JP2011058387A - 回転式圧縮機 - Google Patents

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祥孝 芝本
Ryuzo Sotojima
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Abstract

【課題】二段圧縮式の圧縮機構を有する圧縮機を備えた冷凍装置において、圧縮機の起動時に可動部材と固定部材との隙間のシールを速やかに確保できるようにする。
【解決手段】高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側には、可動側鏡板部(71a)を固定部材(72)に向かって押し付けるように、高段側圧縮部(70)から吐出される高圧冷媒の圧力が作用する高段側押し付け部(45)と、可動側鏡板部(71a)を固定部材(72)に向かって押し付けるように、高段側圧縮部(70)の圧縮途中の冷媒の圧力が作用する補助押し付け部(46)とが設けられる。
【選択図】図3

Description

本発明は、低段側圧縮部と高段側圧縮部とを備えて、冷媒を二段に圧縮する回転式圧縮機に関するものである。
従来より、空気調和装置等の冷凍装置の冷媒回路に接続されて冷媒を圧縮する圧縮機が知られている。この種の圧縮機として、特許文献1には、2つの圧縮部(偏心回転機構)で冷媒を二段に圧縮する圧縮機(回転式圧縮機)が開示されている。
具体的に、特許文献1に開示された圧縮機は、低段側圧縮部と高段側圧縮部とを備えている。各圧縮部は、固定部材としてのシリンダと、可動部材としての環状ピストンとをそれぞれ有している。各圧縮部では、シリンダと環状ピストンの間に圧縮室が区画される。駆動軸によって環状ピストンが偏心回転されることで、圧縮室内の冷媒が圧縮される。これにより、冷媒回路では、いわゆる二段圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
具体的に、冷媒回路では、圧縮機から吐出された高圧冷媒が、放熱器で放熱した後、膨張弁で減圧される。減圧後の冷媒は、蒸発器で空気から吸熱して蒸発する。蒸発後の低圧冷媒は、圧縮機の低段側圧縮部に吸入され、この低段側圧縮部で中間圧(冷媒回路の高圧と低圧との間の圧力)にまで圧縮される。中間圧の冷媒は、高段側圧縮部に吸入され、この高段側圧縮部で高圧冷媒にまで圧縮され、冷媒回路に吐出されて放熱器へ送られる。
特開2007−239666号公報
ところで、特許文献1に開示のような圧縮機においては、高圧冷媒の圧力を利用して可動部材を固定部材へ押し付ける構造を採用することが考えられる。この点について詳細に説明する。
上記のような圧縮機の運転時には、圧縮室の内圧が高くなることで、可動部材の鏡板に軸方向のガス力(即ち、スラスト力)が作用してしまう。その結果、固定部材に対して可動部材が離反してしまうため、圧縮室のシール性が損なわれて圧縮効率が低下してしまうことがある。
そこで、圧縮室における固定部材と可動部材との間の隙間のシールを確保するために、可動部材の鏡板の背面側に圧縮部で圧縮された後の高圧冷媒を作用させる押し付け構造を採用することができる。これにより、上記のスラスト力に抗するように可動部材を固定部材に向かって押し付けることができるので、圧縮室のシール性を向上できる。
一方、特許文献1に開示されるような二段圧縮式の圧縮機の高段側圧縮部においては、上記の押し付け構造を採用したとしても、圧縮機の起動時に所望の効果を発揮できないという問題が生じ得る。この点について更に詳細に説明する。
二段圧縮式の圧縮機の起動時には、例えば図7に示すように、中間圧の冷媒(即ち、低段側圧縮部の吐出冷媒、又は高段側圧縮部の吸入冷媒)の圧力(MP)と比較して、高圧冷媒(高段側圧縮部の吐出冷媒)の圧力(HP)が上昇しにくい傾向になる。これは、冷媒回路には、高圧冷媒が流れる流路に放熱器が設けられており、圧縮機の起動時には、この放熱器が比較的低い温度になっていることに起因する。即ち、圧縮機の起動時には、圧縮機から吐出された高圧冷媒が放熱器で急激に冷やされてしまうため、高圧冷媒の圧力がなかなか上昇しない。
上述した押し付け構造を高段側圧縮部に採用した圧縮機において、圧縮機の起動時に高圧冷媒の圧力の上昇が遅くなると、中間圧冷媒の圧力と高圧冷媒の圧力の圧力差もなかなか大きくならない。そうすると、高段側圧縮部の圧縮室の内圧と比較して、可動部材の鏡板に作用する高圧冷媒の圧力が小さくなってしまい、スラスト力に対して可動部材の押し付け力が相対的に小さくなってしまう。その結果、高段側圧縮部では、可動部材と固定部材との間の隙間がなかなかシールされないため、圧縮室で十分に冷媒を圧縮できない。すると、高段側圧縮部で圧縮された後の高圧冷媒の圧力上昇が更に遅くなり、可動部材の鏡板に作用する圧力もなかなか上昇せず、可動部材と固定部材との間の隙間のシールがますます遅れてしまう、という悪循環が生じる。なお、図7では、時点t0における圧縮機の起動の後、時点taにおいてようやく可動部材と固定部材との間の隙間が実質的にシールされ、その後に高圧冷媒と中間圧冷媒との差圧が大きくなっている。
以上のように、圧縮機の起動時には、上記の押し付け構造を採用しても高段側圧縮部の圧縮室のシールがなかなか確保できない。その結果、圧縮機の起動時において、高段側圧縮部の可動部材が軸心に対して傾いてしまい、軸受け部で片当たりが生じたり、冷凍装置の運転が定常状態に至るまでの時間が長くなったりする、という問題が生じる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、二段圧縮式の圧縮機構を有する回転式圧縮機の起動時において、高段側圧縮部の可動部材と固定部材との隙間のシールを速やかに確保できるようにすることにある。
第1の発明は、冷凍サイクルが行われる冷媒回路(11)から吸入した冷媒を圧縮する低段側圧縮部(50)と、該低段側圧縮部(50)で圧縮した冷媒を更に圧縮して上記冷媒回路(11)へ吐出させる高段側圧縮部(70)とを有する二段圧縮式の圧縮機構(40)を備え、上記高段側圧縮部(70)は、固定側鏡板部(72a)を有する固定部材(72)と、可動側鏡板部(71a)を有する可動部材(71)とを有し、上記固定部材(72)と該可動部材(71)との間に圧縮室(81,82)を区画しながら該可動部材(71)を偏心回転させることで冷媒を圧縮するように構成され、上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側には、該可動側鏡板部(71a)を固定部材(72)に向かって押し付けるように、高段側圧縮部(70)から吐出される高圧冷媒の圧力が作用する高段側押し付け部(45)が設けられている回転式圧縮機を対象とする。そして、この回転式圧縮機は、上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側に、該可動側鏡板部(71a)を固定部材(72)に向かって押し付けるように、高段側圧縮部(70)の圧縮途中の冷媒の圧力が作用する補助押し付け部(46)が設けられていることを特徴とする。
第1の発明では、冷媒回路(11)の低圧冷媒が低段側圧縮部(50)に吸入されて圧縮される。低段側圧縮部(50)の圧縮室(61,62)で圧縮された後の中間圧冷媒は、高段側圧縮部(70)に吸入されて更に圧縮される。高段側圧縮部(70)の圧縮室(81,82)で圧縮された後の高圧冷媒は、冷媒回路(11)に吐出される。以上のようにして、冷媒回路(11)では、二段圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
冷媒回路(11)の冷凍サイクルが行われると、高段側圧縮部(70)から吐出された高圧冷媒の圧力が高段側押し付け部(45)に作用し、可動側鏡板部(71a)が固定部材(72)に押し付けられる。従って、高段側圧縮部(70)では、圧縮室(81,82)の内圧に起因するスラスト力に抗するように可動部材(71)に押し付け力を作用させることができるので、可動部材(71)と固定部材(72)との隙間のシールが確保される。
ところが、上述したように、回転式圧縮機の起動時には冷媒回路(11)の高圧冷媒がなかなか上昇しないため、高段側押し付け部(45)による可動側鏡板部(71a)の押し付け力も不十分となってしまう。そこで、本発明では、高段側圧縮部(70)の圧縮途中の冷媒の圧力を利用して可動側鏡板部(71a)を固定部材(72)に押し付けるように、補助押し付け部(46)を設けている。これにより、回転式圧縮機の起動時には、高段側圧縮部(70)の圧縮室(81,82)で圧縮された途中の冷媒の圧力が補助押し付け部(46)に作用する。ここで、高段側圧縮部(70)の圧縮途中の冷媒は、冷媒回路(11)へ送られる高圧冷媒と異なり、冷媒回路(11)の放熱器等の影響を受けないため、圧縮機の起動時から速やかに昇圧される。従って、本発明では、回転式圧縮機の起動時において、高段側押し付け部(45)による可動側鏡板部(71a)の押し付け力が不十分となっても、これを補うように補助押し付け部(46)によって可動側鏡板部(71a)を固定部材(72)に向かって押し付けることができる。その結果、回転式圧縮機(20)の起動時においても、可動部材(71)と固定部材(72)の隙間のシールを速やかに確保できる。
以上のようにして、可動部材(71)と固定部材(72)との隙間のシールが確保されると、高段側圧縮部(70)で冷媒が確実に圧縮される。そうなると、高段側圧縮部(70)から吐出される高圧冷媒の圧力が速やかに上昇する。これにより、その後には、高段側押し付け部(45)によって可動側鏡板部(71a)を十分に押し付けることができる。
第2の発明は、第1の発明において、上記圧縮機構(40)における高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側には、シールリング(43)が設けられ、該シールリング(43)の内側に上記高段側押し付け部(45)を構成するための高段側背圧室(85)が区画され、該シールリング(43)の外側に上記補助押し付け部(46)を構成するための補助背圧室(86)が区画され、上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)又は固定側鏡板部(72a)には、一端が高段側圧縮部(70)の圧縮途中の圧縮室(81)に連通し、他端が上記補助背圧室(86)と連通する連通路(47)が形成されていることを特徴とする。
第2の発明では、高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側にシールリング(43)が設けられる。シールリング(43)の内側には、高段側背圧室(85)が区画され、この高段側背圧室(85)によって高段側押し付け部(45)が構成される。つまり、高段側背圧室(85)が高圧冷媒と同じ圧力となることで、可動側鏡板部(71a)が固定部材(72)に向かって押し付けられる。シールリング(43)の外側には、補助背圧室(86)が区画され、この補助背圧室(86)によって補助押し付け部(46)が構成される。つまり、高段側圧縮部(70)の圧縮途中の圧縮室(81)の冷媒は、可動側鏡板部(71a)又は固定側鏡板部(72a)に形成された連通路(47)を通じて補助背圧室(86)に導入される。これにより、補助背圧室(86)に導入された冷媒の圧力によって、可動側鏡板部(71a)が固定部材(72)に向かって押し付けられる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記低段側圧縮部(50)は、固定側鏡板部(52a)を有する固定部材(52)と、可動側鏡板部(51a)を有する可動部材(51)とを備え、上記固定部材(52)と上記可動部材(51)との間に圧縮室(61,62)を区画しながら該可動部材(51)を偏心回転させることで冷媒を圧縮するように構成され、上記低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の背面側には、該可動側鏡板部(51a)を固定部材(52)に向かって押し付けるように、高段側圧縮部(70)から吐出される高圧冷媒の圧力が作用する低段側押し付け部(44)が設けられていることを特徴とする。
第3の発明の圧縮機構(40)では、低段側圧縮部(50)と高段側圧縮部(70)との双方に、固定部材(52,72)と可動部材(51,71)とがそれぞれ設けられる。そして、高段側圧縮部(70)で圧縮された後の高圧冷媒の圧力が、低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の背面にも作用する。ここで、上述のように回転式圧縮機の起動時には、高段側圧縮部(70)の高圧冷媒の圧力の上昇は比較的遅くなる。しかしながら、低段側圧縮部(50)の圧縮室(61,62)の内圧は、高段側圧縮部(70)の圧縮室(81,82)の内圧よりも低いため、低段側圧縮部(50)では可動部材(51)を固定部材(52)に十分に押し付けることができる。従って、回転式圧縮機の起動時においては、低段側圧縮部(50)の可動部材(51)と固定部材(52)の隙間のシールも十分確保できる。
第4の発明は、第3の発明において、上記圧縮機構(40)は、上記高段側圧縮部(70)の固定部材(72)の先端面との間に上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)を狭持するように該高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側に設けられる高段側支持部(41c)と、上記低段側圧縮部(50)の固定部材(52)の先端面との間に上記低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)を狭持するように該低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の背面側に設けられる低段側支持部(41d)とを有し、上記低段側圧縮部(50)の固定部材(52)の先端面と上記低段側支持部(41d)との間隔をL1とし、上記低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の厚みをD1とし、上記高段側圧縮部(70)の固定部材(72)の先端面と上記高段側支持部(41c)との間隔をL2とし、上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の厚みをD2とすると、上記圧縮機構(40)は、(L1−D1)>(L2−D2)の関係を満たすように構成されていることを特徴とする。
第4の発明では、高段側圧縮部(70)において、固定部材(72)と高段側支持部(41c)との間に可動側鏡板部(71a)が設けられて保持される。高段側圧縮部(70)では、可動側鏡板部(71a)が固定部材(72)の先端面や高段側支持部(41c)の表面と摺接するようにして、可動部材(71)が偏心回転する。同様に、低段側圧縮部(50)においては、固定部材(52)と低段側支持部(41d)との間に可動側鏡板部(51a)が設けられて保持される。低段側圧縮部(50)では、可動側鏡板部(51a)が固定部材(52)の先端面や低段側支持部(41d)の表面と摺接するようにして、可動部材(51)が偏心回転する。
第4の発明では、高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の挟み込み隙間(即ち、高段側圧縮部(70)の固定部材(72)の先端面と高段側支持部(41c)との間隔L2から高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の厚みD2を引いた値(L2−D2))が、低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の挟み込み隙間(即ち、低段側圧縮部(50)の固定部材(52)の先端面と低段側支持部(41d)との間隔L1から低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の厚みD1を引いた値(L1−D1))よりも小さくなっている。
このように、高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の挟み込み隙間(L2−D2)を比較的小さくすると、高段側圧縮部(70)における固定部材(72)と可動部材(71)の隙間のシール性が更に向上する。従って、回転式圧縮機の起動時において、高段側圧縮部(70)から吐出される高圧冷媒の圧力の上昇を早めることができる。その結果、高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面に作用する圧力上昇も早くなるので、固定部材(52)と可動部材(51)の隙間のシールを一層速やかに確保できる。
本発明によれば、高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側に、高段側圧縮部(70)の圧縮途中の冷媒の圧力が作用する補助押し付け部(46)を設けるようにしている。ここで、この圧縮途中の冷媒の圧力は、高圧冷媒と異なり、回転式圧縮機の起動時においても速やかに上昇する。従って、回転式圧縮機の起動時には、補助押し付け部(46)による比較的大きな押し付け力で、高段側圧縮部(70)の可動部材(71)を押し付けることができる。その結果、高段側圧縮部(70)において、可動部材(71)と固定部材(72)の隙間のシールを速やか且つ確実に確保できる。
このようにシールを速やかに確保すると、高圧冷媒の圧力も速やかに上昇する。このため、回転式圧縮機の起動時において、可動部材(71)が転覆して軸受け部で片当たりが生じてしまうことを防止できる。また、冷凍装置が定常運転に至るまでの時間を短縮できるので、冷凍装置の省エネ性、信頼性を向上できる。更に、高圧冷媒の圧力を利用して潤滑油(冷凍機油)を圧縮機構(40)の摺動部や軸受け等に供給する方式においては、このように高圧冷媒の圧力の上昇を促すことで、潤滑油を速やかに摺動部や軸受け等へ送ることができる。
また、第2の発明では、シールリング(43)を用いることで、高段側押し付け部(45)と補助押し付け部(46)とを比較的簡易な構造によって構成できる。また、可動側鏡板部(71a)又は固定側鏡板部(72a)に連通路(47)を形成することで、圧縮途中の圧縮室(81)と補助背圧室(86)とを比較的短い経路で連通させることができる。このため、冷媒を補助背圧室(86)へ導くための経路の圧力損失を低減でき、補助背圧室(86)内の冷媒の圧力を十分確保できる。従って、回転式圧縮機の起動時において、補助押し付け部(46)による可動側鏡板部(71a)の押し付け力を十分に得ることができ、可動部材(71)と固定部材(72)の隙間のシールを一層速やかに確保できる。
第3の発明では、高段側圧縮部(70)と低段側圧縮部(50)との双方において、高圧冷媒の圧力を利用して可動部材(51,71)を固定部材(52,72)へ押し付けるようにしている。このため、圧縮機(20)の起動時において、高段側圧縮部(70)の圧縮室(81,82)のシールの確保に加えて、低段側圧縮部(50)の圧縮室(61,62)のシールも十分に確保できる。
特に第4の発明では、高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の挟み込み隙間(L2−D2)を、低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の挟み込み隙間(L1−D1)よりも小さくしている。このため、高段側圧縮部(70)では、圧縮室(81,82)からの冷媒の漏れを確実に防止でき、圧縮機(20)の起動時における高圧冷媒の圧力上昇を促進できる。従って、圧縮機(20)の起動時において、高段側圧縮部(70)のシールを一層速やかに確保できる。また、低段側圧縮部(50)では、挟み込み隙間(L1−D1)を比較的大きくしている。このため、湿り度が比較的高い低圧冷媒が圧縮機(20)に吸入された場合、低段側圧縮部(50)の可動部材(51)と固定部材(52)との隙間より冷媒を逃がすことできる。即ち、低段側圧縮部(50)では、挟み込み隙間(L1−D1)を比較的大きくすることで、圧縮室(61,62)で液冷媒を圧縮してしまう、いわゆる液圧縮現象を未然に回避できる。
図1は、実施形態に係る空調機の冷媒回路の概略構成を示す配管系統図である。 図2は、実施形態に係る圧縮機の全体構成を示す縦断面図である。 図3は、実施形態に係る圧縮機の要部(圧縮機構)の縦断面図である。 実施形態に係る圧縮機構の横断面図であって、図4(A)〜(H)の順に行われる圧縮動作を説明するための説明図である。 図5は、実施形態に係る圧縮機において、圧縮機の起動から定常運転に至るまでの間の高圧、中間圧、及び低圧の変化を表したものである。 図6は、その他の実施形態に係る圧縮機の要部(圧縮機構)の縦断面図である。 図7は、本発明の比較例に係る圧縮機において、圧縮機の起動から定常運転に至るまでの間の高圧、中間圧、及び低圧の変化を表したものである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る圧縮機(20)は、室内の冷房と暖房とを切り換えて行う空調機(10)に設けられている。空調機(10)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備えた冷凍装置を構成している。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。
〈空気調和装置の全体構成〉
図1に示すように、冷媒回路(11)には、圧縮機(20)、室内熱交換器(12)、膨張弁(13)、及び室外熱交換器(14)が設けられている。
圧縮機(20)は、回転式圧縮機を構成しており、ケーシング(21)と、該ケーシング(21)内に収容される駆動機構(30)及び圧縮機構(40)を備えている。圧縮機構(40)は、第1偏心回転機構(50)及び第2偏心回転機構(70)を有し、第1偏心回転機構(50)で圧縮した冷媒を第2偏心回転機構(70)で更に圧縮する二段圧縮式に構成されている。また、圧縮機(20)は、吐出管(22)と吸入管(23)と中間連絡管(24)とを有している。圧縮機(20)の詳細は後述する。
室内熱交換器(12)は、クロスフィン式に構成され、室内ファン(図示省略)が送風する室内空気と冷媒とを熱交換させる。膨張弁(13)は、開度が調節可能な電子膨張弁で構成されている。室外熱交換器(14)は、クロスフィン式に構成され、室外ファン(図示省略)が送風する室外空気と冷媒とを熱交換させる。
冷媒回路(11)には、四路切換弁(15)、ブリッジ回路(16)、内部熱交換器(17)、中間インジェクション管(18)、及び減圧弁(19)が設けられている。
四路切換弁(15)は、第1から第4までの4つのポートを備えている。四路切換弁(15)は、第1ポートが圧縮機(20)の吐出管(22)と接続し、第2ポートが圧縮機(20)の吸入管(23)と接続している。また、四路切換弁(15)は、第3ポートが室外熱交換器(14)と接続し、第4ポートが室内熱交換器(12)と接続している。四路切換弁(15)は、第1ポートと第3ポートが連通すると同時に第2ポートと第4ポートが連通する第1状態(図1に示す実線の状態)と、第1ポートと第4ポートが連通すると同時に第2ポートと第3ポートが連通する第2状態(図1に示す破線の状態)とに切り換え可能に構成されている。
ブリッジ回路(16)は、第1接続ライン(16a)と第2接続ライン(16b)と第3接続ライン(16c)と第4接続ライン(16d)とをブリッジ状に接続した回路である。第1接続ライン(16a)は、室外熱交換器(14)と内部熱交換器(17)の一端側とを接続している。第2接続ライン(16b)は、室内熱交換器(12)と内部熱交換器(17)の一端側とを接続している。第3接続ライン(16c)は、室外熱交換器(14)と内部熱交換器(17)の他端側とを接続している。第4接続ライン(16d)は、室内熱交換器(12)と内部熱交換器(17)の他端側とを接続している。第1接続ライン(16a)、第2接続ライン(16b)、第3接続ライン(16c)、及び第4接続ライン(16d)には、それぞれ逆止弁(CV)が設けられている。各逆止弁は、図1に示す矢印方向への冷媒の流れを許容し、その逆方向への冷媒の流れを禁止している。
内部熱交換器(17)は、第1流路(17a)と第2流路(17b)とを有する二重管熱交換器を構成している。第1流路(17a)は内側寄りの円柱状の流路を構成し、第2流路(17b)は外側寄りの筒状の流路を構成している。内部熱交換器(17)では、第1流路(17a)を流れる冷媒と第2流路(17b)を流れる冷媒との間で熱交換が行われる。第1流路(17a)の一端は、第1接続ライン(16a)と第2接続ライン(16b)の接続部と連通している。第1流路(17a)の他端は、膨張弁(13)を介して第3接続ライン(16c)と第4接続ライン(16d)との接続部と連通している。第2流路(17b)は、中間インジェクション管(18)に跨るように配設されている。
中間インジェクション管(18)の流入端は、上記第1接続ライン(16a)及び第2接続ライン(16b)の流出側に接続されている。中間インジェクション管(18)の流出端は、圧縮機(20)の中間連絡管(24)と接続している。中間インジェクション管(18)は、冷媒回路(11)の放熱器(室内熱交換器(12)又は室外熱交換器(14))で放熱した後の冷媒を、圧縮機(20)の中間連絡管(24)へ導入するためのインジェクション流路を構成している。
減圧弁(19)は、中間インジェクション管(18)において、第2流路(17b)の上流側に設けられている。減圧弁(19)は、中間インジェクション管(18)に流入した高圧冷媒を中間圧にまで減圧するための減圧機構を構成している。
〈圧縮機の全体構成〉
図2に示すように、圧縮機(20)は、縦長で密閉容器状のケーシング(21)を備えている。ケーシング(21)の内部には、駆動機構(30)と圧縮機構(40)とが収納されている。圧縮機(20)は、ケーシング(21)の内部空間が高圧冷媒で満たされる、いわゆる高圧ドーム式に構成されている。
駆動機構(30)は、電動機(31)と、該電動機(31)によって回転駆動される駆動軸(34)とを有している。電動機(31)は、ステータ(32)とロータ(33)とを有している。ステータ(32)は、ケーシング(21)の胴部に固定されている。ロータ(33)は、ステータ(32)の内側に配置され、駆動軸(34)の主軸部(34a)に連結されている。電動機(31)は、その回転速度が可変なインバータ式に構成されている。
駆動軸(34)には、その下部寄りに2つの偏心部(35,36)が設けられている。具体的に、駆動軸(34)には、下側に第1偏心部(35)が形成され、上側に第2偏心部(36)が形成されている。第1偏心部(35)と第2偏心部(36)とは、駆動軸(34)の主軸部(34a)の軸心から偏心している。また、第1偏心部(35)と第2偏心部(36)とは、両者の偏心方向が回転方向に180度ずれている。
駆動軸(34)の下端部には、油ポンプ(37)が設けられている。油ポンプ(37)の吐出口は、駆動軸(34)の内部に形成された給油通路(図示省略)と連通している。油ポンプ(37)は、ケーシング(21)の内部空間の内圧(高圧冷媒の圧力)を利用することで、ケーシング(21)の底部に溜まった冷凍機油を給油通路へ搬送する、差圧駆動式に構成されている。油ポンプ(37)から給油通路へ搬送された冷凍機油は、駆動軸(34)の各軸受けや、圧縮機構(40)の各摺動部等の潤滑に利用される。
〈圧縮機構の構成〉
圧縮機構(40)は、電動機(31)の下側に設けられている。圧縮機構(40)は、下側寄りの第1偏心回転機構(50)と上側寄りの第2偏心回転機構(70)とを有している。第1偏心回転機構(50)は、冷媒回路(11)からの低圧冷媒を中間圧の冷媒にまで圧縮する、低段側圧縮部を構成している。また、第2偏心回転機構(70)は、第1偏心回転機構(50)からの中間圧冷媒を高圧の冷媒にまで圧縮する、高段側圧縮部を構成している。また、圧縮機構(40)は、ミドルプレート(41)と2つのシールリング(42,43)とを備えている(詳細は後述する)。
[第1偏心回転機構]
図2〜図4に示すように、第1偏心回転機構(50)は、第1シリンダ(52)と第1可動部材(51)とを備えている。
第1シリンダ(52)は、ケーシング(21)の胴部に固定される固定部材を構成している。第1シリンダ(52)は、円盤状の固定側鏡板部(52a)と、固定側鏡板部(52a)の上面の内寄りの位置から上方に突出する環状の内側シリンダ部(52b)と、固定側鏡板部(52a)の上面の外周部から上方に突出する環状の外側シリンダ部(52c)とを備えている。第1シリンダ(52)は、内側シリンダ部(52b)と外側シリンダ部(52c)との間に、環状の第1シリンダ室(54)を有している。
第1可動部材(51)は、円盤状の可動側鏡板部(51a)と、可動側鏡板部(51a)の下面の内周端部から下方に突出する環状突出部(51b)と、可動側鏡板部(51a)の下面の外周寄りの位置から下方に突出する環状の第1ピストン(53)とを備えている。第1ピストン(53)は、第1シリンダ(52)に対して偏心するように第1シリンダ室(54)に収納され、第1シリンダ室(54)を外側流体室(61)と内側流体室(62)とに区画している。外側流体室(61)は、第1の低段側圧縮室を構成し、内側流体室(62)は、第2の低段側圧縮室を構成している。
なお、第1ピストン(53)と第1シリンダ(52)とは、第1ピストン(53)の外周面と外側シリンダ部(52c)の内周面とが1点で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、第1ピストン(53)の内周面と内側シリンダ部(52b)の外周面とが1点で実質的に接するようになっている。
環状突出部(51b)には、第1偏心部(35)が嵌合している。第1可動部材(51)は、駆動軸(34)の回転に伴い主軸部(34a)の軸心を中心として偏心回転する。なお、第1偏心回転機構(50)では、環状突出部(51b)と内側シリンダ部(52b)との間に空間が形成されるが、この空間では冷媒の圧縮は行われない。
第1偏心回転機構(50)は、内側シリンダ部(52b)の外周面から外側シリンダ部(52c)の内周面まで延びるブレード(55)を備えている。ブレード(55)は、第1シリンダ(52)と一体になっている。ブレード(55)は、第1シリンダ室(54)に配置され、外側流体室(61)を吸入側の第1室(61a)と吐出側の第2室(61b)とに区画し、内側流体室(62)を吸入側の第1室(62a)と吐出側の第2室(62b)とに区画している。ブレード(55)は、環状の一部が分断されたC型形状の第1ピストン(53)の分断箇所を挿通している。また、第1ピストン(53)の分断箇所には、ブレード(55)を挟むように半円形状のブッシュ(56,56)が嵌合している。ブッシュ(56,56)は、第1ピストン(53)の端面に対して揺動自在に構成されている。これにより、第1ピストン(53)は、ブレード(55)の延伸方向に進退可能で且つブッシュ(56,56)と共に揺動可能になっている。
第1偏心回転機構(50)には、上記の吸入管(23)が接続されている。吸入管(23)は、固定側鏡板部(52a)に形成された第1接続通路(63)に接続されている。第1接続通路(63)は、入口側が固定側鏡板部(52a)の径方向に延び、途中で上方へ折れ曲がって、出口側が固定側鏡板部(52a)の軸方向に延びている。第1接続通路(63)の出口端は、外側流体室(61)と内側流体室(62)の双方に跨るように開口している。つまり、第1偏心回転機構(50)では、第1接続通路(63)を流出した冷媒が、外側流体室(61)と内側流体室(62)とに分流し、各流体室(61,62)でそれぞれ冷媒が圧縮される。
第1偏心回転機構(50)には、外側流体室(61)から冷媒を吐出させるための外側吐出ポート(57)と、内側流体室(62)から冷媒を吐出させるための内側吐出ポート(58)と、外側吐出ポート(57)及び内側吐出ポート(58)の両方が開口する第1吐出空間(64)とが形成されている。外側吐出ポート(57)は、外側流体室(61)の第2室(61b)と第1吐出空間(64)とを連通させている。外側吐出ポート(57)には、第1吐出弁(57a)が設けられている。第1吐出弁(57a)は、外側流体室(61)の第2室(61b)の内圧に抗して外側吐出ポート(57)を閉鎖するように付勢力が作用している。外側流体室(61)の第2室(61b)の内圧が所定圧力に達すると、付勢力に反して第1吐出弁(57a)が外側吐出ポート(57)を開放する位置に変位する。内側吐出ポート(58)は、内側流体室(62)の第2室(62b)と第1吐出空間(64)とを連通させている。内側吐出ポート(58)には、第2吐出弁(58a)が設けられている。第2吐出弁(58a)は、内側流体室(62)の第2室(62b)の内圧に抗して内側吐出ポート(58)を閉鎖するように付勢力が作用している。内側流体室(62)の第2室(62b)の内圧が所定圧力に達すると、付勢力に反して第2吐出弁(58a)が内側吐出ポート(58)を開放する位置に変位する。第1吐出空間(64)には、上記の中間連絡管(24)の入口端が開口している。
以上のような構成の第1偏心回転機構(50)において、駆動軸(34)が回転すると、第1ピストン(53)が図4の(A)〜(H)の順に偏心回転する。これにより、外側流体室(61)及び内側流体室(62)では、吸入管(23)を通じて導入された低圧の冷媒が圧縮される。外側流体室(61)及び内側流体室(62)でそれぞれ圧縮された冷媒は、各吐出ポート(57,58)から第1吐出空間(64)に吐出され、中間連絡管(24)に流出する。
[第2偏心回転機構]
図2〜図4に示すように、第2偏心回転機構(70)は、第1偏心回転機構(50)と同様の機械要素で構成されている。第2偏心回転機構(70)は、ミドルプレート(41)を挟んで第2偏心回転機構(70)を上下反転させたような構成となっている。具体的に、第2偏心回転機構(70)は、第2シリンダ(72)と第2可動部材(71)とを備えている。
第2シリンダ(72)は、ケーシング(21)の胴部に固定される固定部材を構成している。第2シリンダ(72)は、円盤状の固定側鏡板部(72a)と、固定側鏡板部(72a)の下面の内寄りの位置から下方に突出する環状の内側シリンダ部(72b)と、固定側鏡板部(72a)の下面の外周部から下方に突出する環状の外側シリンダ部(72c)とを備えている。第2シリンダ(72)は、内側シリンダ部(72b)と外側シリンダ部(72c)との間に、環状の第2シリンダ室(74)を有している。
第2可動部材(71)は、円盤状の可動側鏡板部(71a)と、可動側鏡板部(71a)の上面の内周端部から上方に突出する環状突出部(71b)と、可動側鏡板部(71a)の下面の外周寄りの位置から上方に突出する環状の第2ピストン(73)とを備えている。第2ピストン(73)は、第2シリンダ(72)に対して偏心するように第2シリンダ室(74)に収納され、第2シリンダ室(74)を外側流体室(81)と内側流体室(82)とに区画している。外側流体室(81)は、第1の高段側圧縮室を構成し、内側流体室(82)は、第2の高段側圧縮室を構成している。可動側鏡板部(71a)の外周寄りの部位には、連通路(47)が形成されている(連通路(47)の詳細は後述する)。
なお、第2ピストン(73)と第2シリンダ(72)とは、第2ピストン(73)の外周面と外側シリンダ部(72c)の内周面とが1点で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、第2ピストン(73)の内周面と内側シリンダ部(72b)の外周面とが1点で実質的に接するようになっている。
環状突出部(71b)には、第2偏心部(36)が嵌合している。第2可動部材(71)は、駆動軸(34)の回転に伴い主軸部(34a)の軸心を中心として偏心回転する。なお、第2偏心回転機構(70)では、環状突出部(71b)と内側シリンダ部(72b)との間に空間が形成されるが、この空間では冷媒の圧縮は行われない。
第2偏心回転機構(70)は、内側シリンダ部(72b)の外周面から外側シリンダ部(72c)の内周面まで延びるブレード(75)を備えている。ブレード(75)は、第2シリンダ(72)と一体になっている。ブレード(75)は、第2シリンダ室(74)に配置され、外側流体室(81)を吸入側の第1室(81a)と吐出側の第2室(81b)とに区画し、内側流体室(82)を吸入側の第1室(82a)と吐出側の第2室(82b)とに区画している。ブレード(75)は、環状の一部が分断されたC型形状の第2ピストン(73)の分断箇所を挿通している。また、第2ピストン(73)の分断箇所には、ブレード(75)を挟むように半円形状のブッシュ(76,76)が嵌合している。ブッシュ(76,76)は、第2ピストン(73)の端面に対して揺動自在に構成されている。これにより、第2ピストン(73)は、ブレード(75)の延伸方向に進退可能で且つブッシュ(76,76)と共に揺動可能になっている。
第2偏心回転機構(70)には、上記の中間連絡管(24)の出口端が接続されている。中間連絡管(24)は、固定側鏡板部(72a)に形成された第2接続通路(83)に接続されている。第2接続通路(83)は、入口側が固定側鏡板部(72a)の径方向に延び、途中で下方へ折れ曲がって、出口側が固定側鏡板部(72a)の軸方向に延びている。第2接続通路(83)の出口端は、外側流体室(81)と内側流体室(82)の双方に跨るように開口している。つまり、第2偏心回転機構(70)では、第2接続通路(83)を流出した冷媒が、外側流体室(81)と内側流体室(82)とに分流し、各流体室(81,82)でそれぞれ冷媒が圧縮される。
第2偏心回転機構(70)には、外側流体室(81)から冷媒を吐出させるための外側吐出ポート(77)と、内側流体室(62)から冷媒を吐出させるための内側吐出ポート(78)と、外側吐出ポート(77)及び内側吐出ポート(78)の両方が開口する第2吐出空間(84)とが形成されている。外側吐出ポート(77)は、外側流体室(81)の第2室(81b)と第2吐出空間(84)とを連通させている。外側吐出ポート(77)には、第3吐出弁(77a)が設けられている。第3吐出弁(77a)は、外側流体室(81)の第2室(81b)の内圧に抗して外側吐出ポート(77)を閉鎖するように付勢力が作用している。外側流体室(81)の第2室(81b)の内圧が所定圧力に達すると、付勢力に反して第3吐出弁(77a)が外側吐出ポート(77)を開放する位置に変位する。内側吐出ポート(78)は、内側流体室(82)の第2室(82b)と第2吐出空間(84)とを連通させている。内側吐出ポート(78)には、第4吐出弁(78a)が設けられている。第4吐出弁(78a)は、内側流体室(82)の第2室(82b)の内圧に抗して内側吐出ポート(78)を閉鎖するように付勢力が作用している。内側流体室(82)の第2室(82b)の内圧が所定圧力に達すると、付勢力に反して第4吐出弁(78a)が内側吐出ポート(78)を開放する位置に変位する。第2吐出空間(84)は、ケーシング(21)の内部空間における電動機(31)の下側に開口している。一方、上記の吐出管(22)の入口端は、ケーシング(21)の内部空間における電動機(31)の上側に開口している。つまり、第2吐出空間(84)は、ケーシング(21)の内部空間を介して吐出管(22)と連通している。
以上のような構成の第2偏心回転機構(70)において、駆動軸(34)が回転すると、第2ピストン(73)が図4の(A)〜(H)の順に偏心回転する。これにより、外側流体室(81)及び内側流体室(82)では、中間連絡管(24)を通じて導入された中間圧の冷媒が圧縮される。外側流体室(81)及び内側流体室(82)でそれぞれ圧縮された冷媒は、各吐出ポート(77,78)から第2吐出空間(84)に吐出される。
[ミドルプレート]
図2及び図3に示すように、ミドルプレート(41)は、第1偏心回転機構(50)と第2偏心回転機構(70)との間に介設されている。ミドルプレート(41)は、外周端に形成される円筒部(41a)と、該円筒部(41a)内に形成される仕切部(41b)とを有している。円筒部(41a)は、上下に扁平な筒状に形成されている。円筒部(41a)は、第1シリンダ(52)の外側シリンダ部(52c)の上端面と、第2シリンダ(72)の外側シリンダ部(72c)の下端面との間に狭持されている。仕切部(41b)は、円筒部(41a)の内部を上下に仕切るように、該円筒部(41a)の上下方向の中間位置に形成されている。仕切部(41b)は、中央に開口を有する環状に形成され、その開口を駆動軸(34)が貫通している。仕切部(41b)は、円筒部(41a)と一体形成されている。
ミドルプレート(41)では、仕切部(41b)の上側の部位が、高段側支持部(41c)を構成している。つまり、高段側支持部(41c)は、高段側の可動側鏡板部(71a)の背面側に設けられて、第2シリンダ(72)の先端面(下面)との間に可動側鏡板部(71a)を狭持している。また、ミドルプレート(41)では、仕切部(41b)の下側の部位が、低段側支持部(41d)を構成している。つまり、低段側支持部(41d)は、低段側の可動側鏡板部(51a)の背面側に設けられて、第1シリンダ(52)の先端面(上面)との間に可動側鏡板部(51a)を狭持している。
[シールリング]
図3に示すように、圧縮機構(40)は、2つの環状のシールリング(42,43)を有している。具体的に、ミドルプレート(41)の高段側支持部(41c)と、第1可動部材(51)の可動側鏡板部(51a)との間には、第1シールリング(42)が設けられている。また、ミドルプレート(41)の低段側支持部(41d)と、第2可動部材(71)の可動側鏡板部(71a)との間には、第2シールリング(43)が設けられている。本実施形態では、第1シールリング(42)の内径よりも、第2シールリング(43)の内径の方が大きくなっている。
第1シールリング(42)は、仕切部(41b)の下面に形成された第1環状溝(42a)に嵌り込んでいる。第1環状溝(42a)の中心は、駆動軸(34)の軸心よりも吐出側(吐出ポート(57,58)寄り)に偏心している。
第1シールリング(42)の内側には、第1背圧室(65)(低段側背圧室)が区画されている。第1背圧室(65)は、駆動軸(34)の外周の隙間と連通しており、この隙間には上述した油溜まりの冷凍機油が給油通路を通じて供給される。このため、第1背圧室(65)の内部には、油溜まりの圧力と同等の圧力、つまり、ケーシング(21)の内部に満たされる高圧冷媒と同等の圧力が作用する。これにより、第1背圧室(65)では、第1可動部材(51)の可動側鏡板部(51a)に高圧冷媒の圧力が作用し、第1可動部材(51)が第1シリンダ(52)の方向へ押し付けられる。以上のように、第1シールリング(42)の内側には、第1可動部材(51)を第1シリンダ(52)に向かって押し付けるように、高圧冷媒の圧力が作用する第1押し付け部(44)(低圧側押し付け部)が設けられている。
第2シールリング(43)は、仕切部(41b)の上面に形成された第2環状溝(43a)に嵌り込んでいる。第2環状溝(43a)の中心は、駆動軸(34)の軸心よりも吐出側(吐出ポート(77,78)寄り)に偏心している。
第2シールリング(43)の内側には、第2背圧室(85)(高段側背圧室)が区画されている。第2背圧室(85)は、駆動軸(34)の周囲の隙間と連通しており、この隙間には上述した油溜まりの冷凍機油が給油通路を通じて供給される。このため、第2背圧室(85)には、油溜まりの圧力と同等の圧力、つまり、ケーシング(21)の内部に満たされる高圧冷媒と同等の圧力が作用している。これにより、第2背圧室(85)では、第2可動部材(71)の可動側鏡板部(71a)に高圧冷媒の圧力が作用し、第2可動部材(71)が第2シリンダ(72)の方向へ押し付けられる。以上のように、第2シールリング(43)の内側には、第2可動部材(71)を第2シリンダ(72)に向かって押し付けるように、高圧冷媒の圧力が作用する第2押し付け部(45)(高段側押し付け部)が設けられている。
第2シールリング(43)の外側には、補助背圧室(86)が区画されている。具体的に、補助背圧室(86)は、第2シリンダ(72)の外側シリンダ部(72c)の下面と、ミドルプレート(41)の円筒部(41a)の内周面と、ミドルプレート(41)の仕切部(41b)の上面と、第2シールリング(43)の外周面と、可動側鏡板部(71a)の外周縁部との間に区画される略環状の空間によって構成されている。
補助背圧室(86)には、第2偏心回転機構(70)の外側流体室(81)で圧縮された途中の冷媒が導入される。具体的に、補助背圧室(86)には、上述した連通路(47)が繋がっている。この連通路(47)の一端は、可動側鏡板部(71a)の上面に開口して、外側流体室(81)と連通している。連通路(47)の他端は、可動側鏡板部(71a)の外周面に開口して、補助背圧室(86)と連通している。このため、第2偏心回転機構(70)で圧縮動作が行われると、外側流体室(81)での圧縮途中の冷媒が、連通路(47)を経由して補助背圧室(86)に流入する。これにより、可動側鏡板部(71a)の背面(下面)のうち第2シールリング(43)の外側の部位には、上記の圧縮途中の冷媒の圧力が作用し、第2可動部材(71)が第2シリンダ(72)の方向へ押し付けられる。以上のように、第2シールリング(43)の外側には、第2可動部材(71)を第2シリンダ(72)に向かって押し付けるように、高圧冷媒の圧力が作用する補助押し付け部(46)(補助押し付け部)が設けられている。
[可動部材の挟み込み隙間について]
図3に示すように、圧縮機構(40)では、第2シリンダ(72)とミドルプレート(41)との間における第2可動部材(71)の挟み込み隙間が、第1シリンダ(52)とミドルプレート(41)との間における第1可動部材(51)の挟み込み隙間よりも小さくなっている。この点について詳細に説明する。
圧縮機構(40)では、可動側鏡板部(51a,71a)の外周縁部が、外側シリンダ部(52c,72c)の先端面とミドルプレート(41)の仕切部(41b)との間に狭持されている。ここで、第1可動部材(51)の可動側鏡板部(51a)の狭持部位において、第1シリンダ(52)の外側シリンダ部(52c)とミドルプレート(41)の低段側支持部(41d)との間隔をL1とし可動側鏡板部(51a)の厚さをD1とする。また、第2可動部材(71)の可動側鏡板部(71a)の狭持部位において、第2シリンダ(72)の外側シリンダ部(72c)とミドルプレート(41)の高段側支持部(41c)との間の間隔をL2とし可動側鏡板部(71a)の厚さをD2とする。そうすると、第1可動部材(51)の挟み込み隙間は、L1−D1で表すことができ、第2可動部材(71)の挟み込み隙間は、L2−D2で表すことができる。つまり、可動部材(51,71)の“挟み込み隙間”とは、シリンダ(52,72)とミドルプレート(41)との間において可動部材(51,71)の軸方向の変位を許容するための微小隙間である。そして、本実施形態の圧縮機構(40)では、第2可動部材(71)の挟み込み隙間(L1−D1)が、第1可動部材(51)の挟み込み隙間(L2−D2)よりも小さくなっている。
−運転動作−
次に、本実施形態に係る空調機(10)の運転動作について説明する。この空調機(1)では、以下に述べる暖房運転や冷房運転等が切り換え可能となっている。なお、次に述べる冷房運転及び暖房運転は、空調機(1)の運転開始から所定時間が経過した後の定常運転(冷凍サイクルが安定状態となった運転)での動作である。
[冷房運転]
空調機(10)の冷房運転では、圧縮機(20)が運転状態となり、四路切換弁(15)が第1状態に設定されると共に、膨張弁(13)の開度が適宜調節される。冷房運転時の冷媒回路(11)では、室外熱交換器(14)が放熱器となって室内熱交換器(12)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。なお、この空調機(10)では、冷凍サイクルの高圧圧力が二酸化炭素冷媒の臨界圧力よりも高くなる超臨界の冷凍サイクルが行われる。また、定常運転時の冷房運転には、中間開閉弁(25)が開放される。そして、中間インジェクション管(18)では、運転条件に応じて減圧弁(16)の開度が適宜調節されることで、中間インジェクション動作が適宜行われる。
具体的に、冷房運転時には、圧縮機(20)の吐出管(22)を流出した高圧冷媒が、放熱器としての室外熱交換器(14)を流れる。室外熱交換器(14)では、冷媒が室外空気に放熱する。放熱後の高圧冷媒は、一部が中間インジェクション管(18)を流れ、残りが内部熱交換器(17)の第1流路(17a)を流れる。中間インジェクション管(18)に流入した冷媒は、減圧弁(19)で中間圧にまで減圧された後、内部熱交換器(17)の第2流路(17b)を流れる。内部熱交換器(17)では、第2流路(17b)を流れる減圧後の液冷媒が、第1流路(17a)を流れる高圧の液冷媒から吸熱する。これにより、第1流路(17a)を流れる液冷媒が冷却され、この液冷媒の過冷却度が大きくなる。また、第2流路(17b)を流れる液冷媒は加熱されて蒸発する。第2流路(17b)で蒸発した冷媒は、中間インジェクション管(18)を流れて圧縮機(20)の中間連絡管(24)へ送られる。
第1流路(17a)で冷却された冷媒は、膨張弁(13)で減圧された後、室内熱交換器(12)を流れる。室内熱交換器(12)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。蒸発後の冷媒は、圧縮機(20)の吸入管(23)に吸入される。
吸入管(23)に吸入された冷媒は、第1偏心回転機構(50)の外側流体室(61)と内側流体室(62)とに流入する。外側流体室(61)と内側流体室(62)とでは、それぞれ冷媒が圧縮される。この際、各流体室(61,62)の内圧の上昇に起因して、第1可動部材(51)の可動側鏡板部(51a)にスラスト力が作用する。しかしながら、可動側鏡板部(51a)の背面(上面)には、第1押し付け部(44)によって高圧冷媒の圧力が作用している。このため、可動側鏡板部(51a)はスラスト力に抗して第1シリンダ(52)側へ押し付けられる。その結果、第1シリンダ(52)と第1可動部材(51)との隙間が確実にシールされると共に、可動側鏡板部(51a)の転覆が防止される。
第1偏心回転機構(50)で中間圧にまで圧縮された冷媒は、第1吐出空間(59)に吐出されて中間連絡管(24)に流入する。中間連絡管(24)を流れる冷媒は、中間インジェクション管(18)を流出した冷媒と合流する。合流後の冷媒は、中間連絡管(24)を流れて、第2偏心回転機構(70)の外側流体室(81)と内側流体室(82)とに流入する。外側流体室(81)と内側流体室(82)とでは、それぞれ冷媒が圧縮される。この際、各流体室(81,82)の内圧の上昇に起因して、第2可動部材(71)の可動側鏡板部(71a)にスラスト力が作用する。しかしながら、可動側鏡板部(71a)の背面(下面)には、第2押し付け部(45)によって高圧冷媒の圧力が作用している。このため、可動側鏡板部(71a)はスラスト力に抗して第2シリンダ(72)側へ押し付けられる。その結果、第2シリンダ(72)と第2可動部材(71)との隙間が確実にシールされると共に、可動側鏡板部(71a)の転覆が防止される。なお、定常運転時においては、第2押し付け部(45)に作用する高圧冷媒の圧力と比較すると、補助押し付け部(46)に作用する圧縮途中の冷媒の圧力はさほど高くない。従って、補助押し付け部(46)による第2可動部材(71)の押し付け力は、第2押し付け部(45)の押し付け力と比較すると極めて小さいものとなる。
第2偏心回転機構(70)で高圧にまで圧縮された冷媒は、第2吐出空間(84)に吐出されて、ケーシング(21)の内部空間に流出する。この冷媒は、上方に流れて電動機(31)を通過した後、吐出管(22)に流入して冷媒回路(11)へ送られる。
[暖房運転]
空調機(10)の暖房運転では、圧縮機(20)が運転状態となり、四路切換弁(15)が第2状態に設定されると共に、膨張弁(13)の開度が適宜調節される。暖房運転時の冷媒回路(11)では、室内熱交換器(12)が放熱器となって室外熱交換器(14)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。なお、この空調機(10)では、冷凍サイクルの高圧圧力が二酸化炭素冷媒の臨界圧力よりも高くなる超臨界の冷凍サイクルが行われる。また、定常運転時の暖房運転には、中間開閉弁(25)が開放される。そして、中間インジェクション管(18)では、運転条件に応じて減圧弁(16)の開度が適宜調節されることで、中間インジェクション動作が適宜行われる。
具体的に、暖房運転時には、圧縮機(20)の吐出管(22)を流出した高圧冷媒が、放熱器としての室内熱交換器(12)を流れる。室内熱交換器(12)では、冷媒が室内空気に放熱する。これにより、室内空気が加熱される。放熱後の高圧冷媒は、一部が中間インジェクション管(18)を流れ、残りが内部熱交換器(17)の第1流路(17a)を流れる。暖房運転では、上記冷房運転と同様にして、中間インジェクション動作が適宜行われる。
内部熱交換器(17)の第1流路(17a)で冷却された冷媒は、膨張弁(13)で減圧された後、室外熱交換器(14)を流れる。室外熱交換器(14)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。蒸発後の冷媒は、圧縮機(20)の吸入管(23)に吸入される。圧縮機(20)において、冷媒が二段圧縮される動作は、上記の冷房運転と同様である。
〈圧縮機の起動時の押し付け動作について〉
上記の如く、空調機(10)の冷房運転や暖房運転では、第1偏心回転機構(50)及び第2偏心回転機構(70)において、各押し付け部(44,45,46)が可動側鏡板部(51a,71a)をシリンダ(52,72)側に押し付けることで、可動部材(51,71)とシリンダ(52,72)の間の隙間をシールすると共に、可動部材(51,71)の転覆を防止している。ところが、空調機(10)の運転開始時(即ち、圧縮機(20)の起動時)において、高段側となる第2偏心回転機構(70)では、第2押し付け部(45)で所期の押し付け力を得ることができないという問題が生じ得る。
具体的には、圧縮機(20)の起動時には、中間圧の冷媒(即ち、第2偏心回転機構(70)に吸入冷媒)と比較して、高圧冷媒(即ち、第2偏心回転機構(70)の吐出冷媒)の圧力が上昇しにくい傾向にある。なぜなら、冷房運転や暖房運転の開始時においては、冷媒回路(11)の放熱器(12,14)が比較的低温となっていることから、圧縮機(20)から吐出された高圧冷媒が放熱器(12,14)で急激に冷やされてなかなか昇圧されないからである。このようにして、圧縮機(20)の起動時に高圧冷媒の上昇が遅くなると(例えば図5の破線で示す比較例の圧力変化を参照)、第2シールリング(43)内の第2背圧室(85)に作用する圧力もなかなか上昇しない。その結果、第2押し付け部(45)では、圧縮機(20)の起動時に十分な押し付け力を得ることができず、これにより、第2シリンダ(72)と第2可動部材(71)の隙間もなかなかシールされなくなってしまう。
圧縮機(20)の起動時において、このようにして第2シリンダ(72)と第2可動部材(71)の隙間のシールが不十分となると、この隙間から冷媒が漏れてしまい、第2偏心回転機構(70)でなかなか冷媒が圧縮されない。そうすると、高圧冷媒の上昇がますます遅くなってしまい、冷房運転や暖房運転の立ち上がり時間(運転開始から定常運転に至るまでの時間)も遅くなる。また、第2可動部材(71)の押し付け力が不十分となることで、第2可動部材(71)が軸心に対して傾いてしまい(転覆してしまい)、軸受け部で片当たりが生じてしまう。更に、高圧冷媒の上昇が遅くなることで、油ポンプ(37)から軸受け等の摺動部へ供給される油の量も不足してしまい、これらの摺動部の潤滑不良を招いてしまう。そこで、本実施形態の圧縮機構(40)には、圧縮機(20)の起動時において、このような不具合を回避すべく、補助押し付け部(46)を設けている。この点について、図3及び図5を参照しながら説明する。
本実施形態では、空調機(10)の運転が開始されて圧縮機(20)が起動すると、冷媒回路(11)の低圧冷媒が第1偏心回転機構(50)に圧縮されていく。このため、第2偏心回転機構(70)に吸入される中間圧冷媒の圧力(MP)が比較的速やかに上昇していく。第2偏心回転機構(70)に吸入された中間圧冷媒が外側流体室(61)で圧縮されると、この外側流体室(61)で圧縮された途中の冷媒が、連通路(47)を通じて補助背圧室(86)に導入される。
ここで、圧縮機(20)の起動時において、補助背圧室(86)内に導入される冷媒の圧力(図5に示す圧力(M'P))は、上記の高圧冷媒の圧力(HP)のように冷媒回路(11)の放熱器(12,14)等の影響を受けないため、この圧力M'Pは比較的速やかに上昇していく。また、圧縮機(20)の起動時においては、第2偏心回転機構(70)の圧縮比がさほど高くないため、外側流体室(81)から外側吐出ポート(57)へ流出する冷媒の体積流量が大きくなる。このため、外側吐出ポート(57)や吐出弁(57a)の流路抵抗が増大するので、このような流路抵抗の増大に伴い補助背圧室(56)へ導入される冷媒の圧力M’Pが高くなる。
以上のような理由から、圧縮機(20)の起動時には、補助背圧室(86)内の冷媒の圧力M'Pが、高圧冷媒の圧力HPよりも一時的に高くなる。このため、圧縮機(20)の起動時において、第2背圧室(85)内圧の上昇が比較的遅くなって第2押し付け部(45)の押し付け力が小さくなっても、これを補うように補助押し付け部(46)で比較的大きな押し付け力を得ることができる。
以上のようにして、第2偏心回転機構(70)の可動側鏡板部(71a)に作用する押し付け力が大きくなると、例えば図5に示す時点taにおいて、第2可動部材(71)と第2シリンダ(72)との隙間のシールが確保される。これにより、第2偏心回転機構(70)の各流体室(81,82)では、冷媒の漏れが抑制され、高圧冷媒の圧力HPが速やかに上昇する。その結果、第2背圧室(85)の内圧も速やかに上昇していくので、第2押し付け部(45)の押し付け力も速やかに増大していく。このようにして圧縮機(20)の起動時から所定時間が経過すると、冷媒回路(11)の高圧冷媒、中間圧冷媒、及び低圧冷媒の各圧力の差が顕著となり、これらの各圧力が徐々に安定していき、冷媒回路(11)の冷凍サイクルが定常状態に至る。
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、第2偏心回転機構(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側に、外側流体室(81)の圧縮途中の冷媒の圧力が作用する補助押し付け部(46)を設けるようにしている。ここで、この圧縮途中の冷媒の圧力は、高圧冷媒と異なり、圧縮機(20)の起動時においても速やかに上昇する。従って、圧縮機(20)の起動時には、補助押し付け部(46)による比較的大きな押し付け力で、可動側鏡板部(71a)を押し付けることができる。その結果、圧縮機(20)の起動時において、第2可動部材(71)と第2シリンダ(72)の隙間のシールを速やか且つ確実に確保できる。従って、図5に示すように、冷媒回路(11)の高圧(HP)、中間圧(MP)、及び低圧(LP)をそれぞれ速やかに安定させることができ、空調機(10)の定常運転の立ち上げ時間を短縮できる。
また、このようにして第2可動部材(71)と第2シリンダ(72)の隙間のシールを速やかに確保するようにすると、第2押し付け部(45)の押し付け力も速やかに確保できる。このため、第2可動部材(71)の転覆を防止して軸受け部の片当たりを未然に回避できる。また、高圧の上昇を促すことで、油ポンプ(37)から各摺動部への油の供給を確実に行うことができ、空調機(10)の信頼性を向上できる。
また、上記実施形態では、第2偏心回転機構(70)の可動側鏡板部(71a)の挟み込み隙間(L2−D2)を第1偏心回転機構(50)の可動側鏡板部(51a)の挟み込み隙間(L1−D1)よりも小さくしている。このため、第2偏心回転機構(70)では、第2可動部材(71)と第2シリンダ(72)の隙間からの冷媒の漏れを防止でき、圧縮機(20)の起動時における高圧冷媒(HP)の圧力上昇を更に促進できる。
また、第1偏心回転機構(50)では、可動側鏡板部(71a)の挟み込み隙間(L1−D1)を比較的大きくしている。このため、湿り度が比較的高い低圧冷媒が圧縮機(20)に吸入された場合、第1偏心回転機構(50)の第1可動部材(51)と第1シリンダ(52)との隙間より冷媒を逃がすことできる。即ち、第1偏心回転機構(50)では、挟み込み隙間(L1−D1)を比較的大きくすることで、液状態の冷媒を圧縮してしまう、いわゆる液圧縮現象を未然に回避できる。
一方、第2偏心回転機構(70)では、圧縮された後の高圧冷媒が臨界状態となるように、冷媒を圧縮している。このため、第2偏心回転機構(70)では、各流体室(81,82)に液冷媒が入ってしまうことほとんどない。従って、第2偏心回転機構(70)の挟み込み隙間(L2−D2)を比較的狭くしたとしても、液圧縮現象を招いてしまう虞はない。
《その他の実施形態》
上述した各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
〈圧縮機構の方式について〉
上記各実施形態の圧縮機構(40)は、環状のシリンダ室(54,74)が形成されるシリンダ(52,72)と、環状のピストン(53,73)を有する可動部材(51,71))との間に圧縮室を区画する方式である。しかしながら、これ以外にも、可動側鏡板部と可動側ラップとを有する可動スクロールと、固定側鏡板部と固定側ラップとを有する固定スクロールとの間に圧縮室を区画する、スクロール式の圧縮機構を採用しても良い。この場合にも、本発明を適用することで、圧縮機(20)の起動時において、両スクロール間のシールを速やかに確保できる。
〈連通路について〉
上記実施形態では、可動側鏡板部(71a)に連通路(47)を形成して、外側流体室(81)の圧縮途中と補助背圧室(86)とを連通路(47)を介して連通させている。しかしながら、例えば図6に示すように、固定側鏡板部(72a)に連通路(47)を形成し、外側流体室(81)の圧縮途中と補助背圧室(86)とを連通路(47)を介して連通させるようにしても良い。
上記実施形態では、第2偏心回転機構(70)において、外側流体室(81)の圧縮途中と補助背圧室(86)とを連通路(47)を介して連通させている。しかしながら、内側流体室(82)の圧縮途中と補助背圧室(86)とを連通路(47)を介して連通させても良いし、双方の流体室(81,82)と補助背圧室(86)とを2つの連通路(47,47)を介して連通させても良い。
〈冷媒回路について〉
上記各実施形態の空調機(10)は、室内熱交換器(12)を1つしか例示していないが、冷媒回路(11)に複数の室内熱交換器(12)を並列に設けて空調機(10)をマルチ式としても良い。また、冷媒回路(11)は、二酸化炭素からなる冷媒を臨界圧力以上まで圧縮する、いわゆる超臨界サイクルを行うものである。しかしながら、冷媒回路(11)に二酸化炭素以外の冷媒を充填して、通常の冷凍サイクルを行うよういしても良い。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、 冷媒を二段に圧縮する圧縮機が接続される冷媒回路を備えた冷凍装置に関し有用である。
11 冷媒回路
12 室内熱交換器(放熱器)
14 室外熱交換器(放熱器)
20 圧縮機(回転式圧縮機)
40 圧縮機構
41c 高段側支持部
41d 低段側支持部
43 第2シールリング(シールリング)
44 第1押し付け部(低段側押し付け部)
45 第2押し付け部(高段側押し付け部)
46 補助押し付け部
47 連通路
50 第1偏心回転機構(低段側圧縮部)
51 第1可動部材(可動部材)
51a 可動側鏡板部
52 第1シリンダ(固定部材)
52a 固定側鏡板部
61 外側流体室(圧縮室)
62 内側流体室(圧縮室)
65 第1背圧室(低段側背圧室)
70 第2偏心回転機構(高段側圧縮部)
71 第2可動部材(可動部材)
71a 可動側鏡板部
72 第2シリンダ(固定部材)
72a 固定側鏡板部
81 外側流体室(圧縮室)
82 内側流体室(圧縮室)
85 第2背圧室(高段側背圧室)
86 補助背圧室

Claims (4)

  1. 冷凍サイクルが行われる冷媒回路(11)から吸入した冷媒を圧縮する低段側圧縮部(50)と、該低段側圧縮部(50)で圧縮した冷媒を更に圧縮して上記冷媒回路(11)へ吐出させる高段側圧縮部(70)とを有する二段圧縮式の圧縮機構(40)を備え、
    上記高段側圧縮部(70)は、固定側鏡板部(72a)を有する固定部材(72)と、可動側鏡板部(71a)を有する可動部材(71)とを有し、上記固定部材(72)と該可動部材(71)との間に圧縮室(81,82)を区画しながら該可動部材(71)を偏心回転させることで冷媒を圧縮するように構成され、
    上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側には、該可動側鏡板部(71a)を固定部材(72)に向かって押し付けるように、高段側圧縮部(70)から吐出される高圧冷媒の圧力が作用する高段側押し付け部(45)が設けられている回転式圧縮機であって、
    上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側には、該可動側鏡板部(71a)を固定部材(72)に向かって押し付けるように、高段側圧縮部(70)の圧縮途中の冷媒の圧力が作用する補助押し付け部(46)が設けられていることを特徴とする回転式圧縮機。
  2. 請求項1において、
    上記圧縮機構(40)における高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側には、シールリング(43)が設けられ、
    上記シールリング(43)の内側に上記高段側押し付け部(45)を構成するための高段側背圧室(85)が区画され、該シールリング(43)の外側に上記補助押し付け部(46)を構成するための補助背圧室(86)が区画され、
    上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)又は固定側鏡板部(72a)には、一端が高段側圧縮部(70)の圧縮途中の圧縮室(81)に連通し、他端が上記補助背圧室(86)と連通する連通路(47)が形成されていることを特徴とする回転式圧縮機。
  3. 請求項1又は2において、
    上記低段側圧縮部(50)は、固定側鏡板部(52a)を有する固定部材(52)と、可動側鏡板部(51a)を有する可動部材(51)とを備え、上記固定部材(52)と上記可動部材(51)との間に圧縮室(61,62)を区画しながら該可動部材(51)を偏心回転させることで冷媒を圧縮するように構成され、
    上記低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の背面側には、該可動側鏡板部(51a)を固定部材(52)に向かって押し付けるように、高段側圧縮部(70)から吐出される高圧冷媒の圧力が作用する低段側押し付け部(44)が設けられていることを特徴とする回転式圧縮機。
  4. 請求項3において、
    上記圧縮機構(40)は、
    上記高段側圧縮部(70)の固定部材(72)の先端面との間に上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)を狭持するように該高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の背面側に設けられる高段側支持部(41c)と、
    上記低段側圧縮部(50)の固定部材(52)の先端面との間に上記低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)を狭持するように該低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の背面側に設けられる低段側支持部(41d)とを有し、
    上記低段側圧縮部(50)の固定部材(52)の先端面と上記低段側支持部(41d)との間隔をL1とし、上記低段側圧縮部(50)の可動側鏡板部(51a)の厚みをD1とし、上記高段側圧縮部(70)の固定部材(72)の先端面と上記高段側支持部(41c)との間隔をL2とし、上記高段側圧縮部(70)の可動側鏡板部(71a)の厚みをD2とすると、
    上記圧縮機構(40)は、(L1−D1)>(L2−D2)の関係を満たすように構成されていることを特徴とする回転式圧縮機。
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