JP2011027057A - 圧電ポンプ及びその駆動方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄く小型であっても流体の移送量を大きくすることが可能な圧電ポンプ及びその駆動方法を提供する。
【解決手段】圧電素子と前記圧電素子を支持する支持部材とを備える構造体と、前記構造体に積層した基板とを含有し、前記基板と前記構造体とによって囲まれたポンプ室を有する圧電ポンプであって、前記圧電素子は、前記圧電ポンプの作動時にバイアス電圧が常時印加される第1の電極と駆動電圧が間歇的に印加される第2の電極とからなる電極対と、その電極対に挟まれた圧電体とを含む圧電ポンプ。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電ポンプ及びその駆動方法に関するものである。
従来、ごく微少量の流体を移送するための種々のマイクロポンプが検討されている。その一形態として、圧電素子をアクチュエータとして備えた圧電ポンプも提案されている。例えば特許文献1には、外圧の変化によらず常に一定の吐出を実現でき、かつ双方向への送液が可能であるマイクロポンプの提供を意図して、流体の流路を形成するシリコン基板(Si基板)の外側に圧電素子が配設された圧電ポンプが提案されている。この圧電ポンプによると、ダイアフラムとして機能するシリコン基板と圧電素子のユニモルフ構造を用いているために、非常に薄く製作することが可能である、とされている。
特開平10−299659号公報
本発明者らは、上記特許文献1で提案されたような従来の圧電ポンプについて詳細に検討を行ったところ、そのように非常に薄く製作することが可能な圧電ポンプは、薄く小型であるが故に、流体の移送量を大きくすることが困難であることを見出した。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、薄く小型であっても流体の移送量を大きくすることが可能な圧電ポンプ及びその駆動方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、圧電ポンプに備えられる電極が特定の電圧を印加できるように構成されることで、流体の移送量を大きくできることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、圧電素子と上記圧電素子を支持する支持部材とを備える構造体と、上記構造体に積層した基板とを含有し、上記基板と上記構造体とによって囲まれたポンプ室を有する圧電ポンプであって、圧電素子は、圧電ポンプの作動時にバイアス電圧が常時印加される第1の電極と駆動電圧が間歇的に印加される第2の電極とからなる電極対と、その電極対に挟まれた圧電体とを含む圧電ポンプを提供する。
また、本発明は、圧電素子と上記圧電素子を支持する支持部材とを備える構造体と、上記構造体に積層した基板とを含有し、上記基板と上記構造体とによって囲まれたポンプ室を有し、圧電素子は電極対とその電極対に挟まれた圧電体とを含む圧電ポンプの駆動方法であって、上記電極対における一方の電極にバイアス電圧を常時印加した状態で他方の電極に駆動電圧を間歇的に印加することにより圧電素子を脈動させる工程を有する圧電ポンプの駆動方法を提供する。
本発明の圧電ポンプにおいて、まず、電極対の第1(一方)の電極にバイアス電圧が印加され、第2(他方)の電極に駆動電圧が印加されていない状態では、圧電素子は印加されたバイアス電圧の大きさに従った所定の形状に保持されている。次いで、引き続き第1の電極にバイアス電圧が印加された状態で、第2の電極に駆動電圧が印加されると、圧電体が変位(変形)し、それに伴い圧電素子も変位(変形)する。この圧電素子の変位に伴い、基板と構造体とによって囲まれたポンプ室内の容量が変化し圧力が変動する。その後、引き続き第1の電極にバイアス電圧が印加された状態で、第2の電極への駆動電圧の印加を停止すると、圧電素子は再び変位して当初の所定の形状に戻る。これに伴い、再びポンプ室内の容量が変化し圧力が変動する。このようにして駆動電圧の印加及び印加の停止を繰り返して駆動電圧を間歇的に印加することにより、圧電素子が繰り返し変位し脈動する。それに従って、ポンプ室内の容量が変化し圧力が変動するため、本発明の圧電ポンプは流体を移送することができる。また、この圧電ポンプは、基板と構造体とによってポンプ室を囲んでいるため、ポンプ室での圧電素子の変位を効率的に流体の圧縮(加圧)及び膨張(減圧)に変換することができる。
本発明の圧電ポンプは、作動時に第1の電極にバイアス電圧が常時印加されている。そのような状態で第2の電極へ駆動電圧を印加すると、圧電素子には駆動電圧及びバイアス電圧に由来する外力が付加され、それにより速やかに駆動電圧の大きさ(及びバイアス電圧の大きさ)に従った形状に変形する。さらに第2の電極への駆動電圧の印加を停止すると、それでも圧電素子にはバイアス電圧が印加されておりバイアス電圧に由来する外力が付加されているため、圧電素子は変形した状態から速やかにバイアス電圧の大きさに従った上記所定の形状に戻ることができる。このように本発明の圧電ポンプによると、駆動電圧が印加されてもその印加を停止されても、電圧の印加に由来する外力が圧電素子に常時付加され、圧電素子は印加された電圧の大きさに従う形状に速やかに変形することができる。そのため、その変形(変位)に伴うポンプ室の容量変化及び圧力変動も速やかになされ、その結果、本発明の圧電ポンプは、薄く小型であっても流体の移送量を大きくすることができる。
一方、圧電ポンプにバイアス電圧が印加されていない場合、駆動電圧を印加すると、圧電素子は速やかに駆動電圧の大きさに従った形状に変形する。しかしながら、駆動電圧の印加を停止すると、電圧の印加に伴う圧電素子への外力の付加がなくなるため、圧電素子は電圧を印加されていない状態の形状に戻る。この際、圧電素子は素子を構成する材料自体の戻る力にのみ依存して、徐々に電圧を印加されていない状態の形状に戻る。そうすると、電圧を印加されていない状態の形状に戻る力が弱まるため、ポンプ室の圧力の変動(圧縮又は膨張の程度)は電圧を印加する場合よりも小さくなるので、流体の移送量は小さくなる。また、かかる場合に駆動電圧を印加する周期を短くすると、駆動電圧の印加の停止からその次の印加の開始までの間に、圧電素子が電圧を印加されていない状態の形状に完全に戻ることができないため、その点でも圧力の変動が小さくなり、また、ポンプ室の容量変化も小さくなる。その結果、流体の移送量は小さくなる。一方で駆動電圧を印加する周期を長くすると、当然に流体の移送量は小さくなる。
また、電圧の印加に伴う圧電素子への外力の付加がない状態であると、圧電素子や基板の応力バランス、圧電体のヒステリシスの影響を受けやすくなるため、圧電ポンプはその動作が不安定になる。一方、本発明の圧電ポンプは、そのような応力バランスや圧電体のヒステリシスの影響を受けてはいるものの、作動時に常時電圧が印加された状態にあり、バイアス電圧により最適値への調整が可能となるため、安定的に運転することが可能となる。
さらに、バイアス電圧を印加することにより、圧電素子(圧電体)の初期の形状(位置)を定めやすくなる。すなわち、圧電ポンプを作製する際に、圧電素子が上記応力バランスの影響により、設計通りの形状を有しない場合であっても、印加するバイアス電圧を調整することで、設計通りの形状に近づけることができ、その初期の形状を定めやすくなる。
本発明の圧電ポンプにおいて、上記電極対は、1つの上記第1の電極と、流体の流通方向に沿って配設された2つ以上の上記第2の電極とからなるものであると好ましい。この圧電ポンプは、流体の流入側(上流側)に配置された第2の電極から流出側(下流側)に配置された第2の電極に向かって順に電圧を印加することで、圧電素子を全体として蠕動様に動作させて流体を移送する。この圧電ポンプは、上流側の圧電素子の部分を変位させて流体を押し出すと共に、下流側の圧電素子の部分を変位させて流体を吸入することで、流体を移送する。このように、流体の押出しと吸引とを適切に組み合わせることで、圧電ポンプは更に大きな効率を示し、より小さな電圧の印加や小さな寸法であっても、流体のより大きな移送量を実現することができる。さらには、流体は第2の電極に対応する各ポンプ室から隣接するポンプ室にのみ移動できるため、圧縮及び膨張を効率的にポンプ室間の流体の移送に変換することができる。その結果、この圧電ポンプは圧電素子に印加する電圧をより効率的に流体の移送量に変換することができる。
また、その好ましい圧電ポンプは、圧電素子を全体として蠕動様に動作させて流体を移送するものであるところ、動作している圧電素子の部分に隣接する圧電素子の部分はたとえ動作していなくても、バイパス電圧の印加に伴い、そのバイパス電圧の大きさに従った形状に固定されている。これにより、隣接する圧電素子の部分の動作に伴う逆流を抑制することができる。
本発明によれば、薄く小型であっても流体の移送量を大きくすることが可能な圧電ポンプ及びその駆動方法を提供することができる。
本実施形態に係る圧電ポンプを模式的に示す断面図である。 別の本実施形態に係る圧電ポンプの動作を模式的に示す工程図である。 別の本実施形態に係る圧電ポンプの動作を模式的に示す工程図である。 別の本実施形態に係る圧電ポンプを部分的に拡大した概略断面図である。 別の本実施形態に係る圧電ポンプの駆動回路を示すブロック図である。 別の本実施形態に係る圧電ポンプを駆動するシーケンスを示す工程図である。 別の本実施形態に係る圧電ポンプを駆動する別のシーケンスを示す工程図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、第1の本実施形態の圧電ポンプを模式的に示す断面図である。本実施形態の圧電ポンプ100は、圧電素子110と圧電素子110を支持する支持部材120とを備える構造体130と、構造体130を挟むようにその構造体130に積層した第1及び第2の基板140、150とを含有し、第1の基板140と構造体130とによって囲まれた空隙部160と、第2の基板150と構造体130とによって囲まれたポンプ室170と、ポンプ室170と連通する第1及び第2の開口部180a、180bと、を有するものである。
より詳細には、本実施形態の圧電ポンプ100に含有される構造体130は、圧電素子110と、その圧電素子110に直接接合して支持する支持部材120とを備える。支持部材120は、膜状の中心部120aと、その中心部120aを包囲し中心部120aよりも厚い周縁部120bとを有する。圧電素子110は薄膜状であり、支持部材120の中心部120a下側に埋め込まれるように配置しており、支持部材120が圧電素子のポンプ室(流路)170側の面を被覆するように接合している。支持部材120の中心部120a及び圧電素子110は、支持部材120の周縁部120bの厚み方向中央付近に位置しており、それらの厚み方向両側に空間(ポンプ室170、空隙部160)が確保されている。
支持部材120の材料は、絶縁性を有する材料であって、かつ、圧電素子110の変位によっても破損することなく湾曲することが必要となるため、柔軟性を有する材料であることが好ましい。支持部材120の材料として柔軟性を有する材料を採用すると、圧電素子110の変位をポンプ室に良好に伝えることが可能となるため、圧電ポンプ100の効率が高くなる。支持部材120の材料は、具体的には、シリコーン樹脂、ポリイミド、パリレン等の樹脂材料であることが好ましい。また、支持部材120の厚さはその周縁部120bで例えば10〜30μmであり、中心部120aで例えば2〜20μmである。
第1及び第2の基板140、150としては、例えばガラス基板、セラミック基板が挙げられ、その厚さは、例えば0.2mm〜2.0mmである。
第1の基板140はその上面を支持部材120の周縁部120bの下面と接合している。これにより、第1の基板140と支持部材120と圧電素子110とに包囲された空隙部160が形成されている。また、センサ190が第1の基板140の上面と支持部材120の周縁部120bの下面とに挟まれて固定されている。センサ190は、圧電ポンプ100内を流通する流体の流量や温度を検知するセンサであり、例えば公知のサーモパイルセンサであってもよい。
支持部材120の中心部120aは、さらにその中心付近が圧電素子110の埋め込みにより上側に隆起している。また、第2の基板150はその下面を支持部材120の周縁部120bの上面と接合している。これにより、第2の基板150と支持部材120とに包囲されたポンプ室170が形成されている。第2の基板150は、支持部材120の中心部120aの隆起に伴いポンプ室170の容積が減少することを防ぐために、その中心部150aの下面が、その周縁部150bの下面よりも上側に位置している。また、第2の基板150は、その厚み方向に貫通する第1及び第2の開口部180a、180bを有しており、これらの開口部180a、180bはポンプ室170と連通している。
圧電素子110は薄膜状であり、下部電極112と上部電極114とからなる電極対と、その電極対に挟まれた薄膜状の圧電体116とからなる。下部電極112及び上部電極114の材料は、圧電素子の電極材料として用いられ得るものであれば特に限定されず、例えば白金、金、銅、及びこれらを含む合金が挙げられる。また、下部電極112及び上部電極114の厚さは、例えば、それぞれ0.05μm〜1.0μmである。圧電体116の材料は薄膜形成可能な圧電材料であれば特に限定されず、例えば、PZT、チタン酸バリウムなどが挙げられる。それらの中でも、優れた圧電特性を示し、入手も容易な観点から、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が好ましい。圧電体116の厚さは、例えば0.5μm〜5.0μmである。
圧電ポンプ100に組み込まれた圧電素子110は、電圧が印加されていない状態において、その材料、外力が付加されていない状態での形状及び寸法、並びに支持部材120による支持の態様などに依存した形状を有している。
本実施形態の圧電ポンプ100は、下記駆動方法によって駆動される。まず、下部電極112にバイアス電圧(直流)が印加され、バイアス電圧の大きさ(例えば+5V)に従った外力が圧電素子110に付加される。これにより、圧電素子110はバイアス電圧が印加されていない状態から変位して所望の形状に変形し、その形状を維持する。バイアス電圧は、それを圧電素子110に印加可能な回路又は電源から供給されればよく、例えば、図示しない信号生成部(信号生成回路など)において生成した電圧信号を、図示しない信号増幅部(ピエゾドライバなど)で増幅して得られるものである。
次いで、バイアス電圧が印加された状態のまま、上部電極114に駆動電圧が印加される。これにより、圧電素子110は速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ及び駆動電圧の大きさに従った形状に変形する。圧電素子110の変位は、薄膜状の圧電体116が面内方向(d31方向)及び厚み方向(d33方向)において変位するのに伴うものである。特に、圧電素子110が圧電体116と同様に薄膜状であり、しかも支持部材120により縁端部が固定されているため、圧電体116の面内方向の変位に伴い、厚み方向に湾曲する。例えばバイアス電圧が+5Vで、駆動電圧が+20Vである場合、圧電素子110は下に凸の形状に湾曲する。そして、圧電素子110にバイアス電圧及び駆動電圧が印加されている間、圧電素子110は変形後の形状を維持する。この圧電素子110の変位(変形)に伴い、第2の基板150と構造体130とによって囲まれたポンプ室170内の容量が変化し圧力が変動する。例えばバイアス電圧が+5Vで、駆動電圧が+20Vである場合、ポンプ室170内の容量は増大し、圧力は低下する。すなわち、圧電ポンプ100は流体を吸入するように動作する。駆動電圧は、それを圧電素子110に印加可能な回路又は電源から供給されればよく、例えば、図示しない信号生成回路において生成した電圧信号を、図示しないピエゾドライバで増幅して得られるものである。
次に、バイアス電圧が印加された状態のまま、上部電極114への駆動電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子110は速やかに変位し、バイアス電圧の大きさに従った上記形状に戻る。この際、圧電素子110には引き続きバイアス電圧が印加されているため、圧電素子110はその形状を維持する。圧電素子110のその変位(変形)に伴い、ポンプ室170内の容量が再び変化し圧力が変動する。例えばバイアス電圧が+5Vで、駆動電圧が+20Vである場合、ポンプ室170内の容量は減少し、圧力は上昇する。すなわち、圧電ポンプ100は流体を吐出するように動作する。
こうして、下部電極112にバイアス電圧を常時印加した状態で、上部電極114への駆動電圧の印加及びその印加の停止を繰り返す、すなわち、間歇的に駆動電圧を印加することにより、バイアス電圧と駆動電圧との電位差を利用して、圧電素子110は上記変位を速やかに繰り返す。これにより、構造体130は、第1の基板140及び第2の基板150に固定された支持部材120の周縁部120bを支点として厚み方向に振動する。その結果、圧電ポンプ100は、第1の開口部180a、第2の開口部180bを経由して、流体の吸入及び吐出を繰り返すこととなるので、流体を移送することが可能となる。なお、図示していないが、第1の開口部180a、第2の開口部180bの外側にはバルブが備えられてもよく、圧電ポンプ100の流体の吐出及び吸入のタイミングに合わせて、それらのバルブを開閉することにより、流体を逆流させることなく効率的に移送することができる。
本実施形態の圧電ポンプ100において、駆動電圧が印加されてもその印加を停止されても、電圧の印加に由来する外力が圧電素子110に常時付加されており、圧電素子110は印加された電圧の大きさに従う形状に速やかに変形することができる。そのため、その変形(変位)に伴うポンプ室170の容量変化及び圧力変動も速やかになされ、その結果、本実施形態の圧電ポンプ100は、薄く小型であっても流体の移送量を増大することができる。
また、電圧の印加に伴う圧電素子110への外力の付加がない状態であると、圧電ポンプ100は、圧電素子110、支持部材120、第1の基板140及び第2の基板150の応力バランス、並びに圧電体116のヒステリシスなどの影響を受けやすくなるため、その動作が不安定になる。しかしながら、本実施形態の圧電ポンプ100は、作動時に常時バイパス電圧が印加された状態にあるため、そのような応力バランスや圧電体116のヒステリシスの影響を受け難くなり、安定的に運転することが可能となる。さらに、バイアス電圧を印加することにより、圧電素子110の初期の形状(位置)を定めやすくなる。すなわち、圧電ポンプ100を作製する際に、圧電素子110が上記応力バランスの影響により、設計通りの形状を有しない場合であっても、印加するバイアス電圧を調整することにより、設計通りの形状に近づけることができ、その初期の形状を定めやすくなる。これにより、圧電ポンプ100は設計通りの性能を発揮して運転することが可能となる。
本実施形態において、構造体130の振動は空隙部160及びポンプ室170に吸収されるため、第1の基板140及び第2の基板150よりも外側への振動の伝搬は抑制される。また、振動の抑制に伴い、その振動に起因する信号ノイズも同様に抑制される。さらには、空隙部160が構造体130の厚み方向への動きを許容しているため、本実施形態の圧電ポンプ100は、少ない電圧の印加で大きな流量を実現することができる。
また、本実施形態の圧電ポンプ100において、圧電体116の材料にPZTなどのPb(鉛)含有材料を採用した場合、圧電体116が第1の基板140及び支持部材120によって包囲されているため、圧電体116から発生するPbの、圧電ポンプ100外部への飛散を防止することも可能となる。さらに、圧電ポンプ100は低い電圧で変位する薄膜状の圧電素子110を採用しているため、より低電圧であっても良好な効率を発揮することができる。また、圧電素子110を薄膜状にすることで、いわゆるバルクの圧電ポンプと比較して、設計に沿った最適な形状のものを作製することができる。さらには、薄膜状の圧電素子110を採用することにより、バルクの圧電ポンプと比較して、圧電ポンプの更なる小型化、薄型化が可能となる。そのため、圧電ポンプ100は、これを備えた電子部品の更なる高密度集積化を実現することができ、MEMSに有効に利用することが可能となる。
薄膜状の圧電ポンプはポンプ容量が小さいため、流体の移送量を増大させるには、圧電素子に高周波の電圧を印加して振動数を高める必要がある。ところが、振動数を高めるほど、圧電素子の振動が外部に伝搬しやすくなるという問題がある。一方、本実施形態の圧電ポンプ100によると、上述のとおり振動の外部への伝搬を十分に抑制するため、たとえ圧電素子110を高周波で振動させても、上記問題の発生を防止することが可能となる。さらには、圧電ポンプ100は、圧電素子110を第1及び第2の基板140、150の外側ではなく内側に挟み込んだ構成を有している。このことと、圧電ポンプ100の外側への振動の抑制とが相俟って、圧電素子110以外の素子及び回路を、たとえそれらの素子や回路が耐振動性に劣るものであっても、第1及び第2の基板140、150の外側に積層することが可能となる。このような観点からも、圧電ポンプ100は、更なる高密度集積化を実現することができ、MEMSに有効に利用することが可能となる。また、圧電素子110を支持部材120の中心部120a下側に埋め込むように配置することにより、圧電素子110と支持部材120との接合性が高まり、圧電ポンプ100の耐久性が向上する。
本実施形態の圧電ポンプ100は、例えば下記のようにして作製される。まず、成膜用基板上に下部電極となる層、圧電体となる層、上部電極となる層を、この順で、例えばスパッタ法、CVD法、蒸着法、エピタキシャル成長を利用した方法などにより形成する。次に、上述のようにして積層した各層を所望の形状にパターニングする。パターニングの方法は、特に限定されず、例えば、エッチマスクとしてマスクレジストを上部電極となる層の表面上に形成した後に、エッチングによりマスクレジストで被覆されていない上記各層の部分を除去し、その後、マスクレジストを除去してもよい。これにより、成膜用基板上に、下部電極112、圧電体116及び上部電極114をこの順に積層して備えた圧電素子110を得る。
次いで、成膜用基板及び圧電素子110の表面上に、支持部材120の一部となる第1の絶縁部材を積層する。第1の絶縁部材の材料が樹脂材料である場合、その樹脂材料の原料となる樹脂組成物(例えば、樹脂及び/又は単量体と溶媒との混合物)を成膜用基板及び圧電素子110の表面上に塗布する。次いで、塗布した樹脂組成物を乾燥などにより固化又は加熱若しくは光照射などにより硬化させた後、所望の形状にパターニングする。パターニングは樹脂材料をパターニングする公知の方法によればよく、例えば、フォトリソグラフィ法が挙げられる。パターニングにより得られた第1の絶縁部材の表面形状は、圧電ポンプ100のポンプ室170を形成する壁面に適した形状であればよい。こうして、成膜用基板と、その上に形成された圧電素子110と、第1の絶縁部材とを備える第1の複合体を得る。
一方、第2の基板150となる絶縁基板を準備する。その絶縁基板表面をエッチング等により所定の形状に加工する。更に、その絶縁基板の所定の位置に、その厚み方向に貫通した第1の開口部180a及び第2の開口部180bをエッチング等により形成する。こうして、開口部180a、180bを有する第2の基板150を得る。ここで、加工して得られた第2の基板150の表面形状は、圧電ポンプ100のポンプ室170を形成する壁面に適した形状であればよい。
次に、第1の複合体の第1の絶縁部材を形成した側に第2の基板150を貼り付ける。この際、第2の基板150をそのエッチング等により加工された表面が第1の複合体に対向するように、かつ開口部180a、180bを圧電ポンプ100のポンプ室170と連通するように位置合わせして貼り付ける。貼り付ける方法としては、第1の複合体と第2の基板150とが接触する部位に、例えば、接着剤や樹脂を塗布して貼り付ける方法が挙げられる。次いで、成膜用基板をエッチング等により除去する。これにより、圧電素子110と第1の絶縁部材と第2の基板150とを備える第2の複合体を得る。
それとは別に、第1の基板140とその第1の基板140の表面上に設けられたセンサ190とを備える第3の複合体を準備する。次いで、第1の基板140のセンサ190が設けられた側の表面上に、支持部材120の一部となる第2の絶縁部材を積層する。第2の絶縁部材の材料が樹脂材料である場合、その樹脂材料の原料となる樹脂組成物(例えば、樹脂及び/又は単量体と溶媒との混合物)を第1の基板140及び必要に応じてセンサ190の表面上に塗布する。次いで、塗布した樹脂組成物を乾燥などにより固化又は加熱若しくは光照射などにより硬化させた後、所望の形状にパターニングする。パターニングは樹脂材料をパターニングする公知の方法によればよく、例えば、フォトリソグラフィ法が挙げられる。パターニングにより得られた第2の絶縁部材の形状は、第1の基板140、第1の絶縁部材及び圧電素子110と共に圧電ポンプ100の空隙部160を形成するのに適した形状であればよい。こうして、第3の複合体と第2の絶縁部材とを備える第4の複合体を得る。
次いで、第2の複合体と第4の複合体とを、第1の絶縁部材と第2の絶縁部材とで接合することにより、本実施形態の圧電ポンプ100を得る。この際、第1の基板140、第1の絶縁部材、第2の絶縁部材及び圧電素子110が圧電ポンプ100の空隙部160を形成するよう、位置合わせをする。第1の絶縁部材と第2の絶縁部材との接合方法は特に限定されず、それらが接触する部分に接着剤を塗布して接合してもよい。あるいは、第1の絶縁部材及び第2の絶縁部材の材料が熱圧着可能な材料であれば、それらを互いに接触させた後で加熱することにより接合してもよい。
次に、第2の本実施形態の圧電ポンプについて説明する。図2、3は、この本実施形態の圧電ポンプの動作を示す概略断面図であり、(A)は動作前の状態を示す。図4は、第2の本実施形態の圧電ポンプを部分的に拡大した概略断面図ある。図5は、第2の本実施形態の圧電ポンプを駆動するための電気的な構成を示すブロック図である。第2の本実施形態の圧電ポンプ200は、圧電素子210と、その圧電素子210を支持する支持部材220とを備える構造体230と、構造体230を挟む第1及び第2の基板240、250とを含有し、第2の基板250と構造体230とによって囲まれて形成されるポンプ室270と、動作時にそのポンプ室270と連通する第1及び第2の開口部280a、280bとを有するものである。また、圧電素子210は、1つの薄膜状の圧電体216と、その圧電体216を上下から挟む電極対とを備え、電極対は1つの下部電極212と、流体の流通方向(図2、3中の矢印Aの方向)に沿って配設された6つの上部電極214a、214b、214c、214d、214e、214f(「214a〜f」と表記する。以下同様。)とからなる。
支持部材220は、その周縁部を第1及び第2の基板240、250で挟まれて、それらの基板240、250と接合することにより固定されている。一方、支持部材220の上記周縁部で包囲された中央部は、その上面を第2の基板240の下面と接触させても接触させなくてもよい。ただし、接触させる場合であっても、支持部材220の上面と第2の基板240の下面とは互いに接合しておらず離間可能になっている。支持部材220の中央部の下面側には、周縁部とは異なり第1の基板240が接合されておらず、空間が確保されている。その空間の平面形状は、圧電素子210の変位を阻害しないような形状であればよく、例えば、後述の上部電極214a〜fに対応する、いわば数珠つなぎの形状であってもよい。支持部材220は、例えば樹脂を材料とし、1.0μm〜10μmの厚さを有する薄膜であり、その主面の形状は例えば矩形である。
圧電素子210は、全体として例えば厚さ0.5μm〜10.0μmの薄膜状である。圧電素子210は、下部電極212の表面が上記空間に露出した状態で支持部材220に接合して埋め込まれている。
圧電素子210に備えられる薄膜状の圧電体216の主面の形状は例えば矩形である。圧電体216の材料は薄膜形成可能な圧電材料であれば特に限定されず、例えば、PZT、チタン酸バリウムなどが挙げられる。それらの中でも、優れた圧電特性を示し、入手も容易な観点から、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が好ましい。圧電体216の厚さは、例えば0.5μm〜5.0μmである。
下部電極212は薄膜状であり、その主面の形状は例えば矩形である。下部電極212の材料は、圧電素子の電極材料として用いられ得るものであれば特に限定されず、例えば白金、金、銅、及びこれらを含む合金が挙げられる。また、下部電極212の厚さは、例えば0.05μm〜1.0μmである。
6つの上部電極214a〜fは、互いに離間しており、各々は主面の形状が例えば円形の薄膜である。上部電極214a〜fの材料は、圧電素子の電極材料として用いられ得るものであれば特に限定されず、例えば白金、金、銅、及びこれらを含む合金が挙げられる。また、上部電極214a〜fの厚さは、例えば0.05μm〜1.0μmである。
第1の基板240は、構造体230の動作部分、すなわち圧電素子210が存在する部分の下面を露出するように上記空間を確保して設けられる一方で、構造体230の動作部分以外の部分、すなわち支持部材220の周縁部と接合する。また、第2の基板250はその下面の一部を支持部材220の周縁部の上面と接合する。これらにより、支持部材220を備える構造体230が第1及び第2の基板240、250に狭持されて固定される。
第2の基板250には、その厚み方向に貫通した第1及び第2の開口部280a、280bが設けられており、これらの開口部は圧電ポンプ200の動作時にポンプ室270と連通できる。ポンプ室270は、各上部電極214a〜fに対応する部分的なポンプ室270a〜fを有する。
圧電ポンプ200を駆動するには、駆動回路により下部電極212にバイアス電圧、上部電極214a〜fに駆動電圧を印加する。図5は、その駆動回路300の構成の一例を示すブロック図である。駆動回路300は、信号生成部302と信号増幅部304とを備える。駆動回路300では、信号生成回路、信号生成ソフトなどの信号生成部302において生成した電圧信号を、ピエゾドライバなどの信号増幅部304で所定の電圧まで増幅して電極に供給する。より具体的には、信号増幅部304gにて増幅した電圧をバイアス電圧として下部電極212に供給し、信号増幅部304a〜fにて増幅した電圧を駆動電圧として上部電極214a〜fにそれぞれ供給する。下部電極212にバイアス電圧を供給(印加)するタイミング、並びに、上部電極214a〜fにそれぞれの駆動電圧を供給(印加)するタイミングは、信号増幅部304a〜gのオン/オフによって、それぞれ独立に制御される。
本実施形態の圧電ポンプ200は、例えば、下記駆動方法によって駆動される。図6は、圧電ポンプ200の駆動方法について、その一例のシーケンスを示すステップ図である。以下、図2〜6を参照しつつ、その駆動方法について詳述する。まず、図2の(A)工程において、信号増幅部304gのみをオンにして、信号生成部302からの信号を信号増幅部304gによって増幅してバイアス電圧(+V)として下部電極212に供給(印加)する。これにより、圧電素子210はバイアス電圧が印加されていない状態から変位して所望の形状に変形し、その形状を維持する。この状態では圧電ポンプ200はまだ停止しており、構造体230の上面は全面的に第2の基板250と接触している。それにより、ポンプ室270を形成する支持部材220により第1及び第2の開口部280a、280bは閉塞されている。以降、圧電ポンプ200が作動する間、信号増幅部304gを常時オンにすることで、バイアス電圧は常時下部電極212に印加された状態にある。
次いで、図2の(B)工程(図6のステップ1)において、信号増幅部304aをオンにして、信号生成部302からの信号を信号増幅部304aによって増幅して駆動電圧として上部電極214aに供給(印加)する。これにより、圧電素子210は、上部電極214a直下の圧電体216の部分の変位に伴い、支持部材220を伴ってその領域で速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ及び駆動電圧の大きさに従った形状に変形する。より具体的には、上部電極214a直下の圧電体216の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極214aの上方にある支持部材220が下側へ引っ張られる。これにより、ポンプ室270a内の容量は増大し、圧力は低下するため、圧電ポンプ200は、第1の開口部280aからそのポンプ室270aに流体を吸入する。
次に、図2の(C)工程(図6のステップ2)において、信号増幅部304aをオンに維持した状態で、さらに信号増幅部304bをオンにして、信号生成部302からの信号を信号増幅部304bによって増幅して駆動電圧として上部電極214bに供給(印加)する。これにより、上部電極214a直下の圧電体216の部分が変位を維持した状態で、更に上部電極214b直下の圧電体216の部分が変位するため、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域で速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ及び駆動電圧の大きさに従った形状に変形する。より具体的には、上部電極214b直下の圧電体216の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極214bの上方にある支持部材220が下側へ引っ張られ、第2の基板250と離間する。この湾曲により、上部電極214a、214b間にある支持部材220の部分も下側に引っ張られて、その部分でも支持部材220と第2の基板250とが離間する。これにより、ポンプ室270b内の容量は増大し圧力は低下するため、圧電ポンプ200は、ポンプ室270aに加えて、ポンプ室270bにも流体を吸入する。
次いで、図2の(D)工程(図6のステップ3)において、信号増幅部304bをオンに維持した状態で、信号増幅部304aをオフにすると共に、信号増幅部304cをオンにする。これにより、信号増幅部304aから上部電極214aへの駆動電圧の印加を停止すると共に、信号生成部302からの信号を信号増幅部304cによって増幅して駆動電圧として上部電極214cに供給(印加)する。そうすると、上部電極214b直下の圧電体216の部分が変位を維持した状態で、更に上部電極214c直下の圧電体216の部分が変位するため、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域で速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ及び駆動電圧の大きさに従った形状に変形する。その一方で、上部電極214a直下の圧電体216の部分も変位して、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域でも速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ従った形状に変形する。より具体的には、上部電極214c直下の圧電体216の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極214cの上方にある支持部材220が下側へ引っ張られ、第2の基板250と離間する。この湾曲により、上部電極214b、214c間にある支持部材220の部分も下側に引っ張られて、その部分でも支持部材220と第2の基板250とが離間する。一方で、上部電極214a直下の圧電体216の部分が下に凸の形状から(A)工程における形状に速やかに戻ると共に、上部電極214aの上方にある支持部材220も(A)工程における状態に戻り、第2の基板250と再び接触する。これらにより、ポンプ室270c内の容量が増大し圧力が低下する一方で、ポンプ室270aから流体が押し出されるため、圧電ポンプ200は、ポンプ室270aから流体を吐出すると共に、ポンプ室270cに流体を吸入する。
次に、図3の(E)工程(図6のステップ4)において、信号増幅部304cをオンに維持した状態で、信号増幅部304bをオフにすると共に、信号増幅部304dをオンにする。これにより、信号増幅部304bから上部電極214bへの駆動電圧の印加を停止すると共に、信号生成部302からの信号を信号増幅部304dによって増幅して駆動電圧として上部電極214dに供給(印加)する。そうすると、上部電極214c直下の圧電体216の部分が変位を維持した状態で、更に上部電極214d直下の圧電体216の部分が変位するため、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域で速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ及び駆動電圧の大きさに従った形状に変形する。その一方で、上部電極214b直下の圧電体216の部分も変位して、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域でも速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ従った形状に変形する。より具体的には、上部電極214d直下の圧電体216の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極214dの上方にある支持部材220が下側へ引っ張られ、第2の基板250と離間する。この湾曲により、上部電極214c、214d間にある支持部材220の部分も下側に引っ張られて、その部分でも支持部材220と第2の基板250とが離間する。一方で、上部電極214b直下の圧電体216の部分が下に凸の形状から(A)工程における形状に速やかに戻ると共に、上部電極214bの上方にある支持部材220も(A)工程における状態に戻り、第2の基板250と再び接触する。これらにより、ポンプ室270d内の容量が増大し圧力が低下する一方で、ポンプ室270bから流体が押し出されるため、圧電ポンプ200は、ポンプ室270bから流体を吐出すると共に、ポンプ室270dに流体を吸入する。
次いで、図3の(F)工程(図6のステップ5)において、信号増幅部304dをオンに維持した状態で、信号増幅部304cをオフにすると共に、信号増幅部304eをオンにする。これにより、信号増幅部304cから上部電極214cへの駆動電圧の印加を停止すると共に、信号生成部302からの信号を信号増幅部304eによって増幅して駆動電圧として上部電極214eに供給(印加)する。そうすると、上部電極214d直下の圧電体216の部分が変位を維持した状態で、更に上部電極214e直下の圧電体216の部分が変位するため、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域で速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ及び駆動電圧の大きさに従った形状に変形する。その一方で、上部電極214c直下の圧電体216の部分も変位して、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域でも速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ従った形状に変形する。より具体的には、上部電極214e直下の圧電体216の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極214eの上方にある支持部材220が下側へ引っ張られ、第2の基板250と離間する。この湾曲により、上部電極214d、214e間にある支持部材220の部分も下側に引っ張られて、その部分でも支持部材220と第2の基板250とが離間する。一方で、上部電極214c直下の圧電体216の部分が下に凸の形状から(A)工程における形状に速やかに戻ると共に、上部電極214cの上方にある支持部材220も(A)工程における状態に戻り、第2の基板250と再び接触する。これらにより、ポンプ室270e内の容量が増大し圧力が低下する一方で、ポンプ室270cから流体が押し出されるため、圧電ポンプ200は、ポンプ室270cから流体を吐出すると共に、ポンプ室270eに流体を吸入する。
次に、図3の(G)工程(図6のステップ6)において、信号増幅部304eをオンに維持した状態で、信号増幅部304dをオフにすると共に、信号増幅部304fをオンにする。これにより、信号増幅部304dから上部電極214dへの駆動電圧の印加を停止すると共に、信号生成部302からの信号を信号増幅部304fによって増幅して駆動電圧として上部電極214fに供給(印加)する。そうすると、上部電極214e直下の圧電体216の部分が変位を維持した状態で、更に上部電極214f直下の圧電体216の部分が変位するため、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域で速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ及び駆動電圧の大きさに従った形状に変形する。その一方で、上部電極214d直下の圧電体216の部分も変位して、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域でも速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ従った形状に変形する。より具体的には、上部電極214f直下の圧電体216の部分が下に凸の形状に湾曲すると共に、その湾曲により上部電極214fの上方にある支持部材220が下側へ引っ張られる。この湾曲により、上部電極214e、214f間にある支持部材220の部分も下側に引っ張られて、その部分でも支持部材220と第2の基板250とが離間する。一方で、上部電極214d直下の圧電体216の部分が下に凸の形状から(A)工程における形状に速やかに戻ると共に、上部電極214dの上方にある支持部材220も(A)工程における状態に戻り、第2の基板250と再び接触する。これらにより、ポンプ室270f内の容量が増大し圧力が低下する一方で、ポンプ室270dから流体が押し出されるため、圧電ポンプ200は、ポンプ室270dから流体を吐出すると共に、ポンプ室270fに流体を吸入する。
次いで、図3の(H)工程(図6のステップ7)において、信号増幅部304fをオンに維持した状態で、信号増幅部304eをオフにする。これにより、信号増幅部304eから上部電極214eへの駆動電圧の印加を停止する。そうすると、上部電極214f直下の圧電体216の部分が変位を維持した状態で、上部電極214e直下の圧電体216の部分は変位して、圧電素子210は、支持部材220を伴ってその領域で速やかに変位し、バイアス電圧の大きさ従った形状に変形する。より具体的には、上部電極214e直下の圧電体216の部分が下に凸の形状から(A)工程における形状に速やかに戻ると共に、上部電極214eの上方にある支持部材220も(A)工程における状態に戻り、第2の基板250と再び接触する。これにより、ポンプ室270eから流体を押し出して、ポンプ室270fに連通した開口部280bから流体を吐出する。
上述の各(B)〜(H)の各工程(ステップ1〜7)を1サイクルとしてそのサイクルを繰り返す、すなわち、上部電極214a〜fのそれぞれに間歇的に駆動電圧を印加することにより、バイアス電圧と駆動電圧との電位差を利用して、圧電素子210は上部電極214a〜fのそれぞれに対応した領域で上記変位を速やかに繰り返す。そうすると、圧電ポンプ200は、第1の開口部280a、第2の開口部180bを経由して、流体の吸入及び吐出を繰り返すこととなるので、流体を移送することが可能となる。なお、1ステップ当たりの駆動電圧の印加時間は特に限定されないが、例えば10マイクロ秒〜100ミリ秒である。
本実施形態の圧電ポンプ200において、駆動電圧が印加されてもその印加を停止されても、作動時にはバイパス電圧が常時印加されている。すなわち、電圧の印加に由来する外力が圧電素子210に常時付加されているので、圧電素子210は印加された電圧の大きさに従う形状に速やかに変形することができる。そのため、その変形(変位)に伴うポンプ室270の容量変化及び圧力変動も速やかになされ、その結果、本実施形態の圧電ポンプ200は、薄く小型であっても流体の移送量を増大することができる。
また、電圧の印加に伴う圧電素子210への外力の付加がない状態であると、圧電ポンプ200は、圧電素子210、支持部材220、第1の基板240及び第2の基板250の応力バランス、並びに圧電体216のヒステリシスなどの影響を受けやすくなるため、その動作が不安定になる。しかしながら、本実施形態の圧電ポンプ200は、作動時に常時バイパス電圧が印加された状態にあるため、そのような応力バランスや圧電体216のヒステリシスの影響を受け難くなり、安定的に運転することが可能となる。さらに、バイアス電圧を印加することにより、圧電素子210の初期の形状(位置)を定めやすくなる。すなわち、圧電ポンプ200を作製する際に、圧電素子210が上記応力バランスの影響により、設計通りの形状を有しない場合であっても、印加するバイアス電圧を調整することにより、設計通りの形状に近づけることができ、その初期の形状を定めやすくなる。これにより、圧電ポンプ200は設計通りの性能を発揮して運転することが可能となる。
本実施形態の圧電ポンプ200は低い電圧で変位する薄膜状の圧電素子210を採用しているため、より低電圧であっても良好な効率を発揮することができる。また、圧電素子210を薄膜状にすることで、いわゆるバルクの圧電ポンプと比較して、設計に沿った最適な形状のものを作製することができる。さらには、薄膜状の圧電素子210を採用することにより、バルクの圧電ポンプと比較して、圧電ポンプの更なる小型化、薄型化が可能となる。そのため、圧電ポンプ200は、これを備えた電子部品の更なる高密度集積化を実現することができ、MEMSに有効に利用することが可能となる。
本実施形態の圧電ポンプ200は、流体の流通方向上流側から下流側に向けて、上部電極214a〜fに順に駆動電圧を印加する。これにより、圧電素子210を全体として蠕動様に(うごめくように)動作させて流体を移送する。薄膜状の圧電素子は、一般に、ポンプ容量が小さく、圧電素子の変位量も大きくなくポンプ室の内圧をさほど高めることができないため、流体の移送量を増大させることが困難である。ところが、本実施形態の圧電ポンプ200によると、上述のとおり圧電素子210を全体として蠕動様に動作させて流体を移送する。これにより、1つの上部電極に対応する圧電素子210の部分が1つの圧電ポンプとして機能し、それが複数配列した態様と同様になるため、圧電ポンプ200の全体としての移送量を増大させることができる。特に、上流側の圧電素子の部分を湾曲状態から元の状態に戻して対応するポンプ室の部分を加圧すると同時に、下流側にある圧電素子の部分を湾曲させて対応するポンプ室の部分を減圧することにより、より小さな電圧で大きな移送量を実現できるため、圧電ポンプ200の効率は非常に高いものとなる。
また、圧電ポンプ200において、流体を移送しているポンプ室に隣接した流体を移送(保持)していないポンプ室では、バイパス電圧を圧電素子に印加しているために、支持部材220が第2の基板250としっかりと密着し、その状態を強固に保持することができる。これにより、あるポンプ室が流体を押し出した際に、その流体の逆流を抑制することができる。
さらには、本実施形態の圧電ポンプ200は、第2の基板250と構造体230とによってポンプ室270が囲まれているため、ポンプ室270での圧電素子210の変位を効率的に流体の圧縮(加圧)及び膨張(減圧)に変換することができる。しかも、流体はポンプ室270を上流側から下流側に移動可能になっているため、上記圧縮及び膨張を効率的にポンプ室間の流体の移送に変換することができる。これらの結果、圧電ポンプ200は圧電素子210に印加する電圧をより効率的に流体の移送量に変換することができる。
かかる圧電ポンプ200は、例えば下記のようにして製造される。
まず、成膜用基板を兼ねる第1の基板240上に、下部電極212、圧電体216、上部電極214a〜fをこの順で積層する。より具体的には、まず、第1の基板240の表面上に下部電極212となる層及び圧電体216となる層を、例えばスパッタ法、CVD法、蒸着法により、この順に形成する。第1の基板240は、その表面上に下部電極212となる層を形成可能なものであれば特に限定されず、通常の薄膜形成に用いられる基板であってもよく、Si基板であると好ましい。
次いで、下部電極212となる層及び圧電体216となる層を所望の形状にパターニングする。パターニングの方法は、特に限定されず、例えば、エッチマスクとしてマスクレジストを下部電極212となる層及び圧電体216となる層の表面上に形成した後に、エッチングによりマスクレジストで被覆されていない上記層の部分を除去し、その後、マスクレジストを除去してもよい。これにより、下部電極212及び圧電体216が得られる。
続いて、圧電体216の表面上に上部電極214a〜fとなる層を、例えばスパッタ法、CVD法、蒸着法により形成する。次いで、上部電極214a〜fとなる層を所望の形状にパターニングする。パターニングの方法は、特に限定されず、例えば、エッチマスクとしてマスクレジストを上部電極214a〜fとなる層の表面上に形成した後に、エッチングによりマスクレジストで被覆されていない上記層の部分を除去し、その後、マスクレジストを除去してもよい。これにより、上部電極214a〜fが形成され、圧電素子210が得られる。
次に、圧電素子210を被覆するようにして支持部材220となる層を形成する。この層の材料は、絶縁性を有する材料であって、かつ、圧電体216の変位によっても破損することなく湾曲することが必要となるため、柔軟性を有する材料であることが好ましい。支持部材220となる層の材料として柔軟性を有する材料を採用すると、圧電体216の変位をポンプ室270に良好に伝えることが可能となるため、圧電ポンプ200の効率が高くなる。支持部材220となる層の材料は、具体的には樹脂材料であることが好ましい。この場合、まず、その樹脂材料の原料となる樹脂組成物(例えば、樹脂及び/又は単量体と溶媒との混合物)を第1の基板240及び圧電素子210の表面上に塗布する。次いで、塗布した樹脂組成物を乾燥などにより固化又は加熱若しくは光照射などにより硬化させる。その後、必要に応じて硬化した樹脂組成物を所望の形状にパターニングする。パターニングは樹脂材料をパターニングする公知の方法によればよく、例えば、フォトリソグラフィ法が挙げられる。樹脂材料としては、第1の基板240及び圧電素子210に良好に接着し、更に現像性などのパターニング性が良好である材料が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド、パリレン等が挙げられる。こうして、第1の基板240上に形成された圧電素子210と支持部材220とを備える構造体を得る。
上述の構造体とは別に、第2の基板250を作製する。第2の基板250は例えば厚さ0.2mm〜2.0mmのガラス基板及びセラミック基板から得られる。その基板表面をエッチング等により所定の形状に加工し(凹凸加工)、さらに基板の所定の位置に、その厚み方向に貫通した第1の開口部280a及び第2の開口部280bをエッチング等により形成する。こうして、開口部280a、280bを有し、その下面に所定形状の凹凸加工が施された第2の基板250を得る。
次いで、上記構造体上に第2の基板250を貼り付ける。この際、第2の基板250の凹凸加工が施された上記下面と構造体の支持部材220が形成された側の面とを対向し、かつポンプ室270を形成するように位置合わせして、第2の基板250の下面と支持部材220とを、ポンプ室270となるべき部分の周囲で接合して貼り付ける。ただし、圧電素子210の動作部分及びその周囲に対応する部分には、第2の基板250を接触させるのみであり、それらを接合しない。貼り付ける方法としては、支持部材220と第2の基板250とが接触する部位に、例えば接着剤を塗布して貼り付ける方法が挙げられる。
次に、第1の基板240を部分的にエッチングする。具体的には第1の基板240の下部電極212及びその周囲に対向する部分をエッチングにより除去して、上記空間を設ける。これにより、下部電極212及びその周囲の表面が露出する。
エッチングの方法は、特に限定されず、例えば、エッチマスクとして所定形状のマスクレジストを第1の基板240の表面上に形成した後に、エッチングによりマスクレジストで被覆されていない第1の基板240の部分を除去し、その後、マスクレジストを除去してもよい。他のエッチングの方法としては、レジストパターニング、成膜、不要部分の除去を行うリフトオフ法、が挙げられる。エッチングとしては、ドライエッチングが好ましく、例えば、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンビームエッチング、反応性レーザービームエッチングが例示される。
こうして、第2の本実施形態の圧電ポンプ200を得る。このように本実施形態の圧電ポンプ200は、いわゆる薄膜プロセスを基本として作製されるため、品質のばらつきを抑制可能であり、その歩留まりを高めることができると共に、製造コストを低減することも可能である。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、本発明の別の実施形態において、圧電ポンプを駆動するのに、駆動電圧の印加及びその印加の停止を繰り返すことに代えて、印加する駆動電圧の方向を順方向/逆方向に切り替えることを繰り返しても(交流電圧を印加しても)よい。また、第2の本実施形態において、圧電素子210は、1つの下部電極212、1つの圧電体216及び6つの上部電極214a〜fを積層して備えるものであったが、上部電極の数はもちろん6つに限定されるものではなく、また、1つの下部電極212上に、複数の圧電体と複数の上部電極とを順に積層して備えるものであってもよく、複数の下部電極のそれぞれに圧電体及び上部電極を順に積層して備えるものであってもよい。さらに、バイアス電圧は+(プラス)である必要はなく、−(マイナス)であってもよい。
また、第2の本実施形態において、図6に示すようなシーケンスで駆動電圧を印加したが、それに代えて、図7に示すようなシーケンスで駆動電圧を順に印加して圧電ポンプを駆動してもよい。例えば、図7の(A)に示すシーケンスでは、連続する2つの上部電極と共に、それらの上部電極から3つの上部電極を隔てた別の上部電極にも同時に駆動電圧を印加する。この場合、圧電素子の連続しない複数の領域で同時に流体を移送するため、単位時間当たりの流体の移送量を、上述の図6に示すシーケンスよりも更に増大することができる。また、1サイクル当たりのステップ数が図6に示すものよりも少ないため、その点においても単位時間当たりの流体の移送量を増大することができる。図7の(B)に示すステップの場合、連続する3箇所の上部電極に同時に駆動電圧を印加する。この場合、3つの連続した領域で流体を移送するため、図6に示すシーケンスよりも単位時間当たりの流体の移送量を更に増大することができる。ただし、1サイクル当たりのステップ数は(A)に示すシーケンスよりも多くなる。
図7の(C)に示すシーケンスでは、1つの上部電極に駆動電圧を印加すると同時に、その上部電極から3つの上部電極を隔てた別の上部電極にも同時に駆動電圧を印加する。この場合、1サイクル当たりのステップ数を少なくできる一方、1ステップ当たりの流体の移送量は、図6に示すシーケンスと同等である。図7の(D)に示すシーケンスでは、連続する2つの上部電極に駆動電圧を印加すると同時に、それらの上部電極から2つの上部電極を隔てた別の2つの上部電極にも同時に駆動電圧を印加する。この場合、1サイクル当たりのステップ数を少なくできる一方、隔てる上部電極の数が比較的少なくなるため、図6、図7の(A)、(B)、(C)に示すシーケンスと比較すると、逆流の懸念が高まる。図7の(E)に示すシーケンスでは、1サイクル毎に全ての上部電極に駆動電圧が印加されないステップが存在する。そのため、図6に示すシーケンスと比較して、1サイクル当たりのステップ数が増加し、流体の移送量は少なくなる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(圧電ポンプの作製)
図2〜4に示すものと同様の圧電ポンプを作製した。第1の基板である厚さ400μmのSi基板上に、下部電極として厚さ0.1μmのPt電極、圧電体として厚さ2μmのPZT層、上部電極として厚さ0.1μmのPt電極を順にイオンミリング及びエッチング法により形成した。なお、1つの上部電極の主面は、直径1mmの円形とした。次に、絶縁性のポリイミド樹脂を、Si基板及び圧電素子上に塗布した後、それらの全体を280℃で1時間加熱して、ポリイミド樹脂を硬化させ、厚さ8μmの支持部材を得た。
更に、その支持部材の周縁部に同じポリイミド樹脂を接着用及び空間形成用に塗布し、加熱することなく、開口部を有するガラス基板(厚さ300μm)をその上に載置した。その後、それら全体を280℃で1時間加熱して、接着用のポリイミド樹脂を硬化させることで、そのポリイミド樹脂を介して支持部材とガラス基板とを接合した。そして、Si基板の一部を裏側から、Deep−RIEを用いた反応性イオンエッチングによりエッチングして駆動メンブレンを作製することで圧電ポンプを得た。なお、Si基板のエッチングは、圧電素子がSi基板側に湾曲することが可能なように6つの上部電極の下方に空間を設けるように行った。
また、下部電極及び上部電極に対して図5に示すものと同様の駆動回路を接続した。その接続は、Agペーストによる配線接合により行った。信号生成部としてテキサスインスツルメント社製の信号生成ソフト(商品名「LabView」)を、信号増幅部としてNF回路社製のピエゾドライバを用いた。
(圧電ポンプの駆動)
図6に示すシーケンスに従って、圧電ポンプを駆動した。1ステップ当たりの駆動電圧の印加時間は1〜30ミリ秒、バイアス電圧は0〜+10V、駆動電圧はバイアス電圧との電位差が+15Vとなるよう+15〜+25Vとした。流体として空気を用い、常温で圧電ポンプを駆動した。このときの流体の移送量を、駆動電圧の印加時間が1ミリ秒、バイアス電圧が+5V、駆動電圧が+20Vの場合を基準(1.0)として相対比で算出した。結果を表1に示す。この結果より、バイアス電圧を常時印加することにより、圧電ポンプの流体の移送量が増大することがわかった。
Figure 2011027057
次に、駆動電圧を印加するシーケンスを図6に示すものの他、図7に示すものに変更して、圧電ポンプを駆動した。1ステップ当たりの駆動電圧の印加時間は1ミリ秒又は10ミリ秒、バイアス電圧は+5V、駆動電圧は+20Vとした。流体として空気を用い、常温で圧電ポンプを駆動した。このときの流体の移送量を、駆動電圧の印加時間が1ミリ秒で図6のシーケンスで駆動した場合を基準(1.0)として相対比で算出した。結果を表2に示す。
Figure 2011027057
本発明の圧電ポンプは、微少化学反応に用いられる液状試薬や高精細印刷装置のインクなどの液体、ガスクロマトグラフの被検査ガス、燃料電池における反応ガスなどの気体等、流体を移送するための各種装置に適用することが可能である。例えば本発明の圧電ポンプは、ガスセンサへの流体供給装置や微少なフィルタ装置に備えられ得るものである。
100、200…圧電ポンプ、110、210…圧電素子、112、212…下部電極、114、214a〜f…上部電極、116、216…圧電体、120、220…支持部材、130、230…構造体、140、240…第1の基板、150、250…第2の基板、170、270…ポンプ室、300…駆動回路、302…信号生成部、304…信号増幅部。

Claims (3)

  1. 圧電素子と前記圧電素子を支持する支持部材とを備える構造体と、前記構造体に積層した基板と、を含有し、
    前記基板と前記構造体とによって囲まれたポンプ室を有する圧電ポンプであって、
    前記圧電素子は、前記圧電ポンプの作動時にバイアス電圧が常時印加される第1の電極と駆動電圧が間歇的に印加される第2の電極とからなる電極対と、その電極対に挟まれた圧電体と、を含む
    圧電ポンプ。
  2. 前記電極対は、1つの前記第1の電極と、流体の流通方向に沿って配設された2つ以上の前記第2の電極とからなるものである、請求項1に記載の圧電ポンプ。
  3. 圧電素子と前記圧電素子を支持する支持部材とを備える構造体と、
    前記構造体に積層した基板と、を含有し、
    前記基板と前記構造体とによって囲まれたポンプ室を有し、
    前記圧電素子は、電極対と、その電極対に挟まれた圧電体と、を含む圧電ポンプの駆動方法であって、
    前記電極対における一方の電極にバイアス電圧を常時印加した状態で他方の電極に駆動電圧を間歇的に印加することにより前記圧電素子を脈動させる工程を有する
    圧電ポンプの駆動方法。
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