外気を前記複数の制御モードのうち何れかの制御モードによって目標温湿度T1又はT2に調節することができる。
制御部21は、各制御モードに使用される冷水発生装置3、蒸気発生装置4、循環ポンプ9d等の動力源を含む各制御モードに応じた調節装置の使用エネルギー原単位ΔEを算出可能なため、前記複数の制御モードの実現に必要なエネルギー量Eを夫々の制御モード毎に算出することができる。制御部21は、算出された制御モード毎のエネルギー量Eを比較して、エネルギー消費量の小さい制御モードを選択することができる。
つまり、制御部21は、導入外気の状態点の構成要素である温度tと重量絶対湿度Wtのうち、一方の構成要素を維持して目標温湿度に調節するため、温湿度調節の制御量を少なくでき、処理の高速化とエネルギー低減を図れる。そして、制御部21が、導入外気の状態点から目標温湿度の状態点までの温湿度調節に必要な制御モード毎のエネルギー量Eを比較して、エネルギー消費量の小さい制御モードを選択するため、最小のエネルギー消費によって空調空気の温湿度調節が実行できる。
制御部21による各算出処理が、空気線図を使用しない演算のみで実行されるため、空気の状態点を空気線図上の点に変換する等の煩わしい処理を省略でき、演算処理の高速化を図ることができる。それ故、水性塗料のように、目標温湿度が狭く、空調管理の厳しい塗料を用いる場合であっても、演算処理によって確実に所望の温湿度を備えた空調空気を得ることができ、良好な塗膜が生成でき、塗装品質の向上を図ることができる。
空調機2が、加温装置11、空気を除湿及び冷却可能な冷却装置10、加湿装置9を備え、選択した制御モードに応じた調節装置を選択運転可能なため、空調空気を確実に目標温湿度に調節することができる。制御部21は、温湿度調節前の導入外気が有するエンタルピと温湿度調節後の空調空気が有するエンタルピとのエンタルピ変化量P(Pht,Pcl,Pwt,Pdy)と使用エネルギー原単位ΔE(ΔEht,ΔEcl,ΔEwt,ΔEdy)によってエネルギー量Eを算出するため、制御モードの実現に必要なエネルギー量Eはエンタルピをパラメータとして容易に求めることができ、制御モードの実現に必要なエネルギー量Eの比較を簡単に行うことができる。
制御部21は、各調節装置の動力源毎に使用エネルギー原単位ΔEを算出して各制御モードの実現に必要とされるエネルギー量Eを算出するため、調節装置の実作動に必要なエネルギー量Eを算出でき、精度良くエネルギー消費量の少ない制御モードを選択できる。制御部21は、選択された調節装置が作動し、他の調節手段が作動を停止しているとき、他の調節手段の動力源の作動を制限するため、エネルギーの低減が更に図れる。
制御部21は、判定レベルに相当する制御余裕度B(Bht,Bcl,Bdy,Bwt)を有し、選択された調節手段が作動し、他の調節手段が作動を停止しているとき、制御余裕度Bが停止要求判定値D(Dht,Dcl,Ddy,Dwt)よりも大きいときは、他の調節手段の動力源の作動を停止し、制御余裕度Bが運転要求判定値C(Cht,Ccl,Cdy,Cwt)よりも小さいときは、停止している他の調節手段の動力源を待機状態に起動するため、エネルギー低減を図りつつ、調節手段が切替わる場合の復帰応答性を確保することができる。
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、空調機が冷却兼除湿装置、加温装置、加湿装置を備えた例を説明したが、少なくとも、絶対湿度を維持して温度調節可能な第1制御と温度を維持して湿度調節可能な第2制御を備えるものであれば良く、1台の温湿度調整装置を用いることも可能である。
2〕前記実施例においては、加温装置及び加熱ヒータがスチームコイル式ヒータの例を説明したが、少なくとも、空気や水を加温できれば良く、電気ヒータ等を用いることも可能である。
3〕前記実施例においては、温度調節計を3台、絶対温度調節計を2台備えた例を説明したが、調節計の制御目標値、測定入力、制御出力を制御モード毎に切替え、制御動作、PID定数を切替え設定することで、1台の調節計で制御することも可能である。
4〕前記実施例においては、制御余裕度が停止要求判定値よりも大きいとき、他の調節手段の動力源の作動を停止する例を説明したが、待機状態よりも使用エネルギー量の低いアイドリング状態にすることも可能である。
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。