JP2011052105A - 顔料分散組成物、インクジェット記録用水性インク組成物、インクジェット画像形成方法、及び記録物 - Google Patents

顔料分散組成物、インクジェット記録用水性インク組成物、インクジェット画像形成方法、及び記録物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐擦性に優れた画像を形成できる顔料分散組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1−a)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物から選択される少なくとも1種を含む色材と、塩基性分散助剤と、を含有する〔Z:5〜8員含窒素ヘテロ環基;Y、Y、R11、R12:水素原子、置換基;G、G:水素原子等;W、W:アルコキシ基等〕。
Figure 2011052105

【選択図】なし

Description

本発明は、顔料分散組成物、インクジェット記録用水性インク組成物、インクジェット画像形成方法、及び記録物に関する。
インクジェット用被記録媒体として様々な媒体が使用されてきており、インクジェット専用紙のみならず、市販の普通紙、上質紙やコート紙やアート紙などの印刷媒体でも高品位の画質が求められている。
普通紙や印刷媒体で耐水性や耐光性等の堅牢性を与えるインク色材として顔料が好ましく、コストの観点も含めて水性顔料インクでの検討が種々行われている。その中で、インクジェット記録用のイエロー顔料としてアゾ系顔料が好ましく使用されている。
例えば、C.I.ピグメントイエロー74(PY74)と、分散剤としてメタクリル酸n−ブチルとアクリル酸n−ブチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとメタクリル酸とスチレンとの共重合体と、を含むインクジェット記録用水系インクが知られている(例えば、特許文献1参照)。このインクを用いることで、分散性及び分散安定性が向上し、かつ、鮮明な画像を形成することができるとされている。
また、保存安定性及び吐出精度の向上を目的として、PY74と分散助剤とを含むインクジェット記録用水系インクが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−239594号公報 特開2008−231338号公報
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載のインクジェット記録用インクを用いた場合、形成された画像の耐擦性が低い傾向がある。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、耐擦性に優れた画像を形成できる顔料分散組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐擦性に優れた画像を形成できるインクジェット記録用インクを提供することを目的とする。
また、本発明は、耐擦性に優れた画像を形成できるインクジェット画像形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐擦性に優れた記録物を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 一般式(1−a)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物から選択される少なくとも1種を含む色材と、一般式(2−a)で表される塩基性分散助剤と、を含有する顔料分散組成物。
Figure 2011052105
〔一般式(1−a)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y、Y、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G、Gは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W、Wはそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。〕
Figure 2011052105
〔一般式(2−a)中、Xは炭素原子数2〜20の2価の連結基を表す。Aは、アリール置換アミノ基、ヘテロ環置換アミノ基、アリール置換イミノ基、ヘテロ環置換イミノ基、又は、Xに窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基を表す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。R及びRは互いに連結していてもよく、さらに酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含むヘテロ環を形成してもよい。mは1又は2の自然数を表す。〕
<2> 前記一般式(1−a)中のWおよびWは、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基、または総炭素数3以下のアルキルアミノ基である<1>に記載の顔料分散組成物。
<3> 前記一般式(1−a)中のGおよびGは、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基である<1>又は<2>に記載の顔料分散組成物。
<4> 前記一般式(1−a)中のZは、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基である<1>〜<3>のいずれかに1項に記載の顔料分散組成物。
<5> 前記一般式(2−a)で表される塩基性分散助剤が、下記一般式(2−b)で表される塩基性分散助剤である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
Figure 2011052105
〔一般式(2−b)中、Aは、アリール置換アミノ基、ヘテロ環置換アミノ基、アリール置換イミノ基、ヘテロ環置換イミノ基、又は、隣接する炭素原子に窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基を表す。Yは酸素原子又は硫黄原子を表す。lは0又は1の整数を表す。nは1〜19の自然数を表す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。R及びRは互いに連結していてもよく、さらに酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含むヘテロ環を形成してもよい。mは1又は2の自然数を表す。〕
<6> 更に、水性媒体を含む<1>〜<5>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
<7> 前記Aが、アリール置換アミノ基又はヘテロ環置換アミノ基である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
<8> 更に、ポリマー分散剤を含む<1>〜<7>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
<9> 更に、ポリマー粒子を含む<1>〜<8>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物
<10> <1>〜<9>のいずれか1項に記載の顔料分散組成物を用いてなるインクジェット記録用水性インク組成物。
<11> <10>に記載のインクジェット記録用水性インク組成物を、記録媒体上にインクジェット法で吐出する工程を含むインクジェット画像形成方法。
<12> <11>に記載のインクジェット画像形成方法で記録媒体に記録された記録物。
本発明によれば、耐擦性に優れた画像を形成できる顔料分散組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、耐擦性に優れた画像を形成できるインクジェット記録用インクを提供することができる。
また、本発明によれば、耐擦性に優れた画像を形成できるインクジェット画像形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、耐擦性に優れた記録物を提供することができる。
≪顔料分散組成物及びインクジェット記録用水性インク組成物≫
本発明の顔料分散組成物は、下記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物から選択される少なくとも1種を含む色材(以下、「特定色材」ともいう)と、下記一般式(2−a)で表される塩基性分散助剤(以下、「特定塩基性分散助剤」ともいう)と、を含有する。
また、本発明のインクジェット記録用水性インク組成物は、本発明の顔料分散組成物を用いてなるものである。
本発明のインクジェット記録用水性インク組成物としては、本発明の顔料分散組成物自体であってもよいし、本発明の顔料分散組成物に上記以外の成分(例えば、後述するその他の成分)を添加することにより作製されたものであってもよい。
顔料分散組成物及びインクジェット記録用水性インク組成物を上記本発明の構成とすることにより、前記特定色材の分散性が向上し、形成された画像における耐擦性が向上する(即ち、画像の耐久性が向上する)。
また、本発明の顔料分散組成物及び本発明のインクジェット記録用水性インク組成物は、顔料の分散性に優れるため、吐出精度に優れる。
更には、本発明の顔料分散組成物及び本発明のインクジェット記録用水性インク組成物は、顔料の分散性に優れるため、保存安定性にも優れる。このため、長期間保存後や高温に晒された後であっても、前記吐出精度の低下が抑制される。
以下、本発明の顔料分散組成物、及び本発明のインクジェット記録用水性インク組成物(以下、「本発明のインク組成物」ともいう)の必須成分である特定色材及び特定塩基性分散助剤について説明し、引き続き、その他の成分について説明する。
<特定色材>
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、下記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物から選択される少なくとも1種を含む色材(特定色材)を含有する。
前記特定色材は、イエローの色相としてピグメントイエロー74(P.Y.74)と同等の良好な色相を示し、かつ、耐光性に優れている。
また、特定色材を含有することで、組成物の吐出安定性(特に吐出回復性)をも向上させることができる。
更には、該特定色材と後述する特定塩基性分散助剤とを組み合わせて用いることで、該特定色材の分散性が向上する。このため形成される画像の耐擦性が向上する。
前記特定色材は、代表的には一般式(1−a)で表される。また、前記アゾ顔料は一般式(1−a)で表される構造であっても、その互変異性体であってもよい。
以下、下記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料について説明する。
一般式(1−a)で表される化合物は、その特異的な構造により分子間相互作用を形成しやすく、水または有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料とすることができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
Figure 2011052105
一般式(1−a)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y、Y、R11、およびR12は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、GおよびGは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、WおよびWはそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基またはアリール基を表す。
一般式(1−a)において、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表す。好ましい含窒素ヘテロ環を、置換位置を限定せずに例示すると、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環である。より好ましくは、6員含窒素ヘテロ環であり、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、s−トリアジン環が挙げられる。Zとして特に好ましくは、ピリミジン環に由来する2価の基である。
Zが6員含窒素ヘテロ環の場合、色素分子の分子内、分子間作用が、水素結合性、分子の平面性の点からもより向上しやすい点で好ましい。
尚、Zで表される5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基は、さらに縮環していてもよい。
およびYが置換基を表す場合の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基であり、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基等のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す)、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
およびYとして特に好ましくは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。尚、YおよびYは同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1−a)において、R11およびR12は水素原子または置換基を表す。R11およびR12が置換基を表す場合の置換基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル)、炭素数7〜18の直鎖または分岐鎖アラルキル基(例えば、ベンジル)、炭素数2〜12の直鎖または分岐鎖アルケニル基(例えば、ビニル)、炭素数2〜12の直鎖または分岐鎖アルキニル基(例えば、エチニル)、炭素数3〜12の直鎖または分岐鎖シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル)、炭素数3〜12の直鎖または分岐鎖シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基およびアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基および4級アンモニウム基)が挙げられる。
一般式(1−a)において、好ましいR11およびR12は、置換もしくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のヘテロ環基であり、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基または分岐アルキル基であり、更にメチル基またはt−ブチル基が好ましく、その中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。
11およびR12を総炭素数の少ない(例えば、炭素数1〜4)直鎖アルキル基または分岐アルキル基にすることで、よりすぐれた色相、着色力、画像堅牢性を達成できる。
尚、R11およびR12は同一であっても異なっていてもよい。
およびGは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、更に水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でもメチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましい。
またGおよびGがアルキル基を表す場合、総炭素数5以下のアルキル基であることが好ましく、総炭素数3以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が最も好ましい。尚、GおよびGは同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1−a)において、WおよびWはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基またはアリール基を表す。
およびWで表されるアルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基が好ましく、特に炭素数1から5の置換もしくは無置換のアルコキシ基が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
およびWで表されるアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基が挙げられ、その中でもアミノ基、炭素数1から8の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から18の置換もしくは無置換のアニリノ基が好ましく、更にアミノ基、炭素数1から4の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から12の置換もしくは無置換のアニリノ基が好ましく、例えば、アミノ基(−NH)、メチルアミノ基(−NHCH)、ジメチルアミノ基{−N(CH}、アニリノ基(−NHPh)、N−メチル−アニリノ基{−N(CH)Ph}、ジフェニルアミノ基{−N(Ph)}等が挙げられる。
およびWで表されるアルキル基としては、それぞれ独立に直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
具体的には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられる。ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
およびWで表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基が挙げられ、その中でも、炭素数6から18の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、更に炭素数6から12の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
その中でも好ましいWおよびWは、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)またはアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基、フェニル基またはアルキル基が好ましく、更にアルコキシ基、アミノ基が好ましい。
より好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、WおよびWが総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基、総炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、色素分子が分子内および分子間の少なくとも一方で水素結合を強固に形成しやすくなり、良好な色相、高い堅牢性(例えば、耐光、耐ガス、耐熱、耐水、耐薬品等)の点で好ましい。
色相、光堅牢性、耐溶剤性の点から特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH基)またはエトキシ基(−OC基)が好ましく、良好な色相と光堅牢性向上の点からメトキシ基が特に好ましい。
尚、WおよびWは同一であっても異なっていてもよい。
本発明において、Z、Y、Y、R11、R12、G、G、W、およびWが、更に置換基を有する場合の置換基としては、下記の置換基を挙げることができる。
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
本発明におけるアゾ顔料は、一般式(1−a)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。一般式(1−a)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いても良い。
例えば、一般式(1−a)で表されるアゾ顔料には、下記一般式(1−a’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(1−a)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(1−a’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
Figure 2011052105
一般式(1−a’)中、R11、R12、W、W、Y、Y、G、GおよびZは、一般式(1−a)中のR11、R12、W、W、Y、Y、G、GおよびZとそれぞれ同義である。
尚、前記一般式(1−a)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
本発明の一般式(1−a)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)の少なくとも1つを含むものである。
(イ)WおよびWはそれぞれ独立に、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)またはアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基またはアルキル基が好ましく、アルコキシ基、アミノ基がより好ましく、さらに好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH基)が最も好ましい。
(ロ)R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基(例えば、置換もしくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のヘテロ環基)が好ましく、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基または分岐アルキル基であり、更にメチル基、i−プロピル基またはtert−ブチル基が好ましく、その中でも特にtert−ブチル基が最も好ましい。
(ハ)Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環基に由来する2価の基を表し、それらは更に縮環していてもよい。Zにおける含窒素ヘテロ環としては、5または6員の置換もしくは無置換の含窒素ヘテロ環、例えば、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環が好ましく、特に好ましくは、炭素数3から10の6員含窒素ヘテロ環基である。更に好ましいヘテロ環の例は、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、更に好ましくは、ピリミジン環、S−トリアジン環であり、その中でも特にピリミジン環が最も好ましい。
(ニ)GおよびGはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、更に水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でもメチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましい。
またGおよびGで表されるアルキル基としては、総炭素数5以下のアルキル基がより好ましく、総炭素数3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
(ホ)YおよびYはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が特に好ましい。
本発明における上記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料のうち、好ましくは下記一般式(1−b)で表されるアゾ顔料である。
Figure 2011052105
上記一般式(1−b)中のG、G、R11、R12、W、W、YおよびYは、上記一般式(1−a)中のG、G、R11、R12、W、W、YおよびYとそれぞれ同義である。
11、X12は、それぞれ独立に上記一般式(1−a)中のZで表される含窒素ヘテロ環化合物に由来する2価の基(Het.)中のヘテロ原子を表す。
本発明において、上記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料においては多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、一般式(1−a)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合または分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。本発明における一般式(1−a)で表されるアゾ顔料は、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有し、且つ、それらの水素結合の少なくとも2個が分子内交叉水素結合を形成する置換基を有する場合が特に好ましい。
一般式(1−a)で表されるアゾ顔料のうち、前述したように特に好ましいアゾ顔料の一般式の例としては、上記一般式(1−b)で表されるアゾ顔料を挙げることができる。
この構造が好ましい要因としては、一般式(1−b)で示すようにアゾ顔料構造に含有するヘテロ環を構成する窒素原子、水素原子およびヘテロ原子(アゾ基またはその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子とカルボニル基の酸素原子またはアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合(分子内水素結合)を容易に形成し易いことが挙げられる。
これらの構造が好ましい要因としては、上記一般式(1−b)で示すように、アゾ顔料が含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、アミノ基の水素原子およびヘテロ原子(例えば、アゾ基またはその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、カルボニル基の酸素原子またはアミノ基の窒素原子)が少なくとも4個以上の分子内水素結合を容易に形成し易く、且つ、少なくとも2個以上の分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、更に分子内・分子間相互作用が向上し、例えば一般式(1−b)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性およびまたは耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
また、本発明におけるアゾ顔料においては、一般式(1−a)で表される化合物中に同位元素(例えば、H、H、13C、15N)を含有していてもよい。
以下に前記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料の具体例として、Pig.−1〜Pig.−48を示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されているが、記載された構造以外の互変異性体構造のものであっても良いことは言うまでもない。
Figure 2011052105
Figure 2011052105
Figure 2011052105
Figure 2011052105
本発明における一般式(1−a)で表されるアゾ顔料は、化学構造式が一般式(1−a)またはその互変異性体であれば良く、その結晶形態についても特に制限はない。例えば、多形(結晶多形)とも呼ばれるいかなる結晶形態のアゾ顔料であっても良い。
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子またはイオン)の配置が異なる結晶のことを言う。結晶多形においては、その結晶構造によって化学的および物理的性質が決定され、各結晶多形は、レオロジー、色相、および他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる結晶多形は、X-Ray Diffraction(粉末X線回折測定結果)やX-Ray Analysis(X線結晶構造解析結果)によって確認することもできる。
本発明における一般式(1−a)で表されるアゾ顔料に結晶多形が存在する場合、その結晶型はどの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であっても良いが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形の混入が少ないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、更に好ましくは95%〜100、特に好ましくは100%である。
単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性および耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
本発明において、一般式(1−a)で表されるアゾ顔料が酸基を有する場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、または有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミンおよび炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
更に、本発明で使用するアゾ顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数含まれる場合は、その複数の酸基は、それぞれ独立に塩型あるいは酸型であり、互いに異なるものであってもよい。
本発明において、前記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物であっても良く、また結晶中に含まれる水分子の数にも特に制限はない。
次に上記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料の製造方法の一例について説明する。例えば、下記一般式(A)で表されるヘテロ環アミンを酸性条件でジアゾニウム化し、下記一般式(B)で表される化合物とカップリング反応を行い、常法による後処理を行って上記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料を製造することができる。
Figure 2011052105
一般式(A)および(B)中、Wは一般式(1−a)におけるWおよびWと同義であり、Gは一般式(1−a)におけるGおよびGと同義であり、R11、R12、およびZは一般式(1−a)におけるR11、R12、およびZとそれぞれ同義である。
上記一般式(A)で表されるヘテロ環アミンは、一般的には公知慣用の方法、例えば、Helv.Chim.Acta,41,1958,1052〜1056やHelv.Chim.Acta,42,1959,349〜352等に記載の方法、および、それに準じた方法で製造することができる。
また、上記一般式(B)で表される化合物は、国際公開第06/082669号や特開2006−57076号公報に記載の方法、および、それに準じた方法で製造することができる。
上記一般式(A)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム化反応は、例えば、硫酸、リン酸、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬を15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。
カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記一般式(B)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは、25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
このようにして反応させたものは、結晶が析出している場合もあるが、一般的には、反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、一般式(1−a)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
上記の製造方法によって、上記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明における特定色材として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤および分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
本発明の一般式(1−a)で表されるアゾ顔料は後処理として溶媒加熱処理および/またはソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、またはこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、さらに無機または有機の酸または塩基を加えても良い。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃がさらに好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用できるが、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。
このような水溶性有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールまたはこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
本発明に使用されるアゾ顔料(特定色材)の含有量は、本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)中、好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは1〜8質量%である。なお、本発明に利用される顔料の配合量は、濃淡インク等のインクの種類に応じて適宜調整される。
また、本発明に使用されるアゾ顔料(色材)の体積平均粒子径は、インクの安定性の観点から250nm以下であり、より好ましくは150nm以下であることが好ましい。さらに、前記体積平均粒子径が120nm以下からなるアゾ顔料を用いると、本発明の効果を一段と向上できるためより好ましい。
尚、体積平均粒子径は、動的光散乱法を用いて通常の条件によって測定される。
(その他の色材)
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、上記以外のその他の色材を含んでいてもよい。
ここでいう「その他の色材」としては、たとえば、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。中でも、インク着色性の観点から、水に殆ど不溶であるか、又は難溶である色材であることが好ましい。具体的には例えば、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、顔料であることがより好ましい。
水不溶性の顔料自体または分散剤で表面処理された顔料自体を色材とすることができる。
「その他の色材」としての顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機及び無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、特定色材以外のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能であれば、いずれも使用できる。更に、前記顔料を界面活性剤や高分子分散剤等で表面処理したものや、グラフトカーボン等も勿論使用可能である。前記顔料のうち、特に、特定色材以外のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、カーボンブラック系顔料を用いることが好ましい。具体的には特開2007−100071号公報記載の顔料などが挙げられる。
<特定塩基性分散助剤>
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、下記一般式(2−a)で表される塩基性分散助剤(特定塩基性分散助剤)を含有する。
該特定塩基性分散助剤は前記特定色材と共に用いることで、該特定色材の分散性を向上させる。
Figure 2011052105
一般式(2−a)中、Xは、炭素原子数2〜20の2価の連結基を表す。
Aは、アリール置換アミノ基、ヘテロ環置換アミノ基、アリール置換イミノ基、ヘテロ環置換イミノ基、又は、Xに窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基を表す。
及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。R及びRは互いに連結していてもよく、さらに酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含むヘテロ環を形成してもよい。
mは1又は2の自然数を表す。
前記Aで表される基に対応する化合物としては、例えば、ピラゾール、イミダゾール、インドール、カルバゾール、5−アミノベンゾイミダゾール、3−アミノアントラキノン、アクリドン、5−アミノベンゾイミダゾロン、5−アミノウラシル、アデニンが挙げられる。
好ましくは、5−アミノベンゾイミダゾール、3−アミノアントラキノン、アクリドン、5−アミノベンゾイミダゾロン、5−アミノウラシルが挙げられ、より好ましくは、5−アミノベンゾイミダゾール、3−アミノアントラキノン、5−アミノベンゾイミダゾロン、5−アミノウラシルが挙げられる。
具体的には、前記Aで表される基としては、以下の基が挙げられる。
アリール置換アミノ基として、アントラキノン−3−イル−アミノ基等が挙げられる。
前記ヘテロ環置換アミノ基として、ベンゾイミダゾロン−5−イル−アミノ基、ベンゾイミダゾール−5−イル−アミノ基、ベンゾイミダゾール−2−イル−アミノ基、ウラシル−5−イル−アミノ基、等が挙げられる。
前記アリール置換イミノ基として、アントラキノン−3−イル−イミノ基等が挙げられる。
前記ヘテロ環置換イミノ基として、ベンゾイミダゾロン−5−イル−イミノ基、ベンゾイミダゾール−5−イル−イミノ基、ベンゾイミダゾール−2−イル−イミノ基、ウラシル−5−イル−イミノ基、等が挙げられる。
前記Xに窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基(即ち、窒素原子を含有するヘテロ環基であって、該窒素原子の部位で前記Xに結合する基)としては、ピラゾール−1−イル基、イミダゾール−1−イル基、インドール−1−イル基、カルバゾール−9−イル基、アクリドン−10−イル基、等が挙げられる。
上記のうち、前記Aで表される基としては、アリール置換アミノ基又はヘテロ環置換アミノ基が好ましく、ヘテロ環置換アミノ基がより好ましく、ベンゾイミダゾロン−5−イル−アミノ基、ベンゾイミダゾール−2−イル−アミノ基、ウラシル−5−イル−アミノ基、が特に好ましい。
前記Xは、例えば、アルキレン基、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基を含む連結基が挙げられ、好ましくはアルキレンを含む連結基であり、特に好ましくは、炭素原子数1〜19のアルキレンを含む連結基である。
又はRにおいて、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基である。
アラルキル基としては、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−ブトキシベンジル基、4−メトキシベンジルメトキシフェニル基、4−ヒドロキシベンジル基が好ましい。特に好ましくは、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−ブトキシベンジル基である。
アリール基は、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ブトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基が好ましい。特に好ましくは、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ブトキシフェニル基である。
、Rが互いに連結して構成されるヘテロ環としては、イミダゾール、モルホリンなどが挙げられる。
上記のうち、R及びRとしては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
mは1又は2の自然数を表し、粒形制御の面では1が好ましく、pH制御および分散性向上の面では2が好ましい。
前記塩基性分散助剤は下記一般式(2−b)で表されるものであることが好ましい。
Figure 2011052105
一般式(2−b)中、Aは、アリール置換アミノ基、ヘテロ環置換アミノ基、アリール置換イミノ基、ヘテロ環置換イミノ基、又は、隣接する炭素原子に窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基(即ち、窒素原子を含有するヘテロ環基であって、該窒素原子の部位でAに隣接する炭素原子に結合する基)を表す。
ここで、隣接する炭素原子とは、lが1のときは「>C=Y」で表される基の炭素原子を指し、lが0のときは「−(CH−」で表される基のうちAに隣接する炭素原子を指す。
Yは酸素原子又は硫黄原子を表す。
lは0又は1の整数を表す。
nは1〜19の自然数を表す。
及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。R及びRは互いに連結していてもよく、さらに酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含むヘテロ環を形成してもよい。
mは1又は2の自然数を表す。
一般式(2−b)中、R、R、A及びmの好ましい範囲は、上記一般式(2−a)のR、R、A及びmの好ましい範囲と同じである。
Yは酸素原子であることが好ましい。
lは、0又は1の整数を表すが、合成上の理由から、Aのヘテロ環基の構造により、適宜選ばれる。
前記nとしては、4〜19であることが好ましく、6〜17であることがより好ましく、8〜15であることが特に好ましい。
以下、一般式(2−a)又は一般式(2−b)で表される塩基性分散助剤(特定塩基性分散助剤)の具体的な化合物(例示化合物(A−1)〜(A−22))を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2011052105
Figure 2011052105
Figure 2011052105
Figure 2011052105
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)における特定塩基性分散助剤の含有量としては、前記特定色材100質量部に対して、1質量部〜50質量部が好ましく、1質量部〜30質量部がより好ましく、1質量部〜20質量部が更に好ましく、5質量部〜15質量部が特に好ましい。
前記添加量が1質量部以上であれば、特定色材の分散性がより向上する。また、添加量が50質量部以下であれば、特定塩基性分散助剤の凝集がより抑制される。
<水性媒体>
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、水性媒体を含むことが好ましい。
水性媒体は少なくとも水を溶媒として含むが、水と水溶性有機溶剤の少なくとも1種とを含むことが好ましく、水及び少なくとも1種の水溶性有機溶剤を含むことがより好ましい。
水溶性有機溶剤は湿潤剤あるいは浸透剤などの目的で用いられる。
湿潤剤は、インク噴射口におけるインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に防止することができる。また湿潤剤は、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤であることが好ましい。
湿潤剤の具体的な例としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの湿潤剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
湿潤剤として、特にグリセリンを用いると、グリセリンの高い水溶性及び水分蒸発抑制効果によってインク組成物が固化しにくくなるため、プリンタヘッドのノズル中での目詰まりを防止する効果がより大きくなるので好ましい。
湿潤剤の含有量は、本発明に係るインク組成物中、好ましくは0.05〜30質量%であり、更に好ましくは3〜25質量%である。
浸透剤は、インク組成物を記録媒体(例えば、印刷用紙等)により良く浸透させる目的で、好適に使用される。
浸透剤の具体的な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルの多価アルコールのアルキルエーテル類(グリコールエーテル);1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等のジオールが挙げられ、これらの浸透剤は1種単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
本発明においては、浸透剤として、特に1,2−ヘキサンジオールやトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いることが好ましい。
浸透剤の配合量は、本発明に係るインク組成物中、好ましくは0.1〜20重量%であり、更に好ましくは0.5〜15重量%である。
また、水溶性有機溶剤は、上記以外にも、粘度の調整に用いることができる。粘度の調整に用いることができる水溶性有機溶剤の具体的な例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
<ポリマー分散剤>
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、特定色材の分散性をより向上させる観点より、ポリマー分散剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
この場合の好ましい形態としては、本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)が、前記特定色材と、前記特定塩基性分散助剤と、該ポリマー分散剤と、を含む色材粒子を含有する形態が挙げられる。
この形態の顔料分散組成物(又はインク組成物)を調製する方法としては、例えば、ポリマー分散剤を含む溶液(必要に応じ中和処理が施されていてもよい)に、特定色材及び特定塩基性分散助剤を添加することにより、前記特定色材と前記特定塩基性分散助剤と該ポリマー分散剤とからなる色材粒子の分散液を調製する工程を有する方法が好適である。
前記ポリマー分散剤としては、水不溶性ポリマー分散剤が好ましい。
ここで、水不溶性ポリマー分散剤とは、ポリマー分散剤を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマー分散剤をいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマー分散剤の塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
前記水不溶性ポリマー分散剤は、前述の特定色材の分散が可能であれば特に制限は無く、従来公知のものを用いることができる。
前記水不溶性ポリマー分散剤は、例えば、疎水性の構成単位と親水性の構成単位の両方を含んで構成することができる。
前記疎水性の構成単位を構成するモノマーとしては、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また前記親水性の構成単位を構成するモノマーとしては、親水性基を含むモノマーであれば特に制限はない。前記親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。尚、ノニオン性基は後述の自己分散性ポリマーにおけるノニオン性基と同義である。
前記親水性の構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
本発明におけるポリマー分散剤として、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
ここで「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
前記水不溶性ポリマー分散剤としては、顔料の分散安定性の観点から、カルボキシル基を含むビニルポリマーであることが好ましく、疎水性の構成単位として少なくとも芳香族基含有モノマーに由来する構成単位を有し、親水性の構成単位としてカルボキシル基を含む構成単位を有するビニルポリマーであることがより好ましい。
また前記ポリマー分散剤の重量平均分子量としては、顔料の分散安定性の観点から、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
前記色材粒子中におけるポリマー分散剤の含有量は、特定色材の分散性、インク着色性、分散安定性の観点から、特定色材に対し、ポリマー分散剤が5〜200質量%であることが好ましく、10〜100質量%がより好ましく、20〜80質量%が特に好ましい。
前記色材粒子は、前記水不溶性ポリマー分散剤に加えて、その他の分散剤を含んでいてもよい。例えば、従来公知の水溶性低分子分散剤や、水溶性ポリマー等を用いることができる。前記水不溶性ポリマー分散剤以外の分散剤の含有量は、前記ポリマー分散剤の含有量の範囲内で用いることができる。
<ポリマー粒子>
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、ポリマー粒子(前記ポリマー分散剤以外のポリマー粒子)を少なくとも1種含むことが好ましい。
前記ポリマー粒子としては、親水性モノマーに由来する構成単位および疎水性モノマーに由来する構成単位を含み、体積平均粒径が0.1〜10nmであるポリマー粒子(以下、「自己分散性ポリマー」や「自己分散性ポリマー粒子」ともいう。)が好適である。
中でも、ガラス転移温度が150℃以上、I/O値が0.2〜0.55であるポリマー粒子がより好ましい。
前記ガラス転移温度(Tg)は、実測によって得られる測定Tgを適用する。具体的には、測定Tgは、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて通常の測定条件で測定された値を意味する。
但し、ポリマーの分解等により測定が困難な場合は、下記計算式で算出される計算Tgを適用する。
計算Tgは下記の式(1)で計算する。
1/Tg=Σ(X/Tg) (1)
ここで、計算対象となるポリマーはi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xはi番目のモノマーの重量分率(ΣX=1)、Tgはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tg)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用する。
また前記自己分散性ポリマーのI/O値は0.20以上0.55以下が好ましいが、耐ブロッキング性とインクの安定性の観点から、0.30以上0.54以下であることが好ましく、0.40以上0.50以下であることがより好ましい。
前記自己分散性ポリマーのI/O値が0.20以上であれば、インクの安定性低下をより抑制できる。またI/O値が0.55以下であれば、耐ブロッキング性(特に高温高湿条件下)の低下をより抑制できる。
前記I/O値とは、無機性値/有機性値とも称される各種有機化合物の極性を有機概念的に取り扱った値であり、各官能基にパラメータを設定する官能基寄与法の一つである。
前記I/O値については、有機概念図(甲田善生著、三共出版(1984))などに詳細な説明がある。I/O値の概念は、化合物の性質を、共有結合性を表す有機性基と、イオン結合性を表わす無機性基とに分け、全ての有機化合物を有機軸、無機軸と名付けた直行座標上の1点ずつに位置づけて示すものである。
前記無機性値とは、有機化合物が有している種々の置換基や結合等の沸点への影響力の大小を、水酸基を基準に数値化したものである。具体的には、直鎖アルコールの沸点曲線と直鎖パラフィンの沸点曲線との距離を炭素数5の付近でとると約100℃となるので、水酸基1個の影響力を数値で100と定め、この数値に基づいて各種置換基あるいは各種結合などの沸点への影響力を数値化した値が、有機化合物が有している置換基の無機性値となる。例えば、−COOH基の無機性値は150であり、2重結合の無機性値は2である。したがって、ある種の有機化合物の無機性値とは、化合物が有している各種置換基や結合等の無機性値の総和を意味する。
また、前記有機性値とは、分子内のメチレン基を単位とし、そのメチレン基を代表する炭素原子の沸点への影響力を基準にして定めたものである。すなわち、直鎖飽和炭化水素化合物の炭素数5〜10付近で炭素1個が加わることによる沸点上昇の平均値は20℃であるから、これを基準に炭素原子1個の有機性値を20と定め、これを基礎として各種置換基や結合等の沸点への影響力を数値化した値が有機性値となる。例えば、ニトロ基(−NO)の有機性値は70である。
I/O値は、0に近いほど非極性(疎水性、有機性が大きい)の有機化合物であることを示し、値が大きいほど極性(親水性、無機性が大きい)の有機化合物であることを示す
本発明において、自己分散性ポリマーのI/O値は以下の方法によって求めたものを意味する。甲田善生著、有機概念図―基礎と応用−(1984)13ページ等に記載されている有機性(O値)、無機性(I値)を元に、自己分散性ポリマーを構成する各モノマーのI/O値(=I値/O値)を算出する。ポリマーを構成する各モノマーについて、その(I/O値)と(ポリマー中のモル%)との積を算出し、これらを合計して、小数点以下第3位を四捨五入したものを自己分散性ポリマーのI/O値とした。
ただし、各モノマーの無機性値の算出方法として、一般的には2重結合を無機性2として加算するが、ポリマー化すると2重結合はなくなるため、本発明ではモノマーの無機性値として2重結合分は加算していない数値を用いて自己分散性ポリマーのI/O値を算出した。
本発明においては、自己分散性ポリマーを構成するモノマーの構造および含有率を適宜調整することで所望のI/O値を有するポリマーを構成することができる。
本発明における自己分散性ポリマーは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身の官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマーが好ましい。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンション)の両方の状態を含むものである。
前記自己分散性ポリマーにおいては、インクに含有されたときのインク定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる自己分散性ポリマーであることが好ましい。
自己分散性ポリマーの乳化又は分散状態、すなわち自己分散性ポリマーの水性分散物の調製方法としては、転相乳化法が挙げられる。転相乳化法としては、例えば、自己分散性ポリマーを溶媒(例えば、水溶性有機溶剤等)中に溶解又は分散させた後、界面活性剤を添加せずにそのまま水中に投入し、自己分散性ポリマーが有する塩生成基(例えば、酸性基)を中和した状態で、攪拌、混合し、前記溶媒を除去した後、乳化又は分散状態となった水性分散物を得る方法が挙げられる。
また前記自己分散性ポリマーにおける安定な乳化又は分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶剤を除去した後でも、乳化又は分散状態が、25℃で、少なくとも1週間安定に存在し、沈殿の発生が目視で確認できない状態であることをいう。
また、自己分散性ポリマーにおける乳化又は分散状態の安定性は、遠心分離による沈降の加速試験によっても確認することができる。遠心分離による、沈降の加速試験による安定性は、例えば、上記の方法により得られたポリマー粒子の水性分散物を、固形分濃度25質量%に調整した後、12000rpmで一時間遠心分離し、遠心分離後の上澄みの固形分濃度を測定することによって評価できる。
遠心分離前の固形分濃度に対する遠心分離後の固形分濃度の比が大きければ(1に近い数値であれば)、遠心分離によるポリマー粒子の沈降が生じない、すなわち、ポリマー粒子の水性分散物がより安定であることを意味する。本発明においては、遠心分離前後での固形分濃度の比が0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。
また、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
前記自己分散性ポリマーは、分散状態としたときに水溶性を示す水溶性成分の含有量が10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性成分が10質量%以下とすることで、ポリマー粒子の膨潤やポリマー粒子同士の融着を効果的に抑制し、より安定な分散状態を維持することができる。また、顔料分散組成物の粘度上昇を抑制でき、例えば、顔料分散組成物をインクジェット法に適用する場合に、吐出安定性がより良好になる。
ここで水溶性成分とは、自己分散性ポリマーに含有される化合物であって、自己分散性ポリマーを分散状態にした場合に水に溶解する化合物をいう。前記水溶性成分は自己分散性ポリマーを製造する際に、副生又は混入する水溶性の化合物である。
前記自己分散性ポリマーは、親水性モノマーに由来する親水性構成単位の少なくとも1種と、疎水性モノマーに由来する疎水性構成単位の少なくとも1種とを含む。前記自己分散性ポリマーの主鎖骨格については特に制限はないが、ポリマー粒子の分散安定性の観点から、ビニルポリマーであることが好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。ここで(メタ)アクリル系ポリマーとは、メタクリル酸誘導体に由来する構成単位およびアクリル酸誘導体に由来する構成単位の少なくとも1種を含むポリマーを意味する。
(親水性構成単位)
前記親水性構成単位は、親水性基含有モノマー(親水性モノマー)に由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
前記親水性基は、自己分散促進の観点、および形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、少なくとも1種は解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離性基であることがより好ましい。前記アニオン性の解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、顔料分散組成物を用いてインクを構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が特に好ましい。
前記親水性基含有モノマーは、自己分散性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中でも、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種がより好ましい。
またノニオン性親水性基を有するモノマーとしては、例えば、2−メトキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレートなどの(ポリ)エチレンオキシ基またはポリプロピレンオキシ基を含有するエチレン性不飽和モノマーや、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。
また、ノニオン性親水性基を有するモノマーとしては、末端が水酸基のエチレン性不飽和モノマーよりも、末端がアルキルエーテルのエチレン性不飽和モノマーのほうが、粒子の安定性、水溶性成分の含有量の観点で好ましい。
前記親水性構成単位としては、アニオン性の解離性基を有する親水性構成単位のみを含有する態様、および、アニオン性の解離性基を有する親水性構成単位と、ノニオン性親水性基を有する親水性構成単位とを両方含有する態様のいずれかであることが好ましい。
また、アニオン性の解離性基を有する親水性構成単位を2種以上含有する態様や、アニオン性の解離性基を有する親水性構成単位と、ノニオン性親水性基を有する親水性構成単位を2種以上併用する態様であることもまた好ましい。
前記自己分散性ポリマーにおける親水性構成単位の含有率は、粘度と経時安定性の観点から、25質量%以下であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、2〜23質量%であることがさらに好ましく、4〜20質量%であることが特に好ましい。
また2種以上の親水性構成単位を有する場合、親水性構成単位の総含有率が前記範囲内であることが好ましい。
前記自己分散性ポリマーにおけるアニオン性の解離性基を有する親水性構成単位の含有量は、酸価が後述する好適な範囲となるような範囲が好ましい。
また、ノニオン性親水性基を有する構成単位の含有量としては、吐出安定性と経時安定性の観点から、好ましくは0〜25質量%であって、より好ましくは0〜20質量%であって、特に好ましいのは0〜15質量%である。
前記自己分散性ポリマーがアニオン性の解離性基を有する場合、その酸価(mgKOH/g)は、自己分散性、水溶性成分の含有量、及び顔料分散組成物を用いてインクを構成した場合の定着性の観点から、50mgKOH/g以上75mgKOH/g以下であることが好ましく、52mgKOH/g以上75mgKOH/g以下であることがより好ましく、55mgKOH/g以上72mgKOH/g以下であることが更に好ましい。特に好ましいのは、60mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である。
酸価が50mgKOH/g以上であることにより、該ポリマーを用いたインクの吐出応答性、吐出回復性は向上し、酸価が75mgKOH/g以下であることにより粘度は上がり、耐ブロッキングは向上する傾向となる。
(疎水性構成単位)
前記疎水性構成単位は、疎水性基含有モノマー(疎水性モノマー)に由来するものであれば特に制限はなく、1種の疎水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の疎水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記疎水性基としては、特に制限はなく、鎖状脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基のいずれであってもよい。
前記疎水性モノマーは、耐ブロッキング性、耐擦性、分散安定性の観点から、芳香族基含有モノマー又は環状脂肪族基含有モノマーであることが好ましい。
−芳香族基含有モノマー−
前記芳香族基含有モノマーとしては、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。
前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族ヘテロ環に由来する基であってもよい。水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートであることがより好ましい。前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートであることが特に好ましい。
自己分散性ポリマー粒子が芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含む場合、該構成単位の含有量は10質量%〜95質量%であることが好ましい。
芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
−環状脂肪族基含有モノマー−
前記環状脂肪族基含有モノマーとしては、環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート(以下、「脂環式(メタ)アクリレート」いうことがある)が好ましい。
前記脂環式(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸に由来する構造部位と、アルコールに由来する構造部位とを含み、アルコールに由来する構造部位に、無置換または置換された脂環式炭化水素基を少なくとも1つ含む構造を有しているものである。尚、前記脂環式炭化水素基は、アルコールに由来する構造部位そのものであっても、連結基を介してアルコールに由来する構造部位に結合していてもよい。
また、「脂環式(メタ)アクリレート」とは、脂環式炭化水素基を有する、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
脂環式炭化水素基としては、環状の非芳香族炭化水素基を含むものであれば特に限定はなく、単環式炭化水素基、2環式炭化水素基、3環式以上の多環式炭化水素基が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基や、シクロアルケニル基、ビシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、デカヒドロナフタレニル基、ペルヒドロフルオレニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、およびビシクロ[4.3.0]ノナン等を挙げることができる。
前記脂環式炭化水素基は、更に置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびシアノ基等が挙げられる。
また脂環式炭化水素基は、さらに縮合環を形成していてもよい。
前記脂環式炭化水素基としては、粘度や溶解性の観点から、脂環式炭化水素基部分の炭素数が5〜20であることが好ましい。
脂環式炭化水素基とアルコールに由来する構造部位とを結合する連結基としては、炭素数1から20までの、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アラルキル基、アルコキシ基、モノまたはオリゴエチレングルコール基、モノまたはオリゴプロピレングリコール基などが好適なものとして挙げられる。
前記脂環式(メタ)アクリレートの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのうち、自己分散性ポリマー粒子の分散安定性と、定着性、ブロッキング耐性の観点から、2環式(メタ)アクリレート、または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートを少なくとも1種であることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
前記自己分散性ポリマー粒子に含まれる脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、自己分散状態の安定性、脂環式炭化水素基同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、20質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。特に好ましいのは50質量%以上80質量%以下である。
脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を20質量%以上とすることで、定着性、ブロッキングを改良することができる。一方、脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位が90質量%以下であることでポリマー粒子の安定性が向上する。
前記自己分散性ポリマーは、疎水性構成単位として前記芳香族基含有モノマー又は前記環状脂肪族基含有モノマーに由来する構成単位に加え、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んで構成することができる。
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマー又は前記環状脂肪族基含有モノマーおよび既述の親水性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、公知のモノマーを用いることができる。
前記その他の構成単位を形成するモノマー(以下、「その他共重合可能なモノマー」ということがある)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点および自己分散性ポリマーの分散安定性の観点から、炭素数が1〜8の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートの少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは炭素数が1〜4の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはメチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートである。ここで、鎖状アルキル基とは、直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基のことをいう。
前記その他共重合可能なモノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の構成単位を含有する場合、その含有量は10〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜75質量%であって、特に好ましいのは20〜70質量%である。その他の構成単位を形成するモノマーを、2種以上を組み合わせて使用する場合、その総含有量が前記範囲であることが好ましい。
前記自己分散性ポリマーは、各構成単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であっても良く、ブロック共重合体である場合の各構成単位は、如何なる導入順序で合成されたものであっても良く、同一の構成成分を2度以上用いてもよいが、ランダム共重合体であることが汎用性、製造性の点で好ましい。
前記自己分散性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、10000〜20万であることがより好ましく、30000〜15万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
尚、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定することできる。
前記自己分散性ポリマーは、インクの粘度調整、吐出応答性、吐出回復性の観点から、酸価が50〜75mgKOH/gであることが好ましく、52〜75mgKOH/gであることがより好ましく、55〜72mgKOH/gであることが更に好ましく、60〜70mgKOH/gであることが特に好ましい。
酸価が50mgKOH/g以上であることにより、該ポリマーを用いたインクの吐出応答性、吐出回復性は向上し、酸価が75mgKOH/g以下であることにより粘度が上がる傾向となる。
本発明において、酸価はJIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により求める。
前記自己分散性ポリマーは、粘度調整、吐出応答性、吐出回復性の観点から、中和度が40〜60%であることが好ましく、45〜55%であることがより好ましく、47〜53%であることが特に好ましい。
上記中和度が40%以上であると粘度が上昇する効果、吐出応答性が良化する効果があり、60%以下であると吐出回復性が良化する点で好ましい。
また、中和度が40%以下、あるいは60%以上であると自己分散性ポリマーが安定に製造できない等の弊害もある。
ここで、中和度は自己分散性ポリマーの製造時において、自己分散性ポリマー鎖に含まれる解離性基を100モル%とした時に、添加したアルカリのモル%のことを言う。
前記自己分散性ポリマーは、上記酸価と中和度の組み合せとして、酸価が52〜75mgKOH/g、中和度が45〜55%であるとき好ましく、酸価が55〜72mgKOH/g、中和度が45〜55%であるときより好ましく、酸価が55〜65mgKOH/g、中和度が47〜53%であるとき更に好ましい。
前記自己分散性ポリマーの製造方法としては、特に制限はなく、公知の重合法によりモノマー混合物を共重合させることによって製造することができる。これらの重合法の中では、インクとしたときの打滴安定性の観点から、有機媒体中で重合することがより好ましく、溶液重合法が特に好ましい。
前記自己分散性ポリマーの製造方法においては、モノマー混合物と、必要に応じて、有機溶剤及びラジカル重合開始剤とを含んだ混合物を、不活性ガス雰囲気下で共重合反応させて前記水不溶性ポリマーを製造することができる。
前記自己分散性ポリマー粒子の水性分散物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により自己分散性ポリマー粒子の水性分散物とすることができる。自己分散性ポリマーを水性分散物として得る工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含む転相乳化法であることが好ましい。
工程(1):水不溶性ポリマー、有機溶剤、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を攪拌して分散体を得る工程。
工程(2):前記分散体から、前記有機溶剤の少なくとも一部を除去する工程。
前記工程(1)は、まず前記水不溶性ポリマーを有機溶剤に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶剤中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤及びエーテル系溶剤が好ましく挙げられる。
アルコール系溶剤としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの有機溶剤の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤が好ましい。
また、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。これは、例えば、油系から水系への転相時への極性変化が穏和になるためと考えることができる。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散性ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。自己分散性ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、自己分散性ポリマー粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散性ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶剤は実質的に除去されており、有機溶剤の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
前記自己分散性ポリマー粒子の体積平均粒径(以下、単に「平均粒径」ともいう。)は、0.1〜10nmであることが好ましい。
上記平均粒径の範囲の中でも、増粘、吐出性(吐出応答性、吐出回復性)の点で、0.5〜8nmであることが好ましく、1〜7nmがより好ましく1〜5nmがさらに好ましい。特に好ましくは1〜4nmである。
0.1nm以上の平均粒径であることで製造適性、吐出回復性が更に向上し、10nm以下の平均粒径とすることで保存安定性、インクの増粘効果が向上する点で好ましい。また、自己分散性ポリマー粒子に増粘効果を持たせることで、結果として増粘剤の添加量を減らすことにより吐出応答性も良化することも可能になる。
また、自己分散性ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、水不溶性粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、自己分散性ポリマー粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
また本発明における顔料分散組成物において、自己分散性ポリマー粒子は、実質的に色材(例えば顔料)を含有しない形態で存在することが好ましい。
前記自己分散性ポリマー粒子は自己分散性に優れており、ポリマー単独で分散させたときの安定性は非常に高いものである。しかし、例えば、顔料を安定に分散させる、所謂分散剤としての機能は高くないため、前記自己分散性ポリマーが顔料を含有する形態でインク中に存在すると、結果としてインク全体の安定性が大きく低下する場合がある。
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、自己分散性ポリマー粒子を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
また本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)における自己分散性ポリマー粒子の含有量としては、画像の光沢性などの観点から、本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)に対して、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。
また、本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)における色材粒子と自己分散性ポリマー粒子の含有比率(色材粒子/自己分散性ポリマー粒子)としては、画像の耐擦過性などの観点から、1/0.5〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/4であることがより好ましい。
<界面活性剤>
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。かかる界面活性剤としては、下記の一般式(11)で表わされるアセチレングリコール系界面活性剤(例えば、オルフィンY、E1010及びSTG、並びにサーフィノール82、104、440、465及び485(何れも日信化学工業株式会社製)等)や、下記の一般式(12)で表されるポリシロキサン系化合物(例えば、ビッグケミー・ジャパン株式会社より市販されているシリコン系界面活性剤BYK−345、BYK−346、BYK−347、又はBYK−348)を使用することもできる。その他、アニオン性界面活性剤(例えばドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等)等を用いることができる。
Figure 2011052105
一般式(11)中、0≦m+n≦50であって、R21〜R24はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表わす。
一般式(12)中、R31〜R37はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基であり、j、k及びgはそれぞれ独立して1以上の整数であり、EOはエチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基であり、p及びqは0以上の整数であるが、但しp+qは1以上の整数であり、EO及びPOは、[ ]内においてその順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。
これらの界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
界面活性剤の配合量は、本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)中、好ましくは0.01〜10質量%であり、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
<その他の添加剤>
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、上記成分に加えて必要に応じてその他の添加剤を含むことができる。
本発明におけるその他の添加剤としては、例えば、固体湿潤剤(例えば、尿素又はその誘導体、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、多価アルコール等)、増粘剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシアルキレングリコール類、等)、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)を調製後に直接添加してもよく、本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)の調製時に添加してもよい。具体的には特開2007−100071号公報の段落番号[0153]〜[0162]に記載のその他の添加剤などが挙げられる。
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)の表面張力としては、紙等の被記録媒体への浸透性の向上、被記録媒体上でのドットの良好な広がり、及びカラーブリードの防止、乾燥性等の観点から、40mN/m以下であること好ましく、28〜35mN/mであることがより好ましい。
顔料分散組成物又はインク組成物の表面張力は、例えば、Face自動表面張力計「CPVP−Z」〔協和界面科学(株)製〕等の測定装置により測定することができる。
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)の粘度としては、打滴安定性と凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
顔料分散組成物又はインク組成物の粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度計を用いて20℃で測定することができる。
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)のpHとしては、組成物としての安定性の観点から、pH7.5〜10であることが好ましく、pH8〜9であることがより好ましい。尚、インク組成物のpHは25℃で通常用いられるpH測定装置(例えば、東亜ディーケーケー(株)製、マルチ水質計MM−60R)によって測定される。
またインク組成物のpHは、酸性化合物または塩基性化合物を用いて適宜調製することができる。酸性化合物または塩基性化合物としては通常用いられる化合物を特に制限なく用いることができる。
本発明の顔料分散組成物(又は本発明のインク組成物)は、上記一般式(1−a)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種を含む色材と、前記特定塩基性分散助剤の少なくとも1種に加えて、必要に応じて水溶性有機溶剤の少なくとも1種と界面活性剤等とを混合して調製することができる。前記成分を混合して得られる液体組成物を顔料分散組成物又はインク組成物としてもよく、また、前記液体組成物に濾過、殺菌処理(例えば、熱処理)等の処理を行って顔料分散組成物又はインク組成物としてもよい。
濾過の方法としては、例えば、メンブレンフィルタ(例えば、PVDF5μmフィルタ)を用いた濾過を挙げることができる。また殺菌処理としては、熱処理(例えば、60〜80℃で1〜4時間)を挙げることができる。
本発明においては、組成物の安定性の観点から、前記液体組成物を殺菌処理(好ましくは、熱処理)することが好ましい。
≪インクジェット画像形成方法及び記録物≫
本発明のインクジェット画像形成方法は、前記インクジェット記録用水性インク組成物を、記録媒体上に吐出して画像を形成するインク吐出工程を含み、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
本発明のインクジェット記録用水性インク組成物を用いて画像を形成することで、耐擦性に優れた画像を形成することができる。また、インク組成物の調製直後はもちろん、インク組成物を長期間又は高温で保存した後であっても、吐出精度に優れるため、良好な画像を形成することができる。
また、本発明の記録物は、上記本発明のインクジェット画像形成方法により、記録媒体上に記録されたものであるため、耐擦性に優れる。
インク吐出工程では、既述の本発明のインクジェット記録用水性インク組成物を、記録媒体上にインクジェット法で付与する。本工程では、記録媒体上に選択的にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。本発明のインク組成物における各成分の詳細及び好ましい態様などの詳細については、既述した通りである。
インクジェット法を利用した画像の記録は、具体的には、エネルギーを供与することにより、所望の被記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に液体組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
<記録媒体>
本発明のインクジェット画像形成方法は、記録媒体に上に画像を記録するものである。
記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明の画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
上記の中でも、色材移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点からは、好ましくは、水の吸収係数Kaが0.05〜0.5でmL/m・ms1/2の記録媒体であり、より好ましくは0.1〜0.4mL/m・ms1/2の記録媒体であり、更に好ましくは0.2〜0.3mL/m・ms1/2の記録媒体である。
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機(株)製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明のインクジェット記録方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。より具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
≪イエロー顔料の合成≫
<例示化合物(Pig.−1)の合成>
例示化合物(Pig.−1)の合成スキームを下記に示す。
Figure 2011052105
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H), 4.15(s,3H), 3.81(s,3H)
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H), 4.95(brs,2H), 3.80(s,3H), 3.60(s,3H)
(3)中間体(c)の合成
ヒドラジン1水和物130mLにメタノール100mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン50.0g(336ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、50℃に加熱して4時間30分攪拌した。反応液から析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を43.1g(白色粉末、収率92%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、d6-DMSO)7.82(s,1H), 7.55(s,2H), 5.96(s,1H), 4.12(s,4H)
(4)中間体(d)の合成
中間体(c)35.0g(0.25モル)、ピバロイルアセトニトリル68.8g(0.55モル)に水900mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液に1M塩酸水をpH3になるように滴下した後、50℃に加熱して8時間攪拌した。この反応液に8M水酸化カリウム水溶液を滴下してpH8に調整して、更に1M塩酸水を滴下してpH6に調整して析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)を83.0g(白色粉末、収率94%)で得た。得られた中間体(d)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、d6-DMSO)8.73(s,1H), 7.97(s,1H), 6.88(s,4H), 5.35(s,2H), 1.22(s,18H)
(5)例示化合物(Pig.−1)の合成
濃硫酸4.1mLに酢酸18.5mLを加えて氷冷で攪拌し、40%ニトロシル硫酸3.85g(12.1ミリモル)を滴下した。この混合液に中間体(b)1.71g(11.0ミリモル)を徐々に添加(内温0℃以下)した後、0℃で2時間攪拌した。この反応液に尿素150mgを添加し、さらに0℃で15分攪拌して、ジアゾ液Aを調製した。
中間体(d)にメタノール50mLを加えて加熱溶解させた後、氷冷で攪拌した混合液に前記ジアゾ液Aをゆっくり滴下した(内温10℃以下)。この反応液を室温で2時間攪拌した後、析出した結晶をろ取、メタノールでかけ洗いして前記例示化合物(Pig.−1)の粗結晶を得た。さらに前記粗結晶に水を加えて攪拌した後、この懸濁液を水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、さらにジメチルアセトアミド20mLを加えて、80℃で2時間攪拌した。析出した結晶をろ取、さらにメタノールで懸濁洗浄し得られた結晶をろ取、乾燥して例示化合物(Pig.−1)を2.0g(黄色粉末、収率79%)で得た。
尚、上記合成スキームと同様にして、例示化合物(Pig.−2)〜(Pig.−4)、(Pig.−6)、(Pig.−7)、(Pig.−9)〜(Pig.−12)、(Pig.−15)、(Pig.−18)、(Pig.−19)、(Pig.−21)、(Pig.−24)、(Pig.−25)、(Pig.−29)、(Pig.−31)、(Pig.−34)〜(Pig.−37)をそれぞれ合成した。
≪塩基性分散助剤の合成≫
特開2009−84416号公報中、段落0153〜0159に記載の合成方法により、前記特定塩基性分散助剤の例示化合物(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)、(A−5)、(A−6)、及び(A−7)をそれぞれ合成した。
≪ポリマー分散剤の合成≫
下記モノマー組成の成分を全量が100質量部になるように混合し、さらに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1質量部添加し、窒素ガス置換を十分に行い、合成混合液を得た。
−モノマー組成−
フェノキシエチルメタクリレート … 55質量部
メチルメタクリレート … 35質量部
メタクリル酸 … 10質量部
2−メルカプトエタノール … 0.1質量部
次に、メチルエチルケトン100質量部を窒素雰囲気下で撹拌しながら75℃まで昇温させた。75℃、攪拌状態で上記合成混合液を3時間にわたって滴下した。さらに75℃、攪拌状態で5時間反応を続けた。その後、反応合成物を25℃まで自然冷却した後、固形分が50%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈し、質量平均分子量41000の高分子ビニルポリマー溶液(ポリマー分散剤溶液)を得た。
〔実施例1〕
≪インクジェット記録用水性インク組成物の調製≫
<顔料含有高分子ビニルポリマー粒子の水分散物の調製>
上記で得られた高分子ビニルポリマー溶液(ポリマー分散剤溶液)8質量部に5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した。なお、高分子ビニルポリマーのメタクリル酸の80%を中和するアルカリ量を添加した。これに、イエロー顔料として上記例示化合物(Pig.−1)10質量部、分散助剤として上記塩基性分散助剤(A−1)1質量部を加え、ロールミルで2〜8時間混練した。得られた混練物をイオン交換水93質量部に分散した。得られた分散物から減圧下、55℃で有機溶媒を完全に除去し、更に水の一部を除去することにより濃縮し、固形分15%の顔料含有ビニルポリマー粒子(色材粒子)の水分散物を得た。
<自己分散性ポリマー微粒子の調製>
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン350.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート162.0g、メチルメタクリレート180.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン70g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、70℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、70℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。
次に、重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。
<イエローインク組成物の調製>
下記組成を混合し、インクジェット記録用水性インク組成物であるイエローインク組成物を得た。
−イエローインク組成物の組成−
上記顔料含有高分子ビニルポリマー粒子(色材粒子)の水分散物 … 25質量部
グリセリン … 5質量部
ジエチレングリコール … 5質量部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル … 5質量部
ポリオキシプロピレングリセリルエーテル … 10質量部
ジプロピレングリコール … 5質量部
トリエタノールアミン … 1質量部
オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) … 1質量部
自己分散性ポリマー微粒子の水分散物 … 15質量部
イオン交換水 … 28質量部
≪評価≫
上記で得られたイエローインク組成物を用い、以下の評価を行った。
評価結果を表1に示す。
<耐擦性評価>
プリンタPX−V630(EPSON社製)のイエローカートリッジ中のイエローインクを、上記で得られたイエローインク組成物に置き換え、記録媒体(富士フイルム社製画彩写真仕上げPro)上に、イエローベタ画像(幅1cm×長さ5cmのライン)を印字した。
次に、500gの文鎮(サイズ5cm×2cm×10cm)の全面に富士フイルム社製画彩写真仕上げProを画像形成面が外側となるように巻きつけ、この文鎮の一面(前記画像形成面)により、前記イエローベタ画像全面を幅方向に10往復擦った。
その後、ベタ画像の状態を目視で確認し、下記評価基準に従って耐擦性を評価した。
−評価基準−
A … イエローベタ画像の全面積のうち、磨耗部分の面積が30%未満であった。
B … イエローベタ画像の全面積のうち、磨耗部分の面積が30%以上70%未満であった。
C … イエローベタ画像の全面積のうち、磨耗部分の面積が70%以上90%未満であった。
D … イエローベタ画像の全面積のうち、磨耗部分の面積が90%以上であった。
<吐出精度(初期)>
富士フイルムDimatix社製DMP−2831プリンターのイエローインクを上記で得られたイエローインク組成物に置き換えた後、このプリンターにより、記録媒体(富士フイルム社製画彩写真仕上げPro)上に、インク液滴量2pL、吐出周波数20kHz、ノズル配列(列方向×搬送方向)16×1200dpi、の条件で、長さ15cmのライン画像(16列のライン画像)を印字した。
ここで、イエローインク組成物は、調製完了後24時間以下のものを用いた。
印字サンプル(ライン画像)の打滴開始部から5cmの部位のライン間の距離を王子計測機器製ドットアナライザーDA−6000で測定し、その標準偏差を算出し、吐出の方向精度を評価した。結果を表1に示す。
−評価基準−
A … 標準偏差が3μm未満
B … 標準偏差が3μm以上4μm未満
C … 標準偏差が4μm以上5μm未満
D … 標準偏差が5μm以上
<吐出精度(経時)>
上記イエローインク組成物をさらに80℃環境下に4週間保存し、保存後のイエローインク組成物を用いて上記「吐出精度(初期)」と同様の方法により、吐出精度(経時)を評価した。
「吐出精度(初期)」の結果からの変化が少ないほど、イエローインク組成物が分散安定性に優れている。
〔実施例2〜28、比較例1〜3〕
上記「インクジェット記録用水性インク組成物の調製」において、イエロー顔料及び分散助剤の種類を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてイエローのインクジェット記録用水性インク組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
比較例1では、イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー74(PY74)を用いた。
比較例2では、分散助剤として、酸性分散助剤であるEFKA社製EFKA6745を用いた。
比較例3では、分散助剤を用いなかった。
評価結果を表1に示す。
Figure 2011052105
表1に示すように、本発明の特定色材と、本発明の特定塩基性分散助剤と、を含有する顔料分散物(イエローインク組成物)を用いた実施例1〜実施例28では、形成された画像の耐擦性に優れていた。また、実施例1〜28の顔料分散物(イエローインク組成物)は初期の吐出精度に優れており、更に、経時の吐出精度(保存安定性)にも優れていた。

Claims (12)

  1. 一般式(1−a)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物から選択される少なくとも1種を含む色材と、一般式(2−a)で表される塩基性分散助剤と、を含有する顔料分散組成物。
    Figure 2011052105


    〔一般式(1−a)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y、Y、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G、Gは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W、Wはそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。〕
    Figure 2011052105


    〔一般式(2−a)中、Xは炭素原子数2〜20の2価の連結基を表す。Aは、アリール置換アミノ基、ヘテロ環置換アミノ基、アリール置換イミノ基、ヘテロ環置換イミノ基、又は、Xに窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基を表す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。R及びRは互いに連結していてもよく、さらに酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含むヘテロ環を形成してもよい。mは1又は2の自然数を表す。〕
  2. 前記一般式(1−a)中のWおよびWは、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基、または総炭素数3以下のアルキルアミノ基である請求項1に記載の顔料分散組成物。
  3. 前記一般式(1−a)中のGおよびGは、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基である請求項1又は請求項2に記載の顔料分散組成物。
  4. 前記一般式(1−a)中のZは、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基である請求項1〜請求項3のいずれかに1項に記載の顔料分散組成物。
  5. 前記一般式(2−a)で表される塩基性分散助剤が、下記一般式(2−b)で表される塩基性分散助剤である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
    Figure 2011052105


    〔一般式(2−b)中、Aは、アリール置換アミノ基、ヘテロ環置換アミノ基、アリール置換イミノ基、ヘテロ環置換イミノ基、又は、隣接する炭素原子に窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基を表す。Yは酸素原子又は硫黄原子を表す。lは0又は1の整数を表す。nは1〜19の自然数を表す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。R及びRは互いに連結していてもよく、さらに酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含むヘテロ環を形成してもよい。mは1又は2の自然数を表す。〕
  6. 前記Aが、アリール置換アミノ基又はヘテロ環置換アミノ基である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
  7. 更に、水性媒体を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
  8. 更に、ポリマー分散剤を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
  9. 更に、ポリマー粒子を含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の顔料分散組成物
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の顔料分散組成物を用いてなるインクジェット記録用水性インク組成物。
  11. 請求項10に記載のインクジェット記録用水性インク組成物を、記録媒体上にインクジェット法で吐出する工程を含むインクジェット画像形成方法。
  12. 請求項11に記載のインクジェット画像形成方法で記録媒体に記録された記録物。
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