JP2011068725A - 生分解性樹脂組成物及び生分解性樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】生分解性樹脂を用いた樹脂成形体の表面耐引掻き性を向上させる。
【解決手段】生分解性樹脂80重量%〜90重量%と、軟化温度600℃以下のガラス繊維10重量%〜20重量%(但し、両者の合計は100重量%である)と、を含み、ガラス繊維が、中心部分より表面部分に多く存在することを特徴とする生分解性樹脂成形体。
【選択図】図1
【解決手段】生分解性樹脂80重量%〜90重量%と、軟化温度600℃以下のガラス繊維10重量%〜20重量%(但し、両者の合計は100重量%である)と、を含み、ガラス繊維が、中心部分より表面部分に多く存在することを特徴とする生分解性樹脂成形体。
【選択図】図1
Description
本発明は、生分解性樹脂組成物及び生分解性樹脂成形体に関する。
近年、環境保護の観点から、生分解性樹脂を用いた樹脂成形体が注目されている。例えば、特許文献1には、脂肪族ポリエステル等の生分解性を有する有機高分子化合物と、難燃系添加剤とを含有する樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用い、生分解性と難燃性及び機械的強度を有する成形品が得られることが記載されている。
本発明の目的は、生分解性樹脂を用いた樹脂成形体の表面耐引掻き性を向上させることにある。
請求項1に係る発明は、生分解性樹脂と、軟化温度600℃以下のガラス繊維と、を含むことを特徴とする生分解性樹脂組成物である。
請求項2に係る発明は、前記ガラス繊維の軟化温度が500℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂組成物である。
請求項3に係る発明は、前記生分解性樹脂が脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性樹脂組成物である。
請求項4に係る発明は、前記生分解性樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物である。
請求項5に係る発明は、さらに、リン含有化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物である。
請求項2に係る発明は、前記ガラス繊維の軟化温度が500℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂組成物である。
請求項3に係る発明は、前記生分解性樹脂が脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性樹脂組成物である。
請求項4に係る発明は、前記生分解性樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物である。
請求項5に係る発明は、さらに、リン含有化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物である。
請求項6に係る発明は、生分解性樹脂と、前記生分解性樹脂に配合された軟化温度600℃以下のガラス繊維と、を含み、前記ガラス繊維が、中心部分より表面部分に多く存在することを特徴とする生分解性樹脂成形体である。
請求項7に係る発明は、前記ガラス繊維は、前記中心部分から前記表面部分に向かい増加するように分布することを特徴とする請求項6に記載の生分解性樹脂成形体である。
請求項8に係る発明は、前記生分解性樹脂80重量%〜90重量%と、軟化温度600℃以下の前記ガラス繊維10重量%〜20重量%(但し、両者の合計は100重量%である)と、を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の生分解性樹脂成形体である。
請求項7に係る発明は、前記ガラス繊維は、前記中心部分から前記表面部分に向かい増加するように分布することを特徴とする請求項6に記載の生分解性樹脂成形体である。
請求項8に係る発明は、前記生分解性樹脂80重量%〜90重量%と、軟化温度600℃以下の前記ガラス繊維10重量%〜20重量%(但し、両者の合計は100重量%である)と、を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の生分解性樹脂成形体である。
請求項1又は2の発明によれば、軟化温度600℃を超えるガラス繊維を含む場合に比べ、表面耐引掻き性が向上した樹脂成形体が得られる。
請求項3の発明によれば、生分解性樹脂が脂肪族ポリエステル以外である場合に比べ、量産性に優れる。
請求項4の発明によれば、生分解性樹脂がポリ乳酸以外である場合に比べ、生産コストが低減する。
請求項5の発明によれば、リン含有化合物を含まない場合に比べ、樹脂組成物中のガラス繊維の分散性が改良される。
請求項6乃至8の発明によれば、ガラス繊維が、中心部分より表面部分に多く存在しない場合に比べ、生分解性樹脂を用いた樹脂成形体の表面耐引掻き性が向上する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<生分解性樹脂組成物>
(生分解性樹脂)
本実施の形態で使用する生分解性樹脂は、使用後は自然界において微生物が関与して低分子化合物に分解し、最終的に水と二酸化炭素に分解する樹脂として定義される(生分解性プラスチック研究会、ISO/TC−207/SC3)。生分解性樹脂としては、例えば、生分解性を有する、脂肪族ポリエステル、多糖類、ペプチド、ポリアミノ酸、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
(生分解性樹脂)
本実施の形態で使用する生分解性樹脂は、使用後は自然界において微生物が関与して低分子化合物に分解し、最終的に水と二酸化炭素に分解する樹脂として定義される(生分解性プラスチック研究会、ISO/TC−207/SC3)。生分解性樹脂としては、例えば、生分解性を有する、脂肪族ポリエステル、多糖類、ペプチド、ポリアミノ酸、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
具体的には、脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレンアジペート、ポリヘキシレンサクシネート、ポリヘキシレンアジペート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)等が挙げられる。
さらに、ポリカプロラクトン、ポリヒドキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、ポリシュウ酸エステル、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリジオキサノン等も使用可能である。
さらに、ポリカプロラクトン、ポリヒドキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、ポリシュウ酸エステル、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリジオキサノン等も使用可能である。
多糖類としては、例えば、セルロース、デンプン、キトサン、デキストラン、酢酸セルロース、デンプン変性樹脂、セルロース変性樹脂等が挙げられる。ペプチドとしては、例えば、コラーゲン、カゼイン、フィブリン、ゼラチン等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン4、ナイロン2/ナイロン6共重合体等が挙げられる。
これらの生分解性樹脂の中でも、生分解性を有する脂肪族ポリエステルが好ましい。
これらの生分解性樹脂の中でも、生分解性を有する脂肪族ポリエステルが好ましい。
脂肪族ポリエステルの平均分子量は、通常、重量平均分子量として、5,000以上、好ましくは10,000以上であり、通常、200,000以下、好ましくは120,000以下である。数平均分子量としては、3,000以上、好ましくは5,000以上であり、通常、100,000以下、好ましくは70,000以下である。脂肪族ポリエステルの平均分子量が過度に小さいと、耐衝撃強度が不十分となる傾向がある。また、脂肪族ポリエステルの平均分子量が過度に大きいと、成形性が不十分となる傾向がある。
本実施の形態で使用する生分解性樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法が挙げられる。例えば、生分解性を有する脂肪族ポリエステルの場合は、ラクチド法、多価アルコールと多塩基酸との重縮合、または分子内に水酸基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸の分子間重縮合等の製造方法が挙げられる。
本実施の形態で使用する生分解性樹脂は、上述した脂肪族ポリエステルの中でも、他の配合成分との混合性や量産性の観点からポリ乳酸が好ましい。ポリ乳酸としては、例えば、ポリ−L−乳酸(PLLA)、L−乳酸とD−乳酸とのランダム共重合体、またはそれらの誘導体が挙げられる。
本実施の形態では、ポリ乳酸に結晶化促進剤を添加したものを使用することができる。結晶化促進剤としては、例えば、タルク、ガラス繊維等の無機フィラー;マイカ、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。結晶化促進剤の添加量は、通常、ポリ乳酸100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲である。
(ガラス繊維)
本実施の形態で使用するガラス繊維は、温度600℃以下、好ましくは500℃以下で軟化又は溶融(軟化温度)するガラスから構成される繊維(以下、温度600℃以下で軟化又は溶融(軟化温度)するガラスを「低融点ガラス」、「低融点ガラス」から構成される繊維を「低融点ガラス繊維」と表現する場合がある。)が挙げられる。但し、軟化温度は、通常、300℃以上である。
低融点ガラス繊維の繊維径は、1μm以上、好ましくは6μm以上であり、通常、20μm以下、好ましくは13μm以下である。低融点ガラス繊維の繊維長は、1mm以上、好ましくは3mm以上であり、通常、10mm以下、好ましくは6mm以下である。
本実施の形態で使用するガラス繊維は、温度600℃以下、好ましくは500℃以下で軟化又は溶融(軟化温度)するガラスから構成される繊維(以下、温度600℃以下で軟化又は溶融(軟化温度)するガラスを「低融点ガラス」、「低融点ガラス」から構成される繊維を「低融点ガラス繊維」と表現する場合がある。)が挙げられる。但し、軟化温度は、通常、300℃以上である。
低融点ガラス繊維の繊維径は、1μm以上、好ましくは6μm以上であり、通常、20μm以下、好ましくは13μm以下である。低融点ガラス繊維の繊維長は、1mm以上、好ましくは3mm以上であり、通常、10mm以下、好ましくは6mm以下である。
低融点ガラス繊維の低融点ガラスを構成する化合物としては、例えば、ホウ酸塩、ホウケイ酸塩、リン酸塩、ビスマス、バリウムホウ酸塩、鉛ケイ酸塩、ゲルマン酸塩、タリウム酸塩、モリブデン酸塩、テルル酸塩、バナジウム酸塩、カルコゲナイド、オキシカルコゲナイドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
これらの中でも、安定性及び原料の入手性を考慮すると、鉛ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ゲルマン酸塩、タリウム酸塩、モリブデン酸塩、テルル酸塩、バナジウム酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
これらの中でも、安定性及び原料の入手性を考慮すると、鉛ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ゲルマン酸塩、タリウム酸塩、モリブデン酸塩、テルル酸塩、バナジウム酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
低融点ガラスの構成成分の具体例としては、例えば、B2O3、P2O5、ZnO、SiO2、Bi2O3、Al2O3、BaO、CaO、MgO、MnO2、ZrO2、TiO2、CeO2、SrO、V2O5、SnO2、Li2O、Na2O、K2O、PbO、CdO、ZnO、FeO、CuO等が挙げられる。これらの中でも、SiO2、B2O3、Al2O3、PbO、K2O、Na2O、BaOが好ましい。
低融点ガラス繊維の形状としては、例えば、ロービング状、チョップドストランド状等が挙げられる。本実施の形態では、チョップドストランド状が好ましい。低融点ガラス繊維の繊維径は、1μm以上、好ましくは6μm以上であり、通常、20μm以下、好ましくは13μm以下である。低融点ガラス繊維の繊維長は、1mm以上、好ましくは3mm以上であり、通常、10mm以下、好ましくは6mm以下である。
低融点ガラス繊維は、カップリング剤、フィルムフォーマ、潤滑剤、その他の表面処理剤による通常の表面処理が施されていてもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。具体的には、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
本実施の形態が適用される生分解性樹脂組成物に含まれる生分解性樹脂の割合は、通常、60重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。但し、通常95重量%以下である。また、生分解性樹脂組成物に含まれる低融点ガラス繊維の割合は、通常、5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。但し、通常40重量%以下である。ここで、生分解性樹脂組成物に含まれる生分解性樹脂と低融点ガラス繊維との合計量は100重量%である。
生分解性樹脂組成物の低融点ガラス繊維の含有量が過度に少ないと、表面硬度が低下する傾向がある。生分解性樹脂組成物の低融点ガラス繊維の含有量が過度に多いと、加工性が悪化する傾向がある。
生分解性樹脂組成物の低融点ガラス繊維の含有量が過度に少ないと、表面硬度が低下する傾向がある。生分解性樹脂組成物の低融点ガラス繊維の含有量が過度に多いと、加工性が悪化する傾向がある。
(リン含有化合物)
本実施の形態が適用される生分解性樹脂組成物は、さらに、リン含有化合物を含む場合がある。生分解性樹脂組成物にリン含有化合物を配合すると、低融点ガラス繊維の分散性が向上する傾向がある。低融点ガラス繊維の分散性が向上することにより、生分解性樹脂組成物を用いて成形した成形体の機械的強度や成形体表面の耐溶剤性がさらに向上すると考えられる。
リン含有化合物としては、有機リン酸塩、無機リン酸塩、有機リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、有機リン酸エステルが好ましく、さらに、芳香族縮合リン酸エステルがより好ましい。
有機リン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン等が挙げられる。
無機リン酸塩としては、例えば、リン酸マグネシウム、メタリン酸ナトリウム、第一リン酸アルミニウム、ホスフィン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素アンモニウム、メタリン酸ナトリウム、第三リン酸リチウム等が挙げられる。
本実施の形態が適用される生分解性樹脂組成物は、さらに、リン含有化合物を含む場合がある。生分解性樹脂組成物にリン含有化合物を配合すると、低融点ガラス繊維の分散性が向上する傾向がある。低融点ガラス繊維の分散性が向上することにより、生分解性樹脂組成物を用いて成形した成形体の機械的強度や成形体表面の耐溶剤性がさらに向上すると考えられる。
リン含有化合物としては、有機リン酸塩、無機リン酸塩、有機リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、有機リン酸エステルが好ましく、さらに、芳香族縮合リン酸エステルがより好ましい。
有機リン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン等が挙げられる。
無機リン酸塩としては、例えば、リン酸マグネシウム、メタリン酸ナトリウム、第一リン酸アルミニウム、ホスフィン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素アンモニウム、メタリン酸ナトリウム、第三リン酸リチウム等が挙げられる。
有機リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5’−トリメチル−ヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチル−ヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジフェニルホスフェート)、ジフェニル−(3−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジキシレニルホスフェート)、2−ナフチルジフェニルホスフェート、1−ナフチルジフェニルホスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルホスフェート等が挙げられる。
さらに、芳香族縮合リン酸エステルとしては、下記一般式(1)または一般式(2)で示される芳香族系縮合リン酸エステル化合物が挙げられる。
ここで、一般式(1)及び一般式(2)中、Q1、Q2、Q3、Q4は、各々独立に、炭素数1から6のアルキル基、R1、R2は、メチル基、R3、R4は、各々独立に水素原子またはメチル基を表す。nは1以上の平均値を有し、n1、n2は、各々独立に0から2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、各々独立に1から3の整数を示す。
これらの芳香族系縮合リン酸エステル化合物は、一般に、n=1〜3が90%以上の混合物であり、n=4以上の多量体やその他の副生成物を含む混合物として市販されている。例えば、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物(大八化学株式会社製CR741)、ビスフェノールA−ビス(ジキシレニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物等のビスフェノールA類の芳香族系縮合リン酸エステル;レゾルシン−ビス(ジキシレニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物(大八化学株式会社製PX200)、レゾルシン−ビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物(大八化学株式会社製CR−733S)等のレゾルシン類の芳香族系縮合リン酸エステルが挙げられる。
本実施の形態が適用される生分解性樹脂組成物に添加するリン含有化合物の添加量は、生分解性樹脂と低融点ガラス繊維両成分の合計100重量部に対して、通常、0.05重量部〜10重量部、好ましくは、0.05重量部〜10重量部である。リン含有化合物の添加量が過度に多いと、樹脂の溶融粘度が下がり分散性が低下する場合がある。
本実施の形態が適用される生分解性樹脂組成物には、後述するように、射出成形等により成形された樹脂成形体の耐衝撃強度を向上させるために、エラストマーを添加する場合がある。エラストマーとしては特に限定されないが、例えば、シロキサン系化合物からなるシリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、高飽和型アクリロニトリル−ブタジエンゴム(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(AR)等が挙げられる。
本実施の形態が適用される生分解性樹脂組成物に添加するエラストマーの添加量は、生分解性樹脂と低融点ガラス繊維両成分の合計100重量部に対して、通常、0.05重量部〜10重量部、好ましくは、0.05重量部〜10重量部である。エラストマーの添加量が過度に多いと、表面硬度が低下する傾向がある。
(その他の添加剤)
本実施の形態が適用される生分解性樹脂組成物には、公知の他の添加剤が含有されていてもよい。このような公知の他の添加剤としては、例えば、補強材、無機フィラー、有機フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、ワックス類、着色剤等が挙げられる。これらは、単独又は複数を組み合わせて用いてもかまわない。
本実施の形態が適用される生分解性樹脂組成物には、公知の他の添加剤が含有されていてもよい。このような公知の他の添加剤としては、例えば、補強材、無機フィラー、有機フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、ワックス類、着色剤等が挙げられる。これらは、単独又は複数を組み合わせて用いてもかまわない。
補強材としては、例えば、ガラスマイクロビーズ、炭素繊維、チョーク、石英、アスベスト、長石、雲母、タルク、ウォラストナイト、カオリン等が挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、炭素、二酸化珪素の他、アルミナ、シリカ、マグネシア、フェライト、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、フラーレン等が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらは、単独または2種以上を混合して使用してもかまわない。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、ポリアミド、ポリ−β−アラニン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、メラミン、シアノグアニジン、メラミン−ホルムアルデヒド縮合体等の塩基性窒素含有化合物等の窒素含有化合物;有機カルボン酸金属塩(ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等)、金属炭酸塩等のアルカリまたはアルカリ土類金属含有化合物;ゼオライト;ハイドロタルサイト等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリチレート系、シュウ酸アニリド系等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、ポリアミド、ポリ−β−アラニン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、メラミン、シアノグアニジン、メラミン−ホルムアルデヒド縮合体等の塩基性窒素含有化合物等の窒素含有化合物;有機カルボン酸金属塩(ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等)、金属炭酸塩等のアルカリまたはアルカリ土類金属含有化合物;ゼオライト;ハイドロタルサイト等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリチレート系、シュウ酸アニリド系等が挙げられる。
滑剤としては、例えば、流動パラフィン等の石油系潤滑油;ハロゲン化炭化水素、ジエステル油、シリコン油、フッ素シリコン等の合成潤滑油;各種変性シリコン油(エポキシ変性、アミノ変性、アルキル変性、ポリエーテル変性等);ポリオキシアルキレングリコール等の有機化合物とシリコンとの共重合体等のシリコン系潤滑性物質;シリコン共重合体;フルオロアルキル化合物等の各種フッ素系界面活性剤;トリフルオロ塩化メチレン低重合物等のフッ素系潤滑物質;パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類;高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アミド、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸塩、または二硫化モリブデン等が挙げられる。
ワックス類としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックスやパラフィンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ミクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、脂肪酸アミド系ワックス、高級脂肪族アルコール系ワックス、高級脂肪酸系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス等が挙げられる。
着色剤としては、無機顔料、有機顔料、染料等が挙げられる。
着色剤としては、無機顔料、有機顔料、染料等が挙げられる。
本実施の形態が適用される生分解性樹脂組成物の製造方法としては、公知の溶融混練り方法が利用できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混練機を用いた溶融混練方法等が挙げられる。これらの中でも、2軸スクリュー押出機または単軸スクリュー押出機が好適である。具体的には、押出機好ましくは二軸押出し機を用い、例えば、シリンダ温度160℃〜250℃、好ましくは170℃〜200℃程度の設定温度で、溶融混練り・押出しを経て、ストランドを裁断し、円柱状ペレットのマスターバッチとして調製される。また、ストランド引取りせずに、ホットカット法やアンダーウォーターカット法により丸粒子状に調製することもできる。
<生分解性樹脂成形体>
上述した生分解性樹脂組成物を用いて、生分解性樹脂成形体が得られる。本実施の形態が適用される生分解性樹脂成形体(以下、単に「成形体」と記す。)は、前述した生分解性樹脂と、生分解性樹脂に配合された軟化温度600℃以下の低融点ガラス繊維と、を含んでいる。そして、生分解性樹脂に配合された低融点ガラス繊維は、成形体の中心部分より成形体の表面部分に多く存在するように分布している。
なお、「中心部分」とは、成形体の厚み方向の中心部から成形体の表面側に向かって0.5mmの範囲を意味し、「表面部分」とは、成形体の表面から成形体の厚み方向の中心部に向かって0.5mmの範囲を意味する。
上述した生分解性樹脂組成物を用いて、生分解性樹脂成形体が得られる。本実施の形態が適用される生分解性樹脂成形体(以下、単に「成形体」と記す。)は、前述した生分解性樹脂と、生分解性樹脂に配合された軟化温度600℃以下の低融点ガラス繊維と、を含んでいる。そして、生分解性樹脂に配合された低融点ガラス繊維は、成形体の中心部分より成形体の表面部分に多く存在するように分布している。
なお、「中心部分」とは、成形体の厚み方向の中心部から成形体の表面側に向かって0.5mmの範囲を意味し、「表面部分」とは、成形体の表面から成形体の厚み方向の中心部に向かって0.5mmの範囲を意味する。
低融点ガラス繊維が、成形体の中心部分より成形体の表面部分に多く存在すると、同様な添加量の低融点ガラス繊維を添加した生分解性樹脂組成物から得られ、成形体の中心部分より成形体の表面部分に多く存在しない成形体と比べ、成形体表面の硬さが増し、機械的強度が増大する。これにより、成形体表面の耐引掻き性が向上する。また、同様な添加量の低融点ガラス繊維を添加した生分解性樹脂組成物から得られ、成形体の中心部分より成形体の表面部分に多く存在しない成形体と比べ、表面部分に存在する生分解性樹脂の存在量が相対的に少なくなるため、耐溶剤性も向上する。さらに、一定荷重下における熱変形温度が上昇し、耐熱性が向上する。
ここで、低融点ガラス繊維が、成形体の中心部分より成形体の表面近傍に多く存在するとは、成形体から切り出した試験片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、成形体の表面から中心部に向かって深さ0.5mmの範囲の表面近傍領域に存在する低融点ガラス繊維の分布量(表面側GF量)と、成形体の中心部から表面に向かって高さ0.5mmの範囲の中心部側領域に存在する低融点ガラス繊維の分布量(中心部側GF量)とをそれぞれ測定し、これらの測定結果を用い、次式により求めた成形体中の低融点ガラス繊維の偏在度が、1より大きい場合のことをいう。尚、試験片の調製方法等は後述する。
偏在度=(表面側GF量)/(中心部側GF量)
偏在度=(表面側GF量)/(中心部側GF量)
さらに、成形体中の低融点ガラス繊維の偏在度は、好ましくは、1.1以上であり、より好ましくは2以上である。但し、通常、5以下である。成形体中の低融点ガラス繊維の偏在度が1.0以下の場合、成形体の表面耐引掻き性及び耐溶剤性が低下する傾向にある。
ここで、本実施の形態において、成形体中に存在する低融点ガラス繊維は、成形体の中心部分から成形体の表面近傍に向かい増加するように分布することが好ましい。これにより、成形体表面の硬さが増し、成形体の機械的強度が増大する傾向がある。
ここで、本実施の形態において、成形体中に存在する低融点ガラス繊維は、成形体の中心部分から成形体の表面近傍に向かい増加するように分布することが好ましい。これにより、成形体表面の硬さが増し、成形体の機械的強度が増大する傾向がある。
本実施の形態における成形体は、耐引掻き性に優れたものになり得るため、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いることができる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。
<生分解性樹脂成形体の製造方法>
本実施の形態が適用される生分解性樹脂成形体の製造方法としては、従来公知の成形方法が挙げられる。公知の成形方法としては、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形等が挙げられ、これらの中でも射出成形が好ましい。具体的には、押出成形は、常法に従い、例えば、単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機等の公知の押出成形機を用いて行うことができる。また、射出成形は、常法に従い、例えば、インラインスクリュ式射出成形機、多層射出成形機、二頭式射出成形機等の公知の射出成形機にて行うことができる。
本実施の形態では、射出成形機のシリンダ温度が160℃〜220℃の条件で金型に射出成形することが好ましい。また、射出成形する際の金型の温度は、30℃〜150℃の範囲であることが好ましい。
本実施の形態が適用される生分解性樹脂成形体の製造方法としては、従来公知の成形方法が挙げられる。公知の成形方法としては、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形等が挙げられ、これらの中でも射出成形が好ましい。具体的には、押出成形は、常法に従い、例えば、単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機等の公知の押出成形機を用いて行うことができる。また、射出成形は、常法に従い、例えば、インラインスクリュ式射出成形機、多層射出成形機、二頭式射出成形機等の公知の射出成形機にて行うことができる。
本実施の形態では、射出成形機のシリンダ温度が160℃〜220℃の条件で金型に射出成形することが好ましい。また、射出成形する際の金型の温度は、30℃〜150℃の範囲であることが好ましい。
本実施の形態では、軟化温度600℃以下の低融点ガラス繊維を用いることにより、600℃よりも軟化温度の高いガラス繊維(以下、「高融点ガラス繊維」と表現する場合がある。)を用いる場合と比較して、射出成形の際の低融点ガラス繊維の流動性が増し、これにより、成形体中の低融点ガラス繊維の分散性が良好になる。
また、本実施の形態では、例えば、ポリ乳酸を含む生分解性樹脂組成物の場合、射出成形により金型に押し出された生分解性樹脂組成物は、金型の内面に沿って流れ、中心部分に向かって順に冷却される傾向がある。このため、得られる成形体に含まれる低融点ガラス繊維は、成形体の中心部分と比べて表面部分に多く存在する。
また、本実施の形態では、例えば、ポリ乳酸を含む生分解性樹脂組成物の場合、射出成形により金型に押し出された生分解性樹脂組成物は、金型の内面に沿って流れ、中心部分に向かって順に冷却される傾向がある。このため、得られる成形体に含まれる低融点ガラス繊維は、成形体の中心部分と比べて表面部分に多く存在する。
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。但し、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3)
2軸混練装置(東洋精機株式会社製ラボプラストミル)を用い、表1に示す組成とシリンダの温度条件で、生分解性樹脂と低融点ガラス繊維等とを混練し、生分解性樹脂組成物のペレットを調製した(実施例1〜実施例6)。また、比較のため、表1に示す組成とシリンダの温度条件で、低融点ガラス繊維を含有しない樹脂組成物のペレットを調製した(比較例1〜比較例3)。
2軸混練装置(東洋精機株式会社製ラボプラストミル)を用い、表1に示す組成とシリンダの温度条件で、生分解性樹脂と低融点ガラス繊維等とを混練し、生分解性樹脂組成物のペレットを調製した(実施例1〜実施例6)。また、比較のため、表1に示す組成とシリンダの温度条件で、低融点ガラス繊維を含有しない樹脂組成物のペレットを調製した(比較例1〜比較例3)。
表1に示す生分解性樹脂組成物の各成分は以下の通りである。
・(ポリ乳酸)
PLA−A:ポリ乳酸樹脂(ユニチカ株式会社製PLA:TE4000(標準グレード))
PLA−B:ポリ乳酸樹脂(ユニチカ株式会社製PLA:TE7000(高耐熱グレード))
・(低融点ガラス繊維)
GF−A:リン酸化物−スズ酸化物系低融点ガラス繊維、軟化温度330℃、長さ3mm、繊維径10.5μm
GF−B:リン酸アルミニウム塩系低融点ガラス繊維、軟化温度380℃、長さ3mm、繊維径10.5μm
GF−C:ホウ酸リチウム塩系低融点ガラス繊維、軟化温度450℃、長さ3mm、繊維径10.5μm
・粒子状低融点ガラス:粒子径50μm、融点450℃
・高融点ガラス繊維:アルミノホウケイ酸ガラス系高融点ガラス繊維、軟化温度700℃、長さ3mm、繊維径10.5μm(オーウェンスコーニング社製チョップドストランド)
・リン酸エステル系化合物(難燃剤):大八化学工業株式会社製PX−200
・シロキサン系化合物:三菱レイヨン株式会社製メタブレンSX−005
・(ポリ乳酸)
PLA−A:ポリ乳酸樹脂(ユニチカ株式会社製PLA:TE4000(標準グレード))
PLA−B:ポリ乳酸樹脂(ユニチカ株式会社製PLA:TE7000(高耐熱グレード))
・(低融点ガラス繊維)
GF−A:リン酸化物−スズ酸化物系低融点ガラス繊維、軟化温度330℃、長さ3mm、繊維径10.5μm
GF−B:リン酸アルミニウム塩系低融点ガラス繊維、軟化温度380℃、長さ3mm、繊維径10.5μm
GF−C:ホウ酸リチウム塩系低融点ガラス繊維、軟化温度450℃、長さ3mm、繊維径10.5μm
・粒子状低融点ガラス:粒子径50μm、融点450℃
・高融点ガラス繊維:アルミノホウケイ酸ガラス系高融点ガラス繊維、軟化温度700℃、長さ3mm、繊維径10.5μm(オーウェンスコーニング社製チョップドストランド)
・リン酸エステル系化合物(難燃剤):大八化学工業株式会社製PX−200
・シロキサン系化合物:三菱レイヨン株式会社製メタブレンSX−005
前述した生分解性樹脂組成物のペレットにより各種試験片を成形し、以下の通り、生分解性樹脂成形体の特性試験を行った(実施例1〜実施例6)。また、同様に、低融点ガラス繊維を含有しない樹脂組成物により各種試験片を成形し、各樹脂成形体の特性試験を行った(比較例1〜比較例3)。
(1)生分解性樹脂成形体中の低融点ガラス繊維の偏在度(偏在度)
生分解性樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業製NEX50)にて表3に示すシリンダ温度と金型温度の条件で射出成形を行い、幅4mm×高さ10mm×長さ40mmの生分解性樹脂成形体を得た。次に、成形したこの成形体から低融点ガラス繊維の偏在度試験用の試験片を作成した。
生分解性樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業製NEX50)にて表3に示すシリンダ温度と金型温度の条件で射出成形を行い、幅4mm×高さ10mm×長さ40mmの生分解性樹脂成形体を得た。次に、成形したこの成形体から低融点ガラス繊維の偏在度試験用の試験片を作成した。
図1は、生分解性樹脂成形体中の低融点ガラス繊維の偏在度試験を行うための試験片を説明する図である。図1(a)は、射出成形により成形した成形体10である。図1(a)中のAは、射出成形機による射出方向である。図1(a)に示すように、生分解性樹脂成形体中の低融点ガラス繊維の偏在度試験を行うための試験片は、射出成形により成形した成形体10の表面から中心部に向かって深さ5mmの切り込みを入れ、予め定めた幅d×長さ4mmの小片20を切り出した。次に、図1(b)に示すように、切り出した小片20を片刃カミソリによりトリミングを行い、さらに、ミクロトーム+トリミング用ダイヤモンドナイフを用いて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察用の試験片30を調製した。
続いて、走査型電子顕微鏡(SEM)により試験片30を観察し、試験片30を調製した成形体10(図1(a)参照)の表面から中心部側に向かって深さ0.5mmの範囲の表面部側領域31に存在する低融点ガラス繊維の分布量(表面側GF量)と、成形体10の中心部から表面に向かって高さ0.5mmの範囲の中心部側領域32に存在する低融点ガラス繊維の分布量(中心部側GF量)とをそれぞれ測定した。そして、これらの測定結果を用い、次式により、成形体中の低融点ガラス繊維の偏在度を求めた。
偏在度=(表面側GF量)/(中心部側GF量)
測定結果は、偏在度(=(表面側GF量)/(中心部側GF量))が2以上(2≦)の場合と、2未満(<2)の場合とに分けて表示した。
尚、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した測定値は、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製WinRoof)を用いて処理した。結果を表3に示す。
偏在度=(表面側GF量)/(中心部側GF量)
測定結果は、偏在度(=(表面側GF量)/(中心部側GF量))が2以上(2≦)の場合と、2未満(<2)の場合とに分けて表示した。
尚、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した測定値は、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製WinRoof)を用いて処理した。結果を表3に示す。
(2)生分解性樹脂成形体表面の耐引掻き性
生分解性樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業製NEX2000)にて表3に示すシリンダ温度と金型温度の条件で射出成形を行い、幅10cm×長さ30cm×厚さ1.5cm、重量150gの実製品サンプル片を成形した。次に、この実製品サンプル片を、横50cm×縦45cm×長さ35cmの大きさのダンボール製の箱の中に縦に並べ、合計100個の実製品サンプル片を梱包した。このとき、実製品サンプル片は、間隔2cmを隔てダンボール製の箱の中に並べられ、隣接する実製品サンプル片の間には、実製品サンプル片の表面と接触するように、それぞれダンボール板を挟みこんだ。
生分解性樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業製NEX2000)にて表3に示すシリンダ温度と金型温度の条件で射出成形を行い、幅10cm×長さ30cm×厚さ1.5cm、重量150gの実製品サンプル片を成形した。次に、この実製品サンプル片を、横50cm×縦45cm×長さ35cmの大きさのダンボール製の箱の中に縦に並べ、合計100個の実製品サンプル片を梱包した。このとき、実製品サンプル片は、間隔2cmを隔てダンボール製の箱の中に並べられ、隣接する実製品サンプル片の間には、実製品サンプル片の表面と接触するように、それぞれダンボール板を挟みこんだ。
次に、実製品サンプル片を梱包したダンボール箱を輸送トッラクにより輸送した後、ダンボール箱の中から実製品サンプル片を取り出し、表面状態を目視で観察した。観察結果は、以下の基準に従い評価した。結果を表3に示した。
○:実製品サンプル片の表面に引掻きキズが観察されない。
×:実製品サンプル片の表面に引掻きキズが観察される。
○:実製品サンプル片の表面に引掻きキズが観察されない。
×:実製品サンプル片の表面に引掻きキズが観察される。
(3)耐溶剤性(ケミカルストレスクラック性)
生分解性樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業製NEX50)にて表3に示すシリンダ温度と金型温度の条件で射出成形を行い、生分解性樹脂成形体としてISO527引張試験に準拠したISO多目的ダンベル試験片を成形した。次に、成形したISO多目的ダンベル試験片を用い、Bending Form定歪法に準拠して耐溶剤性試験を行った。
生分解性樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業製NEX50)にて表3に示すシリンダ温度と金型温度の条件で射出成形を行い、生分解性樹脂成形体としてISO527引張試験に準拠したISO多目的ダンベル試験片を成形した。次に、成形したISO多目的ダンベル試験片を用い、Bending Form定歪法に準拠して耐溶剤性試験を行った。
具体的には、温度25℃、湿度55%の環境下において、ISO多目的ダンベル試験片の両端を固定し、試験片の表面に、表2に示す4種類のオイルを塗布した。次に、試験片の中心部分を、オイルを塗布した面とは反対の面から加圧して0.5%の歪みを与え、200時間放置した。その後、試験片の状態を観察し、以下の基準に従い、生分解性樹脂成形体の耐溶剤性(ケミカルストレスクラック性)を評価した。試験片の表面にクラックが観察されない場合、耐溶剤性が良好である。結果を表3に示す。
○:試験片の表面にクラックが観察されない。
×:試験片の表面にクラックが発生している。
○:試験片の表面にクラックが観察されない。
×:試験片の表面にクラックが発生している。
(4)耐熱性
生分解性樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業製NEX50)にて表3に示すシリンダ温度と金型温度の条件で射出成形を行い、生分解性樹脂成形体としてISO527引張試験に準拠したISO多目的ダンベル試験片を成形した。次に、成形したISO多目的ダンベル試験片をISO75に準拠した試験片に加工し、この試験片についてHDT測定装置(東洋精機製HDT−3)にて、1.80MPa荷重時の熱変形温度を測定した。
測定結果は、1.80MPa荷重時の熱変形温度が70℃以上の場合(70≦)と、70℃未満の場合(<70)とに分けて表示した。1.80MPa荷重時の熱変形温度が70℃以上の場合、耐熱性が良好であると言える。結果を表3に示す。
生分解性樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(日精樹脂工業製NEX50)にて表3に示すシリンダ温度と金型温度の条件で射出成形を行い、生分解性樹脂成形体としてISO527引張試験に準拠したISO多目的ダンベル試験片を成形した。次に、成形したISO多目的ダンベル試験片をISO75に準拠した試験片に加工し、この試験片についてHDT測定装置(東洋精機製HDT−3)にて、1.80MPa荷重時の熱変形温度を測定した。
測定結果は、1.80MPa荷重時の熱変形温度が70℃以上の場合(70≦)と、70℃未満の場合(<70)とに分けて表示した。1.80MPa荷重時の熱変形温度が70℃以上の場合、耐熱性が良好であると言える。結果を表3に示す。
表1、表2及び表3から、生分解性樹脂としてポリ乳酸と、軟化温度600℃以下(330℃,380℃,450℃)の低融点ガラス繊維とを含む樹脂組成物により、表面の耐引掻き性及び耐溶剤性が向上した樹脂成形体が得られることが分かる(実施例1〜実施例6)。これに対し、ポリ乳酸を含む場合であっても、軟化温度600℃以下の低融点ガラス繊維を含まない樹脂組成物から得られた樹脂成形体は、表面の耐引掻き性及び耐溶剤性が向上しないことが分かる(比較例1〜比較例3)。
また、低融点ガラス繊維を用いることにより(実施例1〜実施例6)、低融点ガラス繊維を用いない場合(比較例1〜比較例3)と比較して、成形体中のガラス繊維の偏在度が大きいことが分かる。これは、射出成形における低融点ガラス繊維の流動性が良好であることによると考えられる。このため、同様な添加量のガラス繊維を添加した生分解性樹脂組成物から得られる成形体(比較例1〜比較例3)と比べ、成形体表面の硬さが増し、機械的強度が増大するとともに、成形体表面の耐引掻き性が向上し、また、耐溶剤性も向上すると考えられる。さらに、一定荷重下における熱変形温度が上昇し、耐熱性が向上することが分かる。
また、低融点ガラス繊維を用いることにより(実施例1〜実施例6)、低融点ガラス繊維を用いない場合(比較例1〜比較例3)と比較して、成形体中のガラス繊維の偏在度が大きいことが分かる。これは、射出成形における低融点ガラス繊維の流動性が良好であることによると考えられる。このため、同様な添加量のガラス繊維を添加した生分解性樹脂組成物から得られる成形体(比較例1〜比較例3)と比べ、成形体表面の硬さが増し、機械的強度が増大するとともに、成形体表面の耐引掻き性が向上し、また、耐溶剤性も向上すると考えられる。さらに、一定荷重下における熱変形温度が上昇し、耐熱性が向上することが分かる。
10…成形体、20…小片、30…試験片、31…表面部側領域、32…中心部側領域
Claims (8)
- 生分解性樹脂と、
軟化温度600℃以下のガラス繊維と、
を含むことを特徴とする生分解性樹脂組成物。 - 前記ガラス繊維の軟化温度が500℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
- 前記生分解性樹脂が脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性樹脂組成物。
- 前記生分解性樹脂がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物。
- さらに、リン含有化合物を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生分解性樹脂組成物。
- 生分解性樹脂と、
前記生分解性樹脂に配合された軟化温度600℃以下のガラス繊維と、を含み、
前記ガラス繊維が、中心部分より表面部分に多く存在する
ことを特徴とする生分解性樹脂成形体。 - 前記ガラス繊維は、前記中心部分から前記表面部分に向かい増加するように分布することを特徴とする請求項6に記載の生分解性樹脂成形体。
- 前記生分解性樹脂80重量%〜90重量%と、軟化温度600℃以下の前記ガラス繊維10重量%〜20重量%(但し、両者の合計は100重量%である)と、を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の生分解性樹脂成形体。
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JP2009219429A JP2011068725A (ja) | 2009-09-24 | 2009-09-24 | 生分解性樹脂組成物及び生分解性樹脂成形体 |
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WO2013001750A1 (ja) | 2011-06-29 | 2013-01-03 | 東レ株式会社 | 熱可塑性樹脂組成物ならびにそれらからなる成形品 |
-
2009
- 2009-09-24 JP JP2009219429A patent/JP2011068725A/ja active Pending
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