JP2011064088A - 圧電ポンプ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】流体の移送効率が高く、しかも流体の漏出を防止できる圧電ポンプを歩留まりよく作製できる圧電ポンプの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、圧電素子を含む構造体とその構造体に積層した第1の基板とを備える複合体と、第2の基板とを準備する第1の工程と、構造体が第2の基板に対向するように複合体と第2の基板とを接合してポンプ室を設ける第2の工程とを含有し、第2の工程において、ポンプ室の外周に沿って複合体及び/又は第2の基板に設けた溝内に充填した接着性樹脂により、複合体と第2の基板とを接合する圧電ポンプの製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、圧電素子を含む構造体とその構造体に積層した第1の基板とを備える複合体と、第2の基板とを準備する第1の工程と、構造体が第2の基板に対向するように複合体と第2の基板とを接合してポンプ室を設ける第2の工程とを含有し、第2の工程において、ポンプ室の外周に沿って複合体及び/又は第2の基板に設けた溝内に充填した接着性樹脂により、複合体と第2の基板とを接合する圧電ポンプの製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、圧電ポンプ及びその製造方法に関するものである。
従来、ごく微少量の流体を移送するための種々のマイクロポンプが検討されている。その一形態として、圧電素子をアクチュエータとして備えた圧電ポンプも提案されている。例えば特許文献1には、外圧の変化によらず常に一定の吐出を実現でき、かつ双方向への送液が可能であるマイクロポンプの提供を意図して、流体の流路を形成するシリコン基板(Si基板)に圧電素子が配設された圧電ポンプが提案されている。この圧電ポンプによると、ダイアフラムとして機能するシリコン基板と圧電素子のユニモルフ構造を用いているために、非常に薄く製作することが可能である、とされている。
特許文献1に開示された圧電ポンプでは、その図4(k)に示されているように、シリコン基板1に対して陽極接合によりガラス基板2が接合されており、その接合により、流体の流れる空間(ポンプ室)が形成されている。
しかしながら、特許文献1に記載のものを始めとする陽極接合によると、プロセスの都合上、両基板の接触し合った箇所の大部分を接合することになり接合部分の面積が大きくなる。そうすると、接合部分に微細な異物が混入しやすくなり、それが原因となって基板間の接合すべき部分を接合できず隙間が生じてしまう。そうすると、その隙間にポンプ内を流れる流体が流れ込むことになるため、ポンプの移送効率の低下及び流体の漏出の原因となってしまう。また、接合部分の面積が大きくなると、接合の際に基板同士を押し付け合う力を大きくする必要があり、そのことにより基板の損傷が生じやすくなる。また、これらの結果、圧電ポンプを製造する際の歩留まりも低下する。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、流体の移送効率が高く、しかも流体の漏出を防止できる圧電ポンプを提供することを目的とする。また、本発明は、そのような圧電ポンプを歩留まりよく作製できる圧電ポンプの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、接合すべき部分を特定の部分に限定し、かつ、ポンプ室を形成する際にその接合すべき部分に予め所定の加工を施すことで、流体の移送効率が高く、かつ流体の漏出を防止できる圧電ポンプを作製することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、圧電素子を含む構造体とその構造体に積層した第1の基板とを備える複合体と、第2の基板とを準備する第1の工程と、構造体が第2の基板に対向するように複合体と第2の基板とを接合してポンプ室を設ける第2の工程とを含有し、第2の工程において、ポンプ室の外周に沿って複合体及び/又は第2の基板に設けた溝内に充填した接着性樹脂により、複合体と第2の基板とを接合する圧電ポンプの製造方法を提供する。
また、本発明は、圧電素子を含む構造体と、構造体を挟む第1及び第2の基板とを含有し、第2の基板と構造体とによって囲まれたポンプ室と、ポンプ室と連通する第1及び第2の開口部と、圧電素子の動作によりポンプ室とは反対側に構造体が撓むように設けられた空間とを有し、ポンプ室の外周に沿って設けられた溝内に充填され構造体と第2の基板とを接合する接着性樹脂を含有する圧電ポンプを提供する。
本発明の圧電ポンプは、下記のようにして作動する。すなわち、圧電素子に電圧を印加すると、圧電素子を構成する圧電体が面内方向(d31方向)及び厚み方向(d33方向)に変位する。この変位に伴い、構造体が、その形状効果により、第1及び/又は第2の基板に固定された部分を支点として厚み方向に撓みながら振動する。この振動により流体の流路となるポンプ室の容積及び内圧が変化することで、第1の開口部、ポンプ室及び第2の開口部を経由して流体が圧電ポンプ内を移送される。
本発明の圧電ポンプの製造方法によると、第2の工程においてポンプ室の外周に沿って複合体及び/又は第2の基板に設けた溝内に充填した接着性樹脂により、複合体と第2の基板とを接合する。これにより、複合体と第2の基板とを接合する部分が、溝内に充填した接着性樹脂の存在する部分に限定されるため、接合部分に異物が混入する可能性が極めて低くなる。また、たとえ異物が存在しても、接合前は粘体である接着性樹脂中又は溝内であれば異物を収容することができる。そうすると、異物の混入に起因する隙間の形成も防止されるため、隙間に流体が流れ込む現象が生じない。さらには、ポンプ室の外周に沿って溝を設けるので、接合部分とポンプ室との間の領域で異物が混入する可能性が極めて低くなり、異物の混入に起因して生成した隙間に流体が流れ込むという現象を防止することができる。これらの結果、圧電ポンプによる流体の移送効率は高くなり、流体の漏出を防止でき、そのような不具合が生じ難くなることで圧電ポンプを製造する際の歩留まりを高くすることが可能となる。また、接合面積が相対的に少なくなるため、第2の基板や複合体が段差や反りを有する場合であっても、それらの部分で接合する可能性が低くなるため、結果的には接合不良が発生し難くなる。
本発明によれば、流体の移送効率が高く、しかも流体の漏出を防止できる圧電ポンプを提供することができる。また、本発明によれば、そのような圧電ポンプを歩留まりよく作製できる圧電ポンプの製造方法を提供することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、本実施形態の圧電ポンプの製造方法を模式的に示す工程図である。まず、(A1)工程において、成膜用基板を兼ねる第1の基板102上に層状の下部電極104及び層状の圧電体106をこの順で積層する。より具体的には、まず、第1の基板102の表面上に下部電極104を、例えばスパッタ法、CVD法、蒸着法により形成し、第1の基板102に下部電極104を接合する。第1の基板102は、その表面上に下部電極104及び圧電体106を形成可能なものであれば特に限定されず、通常の薄膜形成に用いられる基板であってもよい。ただし、後述の圧電体106の材料及び成膜法との組合せの観点、並びに高配向の圧電体を得る観点から、Si基板であると好ましい。下部電極104の材料は、圧電素子の電極材料として用いられ得るものであれば特に限定されず、例えば白金、金、銅、及びこれらを含む合金が挙げられる。また、下部電極104の厚さは、例えば0.05μm〜1.0μmである。
次いで、下部電極104の表面上に圧電体106を形成する。圧電体106の形成方法としては、例えば、スパッタ法、CVD法、蒸着法が挙げられる。圧電体106の材料は薄膜形成可能な圧電材料であれば特に限定されず、例えば、PZT、チタン酸バリウムなどが挙げられる。それらの中でも、優れた圧電特性を示し、入手も容易な観点から、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が好ましい。圧電体106の厚さは、例えば0.5μm〜5.0μmである。
続いて、(A2)工程において、圧電体106の表面上に上部電極108となる層を、例えばスパッタ法、CVD法、蒸着法により形成する。次いで、上部電極108となる層を所望の形状にパターニングする。パターニングの方法は、特に限定されず、例えば、エッチマスクとしてマスクレジストを上部電極108となる層の表面上に形成した後に、エッチングによりマスクレジストで被覆されていない上記層の部分を除去し、その後、マスクレジストを除去してもよい。他のパターニングの方法として、レジストパターニング、成膜、不要部分の除去を行うリフトオフ法を用いてもよい。これにより、上部電極108が形成され、下部電極104、圧電体106及び上部電極108が積層された領域において圧電素子110が得られる。上部電極108の材料は、圧電素子の電極材料として用いられ得るものであれば特に限定されず、例えば白金、金、銅、及びこれらを含む合金が挙げられる。上部電極108の厚さは、例えば0.05μm〜1.0μmであってもよい。
次いで、(A3)工程において、圧電素子110及び圧電体106の表面上に支持部材112を形成する。支持部材112の材料は、絶縁性を有する材料であって、かつ、圧電素子110の変位によっても破損することなく適度に湾曲して追従することが必要となるため、柔軟性を有する材料であることが好ましい。支持部材112の材料として柔軟性を有する材料を採用すると、圧電素子110の変位をポンプ室に良好に伝えることが可能となるため、圧電ポンプの効率(流体移送効率、作動効率)が高くなる。支持部材112の材料は、具体的には樹脂材料であることが好ましい。支持部材112の材料が樹脂材料である場合、(A3)工程ではまず、その樹脂材料の原料となる樹脂組成物(例えば、樹脂及び/又は単量体と溶媒との混合物)を圧電素子110及び圧電体106の表面上に塗布する。次いで、塗布した樹脂組成物を乾燥などにより固化又は加熱若しくは光照射などにより硬化させる。樹脂材料としては、圧電体106及び上部電極108に良好に接着する材料が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド、パリレン等が挙げられる。こうして、圧電素子110とその圧電素子110を支持する支持部材112とを備える構造体114を得る。この構造体114は、下部電極104、圧電体106、上部電極108及び支持部材112を、この順に積層してなるものである。
次に、(A4)工程において、第1の基板102を部分的にエッチングする。(A4)工程では、第1の基板102の圧電素子110に対向する部分(すなわち上部電極108に対向する部分)と、その外周部分とをエッチングにより除去して、開口部116を形成する。これにより、下部電極104の圧電素子110を構成する領域の第1の基板102側の表面と、その領域の外周部分の表面とが露出する。
エッチングの方法は、特に限定されず、例えば、エッチマスクとして所定形状のマスクレジストを第1の基板102の表面上に形成した後に、エッチングによりマスクレジストで被覆されていない第1の基板102の部分を除去し、その後、マスクレジストを除去してもよい。他のエッチングの方法としては、レジストパターニング、成膜、不要部分の除去を行うリフトオフ法が挙げられる。エッチングとしては、ドライエッチングが好ましく、例えば、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンビームエッチング、反応性レーザービームエッチングが例示される。こうして、第1の基板102と、その第1の基板102に接合して積層した構造体114とを備える複合体118を得る。
一方、(B1)工程において、まず、第2の基板120を準備する。この第2の基板120としては、例えばガラス基板、セラミック基板が挙げられ、その厚さは、例えば0.2mm〜2.0mmである。続いて、(B2)工程において、第2の基板120の主面をウェットエッチング等によりパターニング加工して所定形状の溝122を形成する。溝122のパターンは、圧電素子110(及び後述の開口部)の外周に沿うパターンとする。また、溝122の断面形状としては、図示するように矩形であってもよく、その他、溝122の底側から開口側に広がる台形(テーパ状)、底側が曲線をなすU字形などが挙げられる。溝122の断面形状が上記台形である場合、後述の接着性樹脂による接合の際、溝の中での気泡の形成を抑制できるので好ましい。溝122の中に気泡が形成されると、その気泡の部分に流体が浸入して滞留することにより不純物に変化することもあるため好ましくない。溝122の幅は、異物の混入による影響をなるべく少なくし、しかも複合体118と第2の基板120とを確実に接合する観点から、開口側で20〜100μmであると好ましい。また、溝122の深さは第2の基板の厚さよりも浅ければ特に限定されないが、後述の接着性樹脂124による接合の際にその接着性樹脂124が溝122からはみ出さないようにしつつ、接着性樹脂124を効率的に充填する観点から、最も深い部分で3〜20μmであると好ましい。
また、図1において示していないが、(B2)工程において、第2の基板120の所定の位置に、その厚み方向に貫通した第1の開口部126a及び第2の開口部126bをエッチング等により形成する。その第1及び第2の開口部126a、126bの形成時に併せて、第2の基板120の溝122を形成した側の主面に、第1及び第2の開口部126a、126bからそれぞれ連続的かつ互いに近づく方向に延在する切り欠き136a、136bをエッチング等により形成する。
次いで、(B3)工程において、溝122内に接着性樹脂124を充填する。この際、接着性樹脂124を第2の基板120の溝122を形成した側の主面よりも、その第2の基板120の厚み方向にはみ出させつつ、溝122の幅方向にはみ出させないように充填する。接合した際にもはみ出させない観点から、溝122内で接着性樹脂124の両側に隙間を設けることが好ましく、その隙間の幅は、後述のポンプ室128側の方が、それとは反対側よりも短いと好ましい。これにより、接合した後に溝122内のポンプ室128側に隙間が生じ難くなる。その隙間に流体が浸入すると、その流体は隙間に滞留してしまい、圧電ポンプ100の劣化を早める原因となる。また、接合前のポンプ室128側の隙間の幅は15μm程度であれば、接合時にポンプ室128に接着性樹脂124がはみ出し難くなる。
接着性樹脂124の種類としては、複合体118と第2の基板120とを接合できるものであれば特に限定されないが、溝122からその幅方向にはみ出さないようにしながら効率的に充填するためには、接着性樹脂124を溝と同じパターンにパターニングして充填することが望ましい。そのような観点から、接着性樹脂124はパターニングが可能な感光性樹脂であると好ましい。その場合、接着性樹脂124を熱硬化させることにより接合することが好ましく、すなわち、接着性樹脂124が熱硬化性樹脂であると好ましい。そのような接着性樹脂124としては、例えば、ポリイミド、変性ポリイミド、パリレン、シリコーン系樹脂が挙げられる。また、溝122内での接着性樹脂124の充填量は、接合の際に溝122からはみ出ない量であって、かつ、複合体118と第2の基板120とをしっかりと接合できる量であればよい。
次に、(C)工程において、複合体118の構造体114側の表面と、第2の基板120の溝122を形成した側の表面とを対向させて、それらを互いに押し付け合いながら重ね合わせる。この際、溝122が圧電素子110の外周に沿うように位置合わせして、複合体118と第2の基板120とを重ね合わせる。これにより、接着性樹脂124は、それらの積層方向に押し潰され、第2の基板120の厚み方向にはみ出ていた部分は溝122内に収容される。さらに接着性樹脂124を加熱して熱硬化させることにより、その接着性樹脂124の部分で複合体118と第2の基板120とを接合する。このときの接着性樹脂124の加熱温度は、接着性樹脂124が熱硬化する温度であればよいが、工程の短縮化の観点及びその他の材料の熱劣化や損傷の観点から、加熱温度を設定する。こうして、本実施形態の圧電ポンプ100が得られる。
こうして得られた本実施形態の圧電ポンプ100を図2及び3に示す。図2は、本実施形態の圧電ポンプ100を、その一部を透視して模式的に示す平面図(ただし、一部の部材を省略する。)であり、図3は、図2に示すII−II線で切断して現れる断面を模式的に示す断面図である。なお、図2に示すI−I線で切断して現れる断面を模式的に示す断面図が図1の(C)である。本実施形態の圧電ポンプ100は、圧電素子110と圧電素子110を支持する支持部材112とを備える構造体114と、構造体114を直接狭持する第1及び第2の基板102、120と、を含有し、第2の基板120と構造体114とによって囲まれたポンプ室128と、動作時にポンプ室128と連通する第1及び第2の開口部126a、126bとを備えるものである。ポンプ室128は、圧電ポンプ100が動作(駆動)していないとき、構造体114と第2の基板120とが直接接触しているため、実質的に容量がゼロの状態にある(以下、このようなポンプを「ゼロポンプ」という。)。一方、構造体114と第2の基板120とはポンプ室128の部分では接合されていないため、圧電ポンプ100の動作時、圧電素子110が変位することでポンプ室128の容量が増減する。
圧電素子110は電圧を印加することによって変位するが、開口部116が形成されていることにより、圧電体106が図1の下方向に凸状に湾曲できるため、圧電素子110の変位が可能となる。また、ポンプ室128の外周だけでなく、第1の開口部126a及び第2の開口部126bの外周に沿っても同様に溝122が設けられており、その溝122内に接着性樹脂124が充填され、その接着性樹脂124により構造体114と第2の基板12とが接合されている。
より詳細には、本実施形態の圧電ポンプ100に備えられる上部電極108は、流体の流通方向(図2中の矢印Aの方向)に沿って配設された5つの上部電極108a、108b、108c、108d、108e(まとめて「108a〜e」と表記する。以下同様。)を有する。上部電極108a〜eは、互いに離間する薄膜であり、図2において、上部電極108a〜eの各々の平面形状は略円形になっているが、それに限定されない。それらの上部電極108a〜eに対応して、圧電素子110は5つの圧電素子110a〜eを有し、ポンプ室128は5つのポンプ室128a〜eを有する。言い換えれば、圧電素子110a〜eは、1つの圧電体106と、その圧電体106を上下から挟む電極対とを備え、電極対は1つの下部電極104と、流体の流通方向に沿って配設された5つの上部電極108a〜eとからなる。さらに言えば、圧電素子110a〜eは、各々が上部電極108a〜eを備える一方、圧電体106と下部電極104とを共有する。そして、ポンプ室128a〜eの各々は、圧電素子110a〜eの各々が変位することによりその容量を増減する。溝122及びその中に充填された接着性樹脂124は、それらの圧電素子110a〜eと、第1及び第2の開口部126a、126bの外周を包囲するように設けられている。
支持部材112は、その周縁部を第1及び第2の基板102、120で挟まれて、それらの基板102、120と接合されること、特に第2の基板とは接着性樹脂124によりその部分で接合されること、により固定されている。一方、支持部材112の上記周縁部で包囲された中央部では、その上面を第2の基板120の下面と接触させているが、支持部材112の上面と第2の基板120の下面とは互いに接合しておらず離間可能になっている。支持部材112の中央部の下面側には、周縁部とは異なり第1の基板102が接合されておらず、空間が確保されている。その空間の平面形状は、圧電素子110a〜eの変位を阻害しないような形状であればよく、例えば、後述の上部電極108a〜eの全体に対応する形状であってもよい。
5つの圧電素子110a〜eに備えられる上部電極108a〜eの各々からは配線130a〜eが取り出される。取り出されたそれらの配線130a〜eは端子132a〜eまで延びており、その端子132a〜eを介して電源(図示せず。)に接続されている。また、下部電極104からも同様に配線(図示せず。)が取り出され、その配線は端子134まで延びており、その端子134を介して電源(図示せず。)に接続されている。接着性樹脂124を充填した溝122は、これらの端子132a〜eの外周に沿うようにしても形成されている。
第1の開口部126aから延在する切り欠き136aは、ポンプ室128aまで延びており、第2の開口部126bから延在する切り欠き136bは、ポンプ室128eまで延びている。切り欠き136aは、第1の開口部126aから流体をポンプ室128aに円滑に吸入するために設けられており、切り欠き136bは、ポンプ室128eから流体を第2の開口部126bに円滑に吐出するために設けられている。これらの切り欠き136a及び136bの深さは、例えば3〜20μmである。
次に、本実施形態の圧電ポンプ100の動作方法について、図4及び5を参照しながら説明する。まず、(A)工程において、圧電ポンプ100は停止状態にあり、構造体114の上面は全面的に第2の基板120と接触している。それにより、ポンプ室128を形成する支持部材112が第1及び第2の開口部126a、126bを閉塞している。このとき、下部電極104には電圧が印加されていても印加されていなくてもよい。この(A)工程における圧電ポンプ100は、図3における圧電ポンプ100と同じ状態にある。
次いで、(B)工程において、配線(図示せず。)を通じて下部電極104に、配線130aを通じて上部電極108aに、それぞれ電圧を印加する。これにより、圧電素子110aは、支持部材112を伴って速やかに変位して、印加した電圧の大きさに従った形状に変形する。圧電素子110aの変位は、上部電極108a直下における薄膜状の圧電体106の部分が面内方向(d31方向)及び厚み方向(d33方向)において変位するのに伴うものである(以下同様。)。より具体的には、上部電極108a直下の圧電体106の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極108aの上方にある支持部材112が下側へ引っ張られる。これにより、ポンプ室128a内の容量は増大し、圧力は低下するため、圧電ポンプ100は、第1の開口部126aから切り欠き136aを経由して、そのポンプ室128aに流体を吸入する。切り欠き136aを設けたことで、第1の開口部126aからの流体の流入が円滑になる。
次に、(C)工程において、下部電極104及び上部電極108aへの電圧の印加を維持した状態で、更に配線130bを通じて上部電極108bに電圧を印加する。これにより、上部電極108a直下の圧電体106の部分が変位を維持した状態で、更に上部電極108b直下の圧電体106の部分が変位するため、圧電素子110bは、支持部材112を伴って速やかに変位して、印加した電圧の大きさに従った形状に変形する。より具体的には、上部電極108b直下の圧電体106の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極108bの上方にある支持部材112が下側へ引っ張られ、第2の基板120と離間する。この湾曲により、上部電極108a、108b間にある支持部材112の部分も下側に引っ張られて、その部分でも支持部材112と第2の基板120とが離間する。これにより、ポンプ室128b内の容量は増大し圧力は低下するため、圧電ポンプ100は、ポンプ室128aに加えて、ポンプ室128bにも流体を吸入する。
次いで、(D)工程において、下部電極104及び上部電極108bへの電圧の印加を維持した状態で、上部電極108aへの電圧の印加を停止すると共に、更に配線130cを通じて上部電極108cに電圧を印加する。これにより、上部電極108b直下の圧電体106の部分が変位を維持した状態で、更に上部電極108c直下の圧電体106の部分が変位するため、圧電素子110cは、支持部材112を伴って速やかに変位し、印加した電圧の大きさに従った形状に変形する。その一方で、上部電極108a直下の圧電体106の部分も変位して、圧電素子110aは、支持部材112を伴って速やかに変位して最初の状態に戻る。より具体的には、上部電極108c直下の圧電体106の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極108cの上方にある支持部材112が下側へ引っ張られ、第2の基板120と離間する。この湾曲により、上部電極108b、108c間にある支持部材112の部分も下側に引っ張られて、その部分でも支持部材112と第2の基板120とが離間する。一方で、上部電極108a直下の圧電体106の部分が下に凸の形状から(A)工程における形状に速やかに戻ると共に、上部電極108aの上方にある支持部材112も(A)工程における状態に戻り、第2の基板120と再び接触する。これらにより、ポンプ室128c内の容量が増大し圧力が低下する一方で、ポンプ室128aから流体が押し出されるため、圧電ポンプ100は、ポンプ室128aから流体を吐出すると共に、ポンプ室128cに流体を吸入する。
次に、(E)工程において、下部電極104及び上部電極108cへの電圧の印加を維持した状態で、上部電極108bへの電圧の印加を停止すると共に、更に配線130dを通じて上部電極108dに電圧を印加する。これにより、上部電極108c直下の圧電体106の部分が変位を維持した状態で、更に上部電極108d直下の圧電体106の部分が変位するため、圧電素子110dは、支持部材112を伴って速やかに変位し、印加した電圧の大きさに従った形状に変形する。その一方で、上部電極108b直下の圧電体106の部分も変位して、圧電素子110bは、支持部材112を伴って速やかに変位して最初の状態に戻る。より具体的には、上部電極108d直下の圧電体106の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極108dの上方にある支持部材112が下側へ引っ張られ、第2の基板120と離間する。この湾曲により、上部電極108c、108d間にある支持部材112の部分も下側に引っ張られて、その部分でも支持部材112と第2の基板120とが離間する。一方で、上部電極108b直下の圧電体106の部分が下に凸の形状から(A)工程における形状に速やかに戻ると共に、上部電極108bの上方にある支持部材112も(A)工程における状態に戻り、第2の基板120と再び接触する。これらにより、ポンプ室128d内の容量が増大し圧力が低下する一方で、ポンプ室128bから流体が押し出されるため、圧電ポンプ100は、ポンプ室128bから流体を吐出すると共に、ポンプ室128dに流体を吸入する。
次に、(F)工程において、下部電極104及び上部電極108dへの電圧の印加を維持した状態で、上部電極108cへの電圧の印加を停止すると共に、更に配線130eを通じて上部電極108eに電圧を印加する。これにより、上部電極108d直下の圧電体106の部分が変位を維持した状態で、更に上部電極108e直下の圧電体106の部分が変位するため、圧電素子110eは、支持部材112を伴って速やかに変位し、印加した電圧の大きさに従った形状に変形する。その一方で、上部電極108c直下の圧電体106の部分も変位して、圧電素子110cは、支持部材112を伴って速やかに変位して最初の状態に戻る。より具体的には、上部電極108e直下の圧電体106の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極108eの上方にある支持部材112が下側へ引っ張られ、第2の基板120と離間する。この湾曲により、上部電極108d、108e間にある支持部材112の部分も下側に引っ張られて、その部分でも支持部材112と第2の基板120とが離間する。一方で、上部電極108c直下の圧電体106の部分が下に凸の形状から(A)工程における形状に速やかに戻ると共に、上部電極108cの上方にある支持部材112も(A)工程における状態に戻り、第2の基板120と再び接触する。これらにより、ポンプ室128e内の容量が増大し圧力が低下する一方で、ポンプ室128cから流体が押し出されるため、圧電ポンプ100は、ポンプ室128cから流体を吐出すると共に、ポンプ室128eに流体を吸入する。
そして、(G)工程において、下部電極104及び上部電極108eへの電圧の印加を維持した状態で、上部電極108dへの電圧の印加を停止する。これにより、上部電極108e直下の圧電体106の部分が変位を維持した状態で、上部電極108d直下の圧電体106の部分が変位して、圧電素子110dは、支持部材112を伴って速やかに変位して最初の状態に戻る。より具体的には、上部電極108d直下の圧電体106の部分が下に凸の形状から(A)工程における形状に速やかに戻ると共に、上部電極108dの上方にある支持部材112も(A)工程における状態に戻り、第2の基板120と再び接触する。これにより、ポンプ室128dから流体を押し出して、ポンプ室128eに切り欠く136bを経由して連通した開口部126bから流体を吐出する。切り欠き136bを設けたことで、第2の開口部126bへの流体の流出が円滑になる。
上述の(B)〜(G)工程を繰り返すことで、本実施形態の圧電ポンプ100を経由して流体を移送することができる。この場合、例えば上記(E)工程の開始と共に、上記(B)工程を開始してもよい。これにより、更に圧電ポンプ100による単位時間当たりの流体の移送量を増大することが可能となる。
本実施形態の圧電ポンプ100は、上流側に配置された圧電素子から下流側に配置された圧電素子に向かって、上述のようにして順に電圧を印加することで、複数の圧電素子110a〜eを全体として蠕動させて(うごめくように)動作することにより流体を移送する。
本実施形態の圧電ポンプ100の製造方法によると、(C)工程において、複合体118の構造体114側の表面と、第2の基板120の溝122を形成した側の表面とを対向させて、それらを互いに押し付け合いながら重ね合わせた後、さらに、溝122内の接着性樹脂124を加熱して熱硬化させることにより、その接着性樹脂124の部分で複合体118と第2の基板120とを接合する。これにより、複合体118と第2の基板120とを接合する部分が、溝122内に充填した接着性樹脂124の存在する部分に限定されるため、接合部分に異物が混入する可能性が極めて低くなる。特に、複合体118と第2の基板120とを互いに押し付けながら接合しても、接着性樹脂124が溝122内に充填されたままで、その範囲が広がらないので、異物の混入が抑制される。また、たとえ異物が存在しても、接合前は粘体である接着性樹脂124中又は溝122内であれば異物を収容することができる。そうすると、異物の混入に起因する隙間の形成も防止されるため、隙間に流体が流れ込む現象が生じない。さらには、ポンプ室128の外周に沿って溝122を設けるので、接合部分とポンプ室128との間の領域で異物が混入する可能性が極めて低くなり、異物の混入に起因して生成した隙間に流体が流れ込むという現象を防止することができる。これらの結果、圧電ポンプ100による流体の移送効率は高くなり、流体の漏出を防止でき、そのような不具合が生じ難くなることで圧電ポンプ100を製造する際の歩留まりを高くすることが可能となる。
本実施形態の圧電ポンプ100はゼロポンプであり、動作していないときでもポンプ室に空間があって所定の容量を有するようなポンプと比較すると、流体を吸入する際の容量の増大程度(△V)が大きくなるため、流体の移送効率が非常に高いポンプである。しかも、溝122内に接着用樹脂124を充填した状態で接合できるので、そのような溝を有しないポンプと比較すると、接着用樹脂の厚みが溝122に吸収される分だけ、非動作時のポンプ室の容量を低減することができる。その結果、流体を吸入する際の容量の増大程度(△V)が大きくなるため、この観点からも流体の移送効率が非常に高いポンプである。
また、本実施形態の圧電ポンプ100では、溝122が第2の基板に形成されている。これにより、複合体118に溝が形成される場合と比較して、材質が一様のものに溝を形成できるため、その深さを均一にすることができる。さらに、接着性樹脂124が溝122内に充填された後にその部分で接合するため、例えば、接着性樹脂124を複合体118の表面に塗布する場合と比較して、接合時に接着性樹脂124が溝122に充填されるよう位置合わせを行う必要もなくなり、作業の簡便性が向上する。
また、本実施形態の圧電ポンプ100は低い電圧で変位する薄膜状の圧電素子110a〜eを採用しているため、より低電圧であっても良好な効率を発揮することができる。また、圧電素子110a〜eを薄膜状にすることで、いわゆるバルクの圧電ポンプと比較して、設計に沿った最適な形状のものを作製することができる。さらには、薄膜状の圧電素子110a〜eを採用することにより、バルクの圧電ポンプと比較して、圧電ポンプの更なる小型化、薄型化が可能となる。そのため、圧電ポンプ100は、これを備えた電子部品の更なる高密度集積化を実現することができ、MEMSに有効に利用することが可能となる。
また、本実施形態の圧電ポンプ100は、1つの支持部材112に支持された複数の圧電素子110a〜eを備えている。それらの圧電素子110a〜eでは、上部電極108a〜eが互いに離間しており、1つの圧電素子に印加した電圧が、その他の圧電素子の変位に影響を与えない。そのため、この圧電ポンプ100は、高速駆動時の十分に安定した運転も可能になり、かつ、圧電素子110a〜eの変位量のばらつきも十分に抑制することができる。
本実施形態の圧電ポンプ100は、上流側の圧電素子を変位させて流体を押し出すと共に、下流側の圧電素子を変位させて流体を吸入することで、流体を移送する。このように、流体の押出しと吸引とを適切に組み合わせることで、本実施形態の圧電ポンプ100は更に大きな変換効率を示し、より小さな電圧の印加であっても、流体のより大きな移送量を実現することができる。さらには、本実施形態の圧電ポンプ100では、第2の基板120と構造体114とによって各ポンプ室128a〜eが囲まれているため、各ポンプ室128a〜eでの圧電素子110a〜eの変位を効率的に流体の圧縮(加圧)及び膨張(減圧)に変換することができる。しかも、流体は各ポンプ室から隣接するポンプ室にのみ移動可能になっているため、上記圧縮及び膨張を効率的にポンプ室間の流体の移送に変換することができる。これらの結果、本実施形態の圧電ポンプ100はより高い変換効率で流体を移送することができる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、上記本実施形態において、支持部材112は圧電素子110の上側(ポンプ室側)に配置されたが、支持部材は圧電素子の下側(ポンプ室とは逆側)に配置されてもよく、省略されてもよい。ただし、それらの場合、圧電素子が直接流体と接触することとなり、圧電素子の劣化に繋がりやすくなるため、支持部材は圧電素子のポンプ室側に配置されることが好ましい。また、溝122と同様に機能する溝が複合体に形成されてもよく、その溝内に接着性樹脂が充填されてもよい。あるいは、溝及び接着性樹脂のいずれか一方が第2の基板に配置され、他方が複合体に配置されてもよい。
また、上記本実施形態において、圧電素子110a〜eは、1つの下部電極104、1つの圧電体106及び5つの上部電極108a〜eを積層して備えるものであったが、上部電極の数はもちろん5つに限定されるものではなく、また、1つの下部電極104上に、複数の圧電体と複数の上部電極とを順に積層して備えるものであってもよく、複数の下部電極のそれぞれに圧電体及び上部電極を順に積層して備えるものであってもよい。さらに、上記本実施形態において、圧電ポンプ100はゼロポンプであったが、圧電素子の領域で構造体114と第2の基板120とを常時離間するよう各ポンプ室間に壁部を設けることで、圧電ポンプ100が動作していないときであっても、ポンプ室に一定の容量が確保されていてもよい。
さらに、別の本実施形態において、圧電ポンプがただ一つの圧電素子を有するものであってもよい。その場合、圧電ポンプが流体を効率的に移送するために、上流側の開口部及び下流側の開口部を別々に開閉できるアクチュエータを備えることが好ましい。また、圧電素子110a〜fの各々の平面形状は略円形でなくてもよく、例えば卵の断面形や楕円であってもよい。本発明の圧電ポンプは、圧電素子の動作によりポンプ室とは反対側に構造体が撓むように設けられた空間を有していればよく、状基本実施形態のように、第1の基板が貫通した開口部を設けていなくてもよい。例えば、第1の基板は、その圧電素子に対向する側の主面における圧電素子に対応する領域に、例えばエッチング等により凹みを設けただけであってもよい。
また、本発明の圧電ポンプは、図6に示すように、第1及び第2の開口部226a、226bと圧電素子210(ポンプ室)との間に所定の長さを有する流路250a、250bを設けてもよい。図6は、図2と同様に、本発明の圧電ポンプを、その一部を透視して模式的に示す平面図(ただし、一部の部材を省略する。)である。第1及び第2の開口部226a、226bは、上記本実施形態における第1及び第2の開口部126a、126bと同様に機能するものであり、圧電素子210は、上記本実施形態における圧電素子110と同様に機能するものである。流路250a、250bは、例えば第2の基板の複合体に対向する主面をエッチング等により加工することで形成される。図6に示す圧電ポンプの場合、流路250a、250bの外側に沿って更に溝を形成し、その溝内に接着性樹脂が充填されている。これにより、接合性を更に高めることができるので、流路250a、250bからの流体の漏出を良好に防止することができる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(圧電ポンプの作製)
図1〜3に示すものと同様の圧電ポンプを上記本実施形態の製造方法と同様にして作製した。第1の基板である厚さ400μmのSi基板上に、下部電極として厚さ0.1μmのPt電極、圧電体として厚さ2μmのPZT層、上部電極として厚さ0.1μmのPt電極を順にイオンミリング及びエッチング法により形成し、圧電素子を得た。なお、1つの上部電極の主面は、直径1mmの略円形とした。次にその上に、絶縁性のポリイミド樹脂を塗布した後、それらの全体を280℃で1時間加熱して、ポリイミド樹脂を硬化させ、厚さ8μmの支持部材を得た。更に、Si基板の圧電素子に対向する部分(すなわち上部電極に対向する部分)と、その外周部分とをDeep−RIEを用いた反応性イオンエッチングにより除去して開口部を形成し、複合体を得た。
(圧電ポンプの作製)
図1〜3に示すものと同様の圧電ポンプを上記本実施形態の製造方法と同様にして作製した。第1の基板である厚さ400μmのSi基板上に、下部電極として厚さ0.1μmのPt電極、圧電体として厚さ2μmのPZT層、上部電極として厚さ0.1μmのPt電極を順にイオンミリング及びエッチング法により形成し、圧電素子を得た。なお、1つの上部電極の主面は、直径1mmの略円形とした。次にその上に、絶縁性のポリイミド樹脂を塗布した後、それらの全体を280℃で1時間加熱して、ポリイミド樹脂を硬化させ、厚さ8μmの支持部材を得た。更に、Si基板の圧電素子に対向する部分(すなわち上部電極に対向する部分)と、その外周部分とをDeep−RIEを用いた反応性イオンエッチングにより除去して開口部を形成し、複合体を得た。
次いで、第2の基板である厚さ300μmのガラス基板に、エッチング法によりパターン化した溝、直径650μmの第1の開口部及び第2の開口部、並びにそれらの開口部から延在する切り欠きを形成した。溝の断面形状は底側から開口側に広がる台形であり、溝の幅は底側で75μm、開口側で300μmとした。更に、その溝内にポリイミドからなる接着性樹脂を充填した。接着性樹脂の充填位置は、溝の圧電素子(ポンプ室)側から約15μmの隙間が生じる位置にし、かつ、ガラス基板の溝を形成した側の主面よりも、そのガラス基板の厚み方向に約2μmはみ出させた。
次に、溝内に接着性樹脂を充填した後のガラス基板の溝を形成した側の表面と、複合体の構造体側の表面とを対向させて、それらを互いに押し付け合いながら重ね合わせた。この際、溝が圧電素子の外周に沿うように位置合わせして、複合体とガラス基板とを重ね合わせた。その後、それら全体を280℃で1時間加熱して、接着性樹脂を硬化させることで、その接着性樹脂により支持部材とガラス基板とを接合した。また、下部電極及び上部電極に対して図2に示すものと同様の配線及び端子を形成し、それらを駆動回路に接続した。こうして圧電ポンプを得た。かかる圧電ポンプを、同じ製造方法により計6個作製し、そのうち流体を移送することができなかった圧電ポンプは1個であった。
(圧電ポンプの駆動)
図4及び5に示す動作をするように圧電ポンプを駆動した。1工程あたりの駆動電圧の印加時間は1ミリ秒又は10ミリ秒、下部電極に印加する電圧(バイアス電圧)は5V、上部電極に印加する電圧(駆動電圧)は20Vとした。流体として空気を用い、常温で圧電ポンプを駆動した。このときの流体の移送量を、駆動電圧の印加時間が1ミリ秒の場合を基準(1.0)として相対比で算出した。結果を表1に示す。この結果より、バイアス電圧を常時印加することにより、圧電ポンプの流体の移送量が増大することがわかった。
図4及び5に示す動作をするように圧電ポンプを駆動した。1工程あたりの駆動電圧の印加時間は1ミリ秒又は10ミリ秒、下部電極に印加する電圧(バイアス電圧)は5V、上部電極に印加する電圧(駆動電圧)は20Vとした。流体として空気を用い、常温で圧電ポンプを駆動した。このときの流体の移送量を、駆動電圧の印加時間が1ミリ秒の場合を基準(1.0)として相対比で算出した。結果を表1に示す。この結果より、バイアス電圧を常時印加することにより、圧電ポンプの流体の移送量が増大することがわかった。
(実施例2)
圧電素子の領域で構造体とガラス基板とを常時離間するよう各ポンプ室間に壁部を設けた以外は実施例1と同様にして圧電ポンプを得た。溝を形成した際に、ガラス基板の溝を設けた側とは反対側の主面をエッチングにより加工して上記壁部(壁の高さ:5μm)を設けた。実施例1と同様にして、圧電ポンプを駆動した。結果を表1に示す。
圧電素子の領域で構造体とガラス基板とを常時離間するよう各ポンプ室間に壁部を設けた以外は実施例1と同様にして圧電ポンプを得た。溝を形成した際に、ガラス基板の溝を設けた側とは反対側の主面をエッチングにより加工して上記壁部(壁の高さ:5μm)を設けた。実施例1と同様にして、圧電ポンプを駆動した。結果を表1に示す。
(比較例1)
溝を設けてそこに接着性樹脂を充填することに代えて、溝を設けず、支持部材における、圧電素子、第1及び第2の開口部並びに切り欠きに対応する部分以外の部分に接着性樹脂を塗布した以外は、実施例1と同様にして圧電素子を作製した。かかる圧電ポンプを、同じ製造方法により計6個作製し、そのうち流体を移送することができなかった圧電ポンプは6個であった。これはSi基板の反応性エッチングにより、そのときに露出していた支持部材のポンプ室を構成すべき表面が異物により汚染されたためと考えられる。
溝を設けてそこに接着性樹脂を充填することに代えて、溝を設けず、支持部材における、圧電素子、第1及び第2の開口部並びに切り欠きに対応する部分以外の部分に接着性樹脂を塗布した以外は、実施例1と同様にして圧電素子を作製した。かかる圧電ポンプを、同じ製造方法により計6個作製し、そのうち流体を移送することができなかった圧電ポンプは6個であった。これはSi基板の反応性エッチングにより、そのときに露出していた支持部材のポンプ室を構成すべき表面が異物により汚染されたためと考えられる。
(比較例2)
Si基板の反応性エッチングのタイミングを、ガラス基板と複合体を接合する前から、それらを接合した後に移動した以外は比較例1と同様にして、圧電ポンプを得た。かかる圧電ポンプを、同じ製造方法により計30個作製し、そのうち流体を移送することができなかった圧電ポンプは16個であった。これは接合時に接着性樹脂がポンプ室となるべき部分にまではみ出したためと考えられる。
Si基板の反応性エッチングのタイミングを、ガラス基板と複合体を接合する前から、それらを接合した後に移動した以外は比較例1と同様にして、圧電ポンプを得た。かかる圧電ポンプを、同じ製造方法により計30個作製し、そのうち流体を移送することができなかった圧電ポンプは16個であった。これは接合時に接着性樹脂がポンプ室となるべき部分にまではみ出したためと考えられる。
本発明の圧電ポンプは、微少化学反応に用いられる液状試薬や高精細印刷装置のインクなどの液体、ガスクロマトグラフの被検査ガス、燃料電池における反応ガスなどの気体等、流体を移送するための各種装置に適用することが可能である。例えば本発明の圧電ポンプは、ガスセンサへの流体供給装置や微少なフィルタ装置に備えられ得るものである。
100…圧電ポンプ、102…第1の基板、104…下部電極、106…圧電体、108…上部電極、110…圧電素子、112…支持部材、114…構造体、118…複合体、120…第2の基板、122…溝、124…接着性樹脂、126a…第1の開口部、126b…第2の開口部、128…ポンプ室。
Claims (2)
- 圧電素子を含む構造体とその構造体に積層した第1の基板とを備える複合体と、第2の基板と、を準備する第1の工程と、
前記構造体が前記第2の基板に対向するように前記複合体と前記第2の基板とを接合してポンプ室を設ける第2の工程と、を含有し、
前記第2の工程において、前記ポンプ室の外周に沿って前記複合体及び/又は前記第2の基板に設けた溝内に充填した接着性樹脂により、前記複合体と前記第2の基板とを接合する圧電ポンプの製造方法。 - 圧電素子を含む構造体と、前記構造体を挟む第1及び第2の基板と、
を含有し、
前記第2の基板と前記構造体とによって囲まれたポンプ室と、前記ポンプ室と連通する第1及び第2の開口部と、前記圧電素子の動作により前記ポンプ室とは反対側に前記構造体が撓むように設けられた空間と、を有し、
前記ポンプ室の外周に沿って設けられた溝内に充填され前記構造体と前記第2の基板とを接合する接着性樹脂、を含有する圧電ポンプ。
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-
2009
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20121204 |