JP2011058086A - 熱処理条件設定方法および熱処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金製のワーク2を所定の熱処理温度Hにまで加熱して熱処理を行う際の熱処理条件設定方法であって、前記ワーク2を熱処理開始温度である品質変化開始温度H0から前記熱処理温度Hにまで昇温させる昇温期間における、前記品質変化開始温度H0と前記熱処理温度Hとの温度差および前記昇温期間の時間t1、ならびに、前記熱処理温度Hにまで昇温させた前記ワーク2の温度を前記熱処理温度Hに保持する保温期間における、前記品質変化開始温度H0と前記熱処理温度Hとの温度差および前記保温期間の時間t2、を用いて前記熱処理条件を設定する。
【選択図】 図4
Description
このようにシリンダブロックに寸法変動が生じるとボアの真円度が悪化して、潤滑油の消費量が増大するなどの問題が発生する。
この鋳造後のシリンダブロックに施す熱処理は、シリンダブロックを所定の温度に所定の時間だけ保持することで行われている。
この残留永久成長率は、時効処理を施したアルミニウム合金に残留している固溶金属量の度合いを示すものであり、例えば時効処理を施したアルミニウム合金のテストピースに対して所定の加熱処理を行い、加熱処理後のテストピース長さから加熱処理前のテストピース長さを減じた差分を、加熱処理前のテストピース長さによって除して得られる値により表わされる。
また、時効処理を施したシリンダブロックを構成するアルミニウム合金の残留永久成長率は、一定の規格値以下であることが求められており、この残留永久成長率が規格値以下となるように時効処理時の保持温度および保持時間が設定されている。
従って、時効処理を行う際の保持温度および保持時間は、アルミニウム合金の硬度が規格値以上となるように設定されている。
従って、時効処理を行うときには、前述の良品条件の範囲内に入るように保持温度および保持時間を設定することで、残留永久成長率および硬度の両方についての規格値を満足することが可能となっている。
例えば、保持時間を短縮するために保持温度を高く設定すると、良品条件の範囲(図7に示す範囲A)が非常に小さくなり、処理時における保持温度や保持時間のばらつきなどを考慮すると、全てのシリンダブロックに対して残留永久成長率および硬度の両方の規格値を満足するような処理を行うことが困難であった。
また、設定可能な保持温度および保持時間の範囲が狭いために、熱処理条件を設定する際に制約が多く、条件設定作業が煩雑となっていた。
即ち、請求項1記載のごとく、アルミニウム合金製のワークを所定の熱処理温度にまで加熱して熱処理を行う際の熱処理条件設定方法であって、前記ワークを熱処理開始温度から前記熱処理温度にまで昇温させる昇温期間における、前記熱処理開始温度と前記熱処理温度との温度差および前記昇温期間の時間、ならびに、前記熱処理温度にまで昇温させた前記ワークの温度を前記熱処理温度に保持する保温期間における、前記熱処理開始温度と前記熱処理温度との温度差および前記保温期間の時間、を用いて前記熱処理条件を設定する。
また、請求項2記載のごとく、前記熱処理条件は、具体的には次式により設定される。
(ただし、数4におけるQは熱処理時においてワークが受ける熱量を示す熱負荷、n1は昇温期間における係数、n2は保温期間における係数、Hは熱処理温度、Hoは熱処理開始温度、t1は昇温期間の時間、t2は保温期間の時間を表わす)
また、前記保温期間の時間を0に設定することで、ワークに対する熱処理を、実質的に昇温期間のみで実施することが可能となるため、熱処理時間の短縮を図ることができる。
また、請求項4記載のごとく、前記数4における熱処理条件を表わす値Qが、具体的には68<Q<155の範囲内にある。
これにより、熱処理後に、容易かつ確実に良品品質のワークを得ることができる。
これにより、シリンダブロックに寸法変動が生じてボアの真円度が悪化し、潤滑油の消費量が増大するといった問題や、燃費が低下するといった問題などが発生することを防止できる。
これにより、ワークの寸法を安定させるため熱処理条件設定の自由度が高くなり、熱処理条件の設定が容易となる。また、熱処理時間の短縮を図ることができる。
つまり、ワークの寸法を安定させるため熱処理条件設定の自由度が高くなり、熱処理条件の設定が容易となる。また、熱処理時間の短縮を図ることができる。
図1、図2に示す熱処理装置1は、導入側遮断炉10、加熱炉20、保温炉30、排出側遮断炉40、および冷却装置50を順に連結したトンネル式熱処理装置に構成されている。
前記導入側遮断炉10、加熱炉20、保温炉30、排出側遮断炉40、および冷却装置50には、それぞれワーク2を収容可能な導入側遮断室10a、加熱室20a、保温室30a、排出側遮断室40a、および冷却室50aが形成されている。
また、加熱室20aには、加熱室20a内の雰囲気を炉外に排気する排気口22が設けられている。
前記冷却室50a内には、冷却室50a内に収容されたワーク2を冷却するための冷却器51が設けられている。冷却器51は、例えば水を冷却室50a内に噴出することによりワーク2の冷却を行うように構成されている。
熱処理の開始前には、熱処理装置1の各扉61・62・63・64・65は、全て閉じた状態となっている。
第一扉61が閉じると第二扉62が開き、導入側遮断室10a内のワーク2が、導入側遮断室10a内および加熱室20a内のローラコンベア71により、加熱室20a内に搬入される(S02)。ワーク2が加熱室20a内に搬入されると第二扉62が閉じる。
なお、保温室30a内においては、ヒータ31により加熱された雰囲気の温度がファン32により攪拌されることで均一化され、ワーク2における各部の温度が均一な状態で、ワーク2を保温することが可能となっている。
ワーク2が排出側遮断室40a内に搬入されると、第四扉64が閉じる。第四扉64が閉じると第五扉65が開いて、ワーク2が排出側遮断室40a内および冷却室50a内のローラコンベア71により冷却室50a内に搬入される(S09)。
ワーク2の冷却が完了すると、ワーク2を冷却室50a内から排出してワーク2の熱処理が完了する(S11)。
常温状態にある加熱室20a内のワーク2に対して加熱が開始されると、ワーク2は昇温していき、時刻taにおいて品質変化開始温度H0に達する。さらにワーク2が加熱されると、時刻tbにおいて熱処理温度Hに達する。
ワーク2の温度が熱処理温度Hに達すると、ワーク2は保温室30a内で一定の熱処理温度Hに保温される。ワーク2の保温は時刻t3まで行われ、その後ワーク2は冷却される。
つまり、アルミニウム合金からの金属析出は、品質変化開始温度H0よりも低い温度でも生じないことはないが、ワーク2を品質変化開始温度H0以上の温度に加熱することで、アルミニウム合金からの金属析出を熱処理として人工的に行う際に、効果的な析出を生じさせることが可能となる。
このように、品質変化開始温度H0は、実質的にワーク2の熱処理が開始される温度、すなわち熱処理開始温度である。
すなわち、ワーク2の熱負荷Qは、次式(数4)のように表すことができる。
昇温時の熱負荷Q1を表わす式(数1)における係数n1は、ワーク2の昇温勾配に応じて設定され、例えば0.5に設定される。
また、保温時の熱負荷Q2を表わす式(数2)における係数n2は、例えば1に設定される。
さらに、前記各式(数1)〜(数4)における品質変化開始温度H0は、例えば215℃に設定される。
また、保温時の熱負荷Q2を、品質変化開始温度H0と熱処理温度Hとの差分に、保温領域の時間t2を乗じ、さらに所定の係数n2を乗じることにより算出する(式(数2))。
そして、算出した昇温時の熱負荷Q1と保温時の熱負荷Q2とを加えることにより、ワーク2の熱負荷Qを算出する(式(数3))。
そして、熱処理が施されたワーク2は、寸法変動が少なく寸法が安定していることが求められるため、残留永久成長率が所定の規格値Gより小さくなるように、熱負荷Qの値が設定される。前記残留永久成長率の規格値Gは、例えば0.05%である。
そして、熱処理が施されたワーク2は、所定の高さ以上の硬度を有していることが求められることかから、硬度が所定の規格値Hより高くなるように熱負荷Qの値が設定される。前記硬度の規格値Hは、例えば90以上である。
つまり、本熱処理条件設定方法においては、前記熱負荷Qを、熱処理後のワーク2が良品となる範囲(品質良品域)であるQa<Q<Qbの範囲に設定する。
この品質良品域の熱負荷Qの値としては、例えばQa=68、Qb=155に設定される。
例えば、熱処理温度Hを280℃に、時間t1を1.0分に、時間t2を1.5分に設定すると、Q=135とすることができる。
また、熱処理温度Hを290℃に、時間t1を1.5分に、時間t2を0.5分に設定すると、Q=93.75とすることができる。
例えば、熱処理温度Hを320℃に、時間t1を1.5分に、時間t2を0分に設定すると、Q=78.75とすることができる。
そして、このように設定した熱処理条件によりワーク2の熱処理を行っている。
また、前記保温期間の時間t2を0に設定することで、ワーク2に対する熱処理を、実質的に昇温期間のみで実施することが可能となるため、熱処理時間の短縮を図ることができる。
さらに、ワーク2を内燃機関のシリンダブロックに適用することで、シリンダブロックに寸法変動が生じてボアの真円度が悪化し、潤滑油の消費量が増大するといった問題や、燃費が低下するといった問題などが発生することを防止できる。
2 ワーク
10 導入側遮断炉
10a 導入側遮断室
20 加熱炉
20a 加熱室
21 加熱具
30 保温炉
30a 保温室
31 ヒータ
32 ファン
40 排出側遮断炉
40a 排出側遮断室
50 冷却装置
50a 冷却室
51 冷却器
61〜65 第一扉〜第五扉
71 ローラコンベア
Claims (6)
- アルミニウム合金製のワークを所定の熱処理温度にまで加熱して熱処理を行う際の熱処理条件設定方法であって、
前記ワークを熱処理開始温度から前記熱処理温度にまで昇温させる昇温期間における、前記熱処理開始温度と前記熱処理温度との温度差および前記昇温期間の時間、ならびに、前記熱処理温度にまで昇温させた前記ワークの温度を前記熱処理温度に保持する保温期間における、前記熱処理開始温度と前記熱処理温度との温度差および前記保温期間の時間、を用いて前記熱処理条件を設定する、
ことを特徴とする熱処理条件設定方法。 - 前記数4における熱処理条件を表わす値Qが、熱処理を施したワークの残留永久成長率および硬度が品質規格を満足する範囲の値に設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の熱処理条件設定方法。 - 前記数4における熱処理条件を表わす値Qが、68<Q<155の範囲内にある、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の熱処理条件設定方法。 - 前記ワークは、内燃機関のシリンダブロックである、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の熱処理条件設定方法。 - 請求項1〜5の何れかに記載の熱処理条件設定方法により設定された熱処理条件にてワークを熱処理する、
ことを特徴とする熱処理方法。
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